IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7192406多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法
<>
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図1
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図2
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図3
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図4
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図5
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図6
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図7
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図8
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図9
  • 特許-多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】多層ゴム部材の製造装置、及び多層ゴム部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/21 20190101AFI20221213BHJP
   B29C 48/355 20190101ALI20221213BHJP
   B29D 30/30 20060101ALI20221213BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
B29C48/21
B29C48/355
B29D30/30
B29L30:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018207563
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020069775
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中戸川 武
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 薫
(72)【発明者】
【氏名】石原 昇
(72)【発明者】
【氏名】小西 拓磨
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287281(JP,A)
【文献】特開2007-290299(JP,A)
【文献】特開2000-246812(JP,A)
【文献】特開2006-130735(JP,A)
【文献】特開2004-202960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96,
B29D 30/00-30/72,
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向と直角な断面が、第1ゴムからなる第1ゴム領域と、第2ゴムからなる第2ゴム領域と、第3ゴムからなる第3ゴム領域とに区分された長尺の多層ゴム部材の製造装置であって、
第1のゴム押出し機と、
第2のゴム押出し機と、
第3のゴム押出し機と、
前記第1のゴム押出し機から押し出される第1ゴム体を搬送する第1搬送コンベヤと、
前記第1搬送コンベヤの上方を通り、かつ前記第2のゴム押出し機から押し出される第2ゴム体を、前記第1ゴム体と同方向に搬送する第2搬送コンベヤと、
前記第3のゴム押出し機から押し出される第3ゴム体を搬送する第3搬送コンベヤとを具え、
前記第1搬送コンベヤは、搬送面が搬送方向下流側に向かって上傾斜でのびる傾斜搬送部と、前記傾斜搬送部に屈曲部で連なり搬送方向下流にのびる搬送面が水平な水平搬送部とを具え、
前記第2搬送コンベヤは、その搬送方向の下流側端部が前記第1搬送コンベヤの搬送面の上方で途切れ、前記下流側端部から送り出される前記第2ゴム体を、前記第1搬送コンベヤの前記第1ゴム体上に第1の合流位置で重ね合わせて2層ゴムを形成し、
前記第3搬送コンベヤは、前記第3ゴム体を、前記2層ゴム上に第2の合流位置で重ね合わせて多層ゴム部材を形成する、
多層ゴム部材の製造装置。
【請求項2】
前記第1の合流位置より下流側に、前記2層ゴムの第1ゴム体と第2ゴム体とを圧接させる第1の圧接手段を具える、
請求項1記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項3】
前記第2の合流位置より下流側に、前記多層ゴム部材の第3ゴム体と2層ゴムとを圧接させる第2の圧接手段を具える、
請求項1又は2記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項4】
前記第1、第2、第3のゴム押出し機は、それぞれ前端部にギアポンプを具える、 請求項1~3の何れかに記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記第1搬送コンベヤの搬送速度に応じて、前記第1のゴム押出し機のゴム押出し速度を変化させ、かつ前記第2搬送コンベヤの搬送速度に応じて、前記第2のゴム押出し機のゴム押出速度を変化させる速度制御手段を具える、
請求項1~4の何れかに記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項6】
前記多層ゴム部材は、タイヤの環状ビードコアの外周面に貼り着されるビードエーペックスゴム用である、
請求項1~5の何れかに記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項7】
前記多層ゴム部材を、所定長さで切断して順次ビードエーペックスゴムを得るための切断手段を含む、
請求項6記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項8】
前記切断手段と前記第1搬送コンベヤとの間に、前記多層ゴム部材を一時的に貯留するフェスツーン部が配される、
請求項7記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項9】
前記切断手段は、前記ビードエーペックスゴムの周方向に延びる第1側部が、周方向に延びる第2側部よりも長くなるように多層ゴム部材を切断し、
前記ビードエーペックスゴムの各々の第2側部は、ビードコアの半径方向外側の表面上に配置される、
請求項7又は8記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項10】
前記切断手段は、隣接するビードエーペックスゴムの間から独立した三角形または台形の部分を切断するように多層ゴム部材を切断する、
請求項9記載の多層ゴム部材の製造装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の多層ゴム部材の製造装置を用い、長さ方向と直角な断面が、第1ゴムからなる第1ゴム領域と、第2ゴムからなる第2ゴム領域と、第3ゴムからなる第3ゴム領域とに区分された長尺の多層ゴム部材を製造する、
多層ゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのビードエーペックスゴムの製造に好適であり、断面が3つのゴム領域に区分された多層ゴム部材を構成簡易に製造しうる多層ゴム部材の製造装置、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、重荷重用タイヤのビードエーペックスゴムaとして、硬質のゴムからなる半径方向内側のゴム領域a1と、軟質のゴムからなる半径方向外側のゴム領域a2と、このゴム領域a2のタイヤ軸方向の外面に隣接されるシート状のゴム領域a3とに区分された多層構造のゴムが使用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この多層構造のビードエーペックスゴムaは、従来、3層ゴム押出装置によって押出し成形される。3層ゴム押出装置は、3つのゴム押出機の各前端部が取り付く押出しヘッドを具え、この押出しヘッドには、プリフォーマとダイプレートとが取り付く。プリフォーマは予成形流路を有し、各ゴム押出機から別々に押し出されるゴムを、それぞれ予成形しかつ所定の配分(ゴム領域a1~a3の面積比に応じた配分)にて合流させる。又ダイプレートは成形口を具え、前記予成形された合流ゴムを、最終の断面形状に押し出し成形する。
【0004】
他方、ビードエーペックスゴムaでは、タイヤのサイズや種類に応じて、その断面形状、サイズ、ゴム領域a1~a3の比率等が相違する。しかし、3層ゴム押出装置において、前記断面形状、サイズ、ゴム領域a1~a3の比率等を変更する場合、それに応じてプリフォーマ及びダイプレートを変更し交換する必要が有り、設備コストの増加や交換作業に伴う生産性の低下を招く。特に、プリフォーマは、構造が複雑かつ交換作業に時間を要するため、上記の問題点の主原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-37367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特にタイヤのビードエーペックスゴムの製造に好適に採用でき、多層ゴム部材の断面形状、サイズ、ゴム領域の比率等の変更を、各ゴム押出し機のダイプレートの変更のみで容易に行うことができ、設備コストの低減や生産性の向上に貢献しうる多層ゴム部材の製造装置、及び製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、長さ方向と直角な断面が、第1ゴムからなる第1ゴム領域と、第2ゴムからなる第2ゴム領域と、第3ゴムからなる第3ゴム領域とに区分された長尺の多層ゴム部材の製造装置であって、
第1のゴム押出し機と、
第2のゴム押出し機と、
第3のゴム押出し機と、
前記第1のゴム押出し機から押し出される第1ゴム体を搬送する第1搬送コンベヤと、
前記第1搬送コンベヤの上方を通り、かつ前記第2のゴム押出し機から押し出される第2ゴム体を、前記第1ゴム体と同方向に搬送する第2搬送コンベヤと、
前記第3のゴム押出し機から押し出される第3ゴム体を搬送する第3搬送コンベヤとを具え、
前記第2搬送コンベヤは、その搬送方向の下流側端部が前記第1搬送コンベヤの搬送面の上方で途切れ、前記下流側端部から送り出される第2ゴム体を、前記第1搬送コンベヤの第1ゴム体上に第1の合流位置で重ね合わせて2層ゴムを形成し、
前記第3搬送コンベヤは、前記第3ゴム体を、前記2層ゴム上に第2の合流位置で重ね合わせて多層ゴム部材を形成する。
【0008】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記第1の合流位置より下流側に、前記2層ゴムの第1ゴム体と第2ゴム体とを圧接させる第1の圧接手段を具えるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記第2の合流位置より下流側に、前記多層ゴム部材の第3ゴム体と2層ゴムとを圧接させる第2の圧接手段を具えるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記第1、第2、第3のゴム押出し機は、それぞれ前端部にギアポンプを具えるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記第1搬送コンベヤの搬送速度に応じて、前記第1のゴム押出し機のゴム押出し速度を変化させ、かつ前記第2搬送コンベヤの搬送速度に応じて、前記第2のゴム押出し機のゴム押出速度を変化させる速度制御手段を具えるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記多層ゴム部材は、タイヤの環状ビードコアの外周面に貼り着されるビードエーペックスゴム用であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記多層ゴム部材を、所定長さで切断して順次ビードエーペックスゴムを得るための切断手段を含むのが好ましい。
【0014】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記切断手段と前記第1搬送コンベヤとの間に、前記多層ゴム部材を一時的に貯留するフェスツーン部が配されるのが好ましい。
【0015】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記切断手段は、前記ビードエーペックスゴムの周方向に延びる第1側部が、周方向に延びる第2側部よりも長くなるように多層ゴム部材を切断し、
前記ビードエーペックスゴムの各々の第2側部は、ビードコアの半径方向外側の表面上に配置されるのが好ましい。
【0016】
本発明に係る多層ゴム部材の製造装置では、前記切断手段は、隣接するビードエーペックスゴムの間から独立した三角形または台形の部分を切断するように多層ゴム部材を切断するのが好ましい。
【0017】
本願の第2の発明は多層ゴム部材の製造方法であって、第1の発明の多層ゴム部材の製造装置を用い、長さ方向と直角な断面が、第1ゴムからなる第1ゴム領域と、第2ゴムからなる第2ゴム領域と、第3ゴムからなる第3ゴム領域とに区分された長尺の多層ゴム部材を製造する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多層ゴム部材の製造装置では、従来の3層ゴム押出装置におけるプリフォーマの役割を、第1搬送コンベヤ、第2搬送コンベヤ、及び第3搬送コンベヤに分担させている。そして、第2搬送コンベヤから送り出される第2ゴム体を、第1搬送コンベヤによって搬送される第1ゴム体上に、重ね合わせて合流させ2層ゴムを形成している。又第3搬送コンベヤから送り出される第3ゴム体を、前記2層ゴム上に重ね合わせて合流させ多層ゴム部材を形成している。
【0019】
従って、多層ゴム部材の断面形状、サイズ、ゴム領域の比率等を変更する場合、第1~第3のゴム押出し機のダイプレートのみ変更し、第1ゴム体~第3ゴム体の断面形状、サイズ等を変更することで対応しうる。即ち、従来のプリフォーマが不要となり、それに伴う設備コストの増加や生産性の低下を抑制することができる。なおダイプレートの種類数は増加するものの、ダイプレートは構造簡易、かつ小型であるため、設備コストや生産性への影響は、プリフォーマに比して小である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の多層ゴム部材の製造装置の一実施例を概念的に示す側面図である。
図2】その主要部を拡大して示す側面図である。
図3】第1ゴム体と第2ゴム体との合流前後を示す斜視図である。
図4】第1ゴム体と第2ゴム体との合流を説明する断面図である。
図5】第3ゴム体と2層ゴムとの合流前後を示す斜視図である。
図6】(a)、(b)は、第1、第2の圧接手段を概念的に示す断面図である。
図7】多層ゴム部材のビードコアへの貼り付けを示す平面図である。
図8】(a)、(b)は、切断手段を概念的に示す断面図である。
図9】多層ゴム部材の一実施例を概念的に示す断面図である。
図10】タイヤのビードエーペックスゴムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の多層ゴム部材の製造装置1(単に「製造装置1」という場合がある。)は、第1のゴム押出し機2と、第2のゴム押出し機3と、第3のゴム押出し機4(図5に示す)と、第1搬送コンベヤ5と、第2搬送コンベヤ6と、第3搬送コンベヤ7とを含む。本例の製造装置1は、さらに第1の圧接手段9、第2の圧接手段10、及び切断手段8を具える。
【0022】
製造装置1は、長尺の多層ゴム部材G0を形成するために用いられる。
【0023】
図9に示すように、多層ゴム部材G0は、長さ方向と直角な断面が、第1ゴムg1からなる第1ゴム領域Y1と、第2ゴムg2からなる第2ゴム領域Y2と、第3ゴムg3からなる第3ゴム領域Y3とに区分されている。本例では、多層ゴム部材G0が、ビードエーペックスゴム形成用として形成される場合が示される。
【0024】
具体的には、多層ゴム部材G0が、所定長さで切断され、かつその切断片が、タイヤの環状ビードコア30の外周面に貼り着されることによりビードエーペックスゴム31が形成される。
【0025】
ビードエーペックスゴム31は、第1ゴム領域Y1と第2ゴム領域Y2とからなる断面略三角形状の本体部31Aを有する。本体部31Aは、環状ビードコア30の外周面に貼り着される底面S1と、底面S1のタイヤ軸方向内端Piから半径方向外端Ptまでのびる内側面S2と、底面S1のタイヤ軸方向外端Poから半径方向外端Ptまでのびる外側面S3とで囲まれる。又本体部31Aは、底面S1上の点P1と、内側面S2上の点P2とを結ぶ斜面S4により、半径方向内側の第1ゴム領域Y1と、半径方向外側の第2ゴム領域Y2とに区分される。前記第1ゴムg1は、第2ゴムg2よりもゴム硬度が大な硬質のゴムから形成され、タイヤのビード剛性を高める。又ビードエーペックスゴム31は、本体部31Aの外側面S3に隣接される薄いシート状の第3ゴム領域Y3を具える。この第3ゴム領域Y3をなす第3ゴムg3は、第2ゴムg2よりも軟質のゴムから形成され、カーカスプライの折返し端を起点とした剥離損傷を防止する。
【0026】
図1に示すように、第1のゴム押出し機2、第2のゴム押出し機3、及び第3のゴム押出し機4(図5に示す)は、それぞれ、単層ゴム押出し機であって、本例では、スクリュー式の押出し機本体12Aの前端部に、ギアポンプ12Bを具えたものが例示される。第1のゴム押出し機2は、第1ゴム領域Y1に近似した断面形状の第1ゴム体G1を押し出す。第2のゴム押出し機3は、第2ゴム領域Y2に近似した断面形状の第2ゴム体G2を押し出す。第3のゴム押出し機4は、第3ゴム領域Y3に近似した断面形状の第3ゴム体G3を押し出す。
【0027】
押出し機本体12A及びギアポンプ12Bとして、周知構造を有する従来の種々の装置が適宜採用しうる。
【0028】
第1搬送コンベヤ5、第2搬送コンベヤ6、及び第3搬送コンベヤ7は、本例では、それぞれベルトコンベヤ部11を含む。このベルトコンベヤ部11は、搬送ベルトが複数の案内ローラにより周回可能に巻装された周知構造をなす。ベルトコンベヤ部11に代えて、ローラコンベヤを採用することもできる。
【0029】
そして、第1搬送コンベヤ5は、第1のゴム押出し機2から受け取った第1ゴム体G1を、搬送方向の下流側端部E1Lまで長さ方向に搬送する。第2搬送コンベヤ6は、第1搬送コンベヤ5の上方を通る。又第2搬送コンベヤ6は、第2のゴム押出し機3から受け取った第2ゴム体G2を、搬送方向の下流側端部E2Lまで、第1ゴム体G1と同方向に搬送する。
【0030】
図2、3に示すように、本例では、第1搬送コンベヤ5は、その搬送面5s上で、前記内側面S2をなす第1ゴム体G1の面S2aを受ける。又第2搬送コンベヤ6も、その搬送面6s上で、前記内側面S2をなす第2ゴム体G2の面S2bを受ける。
【0031】
第2搬送コンベヤ6の下流側端部E2Lが、第1搬送コンベヤ5の搬送面5sの上方で途切れることにより、前記下流側端部E2Lから送り出される第2ゴム体G2は、第1搬送コンベヤ5の第1ゴム体G1上に、第1の合流位置Q1にて重ね合わされる。そして第1の合流位置Q1よりも下流側では、前記斜面S4をなす第1ゴム体G1の面S4aと第2ゴム体G2の面S4bとが上下に重なり合って2層ゴムGAが形成される。
【0032】
本例では、第1搬送コンベヤ5は、搬送面5sが搬送方向下流側に向かって上傾斜でのびる傾斜搬送部5Aと、この傾斜搬送部5Aに屈曲部Jで連なり搬送方向下流にのびる搬送面5sが略水平な水平搬送部5Bとを具える。又第2搬送コンベヤ6は、下流側端部E2Lが、傾斜搬送部5Aの上方で途切れ、かつ第2搬送コンベヤ6の搬送面6sの延長面が、水平搬送部5Bの搬送面5sと面一状に整一するのが好ましい。
【0033】
図4に示すように、傾斜搬送部5A上の第1ゴム体G1は、搬送の進行とともに上昇し、下流側端部E2Lから送り出された第2ゴム体G2と、面S4a、S4bが重なり合って接合される。このとき、搬送面6sの延長面が、水平搬送部5Bの搬送面5sと面一状をなすことで、円滑かつ精度の良い接合を行いうる。なお図2では、便宜上、搬送面6sが、水平搬送部5Bの搬送面5sよりも、第1ゴム体G1の厚さ分だけ上方に描かれている。
【0034】
なお接合精度を高めるために、前記点P2をなす第1ゴム体G1の点P2aを通る垂線Z上に前記点P2をなす第2ゴム体G2の点P2bが位置するように、第1ゴム体G1、第2ゴム体G2を搬送するのが好ましい。
【0035】
図5に示すように、第3搬送コンベヤ7は、第3のゴム押出し機4から押し出される第3ゴム体G3を、2層ゴムGA上に搬送し、かつこの2層ゴムGAと第2の合流位置Q2で重ね合わせて多層ゴム部材G0を形成する。
【0036】
本例では、第3搬送コンベヤ7は、ベルトコンベヤ部11と、向き変え部13とを具える。ベルトコンベヤ部11は、第1搬送コンベヤ5の上方を通り、第1搬送コンベヤ5の搬送方向とは交差する向き、本例では直交する向きで第3ゴム体G3を搬送する。
【0037】
又向き変え部13は、ベルトコンベヤ部11から受け取った第3ゴム体G3を、第1搬送コンベヤ5上の2層ゴムGAと同方向に向き変えする。本例では、向き変え部13は、軸心が第1搬送コンベヤ5の搬送方向と同方向に向く上の案内ローラ13aと、軸心が第1搬送コンベヤ5の搬送方向と直交する向きに向く下の案内ローラ13bとを含み、この間で第3ゴム体G3に捻りを加えることにより、第3ゴム体G3の向き変えが行われる。
【0038】
図2に示すように、第1の合流位置Q1より下流側に、第1の圧接手段9が配されるとともに、第2の合流位置Q2より下流側に、第2の圧接手段10が配される。
【0039】
第1の圧接手段9は、2層ゴムGAにおける第2ゴム体G2を第1ゴム体G1に押し付けて両者を圧接させる。又第2の圧接手段10は、多層ゴム部材G0における第3ゴム体G3を2層ゴムGAに押し付けて両者を圧接させる。
【0040】
第1、第2の圧接手段9、10は同構成であり、昇降移動可能に支持されかつ下降により第2ゴム体G2を第1ゴム体G1に押し付ける、或いは第3ゴム体G3を2層ゴムGAに押し付ける押付け体16を具える。
【0041】
押付け体16は、シリンダ等の昇降具17と、そのロッド端にホルダ18を介して回転可能に支持される押圧ローラ19とを含む。押圧ローラ19は、図6(a)、(b)に示すように、ホルダ18に枢支される芯金19Aと、その周囲に配されるスポンジ材等からなる変形可能な軟質部19Bとを具える。そして、軟質部19Bの圧縮変形により、例えば断面略三角形状の2層ゴムGA、及び多層ゴム部材G0において、第2ゴム体G2と第1ゴム体G1、及び第3ゴム体G3と2層ゴムGAとを均一に圧接させて接合させうる。押圧ローラ19として、種々のものが採用しうる。
【0042】
図1に示すように、切断手段8は、第1搬送コンベヤ5から連続的に送られる多層ゴム部材G0を受け取る受取りコンベヤ部14と、この受取りコンベヤ部14上で、多層ゴム部材G0を所定長さで切断して順次ビードエーペックスゴム31を得るための切断部15とを具える。
【0043】
受取りコンベヤ部14は、多層ゴム部材G0を間欠送りし、停止中に、切断部15により多層ゴム部材G0を所定長さで切断する。なお第1搬送コンベヤ5による連続搬送と、受取りコンベヤ部14による間欠送りとを同期させるため、第1搬送コンベヤ5と受取りコンベヤ部14との間に、多層ゴム部材G0を一時的に貯留するフェスツーン部28が配される。
【0044】
前記「所定長さ」とは、ビードエーペックスゴム31が、環状ビードコア30の外周面で一周巻きしうる長さを意味する。
【0045】
図7に示すように、一周巻きした後の周方向の端面e1、e2同士を突き合わせて接合させるためには、ビードエーペックスゴム31の周方向に延びる第1側部K1が、周方向に延びる第2側部K2よりも長くなるように多層ゴム部材G0を切断する必要がある。第2側部K2は、底面S1に相当し、環状ビードコア30の半径方向外側の表面上に配置される。又第1側部K1は、外端Ptに相当する。
【0046】
そのために、切断手段8は、隣接するビードエーペックスゴム31、31の間から独立した三角形または台形の部分20を切断するように多層ゴム部材A0を切断する。切断する部分20の第1側部K1側の長さLiは、第2側部K2側の長さLoよりも大である。
【0047】
図8(a)に誇張して示すように、本例の切断部15は、多層ゴム部材G0の長さ方向に対して歯部21aが直角な第1カッタ21と、前記長さ方向に対して鋭角な角度αで歯部22aが傾く第2カッタ22とを具える。第2カッタ22は、第1カッタ21よりも下流側で多層ゴム部材G0を切断する。なお第1カッタ21及び第2カッタ22は、本例では、例えばシリンダ等の進退具(図示省略)により、それぞれ歯部21a、22aと直角な向きに進退可能に支持される。又図8(b)に示すように、第1カッタ21及び第2カッタ22は、多層ゴム部材G0の厚さ方向に対して鋭角な角度βで傾斜するのも好ましい。このように角度βで傾斜することにより、周方向の端面e1、e2間の接合面積を増加でき、接合強固を高めうる。なお切断部15としては、前記部分20を有して切断しうるものであれば、種々のものが採用しうる。
【0048】
本例の製造装置1は、速度制御手段27(図示省略)をさらに具える。この速度制御手段27は、第1搬送コンベヤ5の搬送速度V1cに応じて、第1のゴム押出し機2のゴム押出し速度V1gを変化させる。又速度制御手段27は、第2搬送コンベヤ6の搬送速度V2cに応じて、第2のゴム押出し機3のゴム押出し速度V2gを変化させる。
【0049】
具体的には、通常、多層ゴム部材G0を形成する際、第1搬送コンベヤ5の搬送速度V1c、第2搬送コンベヤ6の搬送速度V2c、第3搬送コンベヤ7の搬送速度V3c、及び多層ゴム部材G0を環状ビードコア30に貼り付ける速度は、互いに等しい定常速度で運転されるのが好ましい。
【0050】
多層ゴム部材G0の切断時は、受取りコンベヤ部14を停止させた状態で行われる。このとき、第1搬送コンベヤ5、第2搬送コンベヤ6、及び第3搬送コンベヤ7の搬送速度V1c~V3cは、前記定常速度よりも遅い低速度、好ましくは停止に近い低速度で運転されるのが望ましい。
【0051】
そこで、受取りコンベヤ部14のオン/オフに同期させて搬送速度V1c~V3cを停止に近い低速度に切り替えるとともに、速度制御手段27は、前記搬送速度V1c~V3cに応じて、第1~第3のゴム押出し機2~4のゴム押出し速度V1g~V3gを変化させる。
【0052】
又多層ゴム部材の製造方法では、前記製造装置1を用いることで、長さ方向と直角な断面が、第1ゴムg1からなる第1ゴム領域Y1と、第2ゴムg2からなる第2ゴム領域Y2、第3ゴムg3からなる第3ゴム領域Y3とに区分された長尺の多層ゴム部材G0を構成簡易に製造することができる。
【0053】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0054】
1 製造装置
2 第1のゴム押出し機
3 第2のゴム押出し機
4 第3のゴム押出し機
5 第1搬送コンベヤ
5s 搬送面
6 第2搬送コンベヤ
6s 搬送面
7 第3搬送コンベヤ
8 切断手段
9 第1の圧接手段
10 第2の圧接手段
12B ギアポンプ
20 部分
27 速度制御手段
28 フェスツーン部
30 環状ビードコア
31 ビードエーペックスゴム
E2L 流側端部
G0 多層ゴム部材
G1 第1ゴム体
G2 第2ゴム体
G3 第3ゴム体
GA 2層ゴム
g1 第1ゴム
g2 第2ゴム
g3 第3ゴム
K1 第1側部
K2 第2側部
Q1 第1の合流位置
Q2 第2の合流位置
Y1 第1ゴム領域
Y2 第2ゴム領域
Y3 第3ゴム領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10