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特許7192377キャビネットにおける引出しのオールロック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】キャビネットにおける引出しのオールロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/468 20170101AFI20221213BHJP
   E05C 9/08 20060101ALI20221213BHJP
   E05C 3/16 20060101ALI20221213BHJP
   E05B 47/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
E05B65/468
E05C9/08
E05C3/16
E05B47/00 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018192315
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060053
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148348(JP,A)
【文献】特開2018-109288(JP,A)
【文献】特開2018-105060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット本体に収容される上下複数段の引出しを、前記キャビネット本体又は前記引出しに備えた錠装置により、一括して引出し不能にロックしたオールロック状態にするオールロック装置であって、
前記引出しの夫々に設けられ、かつ、前記引出しの操作部の操作により作動する作動体と、
前記キャビネット本体側に設けられ、かつ、前記作動体の作動に連動して作動する連動作動体と、を備え、
前記錠装置により前記連動作動体の作動を規制することで前記オールロック状態にし、
前記錠装置により前記連動作動体の作動を規制しないことで前記オールロック状態を解除し、
前記作動体は、左右方向軸まわりに回動する回動部材を含み、
前記連動作動体は、前記キャビネット本体の側板により支持した、回動体及び昇降体からなり、
前記回動体は、左右方向の回動支軸により中間部を軸支され、前記回動部材の回動に連動して上下方向に回動し、
前記昇降体は、上下方向にスライド可能に支持され、前記回動体の回動に連動して昇降し、
前記錠装置のロック片の、前記回動体の回動方向と直交する方向への進出により、前記回動体の回動を規制する、
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【請求項2】
前記引出し側の前記回動部材と、当該回動部材に対応する、前記キャビネット本体側の前記回動体との関係が、前記上下複数段の引出しで共通である、
請求項に記載のキャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット本体に収容される上下複数段の引出しを、前記キャビネット本体又は前記引出しに備えた錠装置により、一括して引出し不能にロックするオールロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
ここで、特許文献1におけるキャビネットは、上段引出し22にダイヤル錠13を備えており、特許文献2におけるキャビネットは、上段引出しH1に電池式の電子錠B又は機械錠を備えている。
【0003】
一方、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、上下複数段の引出しに個別の電池式の電子錠を備えたものがある(例えば、特許文献3の図3参照)。このキャビネットは、電子錠のアクチュエータを駆動した際における消費電力を少なくして電池の消耗をなるべく少なくする必要があることから、前記アクチュエータの作動力(例えば、ソレノイドの吸引力)は弱いので、上下複数段の引出しに個別の電子錠を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-052298号公報
【文献】特開2018-109288号公報
【文献】特開2015-187345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、上下に隣接する引出し22,22の鏡板22a,22a間に亘って構成された連動機構Bにより上下の作動部12,12の動きを連動させる構成である。可動側の各引出し22に連動機構Bが組み込まれているので、引出し22とキャビネット本体(筐体21)の遊び部分のガタツキや寸法誤差等によって上下の引出し22,22,…に前後方向の位置ずれが発生することがある。このような位置ずれがあると、前記連動機構Bにより上下の作動部12,12の動きを連動させる動作が不確実になる場合がある。
よって、複数段の引出しを一括してロックしたオールロック状態にするための動作、及び/又は何れの引出しも引き出せるロック解除状態にするための動作の信頼性を向上するという観点で見ると改良の余地がある。
【0006】
また、特許文献1のようなキャビネットにおける引出しのオールロック装置において、特許文献3のような電池式の電子錠を用いる場合には、電池式の電子錠のアクチュエータの消費電力を小さくするように省電力化を図る必要があるので、全段の引出しを一括してロックできる機構を作動力が弱いアクチュエータで安定かつ確実に駆動できるようにする工夫が必要になる。
【0007】
特許文献2のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、各段の引出しのラッチ装置L1~L3における左右方向軸まわりに回動する操作杆2A~2Cの回動を阻止する、キャビネット本体Oの側板の内側に位置する連動操作部Fを含む連動機構(操作杆回動阻止機構E、及び操作杆回動阻止連動機構G)により構成される。
それにより、特許文献1のように上下に隣接する引出しの鏡板間に亘って構成された連動機構を用いるオールロック装置のように、上下の引出しに前後方向の位置ずれが発生した場合における連動動作が不確実になることがなく、前記連動機構により、上下の引出しに前後方向の位置ずれが発生した場合であっても連動動作を確実に行うことができるという特徴がある。
【0008】
その上、錠装置が電子錠であり、そのアクチュエータによりオールロック装置を作動する場合において、アクチュエータによりロック片を移動させるだけで、前記オールロック状態にするための動作、及び前記ロック解除状態にするための動作を行うことができる。
それにより、電子錠の省電力化を図ることができ、特に電子錠Bが電池式でアクチュエータMの作動力が弱い場合であっても、安定かつ確実な動作が可能になるという特徴がある。
【0009】
しかしながら、特許文献2のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、以下のような改良の余地がある。
【0010】
すなわち、特許文献2のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、その実施形態において、電子錠BのアクチュエータMを、引出しH1の左右方向中央に位置する引手P1の近くに配置しており、左右方向に長いロック片4を、引手P1の近くで左右方向へスライド可能に支持している。
そして、前記連動機構を構成する操作杆回動阻止機構Eを、アクチュエータMのプランジャと一体に動作する操作体30に連結された操作片29により操作されるロック片4の当止部4A、及び操作杆2Aの角軸が嵌合している第2クラッチ体32の当止部32Aにより構成している。それにより、アクチュエータMの出力部から操作杆回動阻止機構Eまでの構成部品が多いとともに、キャビネット本体の側板37の内側に位置する連動操作部Fから操作杆回動阻止機構Eまでの距離が大きくなっている。
その上、前記連動機構を構成する操作杆回動阻止連動機構Gにおける、電子錠Bを備える引出しH1における連動操作部Fから引出しH1に連結される部分の構造が複雑になっている。
【0011】
よって、製造コストが上昇するとともに、構成部品間のガタが蓄積して施錠動作の信頼性が低下するおそれがある。よって、製造コストを低減するとともに信頼性を一層向上するためには改良の余地がある。
【0012】
また、特許文献2のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、その実施形態において、連動操作部Fを、キャビネット本体O側の部材と引出しH1~H3側の部材により構成している。
連動操作部Fのキャビネット本体O側の部材は、キャビネット本体O側の昇降杆5、昇降杆5に固定された上下の連結体6A~6C、連結体6A~6Cから内方へ突出する突片7A~7C、昇降杆5の前方に位置する左右方向の回動支軸X1~X3まわりに上下方向へ回動する回動杆8A~8Cである。
連動操作部Fの引出しH1~H3側の部材は、回動杆8A~8Cの前端部の突片9A~9Cに当接する、左右方向軸まわりに回動可能な連動部材10A~10Cである。
【0013】
これらの部品から構成される連動操作部Fは、上段引出しH1と、中段引出しH2及び下段引出しH3とで、構造が異なっている。それにより、錠装置を備えた上段引出しH1を中段引出しH2又は下段引出しH3と入れ替えることはできない。よって、特にキャビネットの高さが高く上下に多段の引出しを備える場合等において、錠装置を備えた引出しを他の引出しと入れ替え可能にして使用者の使い勝手を向上するためには改良の余地がある。
【0014】
そこで、本発明は、特許文献2のようなキャビネットにおける引出しのオールロック装置において、製造コストを低減するとともに施錠動作の信頼性を一層向上すること、及び錠装置を備えた引出しを他の引出しと入れ替え可能にして使い勝手を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、キャビネット本体に収容される上下複数段の引出しを、前記キャビネット本体又は前記引出しに備えた錠装置により、一括して引出し不能にロックしたオールロック状態にするオールロック装置であって、
前記引出しの夫々に設けられ、かつ、前記引出しの操作部の操作により作動する作動体と、
前記キャビネット本体側に設けられ、かつ、前記作動体の作動に連動して作動する連動作動体と、を備え、
前記錠装置により前記連動作動体の作動を規制することで前記オールロック状態にし、
前記錠装置により前記連動作動体の作動を規制しないことで前記オールロック状態を解除し、
前記作動体は、左右方向軸まわりに回動する回動部材を含み、
前記連動作動体は、前記キャビネット本体の側板により支持した、回動体及び昇降体からなり、
前記回動体は、左右方向の回動支軸により中間部を軸支され、前記回動部材の回動に連動して上下方向に回動し、
前記昇降体は、上下方向にスライド可能に支持され、前記回動体の回動に連動して昇降し、
前記錠装置のロック片の、前記回動体の回動方向と直交する方向への進出により、前記回動体の回動を規制する(請求項1)。
【0016】
このような構成によれば、錠装置によりキャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制するか否かで、オールロック状態にして上下複数段の引出しを引出し不能にすること、及びオールロック状態を解除して上下複数段の引出しを引出し可能にすることを切り替えることができる。
【0017】
それにより、特許文献1のように上下に隣接する引出しの鏡板間に亘って構成された連動機構を用いるオールロック装置のように、上下の引出しに前後方向の位置ずれが発生した場合における連動動作が不確実になることがなく、キャビネット本体の側板の内側に位置する連動作動体を含む連動機構により、上下の引出しに前後方向の位置ずれが発生した場合であっても連動動作を確実に行うことができる。
よって、複数段の引出しを一括してロックしたオールロック状態にするための動作、及び何れの引出しも引き出せるロック解除状態にするための動作の信頼性を高めることができる。
【0018】
その上、錠装置によりキャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制するか否かにより、前記オールロック状態と前記ロック解除状態とを切り替えるので、特許文献2のように錠から操作杆回動阻止機構までの構成部品が多くならず、より簡単な構造になるとともに動作の確実性を向上できる。
よって、オールロック装置の製造コストを低減できるともに施錠動作の信頼性を一層向上できる。
【0020】
その上、連動作動体の構成が簡単になるとともに、錠装置が電子錠であり、そのアクチュエータによりオールロック装置を作動する場合において、アクチュエータによりロック片を、回動体の回動方向と直交する方向、例えば左右方向又は前後方向へ移動させるだけで、前記オールロック状態にするための動作、及び前記ロック解除状態にするための動作を行うことができる。
よって、電子錠の省電力化を図ることができ、特に電子錠が電池式でアクチュエータの作動力が弱い場合であっても、安定かつ確実な動作が可能になる。
【0021】
また、前記引出し側の前記回動部材と、当該回動部材に対応する、前記キャビネット本体側の前記回動体との関係が、前記上下複数段の引出しで共通であるのが一層好ましい実施態様である(請求項)。
【0022】
このような構成によれば、引出し側の作動体を構成する回動部材と、当該回動部材に対応する、キャビネット本体側の連動作動体を構成する回動体との関係が、前記上下複数段の引出しで共通であることから、錠装置を備えた引出しと、錠装置を備えない引出しとを、錠装置を除き共通の寸法及び共通の構造体とすることにより、錠装置を備えた引出しを他の引出しとを入れ替えることができる。それにより、特にキャビネットの高さが高く上下に多段の引出しを備える場合等において、錠装置を備えた引出しを他の引出しと入れ替えることにより、使用者の使い勝手を向上できる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置よれば、主に以下に示すような効果を奏する。
【0026】
(1)錠装置によりキャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制するか否かで、オールロック状態にして上下複数段の引出しを引出し不能にすること、及びオールロック状態を解除して上下複数段の引出しを引出し可能にすることを切り替えるので、複数段の引出しを一括してロックしたオールロック状態にするための動作、及び何れの引出しも引き出せるロック解除状態にするための動作の信頼性を高めることができる。
(2)キャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制又は前記規制を解除する機構が、より簡単な構造になるので、オールロック装置の製造コストを低減できるともに施錠動作の信頼性を一層向上できる
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置を備えたキャビネットを右上前方から見た斜視図であり、引出しを閉止した錠の施錠状態を示している。
図2】前記施錠状態における右側のラッチ装置まわりの要部拡大横断平面図である。
図3】前記施錠状態におけるキャビネットにおける引出しのオールロック装置を取り出して示す右上前方から見た斜視図である。
図4】操作杆回動阻止連動機構を取り出して示す左方から見た図であり、前記施錠状態を示している。
図5】前記施錠状態における操作杆回動阻止機構及び操作杆回動阻止連動機構を示す右上後方から見た要部拡大斜視図であり、キャビネット本体の側板を取り外した状態を示している。
図6】同じく要部拡大右側面図であり、キャビネット本体の側板を取り外した状態を示している。
図7】操作杆回動阻止機構及び操作杆回動阻止連動機構を取り出して示す左上後方から見た斜視図である。
図8】同じく部分分解斜視図である。
図9図7においてロック片を後退させた解錠状態を示す左上後方から見た斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置を備えたキャビネットを右上前方から見た斜視図であり、引出しを閉止した錠の解錠状態で上段の引出しの引手を引いた状態を示している。
図11】同状態におけるキャビネットにおける引出しのオールロック装置を取り出して示す右上前方から見た斜視図である。
図12】操作杆回動阻止連動機構を取り出して示す左方から見た図であり、引出しを閉止した錠の解錠状態で上段の引出しの引手を引いた状態を示している。
図13】本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置を備えたキャビネットを右上前方から見た斜視図であり、引出しを閉止した錠の解錠状態で中段の引出しの引手を引いた状態を示している。
図14】同状態におけるキャビネットにおける引出しのオールロック装置を取り出して示す右上前方から見た斜視図である。
図15】操作杆回動阻止連動機構を取り出して示す左方から見た図であり、引出しを閉止した錠の解錠状態で中段の引出しの引手を引いた状態を示している。
図16】上段引出しと中段引出しを入れ替えた状態を示す正面図である。
図17】錠装置を設けた引出しの引手まわりを示す右下前方から見た要部拡大斜視図である。
図18】機械錠により解錠する動作を示す右上前方から見た要部拡大斜視図である。
図19】回動体前端の操作端の下側に回動部材が入った誤操作状態を示す要部拡大右側面図であり、キャビネット本体の側板を取り外した状態を示している。
図20】前記誤操作状態における引手まわりを示す右上前方から見た要部拡大斜視図である。
図21】回動体前端の操作端の上側にロック片が進出した施錠不良状態を示す要部拡大右側面図であり、キャビネット本体の側板を取り外した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
本明細書においては、キャビネットの引出しを引出す方向を前、引出しをキャビネット本体に収容するように押し込む方向を後とし、後方へ向かった状態で左右を定義し、前方から見た図を正面図とする。
【0029】
本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、キャビネットの引出しの一つの鏡板に、錠装置の一例である電池式の電子錠を備える。よって、前記鏡板内に電池を内蔵している。電池式の電子錠は、認証部、アクチュエータ、及び電池を備える。
前記電子錠のアクチュエータは、引出しの左右方向において、キャビネット本体の側板の内側に位置する、後述する連動作動体に近づけた位置に設ける。
【0030】
電子錠の「電池」は、例えばマンガン乾電池やアルカリ乾電池等のような再充電できない一次電池であってもよいし、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池のような再充電できる二次電池であってもよい。
以下の実施の形態に示す電池式の電子錠は、引手に隣接して認証部を備えたものである。認証部は、暗証番号をテンキー若しくはタッチパネルで入力する方式だけでなく、指紋認証方式、又は、磁気カード、LSIカード若しくはスマートフォン等から電磁的に入力する方式等であってもよい。
【0031】
<キャビネット>
図1の右上前方から見た斜視図に示すキャビネット1は、左右の側板S,S、天板T及び背板Rを含むキャビネット本体Oと、キャビネット本体O内に収容される上下3段の引出しH1~H3を有する。
また、キャビネット1は、引出しH1~H3の飛出しを防止するラッチ装置L1~L3、及び本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置Aを備える。
引出しH1~H3は、鏡板I,…に操作部である引手P1~P3を備え、上段の引出しH1は、引手P1に隣接した認証部Nを有する、電池式の電子錠Bを備える。
電子錠Bのアクチュエータを含む機械構造部分は、キャビネット本体Oの右側の側板Sの内側に位置する連動作動体F側に、すなわち引出しH1の右端部に位置する。
【0032】
<ラッチ装置>
(係合状態)
図1の右上前方から見た斜視図、図2の要部拡大横断平面図、及び図3の右上前方から見た斜視図に示すように、引出しH1~H3を閉止した状態では、ラッチ装置L1~L3の引出し側のラッチ爪3A~3Cが、ラッチ装置L1~L3のキャビネット本体O側の係合部16A~16Cと係合した係合状態Cになる。それにより、引出しH1~H3の飛出しが防止される。
ラッチ爪3A~3Cは、図4の左方から見た図、及び図7の左上後方から見た斜視図に示す、上端部に左右方向内方へ屈曲する屈曲片14を有する上下方向の回動軸13まわりに回動し、弾性片15により係合部16A~16Cに向かう方向(左右方向外方)へ付勢される。
【0033】
(係合解除状態)
電子錠Bの解錠状態で引出しH1~H3の何れかの引手P1~P3を引くと、引手P1~P3に連結された作動体であり、左右方向軸まわりに回動可能に支持された操作杆2A~2Cが回動する。
【0034】
すなわち電子錠Bの解錠状態で上段引出しH1の引手P1を引くと、作動体である操作杆2Aが回動し、左方から見た図である図4のように操作杆2Aの左右両端部に取り付けられて後方へ突出する操作片17Aが、左方から見た図である図12のように下方へ回動する。それにより、屈曲片14が操作されて回動軸13が回動する。よって、上段引出しH1の左右のラッチ装置L1,L1において、左右のラッチ爪3A,3Aが左右方向内方へ回動し、ラッチ爪3A,3Aの係合部16A,16Aとの係合状態Cが解除された係合解除状態D(図10及び図11)になるので、上段引出しH1を引き出すことができる。
【0035】
また、電子錠Bの解錠状態で中段引出しH2の引手P2を引くと、作動体である操作杆2Bが回動し、左方から見た図である図4のように操作杆2Bの左右両端部に取り付けられて後方へ突出する操作片17Bが、左方から見た図である図15のように下方へ回動する。それにより、屈曲片14が操作されて回動軸13が回動する。よって、中段引出しH2の左右のラッチ装置L2,L2において、左右のラッチ爪3B,3Bが左右方向内方へ回動し、ラッチ爪3B,3Bの係合部16B,16Bとの係合状態Cが解除された係合解除状態D(図13及び図14)になるので、中段引出しH2を引き出すことができる。
【0036】
同様に、電子錠Bの解錠状態で下段引出しH3の引手P3を引くと、作動体である操作杆2C及び操作片17Cが回動するので、屈曲片14が操作されて回動軸13が回動する。よって、下段引出しH3の左右のラッチ装置L3,L3において、左右のラッチ爪3C,3Cの係合部16C,16Cとの係合状態Cが解除された係合解除状態Dになるので、下段引出しH3を引き出すことができる。
【0037】
<オールロック装置>
図1及び図3の右上前方から見た斜視図に示す本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置Aは、電子錠Bの施錠時Lにおいて、電子錠Bを設けた引出しH1の操作杆2Aの回動を阻止す操作杆回動阻止機構Eと、引出しH1以外の引出しH2,H3の操作杆2B,2Cの回動を阻止するように操作杆回動阻止機構Eと連動する操作杆回動阻止連動機構Gとを備える。
【0038】
(作動体、及び連動作動体)
オールロック装置Aは、引出しH1~H3の夫々に設けられ、かつ、引出しH1~H3の操作部の操作により作動する作動体と、キャビネット本体O側に設けられ、かつ、前記作動体の作動に連動して作動する連動作動体Fと、を備える。
ここで、前記作動体は、操作杆2A~2C、及び操作杆2A~2Cの右端部から後方へ突出する回動部材11A~11Cであり、前記連動作動体Fについては後述する。
【0039】
(操作杆回動阻止機構)
図5の右上後方から見た要部拡大斜視図、図6の要部拡大右側面図、並びに図7の左上後方から見た斜視図、及び図8の部分分解斜視図に示すように、操作杆回動阻止機構Eは、電子錠Bから右方へ突出し、操作杆2Aの右端部から後方へ突出する回動部材11Aの下側に進出しているロック片4である。ロック片4により、作動体である回動部材11Aが下方へ回動できないので、作動体である操作杆2Aの回動が阻止される。
【0040】
電子錠BのアクチュエータMは、認証部Nの認証が成功した解錠時UL(図10及び図13)に作動する。
アクチュエータMは、図7の左上後方から見た斜視図の状態から、図9の左上後方から見た斜視図の状態までロック片4を後退させる。このように、アクチュエータが作動している所定時間内は、ロック片4が後退していることから、作動体である回動部材11Aが下方へ回動できるので、作動体である操作杆2Aも回動できる。
前記所定時間外であるアクチュエータMの非作動状態では、ばねによりロック片4が進出し、施錠状態Lになる。
【0041】
このように、電子錠Bは、施錠状態Lでは、ばねの復元力によりロック片4が進出した状態を保持し、アクチュエータMは非作動状態である。そして、認証部Nの認証が成功した解錠時ULにおける所定時間(例えば10秒程度)のみ、アクチュエータMが作動状態になってロック片4が後退するので、省電力に寄与する。
【0042】
(操作杆回動阻止連動機構)
操作杆回動阻止連動機構Gは、キャビネット本体O側の連動作動体Fと、引出しH1~H3側の作動体である回動部材11A~11Cとからなる。
【0043】
(連動作動体)
図1及び図3の右上前方から見た斜視図、並びに図4の左方から見た図に示すように、連動作動体Fは、キャビネット本体Oの側板Sにより支持した、引出しH1~H3に対応する回動体8A~8C、及び昇降体5からなる。
回動体8A~8Cは、図5図8に示す回動支持体18を介して、左右方向の回動支軸X1~X3により中間部を軸支されており、回動部材11A~11Cの回動に連動して上下方向に回動する。
昇降体5は、上下方向にスライド可能に支持されており、回動体8A~8Cの回動に連動して昇降する。
【0044】
連動作動体Fを構成する回動体8A~8Cの前端部の操作端9A~9Cは、作動体操作杆2A~2Cの右端の回動部材11A~11Cの下側に位置し、回動体8A~8Cの後端部の連結端10A~10Cは、昇降体5の上下の連結体6A~6Cから内方(左方)へ突出する突片7A~7Cに係合する。
【0045】
(操作杆回動阻止連動機構の動作)
図5の右上後方から見た要部拡大斜視図、図6の要部拡大右側面図、及び図7の左上後方から見た斜視図に示すように、ロック片4が回動体8Aの操作端9Aの下側に進出している状態では、図4の左方から見た図に示す操作端9Aは下方へ移動できない。それにより回動体8Aが回動できないので、回動体8Aの連結端10Aに係合する昇降体5が上昇できない。
よって、昇降体5に連結端10B,10Cが係合している回動体8B,8Cも回動できないことから、回動部材11B,11Cが下方へ回動できないので、操作杆2B,2Cも回動できない。
【0046】
以上のとおり、操作杆回動阻止機構Eを構成するロック片4が回動体8Aの操作端9Aの下側に進出している電子錠Bの施錠時Lでは、操作杆回動阻止連動機構Gを構成する、引出しH1~H3側の回動部材11A~11C、及びキャビネット本体O側の連動作動体Fにより、操作杆2A~2Cの回動が阻止される。
よって、引出しH1~H3の引手P1~P3を引いても操作杆2A~2Cが回動しないことから、ラッチ装置L1~L3の係合状態Cを解除できないので、全段の引出しL1~L3を一括してロックしたオールロック状態となる。
すなわち、錠装置により連動作動体Fの作動が規制されるので、前記オールロック状態になる。
【0047】
操作杆回動阻止連動機構Gを構成する連動作動体Fは、キャビネット本体Oの側板Sにより支持した、前記のように作動する回動体8A~8C及び昇降体5からなるので、連動作動体Fの構成が簡単になる。
その上、電子錠Bのロック片4の進出により回動体8Aの回動を規制することにより前記オールロック状態にするので、電子錠Bの省電力化を図ることができ、特に電子錠Bが電池式でアクチュエータMの作動力が弱い場合であっても、安定かつ確実な動作が可能になる。
【0048】
(クラッチ機構)
図1及び図3の右上前方から見た斜視図に示すように、キャビネット1は、引出しH1~H3にクラッチ機構J1~J3を備える。
それにより、電子錠Bの施錠時Lにおけるオールロック状態において、引出しH1~H3の引手P1~P3を引いて過度な負荷が掛かっても、引手P1~P3が空転する。
よって、引手P1~P3を操作して操作杆2A~2Cから操作杆回動阻止連動機構Gに過度な力が作用することがないことから、操作杆回動阻止連動機構Gの破損を防止できるので、オールロック装置Aの信頼性が向上する。
【0049】
<解錠時の動作>
図9の左上後方から見た斜視図に示す電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、アクチュエータMが作動し、操作杆回動阻止機構Eを構成するロック片4が後退する。
それにより、錠装置により連動作動体Fの作動を規制しないので、前記オールロック状態が解除される。
【0050】
(上段引出しを引き出す動作)
前記オールロック状態が解除された解錠時ULに、図10及び図11の右上前方から見た斜視図のように上段引出しH1の引手P1を引くと、図12の左方から見た図のように操作杆2Aが回動し、前記<ラッチ装置>の説明のように、上段引出しH1の左右のラッチ装置L1,L1が係合解除状態Dになるので、図10の位置からから上段引出しH1を引き出すことができる。
【0051】
(中段引出しを引き出す動作)
前記オールロック状態が解除された解錠時ULに、図13及び図14の右上前方から見た斜視図のように、中段引出しH2の引手P2を引くと、図15の左方から見た図のように操作杆2Bが回動し、前記<ラッチ装置>の説明のように、中段引出しH2の左右のラッチ装置L2,L2が係合解除状態Dになるので、図13の位置からから中段引出しH2を引き出すことができる。
【0052】
(下段引出しを引き出す動作)
前記オールロック状態が解除された解錠時ULに、中段引出しH2を引き出す動作と同様に、下段引出H3の引手P3を引くと、前記<ラッチ装置>の説明のように、下段引出しH3の左右のラッチ装置L3,L3が係合解除状態Dになるので、下段引出しH3を引き出すことができる。
【0053】
<引出しの入れ替え>
図1図10、及び図13の右上前方から見た斜視図に示す本発明の実施の形態に係るキャビネット1における引出しのオールロック装置Aは、図4図12、及び図15の左方から見た図に示すように、引出し側の回動部材11A~11Cと、当該回動部材11A~11Cに対応する、キャビネット本体側の回動体8A~8Cとの関係が、上下複数段の引出しで共通である。その上、錠装置を備えた引出しH1と、錠装置を備えない引出しH2,H3とは、図1に示す、鏡板Iの寸法、引出しH1~H3を構成する部材(鏡板Iや側板V等)の取り合い、引手P1~P3、操作杆2A~2C及び回動部材11A~11Cの寸法及び配置等を共通にしている。すなわち、錠装置を備えた引出しH1と、錠装置を備えない引出しH2,H3とを、錠装置を除いて共通の寸法及び共通の構造体としている。
【0054】
それにより、錠装置を備えた引出しH1と他の引出しH2,H3とを入れ替えることができる。例えば、図16の正面図に示すように、上段引出しH1と中段引出しH2とを入れ替えることができる。
よって、特にキャビネット1の高さが高く上下に多段の引出しを備える場合等において、錠装置を備えた引出しを他の引出しと入れ替えることにより、使用者の使い勝手を向上できる。
【0055】
<機械錠による解錠>
図1の右上前方から見た斜視図、及び図7の左上後方から見た斜視図に示す電子錠Bの施錠状態Lにおいて、電池切れ等によりアクチュエータMに通電できなくなった場合、機械錠Kを用いてロック片4を移動させて解錠状態ULにすることができる。
すなわち、図17の右下前方から見た要部拡大斜視図に示す鍵穴20にキーを差し込んで回動操作すると、図18の右上前方から見た要部拡大斜視図に示す操作部材12が矢印Wのように左方へ移動する。それにより、操作片12Aにより当接部21が操作され、ロック片4も矢印Wのように左方へ移動するので、図9の左上後方から見た斜視図と同じ解錠状態ULになる。
【0056】
<引出し不能となる不具合を解消するための引出しの側板の高さ>
図1図10、及び図13の右上前方から見た斜視図に示す本発明の実施の形態に係るキャビネット1における引出しH1~H3の側板Vは、その上端が、図3図11、及び図14に示す、操作杆回動阻止連動機構Gを構成する作動体である引出し側の回動部材11A~11C、及び操作杆回動阻止連動機構Gを構成するキャビネット本体側の連動作動体Fの回動体8A~8Cよりも高い位置にある。それにより、引出しH1~H3内に収容したファイル、本又はノート等が倒れても、回動部材11A~11C及び回動体8A~8Cに接触しない。
よって、引出しH1~H3内に収容したファイル等が回動部材11A~11C及び/又は回動体8A~8Cに接触することにより、操作杆回動阻止連動機構Gが作動しなくなって引出しH1~H3が引き出せなくなる不具合が生じることはない。
【0057】
<防盗性低下を防止するためのガード部材>
図5の右上後方から見た要部拡大斜視図、及び図6の要部拡大右側面図に示すように、上段引出しH1の右側部には、操作杆回動阻止機構Eを構成するロック片4が進出する前方(右方)にガード部材19を設けている。それにより、引出しH1~H3を閉止した状態で、引出しH1の右側部後面とキャビネット本体Oの右側板Sの前面との隙間から棒状の物を挿入しても、ガード部材19により阻止されてロック片4を押すことができない。
よって、前記隙間から棒状の物を挿入して解錠するこができないことから、認証部Nで認証を受けることなく解錠できないので、防盗性の低下を防止できる。
【0058】
<誤操作状態から復帰させるための回動部材の形状>
図4図12、及び図15の操作杆回動阻止連動機構を取り出して示す左方から見た図、並びに図6の要部拡大右側面図に示すように、作動体である操作杆2A,2B,2Cの右端部から後方へ突出する、作動体である回動部材11A~11Cは、その中間部から下方へオフセットした形状を成す。
例えば上段引出しH1を開けた状態から閉じる際に、引手P1を少し引いた状態で閉じると、図19の要部拡大右側面図に示すように、連動作動体Fである回動体8Aの前端の操作端9Aの下側に、作動体である回動部材11Aが入ってしまうことがあり得る。
【0059】
そのような場合、上段引出しH1を閉じた際に、図20の右上前方から見た要部拡大斜視図に示すように、引手P1が前方へ突き出た状態のままになる。それにより、連動作動体Fである回動体8A前端の操作端9Aの下側に作動体である回動部材11Aが入った誤操作状態を認識できる。
このように誤操作状態を認識した使用者は、引出しH1を開いて再度閉じることにより、図6の要部拡大右側面図に示すように、連動作動体Fである回動体8Aの前端の操作端9Aの上側に作動体である回動部材11Aが位置する正常状態に容易に復帰させることができる。
【0060】
中段引出しH2及び下段引出しH3についても、前記上段引出しH1と同様の操作を行った際に、連動作動体Fである回動体8B,8C前端の操作端9B,9Cの下側に作動体である回動部材11B,11Cが入った誤操作状態が認識されるので、引出しH2,H3を開いて再度閉じることにより、連動作動体Fである回動体8B,8Cの前端の操作端9B,9Cの上側に作動体である回動部材11B,11Cが位置する正常状態に容易に復帰させることができる。
【0061】
<施錠不良状態から復帰させるためのロック片の形状>
前述のとおり、ロック片4は、解錠状態ULにおける前記所定時間のみアクチュエータMにより後退し、前記所定時間が過ぎれば、ロック片4はばねにより進出する。したがって、そのタイミングによっては、図21の要部拡大右側面図に示すように、連動作動体Fである回動体8Aの上方にロック片4が戻ってしまい、施錠不良が引き起こされる虞がある。
【0062】
ロック片4には、図5の右上後方から見た要部拡大斜視図に示すように、下方へ行くにしたがって左右方向内方へ(本実施の形態では左方へ)近づく傾斜面4Aがある。
したがって、前記施錠不良が生じたとしても、図21の矢印Yのように連動作動体Fである昇降体5が自重で下降すると、図21の矢印Zのように連動作動体Fである回動体8Aが回動し、操作端9Aが上昇することから、傾斜面4Aを有するロック片4をばねの付勢力に抗して後退させることができる
よって、前記施錠不良は一時的なものであり、図6の要部拡大右側面図に示す正常状態に自動的に復帰する。
【0063】
以上の実施形態においては、キャビネット1は、引出しH1~H3の飛出しを防止するラッチ装置L1~L3を備えている。そして、オールロック装置Aは、錠装置の施錠時Lには、操作杆回動阻止機構E(錠装置のロック片4)及び操作杆回動阻止連動機構G(キャビネット本体O側の連動作動体F、引出しH1~H3側の作動体である回動部材11A~11C)により、全段の引出しH1~H3の作動体である操作杆2A~2Cの回動を阻止し、それによりラッチ装置L1~L3の係合状態Cを保持している。
すなわち、キャビネット1が備えるラッチ装置L1~L3を用いてオールロック装置Aを構成している。
【0064】
本発明は、キャビネット1がラッチ装置L1~L3を備える構成に限定されるものではなく、本発明の対象であるキャビネット1は、ラッチ装置L1~L3を備えずに、オールロック機能を有するロックユニットを備えるものであってもよい。
前記ロックユニットは、例えば、その被操作体が操作されない状態では、引出しH1~H3を一括して施錠したオールロック状態になり、前記被操作体が操作された際には、前記オールロック状態を解除するものである。
【0065】
以上の説明においては、引出しH1~H3の操作部が引手P1~P3である場合を示したが、引出しH1~H3の操作部は、引手P1~P3に限定されるものではなく、プッシュボタン式の操作部や、鏡板Iを押すと引出しH1~H3が開くプッシュオープン方式の操作部等であってもよい。
また、以上の説明においては、キャビネット1の引出しH1~H3の一つに設ける錠装置が電子錠Bである場合を示したが、前記錠装置は、シリンダ錠やダイヤル錠等の機械錠であってもよい。
さらに、以上の説明においては、電子錠の電源が電池である例を示したが、本発明により省電力化を図ることができるので、電子錠の電源は、電池に限定されるものではなく、例えば商用電源や自家発電設備等の電源であってもよい。
さらにまた、以上の説明においては、錠装置を引出し側(例えば引出しH1)に設ける場合を示したが、錠装置はキャビネット本体O側に設けてもよい。例えば、キャビネット本体Oの框や天板T等に錠装置を設ける構成としてもよい。
【0066】
<キャビネットにおける引出しのオールロック装置の作用効果>
(1)錠装置によりキャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制するか否かで、オールロック状態にして上下複数段の引出しを引出し不能にすること、及びオールロック状態を解除して上下複数段の引出しを引出し可能にすることを切り替えるので、複数段の引出しを一括してロックしたオールロック状態にするための動作、及び何れの引出しも引き出せるロック解除状態にするための動作の信頼性を高めることができる。
(2)キャビネット本体側に設けた連動作動体の作動を規制又は前記規制を解除する機構が、より簡単な構造になるので、オールロック装置の製造コストを低減できるともに施錠動作の信頼性を一層向上できる。
(3)オールロック装置を備えたキャビネットにおいて、錠装置を備えた引出しと、錠装置を備えない引出しとを、錠装置を除き共通の寸法及び共通の構造体として、それらを入れ替え可能にすることにより、特にキャビネットの高さが高く上下に多段の引出しを備える場合等において、錠装置を備えた引出しを他の引出しと入れ替えることにより、使用者の使い勝手を向上できる。
【0067】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 キャビネット 2A,2B,2C 操作杆(作動体)
3A,3B,3C ラッチ爪 4 ロック片
4A 傾斜面 5 昇降体
6A,6B,6C 連結体 7A,7B,7C 突片
8A,8B,8C 回動体 9A,9B,9C 操作端
10A,10B,10C 連結端
11A,11B,11C 回動部材(作動体)
12 操作部材 12A 操作片
13 回動軸 14 屈曲片
15 弾性片 16A,16B,16C 係合部
17A,17B,17C 操作片 18 回動支持体
19 ガード部材 20 鍵穴
21 当接部
A オールロック装置 B 電池式の電子錠(錠装置)
C 係合状態 D 係合解除状態
E 操作杆回動阻止機構 F 連動作動体
G 操作杆回動阻止連動機構 H1,H2,H3 引出し
I 鏡板 J1,J2,J3 クラッチ機構
K 機械錠 L 施錠時(電子錠の施錠状態)
L1,L2,L3 ラッチ装置 M アクチュエータ
N 認証部 O キャビネット本体
P1,P2,P3 引手(操作部) R 背板
S 側板 T 天板
UL 解錠時(電子錠の解錠状態) V 引出しの側板
X1,X2,X3 回動支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
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図19
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図21