(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】センサ情報出力装置および車両制御装置
(51)【国際特許分類】
G08C 25/00 20060101AFI20221213BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221213BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20221213BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G08C25/00 E
B62D5/04
B60R21/0136
G08C19/00 S
(21)【出願番号】P 2018214333
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠真
(72)【発明者】
【氏名】織田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小塚 謙一
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187316(JP,A)
【文献】特開2017-032386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
B62D 5/00-5/32,6/00-6/10
B60R 21/00-21/13,21/34-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量に応じた電気信号を生成する複数系統のデジタルセンサの動作電圧を生成する前記デジタルセンサの系統数と同数の第1の電源回路と、
複数系統の前記デジタルセンサに対して周期的に供給される同期信号の信号電圧を生成する単一の第2の電源回路と、
前記第1の電源回路により生成される動作電圧、および前記第2の電源回路により生成される前記信号電圧を有する前記同期信号を前記デジタルセンサへ供給する一方、前記同期信号に応じて前記デジタルセンサから供給される前記電気信号をセンサ情報として外部回路へ供給する前記デジタルセンサの系統数と同数のレシーバと、
前記デジタルセンサと前記レシーバとの間の伝送路に異常が発生したとき、前記異常が発生した系統の前記レシーバに対する前記信号電圧の供給を遮断するスイッチと、を有しているセンサ情報出力装置。
【請求項2】
前記デジタルセンサと前記レシーバとの間の通信規格として、ペリフェラル・シリアル・インターフェース5が採用されている請求項
1に記載のセンサ情報出力装置。
【請求項3】
単一のICチップとして集積化されてなる請求項1
または請求項
2に記載のセンサ情報出力装置。
【請求項4】
請求項1~請求項
3のうちいずれか一項に記載のセンサ情報出力装置と、
前記センサ情報出力装置を通じて取得される前記センサ情報に基づき制御対象を制御する前記外部回路としての制御回路と、を有する車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ情報出力装置および車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、センサおよび制御装置を有するセンサ装置が知られている。制御装置は、インターフェース回路およびCPU(Central Processing Unit)を有している。インターフェース回路は、センサの検出結果(電気信号)をCPUへ受け渡す。CPUは、インターフェース回路を通じて取得されるセンサの検出結果に基づきセンサの検出対象の物理量を演算し、当該演算される検出対象の物理量に基づき制御対象を制御する。
【0003】
インターフェース回路とセンサとの間の通信規格としては、PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)が採用されている。インターフェース回路は、センサに動作電圧を供給するとともに、電圧同期信号を供給する。電圧同期信号は、インターフェース回路とセンサとの間のデータ通信の契機となるパルス信号である。インターフェース回路は、センサの動作電圧を生成する第1の電源回路、および電圧同期信号を生成するための第2の電源回路を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、信頼性要求水準を満たすために、センサおよびインターフェース回路を冗長化することが要求される。たとえば複数個のセンサを設ける場合、インターフェース回路の通信系統および電源回路についてもセンサの系統数に合わせて設ける必要がある。このため、インターフェース回路の大型化(回路面積の増大)が懸念される。
【0006】
本発明の目的は、大型化を抑えつつ冗長化に対応することができるセンサ情報出力装置および車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得るセンサ情報出力装置は、検出対象の物理量に応じた電気信号を生成する複数系統のデジタルセンサの動作電圧を生成する前記デジタルセンサの系統数と同数の第1の電源回路と、複数系統の前記デジタルセンサに対して周期的に供給される同期信号の信号電圧を生成する単一の第2の電源回路と、前記第1の電源回路により生成される動作電圧、および前記第2の電源回路により生成される前記信号電圧を有する前記同期信号を前記デジタルセンサへ供給する一方、前記同期信号に応じて前記デジタルセンサから供給される前記電気信号をセンサ情報として外部回路へ供給する前記デジタルセンサの系統数と同数のレシーバと、を有している。
【0008】
この構成によれば、第1の電源回路およびレシーバを冗長化(複数系統化)する場合であれ、複数系統のレシーバで同一の第2の電源回路が共用される。このため、複数系統のレシーバが個別の第2の電源回路を使用する場合に比べて、第2の電源回路のトータルとしての回路面積を低減することができる。したがって、センサ情報出力装置のサイズを抑えることが可能となる。
【0009】
上記のセンサ情報出力装置において、前記デジタルセンサと前記レシーバとの間の伝送路に異常が発生したとき、前記異常が発生した系統の前記レシーバに対する前記信号電圧の供給を遮断するスイッチを有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、特定系統におけるセンサとレシーバとの間の伝送路に発生した異常が、正常系統のセンサの動作に何らかの影響を及ぼすことを抑制できる。このため、正常系統のデジタルセンサを継続して動作させることができる。
【0011】
上記のセンサ情報出力装置において、前記センサと前記レシーバとの間の通信規格として、ペリフェラル・シリアル・インターフェース5を採用してもよい。
この構成によるように、センサとレシーバとの間の通信規格として、たとえばペリフェラル・シリアル・インターフェース5(PSI5)が採用される場合、2種類の電源回路(第1の電源回路および第2の電源回路)が必要となる。このため、冗長化に伴う回路面積の増大が問題視されやすい。したがって、センサとレシーバとの間の通信規格として、PSI5が採用される場合、上記のセンサ情報出力装置の構成、すなわち複数系統のレシーバで同一の第2の電源回路を共用する構成は好適である。
【0012】
上記のセンサ情報出力装置において、単一のICチップとして集積化されていることが好ましい。
この構成によるように、センサ情報出力装置の構成要素(複数系統の第1の電源回路、単一の第2の電源回路、および複数系統のレシーバ)が単一のICチップとして集積化されることにより、センサ情報出力装置のサイズをコンパクト化することができる。
【0013】
車両制御装置において、上記のセンサ情報出力装置と、前記センサ情報出力装置を通じて取得される前記センサ情報に基づき制御対象を制御する前記外部回路としての制御回路と、を有していてもよい。
【0014】
この構成によるように、上記のセンサ情報出力装置は、車両制御装置に好適である。センサ情報出力装置のサイズが低減される分だけ、車両制御装置のサイズも低減することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセンサ情報出力装置および車両制御装置によれば、大型化を抑えつつ冗長化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】センサ情報出力装置および車両制御装置の一実施の形態を示すブロック図。
【
図2】センサ情報出力装置および車両制御装置の比較例を示すブロック図。
【
図3】(a)は第1のデジタルトルクセンサに供給されるシンクパルスの波形図、(b)は第2のデジタルトルクセンサに供給されるシンクパルスの波形図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、センサ情報出力装置およびセンサ情報出力装置を備えた車両制御装置を電動パワーステアリングシステムに具体化した一実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両制御装置としてのECU(電子制御装置)11は、制御対象であるモータ12を制御する。モータ12は、車両の操舵機構に付与されるアシストトルクを発生する。ECU11には、第1のデジタルトルクセンサ13aおよび第2のデジタルトルクセンサ13bが接続されている。第1のデジタルトルクセンサ13aおよび第2のデジタルトルクセンサ13bは、検出対象の物理量として、ステアリングホイールの操作を通じてステアリングシャフトに作用する操舵トルクを検出し、当該検出される操舵トルクに応じた電気信号としてデジタル信号S
dig1,S
dig2を生成する。ECU11は、デジタル信号S
dig1,S
dig2の少なくとも一方に基づき目標アシストトルクを演算し、当該演算される目標アシストトルクを発生させるための電力をモータ12に供給する。
【0018】
ECU11は、マイクロコンピュータ21、およびセンサ情報出力装置としてのインターフェース回路22を有している。
マイクロコンピュータ21は、インターフェース回路22を通じてデジタル信号Sdig1,Sdig2に応じた電気信号(後述の検出信号Sd1,Sd2)を取得し、これら取得される電気信号に基づきデジタル信号Sdig1に応じた操舵トルク、およびデジタル信号Sdig2に応じた操舵トルクを演算する。またマイクロコンピュータ21は、デジタル信号Sdig1に応じた操舵トルク、およびデジタル信号Sdig2に応じた操舵トルクの少なくとも一方に基づきモータ12への給電を制御する。
【0019】
インターフェース回路22は、第1のデジタルトルクセンサ13aにより生成されるデジタル信号Sdig1、および第2のデジタルトルクセンサ13bにより生成されるデジタル信号Sdig2を取り込む。インターフェース回路22と第1のデジタルトルクセンサ13aとの間の通信規格、ならびにインターフェース回路22と第2のデジタルトルクセンサ13bとの間の通信規格としては、PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)が採用されている。PSI5の作動モードには、非同期モードおよび同期モードが存在するところ、ここでは同期モードを前提としている。
【0020】
インターフェース回路22は、複数の電子回路がASIC(Application Specific Integrated Circuit)として単一のICチップに集積化されてなる。インターフェース回路22は、第1のセンサ電源回路31、第2のセンサ電源回路32、シンクパルス電源回路33、第1のレシーバ34、および第2のレシーバ35を有している。第1のセンサ電源回路31、第1のレシーバ34、およびシンクパルス電源回路33は、第1のデジタルトルクセンサ13aに対応する第1の系統を構成する。第2のセンサ電源回路32、第2のレシーバ35、およびシンクパルス電源回路33は、第2のデジタルトルクセンサ13bに対応する第2の系統を構成する。シンクパルス電源回路33は、第1の系統の構成要素でもあり第2の系統の構成要素でもある。
【0021】
第1のセンサ電源回路31は、車載されるバッテリなどの直流電源に接続される。第1のセンサ電源回路31は、直流電源の電圧を第1のデジタルトルクセンサ13aに適した動作電圧V1に変換する。第2のセンサ電源回路32も直流電源に接続される。第2のセンサ電源回路32は、直流電源の電圧を第2のデジタルトルクセンサ13bに適した動作電圧V2に変換する。
【0022】
シンクパルス電源回路33も、直流電源に接続される。シンクパルス電源回路33は、直流電源の電圧を昇圧するチャージポンプあるいはスイッチングレギュレータなどの昇圧回路36を有している。シンクパルス電源回路33は、第1のデジタルトルクセンサ13aに対するシンクパルス(電圧同期信号)Ssync1および第2のデジタルトルクセンサ13bに対するシンクパルスSsync2を生成するための電圧Vsync(シンクパルスSsync1,Ssync2の信号電圧)を生成する。シンクパルスSsync1,Ssync2とは、第1のデジタルトルクセンサ13aとインターフェース回路22との間のデータ通信、ならびに第2のデジタルトルクセンサ13bとインターフェース回路22との間のデータ通信の契機となるパルス信号をいう。シンクパルスSsync1,Ssync2は、第1のセンサ電源回路31により生成される動作電圧V1、および第2のセンサ電源回路32により生成される動作電圧V2のいずれの電圧よりも高い電圧を有する。
【0023】
第1のレシーバ34は、第1のデジタルトルクセンサ13aに対して動作電源を供給する。また、第1のレシーバ34は、第1のデジタルトルクセンサ13aとマイクロコンピュータ21との間の電気信号の授受を仲介する。第1のレシーバ34は、端子41、ドライバ42、スイッチ43、およびレシーバ回路44を有している。
【0024】
端子41は、伝送路45を介して第1のデジタルトルクセンサ13aに接続されている。通信規格としてPSI5が採用される場合、伝送路45は2芯線路として設けられる。
ドライバ42は、第1のセンサ電源回路31により生成される動作電圧V1を、伝送路45を介して第1のデジタルトルクセンサ13aへ供給する。第1のデジタルトルクセンサ13aは、動作電圧V1の供給を受けて動作する。
【0025】
ドライバ42は、伝送路46を介してシンクパルス電源回路33に接続されている。伝送路46にはスイッチ43が設けられている。スイッチ43としては、たとえばFET(field effect transistor)などの半導体スイッチが採用される。通常、スイッチ43はオンした状態に維持される。ドライバ42は、シンクパルス電源回路33により生成される電圧Vsyncを使用してシンクパルスSsync1を定められた周期で生成する。ドライバ42は、当該生成されるシンクパルスSsync1を伝送路45の電圧に重畳するかたちで第1のデジタルトルクセンサ13aへ供給する。
【0026】
ドライバ42は異常検出機能を有している。ドライバ42は、たとえば伝送路45の短絡などに起因して伝送路45に生じる過電流を検出する。ドライバ42は、過電流が検出されるとき、スイッチ43をオンした状態からオフした状態へ切り替える。これにより、伝送路46が遮断される。すなわち、シンクパルス電源回路33からドライバ42への電圧Vsyncの供給が遮断される。
【0027】
第1のデジタルトルクセンサ13aは、シンクパルスSsync1が受信されることを契機として、検出結果としての電気信号を符号化することによりデジタル信号Sdig1を生成し、当該デジタル信号Sdig1を、伝送路45を介して第1のレシーバ34へ送信する。通信規格としてPSI5が採用される場合、符号化方式としてはマンチェスター・コーディングが採用される。デジタル信号Sdig1は、伝送路45の電圧に重畳されるパルスとして第1のレシーバ34へ送られる。レシーバ回路44は、伝送路45を通じて受信されるデジタル信号Sdig1を復号することにより検出信号Sd1を生成し、当該生成される検出信号Sd1をマイクロコンピュータ21へ供給する。
【0028】
第2のレシーバ35は、第2のデジタルトルクセンサ13bに対して動作電源を供給する。また、第2のレシーバ35は、第2のデジタルトルクセンサ13bとマイクロコンピュータ21との間の電気信号の授受を仲介する。第2のレシーバ35は、第1のレシーバ34と同一の構成を有している。すなわち、第2のレシーバ35は、端子51、ドライバ52、スイッチ53、およびレシーバ回路54を有している。
【0029】
端子51は、伝送路55を介して第2のデジタルトルクセンサ13bに接続されている。
ドライバ52は、第2のセンサ電源回路32により生成される動作電圧V2を、伝送路55を介して第2のデジタルトルクセンサ13bへ供給する。また、ドライバ52は、伝送路56を介してシンクパルス電源回路33に接続されている。すなわち、シンクパルス電源回路33は、第1のレシーバ34と第2のレシーバ35とによって共用される。伝送路56にはスイッチ53が設けられている。通常、スイッチ53はオンした状態に維持される。ドライバ52は、シンクパルス電源回路33により生成される電圧Vsyncを使用してシンクパルスSsync2を定められた周期で生成し、当該生成されるシンクパルスSsync2を伝送路55の電圧に重畳するかたちで第2のデジタルトルクセンサ13bへ供給する。また、ドライバ52は異常検出機能として、たとえば伝送路55において短絡などに起因して生じる過電流を検出する機能を有している。ドライバ42は、過電流が検出されるとき、スイッチ43をオンした状態からオフした状態へ切り替える。
【0030】
第2のデジタルトルクセンサ13bは、シンクパルスSsync2が受信されることを契機として、検出結果としての電気信号を符号化することによりデジタル信号Sdig2を生成し、当該デジタル信号Sdig2を、伝送路55を介して第2のレシーバ35へ送信する。レシーバ回路54は、伝送路55を通じて受信されるデジタル信号Sdig2を復号することにより検出信号Sd2を生成し、当該生成される検出信号Sd2をマイクロコンピュータ21へ供給する。
【0031】
<比較例>
ここで、デジタルトルクセンサの冗長化(ここでは二重化)に伴いインターフェース回路22を冗長化する際、インターフェース回路22としてつぎの構成を採用することも考えられる。
【0032】
図2に示すように、比較例としてのインターフェース回路61は、第1のデジタルトルクセンサ13aに対応する第1の系統の構成要素として、第1のセンサ電源回路31、第1のレシーバ34、および第1のシンクパルス電源回路33aを有している。第1のシンクパルス電源回路33aは、第1のデジタルトルクセンサ13aに対するシンクパルスS
sync1を生成するための電圧V
sync1を生成する。また、インターフェース回路61は、第2のデジタルトルクセンサ13bに対応する第2の系統の構成要素として、第2のセンサ電源回路32、第2のレシーバ35、および第2のシンクパルス電源回路33bを有している。第2のシンクパルス電源回路33bは、第2のデジタルトルクセンサ13bに対するシンクパルスS
sync2を生成するための電圧V
sync2を生成する。
【0033】
この構成によれば、確かにインターフェース回路61の冗長化(二重化)は図れるものの、インターフェース回路61のサイズの大型化が懸念される。これは、1つの系統の構成要素であるセンサ電源回路、レシーバ、およびシンクパルス電源回路のすべてがデジタルトルクセンサの系統数と同数だけ設けられることによる。たとえば2系統の場合であれば、インターフェース回路のサイズ(回路面積)は、一系統の場合と比べて、少なくとも2倍のサイズとなる。
【0034】
また、インターフェース回路とデジタルトルクセンサとの間の通信規格としてPSI5が採用される場合、2種類の電源回路(センサ電源回路およびシンクパルス電源回路)が必要とされる。しかもシンクパルス電源回路は、センサ電源回路に比べてダイサイズ(チップ面積)が大きい。これは、シンクパルス電源回路が昇圧回路を有することなどに起因する。このため、通信規格としてPSI5が採用される場合、冗長化に伴うインターフェース回路のサイズ(ECU11における基板占有面積)が大きくなりやすい。
【0035】
<実施の形態の作用>
この点、先の
図1に示される本実施の形態によれば、シンクパルス電源回路33が第1のレシーバ34と第2のレシーバ35とによって共用される。これにより、インターフェース回路22には単一のシンクパルス電源回路33を設けるだけでよい。このため、少なくとも先の
図2に示される比較例における第1のシンクパルス電源回路33aまたは第2のシンクパルス電源回路33bの分だけインターフェース回路22のサイズを小さくすることができる。
【0036】
また、たとえば第1の系統の伝送路45において短絡に起因して過電流が生じた場合、ドライバ42によってスイッチ43がオン状態からオフ状態へ切り替えられる。伝送路46が遮断されることにより、シンクパルス電源回路33からドライバ42への電圧Vsyncの供給が停止される。このため、第1の系統において発生した異常(ここでは、伝送路45の短絡)が、正常系統である第2の系統へ何らかの影響を及ぼすことを抑制できる。
【0037】
図3(a)に二点鎖線で示されるように、たとえば、第1の系統の伝送路45に短絡が発生した場合、伝送路45を通じて第1のデジタルトルクセンサ13aへ供給されるシンクパルスS
sync1の電圧レベルが大きく低下する。すると、
図3(b)に二点鎖線で示されるように、このシンクパルスS
sync1の電圧レベルの低下に伴い、伝送路55を通じて第2のデジタルトルクセンサ13bへ供給されるシンクパルスS
sync2の電圧レベルも低下する。このため、正常系統におけるシンクパルスS
sync2について、適切な電圧レベルが確保できないことが懸念される。
【0038】
この点、本実施の形態では、第1の系統の伝送路45に過電流が生じた場合、異常系統である第1の系統のスイッチ43がオフされる。これにより、第1の系統におけるシンクパルスSsync1の電圧レベルの低下に伴って、正常系統である第2の系統のシンクパルスSsync2の電圧レベルが低下することを抑制することができる。すなわち、正常系統の第2のデジタルトルクセンサ13bの動作が、異常系統である第1の系統の影響を受けることが抑制される。このため、正常系統の第2のデジタルトルクセンサ13bは、適切に動作を継続することができる。
【0039】
ちなみに、第2の系統の伝送路55に短絡などの異常が発生した場合においても、ドライバ52によってスイッチ53がオン状態からオフ状態へ切り替えられる。これにより、第2の系統において発生した異常(ここでは、伝送路55の短絡)が、正常系統である第1の系統へ何らかの影響を及ぼすことを抑制できる。このため、正常系統の第1のデジタルトルクセンサ13aは、適切に動作を継続することができる。
【0040】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)冗長化(二重化)されたインターフェース回路22において、第1のレシーバ34と第2のレシーバ35とで共通のシンクパルス電源回路33が使用される。このため、第1のレシーバ34と第2のレシーバ35とで別個のシンクパルス電源回路33が使用される場合に比べて、インターフェース回路22のサイズ(チップ面積)を小さくすることができる。具体的には、少なくとも1つのシンクパルス電源回路のチップ面積の分だけインターフェース回路22のサイズを低減することができる。また、インターフェース回路22のサイズを低減度合いに応じてECU11のサイズも小さくすることもできる。
【0041】
(2)第1のレシーバ34は、シンクパルス電源回路33からドライバ42への電圧Vsyncの供給を遮断するスイッチ43を有している。第2のレシーバ35は、シンクパルス電源回路33からドライバ52への電圧Vsyncの供給を遮断するスイッチ53を有している。ドライバ42,52は異常としてたとえば過電流が検出されるとき、対応するスイッチ43,53をオフする。これにより、過電流などの異常が正常系統のデジタルトルクセンサの動作に何らかの影響を及ぼすことを抑制できる。このため、正常系統のデジタルトルクセンサを継続して動作させることができる。したがって、インターフェース回路22、ひいてはECU11に対する冗長化に対する要求に応えることができる。
【0042】
(3)デジタルトルクセンサとレシーバとの間の通信規格としてPSI5が採用される場合、インターフェース回路には2種類の電源回路(センサ電源回路およびシンクパルス電源回路)を設ける必要がある。このため、インターフェース回路を冗長化する際、その冗長化に伴う回路面積の増大が問題視されやすい。したがって、デジタルトルクセンサとレシーバとの間の通信規格としてPSI5が採用される場合において、インターフェース回路を冗長化するとき、本実施の形態のインターフェース回路22の構成、すなわち2系統のレシーバ(34,35)で同一のシンクパルス電源回路33を共用する構成は好適である。
【0043】
(4)インターフェース回路22を構成する複数の電子回路(第1のセンサ電源回路31、第2のセンサ電源回路32、シンクパルス電源33、第1のレシーバ34、第2のレシーバ35)が単一のICチップとして集積化されている。このため、インターフェース回路22のサイズをコンパクト化することができる。また、インターフェース回路22を単体で流通させることも可能である。
【0044】
(5)インターフェース回路22は、車両に搭載されるECU11に好適である。車両においては、設置スペースを確保する観点から、ECU11を含め各種部品の小型化あるいは省スペース化が要求される。本実施の形態によれば、インターフェース回路22のサイズが低減される分だけ、ECU11のサイズも低減することが可能である。
【0045】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・スイッチ43は、第1のレシーバ34に対して独立した別個の構成要素として設けてもよい。この場合、スイッチ43は、たとえば伝送路46における第1のレシーバ34とシンクパルス電源回路33との間に設ける。また、スイッチ43と同様に、スイッチ53も、第2のレシーバ35に対して独立した別個の構成要素として設けてもよい。この場合、スイッチ53は、たとえば伝送路56における第2のレシーバ35とシンクパルス電源回路33との間に設ける。また、スイッチ43,53のオンオフ制御は、ドライバ42,52で行ってもよいし、マイクロコンピュータ21で行ってもよい。
【0046】
・製品仕様などに応じて、インターフェース回路22として、スイッチ43,53を割愛した構成を採用してもよい。この場合であれ、インターフェース回路22のサイズの大型化を抑えつつ機能の冗長化に対応することができる。
【0047】
・インターフェース回路22を構成する複数の電子回路(第1のセンサ電源回路31、第2のセンサ電源回路32、シンクパルス電源33、第1のレシーバ34、第2のレシーバ35)は、単一のICチップとして集積化しなくてもよい。
【0048】
・インターフェース回路22はデジタルセンサだけでなく、アナログセンサにも対応することが可能である。インターフェース回路22は、たとえばマイクロコンピュータ21から供給される種別信号(使用されるセンサの種別を示す情報)に基づき、使用されるセンサの種別を判定する。また、インターフェース回路22は、使用されるセンサの種別に応じて、シンクパルス電源回路33およびレシーバ回路44,54を動作させたり停止させたりする機能を有している。第1のセンサ電源回路31および第2のセンサ電源回路32は、使用されるセンサの種別に応じて、生成する電圧をデジタルセンサに適した電圧とアナログセンサに適した電圧との間で切り替え可能である。デジタルセンサに代えてアナログセンサが使用される場合、PSI5による通信の実行に必要とされるシンクパルス電源回路33およびレシーバ回路44,54は、動作を停止した状態に維持される。このように、デジタルセンサおよびアナログセンサのいずれが使用される場合であれ、同一のインターフェース回路22、ひいては同一のECU11を使用することができる。ちなみに、デジタルセンサとアナログセンサとを併用することも可能である。また、通信規格としてPSI5以外の規格(たとえばSENT:Single Edge Nibble Transmission)に対応することも可能である。
【0049】
・ECU11の制御対象は、電動パワーステアリングシステムのモータ12に限らない。ステアバイワイヤシステムの転舵機構にトルク(転舵力)を付与するモータを制御対象としてもよい。また、ECU11は、エアバッグシステムなどの種々の車載システムの制御装置として使用することが可能である。この場合、使用されるデジタルセンサはデジタルトルクセンサに限らない。たとえばECU11の制御対象がエアバッグシステムであるとき、デジタルセンサとしては、車両の衝突を検出する衝突センサなどが使用される。
【0050】
・インターフェース回路22、あるいはECU11は、様々な技術分野に適用可能である。すなわち、インターフェース回路22あるいはECU11の搭載対象としては、たとえば車両以外にも工作機械などが挙げられる。また、ECU11の制御対象はモータ12に限らない。用途に応じた種々の電動アクチュエータの制御装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
12…モータ(制御対象)、13a…第1のデジタルトルクセンサ、13b…第2のデジタルトルクセンサ、21…マイクロコンピュータ(外部回路、制御回路)、22…インターフェース回路(センサ情報出力装置)、31…第1のセンサ電源回路(第1の電源回路)、32…第2のセンサ電源回路(第1の電源回路)、33…シンクパルス電源回路(第2の電源回路)、34…第1のレシーバ、35…第2のレシーバ、43…スイッチ、45,46…伝送路、53…スイッチ、55,56…伝送路、Sd1,Sd2…検出信号(センサ情報)、Ssync1,Ssync2…シンクパルス(同期信号)。