(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】センサホルダ部を有する保護カバー、及び前記保護カバーを備えた軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20221213BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20221213BHJP
B60B 35/02 20060101ALI20221213BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F16C33/76 A
F16C19/18
B60B35/02 L
F16C41/00
(21)【出願番号】P 2018199091
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2017221721
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜芳
(72)【発明者】
【氏名】上願 豊
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275200(JP,A)
【文献】特開2011-149836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00
F16C 33/00
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面が形成された内輪、及び内周面に外輪軌道面が形成された外輪、並びに、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面間を転動する転動体を有する軸受と、
前記軸受の、自動車の車輪側から車体に向かう軸方向に平行な方向である内方側の端部に位置して前記内輪に固定された、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べてなる磁気エンコーダと、
前記磁気エンコーダの磁極に対向して前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサと
を含む軸受装置に用いる、
前記軸受の前記内方側の端部を密封するように前記外輪に圧入される、カップ状の保護カバーであって、
インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなり、
前記本体は、
円盤部と、
前記磁気センサを保持するセンサホルダ部と
を含み、
前記円盤部
の前記内方側の面に、
前記内方側の面から前記センサホルダ部の側面に渡る、前記内方側の面に垂直な
、三角形状の一つの板状リブを設けてな
り、
前記板状リブの厚みは、0.5mm以上4.0mm以下であることを特徴とする、
センサホルダ部を有する保護カバー。
【請求項2】
請求項
1記載のセンサホルダ部を有する保護カバーを備えた軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の外輪に圧入されて磁気エンコーダを被うカップ状の保護カバーに関わり、さらに詳しくは、前記磁気エンコーダに対向する磁気センサを保持するセンサホルダ部を有する保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に広く普及している、車輪のロックを無くして効率良く安全に制動するアンチロックブレーキシステムは、例えば、回転速度検出装置(車輪速センサ)により各車輪の回転速度を検出し、制御装置により加速度及び減速度を演算するとともに車体速度とスリップ率を推定し、その結果に基づいてアクチュエータを駆動してブレーキ液圧の制御を行うものである。
このような回転速度検出装置を自動車のホイール支持用の転がり軸受(ハブベアリング)に備えた軸受装置も広く用いられており、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べた磁気エンコーダを軸受の軸方向の一端部の内輪に取り付け、保護カバーを軸受の軸方向の一端部の外輪に取り付けたものがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された発明の保護カバーである軸受キャップ33は、磁気センサを保持するセンサホルダ部を有する繊維強化合成樹脂製のキャップ本体34と、円筒部43及び外向フランジ部44からなる鋼板製の金属環35を備える。
特許文献2に記載された発明の保護カバーであるカバー12は、磁気センサを保持するためのセンサ取付部12bを備えた繊維強化合成樹脂製であり、特許文献1のような金属環はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-142348号公報
【文献】特開2006-275200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような保護カバーは、磁気センサを保持するためのホルダ挿入孔46は貫通孔ではなく有底であり、アキシャル型の磁気エンコーダと磁気センサとの間に仕切壁を有する密封タイプであるので、軸受キャップ33の内部空間への異物の進入を防止できる。
【0006】
特許文献1のような保護カバーの射出成形において、金属環35をインサート品として金型内にセットした状態で、金型内に充填された成形材料である溶融した繊維強化合成樹脂材料は、冷却されて固化する際に体積が収縮する現象である成形収縮を生じる。
したがって、特許文献1のような保護カバーの成形品にでは、前記成形収縮によるひけにより、磁気センサを保持するためのセンサ取付穴のまわりの円盤部(底板部)が中凹み変形してしまう。
よって、前記成形品における磁気センサが当接する座面を精度良く形成できないことから、前記座面を削って平坦にする後加工を行う必要があるので、製造コストが増大している。
【0007】
特許文献2のような保護カバーは、磁気センサを保持するためのセンサ取付穴(貫通孔12b2)は貫通孔であるので、アキシャル型の磁気エンコーダと磁気センサとの間に仕切壁を有する密封タイプではなく、カバー12の内部空間に異物が進入する恐れがある。
【0008】
特許文献2のような保護カバーは、金属環を備えていないので肉厚が大きく、金型に注入された合成樹脂の前記成形収縮を抑えるために、合成樹脂量を減らすべく肉盗み部を設けている。
すなわち、カバー12には、肉薄の略円形状の部分である仕切部12aの軸方向外側の端面12a1から軸方向外側へ突出した円筒状部12cと、端面12a1上に形成された4つのリブ12d1,12d2,12d3,12d4とを設けており、これらのリブ12d1~12d4、センサ取付部12b、及び円筒状部12cにより、所定の凹部13a,13a,13b,13bを形成している。
【0009】
前記肉盗み部である所定の凹部13a,13a,13b,13bにより、端面12a1上の合成樹脂量を減らすことができる。その結果、カバー12の射出成形の際に前記成形収縮に起因する変形がセンサ取付部12bの座面に生じるのを防ぐことが可能となり、前記後加工を行うことなく高精度な座面12b1を容易に形成できる、としている。
特許文献2のような保護カバーは、金属環を備えていない厚肉タイプであるとともに、前記所定の凹部を形成すべく、4つのリブ12d1~12d4、及び円筒状部12cを設ける必要がある。
【0010】
上述の背景に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなる保護カバーにおいて、センサ取付穴のまわりの円盤部の成形収縮によるひけに基づく中凹み変形を簡単な構造で効果的に抑制することにより、インサート成形後に磁気センサが当接する座面を削って平坦にする後加工を不要にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るセンサホルダ部を有する保護カバーは、前記課題解決のために、外周面に内輪軌道面が形成された内輪、及び内周面に外輪軌道面が形成された外輪、並びに、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面間を転動する転動体を有する軸受と、
前記軸受の、自動車の車輪側から車体に向かう軸方向に平行な方向である内方側の端部に位置して前記内輪に固定された、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べてなる磁気エンコーダと、
前記磁気エンコーダの磁極に対向して前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサと
を含む軸受装置に用いる、
前記軸受の前記内方側の端部を密封するように前記外輪に圧入される、カップ状の保護カバーであって、
インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなり、
前記本体は、
円盤部と、
前記磁気センサを保持するセンサホルダ部と
を含み、
前記円盤部の内方側の面に、
前記内方側の面から前記センサホルダ部の側面に渡る、前記内方側の面に垂直な、三角形状の一つの板状リブを設けてなり、
前記板状リブの厚みは、0.5mm以上4.0mm以下であることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
このような構成によれば、金属製環体をインサート品として金型内にセットした状態で、成形材料である溶融した繊維強化合成樹脂材料を金型内に充填してインサート成形を行った際に、板状リブの長手方向に沿って合成樹脂に添加された強化繊維が配向し、強化繊維の配向方向には収縮が小さくなる。
したがって、板状リブの長手方向への成形収縮が抑制される。
このように、円盤部の前記内方側の面に、前記内方側の面からセンサホルダ部の側面に渡る簡単な形状の板状リブのみを付加することにより、繊維強化合成樹脂製本体の円盤部の成形収縮によるひけに基づく中凹み変形を効果的に抑制できる。
よって、インサート成形品である保護カバーの磁気センサが当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コストを低減できる。
その上、前記板状リブを設けることにより、センサ取付穴を形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサをセンサ取付穴に挿入し難くなることがない。
前記板状リブが、三角形状リブで1つであるので、コンパクトな形状の三角形状リブにより、繊維強化合成樹脂材料の使用量を低減できる。
【0016】
本発明に係る軸受装置は、前記センサホルダ部を有する保護カバーを備えたものである(請求項2)。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明に係るセンサホルダ部を有する保護カバー、及び前記保護カバーを備えた軸受装置によれば、主に以下に示すような効果を奏する。
(1)インサート成形を行った際に、板状リブの長手方向に沿って合成樹脂に添加された強化繊維が配向し、強化繊維の配向方向には収縮が小さくなるので、板状リブの長手方向への成形収縮が抑制される。
(2)円盤部の前記内方側の面に、前記内方側の面からセンサホルダ部の側面に渡る簡単な形状の板状リブのみを付加することにより、繊維強化合成樹脂製本体の円盤部の成形収縮によるひけに基づく中凹み変形を効果的に抑制できる。
(3)インサート成形品である保護カバーの磁気センサが当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コストを低減できる。
(4)板状リブを設けることにより、センサ取付穴を形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサをセンサ取付穴に挿入し難くなることがない。
(5) 板状リブが、三角形状リブで1つであるので、コンパクトな形状の三角形状リブにより、繊維強化合成樹脂材料の使用量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーを備えた軸受装置の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーの斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーを成形する射出成形金型を示す、
図3の矢視X1-X1断面に相当する射出成形用金型の縦断面図である。
【
図7B】第2
参考例を示す底面図(内方側から見た図)である。
【
図8】第3
参考例を示す底面図(内方側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
なお、本明細書において、軸受装置Aの回転軸の方向を「軸方向」、軸方向に直交する方向を「径方向」という。
また、軸受11及び保護カバー1について、保護カバー1を軸受11に装着した状態で、自動車の車体から車輪側に向かう軸方向に平行な方向を「外方」、その反対方向を「内方」という。
【0020】
<軸受装置>
図1の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態に係る軸受装置Aは、外輪13に対して内輪12が回転する軸受11の他に、磁気エンコーダ16、保護カバー1、及び磁気センサ9、並びに軸受11の外方(矢印C1参照)側端部に配置したシール部材15等を備える。
【0021】
軸受11は、外周面に内輪軌道面12Aが形成された内輪12、及び内周面に外輪軌道面13Aが形成された外輪13、並びに、内輪軌道面12A及び外輪軌道面13A間を転動する転動体14,14,…等を有する。
磁気エンコーダ16は、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べたものであり、軸受11の内方(矢印C2参照)側端部に位置する支持部材17により内輪12に固定される。
保護カバー1は、カップ状であり、軸受11の内方側端部を密封するように外輪13に取り付けられ、磁気センサ9を保持するセンサホルダ部4を有する。
保護カバー1のセンサホルダ部4に装着された磁気センサ9は、仕切壁5Bを隔てて磁気エンコーダ16に対向し、磁気エンコーダ16の回転を検知する。
【0022】
保護カバー1により、磁気センサ9は、仕切壁5Bを隔てて磁気エンコーダ16に対向し、センサホルダ部4に厚み方向に貫通する貫通穴がないので、Oリング等のシール部材を組み込む必要がない。
また、保護カバー1により軸受11の軸方向の一端部が密封されるので、磁気エンコーダ16に小石や泥水等が当たらないことから磁気エンコーダ16の破損を防止できる。
さらに、保護カバー1により軸受11の内方側端部が密封されるので、磁気エンコーダ16の内方側のシール部材が不要になるため、摺動抵抗の低減により軸受11の回転トルクを低減できる。
さらにまた、保護カバー1がセンサホルダ部4を備えているので、磁気エンコーダ16と磁気センサ9とのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消できる。
【0023】
<保護カバー>
図1の縦断面図、
図2の斜視図、
図3の底面図、
図4の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態に係る保護カバー1は、インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体1A及び金属製環体1Bからなる。
ここで、本体1Aを成形する繊維強化合成樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリブチレンテレフタレート(PBT)等の合成樹脂に、ガラス繊維を20~70重量%、好ましくは40~60重量%含有したものを用いる。
本体1Aは、円盤部2、円筒部3、及びセンサホルダ部4からなり、磁気エンコーダ16及び磁気センサ9間を仕切る、他の部分よりも薄肉の仕切壁5Bを有する。
センサホルダ部4は、磁気センサ9を挿入するセンサ取付穴5Aが形成されたセンサ保持部5、及び磁気センサ9を取り付けるための取付ボルトBが螺合するナット10を保持するナット保持部6からなる。
【0024】
また、本体1Aは、円盤部2の内方側面2Aに、内方側面2Aからセンサホルダ部4のナット保持部6の側面(軸方向面)に渡る、内方側面2Aに垂直な板状リブRである三角形状リブ21を有する。
ここで、三角形状リブ21(板状リブR)の厚みは、0.5mm以上4.0mm以下とする。
三角形状リブ21(板状リブR)の厚みが0.5mm未満では、樹脂流動性が悪化する為、充填不良等が発生する可能性がある。
また、三角形状リブ21(板状リブR)の厚みが4.0mmを超える場合は、繊維の配向が乱れてしまい、三角形状リブ21(板状リブR)の長手方向に沿って強化繊維が配向することにより成形収縮を抑制するという本発明の効果が得られない。
環体1Bは、第1円筒部7、及び第1円筒部7の内方側端部から径方向外方へ延出する外向きフランジ部8からなる。
【0025】
<インサート成形>
次に、
図2ないし
図4に示す保護カバー1のインサート成形について、
図3の矢視X1-X1断面に相当する射出成形用金型の縦断面図である
図5を参照して説明する。
先ず、
図5の縦断面図に示すように、インサート品であるナット10を固定型18の支持軸20にセットし、インサート品である金属製環体1Bを可動型19にセットした後、射出成形機に取り付けられた固定型18及び可動型19を型締めする。
【0026】
次に、溶融した繊維強化合成樹脂材料を図示しないゲートから固定型18及び可動型19間のキャビティ内に充填する。
なお、ゲートの配置は、プラスチック射出成形用シミュレーションツールなどを用いて、仕切壁5Bへの充填性を考慮して適宜設定する。
次に、前記繊維強化合成樹脂材料を冷却・固化させた後、可動型19を開いてインサート成形品を取り出す。
【0027】
以上のようなインサート成形を経て製造されたインサート成形品である保護カバー1において、ナット10の周溝10Aに合成樹脂が入り込んでいるので、ナット10の抜け止めがされる。
また、金属製環体1Bの外方(矢印C1参照)側端部に円筒部3が回り込んでいるので、金属製環体1Bと繊維強化合成樹脂製本体1Aは機械的に結合する。
【0028】
<射出成形後の反り変形解析>
プラスチック射出成形用シミュレーションツールであるSimulation Moldflowを使用して射出成形後の反り変形解析を行った。
【0029】
(解析条件及び評価項目)
繊維強化合成樹脂の材料データをPA66にガラス繊維を50重量%添加したもの、金属製環体1Bの材料データをSPCC、ナット10の材料データを真鍮とした。
成形条件を、樹脂温度を290℃、金型温度を100℃、保圧を80MPaとし、以下の実施例及び比較例について、ナット10の傾斜を評価項目とした。
【0030】
(実施例及び比較例)
図2ないし
図4の保護カバー1において、三角形状リブ21の厚みが2mmのものを実施例とし、三角形状リブ21を無くしたものを比較例とした。
尚、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の軸方向長さ(厚み)は4mmである。
【0031】
(解析結果及び考察)
ナット10の傾斜は、比較例を100として、実施例は約43であった。
円盤部2の内方側面2Aからセンサホルダ部4(ナット保持部6)の側面に渡る三角形状リブ21のみを付加することにより、ナット10の傾斜を大幅に低減できることが分かる。
その理由は、金属製環体1Bをインサート品として金型内にセットした状態で、成形材料である溶融した繊維強化合成樹脂材料を金型内に充填してインサート成形を行った際に、板状リブRである三角形状リブ21の長手方向に沿って合成樹脂に添加された強化繊維が配向し、強化繊維の配向方向には収縮が小さくなることによる。
すなわち、三角形状リブ21の長手方向に配向している強化繊維の配向方向には収縮が小さくなることから、三角形状リブ21の長手方向への成形収縮が抑制されるので、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の成形収縮によるひけに基づく中凹み変形を効果的に抑制できる。
その上、三角形状リブ21にすることにより、繊維強化合成樹脂材料の使用量を低減できる。
【0032】
<変形例>
次に、いくつかの参考例について説明する。
【0033】
(第1
参考例)
図6Aの斜視図及び
図6Bの縦断面図に示すように、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の内方側面2Aからセンサホルダ部4に渡る、内方側面2Aに垂直な板状リブRは、四角形状リブ22であってもよく、三角形状及び四角形状以外であってもよい
。
【0034】
(第2
参考例)
図7Aの縦断面図及び
図7Bの底面図(内方側から見た図)に示すように、板状リブRの数は三つであってもよく、二つ又は四つ以上であってもよい。
【0035】
(第3
参考例)
図8の底面図(内方側から見た図)に示すように、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の内方側面2Aからセンサホルダ部4の側面に渡る、内方側面2Aに垂直な板状リブRは、センサホルダ部4のナット保持部6の配置によっては、内方側面2Aからセンサ保持部5の側面に渡るように形成してもよい。また、内方側面2Aからセンサ保持部5の側面に渡る板状リブR、及び内方側面2Aからナット保持部6の側面に渡る板状リブRの両方を設けてもよい。
【0036】
以上のような保護カバ-1の構成のように、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の内方側面2Aからセンサホルダ部4の側面に渡る簡単な形状の板状リブRのみを付加することにより、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の成形収縮によるひけに基づく中凹み変形を効果的に抑制できる。
よって、インサート成形品である保護カバー1の磁気センサ9が当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コトを低減できる。
その上、板状リブRを設けることにより、センサ取付穴5Aを形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサ9をセンサ取付穴5Aに挿入し難くなることがない。
【0037】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 保護カバー(インサート成形品)
1A 繊維強化合成樹脂製本体
1B 金属製環体(インサート品)
2 円盤部
2A 内方側面
3 円筒部
4 センサホルダ部
5 センサ保持部
5A センサ取付穴
5B 仕切壁
6 ナット保持部
7 円筒部
8 外向きフランジ部
9 磁気センサ
10 ナット(インサート品)
10A 周溝
11 軸受
12 内輪
12A 内輪軌道面
13 外輪
13A 外輪軌道面
14 転動体
15 シール部材
16 磁気エンコーダ
17 支持部材
18 固定型
19 可動型
20 支持軸
21 三角形状リブ
22 四角形状リブ
A 軸受装置
B 取付ボルト
C1 外方
C2 内方
P 溶融した繊維強化樹脂材料
R 板状リブ