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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】金型及び金型の設計方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/305 20190101AFI20221213BHJP
【FI】
B29C48/305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018207259
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020069768
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】伊田 真悟
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-229726(JP,A)
【文献】特開2001-158036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形に使用される金型であって、
粘弾性材料が内部を流動する流路を規定する流路規定部
を備え、
前記流路の出口は、長手方向と短手方向とを有するとともに、前記長手方向に沿って前記短手方向に沿った長さが変化する形状を有し、
前記流路規定部は、前記流路における前記長手方向の少なくとも1つの端部において、前記少なくとも1つの端部以外の部分よりも前記流路の長さが短くなるように、前記流路を規定する、
金型。
【請求項2】
前記流路規定部は、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記流路規定部は、ダイプレートを含み、
前記ダイプレートは、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている、
請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記流路規定部は、プリフォーマをさらに含み、
前記プリフォーマは、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている、
請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記流路規定部は、前記流路の長さが前記長手方向に沿って連続的に変化するように、前記流路を規定する、
請求項1から4のいずれかに記載の金型。
【請求項6】
前記流路規定部は、前記出口における前記長手方向の両端部において、前記両端部以外の部分よりも前記流路の長さが短くなるように、前記流路を規定する、
請求項1から5のいずれかに記載の金型。
【請求項7】
前記流路規定部の前記出口の外側に連続する逃し面をさらに備える、
請求項1から6のいずれかに記載の金型。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の金型を用意することと、
前記金型の前記流路に粘弾性材料を流すことにより、前記粘弾性材料を成形することと
を備える、
粘弾性材料の成形品の製造方法。
【請求項9】
押出成形に使用される金型の設計方法であって、
前記金型において粘弾性材料が内部を流動する流路の出口の形状として、長手方向と短手方向とを有するとともに、前記長手方向に沿って前記短手方向に沿った長さが変化する形状を決定することと、
前記流路における前記出口の長手方向の少なくとも1つの端部において、前記少なくとも1つの端部以外の部分よりも短くなるように、前記流路の長さを決定することと
を備える、
金型の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型及び金型の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ゴム組成物を押し出す押出機のシリンダに取り付けられる口金についての発明を開示する。特許文献1によれば、口金の含まれるダイプレートの、ゴム組成物が流入する側の面に滞留スペースを形成することにより、成形品であるゴムシートの品質向上に寄与し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-086734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、滞留スペースが形成されたダイプレートでは、滞留スペースが形成されていないダイプレートと比較して、ゴムシートの幅方向の端部の形状が良好に成形される。しかしながら、滞留スペースにおいて粘弾性材料の圧力が高まることにより、ダイプレートとダイプレートと併せて使用されるホルダーとの隙間を押し開く力が粘弾性材料から加わり、隙間から粘弾性材料がはみ出すことがある。はみ出した粘弾性材料は、成形品に付着し、成形品の形状に影響を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、良好な形状の成形品を得るための金型及び金型の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る金型は、押出成形に使用される金型であって、粘弾性材料が内部を流動する流路を規定する流路規定部を備える。前記流路の出口は、長手方向と短手方向とを有し、前記流路規定部は、前記流路における前記長手方向の少なくとも1つの端部において、前記少なくとも1つの端部以外の部分よりも前記流路の長さが短くなるように、前記流路を規定する。
【0007】
本発明の第2観点に係る金型は、第1観点に係る金型であって、前記流路規定部は、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている。
【0008】
本発明の第3観点に係る金型は、第2観点に係る金型であって、前記流路規定部は、ダイプレートを含む。前記ダイプレートは、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている。
【0009】
本発明の第4観点に係る金型は、第3観点に係る金型であって、前記流路規定部は、プリフォーマをさらに含む。前記プリフォーマは、前記出口付近において、前記少なくとも1つの端部において前記流路の長さが短くなるように切り欠かれている。
【0010】
本発明の第5観点に係る金型は、第1観点から第4観点のいずれかに係る金型であって、前記流路規定部は、前記流路の長さが前記長手方向に沿って連続的に変化するように、前記流路を規定する。
【0011】
本発明の第6観点に係る金型は、第1観点から第5観点のいずれかに係る金型であって、前記流路規定部は、前記出口における前記長手方向の両端部において、前記両端部以外の部分よりも前記流路の長さが短くなるように、前記流路を規定する。
【0012】
本発明の第7観点に係る金型は、第1観点から第6観点のいずれかに係る金型であって、前記流路規定部の前記出口の外側に連続する逃し面をさらに備える。
【0013】
本発明の第8観点に係る粘弾性材料の成形品の製造方法は、以下のことを備える。
(1)第1観点から第7観点のいずれかに係る金型を用意すること。
(2)前記金型の前記流路に粘弾性材料を流すことにより、前記粘弾性材料を成形すること。
【0014】
本発明の第9観点に係る金型の設計方法は、押出成形に使用される金型の設計方法であって、以下のことを備える。
(1)前記金型において粘弾性材料が内部を流動する流路の出口の形状を決定すること。
(2)前記流路における前記出口の長手方向の少なくとも1つの端部において、前記少なくとも1つの端部以外の部分よりも短くなるように、前記流路の長さを決定すること。
【発明の効果】
【0015】
金型は、内部に有する流路の出口の形状により、成形品の形状を規定する。流路における出口の長手方向の端部では、粘弾性材料の流動に対する金型の内壁面の摩擦抵抗が他の部分における摩擦抵抗よりも大きく、粘弾性材料の流動速度が極端に低下し易い。その結果、粘弾性材料が金型から吐出される速度が出口の長手方向に亘って大きくばらつき、成形品が部分的に収縮、弛緩する。その結果、成形品の形状に凹凸を生じたり、成形品の端部が部分的に破断したりすることがある。本発明の第1の観点に係る金型によれば、流路規定部が出口における長手方向の少なくとも1つの端部において流路の長さが短くなるように流路を規定する。この構成により、端部の摩擦抵抗が低下し、端部における流動速度の低下が抑制される。これにより、成形品に生じる凹凸や破断を抑制し、粘弾性材料を良好な形状に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る金型の断面図。
図2】ヘッド及び金型により規定される流路形状の斜視図。
図3A】ダイプレートの斜視図。
図3B】ダイプレートの斜視図。
図4A】流路の出口の形状。
図4B】ダイプレートの上板部の斜視図。
図5A】実施例に係る金型の規定する流路の形状。
図5B】比較例に係る金型の規定する流路の形状。
図6】シミュレーションにより得られた出口における速度分布のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る金型及び金型の設計方法について説明する。
【0018】
<1.押出の概要>
本実施形態に係る金型1は、押出成形に使用される金型であって、押出機の一部を構成する。金型1は、粘弾性材料5の押出機のシリンダの先端部にあるヘッド100に装着され、ヘッド100から排出された粘弾性材料5を所定の形状に成形するための金型であり、略板状の外観を有する。押出機に投入された粘弾性材料5は、筒状のシリンダ内で加熱され、溶融する。これと共に、シリンダの内部に収容され、かつシリンダの軸方向に延びるスクリューが回転し、粘弾性材料5を混錬すると共にヘッド100まで押し出す。図1に、本実施形態に係る金型1が、ヘッド100,100に装着された状態の断面図を示す。同図に示す例では、2本のシリンダの先端部にある2つのヘッド100,100が共に金型1に連結される。矢印の方向は、粘弾性材料5の流動する方向を示す。なお、2つのヘッド100,100内から押し出される粘弾性材料5は、同種の材料であってもよいし、異種の材料であってもよい。
【0019】
ヘッド100,100から排出された粘弾性材料5は、ヘッド100,100の出口101,101から金型1の上流側の開口である入口20を介して金型1の内部へと流入する。流入した粘弾性材料5は、金型1が備える流路規定部10が規定する流路の内部を流動し、金型1の下流側の開口である吐出口31から成形品6として連続的に又は間欠的に吐出される。成形品6は、押出機の下流にある引き取りコンベア等の装置により一定の速度で巻き取られ、次の工程へと送られる。
【0020】
<2.金型の構成>
本実施形態に係る金型1は、粘弾性材料5の流路を規定するプリフォーマ2とダイプレート3とが組み合わせられて構成される。すなわち、本実施形態における流路規定部10は、プリフォーマ2及びダイプレート3を含む。プリフォーマ2は、金型1の中で最も上流側(ヘッド100,100側)に位置し、金型1の入口20が形成される部分である。プリフォーマ2は、粘弾性材料5の成形に先立って、予備成形を行うための第1流路22を規定する。第1流路22は、プリフォーマ2の内壁面21によって規定される。粘弾性材料5は、入口20からプリフォーマ2内部に流入し、第1流路22内を流動した後、出口23と接続されたダイプレート3の受入口30を介して、ダイプレート3内部へと排出される。図2に、ヘッド100,100、プリフォーマ2及びダイプレート3によって規定される粘弾性材料5の流路の形状の斜視図を示す。()内の符号は、その流路の部分を規定する部分の符号である。
【0021】
図3Aは、ダイプレート3の受入口30側が示されたダイプレート3の斜視図であり、図3Bは、ダイプレート3の吐出口31側が示されたダイプレート3の斜視図である。ダイプレート3は、ボルト等によってプリフォーマ2と一体化された状態で使用される。本実施形態のダイプレート3は、上板部3aと下板部3bとがボルト等によって一体化したものにより形成されており、全体として略板状の外観を有する。上板部3aは下板部3bと対向する側に曲面状の流路形成面32を有し、下板部3bは上板部3aと対向する側に平坦な平坦面33を有する。上板部3aと下板部3bとが一体化し、流路形成面32と平坦面33とが対向した状態において、流路形成面32と平坦面33とは第2流路34を規定する。
【0022】
図4Aに第2流路34の出口の形状Cを示す。形状Cは、第2流路34の出口を吐出口31側から正面視したときの形状を、粘弾性材料5が流動する方向に直交する平面に投影した形状である。形状Cの外接四角形は、横長の長方形となる。この長方形の長辺が延びる方向を長手方向、短辺が延びる方向を短手方向とそれぞれ称し、以下ではこれを基準として説明を行う。形状Cの長手方向における2つの端部を、それぞれE1,E2と称する。なお、形状Cは、粘弾性材料5から成形される成形品6の形状に概ね一致する。
【0023】
図4Bは、吐出口31側が示された上板部3aの斜視図である。流路形成面32は、受入口30から下流側に連続して延び、流路形成面32の下流側終端部L(同図に破線で示す)は、粘弾性材料5の流路の終端を規定する。つまり、第2流路34の出口は、下流側終端部Lと、平坦面33とにより規定される。同図に示すように、下流側終端部Lは、長手方向の中央部で最も吐出口31に近接して位置し、中央部から端部E1及びE2に近づくほど、吐出口31から離れた上流側に位置する。これにより、図2に示すように、端部E1及びE2において、ヘッド100の出口101(又はプリフォーマ2の入口20)を流路の始端とする粘弾性材料5の流路の長さが、その他の部分における流路の長さよりも短くなるように形成される。これに限定されないが、本実施形態では、流路の長さは、長手方向に亘って連続的に変化する。
【0024】
流路形成面32の下流側終端部Lは、逃し面35へと連続する。逃し面35は、第2流路34の出口の外側に連続し、第2流路34の延びる方向に対して傾斜する斜面であり、第2流路34から外側に向かう程、拡張するように傾斜する。つまり、ダイプレート3は、第2流路34の出口から吐出口31に向かって開口の断面積が拡大するように形成される。なお、粘弾性材料5は、第2流路34により一旦成形された後に、逃し面35と平坦面33とで規定される空間を通過しても、その空間により成形される訳ではない。従って、逃し面35と平坦面33とで規定される空間は、粘弾性材料5の流動する流路とは区別される。
【0025】
金型1は、金属製、典型的にはスチール製である。プリフォーマ2とダイプレート3とは、異種の材料から形成されてもよいし、同種の材料から形成されてもよい。また、上板部3aと下板部3bとは、異種の材料から形成されてもよいし、同種の材料から形成されてもよい。
【0026】
粘弾性材料5は、粘性と弾性の双方の性質を有する高分子材料であり、ゴム、樹脂、ゴムを含む組成物及び樹脂を含む組成物等がこれに含まれる。
【0027】
<3.金型の設計方法>
以下では、一実施形態に係る金型1の設計方法について説明する。
【0028】
まず、金型1内の流路の出口の形状、すなわち、粘弾性材料5が内部を流動する流路の長手方向と短手方向とを有する出口の形状Cを決定する。形状Cは、金型1の流路の出口を出口側から正面視したときの形状を、粘弾性材料5が流動する方向に直交する平面に投影した形状である。ここで、長手方向は形状Cの外接長方形の長辺が延びる方向であり、短手方向は形状Cの外接長方形の短辺が延びる方向である。形状Cは、粘弾性材料5から成形される成形品6の形状に概ね一致し、成形品6の形状に応じて適宜決定される。
【0029】
続いて、金型1内の流路の長さを決定する。このとき、形状Cの少なくとも1つの端部Eにおいては端部E以外の部分におけるよりも流路を相対的に短く形成する。例えば、流路を形成する流路形成面32の一部を切り欠いて、下流側終端部Lを端部Eにおいて上流側に形成することにより、流路を相対的に短くすることができる。金型1がプリフォーマ2及びダイプレート3といった複数の部分から構成される場合、下流側終端部Lは、プリフォーマ2とダイプレート3とにまたがって形成されてもよい。好ましくは、下流側終端部Lは、長手方向に沿って連続的に形成される。
【0030】
さらに、ダイプレート3に下流側終端部Lと平坦面33により規定される流路の出口の外側に連続する、逃し面35を形成することが好ましい。逃し面35は、ダイプレート3の吐出口31付近に、例えば面取り加工や溝加工を施すことによって形成することができる。面取りにより逃し面35を形成する場合、逃し面35は、粘弾性材料5が吐出される方向に対して、約10度以上吐出口31に向かって傾斜することが好ましい。
【0031】
<4.特徴>
(1)
上記実施形態の金型1は、内部に有する第2流路34の出口の形状Cにより、成形品6の形状を規定する。第2流路34における出口の長手方向の端部では、流路が相対的に短くなるように形成される。この構成により、上記端部における粘弾性材料5の流動速度が、他の部分における流動速度に対して低下する程度を軽減することができ、長手方向に沿った流動速度分布が一様に近くなる。その結果、成形品6が部分ごとに収縮或いは弛緩することが低減され、成形品6の形状に凹凸(波うち)を生じにくくなる。また、成形品6の端部が部分的に破断すること(エッヂ切れ)が防止され、良好な形状の成形品6を得ることができる。また、上記実施形態の金型1は、波うちやエッヂ切れが生じやすく、従来は押出成形に不向きと考えられてきた粘弾性材料に対しても適用し得る。このため、成形品6の品質向上や、バリエーション拡大に寄与し得る。
【0032】
(2)
さらに、上記実施形態の金型1は、逃し面35を端部E1、E2付近に備えている。この構成により、端部E1、E2における流路を短く形成することができる。さらに、吐出後に成形品6が膨らむ現象(ダイスウェル)が生じたとしても、成形品6が金型1に付着したり、金型1との接触により形状に悪影響を及ぼすことが防止される。逃し面35は、例えば流路の長さが長手方向に沿って一定の長さである金型を用意し、この金型の流路形成面32を逆テーパーエンドミルで上流側から切削することにより形成してもよい。このように、金型1は流路の長さが一定の金型を加工し、容易に製作できるため、生産性に優れる。
【0033】
(3)
上記実施形態の金型1は、特許文献1に開示されるダイプレートのような滞留スペースを設けずとも良好な形状の成形品6を成形することができる。従って、粘弾性材料5が上板部3aと下板部3bとの間を広げる力がダイプレート3に加わり難く、粘弾性材料5が上板部3aと下板部3bとの隙間からはみ出すことが防止される。
(4)
上記実施形態の金型1の設計方法では、流路の出口の少なくとも1つの端部において流路を短く形成することにより、長手方向における流動速度の分布を均一に近づけることができる。つまり、形状Cにより、流路を短く形成すべき部分が決定づけられるので、金型の設計のための試行錯誤の手間が省かれ、金型1の設計効率が向上する。また、流動速度が極端に低下するのは特に出口の長手方向の端部であるため、例えば切欠き加工により端部における流路を短く形成するのみでも十分な効果が得られる。
【0034】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0035】
<5-1>
金型1は、プリフォーマ2を含んでおらず、ダイプレート3のみを含んでいてもよい。また、ダイプレート3が金型1の中で最も下流側に位置する限りにおいて、プリフォーマ2とダイプレート3以外にも粘弾性材料5の流路を規定する流路規定部10を含んでいてもよい。
【0036】
<5-2>
ダイプレート3は、上記実施形態のように上板部3aと下板部3bから形成される構成に限られない。例えば、上板部3aや下板部3bが複数のパーツから形成されていてもよい。また、1つの板状金属の内部に粘弾性材料5の流路が形成され、ダイプレート3が形成されてもよい。また、下板部3bの第2流路34を形成する面は平坦な平坦面33ではなく、流路形成面32と同様、曲面であってもよい。
【0037】
<5-3>
プリフォーマ2は、上記実施形態のダイプレート3と同様に、例えば上板部と下板部とから形成されていてもよい。
【0038】
<5-4>
金型1が装着されるヘッド100の数は、2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0039】
<5-5>
流路が短く形成される部分は、端部のみに限られない。例えば、端部における流路を短くすることに加えて、形状Cの短手方向の他の部分よりも相対的に距離が小さく、粘弾性材料5の流動速度が長手方向の他の部分よりも相対的に低下する位置においても流路を短く形成してもよい。
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、以下の実施例は、あくまでも本発明の例示に過ぎす、本発明はこれに限定されない。
【0041】
実施例、比較例1及び比較例2として3種類の金型X,Y,Zを設計した。金型Xは上記実施形態と同様の金型である。また、金型Y,Zは、上記実施形態の金型1において、ダイプレート3の上板部3aに相当する部分の形状のみが異なる。金型Xに含まれるダイプレート3により規定される流路の形状の斜視図を各部の寸法と共に図5Aに示す(単位はmm)。金型Yは、上記実施形態のダイプレート3において、上板部3aに逃し面35が形成されず、粘弾性材料5の流路の長さに変化がない(下流側終端部Lと吐出口31の周縁とがほぼ一致する)点を除いて金型Xと同様の構成を有する。金型Zは、上板部3aの受入口30の両端部に、略球面状に流路形成面32が切り欠かれた滞留スペースP1、P2を有する。上記以外の点において、金型Zは金型Yと同様の構成を有する。金型Zに含まれるダイプレート3により規定される流路の形状の斜視図を各部の寸法と共に図5Bに示す(単位はmm)。また、金型X,Y,Zに含まれるダイプレート3の流路の最大長さは、いずれも15mmである。
【0042】
<1-1.シミュレーション>
金型X,Y,Zについて、それぞれ同様の条件で同様の粘弾性材料を押出成形したと仮定し、それぞれの金型が有する流路の出口における粘弾性材料の流動速度分布をそれぞれ公知のCFD手法によりシミュレーションした。解析ソフトはSTAR-CCM+(登録商標)を用いた。粘弾性材料5は、互いに物性の異なるゴム組成物1とゴム組成物2との混合材料であり、シミュレーションでは粘性体としてモデル化した。シミュレーションを行った条件を以下の表1に示す。また、ゴム組成物の粘性係数μは、以下の式(1)によりそれぞれ計算される。式(1)中、G,H,Iはゴム組成物に固有の定数であり、eは自然対数の底、Tはゴム組成物の温度(K)である。また、γはせん断速度(1/s)であり、壁面に垂直な方向のゴム組成物の速度勾配を表す。壁面のスリップ速度(m/s)は、表1中のFslip(定数)及びe(定数)を用いて、本出願人の特許第5564074号に開示する方法により求められる。ここで、αは粘弾性材料5中に含まれるゴム組成物1の体積比率であり、0≦α≦1である。
【数1】
【表1】
【0043】
<1-2.シミュレーション結果>
シミュレーションにより得られた実施例、比較例1及び比較例2の流路の出口における粘弾性材料5の流動速度分布は、それぞれ図6のグラフに示すようになった。流動速度は、短手方向の距離の中央における流動速度である。グラフの縦軸は、粘弾性材料5の流動速度を押出機による押出速度で除して無次元化したものである。また、グラフの横軸は、流路の出口における長手方向の位置を無次元化したものであり、長手方向の1及び0が両端部である。グラフから分かるように、比較例1では両端部の流動速度が極端に低下したのに対し、長手方向中央付近(0.4~0.8)の流動速度が大きかった。比較例2では、比較例1と比較すると長手方向中央付近(0.4~0.8)の流動速度が低下し、両端部の流動速度がやや大きくなった。実施例では比較例1,2よりも両端部の速度が大きくなった。
【0044】
<2-1.実験条件>
上で設計された金型X,Y,Zを製作し、上述のシミュレーション条件と実質的に同様の条件下で粘弾性材料5を成形した。金型X,Y,Zについて、成形品の形状を目視により確認した。
【0045】
<2-2.実験結果>
目視の結果、以下のような結果が確認された。
比較例1:流路の出口の長手方向中央付近に対応する位置で、成形品6に波うちが生じた。エッヂ切れは見られなかった。
比較例2:エッヂ切れ及び波うちは生じなかったが、ダイプレート3の上板部3aと下板部3bとの隙間から粘弾性材料5がはみ出していた。
実施例:エッヂ切れ、波うち及び粘弾性材料5のはみ出しがいずれも発生せず、良好な形状の成形品6が得られた。
【0046】
以上の実験結果により、実施例ではエッヂ切れ、波うちが防止されると共に、滞留スペースを設けることによる粘弾性材料5のはみ出しが生じることもなく、成形品6の良好な成形に効果を有することが分かった。
【符号の説明】
【0047】
1 金型
2 プリフォーマ
3 ダイプレート
5 粘弾性材料
6 成形品
10 流路規定部
22 第1流路
32 流路形成面
34 第2流路
100 ヘッド
C 形状
L 下流側終端部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6