(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】直列式軸流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 25/16 20060101AFI20221213BHJP
F04D 29/52 20060101ALI20221213BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F04D25/16
F04D29/52 B
F04D29/66 N
(21)【出願番号】P 2018210500
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】水池 宏友
(72)【発明者】
【氏名】笹栗 啓嗣
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141672(JP,A)
【文献】特開平04-287899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/16
F04D 29/52
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転される第1インペラと、前記第1インペラを回転させる第1モータ部と、前記第1インペラの外周を囲む第1ケースと、を有する第1ファンと、
中心軸回りに回転される第2インペラと、前記第2インペラを回転させる第2モータ部と、前記第2インペラの外周を囲む第2ケースと、を有する第2ファンと、を備え、
第1ケースおよび第2ケースは、軸方向において、第1インペラが収容される部分から第2インペラが収容される部分までの間が円筒状であり、
軸方向一方側から軸方向他方側に向かって、前記第1ファン及び前記第2ファンが順に配置される直列式軸流ファンであって、
前記第1ケースおよび前記第2ケースを収容するハウジングを有し、
前記第2ケースには、前記第2ケースを径方向に貫通する複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、前記第2ケースにおける前記第2インペラの径方向外側に位置し、
前記第1ケースおよび前記第2 ケースの径方向内側に位置する第1空間と、前記第1ケースおよび前記第2ケースと前記ハウジングとに囲まれる第2空間とは、径方向において、前記複数のスリットのみを介して繋がる、直列式軸流ファン。
【請求項2】
前記ハウジングは、軸方向に延びる角筒状であり、
前記第2ケースは、軸方向において、少なくとも前記複数のスリットが設けられる部分が円筒状である、請求項1に記載の直列式軸流ファン。
【請求項3】
前記ハウジングは、軸方向に延びる円筒状であり、
前記第2ケースは、軸方向において、少なくとも前記複数のスリットが設けられる部分が円筒状である、請求項1に記載の直列式軸流ファン。
【請求項4】
前記第1ケースおよび前記第2ケースの外周面と前記ハウジングの内周面との間の空間を、周方向に複数の空間に区画する仕切り板を有する、請求項2または3に記載の直列式軸流ファン。
【請求項5】
前記第1インペラと前記第2インペラとが互いに逆方向に回転される二重反転ファンである、請求項1から4のいずれか1項に記載の直列式軸流ファン。
【請求項6】
前記ハウジングは、軸方向一方側に第1開口部、軸方向他方側に第2開口部を有し、前記第1開口部および前記第2開口部の少なくとも一方に、エアフィルタを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の直列式軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列式軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の中心軸に沿って2つの軸流式の送風ユニットを直列に連結した直列式軸流ファンが知られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直列式軸流ファンでは、静圧を高められる反面、騒音が大きくなりやすい欠点があった。そのため、低騒音と高静圧を両立した直列式軸流ファンは実現できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、中心軸回りに回転される第1インペラと、前記第1インペラを回転させる第1モータ部と、前記第1インペラの外周を囲む第1ケースと、を有する第1ファンと、中心軸回りに回転される第2インペラと、前記第2インペラを回転させる第2モータ部と、前記第2インペラの外周を囲む第2ケースと、を有する第2ファンと、を備え、第1ケースおよび第2ケースは、軸方向において、第1インペラが収容される部分から第2インペラが収容される部分までの間が円筒状であり、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって、前記第1ファン及び前記第2ファ ンが順に配置される直列式軸流ファンであって、前記第1ケースおよび前記第2ケースを収容するハウジングを有し、前記第2ケースには、前記第2ケースを径方向に貫通する複数のスリットを有し、前記複 数のスリットは、前記第 2ケースにおける前記第2インペラの径方向外側に位置し、前記第1ケースおよび前記第 2ケースの径方向内側に位置する第1空間と、前記第1ケースおよび前記第2ケースと前 記ハウジングとに囲まれる第2空間とは、径方向において、前記複数のスリットのみを介して繋がる、直列式軸流ファンが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の態様によれば、低騒音かつ高静圧の直列式軸流ファンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の直列式軸流ファンを示す一部断面を含む斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の直列式軸流ファンの一部断面を含む側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の直列式軸流ファンの断面図である。
【
図5】
図5は、変形例1の直列式軸流ファンの断面図である。
【
図6】
図6は、変形例2の直列式軸流ファンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸Jの軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jの軸方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0009】
本実施形態において、下側は、軸方向一方側に相当し、上側は、軸方向他方側に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0010】
図1は、本実施形態の直列式軸流ファンを示す一部断面を含む斜視図である。
図2は、本実施形態の直列式軸流ファンの一部断面を含む側面図である。
図3は、本実施形態の直列式軸流ファンの断面図である。
【0011】
本実施形態の直列式軸流ファン100は、例えば、空気清浄機の送風装置として用いられる。
図1に示すように、直列式軸流ファン100は、第1ファン10と、第2ファン20と、ハウジング50と、を備える。ハウジング50は、上下に開口する角筒状の筐体である。第1ファン10は、ハウジング50の下部に収容される。第2ファン20は、ハウジング50の上部に収容される。第1ファン10と第2ファン20は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって、軸方向に沿って順に配置される。
【0012】
直列式軸流ファン100は、ハウジング50の下面から空気を吸い込み、上面から噴射する。直列式軸流ファン100において、第1ファン10は吸気側に配置され、第2ファン20は排気側に配置される。
【0013】
図2および
図3に示すように、第1ファン10は、第1インペラ10Aと、第1モータ部11と、第1ケース12と、複数の第1支持リブ13と、を備える。
第1インペラ10Aは、中心軸Jを中心として放射状に等ピッチに配置される複数の第1翼10aを有する。第1インペラ10Aは、第1モータ部11により中心軸J回りに所定方向に回転される。第1インペラ10Aにおける第1翼10aの数は、本実施形態では7枚であるが、直列式軸流ファン100の設計に応じて変更可能である。
【0014】
第1ケース12は第1インペラ10Aの径方向外側を囲む筒状の筐体である。第1ケース12は、例えば、樹脂または金属製である。第1ケース12は、軸方向に延びる筒状の周壁部12Aを有する。
【0015】
第1ケース12は、周壁部12Aの内周面によりエアフローFの流路を構成する。本実施形態の場合、第1ファン10の吸気側である周壁部12Aの下側の端部は、下側に向かうに従って径方向に広がる形状を有する。周壁部12Aにおいて、第1インペラ10Aを収容する部分から上側の部分は円筒状である。
【0016】
周壁部12Aの上側の開口部に、複数の第1支持リブ13が配置される。本実施形態の第1ファン10は、4本の第1支持リブ13を有する。複数の第1支持リブ13は、中心軸Jを中心として放射状に延びる。第1支持リブ13の径方向外側の端部は周壁部12Aの内周面に接続される。第1支持リブ13の径方向内側の端部は、第1モータ部11を支持するモータ支持部13Aに接続される。
【0017】
第1モータ部11は、
図3に示すように、モータ支持部13Aの下面に取り付けられる。第1モータ部11は、本実施形態の場合、インナーロータ型のモータである。第1モータ部11は、中心軸Jを中心とするシャフト11Aを有する。シャフト11Aは、第1モータ部11のモータケース11Bから下側へ延びる。シャフト11Aの下端部に第1インペラ10Aが固定される。第1モータ部11は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0018】
第2ファン20は、第2インペラ20Aと、第2モータ部21と、第2ケース22と、複数の第2支持リブ23と、を備える。
第2インペラ20Aは、中心軸Jを中心として放射状に等ピッチにて配置された複数の第2翼20aを有する。第2インペラ20Aは、第2モータ部21により、中心軸J回りに第1インペラ10Aと同じ方向に回転される。これにより、第2インペラ20Aは、第1インペラ10Aによる空気の流れと同方向の空気の流れを発生させる。すなわち、第1インペラ10Aと第2インペラ20Aは、いずれも下側から上側への空気の流れを生じさせる。第2インペラ20Aにおける第2翼20aの数は、本実施形態では5枚であるが、直列式軸流ファン100の設計に応じて変更可能である。
【0019】
第2ケース22は第2インペラ20Aの径方向外側を囲む。第2ケース22は、軸方向に延びる筒状の周壁部22Aと、周壁部22Aを径方向に貫通する複数のスリット22Bと、を有する。
【0020】
複数のスリット22Bは、それぞれ、径方向から見て中心軸Jと交差する方向に延びる。スリット22Bの長手方向は、第2翼20aの径方向の外周端縁の稜線に対して、概ね90°の角度で交差する。複数のスリット22B同士は、互いに平行な方向に延びる。複数のスリット22Bは、周壁部22Aを周方向に一周する領域に等間隔に並ぶ。
【0021】
第2ケース22は、周壁部22Aの内周面によりエアフローFの流路を構成する。本実施形態の場合、第2ファン20の排気側である周壁部22Aの上側の端部は、上側に向かうに従って径方向に広がる形状を有する。周壁部22Aにおいて、第2インペラ20Aを収容する部分から下側の部分は円筒状である。
【0022】
周壁部22Aの下側の開口部に、複数の第2支持リブ23が配置される。本実施形態の第2ファン20は、4本の第2支持リブ23を有する。複数の第2支持リブ23は、中心軸Jを中心として放射状に延びる。第2支持リブ23の径方向外側の端部は周壁部22Aの内周面に接続される。第2支持リブ23の径方向内側の端部は、第2モータ部21を支持するモータ支持部23Aに接続される。
【0023】
第2モータ部21は、モータ支持部23Aの上面に取り付けられる。第2モータ部21は、本実施形態の場合、インナーロータ型のモータである。第2モータ部21は、中心軸Jを中心とするシャフト21Aを有する。シャフト21Aは、第2モータ部21のモータケース21Bから上側へ延びる。シャフト21Aの上端部に第2インペラ20Aが固定される。第2モータ部21は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0024】
図3に示すように、第1ファン10と、第2ファン20とは、周壁部12Aの上側の開口部と、周壁部22Aの下側の開口部とを突き合わせた状態で軸方向に並んで配置される。周壁部12Aの内径と周壁部22Aの内径は一致しており、周壁部12Aと周壁部22Aは、軸方向に連なる1つの流路を構成する。
【0025】
第1ファン10のモータ支持部13Aと第2ファン20のモータ支持部23Aとは、軸方向に見て、互いに重なり合って配置される。第1ファン10の複数の第1支持リブ13と、第2ファン20の複数の第2支持リブ23とは、軸方向に見て、少なくとも一部が重なり合って配置される。周方向に隣り合う第1支持リブ13同士の隙間、および周方向に隣り合う第2支持リブ23同士の隙間を、軸方向に空気が流通する。
【0026】
ハウジング50は、底壁部51aを有して上下方向に延びる角筒状の本体部51と、本体部51の上側に取り付けられる上蓋部52と、本体部51の下側に取り付けられるエアフィルタ53とを備える。
【0027】
本体部51は、下側に向かって開口する第1開口部50Aと、上側に向かって開口する第2開口部50Bとを有する。すなわち、ハウジング50は、軸方向一方側に第1開口部50Aを有し、軸方向他方側に第2開口部50Bを有し、エアフィルタ53は、第1開口部50Aに取り付けられる。エアフィルタ53および本体部51を備えることで、エアフィルタ53を介さない風の流入を防ぐことができる。これにより、直列式軸流ファン100を空気清浄機の送風装置として容易に使用可能となる。なお、直列式軸流ファン100のエアフローFが下向きである場合には、エアフィルタ53は、上側の第2開口部50Bに取り付けられる。
【0028】
ハウジング50の本体部51に第1ファン10および第2ファン20が収容される。ハウジング50の本体部51の高さは、第1ファン10と第2ファン20とを軸方向に重ねた高さに一致する。第1ファン10の周壁部12Aの下端は、底壁部51aの上面に接触する。これにより、第1ファン10の下側の開口部において、ハウジング50内部との間で径方向に空気の流通が生じることが抑制される。
【0029】
第2ファン20の上側の開口部の軸方向位置は、本体部51の上側の開口部の軸方向位置に一致する。上蓋部52は、ハウジング50の第2開口部50Bに取り付けられる。上蓋部52の下面は、第2ファン20の周壁部22Aの上端および本体部51の上端と接触する。これにより、第2ファン20の上側の開口部および本体部51の上側の開口部において、ハウジング50内部との間で径方向に空気の流通が生じることが抑制される。
【0030】
上記の構成により、直列式軸流ファン100は、
図1から
図3に示すように、第1ケース12および第2ケース22の径方向内側に位置する第1空間100aを有する。また、直列式軸流ファン100は、第1ケース12および第2ケース22の外周面と、ハウジング50の内周面とに囲まれる第2空間100bを有する。第1空間100aと第2空間100bとは、第1ケース12の周壁部12Aおよび第2ケース22の周壁部22Aとにより、径方向に区画される。第1空間100aと第2空間100bとは、第2ケース22の複数のスリット22Bのみを介して径方向に繋がる。
【0031】
上蓋部52は、軸方向に見て第2ファン20の開口部の内側に位置する領域に、メッシュ部52aを有する。メッシュ部52aは、上蓋部52を軸方向に貫通する多数の貫通孔を有する。メッシュ部52aは、第2開口部50Bから第2ファン20の内部に手指が挿入されるフィンガーガードとして機能する。
【0032】
本実施形態の直列式軸流ファン100は、第2ケース22に複数のスリット22Bを有する。これにより、第1ファン10および第2ファン20の動作時に、スリット22Bを介して、第1ファン10および第2ファン20の内側の第1空間100aと、第1ファン10および第2ファン20の外側の第2空間100bとの間で、空気を出し入れすることができる。すなわち、第2ファン20において、第1ケース12および第2ケース22の外側の空気を圧力バッファとして用いることができる。これにより、第2ケース22内部の圧力が適正範囲内に維持されやすくなり、第2ケース22に連なる第1ケース12内部の圧力も調整される。よって、流路内部の圧力変動に起因する騒音の発生を抑えることができる。
【0033】
本実施形態の直列式軸流ファン100では、第2ファン20のみが複数のスリット22Bを有し、第1ファン10にはスリットは設けられない。これにより、第2ファン20の複数のスリット22Bから第2空間100bに吐出される空気は、再び複数のスリット22Bを介して第2ケース22内へ吸入される。
上記の構成に対して、第1ファン10と第2ファン20の両方が複数のスリットを有する場合、第2ファン20のスリット22Bから吐出された空気が、下側へ回り込んで第1ファン10のスリットから第1ケース12内へ吸入されてしまう。そのため、ハウジング50内に、直列式軸流ファン100のエアフローFに寄与しない循環風が生じることになり、直列式軸流ファン100の静圧が低下する。
本実施形態の直列式軸流ファン100は、第2ファン20にのみ複数のスリット22Bを備え、複数のスリット22Bのみを介して第1空間100aと第2空間100bとの間で空気が出し入れされる構成としたことで、循環風による直列式軸流ファン100の静圧の低下を抑制できる。本実施形態によれば、低騒音と高静圧を両立した直列式軸流ファン100が提供される。
【0034】
本実施形態では、ハウジング50は、軸方向に延びる角筒状であり、第1ケース12および第2ケース22は、軸方向において、少なくとも複数のスリット22Bが設けられる部分が円筒状である。本実施形態では、第1ケース12および第2ケース22は、軸方向において、第1インペラ10Aが収容される部分から第2インペラ20Aが収容される部分までの間が円筒状である。この構成によれば、より高静圧の直列式軸流ファンとすることができる。以下、
図4を参照して説明する。
【0035】
図4は、
図3に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図4に示すように、円筒状の第2ケース22と、角筒状の本体部51との径方向の間隔は、本体部51の角部において広く、本体部51の側壁の中央部において狭い。第2ケース22の外周面と本体部51の内周面とが最も近づく位置は、周方向における空気の流路が窄まる狭窄部105となる。本実施形態の直列式軸流ファン100では、第1ケース12および第2ケース22の外側の第2空間100bは、周方向の4箇所に狭窄部105を有する。
【0036】
第2空間100bは、第1ケース12および第2ケース22の外側において周方向に一周繋がっている。そのため、第2空間100b内では、周方向に空気の流れが生じる。第2ケース22の外側において周方向の広い範囲に空気が流れると、一部のスリット22Bから吐出された空気が、第2ケース22の外側を周方向に回り込んで他のスリット22Bから第2ケース22内に流入する循環風が生じる。このような循環風は、直列式軸流ファン100のエアフローFとして利用されないため、直列式軸流ファン100の静圧特性を低下させる原因となる。
【0037】
本実施形態では、上記の周方向の循環風を抑制するために、第2空間100bの周方向の複数箇所に、狭窄部105を備える。第2空間100bは、4箇所の狭窄部105により、周方向において、4つの空間101、102、103、104に区画される。これにより、例えば、スリット22Bから空間101に吐出された空気の周方向の流れは、狭窄部105により阻害され、隣の空間102または空間104へはほとんど流れることなく、狭窄部105近傍の複数のスリット22Bから第2ケース22内へ吸入される。
【0038】
このように本実施形態の直列式軸流ファン100では、第1ケース12および第2ケース22の外側において、周方向に区画される4つの空間101~104内で空気を流通させる。これにより、第1ケース12および第2ケース22の外側に、周方向に流れる循環風が生じるのを抑えることができる。よって本実施形態によれば、高静圧の直列式軸流ファン100が得られる。なお、狭窄部105において、第2ケース22と本体部51とが接触していてもよい。
【0039】
本発明者は、本実施形態の構成について静音化についての検証を行った。本実施形態の直列式軸流ファン100は、複数のスリット22Bを備えない従来構成の直列式軸流ファンと比較して、同等の風量を得られる条件で1.0dB程度の静音化が可能であることが確認された。
【0040】
直列式軸流ファン100において、第1インペラ10Aおよび第2インペラ20Aのいずれか一方を、送風方向が反対側となるインペラに交換し、第1インペラ10Aと第2インペラ20Aを互いに反対方向に回転させる二重反転式ファンとしてもよい。二重反転式ファンとすることにより、2つのインペラが同方向に回転する直列式軸流ファンに比べて、高静圧化および大風量化を実現可能である。
【0041】
(変形例1)
図5は、変形例の直列式軸流ファン200の断面図である。直列式軸流ファン200は、上記実施形態と同様の第1ファン10及び第2ファン20を収容する円筒状のハウジング250を備える。直列式軸流ファン200は、第1ケース12および第2ケース22の径方向内側に位置する第1空間200aと、第1ケース12および第2ケース22とハウジング50とに囲まれる第2空間200bとを有する。
【0042】
変形例1の直列式軸流ファン200は、ハウジング250が軸方向に延びる円筒状であり、第1ケース12および第2ケース22が、軸方向において、少なくとも前記複数のスリットが設けられる部分が円筒状である構成を備える。本実施形態では、第1ケース12および第2ケース22は、軸方向において、第1インペラ10Aが収容される部分から第2インペラ20Aが収容される部分までの間が円筒状である。
【0043】
さらに、直列式軸流ファン200は、ハウジング250の内周面と、第2ケース22の外周面との間に径方向に架け渡される複数の仕切り板240を有する。本実施形態の直列式軸流ファン200は、周方向に90°間隔で配置される4枚の仕切り板240を有する。仕切り板240の枚数は特に限定されない。
【0044】
図5に示す4枚の仕切り板240は、第2空間200bを、周方向に4つの空間201、202、203、204に分割する。仕切り板240は、例えば、隣り合う空間201と空間202との間における周方向の空気の流通を遮断する。
【0045】
変形例の直列式軸流ファン200によれば、複数の仕切り板240によって、第1ケース12および第2ケース22の径方向外側の空間が4つの空間201~204に分割される。これにより、例えば、複数のスリット22Bから第2ケース22の外側の空間201に吐出された空気が、第2ケース22の外側を通って隣の空間202、204へ流れるのを防げる。
【0046】
したがって変形例の直列式軸流ファン200によれば、第1ケース12および第2ケース22の外側の第2空間200bに周方向の循環風が生じるのを抑制でき、循環風による静圧特性の低下を抑えられる。よって直列式軸流ファン200によれば、静音と高静圧を両立できる。
【0047】
なお、
図1から
図4に示した直列式軸流ファン100に、上記の仕切り板240を設けてもよい。例えば、
図4に示した狭窄部105に、径方向に延びる仕切り板240を設けてもよい。この構成によれば、直列式軸流ファン100において、狭窄部105を介する周方向の空気の流通をさらに少なくすることができる。これにより、静圧の低下がさらに抑制され、静音化にも有利になる。
【0048】
(変形例2)
図6は、変形例2の直列式軸流ファン300の一部断面を含む斜視図である。直列式軸流ファン300は、第1ファン310と、第2ファン320と、第1ファン310及び第2ファン320を収容するハウジング50と、を備える。第1ファン310は上下に開口する第1ケース312を有する。第2ファン320は上下に開口する第2ケース322を有する。第1ケース312と第2ケース322とは、第1ケース312の上側の開口部と第2ケース322の下側の開口部とが接続されることで上下に連結される。
【0049】
直列式軸流ファン300は、第1ケース312および第2ケース322の径方向内側に位置する第1空間300aと、第1ケース312および第2ケース322とハウジング50とに囲まれる第2空間300bとを有する。
【0050】
変形例2の直列式軸流ファン300では、第1空間300aと第2空間300bとを径方向に繋ぐ複数のスリット312Bが、第1ファン310の第1ケース312に設けられる。すなわち、変形例2の直列式軸流ファン300は、実施形態の直列式軸流ファン100に対して、複数のスリットが設けられる位置のみが異なる。
【0051】
変形例2の構成では、第2ファン320の第2ケース322がスリットを有さないので、複数のスリット312Bのみを介して第1空間300aと第2空間300bとの間で空気の出入りが生じる。したがって、第2空間300bの内部において上下方向の循環風が生じることはなく、直列式軸流ファン300の静圧の低下が抑制される。変形例2の構成によれば、低騒音と高静圧を両立した直列式軸流ファン300が提供される。
【0052】
なお、変形例2の直列式軸流ファン300においても、変形例1の構成を適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10,310…第1ファン、10A…第1インペラ、11…第1モータ部、12,312…第1ケース、20,320…第2ファン、20A…第2インペラ、21…第2モータ部、22,322…第2ケース、22B,312B…スリット、50,250…ハウジング、50A…第1開口部、50B…第2開口部、53…エアフィルタ、100,200,300…直列式軸流ファン、100a,200a,300a…第1空間、100b,200b,300b…第2空間、101,102,104,201,202…空間、240…仕切り板、J…中心軸