(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】送受信ベースバンド処理装置、通信システム、補正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/11 20150101AFI20221213BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20221213BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20221213BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20221213BHJP
【FI】
H04B17/11
H04B7/08 982
H04B7/06 982
H04B17/29 100
H04B17/29 300
(21)【出願番号】P 2018188419
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】望月 拓志
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-278529(JP,A)
【文献】特開2016-208088(JP,A)
【文献】特開2017-212594(JP,A)
【文献】特開2006-279902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/11 - 17/14
H04B 17/29
H04B 7/08
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーション用受信部にインパルスを入力するキャリブレーション用送受信部と、
前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求める、フーリエ変換の機能を有するFFT解析部と、
送受信フロントエンド処理部における送信部と、
前記キャリブレーション用送受信部における受信部である
前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、
前記FFT解析部が求めた前記第2特性
とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正するキャリブレーション処理部と、
を備える送受信ベースバンド処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の送受信ベースバンド処理装置と、
前記送受信ベースバンド処理装置にビームフォーミング信号を出力するベースバンド回路部と、
を備える通信システム。
【請求項3】
フーリエ変換の機能を有する送受信ベースバンド処理装置が実行する補正方法であって、
キャリブレーション用受信部にインパルスを入力することと、
前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求めることと、
送受信フロントエンド処理部における送信部と、前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、求めた前記第2特性とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正することと、
を含む補正方法。
【請求項4】
送受信ベースバンド処理装置が備えるコンピュータに、
キャリブレーション用受信部にインパルスを入力することを、インパルス発生器に指示することと、
フーリエ変換の機能を実現することと、前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求めることと、
送受信フロントエンド処理部における送信部と、前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、求めた前記第2特性とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信ベースバンド処理装置、通信システム、補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の急速な普及に伴い、無線通信に使用される周波数帯の不足が問題となっている。周波数帯を有効に利用する技術の1つとして、ビームフォーミングが挙げられる。ビームフォーミングは、指向性を有する電波を放射することで、所定の通信対象の無線通信を可能にする技術であり、信号の品質を保ちつつ、他の無線システムなどへの干渉を抑えることのできる技術である。
ビームフォーミングを実現する代表的な手法として、フェーズドアレイが挙げられる。フェーズドアレイは、送信機において複数のアンテナ素子に給電される無線信号の位相や振幅を調整し、各アンテナ素子から放射される電波を空間において合成することによって、所望の方向の信号を強める技術である。
特許文献1~3には、関連する技術として、送信機に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/108103号
【文献】特開2006-279902号公報
【文献】特開2005-348235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送信機がビームフォーミングの技術を用いて所望の方向へ信号を送信するためには複数のアンテナ素子それぞれにおいて所望の信号が得られるように、複数装備されている送信機の振幅位相特性のばらつきを補正して同一化すべくキャリブレーションする必要がある。
【0005】
本発明の各態様は、上記の課題を解決することのできる送受信ベースバンド処理装置、通信システム、補正方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、送受信ベースバンド処理装置は、キャリブレーション用受信部にインパルスを入力するキャリブレーション用送受信部と、前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求める、フーリエ変換の機能を有するFFT解析部と、送受信フロントエンド処理部における送信部と、前記キャリブレーション用送受信部における受信部である前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、前記FFT解析部が求めた前記第2特性とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正するキャリブレーション処理部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、通信システムは、上記の送受信ベースバンド処理装置と、前記送受信ベースバンド処理装置にビームフォーミング信号を出力するベースバンド回路部と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、補正方法は、フーリエ変換の機能を有する送受信ベースバンド処理装置が実行する補正方法であって、キャリブレーション用受信部にインパルスを入力することと、前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求めることと、送受信フロントエンド処理部における送信部と、前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、求めた前記第2特性とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正することと、を含む。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、プログラムは、送受信ベースバンド処理装置が備えるコンピュータに、キャリブレーション用受信部にインパルスを入力することを、インパルス発生器に指示することと、フーリエ変換の機能を実現することと、前記キャリブレーション用受信部の出力でのインパルスの周波数スペクトラムを、予め記憶している入力した前記インパルスの周波数スペクトラムから減算することで、前記キャリブレーション用受信部の特性に応じた第2特性を求めることと、送受信フロントエンド処理部における送信部と、前記キャリブレーション用受信部との特性に応じた第1特性と、求めた前記第2特性とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各態様によれば、送信機を正しくキャリブレーションすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の各実施形態に共通する構成とキャリブレーションの原理を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による通信システムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による送受信ベースバンド処理装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態による通信システムの処理フローを示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態による通信システムの構成を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態による送受信ベースバンド処理装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態による通信システムの処理フローを示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態による通信システムの構成を示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態による送受信ベースバンド処理装置の構成を示す図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態による通信システムの処理フローを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による最小構成の送受信ベースバンド処理装置を示す図である。
【
図13】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
<各実施形態に共通する構成とキャリブレーションの原理>
本発明の各実施形態による通信システム1は、周期的に逐次キャリブレーションを行うことによって、長時間の運用下での経時変動や外気温変動により生じる各送受信機間の振幅・位相変動の差異を補正する通信システムである。通信システム1は、例えば、アクティブアンテナシステム(Active Antenna System:AAS)である。
各実施形態による通信システム1を個別に説明する前に、各実施形態による通信システム1に共通の構成と、各実施形態に共通するキャリブレーションの原理について説明する。
【0013】
(各実施形態に共通する構成)
まず、本発明の各実施形態による通信システム1に共通する構成について説明する。
通信システム1は、
図1に示すように、ベースバンド回路部10、通信機20を備える。通信システム1は、ビームフォーミングの技術を用いて通信を行うシステムであり、送信時にはビームフォーミング信号(以下、「BF信号」と記載)を時分割で送信するシステムである。
【0014】
ベースバンド回路部10は、アンテナから送信させたい所望のBF信号(後述する、式(1)における補正前BF信号(n)に相当)を生成する回路部である。ベースバンド回路部10は、生成したBF信号を通信機20にデジタルの光信号として出力する。
【0015】
通信機20は、
図1に示すように、光トランシーバ201、送受信ベースバンド処理装置202、送受信フロントエンド処理部203a1、203a2、・・・、203a(N-1)、203aN、アンテナ204a1、204a2、・・・、204a(N-1)、204aN、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207を備える。
【0016】
送受信フロントエンド処理部203a1、203a2、・・・、203a(N-1)、203aNを総称して送受信フロントエンド処理部203と呼ぶ。また、アンテナ204a1、204a2、・・・、204a(N-1)、204aNを総称してアンテナ204と呼ぶ。
【0017】
光トランシーバ201は、光信号と電気信号を相互に変換する。
例えば、光トランシーバ201は、ベースバンド回路部10から送信信号をデジタルの光信号として受けると、デジタルの光信号をデジタルの電気信号に変換する。光トランシーバ201によって電気信号に変換されたデジタルの送信信号は、送受信ベースバンド処理装置202に入力される。
また、例えば、光トランシーバ201は、送受信ベースバンド処理装置202から受信信号をデジタルの電気信号として受けると、デジタルの電気信号をデジタルの光信号に変換する。光トランシーバ201によって光信号に変換されたデジタルの受信信号は、ベースバンド回路部10に入力される。
【0018】
送受信フロントエンド処理部203のそれぞれは、送受信部2031、送信アンプ2032、受信アンプ2033、スイッチ2034を備える。
送受信部2031は、送受信ベースバンド処理装置202、送信アンプ2032の入力、受信アンプ2033の出力のそれぞれに接続される。スイッチ2034は、送信アンプ2032の出力、受信アンプ2033の入力、対応するアンテナ204のそれぞれに接続される。
【0019】
送受信部2031は、アナログの送信信号をアンテナ204から送信する処理を行う。
例えば、送受信部2031は、フィルタを備え、アナログの送信信号に対して所望の周波数成分とするフィルタ処理を行う。そして、送受信部2031は、送信信号を送信アンプ2032に出力する。
【0020】
また、送受信部2031は、接続されているアンテナ204からアナログの信号を受信する処理を行う。
例えば、送受信部2031は、フィルタを備え、アンテナ204から受信アンプ2033を介して受けたアナログの受信信号に対して所望の周波数成分とするフィルタ処理を行う。そして、送受信部2031は、受信信号を送受信ベースバンド処理装置202に出力する。
【0021】
送信アンプ2032は、送受信部2031から受けるアナログの送信信号を増幅して所望の振幅にする。
受信アンプ2033は、アンテナ204から受けるアナログの信号を増幅して所望の振幅にする。
【0022】
スイッチ2034は、送信時には、送信アンプ2032とアンテナ204とを接続する。また、スイッチ2034は、受信時には、受信アンプ2033とアンテナ204とを接続する。
【0023】
アンテナ204のそれぞれは、送信時には、送信アンプ2032の出力する電気信号である送信信号を電磁波として放出する。また、アンテナ204のそれぞれは、受信時には、受信した電磁波を電気信号として送受信フロントエンド処理部203に出力する。
【0024】
キャリブレーションネットワーク205は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、送受信フロントエンド処理部203のそれぞれが出力する信号を受ける。そして、キャリブレーションネットワーク205は、受けた信号のうち測定対象の信号を選択し、選択した信号をスイッチ206及びキャリブレーション用送受信部207を介して、送受信ベースバンド処理装置202に出力する。
【0025】
スイッチ206は、端子どうしが内部で接続されるまたは開放されることにより、キャリブレーションネットワーク205とキャリブレーション用送受信部207を、接続される状態または開放される状態にする。
【0026】
キャリブレーション用送受信部207は、キャリブレーション用に設けられた送受信部であり、アンテナ204それぞれが受信する信号を送受信ベースバンド処理装置202が読み取り可能なベースバンド周波数帯の信号に変換する受信部(キャリブレーション用受信部の一例)と、ベースバンド周波数帯の信号を送信周波数帯の信号に変換する送信部とを備える。
【0027】
送受信ベースバンド処理装置202は、アンテナ204を介した外部装置との通信の処理を行う処理部である。また、送受信ベースバンド処理装置202は、通信システム1におけるキャリブレーションについての信号処理を行う装置である。
【0028】
(キャリブレーションの原理)
次に、本発明の各実施形態に共通するキャリブレーションの原理について、
図1を用いて説明する。
通信システム1が、例えば、アクティブアンテナシステムである場合、まず、複数のアンテナ204それぞれに接続された各送受信フロントエンド処理部203の振幅及び位相の特性(以下、「振幅位相特性」と記載)をキャリブレーションして、各送受信フロントエンド処理部203の振幅位相特性の変動の差異を補正する必要がある。更に、送信出力絶対レベルが電波法や3GPP(3rd Generation Partnership Project)などで定められている。そのため、許容範囲内の安定した送信出力絶対レベルを実現し、ダウンリンクのエリアカバレッジを一定に維持することが重要である。
【0029】
具体的には、各送受信フロントエンド処理部203の振幅位相特性のキャリブレーションは、以下に示す原理に基づくものである。
まず、送受信ベースバンド処理装置202は、アンテナ204を介して信号を送受信していないときに、キャリブレーションネットワーク205の接続先を、例えば、送受信フロントエンド処理部203a1、203a2、・・・、203a(N-1)、203aNの順に切り替えて、経路1を通過する測定対象信号1、経路2を通過する測定対象信号2、・・・、経路(N-1)を通過する測定対象信号(N-1)、経路Nを通過する測定対象信号Nのそれぞれを順に測定する。
【0030】
ここで、経路1は、送受信フロントエンド処理部203a1の送信部、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207の受信部を通る経路である。また、経路2は、送受信フロントエンド処理部203a2の送信部、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207の受信部を通る経路である。経路(N-1)は、送受信フロントエンド処理部203a(N-1)の送信部、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207の受信部を通る経路である。経路Nは、送受信フロントエンド処理部203aNの送信部、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207の受信部を通る経路である。
【0031】
ここで、送受信ベースバンド処理装置202が実際に測定できるのは、測定対象信号1、測定対象信号2、・・・、測定対象信号(N-1)、測定対象信号Nのそれぞれである。測定対象信号1、測定対象信号2、・・・、測定対象信号(N-1)、測定対象信号Nのそれぞれは、送受信ベースバンド処理装置202が、経路1~Nのそれぞれの送受信フロントエンド処理部203に所定の振幅・位相の信号を入力したときに、キャリブレーション用送受信部207の受信部から出力される信号である。そのため、送受信ベースバンド処理装置202は、経路1~Nのそれぞれを介して信号を受けると、入出力信号の差分から、経路1~Nのそれぞれについて振幅位相特性を特定することができる。
【0032】
送受信ベースバンド処理装置202は、経路1と、経路1について特定した振幅位相特性と、を関連付けて記憶する。また、送受信ベースバンド処理装置202は、経路2と、経路2について特定した振幅位相特性と、を関連付けて記憶する。同様に、送受信ベースバンド処理装置202は、経路3~Nのそれぞれと、経路3~Nのそれぞれについて特定した振幅位相特性と、を関連付けて記憶する。
【0033】
一方で、送受信ベースバンド処理装置202が実際に補正したいのは、送受信フロントエンド処理部203a1の送信部の振幅位相特性、送受信フロントエンド処理部203a2の送信部の振幅位相特性、・・・、送受信フロントエンド処理部203a(N-1)の送信部の振幅位相特性、送受信フロントエンド処理部203aNの送信部の振幅位相特性である。
【0034】
つまり、送受信ベースバンド処理装置202が測定した測定対象信号1、測定対象信号2、・・・、測定対象信号(N-1)、測定対象信号Nのそれぞれには、補正の対象である送受信フロントエンド処理部203a1の送信部の振幅位相特性、送受信フロントエンド処理部203a2の送信部の振幅位相特性、・・・、送受信フロントエンド処理部203a(N-1)の送信部の振幅位相特性、送受信フロントエンド処理部203aNの送信部の振幅位相特性以外の振幅位相特性、すなわち、補正において誤差となるキャリブレーション用送受信部207の受信部の振幅位相特性CAL_RXが含まれている。
【0035】
そこで、本発明の各実施形態では、送受信ベースバンド処理装置202は、アンテナ204を介して信号を送受信していないときに、補正において誤差となるキャリブレーション用送受信部207の受信部の振幅位相特性を、測定対象信号1、測定対象信号2、・・・、測定対象信号(N-1)、測定対象信号Nそれぞれの測定とは非同期で測定する。
【0036】
送受信ベースバンド処理装置202は、測定した測定対象信号1、測定対象信号2、・・・、測定対象信号(N-1)、測定対象信号Nのそれぞれと、キャリブレーション用送受信部207の受信部の振幅位相特性と、に基づいて、通信機20がベースバンド回路部10から取得するBF信号を補正する。
具体的には、送受信ベースバンド処理装置202は、次の式(1)を用いてベースバンド回路部10から取得するBF信号に重み付けする補正を行う。
【0037】
【0038】
式(1)において、補正前BF信号(n)は、通信機20がベースバンド回路部10から取得するBF信号である。nは1~Nの整数である。
【0039】
第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)は、経路1~Nのそれぞれについての振幅位相特性である。
具体的には、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)は、通信システム1がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、キャリブレーションネットワーク205が接続先を送受信フロントエンド処理部203a1、203a2、・・・、203a(N-1)、203aNの順に切り替えて、送受信ベースバンド処理装置202が、経路1、経路2、・・・、経路(N-1)、経路Nそれぞれの入出力信号の差から特定した、振幅と位相についての特性を含む。なお、この第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)には、キャリブレーション用送受信部207の受信部の振幅位相特性CAL_RXが含まれている。例えば、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)は、(An)exp(-jθn)と表される。第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(1)は、経路1についての振幅位相特性である。第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(2)は、経路2についての振幅位相特性である。第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(N-1)は、経路(N-1)についての振幅位相特性である。第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(N)は、経路Nについての振幅位相特性である。jは虚数である。Anは、各経路の測定における出力信号の振幅と入力信号の振幅との差(すなわち、利得に関する情報)である。θnは、各経路の測定における出力信号の位相と入力信号の位相との差である。
【0040】
第2振幅位相特性CAL_RXは、キャリブレーションのために行うキャリブレーション用送受信部207の受信部についての測定において、入出力信号の差から特定した、振幅と位相についての特性を含む。
例えば、第2振幅位相特性CAL_RXは、(B)exp(-jβ)と表される。Bは、キャリブレーション用送受信部207の受信部における出力信号の振幅と入力信号の振幅との差(すなわち、利得に関する情報)である。βは、キャリブレーション用送受信部207の受信部における出力信号の位相と入力信号の位相との差である。補正後BF信号(n)は、補正前BF信号(n)を、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)=送受信フロントエンド処理部203an×振幅位相特性CAL_RXと、第2振幅位相特性CAL_RXとを用いて補正した後のBF信号である。
【0041】
送受信ベースバンド処理装置202は、キャリブレーションを行うときに、ベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)と、経路1~Nのそれぞれについて特定した第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)と、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に代入する。具体的には、経路1の送受信フロントエンド処理部203a1の送信部の補正を行う場合、ベースバンド回路部10から受けた経路1についての補正前BF信号(1)と、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(1)=送受信フロントエンド処理部203a1×振幅位相特性CAL_RXと、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に代入して得られる補正後BF信号(1)を、送受信フロントエンド処理部203a1の送信部に出力する。経路2の送受信フロントエンド処理部203a2の送信部の補正を行う場合、ベースバンド回路部10から受けた経路2についての補正前BF信号(2)と、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(2)=送受信フロントエンド処理部203a2×振幅位相特性CAL_RXと、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に代入して得られる補正後BF信号(2)を、送受信フロントエンド処理部203a2の送信部に出力する。経路(N-1)の送受信フロントエンド処理部203a(N-1)の送信部の補正を行う場合、ベースバンド回路部10から受けた経路(N-1)についての補正前BF信号(N-1)と、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(N-1)=送受信フロントエンド処理部203a(N-1)×振幅位相特性CAL_RXと、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に代入して得られる補正後BF信号(N-1)を、送受信フロントエンド処理部203a(N-1)の送信部に出力する。経路Nの送受信フロントエンド処理部203aNの送信部の補正を行う場合、ベースバンド回路部10から受けた経路Nについての補正前BF信号(N)と、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(N)=送受信フロントエンド処理部203aN×振幅位相特性CAL_RXと、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に代入して得られる補正後BF信号(N)を、送受信フロントエンド処理部203a(N)の送信部に出力する。
【0042】
したがって、補正後BF信号(n)が送受信フロントエンド処理部203anに入力されたときにアンテナ204のそれぞれから実際に送信される送信BF信号(n)は、次の式(2)のように表される。
【0043】
【0044】
式(2)において、送受信フロントエンド処理部203anは、送受信フロントエンド処理部203anのハードウェアとしての各時刻ごとの特性のことである。
ここで、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)は、その測定が行われたときの第2振幅位相特性CAL_RXと送受信フロントエンド処理部203anのハードウェアとしての特性を表している。また、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)の測定は、通信システム1がアンテナ204を介して通信を行っていないときに、常に行っている測定であり、第2振幅位相特性CAL_RXの測定は、キャリブレーション時に行われる測定である。つまり、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)の測定が行われるタイミングと第2振幅位相特性CAL_RXの測定が行われるタイミングとは、非同期ではあるが、経時的な特性の変化、または、温度変化に伴う特性の変化としては無視できる程度のタイミングの差とみなすことができる。そのため、式(2)における分子の(第2振幅位相特性CAL_RX × 送受信フロントエンド処理部203an)の項と、分母の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)の項とが約分される。その結果、式(2)における送信BF信号(n)は、補正前BF信号(n)×第2振幅位相特性CAL_RX÷振幅位相特性CAL_RXとなる。ここで、第2振幅位相特性CAL_RX=振幅位相特性CAL_RXとなる様に、第2振幅位相特性CAL_RXを求めることができれば、本除算項は相殺され、所望の補正前BF信号(n)のみが、所定の送信出力レベル絶対値を以て、最終的に各送信機からアンテナ204を介して放射されることとなる。逆に、比較対象の発明である特許文献「特開2005-348335号公報」等におけるキャリブレーション方法では、第2振幅位相特性CAL_RXを固定値として扱っている為、第2振幅位相特性CAL_RX≠振幅位相特性CAL_RXとなることで、全送信機の振幅位相ばらつきは同一化されるが、送信出力レベル絶対値は所定値から変化してしまう問題があった。従い、上述したように測定した第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)と、第2振幅位相特性CAL_RXとを式(1)に適用して補正前BF信号(n)を補正することで、式(2)に示すように送信BF信号(n)を、補正前BF信号(n)(すなわち、アンテナ204から送信させたい所望のBF信号)とすることができる。
以上が本発明の各実施形態に共通するキャリブレーションの原理である。
【0045】
<第1の実施形態>
(通信システム1の構成)
本発明の第1の実施形態による通信システム1は、
図2に示すように、ベースバンド回路部10、通信機20を備える。通信システム1は、温度センサを備え、通信機20の出荷直前の検査時などに、各温度における第2振幅位相特性CAL_RXの測定を予め行い、測定結果を補正値としてデータテーブルに記憶し、その補正値を用いてキャリブレーションを行う通信システムである。なお、
図2には、データテーブルを作成するときに用いられる入力検出装置30が示されている。入力検出装置30については、後述するデータテーブルTBL1の作成とともに説明する。
【0046】
通信機20は、光トランシーバ201、送受信ベースバンド処理装置202、送受信フロントエンド処理部203、アンテナ204、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207、温度センサ208、入力検出部209を備える。
【0047】
入力検出部209は、キャリブレーションを行うときに、送受信ベースバンド処理装置202が出力するキャリブレーション用の信号をスイッチ206の位置で検出する。入力検出部209は、検出結果を送受信ベースバンド処理装置202に出力する。
【0048】
温度センサ208は、通信機20における温度を測定する。温度センサ208は、温度の測定結果を送受信ベースバンド処理装置202に出力する。なお、温度センサ208は、通信機20において温度が変動したときに、キャリブレーションに最も影響を及ぼす通信機20における処理部、例えば、キャリブレーション用送受信部207の近傍に配置されることが望ましい。
【0049】
送受信ベースバンド処理装置202は、
図3に示すように、通信処理部2021、記憶部2022、キャリブレーション送受信部2023、温度情報取得部2024、キャリブレーション処理部2025、キャリブレーション信号生成部2026を備える。
【0050】
通信処理部2021は、アンテナ204を介した外部装置との通信の処理を行う。
例えば、通信処理部2021は、DA変換器を備え、ベースバンド回路部10から受けるデジタルの送信信号をアナログの送信信号に変換する。そして、通信処理部2021は、アナログの送信信号を送受信フロントエンド処理部203に出力する。
また、例えば、通信処理部2021は、AD変換器を備え、送受信フロントエンド処理部203から受けるアナログの受信信号をデジタルの受信信号に変換する。そして、通信処理部2021は、デジタルの受信信号を光トランシーバ201を介してベースバンド回路部10に出力する。
【0051】
記憶部2022は、送受信ベースバンド処理装置202が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部2022は、補正後BF信号(n)を特定するための式(1)を記憶する。また、例えば、記憶部2022は、通信機20における複数の温度と、複数の温度それぞれに対応する補正値とを関連付けた、
図4に示すようなデータテーブルTBL1を記憶する。
データテーブルTBL1における温度と補正値は、予め複数の温度について、第2振幅位相特性CAL_RXを測定して決定した補正値である。例えば、通信機20の出荷直前の検査時に、通信機20を恒温槽に入れ、温度センサ208の測定値が、例えば、-30度、0度、25度、50度になるように恒温槽の温度を変化させる。これらの各温度において測定した第2振幅位相特性CAL_RXが、各温度における補正値となる。
なお、各温度における第2振幅位相特性CAL_RXの測定の詳細については酷術する。
【0052】
キャリブレーション信号生成部2026は、キャリブレーション送受信部2023を介して、データテーブルTBL1を作成するための所定の振幅と位相を有する信号を、キャリブレーション用送受信部207に出力する。
【0053】
また、キャリブレーション信号生成部2026は、キャリブレーション送受信部2023を介して、送受信フロントエンド処理部203それぞれに所定の振幅と位相を有する信号を出力する。
例えば、キャリブレーション信号生成部2026は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、キャリブレーション送受信部2023を介して、ベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)を経路1~Nの順に出力する。
【0054】
温度情報取得部2024は、所定の時間ごとに、温度センサ208から通信機20における温度の測定結果を取得する。所定の時間とは、例えば、送受信ベースバンド処理装置202が、キャリブレーションの処理を行う時間間隔を示す時間(例えば、1ミリ秒~数100ミリ秒程度の時間)である。
温度情報取得部2024は、通信機20における温度の測定結果を取得する度に、その測定結果をキャリブレーション処理部2025に出力する。
【0055】
キャリブレーション処理部2025は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに送受信する信号に基づいて、通信機20におけるキャリブレーションの処理を行う。
例えば、キャリブレーション処理部2025は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、経路1~Nのそれぞれに所定の入力信号を送信し、それぞれの経路の出力信号を受信する。そして、キャリブレーション処理部2025は、入出力信号の関係から、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定する。また、キャリブレーション処理部2025は、所定の入力信号をキャリブレーション用送受信部207に送信し、送受信した信号に基づいて、第2振幅位相特性CAL_RXを特定する。そして、キャリブレーション処理部2025は、式(1)に、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)、第2振幅位相特性CAL_RXを適用して、補正前BF信号(n)を補正する。
【0056】
(データテーブルTBL1の作成)
次に、データテーブルTBL1の作成について説明する。
データテーブルTBL1の作成は、通信機20の出荷前、例えば、通信機20の出荷直前の検査時に行われる。入力検出装置30は、
図2に示すように、スイッチ206に接続されており、送受信ベースバンド処理装置202から送信される入力信号の振幅と位相を基準として、スイッチ206における信号を測定することができ、テータテーブルTBL1の作成が終わるとスイッチ206から外される装置である。
【0057】
通信機20の出荷前に、恒温槽に通信機20を入れ、恒温槽の温度を変化させる。そして、各温度において、以下のような測定を行い、補正値を特定する。
キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション送受信部2023を介して、データテーブルTBL1作成時に、所定の振幅と位相を有する入力信号を、キャリブレーション用送受信部207に送信する。
キャリブレーション用送受信部207の送信部は、送受信ベースバンド処理装置202から入力信号を受け、スイッチ206に出力信号を出力する。この出力信号は、キャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻る。
【0058】
入力検出装置30は、スイッチ206における信号を測定する。入力検出装置30は、測定した信号の振幅と位相とを示す測定結果を送受信ベースバンド処理装置202に送信する。
【0059】
キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション送受信部2023を介して、入力検出装置30から振幅と位相とを示す測定結果を受信する。
また、キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション送受信部2023を介して、スイッチ206からキャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻った信号を受信する。
【0060】
キャリブレーション処理部2025は、入力検出装置30から受信した振幅と位相とを示す測定結果と、キャリブレーション用送受信部207に送信した所定の入力信号との差から、キャリブレーション用送受信部207の送信部利得の振幅位相特性を算出する。
また、キャリブレーション処理部2025は、スイッチ206からキャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻った信号と、キャリブレーション用送受信部207に送信した所定の入力信号との差から、キャリブレーション用送受信部207の送信部と受信部とを合わせた利得の振幅位相特性を算出する。
そして、キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション用送受信部207の送信部と受信部とを合わせた利得の振幅位相特性を、キャリブレーション用送受信部207の送信部利得の振幅位相特性で減算した結果を、キャリブレーション用送受信部207の受信部利得の振幅位相特性である第2振幅位相特性CAL_RXと特定する。キャリブレーション処理部2025が特定した第2振幅位相特性CAL_RXが補正値である。
キャリブレーション処理部2025は、特定した補正値と、温度とを関連付けてデータテーブルTBL1に書き込む。データテーブルTBL1の一例は、
図4に示すデータテーブルである。
上述のように、データテーブルTBL1が生成される。
【0061】
(キャリブレーションの処理)
次に、通信システム1が行うキャリブレーションの処理について説明する。
ここでは、
図5に示す通信システム1の処理フローについて説明する。
なお、データテーブルTBL1については、予め生成され、記憶部2022に書き込まれているものとする。また、キャリブレーション処理部2025は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、経路1~Nのそれぞれについての入出力信号の関係から、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定しているものとする。また、キャリブレーション処理部2025は、温度センサ208が測定した通信機20における温度の測定結果を所定時間ごとに(例えば、1秒ごとに)受信しているものとする。
【0062】
ベースバンド回路部10は、補正前BF信号(n)を通信機20に出力する。
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受ける(ステップS1)。
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受けると、温度センサ208から受信した最新の温度の測定結果を特定する(ステップS2)。
キャリブレーションネットワーク205は、特定した温度に最も近い温度を、データテーブルTBL1において特定する。そして、キャリブレーションネットワーク205は、データテーブルTBL1において特定した温度に関連付けられている補正値を特定する(ステップS3)。
また、キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受けると、最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定する(ステップS4)。
キャリブレーションネットワーク205は、式(1)の補正前BF信号(n)にベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)を代入し、式(1)の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)に最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を代入し、式(1)の第2振幅位相特性CAL_RXに特定した補正値を代入して、補正後BF信号(n)を特定する(ステップS5)。キャリブレーションネットワーク205は、特定した補正後BF信号(n)を対応する送受信フロントエンド処理部203に出力する。
上記の処理をキャリブレーションネットワーク205がベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受ける度に行う。
以上が本発明の第1の実施形態による通信システム1のキャリブレーションの処理である。
【0063】
(第1の実施形態についてのまとめ)
以上、本発明の第1の実施形態による通信システム1について説明した。
アクティブアンテナシステム(Active Antenna System:AAS)内の複数のアンテナに接続された送受信機の振幅・位相特性のばらつきを、TDD(Time Division Duplex、時分割複信)モードでの運用下で補正・消去するためには、送受信機のキャリブレーションの実施が必要となる。
更に、通信システムの長時間の運用下での外気温変動や経時変動により生じる各送受信機間の振幅・位相変動の差異を補正するためには、周期的に逐次キャリブレーションを行い、それらの差異を除去することが重要となる。
通信システムにおいてキャリブレーションを実施することにより、複数の送受信機間の振幅及び位相のばらつきについて補正が行われ同一化が図られる。その際、通信システムにおける全送信機の送信出力絶対レベルが許容範囲に入っている必要がある。送信出力絶対レベルの許容範囲は、電波法や3GPP(Third Generation Partnership Project)により標準化された規格などで定められており、これ許容範囲を遵守する必要があり、安定した送信出力絶対レベルを実現し、DL(Down Link) Area Coverage(基地局やサーバなどのネットワークの中心から、周辺のユーザへ向かう回線のサービスエリア)を一定に維持することが重要となる。
通信システム1が備える通信機20において、送受信ベースバンド処理装置202は、送受信フロントエンド処理部203における送信部及びキャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第1信号と、キャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第2信号とを受けるキャリブレーション送受信部2023と、第1信号と第2信号とに基づいて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正するキャリブレーション処理部2025と、を備える。そして、キャリブレーション処理部2025は、通信機20における温度の測定結果に基づいて予め決定した補正値を用いて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正する。
この構成により、送受信ベースバンド処理装置202は、温度変化に伴う通信機20の振幅及び位相についての特性を補正することができ、各送受信フロントエンド処理部203間の振幅・位相変動の差異を除去することができる。
また、この構成により、式(2)において、第2振幅位相特性CAL_RX=振幅位相特性CAL_RXとなることで、所定の送信出力レベル絶対値にてビームフォーミング信号がアンテナから放射されることとなる為、送信出力絶対レベルの許容範囲を遵守し、安定した送信出力絶対レベルを実現し、DL Area Coverage(基地局やサーバなどのネットワークの中心から、周辺のユーザへ向かう回線のサービスエリア)を一定に維持することができる。
その結果、本発明の第1の実施形態による通信システム1では、各送受信フロントエンド処理部203の振幅及び位相の特性を同一化できると共に、送信出力絶対レベルも一定に維持することができる。
【0064】
<第2の実施形態>
(通信システム1の構成)
本発明の第2の実施形態による通信システム1は、
図6に示すように、ベースバンド回路部10、通信機20を備える。通信システム1は、周期的に逐次キャリブレーションを行うことによって、長時間の運用下での経時変動や外気温変動により生じる各送受信機間の振幅・位相変動の差異を補償する通信システムである。
具体的には、本発明の第2の実施形態による通信システム1は、送受信ベースバンド処理装置202からキャリブレーション用送受信部207の送信部へ送信する信号と、キャリブレーション用送受信部207の送信部を通過し、スイッチ206で折り返され、キャリブレーション用送受信部207の受信部を通過して送受信ベースバンド処理装置202に戻った信号との差異から送受信フロントエンド処理部203の特性の変化を逐次推定するシステムである。
【0065】
通信機20は、光トランシーバ201、送受信ベースバンド処理装置202、送受信フロントエンド処理部203、アンテナ204、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207、入力検出部209を備える。
【0066】
入力検出部209は、キャリブレーションを行うときに、送受信ベースバンド処理装置202が出力するキャリブレーション用の信号をスイッチ206の位置で検出する。入力検出部209は、検出結果を送受信ベースバンド処理装置202に出力する。
【0067】
送受信ベースバンド処理装置202は、
図7に示すように、通信処理部2021、記憶部2022、キャリブレーション送受信部2023、温度情報取得部2024、キャリブレーション処理部2025、キャリブレーション信号生成部2026を備える。
【0068】
記憶部2022は、送受信ベースバンド処理装置202が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部2022は、補正後BF信号(n)を特定するための式(1)を記憶する。
【0069】
(キャリブレーションの処理)
次に、通信システム1が行うキャリブレーションの処理について説明する。ここでは、
図8に示す通信システム1の処理フローについて説明する。なお、キャリブレーション処理部2025は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、経路1~Nのそれぞれについての入出力信号の関係から、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を常時、特定しているものとする。
【0070】
キャリブレーション処理部2025は、所定の振幅と位相を有する入力信号を、キャリブレーション用送受信部207に送信する。
キャリブレーション用送受信部207の送信部は、送受信ベースバンド処理装置202から入力信号を受け、スイッチ206に出力信号を出力する。この出力信号は、キャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻る。
【0071】
入力検出部209は、スイッチ206における信号を測定する。入力検出部209は、測定した信号の振幅と位相とを示す測定結果を送受信ベースバンド処理装置202に送信する。
【0072】
キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション送受信部2023を介して、入力検出部209から振幅と位相とを示す測定結果を受信する。
また、キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション送受信部2023を介して、スイッチ206からキャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻った信号を受信する。
【0073】
キャリブレーション処理部2025は、入力検出部209から受信した振幅と位相とを示す測定結果、すなわちキャリブレーション用送受信部207の送信部の振幅位相特性を、キャリブレーション用送受信部207の送受信部を通過した振幅位相特性から差し引くことで、第2振幅位相特性CAL_RXを算出する。
つまり、キャリブレーション処理部2025は、スイッチ206からキャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に戻った信号と、キャリブレーション用送受信部207に送信した所定の入力信号との差から、キャリブレーション用送受信部207の送信部と受信部とを合わせた利得の振幅位相特性を算出する。
そして、キャリブレーション処理部2025は、キャリブレーション用送受信部207の送信部と受信部とを合わせた利得の振幅位相特性から、キャリブレーション用送受信部207の送信部利得の振幅位相特性を減算した結果を、キャリブレーション用送受信部207の受信部利得の振幅位相特性である第2振幅位相特性CAL_RXと特定する(ステップS11)。
【0074】
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受ける(ステップS12)。
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受けると、最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定する(ステップS13)。
【0075】
キャリブレーションネットワーク205は、式(1)の補正前BF信号(n)にベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)を代入し、式(1)の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)に最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を代入し、式(1)の第2振幅位相特性CAL_RXに特定した第2振幅位相特性CAL_RXを代入して、補正後BF信号(n)を特定する(ステップS14)。キャリブレーションネットワーク205は、特定した補正後BF信号(n)を対応する送受信フロントエンド処理部203に出力する。
上記の処理を、通信機20の経時的な特性の変化や通信機20の温度変化が充分に小さいとみなすことのできる時間間隔ごとに行う。
以上が本発明の第2の実施形態による通信システム1のキャリブレーションの処理である。
【0076】
(第2の実施形態についてのまとめ)
以上、本発明の第2の実施形態による通信システム1について説明した。
本発明の第2の実施形態による通信システム1が備える通信機20において、送受信ベースバンド処理装置202は、送受信フロントエンド処理部203における送信部及びキャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第1信号と、キャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第2信号とを受けるキャリブレーション送受信部2023と、第1信号と第2信号とに基づいて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正するキャリブレーション処理部2025と、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を生成するキャリブレーション信号生成部2026と、を備える。そして、キャリブレーション送受信部2023は、キャリブレーション信号生成部2026が生成した入力信号をキャリブレーション用送受信部207の送信部に出力し、キャリブレーション用送受信部207の受信部が出力する第2信号を取得し、キャリブレーション処理部2025は、第1信号と、キャリブレーション信号生成部2026が取得した第2信号とに基づいて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正する。
この構成により、送受信ベースバンド処理装置202は、通信機20の経時的な特性の変化を含めたキャリブレーションを行うことができ、周期的に逐次キャリブレーションを行うことで、各送受信フロントエンド処理部203間の振幅・位相変動の差異を除去することができる。また、この構成により、式(2)において、第2振幅位相特性CAL_RX=振幅位相特性CAL_RXとなることで、所定の送信出力レベル絶対値にてビームフォーミング信号がアンテナから放射されることとなる為、送信出力絶対レベルの許容範囲を遵守し、安定した送信出力絶対レベルを実現し、DL Area Coverage(基地局やサーバなどのネットワークの中心から、周辺のユーザへ向かう回線のサービスエリア)を一定に維持することができる。
その結果、本発明の第2の実施形態による通信システム1では、送受信フロントエンド処理部203それぞれの振幅及び位相を同一化できると共に、送信出力絶対レベルも一定に維持することができる。
【0077】
<第3の実施形態>
(通信システム1の構成)
次に、本発明の第3の実施形態による通信システム1について説明する。
本発明の第3の実施形態による通信システム1は、
図9に示すように、ベースバンド回路部10、通信機20を備える。通信システム1は、送受信ベースバンド処理装置202がスイッチ206に入力されたインパルス信号を、キャリブレーション用送受信部207を介して受け取り、送受信ベースバンド処理装置202が受け取った信号を解析することによって、送受信フロントエンド処理部203の特性の変化を逐次推定し補正するシステムである。
【0078】
通信機20は、
図9に示すように、光トランシーバ201、送受信ベースバンド処理装置202、送受信フロントエンド処理部203、アンテナ204、キャリブレーションネットワーク205、スイッチ206、キャリブレーション用送受信部207、インパルス発生器210を備える。
【0079】
送受信ベースバンド処理装置202は、
図10に示すように、通信処理部2021、記憶部2022、キャリブレーション送受信部2023、キャリブレーション処理部2025、FFT解析部2027を備える。
【0080】
インパルス発生器210は、キャリブレーション処理のための入力信号であるインパルス信号を生成する。
インパルス発生器210は、生成したインパルス信号をスイッチ206からキャリブレーション用送受信部207に出力する。例えば、インパルス発生器210は、送受信フロントエンド処理部203の特性の変化を推定するために、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、逐次、インパルス信号をスイッチ206、キャリブレーション用送受信部207の受信部を介して送受信ベースバンド処理装置202に出力する。
【0081】
キャリブレーション送受信部2023は、キャリブレーション用送受信部207の受信部を介してインパルス発生器210から信号を受ける。キャリブレーション送受信部2023がキャリブレーション用送受信部207の受信部を介してインパルス発生器210から受ける信号は、インパルス発生器210が生成した信号に対して振幅の小さい(すなわち、波形の「なまった」)信号である。キャリブレーション送受信部2023は、受けたインパルス信号をFFT解析部2027に出力する。
【0082】
FFT解析部2027は、インパルス発生器210から波形のなまった信号を受ける。FFT解析部2027は、インパルス発生器210が生成するインパルス信号の振幅位相情報を含む周波数スペクトラムを予め記憶している。FFT解析部2027は、予め記憶しているインパルス信号の周波数スペクトラムから、キャリブレーション送受信部2023から受けた波形のなまった信号をFFT解析することで求まる周波数スペクトラムとの差を演算することで、キャリブレーション用送受信部207の受信特性(振幅位相周波数特性)を特定することができる。FFT解析部2027は、フーリエ変換結果をキャリブレーション処理部2025に出力する。
【0083】
また、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、キャリブレーション処理部2025は、本発明の第2の実施形態によるキャリブレーション処理部2025と同様に、経路1~Nのそれぞれに所定の入力信号を送信し、入力信号を送信した経路を介して出力信号を受信する。そして、キャリブレーション処理部2025は、送受信した入出力信号の差から、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定している。
【0084】
また、キャリブレーション処理部2025は、FFT解析部2027からフーリエ変換の結果を受ける。ここで、キャリブレーション処理部2025がFFT解析部2027から受けるフーリエ変換の結果は、各周波数における振幅位相特性を示すものである。そのため、キャリブレーション処理部2025は、フーリエ変換の結果からキャリブレーション用送受信部207の受信部の振幅位相特性である第2振幅位相特性CAL_RXを特定することができる。
そして、キャリブレーション処理部2025は、式(1)の補正前BF信号(n)にベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)を代入し、式(1)の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)に最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を代入し、式(1)の第2振幅位相特性CAL_RXに特定した第2振幅位相特性CAL_RXを代入して、補正後BF信号(n)を特定する。
【0085】
(キャリブレーションの処理)
次に、通信システム1が行うキャリブレーションの処理について説明する。ここでは、
図11に示す通信システム1の処理フローについて説明する。なお、キャリブレーション処理部2025は、送受信ベースバンド処理装置202がアンテナ204を介して信号を送受信していないときに、経路1~Nのそれぞれについての入出力信号の関係から、第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を常時、特定しているものとする。
【0086】
インパルス発生器210は、キャリブレーション処理のための入力信号であるインパルス信号を生成する(ステップS21)。インパルス発生器210は、生成したインパルス信号をスイッチ206からキャリブレーション用送受信部207に出力する。
【0087】
キャリブレーション用送受信部207の受信部は、インパルス発生器210からインパルス信号を受け、送受信ベースバンド処理装置202に出力信号を出力する。
【0088】
FFT解析部2027は、キャリブレーション送受信部2023を介して、キャリブレーション用送受信部207の受信部から出力信号を受信する。
【0089】
FFT解析部2027は、キャリブレーション用送受信部207の受信部から受信した信号の振幅位相情報を含む周波数スペクトラムを算出し、記憶しているインパルス発生器210が生成するインパルス信号の周波数スペクトラムから減算することで第2振幅位相特性CAL_RXを特定する(ステップS22)。
【0090】
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受ける(ステップS23)。
キャリブレーションネットワーク205は、ベースバンド回路部10から補正前BF信号(n)を受けると、最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を特定する(ステップS24)。
【0091】
キャリブレーションネットワーク205は、式(1)の補正前BF信号(n)にベースバンド回路部10から受けた補正前BF信号(n)を代入し、式(1)の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)に最新の第1振幅位相特性DL_CAL_Weight(n)を代入し、式(1)の第2振幅位相特性CAL_RXにFFT解析部2027が特定した第2振幅位相特性CAL_RXを代入して、補正後BF信号(n)を特定する(ステップS25)。キャリブレーションネットワーク205は、特定した補正後BF信号(n)を対応する送受信フロントエンド処理部203に出力する。
上記の処理を、通信機20の経時的な特性の変化や通信機20の温度変化が充分に小さいとみなすことのできる時間間隔ごとに行う。
以上が本発明の第3の実施形態による通信システム1のキャリブレーションの処理である。
【0092】
以上、本発明の第3の実施形態による通信システム1について説明した。
本発明の第3の実施形態による通信システム1が備える通信機20において、送受信ベースバンド処理装置202は、送受信フロントエンド処理部203における送信部及びキャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第1信号と、キャリブレーション用送受信部207における受信部の特性に応じた第2信号とを受けるキャリブレーション送受信部2023と、第1信号と第2信号とに基づいて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正するキャリブレーション処理部2025と、キャリブレーション送受信部2023が受ける第2信号と、予め記憶しているインパルス信号との差についてフーリエ変換するFFT解析部2027と、を備える。そして、キャリブレーション処理部2025は、第1信号と、フーリエ変換の結果とに基づいて、送受信フロントエンド処理部203における送信部に入力される入力信号を補正する。
この構成により、送受信ベースバンド処理装置202は、本発明の第2の実施形態による通信システム1と同様に、通信機20の経時的な特性の変化を含めたキャリブレーションを行うことができ、周期的に逐次キャリブレーションを行うことで、各送受信フロントエンド処理部203間の振幅・位相変動の差異を除去することができる。また、この構成により、式(2)において、第2振幅位相特性CAL_RX=振幅位相特性CAL_RXとなることで、所定の送信出力レベル絶対値にてビームフォーミング信号がアンテナから放射されることとなる為、送信出力絶対レベルの許容範囲を遵守し、安定した送信出力絶対レベルを実現し、DL Area Coverage(基地局やサーバなどのネットワークの中心から、周辺のユーザへ向かう回線のサービスエリア)を一定に維持することができる。
その結果、本発明の第2の実施形態による通信システム1では、送受信フロントエンド処理部203それぞれの振幅及び位相を同一化できると共に、送信出力絶対レベルも一定に維持することができる。
【0093】
本発明の実施形態による最小構成の送受信ベースバンド処理装置202について説明する。
本発明の実施形態による最小構成の送受信ベースバンド処理装置202は、
図12に示すように、キャリブレーション送受信部2023、キャリブレーション処理部2025を備える。
キャリブレーション送受信部2023は、送受信フロントエンド処理部における送信部及びキャリブレーション用送受信部における受信部の特性に応じた第1信号と、前記受信部の特性に応じた第2信号とを受ける。
キャリブレーション処理部2025は、前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記送信部に入力される入力信号を補正する。
送受信ベースバンド処理装置202がこのように構成されることにより、送信機を正しくキャリブレーションすることができる。その結果、送受信ベースバンド処理装置202は、送信機の送受信フロントエンド処理部の振幅及び位相を同一化できると共に、送信出力絶対レベルも一定に維持することができる。
【0094】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0095】
本発明の実施形態における記憶部2022、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部2022、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0096】
本発明の実施形態について説明したが、上述の送受信ベースバンド処理装置202、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図13は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、
図13に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の送受信ベースバンド処理装置202、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0097】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0098】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0100】
1・・・通信システム
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・ベースバンド回路部
20・・・通信機
30・・・入力検出装置
201・・・光トランシーバ
202・・・送受信ベースバンド処理装置
203、203a1、203a2、203a(N-1)、203aN・・・送受信フロントエンド処理部
204、204a1、204a2、204a(N-1)、204aN・・・アンテナ
キャリブレーションネットワーク・・・205
206、2034・・・スイッチ
207・・・キャリブレーション用送受信部
208・・・温度センサ
209・・・入力検出部
210・・・インパルス発生器
2021・・・通信処理部
2022・・・記憶部
2023・・・キャリブレーション送受信部
2024・・・温度情報取得部
2025・・・キャリブレーション処理部
2026・・・キャリブレーション信号生成部
2027・・・FFT解析部
2031・・・送受信部
2032・・・送信アンプ
2033・・・受信アンプ