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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】エンジンの消音装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20221213BHJP
   F01N 1/10 20060101ALI20221213BHJP
   F01N 1/08 20060101ALI20221213BHJP
   F01N 1/24 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F01N13/00 B
F01N1/10 Z
F01N1/08 N
F01N1/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018200522
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020067042
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 直紀
(72)【発明者】
【氏名】三島 基弘
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-13902(JP,A)
【文献】特開2000-248935(JP,A)
【文献】特開2010-270764(JP,A)
【文献】特開平09-209752(JP,A)
【文献】特開2011-122488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
F01N 1/10
F01N 1/08
F01N 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングの内部に、複数の小孔が形成され排気ガスを外部へ導出する排気導出管と、該排気導出管の管壁における該小孔が形成された部分を、該管壁との間に隙間を空けて外側から覆うホルダと、該隙間に配設された多孔質材からなる吸音部材と、を備えたエンジンの消音装置であって、
前記ホルダは、横断面形状が長軸を有する扁平形状であり、該長軸方向は、前記ケーシングの底部に向かって延びるように構成され、且つ、
前記ホルダにおける前記長軸の一端側には、該ホルダの内側と外側を連通する吸水孔が形成され
前記ホルダの軸心は、前記排気導出管の軸心よりも前記ケーシングの底部に近くなるように偏心し、又は、前記排気導出管の軸心と一致し、
前記多孔質材は、長繊維からなる繊維集合体で構成され、
前記吸音部材は、
前記排気導出管の管壁における前記ホルダ長軸の一端側に配設された第1吸音材と、
前記排気導出管の管壁及び前記第1吸音材を合わせてその周りを巻くように配設された第2吸音材と、を備えること特徴とするエンジンの消音装置。
【請求項2】
ケーシングと、該ケーシングの内部に、複数の小孔が形成され排気ガスを外部へ導出する排気導出管と、該排気導出管の管壁における該小孔が形成された部分を、該管壁との間に隙間を空けて外側から覆うホルダと、該隙間に配設された多孔質材からなる吸音部材と、を備えたエンジンの消音装置であって、
前記ホルダは、横断面形状が長軸を有する扁平形状であり、該長軸方向は、前記ケーシングの底部に向かって延びるように構成され、且つ、
前記ホルダにおける前記長軸の一端側には、該ホルダの内側と外側を連通する吸水孔が形成され
前記ホルダの軸心は、前記排気導出管の軸心よりも前記ケーシングの底部に近くなるように偏心し、又は、前記排気導出管の軸心と一致し、
前記ケーシングの底部は、一方に向かって下向きに傾斜しており、
前記ホルダは、前記長軸方向が、前記ケーシングの底部における前記一方に向かって延びるように構成されていることを特徴とするエンジンの消音装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ホルダは、2つの半筒状シェルを互いに対応する外向きの接合フランジで合わせて構成され、且つ、
前記接合フランジは、前記長軸の両端側に設けられており、
前記長軸の一端側の前記接合フランジ間に前記吸水孔が形成されていることを特徴とするエンジンの消音装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1つにおいて、
前記排気導出管を含む複数の消音用排気管が、前記ケーシング内において一方向に並列に配設されていることを特徴とするエンジンの消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの消音装置に関して種々の開示がされている。例えば、特許文献1では、内燃機関の排気系に接続される消音器として、アウトレットパイプの一部に複数の通気孔を形成すると共に、その一部との間に吸音材を充填した空間を存して、通気孔を覆うカバーをアウトレットパイプの外側に設け、カバーにシェル内の底部に残留する残留水を排出するための水抜孔を形成している。これにより、残留水を水抜孔から空間(吸音材)および複数の通気孔を経由させてアウトレットパイプに吸い込むようにしているので、アウトレットパイプ内への残留水の噴出が減衰されて水面の暴れ現象による騒音の発生が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-13902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、横断面円形状のアウトレットパイプの外周に、同じく横断面円形状のカバーを、吸音材を介して、アウトレットパイプと同心状に設けている。そして、シェルの下方(すなわち、シェルの底部側)に水抜孔が開設されている(特に、図6参照)。
【0005】
シェルの底部に残留する残留水が少ないとき(残留水の水位が低いとき)、該残留水をアウトレットパイプに吸込むためには、水抜孔の開口をシェルの底部に近づける必要がある。ここで、前述したように、アウトレットパイプとカバーは、共に横断面円形状で、互いに同心状に設けられているため、水抜孔の開口をシェルの底部に近づけようとすれば、アウトレットパイプごとシェルの底部に近づける必要がある。しかし、レイアウトの制約上、アウトレットパイプをシェルの底部に近づけることは困難な場合が多い。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ケーシング(シェル)の底部に溜まった残留水が少ない場合でも、排気導出管(アウトレットパイプ)をケーシングの底部に近づけることなく、残留水を排気導出管内に吸込むことができるエンジンの消音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ホルダ(カバー)の横断面形状を扁平形状とし、その長軸方向がケーシングの底部に向かって延びるようにし、且つ、該ホルダにおける該長軸の一端側に吸水孔を形成する。
【0008】
ここに開示するエンジンの消音装置は、ケーシングと、該ケーシングの内部に、複数の小孔が形成され排気ガスを外部へ導出する排気導出管と、該排気導出管の管壁における該小孔が形成された部分を、該管壁との間に隙間を空けて外側から覆うホルダと、該隙間に配設された多孔質材からなる吸音部材と、を備えたエンジンの消音装置であって、該ホルダは、横断面形状が長軸を有する扁平形状であり、該長軸方向は、該ケーシングの底部に向かって延びるように構成され、且つ、該ホルダにおける該長軸の一端側には、該ホルダの内側と外側を連通する吸水孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、ケーシングの底部に溜まった残留水は、多孔質材からなる吸音部材の毛細管現象によって、吸水孔を通って吸上げられる。吸上げられた残留水は、排気導出管の管壁の小孔から該排気導出管内に吸込まれる。そして、残留水は、排気導出管内を流れ、ケーシング外へ排出される。
【0010】
したがって、排気導出管をケーシングの底部に近づけることなく、吸水孔の開口をケーシングの底部に近づけることができる。つまり、ケーシングの底部に溜まった残留水が少ない場合(水位が低い場合)でも、残留水を排気導出管内に吸込むことができる。
【0011】
なお、ここで、「多孔質材」とは、毛細管現象によって水を吸上げることができる程度の多数の空隙を有するものをいう。したがって、例えば、スポンジのような多数の細孔を有する海綿状多孔質材、多数の短繊維又は長繊維からなる繊維集合体、その他、毛細管現象によって水を吸上げることができる程度の多数の空隙を有するものであれば、その構成はいかなるものであってもよい。
【0012】
一実施形態では、前記多孔質材は、長繊維からなる繊維集合体で構成されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、仮に、吸音部材における多孔質材が短繊維からなる繊維集合体で構成されている場合、排気導出管の管壁の小孔から流出する高温の排気ガスが、吸音部材における多孔質材の多数の空隙を通って、吸水孔の方へ吹抜けることで、短繊維が剥がれてしまうおそれがある。すなわち、多孔質材の空隙の数が減ってしまい、吸音部材の吸水性能が低減する。そこで、吸音部材における多孔質材を長繊維からなる繊維集合体で構成することにより、繊維が剥がれることによる吸音部材の吸水性能の低減を防止することができる。
【0014】
一実施形態では、前記吸音部材は、前記排気導出管の管壁における前記ホルダ長軸の一端側に配設された第1吸音材と、該排気導出管の管壁及び該第1吸音材を合わせてその周りを巻くように配設された第2吸音材と、を備えること特徴とする。
【0015】
ここで、横断面扁平形状のホルダと排気導出管の管壁との間の隙間は、排気導出管の中心軸方向から見たとき、ホルダの横断面と同様の扁平形状となっている。仮に、多孔質材が長繊維からなる繊維集合体で構成された吸音部材を、単に排気導出管の管壁の周りを巻くように配設しただけの場合、該吸音部材の外形は、排気導出管の中心軸方向から見て略円形状となってしまい、ホルダ長軸の一端側近傍にまで吸音部材を詰めにくい。そこで、排気導出管の管壁におけるホルダ長軸の一端側に第1吸音材を配設し、該排気導出管及び該第1吸音材を合わせてその周りを巻くように第2吸音材を配設することで、第1及び第2吸音材を組み合わせてなる吸音部材全体として、その外形が、排気導出管の中心軸方向から見て、該隙間と同じ扁平形状になりやすくなる。したがって、ホルダ長軸の一端側近傍、すなわち吸水孔近傍に、吸音部材(第2吸音材)を詰めることができ、ケーシングの底部に溜まった残留水を、該吸水孔近傍の吸音部材(第2吸音材)の毛細管現象によって、確実に吸上げることができる。
【0016】
一実施形態では、前記ホルダは、2つの半筒状シェルを互いに対応する外向きの接合フランジで合わせて構成され、且つ、該接合フランジは、前記長軸の両端側に設けられており、該長軸の一端側の該接合フランジ間に前記吸水孔が形成されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、排気導出管の周りに吸音部材を設けて、これを2つのシェルで挟むことにより、簡単に、排気導出管とホルダとの間に吸音部材を詰めた状態にすることができる。また、シェル同士の接合フランジを利用して吸水孔を形成することができ、しかも、この接合フランジを利用して吸水孔の開口をケーシングの底部に近づけることができる。
【0018】
一実施形態では、前記ケーシングの底部は、一方に向かって下向きに傾斜しており、前記ホルダは、前記長軸方向が、該ケーシングの底部における該一方に向かって延びるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、ケーシングの底部は、一方(例えば、車両前方)に向かって下向きに傾斜しているので、ケーシングの底部における該一方に残留水を集中させて溜めることができる。そして、ホルダにおける長軸の一端側(吸水孔)が、残留水が集中するケーシングの底部における該一方に向かって延びているので、より効率的に残留水を除去することができる。
【0020】
一実施形態では、前記排気導出管を含む複数の消音用排気管が、前記ケーシング内において一方向に並列に配設されていることを特徴とする。
【0021】
一般にケーシング内には、排気導出管を含む複数の消音用排気管を並列に配設せざるを得ない場合が多い。この場合、吸水孔の開口をケーシングの底部に近づけるために、仮に、ホルダの外径を全周に亘って大きくすると、ケーシングのレイアウト上の制約(寸法等の制約)から、ホルダが隣接する消音用排気管と干渉することになる。これに対して、ホルダの横断面形状を扁平形状とし、該ホルダにおける長軸の一端側(吸水孔)がケーシングの底部に向かって延びるような構成を採用したので、ホルダを隣接する消音用排気管と干渉させずに、吸水孔の開口をケーシングの底部に近づけることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホルダの横断面形状を扁平形状とし、その長軸方向がケーシングの底部に向かって延びるようにし、且つ、該ホルダにおける該長軸の一端側に吸水孔を形成したから、ケーシングの底部に溜まった残留水が少ない場合(水位が低い場合)でも、残留水を排気導出管内に吸込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る消音装置を備えた車両におけるエンジンの排気系統を示す概略構成図である。
図2図2は、メイン消音装置を上側から見た状態(但し、上部ケーシングを除いて内部を表している)を示す平面図である。
図3図3は、図2のIII‐III線における断面図である(但し、上部ケーシングを二点鎖線で表し、吸音部材を省略している)。
図4図4は、図3の第1排気導出管周辺を拡大して示す拡大断面図である(但し、吸音部材を模式的に二点鎖線で表している)。
図5図5は、第1排気導出管をホルダを取外した状態(但し、ホルダは、接合面が見えるように向きを反転させている)で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
<エンジンの排気系統の構成>
図1は、本実施形態に係る消音装置を備えた車両におけるエンジンの排気系統を示す。ここで、本明細書において、車両の前進後退方向を「前後方向」とし、前進側を「前側」、後退側を「後側」とする。また、車幅方向を「左右方向」とする。なお、「右側」及び「左側」は、車両を後側から見たときのものである。また、車高方向を「上下方向」とする。また、上流下流というときは、排気のフロー方向を基準としている。
【0026】
図1は、車両におけるエンジン1と、該エンジン1の排気装置10を示す。エンジン1は、複数のシリンダが車幅方向に並ぶように備えられた横置多気筒エンジンである。エンジン1は、車両前方のエンジンルームに備えられている。また、エンジン1は、前側に吸気装置(図示せず)が、後側に排気装置10(図1参照)が設けられている。すなわち、エンジン1は、前方吸気かつ後方排気のエンジンでもある。排気装置10は、エンジン1に接続し、車両下面に沿って後方に向かって延びている。
【0027】
排気装置10は、排気マニホールド11、排気管路12、触媒装置13,14、プリ消音装置15及びメイン消音装置2を備えている。排気マニホールド11は、エンジン1の下流側に備えられている。排気マニホールド11は、その上流端が、エンジン1の各シリンダヘッドの排気ポートに接続する分岐端である。排気マニホールド11は、各排気ポートから排出される排気ガスを、途中で一つの通路に集合させて、下流端が排気管路12に接続している。
【0028】
排気管路12は、排気ガスの通路となる管路であり、排気マニホールド11の下流端に接続され、後方に延びている。排気管路12には、上流側から順に、触媒装置13,14及びプリ消音装置15が組み込まれており、末端にはメイン消音装置2が接続されている。触媒装置13,14は、エンジン1から排出される排気中の有害成分を浄化する。
【0029】
プリ消音装置15及びメイン消音装置2は、エンジン1の排気系統において排気音を低減させるために組み込まれている。これら消音装置15、2のうち、上流側に配置されるプリ消音装置15は、排気音のうち、主に高周波成分を低減する機能を有している。プリ消音装置15は、例えば吸音型の消音装置を採用することができ、排気ガスが通る多孔質の内筒管と、これを覆う外筒管と、内筒管と外筒管との間に充填されたグラスウール等の吸音材とを備える。一方、メイン消音装置2は、排気音のうち、主に低中周波成分を低減する機能を有している。以下、このメイン消音装置2の構造について詳細に説明する。
【0030】
<メイン消音装置の全体構造>
図2は、メイン消音装置2を上側から見た状態(但し、後述する上部ケーシング21を除いて内部を表している)を示す平面図である。図3は、図2のIII‐III線における断面図(すなわち、右断面図)である。但し、後述する上部ケーシング21を仮想線で表し、後述する吸音部材90,94を省略している。メイン消音装置2は、ケーシング20を備える。ケーシング20は、上下二つ割構造であり、上側部分を構成する略箱型状の上部ケーシング21(図3参照)と、下側部分を構成する略箱型状の下部ケーシング22とが、それぞれの開口周縁に設けられたフランジ部21a,22a同士が互いに接合されることで、形成されている。
【0031】
ケーシング20は、内部に消音空間Sを区画する。ケーシング20は、図2,3に示すように、上下及び前後方向に比較的短く、左右方向(車幅方向)に比較的長い、扁平で全体として丸味を帯びた直方体状の形状である。これにより、ケーシング20内の消音空間Sも、左右方向に長手の偏平な隙間となっている。
【0032】
ケーシング20は、消音空間Sを区画する壁として、車両の前後方向に並ぶ前壁部23及び後壁部24と、左右方向に並ぶ右壁部25及び左壁部26と、上下方向に並ぶ上壁部27及び底壁部28とを備えている。前壁部23は、左右方向に直線的に延びる壁である。後壁部24は、上側から見て後方に向けて緩やかな凸形状となるように湾曲して、左右両側に湾曲部24a,24aを有する左右方向に延びる壁である。右壁部25及び左壁部26は、前後方向へ直線的に延びる短尺の壁であり、前壁部23と後壁部24とを、それぞれ右端側、左端側で繋いでいる。上壁部27は、前壁部23、後壁部24、右壁部25及び左壁部26からなる側壁で囲まれる空間の上面を塞いでいる。底壁部28は、該側壁で囲まれる空間の下面を塞いでいる。
【0033】
図3に示す通り、ケーシング20は、後側が流線型の形状を有している。すなわち、後壁部24は、その後方部分が緩やかに後方向に上向きに湾曲している。また、図3に示すように、ケーシング20の底壁部28が前傾している。具体的には、ケーシング20の底壁部(底部)28は、前側(一方)に向かって下向きに水平に対して傾斜角度αで、傾斜している。底壁部28をこのように傾斜させることで、詳細は後述するが、ケーシング20内の残留水Wが、ケーシング20の底壁部28における前側の水溜部28aに集中して溜まるようになっている。
【0034】
図2に示すように、下部ケーシング22の底壁部28には、前後方向に延びる複数の凹凸部29,29,…が形成されている。この凹凸部29は、ケーシング20内の消音空間Sに向けて凸(すなわち、ケーシング20外に向けて凹)となる溝型形状であり、ケーシング20の剛性を高める効果がある。同様に、上部ケーシング21の上壁部27にも、図示しないが、前後方向に延びる複数の凹凸部29,29,…が形成されている。
【0035】
図2に示すように、ケーシング20内には、消音用排気管として、排気導入管40,第1排気導出管50及び第2排気導出管60が配設されている。これら排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60は、それぞれ互いに独立した管である。
【0036】
排気導入管40は、図1に示すように、その上流端が排気管路12の下流端に接続している。具体的には、排気導入管40は、図2に示すように、その上流端部が左右方向の中央付近において前壁部23を貫通する直管部41で構成されている。この直管部41の上流端が、ケーシング20外において、排気管路12の下流端とフランジ結合している。直管部41は、前後方向に延びて、前壁部23に開設された貫通孔23aを貫通している。この貫通孔23aは、上部ケーシング21及び下部ケーシング22における前壁部23にそれぞれ形成された半円状の切欠きが、互いに反対向きに合わさることで円状に形成されている。また、貫通孔23aは、単に直管部41を貫通させるだけでなく、該直管部41を支持する支持部としての役割も果たしている。
【0037】
排気導入管40は、その中間部が曲管部42で構成されている。具体的には、曲管部42は、その上流端が直管部41の下流端に接続している。曲管部42は、その上流端から下流端にかけて、前後方向から左右方向に曲接している。排気導入管40の下流端部は、直管部43で構成されている。具体的には、直管部43は、その上流端が曲管部42の下流端に接続している。直管部43は、ケーシング20内の前壁部23近傍を左右方向に延びており、その下流端は、左壁部26近傍に位置している。直管部43の下流端には、排気出口44が開口している。すなわち、排気導入管40は、その下流端において、ケーシング20内部の消音空間S(より詳細には、後述する共鳴室S1)に連通している。
【0038】
直管部43は、図2に示すように、上流端から下流端にかけて、上流部43a,中間部43b及び下流部43cの3つに区分されている。中間部43bは、その管壁に複数の小孔45,45,…が全周に亘って開口している。すなわち、排気導入管40は、中間部43bの管壁に開口した複数の小孔45によって、内側と外側が連通している。なお、上流部43a及び下流部43cの管壁には、小孔45は開口していない。
【0039】
排気導入管40は、排気出口44がやや上を向くように、下流方向に向かって上向きに傾斜している。これは、消音空間S内で凝縮した排気中の水分(凝縮水)等がケーシング20の底壁部28に残留することがあり、その残留水Wが排気出口44を通じて排気導入管40内へ逆流しないようにするためである。
【0040】
排気導入管40の後側には、図2に示すように、第1排気導出管50が配設されている。第1排気導出管50は、その上流端部が直管部51で構成されている。直管部51は、左右方向に延びていて、排気導入管40の直管部43の後側に、該直管部43と前後方向に並列に配設されている。直管部51は、その上流端が、ケーシング20内における排気導入管40の直管部41よりも左右方向右側に位置している。直管部51の上流端には、排気入口52が開口している。すなわち、第1排気導出管50は、その上流端において、ケーシング20内部の消音空間S(より詳細には、後述する膨張室S2)に連通している。この排気入口52は、該排気入口52に排気ガスをスムースに取入れるために、ベルマウス状に内径が拡径されている。また、直管部51は、図2に示すように、上流端から下流端にかけて、上流部51a及び下流部51bの2つに区分されている。図3に示すように、上流部51aは管壁51cを有する。この管壁51cには、複数の小孔53,53,…が全周に亘って開口している。すなわち、第1排気導出管50は、上流部51aの管壁51cに開口した複数の小孔53によって、内側と外側が連通している。そして、管壁51cは、詳細は後述するが、その全周に亘って、吸音部材90を介して、ホルダ70に覆われている。なお、下流部51bの管壁には、小孔53は開口していない。
【0041】
第1排気導出管50の中間部は、曲管部54で構成されている。具体的には、曲管部54は、その上流端が、排気導入管40の下流端(排気出口44)に対して、左右方向やや右寄りの位置で、直管部51の下流端に接続している。曲管部54は、その上流部54aで、左右方向から左斜め後方向に曲接している。曲管部54は、その中間部54bで、左斜め後方向に延びている。曲管部54は、その下流部54cで、左斜め後方向から前後方向に曲接している。ここで、曲管部54は、中間部54bにおいて、後壁部24の左側の湾曲部24aを貫通している。具体的には、後壁部24の左側の湾曲部24aには、貫通孔24bが形成されており、該貫通孔24bを、曲管部54の中間部54bが貫通している。この貫通孔24bは、前述した前壁部23の貫通孔23aと同様、上部ケーシング21及び下部ケーシング22おける後壁部24の左側の湾曲部24aにそれぞれ形成された半円状の切欠きが、互いに反対向きに合わさることで円状に形成されている。また、貫通孔24bは、単に中間部54bを貫通させるだけでなく、該中間部54bを支持する支持部としての役割も果たしている。
【0042】
第1排気導出管50の下流端部は、直管部55で構成されている。具体的には、直管部55は、その上流端が曲管部54の下流端に、ケーシング20外で、接続している。直管部55は、ケーシング20外を後方向に延びており、その下流側(後側)は、該直管部55の他の部分よりも大径のテールパイプ55aで構成されている。テールパイプ55aの下流端(すなわち、第1排気導出管50の下流端)には、排気出口56が開口している。すなわち、第1排気導出管50は、その下流端において、ケーシング20外部の大気に連通している。
【0043】
第1排気導出管50の後側には、第2排気導出管60が配設されている。第2排気導出管60は、その上流端部が直管部61で構成されている。直管部61は、左右方向に延びていて、ケーシング20内における後壁部24近傍に配設されている。具体的には、直管部61は、排気導入管40の直管部43及び第1排気導出管50の直管部51と前後方向に並列に、該直管部51との間に、後述する直管部64が入る程度の隙間を空けて配設されている。直管部61は、その上流端が、ケーシング20内における後壁部24の右側の湾曲部24a付近で第1排気導出管50の上流端(排気入口52)と左右方向に略同じ位置に位置する。直管部61の上流端には、排気入口62が開口している。すなわち、第2排気導出管60は、その上流端において、ケーシング20内部の消音空間S(より詳細には、後述する膨張室S2)に連通している。この排気入口62は、該排気入口62に排気をスムースに取入れるために、ベルマウス状に内径が拡径されている。
【0044】
第2排気導出管60の上流側は、曲管部63で構成されている。具体的には、曲管部63は、その上流端が、ケーシング20内における後壁部24近傍の左右方向中央付近で、直管部61の下流端に接続している。曲管部63は、その上流端から下流端にかけてUターンするように曲接しており、その下流端が、直管部64の上流端に接続している。直管部64は、第2排気導出管60の中間部を構成し、直管部61と第1排気導出管50の直管部51との間を、該直管部51,61と前後方向に並列に、左右方向に延びている。
【0045】
第2排気導出管60の直管部64は、図2に示すように、上流端から下流端にかけて、上流部64a、中間部64b及び下流部64cの3つに区分されている。中間部64bは、第1排気導出管50の直管部51の上流部51aと左右方向に略同じ位置に位置し、その管壁には、図3に示すように、複数の小孔65,65,…が全周に亘って開口している。すなわち、第2排気導出管60は、中間部64bの管壁に開口した複数の小孔65によって、内側と外側とが連通している。そして、該管壁は、詳細は後述するが、その全周に亘って、吸音部材94を介して、ホルダ81に覆われている。なお、上流部64a及び下流部64cの管壁には、小孔65は開口していない。
【0046】
第2排気導出管60の下流側は、曲管部66で構成されている。具体的には、曲管部66は、その上流端が、ケーシング20内における後壁部24の右側の湾曲部24a近傍で、直管部64の下流端に接続している。曲管部66は、その上流部66aで、左右方向から右斜め後方向に曲接している。曲管部66は、その中間部66bで、右斜め後方向に延びている。曲管部66は、その下流部66cで、右斜め後方向から前後方向に曲接している。ここで、曲管部66は、中間部66bにおいて、後壁部24の右側の湾曲部24aを貫通している。具体的には、後壁部24の右側の湾曲部24aには、貫通孔24bが形成されており、該貫通孔24bを、曲管部66の中間部66bが貫通している。この貫通孔24bは、単に中間部66bを貫通させるだけでなく、該中間部66bを支持する支持部としての役割も果たしている。
【0047】
第2排気導出管60の下流端部は、直管部67で構成されている。具体的には、直管部67は、その上流端が曲管部66の下流端に、ケーシング20外で、接続している。直管部67は、ケーシング20外を後方向に延びており、その下流側(後側)は、該直管部67の他の部分よりも大径のテールパイプ67aで構成されている。テールパイプ67aの下流端(すなわち、第2排気導出管60の下流端)には、排気出口68が開口している。すなわち、第2排気導出管60は、その下流端において、ケーシング20外部の大気に連通している。
【0048】
第1排気導出管50及び第2排気導出管60は、排気出口56,68がやや下を向くように、下流方向に向かって下向きに傾斜している。これは、第1及び第2排気導出管50,60内に入った残留水W等の水や異物等を、下向きの傾斜に沿って下流方向に流し、排気出口56,68からケーシング20外に排出するためである。
【0049】
図3に示すように、排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60は、その直管部43,51,61,64(第1排気導出管50を含む複数の消音用排気管)が、略同じ高さに位置し、ケーシング20内において前後方向(一方向)に並列に配設されている。前述したように、ケーシング20は、上下及び前後方向に比較的短く、左右方向に比較的長い、扁平な直方体状の形状であるので、配管レイアウトは制限され、このような、左右方向に延ばした配管を、前後方向に並列に配設するものにせざるを得ない場合が多い。
【0050】
図2に示すように、消音空間Sは、仕切板30により、共鳴室S1と膨張室S2とに区画されている。具体的には、仕切板30は、板状部材であり、左右方向で排気導入管40の直管部43の中間部43bと下流部43cとの境界位置において、前後方向に延びるように設けられている。仕切板30は、その縁部が、ケーシング20の前壁部23、後壁部24、上壁部27及び底壁部28に気密状に固定されている。これにより、消音空間Sは、仕切板30よりも左側の共鳴室S1と右側の膨張室S2とに区画される。膨張室S2の方が共鳴室S1よりも容積が大きい。なお、共鳴室S1と膨張室S2の容積は、消音する排気音の周波数に応じて大きさが調整される。図2に示すように、仕切板30を、排気導入管40の直管部43及び第1排気導出管50の直管部51が貫通している。具体的には、仕切板30には、図示しないが、2つの貫通孔が形成されており、これら貫通孔を、該直管部43,51が貫通している。
【0051】
図2に示すように、ケーシング20内には、排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60を支持するサポート板31~35が配設されている。サポート板31~35は、前後方向に延びるように設けられた板状部材である。サポート板31~35は、その縁部が、ケーシング20の上壁部27及び底壁部28に(サポート板によっては、前壁部23や後壁部24にも)固定されている。サポート板31~35には、排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60を貫通させる貫通孔が形成されている。これら貫通孔は、排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60を、支持する支持部としての役割も果たしている。また、サポート板31~35は、ケーシング20の剛性を高め、該ケーシング20の振動(壁振動)を抑制している。サポート板31~35の数量や位置については、排気導入管40、第1排気導出管50及び第2排気導出管60の長さや重量等に応じて、適宜決めればよい。また、サポート板31~35には、該貫通孔以外の孔を形成してもよい。なお、メイン消音装置2は、ケーシング20の左右壁部25,26の外側や、第1排気導出管50の曲管部54に設けられた連結部材36~38(図2参照)によって、車体と連結している。
【0052】
<第1排気導出管を覆うホルダの構造>
前述したように、第1排気導出管50の直管部51の上流部51aの管壁51cには、複数の小孔53,53,…が形成されており、該管壁51cはホルダ70で覆われている(図3,4参照)。具体的には、ホルダ70は、図4に詳示するように、その横断面形状が略楕円状の扁平形状であり、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cを、該管壁51cとの間に隙間71を空けて外側から全周に亘って覆っている。また、ホルダ70は、その長手方向が左右方向に延びており、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cを、その左右方向に亘って覆う略楕円筒状である。ホルダ70は、横断面が扁平形状であるので、長軸72及び該長軸72に対して垂直に延びる該長軸72よりも短い短軸73を有する。ここで、前述したように、ケーシング20の底壁部28は、前側に向かって下向きに水平に対して傾斜角度αで、傾斜している。底壁部28の前側は、ケーシング20内の残留水Wを集中させて溜める水溜部28aとなっている。ホルダ70は、図4に示すように、長軸72の下端部(一端側)72aが、第1排気導出管50(上流部51a)からケーシング20の底壁部(底部)28の前側の水溜部28a(ケーシング20の底部における一方)に向かって延びるように、該長軸72を鉛直に対して傾斜角度β傾けて備えられている。
【0053】
長軸72と短軸73との交点は、ホルダ70の軸心74である。軸心74は、図4に示すように、第1排気導出管50(上流部51a)の軸心51dに対して、偏心している。具体的には、ホルダ70の軸心74は、第1排気導出管50の該軸心51dよりも、ケーシング20の底壁部28の前側の水溜部28aに近くなるように、偏心している。
【0054】
ホルダ70は、図4に示すように、2つの半筒状シェル70A,70Bを、互いに対応する外向きの接合フランジ75A,75B及び互いに対応する外向きの接合フランジ76A,76Bで合わせて形成されている。具体的には、ホルダ70は、長軸72を境に、該ホルダ70における該長軸72の前側及び後側とに分割された2つの半筒状の第1及び第2シェル70A,70Bを合わせて形成されている。この第1及び第2シェル70A,70Bは、その長軸72の下端部72aに、互いに対応する外向きの接合フランジ75A,75Bを備える。同様に、第1及び第2シェル70A,70Bは、その長軸72の上端部72bに、互いに対応する外向きの接合フランジ76A,76Bを備える。つまり、接合フランジ75A,75B及び接合フランジ76A,76Bは、第1及び第2シェル70A,70B(ホルダ70)の長軸72の両端部72a,72bに設けられている。
【0055】
図5は、ホルダ70を第1シェル70Aと第2シェル70Bとに分割して、該ホルダ70を第1排気導出管50から取外した状態を示す。第1及び第2シェル70A,70Bの長軸72の下端部72aには、外向きの接合フランジ75A,75Bがそれぞれ設けられている。これら接合フランジ75A,75Bの接合面77A,77B同士が互いに接合するようになっている。同様に、第1及び第2シェル70A,70Bの長軸72の上端部72bには、外向きの接合フランジ76A,76Bがそれぞれ設けられている。これら接合フランジ76A,76Bの接合面78A,78B同士が互いに接合するようになっている。なお、図5では、第1及び第2シェル70A,70Bの接合フランジ75A,75B,76A,76Bの接合面77A,77B,78A,78Bが見えるように向きを反転させている。
【0056】
第1シェル70Aにおける長軸72の下端部72a側の接合フランジ75Aの接合面77Aには、図5に示すように、長手方向の中央部から両側にやや離れた位置に、内外方向に延びる2つの溝部79A,79Aが形成されている。溝部79A,79Aは、底側に丸みを帯びた断面略半円状である。同様に、第2シェル70Bにおける長軸72の下端部72a側の接合フランジ75Bの接合面77Bには、長手方向の中央部から両側にやや離れた位置に、内外方向に延びる2つの溝部79B,79Bが形成されている。溝部79B,79Bは、溝部79A,79Aに対応するものであり、溝部79Aと同様、底側に丸みを帯びた断面略半円状である。なお、接合フランジ76A,76Bの接合面78A,78Bには、溝部は形成されていない。
【0057】
第1及び第2シェル70A,70B(ホルダ70)における長軸72の下端部72a側の接合フランジ75A,75Bの接合面77A,77B同士を互いに接合することで、溝部79A,79A及び溝部79B,79Bの開口同士が互いに合わさり、接合フランジ75A,75B間に、ホルダ70の内部と外部とを連通する断面略円形状の2つの吸水孔80,80が形成される(図4参照)。
【0058】
<第1排気導出管の吸音部材の構成>
第1排気導出管50の直管部51の上流部51aの管壁51cとホルダ70との間の隙間71には、図4に模式的に示すように、吸音部材90が配設されている。ここで、横断面扁平形状のホルダ70と第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cとの間の隙間71は、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見たとき、ホルダ70の横断面と同様の扁平形状となっている。吸音部材90は、第1吸音材91と、第2吸音材92とを備える。
【0059】
第1吸音材91は、同方向に延びる多数の長繊維グラスウール91a,91a,…を棒状の芯材に複数回巻き、長繊維91aから芯材を抜き取って芯材の径方向に圧縮することで形成した繊維集合体であり、その形状は、長さ91bを有する略棒状である(図5参照)。図4に示すように、第1吸音材91は、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cにおけるホルダ70の長軸72の下端部72a側に固定されている。
【0060】
第2吸音材92は、図4,5に示すように、同方向に延びる多数の長繊維グラスウール92a,92a,…が、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51c及び該管壁51cに固定された第1吸音材91を合わせて、その周りに幾重にも巻くように配設された繊維集合体である。第2吸音材92は、その外形が、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見て、長軸92bを有する略楕円状の扁平形状となっている。そして、第1吸音材91と第2吸音材92とを組み合わせてなる吸音部材90も、全体として、その外形が、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見て、長軸93を有する略楕円状の扁平形状となっている。また、図4に示すように、吸音部材90の長軸93の下端部93aは、ホルダ70の長軸72の下端部72aと位置が略一致している。これにより、吸水孔80近傍(ホルダ70の長軸72の下端部72a近傍)にも吸音部材90(第2吸音材92)を詰めることできる。また、図5に示すように、第1吸音材91が、第1排気導出管50(上流部51a)の長手方向に沿って(長さ92b方向が、該上流部51aの中心軸方向に一致するように)、管壁51cに固定されている。これにより、第2吸音材92を、第1排気導出管50(上流部51a)の長手方向の十分な長さに亘って、該管壁51c及び第1吸音材91の周りに巻くことができる。そして、吸音部材90を十分な長さ91bを有する略楕円筒状に形成することができる。
【0061】
前述したように、第1吸音材91は、同方向に延びる多数の長繊維91a,91a,…が、巻かれたり圧縮されたりすることで形成された繊維集合体である。すなわち、第1吸音材91は、該多数の長繊維91a,91a,…の各長繊維91a間に形成される空隙を多数有する。第2吸音材92も、同方向に延びる多数の長繊維92a,92a,…が巻かれることで形成された繊維集合体であり、各長繊維92a間に形成される空隙を多数有する。つまり、第1及び第2吸音材91,92における長繊維91a,92bからなる繊維集合体は、多孔質材を構成している。したがって、第1及び第2吸音材91,92(吸音部材90)は、毛細管現象によって水を吸上げることができる程度の多数の空隙が形成された「多孔質材からなる吸音材」であるといえる。
【0062】
<第2排気導出管のホルダ及び吸音部材の構成>
図2,3に示すように、第2排気導出管60の直管部64の中間部64bの複数の小孔65,65,…が形成された管壁は、その全周に亘って、ホルダ81で覆われている。ホルダ81は、図2,3に示すように、横断面形状が円形状の左右方向を長手方向とする略円筒形状であり、該中間部64bの管壁を、該管壁との間に隙間を空けて外側から覆っている。また、ホルダ81の軸心は、該中間部64bの軸心と一致している。
【0063】
第2排気導出管60の直管部64の中間部64bの管壁とホルダ81との間の隙間には、図4に模式的に示すように、吸音部材94が配設されている。吸音部材94は、長繊維グラスウールが、第2排気導出管60(中間部64b)の管壁を、その周りに幾重にも巻くように配設された繊維集合体であり、略円筒状となっている。吸音部材94は、第1及び第2吸音材91,92と同様の構成なので、「多孔質材からなる吸音材」ということができる。
【0064】
<実施形態の作用効果>
(メイン消音装置での排気の消音について)
エンジン1の燃焼室から排出された排気ガスは、図1に示すように、排気マニホールド11、排気管路12、触媒装置13,14及びプリ消音装置15を経て、メイン消音装置2の排気導入管40に導入される。排気導入管40に導入された排気ガスは、直管部43の中間部43bの複数の小孔45,45,…から膨張室S2に流入する。このとき、排気ガスの膨張作用により排気音が低減される。また、図2に示すように、排気導入管40の排気出口44が共鳴室S1に臨んで開口している。これにより、排気音の特定周波数成分が低減される。
【0065】
膨張室S2に流入した排気ガスは、膨張室S2内を右方向に流れ、その一部が排気入口52から第1排気導出管50に導入され、その一部が排気入口62から第2排気導出管60に導入される。ここで、排気入口52,62は、前述したように、ベルマウス状に内径が拡径されているので、排気ガスを、第1及び第2排気導出管50,60にスムースに取入れることができる。
【0066】
第1排気導出管50に流入した排気ガスの一部は、直管部51の上流部51aの管壁51cに形成された複数の小孔53,53,…を通って、該管壁51cの外側の吸音部材90へと流れることで、排気音が吸収される。第1排気導出管50において、小孔53を通らず管壁51cの外側に流れなかった残りの排気ガスは、該第1排気導出管50をそのまま下流方向へ流れ、テールパイプ55aの排気出口56からケーシング20外の大気へ排出される(外部へ導出される)。同様に、第2排気導出管60に流入した排気ガスの一部は、直管部64の中間部64bの管壁に形成された複数の小孔65,65,…を通って、該管壁の外側の吸音部材94へと流れることで、排気音が吸収される。第2排気導出管60において、小孔65を通らず該管壁の外側に流れなかった残りの排気ガスは、該第2排気導出管60をそのまま下流方向へ流れ、テールパイプ67aの排気出口68からケーシング20外の大気へ排出される(外部へ導出される)。
【0067】
(残留水の吸収について)
メイン消音装置2においては、排気に含まれる水分が凝縮し、ケーシング20の底壁部28に残留水Wとして、溜まるようになっている。前述したように、ケーシング20の底壁部28は、前側に向かって下向きに水平軸に対して傾斜角度αで、傾斜している(図3,4参照)。つまり、図4に示すように、残留水Wは、ケーシング20の底壁部28における前側の水溜部28aに集中して、溜まるようになっている。
【0068】
ここで、前述したように、第1排気導出管50の直管部51の上流部51aの複数の小孔53,53,…が形成された管壁51cを覆うホルダ70は、その横断面形状が扁平形状であり、その長軸72の下端部72aが、水溜部28aに向かって延びている(図4参照)。これにより、該下端部72aは、水溜部28aの近くに位置するようになる。そして、ホルダ70の長軸72の下端部72a側の外向きの接合フランジ75A,75B間には、該ホルダ70の内部と外部とを連通する吸水孔80が形成されている。
【0069】
吸水孔80は、水溜部28aの近くに位置しているので、ホルダ70内部の吸音部材90は、特にその吸水孔80近傍の部分(ホルダ70における長軸72の下端部72a近傍の部分)が、水溜部28aに溜まった残留水Wに浸漬しやすくなっている(図4参照)。したがって、吸音部材90(第2吸音材92)の吸水孔80近傍の部分が、水溜部28aに溜まった残留水Wに浸漬したとき、該残留水Wは、多孔質材からなる吸音部材90の毛細管現象によって、吸水孔80を通って吸上げられる。吸上げられた残留水Wは、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cの複数の小孔53,53,…から該第1排気導出管50内に吸込まれる。
【0070】
前述したように、第1排気導出管50は、排気出口56がやや下を向くように、下流方向に向かって下向きに傾斜している。したがって、第1排気導出管50内に吸込まれた残留水Wは、該第1排気導出管50内を下流方向に流れる。そして、残留水Wは、排気出口56からケーシング20外へ排出される。
【0071】
かかる構成により、第1排気導出管50をケーシング20の底壁部28の前側の水溜部28aに近づけることなく、吸水孔80の開口を該水溜部28aに近づけることができる。つまり、水溜部28aに溜まった残留水Wが少ない場合(水位が低い場合)でも、残留水Wを第1排気導出管50内に吸込むことができる。さらに、ケーシング20の底壁部28の水溜部28aに集中して、残留水Wを溜めることができるので、より効率的に残留水Wを除去することができる。
【0072】
前述のように、吸音部材90(第1及び第2吸音材91,92)における多孔質材は、長繊維91a,92aからなる繊維集合体で構成されている。ここで、仮に、吸音部材90における多孔質材が短繊維からなる繊維集合体で構成されている場合、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cの小孔53から流出する高温の排気ガスが、吸音部材90における多孔質材の多数の空隙を通って、吸水孔80の方へ吹抜けることで、短繊維が剥がれてしまうおそれがある。すなわち、多孔質材の空隙の数が減ってしまい、吸音部材90の吸水性能が低減する。そこで、吸音部材90における多孔質材を長繊維91a,92aからなる繊維集合体で構成することにより、繊維が剥がれることによる吸音部材90の吸水性能の低減を防止することができる。
【0073】
前述のように、横断面扁平形状のホルダ70と第1排気導出管(上流部51a)の管壁51cとの間の隙間71は、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見たとき、ホルダ70の横断面と同様の扁平形状となっている。ここで、仮に、多孔質材が長繊維からなる繊維集合体で構成された吸音部材を、単に第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cの周りを巻くように配設しただけの場合、該吸音部材の外形は、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見て略円形状となってしまい、ホルダ70の長軸72の下端部72a近傍にまで吸音部材を詰めにくい。そこで、第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cにおけるホルダ70の長軸72の下端部72a側に第1吸音材91を固定し、第1排気導出管50(上流部51a)及び第1吸音材91を合わせてその周りを巻くように第2吸音材92を配設することで、第1及び第2吸音材91,92を組み合わせてなる吸音部材90全体として、その外形が、第1排気導出管50(上流部51a)の中心軸方向から見て、該隙間71と同じ扁平形状になりやすくなる。したがって、ホルダ70の長軸72の下端部72a近傍、すなわち吸水孔80近傍に、吸音部材90(第2吸音材92)を詰めることができ、ケーシング20の底壁部28aの前側の水溜部28aに溜まった残留水Wを、該吸水孔80近傍の吸音部材90(第2吸音材92)の毛細管現象によって、確実に吸上げることができる。
【0074】
前記ホルダ70の構成により、第1排気導出管50(上流部51a)の周りに吸音部材90を設けて、これを2つのシェル70A,70Bで挟むことにより、簡単に、第1排気導出管50(上流部51a)とホルダ70との間に吸音部材90を詰めた状態にすることができる。また、第1及び第2シェル70A,70Bの接合フランジ75A,75Bを利用して吸水孔80を形成することができ、しかも、この接合フランジ75A,75Bを利用して吸水孔80の開口をケーシング20の底壁部28の前側の水溜部28aに近づけることができる。
【0075】
ここで、一般にケーシング20内には、本実施形態のように、第1排気導出管50を含む複数の消音用排気管を並列に配設せざるを得ない場合が多い。この場合、吸水孔80の開口をケーシング20の底壁部28の前側の水溜部28aに近づけるために、仮に、ホルダ70の外径を全周に亘って大きくすると、ケーシング20のレイアウト上の制約(寸法等の制約)から、ホルダ70が隣接する消音用排気管(排気導入管40の直管部43、第2排気導出管60の直管部64)と干渉することになる。これに対して、ホルダ70の横断面形状を扁平形状とし、該ホルダ70における長軸72の下端部72a(吸水孔80)が第1排気導出管50からケーシング20の底壁部28の前側の水溜部28aに向かって延びるような構成を採用したので、ホルダ70を隣接する消音用排気管(排気導入管40の直管部43、第2排気導出管60の直管部64)と干渉させずに、吸水孔80の開口を水溜部28aに近づけることができる。
【0076】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、ホルダ70の横断面形状を略楕円形状としていたが、必ずしも略楕円形状である必要はなく、扁平形状であればいかなる形状であってもよい。例えば、略長方形状でもよく、その場合、長辺方向の中心線を長軸に、短辺方向の中心線を短軸とすればよい。
【0077】
前記実施形態では、ホルダ70の軸心74と第1排気導出管50(上流部51a)の軸心51dとを偏心させていたが、必ずしも、偏心させる必要はなく、一致していてもよい。この場合、第1吸音材91を第1排気導出管50(上流部51a)の管壁51cにおけるホルダ70の長軸72の下端部72a及び上端部72b側に配設すればよい。
【0078】
前記実施形態では、第1吸音材91及び第2吸音材92を共に長繊維91a,92aからなる繊維集合体で構成していたが、必ずしも、長繊維からなる繊維集合体で構成する必要はなく、短繊維からなる繊維集合体で構成してもよい。また、スポンジのような多数の細孔を有する海綿状多孔質材であってもよい。すなわち、多孔質材からなるもの(毛細管現象によって水を吸上げることができる程度の多数の空隙を有するもの)であれば、いかなる構成であってもよい。また、例えば、第1吸音材を短繊維からなる繊維集合体で構成し、第2吸音材を長繊維からなる繊維集合体で構成してもよく、その組み合わせは自由である。また、吸音部材として1つの吸音材のみを配設するのでもよい。
【0079】
前記実施形態では、ホルダ70を第1及び第2シェル70A,70Bからなる二つ割構造としていたが、必ずしも、二つ割構造である必要はなく、一体物構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、エンジンの消音装置に適応できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0081】
2 メイン消音装置(消音装置)
20 ケーシング
28 底壁部(底部)
50 第1排気導出管(排気導出管)
51c 管壁
53 小孔
70 ホルダ
70A 第1シェル
70B 第2シェル
71 隙間
72 長軸
72a 下端部(一端側)
75A 接合フランジ
75B 接合フランジ
80 吸水孔
90 吸音部材
91 第1吸音材
91a 長繊維
92 第2吸音材
92a 長繊維
図1
図2
図3
図4
図5