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特許7192392ゴルフクラブの保持装置及びそれを用いたスイングロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ゴルフクラブの保持装置及びそれを用いたスイングロボット
(51)【国際特許分類】
   A63B 60/42 20150101AFI20221213BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20221213BHJP
【FI】
A63B60/42
A63B102:32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018200471
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020065735
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏幸
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-100989(JP,A)
【文献】特開平11-244443(JP,A)
【文献】特開2016-083070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00 - 60/64
A63B 69/00 - 69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブを保持するための保持装置であって、
第1軸の方向に並べられた少なくとも2つの保持部と、
前記少なくとも2つの保持部で保持されたゴルフクラブのシャフト軸中心線を前記第1軸に近づけるように付勢する位置矯正具とを含み、
前記2つの保持部のそれぞれは、前記第1軸の方向に延びる内穴を有する筒状部材と、前記内穴の内周面側に配された膨張部材とを含み、
前記膨張部材は、高圧流体が供給されることにより、前記内穴に差し込まれた前記ゴルフクラブのグリップの外周面を弾性的に保持するように膨張し、
前記位置矯正具は、前記少なくとも2つの保持部で前記グリップが保持されたときに、前記第1軸の方向において、前記少なくとも2つの保持部よりも、グリップエンド側に設けられている、
ゴルフクラブの保持装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの保持部に設けられたそれぞれの前記膨張部材は、互いに独立して前記高圧流体が供給可能に構成されている、請求項1記載のゴルフクラブの保持装置。
【請求項3】
前記位置矯正具は、前記グリップを、グリップ円周方向の複数の位置で押圧する押圧部を含む、請求項1又は2に記載のゴルフクラブの保持装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの保持部の前記膨張部材は、前記高圧流体が供給されたときに、前記第1軸の方向に互いに離間している、請求項1ないし3のいずれかに記載のゴルフクラブの保持装置。
【請求項5】
前記高圧流体の圧力は、0.60MPa以上である、請求項1ないし4のいずれかに記載のゴルフクラブの保持装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたゴルフクラブの保持装置を具えたゴルフクラブ用のスイングロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゴルフクラブの打撃試験等を行う際に、前記ゴルフクラブをスイングロボットなどの試験機に装着するためのゴルフクラブの保持装置及びそれを用いたスイングロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ゴルフクラブによるゴルフボールの打撃を連続的に行わせるために、スイングロボット等の試験機が種々提案されている。これらの試験機は、前記ゴルフクラブをゴルファーがスイングするように連続的に動かすことができる。
【0003】
前記試験機は、ゴルフクラブを装着するためのホルダーを具えている。前記ホルダーは、ゴルファーの手に相当するもので、ゴルフクラブのスイング中の抜け、ズレ及び回転等を防止する。前記ホルダーとしては、例えば、金属製の硬い固定治具により、ゴルフクラブのグリップを締め付けて保持するものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-083070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の試験機を用いてゴルフクラブの連続打撃試験を行った場合、予想よりも遥かに早い打撃数でゴルフクラブのシャフトが折損し、満足のいく試験を行うことができないという課題があった。
【0006】
前記シャフトの折損位置を調べたところ、前記試験機のホルダーが前記グリップを保持する位置の近傍、より具体的には、保持位置から僅かにゴルフクラブヘッド側の位置であることが分かった。一般に、ゴルフクラブの通常の使用条件では、上述のような位置でゴルフシャフトが折損することは極めて少ないことから、上記ゴルフクラブの折損は、想定外の位置に集中しているといえる。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、上述のようなゴルフシャフトの早期の折損を抑制しうるゴルフクラブの保持装置及びそれを用いたスイングロボットを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゴルフクラブを保持するための保持装置であって、第1軸の方向に並べられた少なくとも2つの保持部を含み、前記2つの保持部のそれぞれは、前記第1軸の方向に延びる内穴を有する筒状部材と、前記内穴の内周面側に配された膨張部材とを含み、前記膨張部材は、高圧流体が供給されることにより、前記内穴に差し込まれた前記ゴルフクラブのグリップの外周面を弾性的に保持するように膨張する、ゴルフクラブの保持装置である。
【0009】
本発明の他の態様では、前記2つの保持部に設けられたそれぞれの前記膨張部材は、互いに独立して前記高圧流体が供給可能に構成されても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記少なくとも2つの保持部で保持されたゴルフクラブのシャフト軸中心線を前記第1軸に近づけるように付勢する位置矯正具をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の他の態様では、前記位置矯正具は、前記少なくとも2つの保持部で前記グリップが保持されたときに、前記第1軸の方向において、前記少なくとも2つの保持部よりも、グリップエンド側に設けられてもよい。
【0012】
本発明の他の態様では、前記位置矯正具は、前記グリップを、グリップ円周方向の複数の位置で押圧する押圧部を含むことができる。
【0013】
本発明の他の態様では、前記少なくとも2つの保持部の前記膨張部材は、前記高圧流体が供給されたときに、前記第1軸の方向に互いに離間するように設けられても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記高圧流体の圧力は、0.60MPa以上とされても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、上記のいずれかに記載されたゴルフクラブの保持装置を具えたゴルフクラブ用のスイングロボットを含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
従来の試験機のホルダーでは、ゴルフボールの打撃時、ホルダーによるグリップ保持位置近傍で、ゴルフシャフトに曲げやねじれの応力が集中して前記シャフトの早期の折損が生じていたと推察される。これに対して、本発明の保持装置は、これまでのような金属製の硬い固定治具ではなく、膨張部材によってゴルフクラブのグリップの外周面を弾性的に保持する。したがって、上述の応力集中が大幅に緩和され、ひいては、連続打撃試験等においても、想定外の位置でのゴルフシャフトの早期の折損が防止される。
【0017】
また、本発明の保持装置によれば、少なくとも2つの保持部が第1軸の方向に並べられているため、例えば、ゴルファーによる実際のグリップ把持状況に、より近いゴルフクラブの保持状態を確立することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のゴルフクラブの保持装置が用いられたスイングロボットの全体斜視図である。
図2】本実施形態のゴルフクラブの保持装置の断面図である。
図3】膨張部材を膨らませたときの前記保持装置の断面図である。
図4】本実施形態のゴルフクラブの位置矯正具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。以下に詳述される実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容を理解するためのものであって、本発明は、それらの具体的な構成に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態のゴルフクラブの保持装置(以下、単に「保持装置」という。)10が用いられたゴルフクラブ用のスイングロボット1の全体斜視図である。
【0021】
図1のスイングロボット1には、ゴルフクラブ2が装着された状態が示されている。スイングロボット1は、ゴルファーのスイング動作を模擬し、ゴルフボール3を打撃するようにゴルフクラブ2を動かすことができる。図1には、ゴルフクラブ2がゴルフボール3を打撃直前の状態が表されている。
【0022】
スイングロボット1は、例えば、本体部4と、この本体部4に対して回転運動可能に設けられたアーム部5と、アーム部5に設けられた保持装置10とを具える。
【0023】
本体部4は、例えば、床面等に設置されており、その内部には、アーム部5を回転駆動するための電動機及び歯車列や巻掛け伝動手段等の動力伝達機構(いずれも図示省略)を具える。
【0024】
アーム部5は、例えば、本体部4に対して軸心A1周りに回転可能に設けられた第1アーム部5Aと、第1アーム部5Aに対して軸心A2周りに回転可能に設けられた第2アーム部5Bとを含む。したがって、アーム部5は、軸心A1及びA2のそれぞれの位置で曲がることができる。アーム部5の軸心A1は、例えば、スイング中のゴルファーの肩関節に、軸心A1は、例えば、スイング中のゴルファーの肘関節又は手首関節にそれぞれ対応する動きをゴルフクラブ2に実現させることができる。
【0025】
本実施形態において、第2アーム部5Bには、保持装置10が設けられている。詳細はは後述するが、保持装置10は、ゴルフクラブ2を保持することができる。よく知られているように、ゴルフクラブ2は、ゴルフクラブヘッド2aと、先端がゴルフクラブヘッド2aに固着されたゴルフシャフト2bと、このゴルフシャフト2bの後端に装着されたゴムやエラストマーから構成されたグリップ2cとを具える。保持装置10は、ゴルフクラブ2のグリップ2cをしっかりと保持し、アーム部5の回転運動中において、ゴルフクラブ2の抜けやズレ等を防止することができる。
【0026】
以上のように構成されたスイングロボット1は、本体部4に内蔵されている電動機を回転させることにより、そのトルクが動力伝達機構を経由してアーム部5に伝えられる。これにより、アーム部5は、軸心A1及びA2周りに回転運動をしながら、ゴルファーのスイングを模擬するようにゴルフクラブ2をスイングすることができる。
【0027】
図2には、本実施形態の保持装置10の断面図が示される。図2に示されるように、本実施形態の保持装置10は、第2アーム部5Bに固着されている。
【0028】
保持装置10は、例えば、保持装置10のフレーム部分をなす基部30を含む。
【0029】
基部30は、例えば、第2アーム部5B側に、軸状にのびる第1部分30aを有する。第1部分30aは、第2アーム部5Bに設けられた軸受部6に回転可能に支持されている。図示されていないが、第1部分30aの端部には、駆動装置が連携しており、第1部分30aを、その軸芯方向周りに所定の角度で回転させることができる。これにより、基部30全体が、前記軸芯方向周りで回転し、その位置調整が可能とされている。
【0030】
基部30は、例えば、第2アーム部5Bとは反対側に、第2部分30bを有する。第2部分30bは、例えば、内部に部材収容空間31を有する。この実施形態では、第2部分30bは、円筒状である。
【0031】
第2部分30bの部材収容空間31には、少なくとも2つの保持部11及び12が固定されている。本実施形態では、2つの保持部11及び12が設けられているが、3以上の保持部が設けられても良い。保持部11及び12は、第1軸G1の方向に並べられている。そして、保持装置10は、ゴルフクラブ2のシャフト軸中心線S1が、この第1軸G1に対応する(近似する)ようにゴルフクラブ2が装着されることが意図されている。
【0032】
本実施形態において、2つの保持部11及び12は、いずれも、同様の構成を具えている。以下の説明は、2つの保持部11及び12に適用されるものとして理解されなければならない。
【0033】
各保持部11及び12は、例えば、筒状部材20と、膨張部材22とを含む。
【0034】
筒状部材20は、例えば、円筒状であり、その内部には、第1軸G1の方向に延びる内穴Oが形成される。筒状部材20は、十分な強度を有するものとして、例えば、金属材料で構成される。
【0035】
膨張部材22は、筒状部材20の内穴Oの内周面側に固着されている。本実施形態の膨張部材22は、例えば、内穴Oの内周面の周方向に沿って環状にのびる扁平なチューブ体として構成されている。したがって、膨張部材22は、内穴Oを完全に閉塞することなく、ゴルフクラブ2のグリップ2cを挿入可能な空間を残して、前記内穴Oに配されている。
【0036】
膨張部材22は、ゴム、樹脂又はエラストマー等の弾性変形可能な材料からなる。また、膨張部材22には、内部に高圧流体(例えば、高圧空気)を供給可能な供給口22aを具える。各膨張部材22の供給口22aは、保持装置10の外部に設けられた高圧流体供給源P1及びP2と連通するように、各種の流路h1及びh2が構成されている。
【0037】
したがって、2つの保持部11及び12に設けられたそれぞれの膨張部材22は、本実施形態では、互いに独立して高圧流体が供給可能に構成される。また、高圧流体が内部に供給された膨張部材22は、内穴Oを閉じるように膨張する。すなわち、図3に示されるように、膨張部材22は、内穴Oに予め差し込まれたゴルフクラブ2のグリップ2cの外周面を弾性的に保持するように膨張する。これにより、ゴルフクラブ2のグリップ2cが、保持装置10にしっかりと保持される。
【0038】
従来の試験機のホルダーでは、ゴルフボールの打撃時、ホルダーによるグリップ保持位置近傍で、ゴルフシャフトに曲げやねじれによる応力などが集中してシャフトの早期の折損が生じていたと推察される。これに対して、本実施形態の保持装置10は、これまでのような金属製の硬い固定治具ではなく、膨張部材22によってゴルフクラブ2のグリップ2cの外周面を弾性的に保持することができる。すなわち、ゴルフボール打撃時、ゴルフシャフト2bに曲げ変形やねじり変形が生じるが、膨張部材22は、ゴルフシャフト2bの変位に対応して柔軟に変形することができる。したがって、本実施形態の保持装置10では、従来のように、グリップ2cの保持位置近傍でのゴルフシャフト2bへの応力集中が大幅に緩和される。これにより、本実施形態の保持装置10では、連続打撃試験等においても、想定外の位置でのゴルフシャフト2bの早期の折損を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態の保持装置10によれば、2つの保持部11及び12が第1軸G1の方向に並べられているため、ゴルファーによる実際のグリップ把持状況に近いゴルフクラブの保持状態を確立することも可能である。また、2つの保持部11及び12が互いに独立して高圧流体が供給可能に構成されている場合、2つの保持部11及び12に供給される高圧流体を互いに異ならせて、実際のゴルファーによるグリップ把持状況に、より近いゴルフクラブの保持状態を確立することも可能である。
【0040】
経験則上、ゴルファーの左右の手によるグリップの把持力に関し、グリップエンド側に位置する手の把持力のほうが大きいことが多々ある。したがって、例えば、保持部12に供給する高圧流体の圧力を、保持部11に供給する高圧流体の圧力よりも大きく調整することにより、実際のゴルファーによるグリップ把持状況を、忠実に再現することが可能である。これにより、実際のフィールドに非常に近い状況で、ゴルフクラブ2の打撃試験を行うことも可能になる。
【0041】
また、本実施形態の保持装置10は、2つの保持部11及び12が第1軸G1の方向に並べて設けられているため、第1軸G1の方向において、広い範囲でゴルフクラブ2のグリップ2cを保持することが可能である。加えて、保持部11及び12の一方がパンク等した場合であっても、保持部11及び12の他方がグリップ2cを保持することができる。したがって、ゴルフクラブ2の抜け等を防止することが可能である。
【0042】
本実施形態では、2つの保持部11及び12の膨張部材22は、高圧流体が供給されたときに、第1軸G1の方向に隙間を隔てて設けられる。このような態様では、ゴルファーの実際のグリップ把持状態により近づけることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の保持装置10は、膨張部材22への高圧流体の供給及び膨張部材22からの高圧流体の排出によって、ゴルフクラブ2の保持及び開放が容易に行える。したがって、本実施形態の保持装置10は、スイングロボット1へのゴルフクラブ2の装着及び取り外しに要する時間及び労力を大幅に軽減する。
【0044】
膨張部材22に供給される高圧流体の圧力は種々定め得るが、一例として、0.60MPa以上、より好ましくは0.68MPa以上とされるのが望ましい。高圧流体の圧力が小さすぎると、膨張部材22によるグリップ2cの保持力が低下するおそれがある。高圧流体の圧力の上限は、例えば、膨張部材22が破損しない程度に定めれば良い。
【0045】
好ましい態様では、保持部11及び12のそれぞれの膨張部材22がグリップ2Cと接触する範囲の第1軸G1に沿った長さは、ゴルファーの実際の使用状況に鑑み、例えば、50mm以上、好ましくは100mm以上、より好ましくは120mm以上とされるのが望ましい。なお、上限は、特に定めないが、複数の膨張部材22の前記長さの合計が、グリップ2Cの軸方向の長さの50%~200%程度とされるのが望ましい。
【0046】
保持装置10の他の態様では、ゴルフクラブ2に対する位置矯正具40をさらに含んでも良い。保持装置10は、上述のように、ゴルフクラブ2のグリップ2cを、膨張部材22によって弾性的に保持する。このため、内穴Oへのグリップ2cの差込状態によっては、膨張部材22を膨張させたときに、シャフト軸中心線S1が必ずしも第1軸G1に一致しない場合も想定され得る。位置矯正具40は、このような状態で保持されたゴルフクラブ2を、本来の意図された位置に矯正するのに役立つ。
【0047】
図2~3に示されるように、本実施形態の位置矯正具40は、例えば、基部30の第3部分30cに設けられている。第3部分30cは、基部30の第1部分30aと第2部分30bとの間に位置している。したがって、位置矯正具40は、保持部11及び12でグリップ2cが保持されたときに、第1軸G1の方向において、2つの保持部11及び12よりも、グリップエンド2e側に設けられている。なお、第3部分30cは、例えば、内穴Oと第1軸G1の方向に連続する空間を有する略円筒状である。
【0048】
本実施形態の位置矯正具40は、例えば、第3部分30cを第1軸G1に沿って移動可能なスライダ41と、このスライダ41の移動により、グリップ2cを押圧し又は開放する複数の押圧部42とを含む。
【0049】
スライダ41は、例えば、第3部分30cに対してねじ対偶で連係している。具体的には、スライダ41は環状体であり、その内周面には雌ねじ部41aが形成されている。スライダ41の雌ねじ部41aは、第3部分30cの外周面に形成された雄ねじ部43と噛み合っている。したがって、スライダ41を第1軸G1の周りで回動させることにより、スライダ41は、第1軸G1に沿って、第1部分30a側又は第2部分30b側に移動することができる。他の態様では、スライダ41は、第3部分30cとすべり対偶で組み合わされても良い。
【0050】
図2~3に示されるように、本実施形態では、第3部分30cには、第1軸G1の方向に延びるスリット状の複数の開口部45が形成されている。押圧部42は、この開口部45に配置されている。押圧部42は、例えば、膨張部材22よりも硬質の材料、例えば、金属材料からなる。
【0051】
押圧部42の一端側は、ピン46によって開口部45に対して揺動可能に固着されている。押圧部42は、揺動することにより、開口部45から第3部分30cの内側へ出没可能とされている。また、好ましい態様では、押圧部42は、図3のA-A線断面である図4に示されるように、グリップ円周方向の複数の位置に設けられており、特に好ましい態様では、押圧部42は、グリップ円周方向に等間隔で3個以上配置される。
【0052】
以上のように構成された位置矯正具40では、スライダ41が第1軸G1の一方側(本実施形態では第1部分30a側)に移動させられると、スライダ41が押圧部42と当接し、押圧部42は揺動して第3部分30cの半径方向内側へと押し込まれる。これにより、各押圧部42は、グリップ2cを、そのグリップ円周方向の複数の位置で押圧することができる。これにより、位置矯正具40は、ゴルフクラブ2を、そのシャフト軸中心線S1が第1軸G1に近づくように付勢することができる。
【0053】
本実施形態の位置矯正具40も、ゴルフクラブ2のグリップ2cを保持する機能を果たす。したがって、本実施形態の保持装置10は、ゴルフクラブ2の抜けや位置ずれなどをより確実に防止することができる。好ましい態様では、押圧部42のグリップ2cと接する側の表面には、凹凸部が設けられるのが望ましいい。これにより、各押圧部42は、グリップ2cとの物理的な係合作用が得られ、上記効果をさらに高め得る。
【0054】
なお、位置矯正具40は、膨張部材22に比べると、ゴルフクラブ2のグリップ2cをより強固にかつ実質的に変異不能に保持する。この点では、例えば、従来の試験機のホルダーのように、ゴルフボール打撃時、押圧部42の僅かにゴルフクラブヘッド側の位置において、シャフトの曲げやねじりが集中することが予想される。しかし、本実施形態では、位置矯正具40は、膨張部材22よりもグリップエンド2e側に設けられているため、上記シャフトの曲げやねじりは、膨張部材22によって適度に緩和され、ゴルフシャフト2bに従来のような局部的に大きな変形が生じることはない。
【0055】
したがって、この実施形態によれば、ゴルフクラブ2は、膨張部材22と位置矯正具40という異なる2つの手段でよりしっかりと保持され、スイング中の抜けや位置ずれが確実に防止されるのみならず、シャフトの早期折損を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、種々の態様で実施しうるのは、言うまでもない。
【実施例
【0057】
図1~4に示したスイングロボット(実施例1~3)と、当該実施例から膨張部材を具えた保持部を取り除き、位置矯正具のみでゴルフクラブのグリップを保持するようにしたスイングロボット(比較例)とが試作された。そして、各スイングロボットに同一のゴルフクラブを装着し、ヘッドスピード48m/sで連続的にゴルフボールを打撃する耐久試験(n=10)を行って、以下を評価した。なお、ゴルフクラブは、46インチのチタン合金製のウッドゴルフクラブヘッドであり、シャフトは、カーボンシャフト(フレックスR)である。なお、各保持部は、いずれも同一形状であり、保持部一つ当たりの膨張部材のグリップと接触する第1軸に沿った長さは50mmとされた。なお、実施例2及び3は、実施例1の位置矯正具の部分に、1又は2の膨張部材が配されたものである。
【0058】
<ゴルフシャフト折損時の打球数>
それぞれのスイングロボットにおいて、シャフト折損時の打撃数(n=10の平均値)が求められた。結果は、指数表示であり、比較例のシャフト折損時の打撃数を100とした。数値が大きいほど良好である。
【0059】
<ゴルフシャフトの折損位置>
それぞれのスイングロボットにおいて、グリップエンドからのシャフト折損位置までの距離(mm)をゴルフクラブの全長(mm)で除すことにより規格化された。結果は、指数表示であり、比較例のシャフト折損位置100とした。数値が大きいほど、グリップから離れた位置での折損を意味する。
テストの結果は表1に示される。
【0060】
【表1】
【0061】
テストの結果、実施例のスイングロボットでは、比較例に対し、ゴルフシャフトの早期の折損を抑制していることが確認できた。また、シャフトの折損位置に関し、実施例のものでは、比較例よりもゴルフクラブヘッド側で生じており、実際のフィールドで生じている損傷により近い状態が再現されていることも確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1 スイングロボット
2 ゴルフクラブ
2a ゴルフクラブヘッド
2b ゴルフシャフト
2c グリップ
10 保持装置
11、12 保持部
20 筒状部材
22 膨張部材
22a 供給口
40 位置矯正具
42 押圧部
G1 第1軸
O 内穴
図1
図2
図3
図4