(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20221213BHJP
G07D 11/26 20190101ALI20221213BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D11/26
(21)【出願番号】P 2018215658
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】末冨 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 円
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-201863(JP,A)
【文献】特開2015-103056(JP,A)
【文献】特開2001-052231(JP,A)
【文献】特開2003-044895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00- 9/06
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の投入を受け入れ又は前記硬貨を放出する入出金部と、
前記入出金部と接続され、前記硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す分離部と、
前記分離部と接続される認識搬送部に配置され、該分離部から繰り出された前記硬貨を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記硬貨を前記入出金部へ搬送する主搬送経路を形成する主搬送部と、
前記認識搬送部の終端に接続されると共に前記主搬送部の始端に接続され、前記認識部により認識された前記硬貨を前記主搬送部に受け渡す受渡部と、
前記認識部により取扱可能と認識され前記主搬送部により搬送された前記硬貨を金種別に収納する複数のスタッカ部と、
前記硬貨の搬送及び集積を制御する制御部と
を具え
、
前記主搬送部は、
前記硬貨の盤面と当接する
第1の搬送面を有し、該
第1の搬送面に前記主搬送経路に沿った溝が形成された搬送ガイドと、
前記搬送ガイドの前記
第1の搬送面との間に前記硬貨の厚さよりも大きい隙間を形成しながら前記主搬送経路に沿って走行する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに設けられ、前記搬送ガイドの前記溝内まで突出した搬送ピンと
をさらに具え
、
前記認識搬送部は、平坦であり前記硬貨の盤面と当接する第2の搬送面を有し、前記主搬送部と異なる手段により前記硬貨に駆動力を伝達する
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記認識搬送部は、
前記第2の搬送面であり、光を透過する材料により構成され、前記硬貨と当接する認識案内面を有する光透過搬送ガイドと、
前記硬貨を前記光透過搬送ガイドの前記認識案内面に押し付け、前記分離部から受け取った前記硬貨に前記駆動力を与えて前記受渡部へ搬送する圧接搬送ベルトと、
前記光透過搬送ガイドを透過した光を基に、前記硬貨の光学的特性を検知する光学センサと
を具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記認識搬送部及び前記主搬送部は、それぞれ駆動源を有し、当該駆動源によりそれぞれ異なる搬送手段として別個に駆動されることにより前記硬貨を搬送する
ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記主搬送部は、前記受渡部から前記入出金部へ向かう片方向のみ前記硬貨を搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記主搬送部は、前記受渡部から前記入出金部に至る前記主搬送経路上に、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は他の搬送先へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える1個以上の分岐部が設けられている
ことを特徴とする請求項
4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記他の搬送先は、前記スタッカ部、前記認識搬送部により再利用不可又は出金不可と認識されたリジェクト硬貨を収納するリジェクト庫、前記硬貨を一時的に集積して保留し、当該硬貨を前記分離部へ搬送する一時保留部、前記スタッカ部に補充するための前記硬貨を集積する補充庫、前記スタッカ部から回収された前記硬貨を集積する回収庫、前記補充庫に集積されていた前記硬貨のうち前記認識搬送部により出金不可と認識されたリジェクト硬貨を収納する補充リジェクト庫、又は前記スタッカ部から前記入出金部に繰り出された後に受け取られなかった前記硬貨である取忘硬貨を収納する取忘取込庫の何れかである
ことを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記分岐部の一部であり、前記認識搬送部により再利用不可又は出金不可と認識されたリジェクト硬貨を、当該リジェクト硬貨を収納するリジェクト庫へ進行させるリジェクト硬貨分岐部と、
前記分岐部の一部であり、前記主搬送経路上における前記リジェクト硬貨分岐部よりも下流側に設けられ、前記認識部により取扱可能と認識された前記硬貨を前記スタッカ部へ進行させるスタッカ分岐部と
を具えることを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記入出金部が前側に配置され、前記分離部、前記認識部、前記主搬送部、前記受渡部、前記スタッカ部及び前記制御部を内部に有する筐体と、
前記筐体内における前側に設けられ、前記スタッカ部に補充するための前記硬貨又は当該スタッカ部から回収された前記硬貨を収納する補充回収庫を装着可能な前装填部と、
前記筐体内における後側に設けられ、前記補充回収庫を装着可能な後装填部と、
前記分岐部の一部であり、前記補充回収庫が前記前装填部に装着された場合に、前記スタッカ部から回収された前記硬貨を、当該補充回収庫へ進行させる前補回分岐部と、
前記分岐部の一部であり、前記補充回収庫が前記後装填部に装着された場合に、前記スタッカ部から回収された前記硬貨を、当該補充回収庫へ進行させる後補回分岐部と
をさらに具えることを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記前装填部又は前記後装填部のうち、前記補充回収庫が装着されていない側に装着され、前記認識搬送部により再利用不可又は出金不可と認識されたリジェクト硬貨を収納するリジェクト庫と、
前記分岐部の一部であり、前記リジェクト庫が前記前装填部に装着された場合に、前記リジェクト硬貨を当該リジェクト庫へ進行させる前リジェクト分岐部と、
前記分岐部の一部であり、前記リジェクト庫が前記後装填部に装着された場合に、前記リジェクト硬貨を当該リジェクト庫へ進行させる後リジェクト分岐部と
をさらに具えることを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記主搬送部は、前記認識部において認識され
前記受渡部から受け渡された前記硬貨のみを搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
前記受渡部は、前記認識部において認識された前記硬貨を、当該認識部において認識された順序を維持したまま前記主搬送部へ受け渡し、
前記主搬送部は、
前記受渡部から受け渡された順序を維持したまま
前記硬貨を搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
前記主搬送部において複数の前記スタッカ部とそれぞれ対応する箇所に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記スタッカ部へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える複数のスタッカ分岐部と、
前記認識搬送部により再利用不可又は出金不可と認識されたリジェクト硬貨を収納するリジェクト庫と、
前記主搬送部に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記リジェクト庫へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替えるリジェクト分岐部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記入出金部に投入された前記硬貨を前記スタッカ部へ搬送して収納させる入金収納処理において、前記認識搬送部により再利用可能と認識された前記硬貨を前記スタッカ部へ搬送させ、前記リジェクト硬貨を前記リジェクト庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項13】
前記硬貨を一時的に集積して保留し、当該硬貨を前記分離部へ搬送する一時保留部と、
前記一時保留部と接続され、前記スタッカ部から繰り出された前記硬貨を該一時保留部へ搬送する出金搬送部と、
前記主搬送部に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記一時保留部へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える一時保留分岐部と
を具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項14】
前記硬貨を収納する回収庫と、
前記主搬送部に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記回収庫へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える回収分岐部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記スタッカ部に集積されている前記硬貨を前記回収庫に集積させる回収処理において、前記スタッカ部に集積されている前記硬貨を繰り出させ、前記出金搬送部を介して前記一時保留部に集積し、該一時保留部に集積した前記硬貨を前記分離部へ搬送させ、該分離部により1枚ずつに分離された前記硬貨を前記認識搬送部により搬送すると共に認識させ、該認識搬送部から前記受渡部を介して前記主搬送部に受け渡された前記硬貨を前記回収分岐部から前記回収庫へ進行させるよう制御する
ことを特徴とする請求項
13に記載の硬貨処理装置。
【請求項15】
前記硬貨を集積し、当該硬貨を搬送する補充庫搬送部を有する補充庫と、
前記補充庫搬送部により搬送された前記硬貨を前記一時保留部へ搬送する補充搬送部と、
前記主搬送部において複数の前記スタッカ部とそれぞれ対応する箇所に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記スタッカ部へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える複数のスタッカ分岐部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記補充庫に集積されている前記硬貨を前記スタッカ部に集積させる補充処理において、前記補充庫に集積されている前記硬貨を前記補充搬送部により前記補充搬送部へ搬送させ、該補充搬送部により前記硬貨を前記一時保留部へ搬送して集積させ、該一時保留部に集積した前記硬貨を前記分離部へ搬送させ、該分離部により1枚ずつに分離された前記硬貨を前記認識搬送部により搬送すると共に認識させ、該認識搬送部から前記受渡部を介して前記主搬送部に受け渡された前記硬貨を、当該硬貨の金種に応じて前記スタッカ分岐部から前記スタッカ部へ搬送して集積させるよう制御する
ことを特徴とする請求項
13に記載の硬貨処理装置。
【請求項16】
前記補充処理において前記認識搬送部により出金不可と認識されたリジェクト硬貨を収納する補充リジェクト庫と、
前記主搬送部に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記補充リジェクト庫へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える補充リジェクト分岐部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記補充処理において、前記認識搬送部により出金可能と認識された前記硬貨を前記スタッカ部へ搬送させ、前記リジェクト硬貨を前記補充リジェクト庫へ搬送させるよう制御する
ことを特徴とする請求項
15に記載の硬貨処理装置。
【請求項17】
前記補充庫は、前記硬貨処理装置に対して着脱可能に構成され、
前記補充リジェクト庫は、前記補充庫と共に前記硬貨処理装置に対して着脱可能に構成されている
ことを特徴とする請求項
16に記載の硬貨処理装置。
【請求項18】
前記入出金部に繰り出された後に受け取られなかった前記硬貨である取忘硬貨を収納する取忘取込庫と、
前記主搬送部に設けられ、前記硬貨を前記主搬送経路に沿って進行させ、又は前記取忘取込庫へ進行させるよう、当該硬貨の進行方向を切り替える取忘分岐部と
をさらに具え、
前記制御部は、前記硬貨を前記入出金部へ放出する出金処理において、前記入出金部の前記取忘硬貨を前記分離部へ進行させて該分離部により1枚ずつに分離させ、前記認識搬送部により搬送すると共に認識させ、該認識搬送部から前記受渡部を介して前記主搬送部に受け渡された前記取忘硬貨を前記取忘分岐部から前記取忘取込庫へ進行させるよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項19】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項
18の何れかに記載の硬貨処理装置と
を具えることを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するものが広く普及している。
【0003】
この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客との間で硬貨の授受を行う入出金部、硬貨を搬送する搬送部、投入された硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種ごとに硬貨を収納する収納部(スタッカ部とも呼ぶ)等を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この硬貨処理装置の搬送部は、硬貨を搬送すべき搬送経路に沿って硬貨を案内する搬送路(搬送ガイドとも呼ぶ)と、該搬送経路に沿って張架された搬送ベルトと、該ベルトに所定間隔ごとに取り付けられた突起(ピンとも呼ぶ)とを有している。この搬送部は、斜め上方向を向くように傾斜した搬送面に硬貨の盤面を当接させ、搬送ベルトを該搬送面からやや離間させると共に、ピンの先端を搬送面の近傍に到達させている。このため搬送部は、搬送ベルトを走行させると共に、ピンの先端近傍における周側面を硬貨の周側面における後端近傍に当接させることにより、該硬貨を進行方向の後側から押し、搬送経路に沿って搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-174686号公報(
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述した認識部は、搬送部における搬送経路の途中に配置されており、例えば搬送ガイドの一部にガラス等の光を透過する材料でなる光透過部材が埋め込まれると共に、該光透過部材における搬送面と反対側に撮像部が配置された構成となっている。
【0007】
認識部は、搬送面の反対側から光透過部材を介して硬貨を撮像し、このとき生成される画像を基に硬貨の金種や真偽等を識別(認識)することができる。このため認識部では、歪みのない鮮明な画像を基に高精度な認識処理を行う目的で、光透過部材の表面をできるだけ平坦に形成し、また傷がつかないことが望ましい。そこで搬送部では、ピンの先端を光透過部材からやや離間させるように搬送ベルトを配置することで、走行するピンが光透過部材と摺動して傷付けることを回避できる。
【0008】
しかしながらこの場合、搬送部では、ピンの先端と搬送面との間隔が比較的大きくなるため、例えば搬送ベルトの撓み等によってピンが硬貨に乗り上げて正常に搬送できなくなる等、搬送精度が低下する場合がある、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、硬貨を高精度に認識し得ると共に円滑に搬送し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨の投入を受け入れ又は硬貨を放出する入出金部と、入出金部と接続され、硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す分離部と、分離部と接続される認識搬送部に配置され、該分離部から繰り出された硬貨を認識する認識部と、認識部により認識された硬貨を入出金部へ搬送する主搬送経路を形成する主搬送部と、認識搬送部の終端に接続されると共に主搬送部の始端に接続され、認識部により認識された硬貨を主搬送部に受け渡す受渡部と、認識部により取扱可能と認識され主搬送部により搬送された硬貨を金種別に収納する複数のスタッカ部と、硬貨の搬送及び集積を制御する制御部とを設け、主搬送部には、硬貨の盤面と当接する第1の搬送面を有し、該第1の搬送面に主搬送経路に沿った溝が形成された搬送ガイドと、搬送ガイドの第1の搬送面との間に硬貨の厚さよりも大きい隙間を形成しながら主搬送経路に沿って走行する搬送ベルトと、ベルトに設けられ、搬送ガイドの溝内まで突出した搬送ピンとを設け、認識搬送部は、平坦であり硬貨の盤面と当接する第2の搬送面を有し、主搬送部と異なる手段により硬貨に駆動力を伝達するようにした。
【0011】
また本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0012】
本発明は、硬貨に駆動力を伝達する手段が互いに異なる認識搬送部及び主搬送部の間に、当該硬貨を受け渡す受渡部を設けた。このため本発明は、主搬送部において、搬送ピンが搬送ガイドの溝内に到達した状態で搬送ベルトを走行させることにより、搬送ピンを硬貨の周側面における末尾側に当接させ、当該硬貨を搬送ガイドに沿って確実に搬送できる。その一方で本発明は、主搬送部と別に設けられた認識搬送部において、搬送ピンによる影響を考慮する必要なく、認識部によって硬貨を高精度に認識できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬貨を高精度に認識し得ると共に円滑に搬送し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】現金自動預払機の構成を示す略線的斜視図である。
【
図2】前面機としての硬貨処理装置の構成を示す略線図である。
【
図4】ピンベルト搬送部の構成を示す略線図である。
【
図5】ピンベルト搬送部、スタッカ部及び出金搬送部の構成を示す略線的断面図である。
【
図7】補回カセット及びリジェクトカセットの構成を示す略線的斜視図である。
【
図8】後面機としての硬貨処理装置の構成を示す略線図である。
【
図9】入金計数処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図10】入金返却処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図11】入金収納処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図12】出金処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図13】取込処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図14】補充処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図15】回収処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【
図16】精査処理における硬貨の搬送経路を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.現金自動預払機及び硬貨処理装置の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0017】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、カード入出口4、硬貨入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0018】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。硬貨入出金口5は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。また硬貨入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに応対部3には、使用者により入金される紙幣が投入されると共に該使用者へ出金する紙幣が排出される紙幣入出金口(図示せず)等も設けられている。
【0019】
操作部としての操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
【0020】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0021】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0022】
[2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、
図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する種々の材料でなり、薄い円板状に形成されている。
【0023】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、硬貨制御部12、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22、及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0024】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0025】
[2-1.入出金部、シュート部及び上分離部の構成]
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、底面が曲面により構成され内部に硬貨を収容する収容器13Aを有している。収容器13Aには、上側において外部と連通する上開口部、下側からシュート部14と接続されたシュート接続口、及びピンベルト搬送部18と接続された搬送接続口がそれぞれ設けられている。また入出金部13は、収容器13Aの上開口部を開放又は閉塞する上シャッタ13Bや、シュート接続口を開放又は閉塞するシュート接続シャッタ(図示せず)等を有している。因みに入出金部13には、収容器13A内における硬貨の有無や上開口部を顧客の手が通過したこと等を検知するセンサ(図示せず)も適宜設けられている。
【0026】
入出金部13は、上シャッタ13Bを開放すると共にシュート接続シャッタを閉塞した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、上シャッタ13Bを閉塞すると共にシュート連通シャッタを開放する。これにより入出金部13は、投入された硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、該シュート部14の下側に設けられた上分離部15内に到達させる。
【0027】
また入出金部13は、上シャッタ13B及びシュート接続シャッタを閉塞した状態で、後述するようにピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、上シャッタ13Bを開放して利用者に受け取らせる。
【0028】
シュート部14は、硬貨の直径よりも十分に大きい内径を有する筒状に形成されており、重力を利用して硬貨を入出金部13から上分離部15へ進行させる。すなわちシュート部14は、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で移動させることができる。説明の都合上、以下では、このように硬貨を移動させることを群移動とも呼ぶ。
【0029】
上分離部15は、大きく分けて、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。集積分離部15Aは、左側(すなわち
図2における紙面の奥側)に円盤15Cが配置されると共に、該円盤15Cの右側に集積カバー(図示せず)が設けられている。
【0030】
円盤15Cは、硬貨と比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されており、中心軸が右斜め上方を向くように傾斜している。この円盤15Cは、中心軸を中心に回転可能に支持されており、また表面に複数の突起が設けられている。集積カバーは、下側部分が円盤15Cの外周に極めて近接した円弧状でなり、上側へ進むに連れて該円盤15Cから離れるような曲面を形成しており、該円盤15Cとの間に集積空間を形成している。因みに集積分離部15Aには、この集積空間内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)が設けられている。
【0031】
このため集積分離部15Aは、シュート部14から硬貨が落下してくると、この硬貨を集積空間内に集積する。また集積分離部15Aは、円盤15Cを
図2の時計回りに回転させることにより、集積された硬貨を適宜撹拌しながら、突起に硬貨を1枚ずつ引っ掛け、該硬貨の盤面を該円盤15Cに対向(すなわち当接)させた姿勢で持ち上げていき、分離搬送部15Bに引き渡す。
【0032】
分離搬送部15Bは、硬貨を案内する搬送ガイドと、該搬送ガイドに沿って走行するピンベルトとを有している。搬送ガイドは、上方へ進行してから後ろ斜め下方向へ屈曲するような搬送経路に沿って形成されている。また搬送ガイドには、搬送経路の左側において硬貨の盤面と対向するガイド面を貫通するようにして、該搬送経路に沿った溝が形成されている。
【0033】
ピンベルトは、搬送ガイドの左側に配置されており、図示しないプーリ等によって搬送経路に沿って走行するように張架されている。このピンベルトは、走行方向に沿って所定間隔ごとにピンが設けられており、ピンの先端が搬送ガイドの溝を貫通してガイド面よりも右側に突出している。分離搬送部15Bは、円盤15Cの回転と同期するようにピンベルトを走行させることにより、集積分離部15Aから引き渡された硬貨を搬送ガイドに沿って上方向へ搬送してから後ろ斜め下方へ搬送し、認識搬送部16に引き渡す。
【0034】
[2-2.認識搬送部及び受渡部の構成]
認識搬送部16は、シュート部14の右側(
図2における紙面の手前側)に位置しており、
図3に模式的な平面図を示すように、大きく分けて搬送ガイド31、ガラス板32、撮像部33及び圧接搬送ベルト35により構成されている。搬送ガイド31は、全体として前後方向に長く上下方向に短く左右方向に薄い直方体状若しくは薄板状に形成されている。この搬送ガイド31の右側面は、平坦に形成されており、硬貨を搬送する際に該硬貨の盤面を摺動させる搬送面となっている。また搬送ガイド31の上側及び下側には、搬送面よりも右側に突出した上搬送ガイド及び下搬送ガイド(何れも図示せず)が立設されている。
【0035】
また搬送ガイド31は、搬送面の一部に左右方向に貫通する角孔が形成されており、この角孔にガラス板32がはめ込まれている。光透過搬送ガイドとしてのガラス板32は、可視光を高い透過率で透過させる材料であるガラスを材料とし、左右方向に薄い板状に形成されている。このガラス板32は、その右側面である搬送面32S(以下これを認識案内面とも呼ぶ)を搬送ガイド31の搬送面31Sと連続した平面とするようにして、該搬送ガイド31にはめ込まれている。因みにガラス板32は、サファイアガラスであり、一般的なガラスと比較して硬度が高く、また可視光の透過率が高くなっている。
【0036】
光学センサとしての撮像部33は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有しており、ガラス板32の右側から該ガラス板32を透過してきた光の像を撮像して画像信号(以下これを光学的特性とも呼ぶ)を生成し、これを認識処理部34へ供給する。認識処理部34は、得られた画像信号を基に所定の画像認識処理等を実行することにより、硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を判定し、得られた判定結果を当該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知する。
【0037】
圧接搬送ベルト35は、可撓性を有する材料により構成された円環状のベルトであり、その表面の摩擦係数が比較的高くなっている。この圧接搬送ベルト35は、搬送ガイド31の右側において、複数のプーリ36により形成された走行路に沿って張架されており、図示しないモータから駆動力が伝達されると、矢印E35により示すように、図の時計回りに走行する。さらに圧接搬送ベルト35は、搬送ガイド31及びガラス板32に近接する部分において、搬送面との間に硬貨の厚さよりも狭い隙間を形成している。
【0038】
認識搬送部16は、前側に位置する上分離部15の分離搬送部15B(
図2)により硬貨が搬送されてくると、これを圧接搬送ベルト35と搬送ガイド31の搬送面31S又はガラス板32の搬送面32Sとの間に挟み込む。続いて認識搬送部16は、圧接搬送ベルト35の走行に伴ってこの硬貨を搬送面31S又は搬送面32Sに摺動させながら、搬送経路W16に沿って後方へ搬送する。やがて認識搬送部16は、この硬貨が撮像部33の右側に到達すると、該撮像部33により該硬貨を撮像して画像信号を生成し、これを硬貨制御部12へ供給すると共に、引き続き該圧接搬送ベルト35の走行によりこの硬貨を後方へ搬送して、後側の受渡部17(
図2)に引き渡す。
【0039】
受渡部17は、前側の認識搬送部16と後側のピンベルト搬送部18との間に位置しており、搬送ガイドにより硬貨を後ろ斜め下方へ進行させる。これにより受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨を、ピンベルト搬送部18による硬貨の搬送経路上に位置させて該ピンベルト搬送部18に引き渡すことができる。
【0040】
このとき受渡部17は、硬貨を1枚ずつ受け渡す。すなわち受渡部17は、認識搬送部16において1枚ずつ認識された硬貨を、1枚ずつに分離された状態を維持したまま、且つ受け取った順序も維持したまま、ピンベルト搬送部18に順次引き渡す。
【0041】
[2-3.ピンベルト搬送部の構成]
主搬送部としてのピンベルト搬送部18は、
図2の一部を拡大して
図4に示すように、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側を取り囲むように配置されている。説明の都合上、以下ではピンベルト搬送部18の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uと呼ぶ。このうち下ピンベルト搬送部18Lの大部分は、
図2に示したように、出金搬送部22及び一時保留部23の左側、すなわち
図2における紙面の奥側に位置している。
【0042】
ピンベルト搬送部18は、大きく分けて搬送ガイド40及びピンベルト50により構成されている。このうち搬送ガイド40は、
図4におけるA1-A2断面を
図5に示すように、主ガイド板41、副ガイド板42及び溝部43により構成されている。ここでは、
図4に示したように、下ピンベルト搬送部18Lを例に説明する。
【0043】
主ガイド板41は、下ピンベルト搬送部18L(
図4)において、前後方向に長く上下方向に短く左右方向に薄い板状に形成されており、その右側面である搬送面41S(
図5)が、上側をやや左方向へ傾けたような傾斜面となっている。この主ガイド板41は、搬送面41Sにより硬貨CNの盤面と当接することが想定されている。
【0044】
主ガイド板41の上側及び下側には、副ガイド板42が設けられている。副ガイド板42は、搬送面41Sよりも右方向へ突出しており、その内側面(搬送面41S側の面)により硬貨CNの上下方向への移動範囲を規制することが想定されている。これにより搬送ガイド40は、下ピンベルト搬送部18Lにおいて、前後方向に沿って硬貨CNを案内することができる。
【0045】
ピンベルト搬送部18(
図4)のうち上ピンベルト搬送部18Uは、下ピンベルト搬送部18Lと同様、前後方向に沿って硬貨CNを案内する。また上ピンベルト搬送部18Uは、前端近傍において、前斜め下方向へ屈曲し、上述したように入出金部13の収容器13A(
図2)と接続されている。一方、ピンベルト搬送部18のうち前ピンベルト搬送部18F及び後ピンベルト搬送部18Rは、概ね上下方向に沿って硬貨CNを案内する。因みに前ピンベルト搬送部18F、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uでは、それぞれにおける主ガイド板41の搬送面41Sが、下ピンベルト搬送部18Lにおける搬送面41S(
図5)と同一の平面上に位置しており、何れも上側部分を左方向へ傾けたような傾斜面となっている。
【0046】
ピンベルト50(
図4)は、搬送ベルト51及び搬送ピン52により構成されている。搬送ベルト51は、可撓性を有する材料によって円環状に形成されている。一方、硬貨処理装置筐体11(
図2)には、主に搬送ガイド40が屈曲する箇所の近傍に、複数のプーリ55がそれぞれ回転可能に設けられている。搬送ベルト51は、各プーリ55を順次結ぶように張架されることにより、
図5に断面図を示したように、搬送面41Sにおける上下方向のほぼ中央に対し、右側にやや離れた箇所に位置しており、該搬送面41Sとの間に硬貨CNの厚さよりも大きい隙間を形成する。
【0047】
搬送ベルト51は、断面が長方形状であり、且つその短辺が主ガイド板41の搬送面41Sとほぼ平行となっている。この搬送ベルト51には、
図4に示したように、複数の搬送ピン52が離散的に設けられている。搬送ピン52は、
図5に断面図を示したように、搬送ベルト51の周囲を概ね取り囲むベルト取付部52Aと、該ベルト取付部52Aの左面から左方向へ突出した突出ピン部52Bとにより構成されている。このうち突出ピン部52Bは、概ね搬送面41Sの法線に沿った細長い円柱状に形成されており、その先端である左端が搬送面41Sよりも左側に到達している。
【0048】
これに応じて主ガイド板41には、上下方向のほぼ中央に、搬送面41Sの一部が左側へ凹んでなる溝部43が形成されている。この溝部43は、ピンベルト50の走行経路に沿って形成されている。また溝部43は、突出ピン部52Bとの間に十分な隙間を形成するよう、溝幅(すなわち上下方向の長さ)及び深さ(搬送面41Sから底面までの長さ)が適切に設定されている。因みにピンベルト搬送部18では、搬送ガイド40に設けられた溝部43の右側にピンベルト50が張架されるよう、各プーリ55(
図4)の位置や形状が定められている。
【0049】
このような構成により、ピンベルト搬送部18(
図4)は、図示しないモータから一部のプーリ55に駆動力が伝達されると、該プーリ55を反時計回りに回転させ、これに伴ってピンベルト50を図の反時計回りとなるように、すなわち矢印E50により示す方向へ走行させる。これに伴いピンベルト搬送部18(
図5)は、搬送ガイド40の搬送面41Sに硬貨の盤面(すなわち左側面)を寄りかからせた状態で、搬送ピン52により当該硬貨に対し搬送方向へ力を加え、該搬送ガイド40に沿って進行させること、すなわち搬送することができる。以下では、ピンベルト搬送部18における硬貨の搬送方法をピン搬送とも呼ぶ。
【0050】
このピンベルト搬送部18(
図4)は、受渡部17から硬貨を受け取ると、この硬貨を前ピンベルト搬送部18Fに沿って下方へ進行させ、さらに下ピンベルト搬送部18Lに沿って後方へ進行させる。続いてピンベルト搬送部18は、この硬貨を後ピンベルト搬送部18Rに沿って上方へ進行させ、さらに上ピンベルト搬送部18Uに沿って前方へ進行させた後、入出金部13の収容器13Aへ進行させる。
【0051】
すなわちピンベルト搬送部18は、認識搬送部16(
図2)から受渡部17を介して受け渡された硬貨を、スタッカ部21の周囲を周回するようにして、概ね環状に形成された搬送経路W18(以下これを主搬送経路とも呼ぶ)に沿って入出金部13へ搬送することができる。
【0052】
かかる構成に加えてピンベルト搬送部18(
図4)には、6箇所の分岐部19が設けられている。具体的に前ピンベルト搬送部18Fには、前補回分岐部19Aが設けられている。下ピンベルト搬送部18Lには、前側から順に、前第1リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fが設けられている。説明の都合上、以下では前補回分岐部19A、前第1リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fをまとめて分岐部19とも呼ぶ。
【0053】
回収分岐部としての前補回分岐部19Aは、搬送ガイド40における主ガイド板41(
図5)に、右方向から見て長方形状の角孔でなる分岐孔41H(
図4)が穿設されており、この分岐孔41Hを閉塞するように分岐板45が設けられている。因みに分岐孔41Hにおける前後方向の長さは、硬貨の直径よりも大きくなっている。
【0054】
分岐板45は、
図6(A)に模式的な断面図を示すように、硬貨CNの搬送方向に関して下流側である下端近傍において、前後方向に沿った回動軸46により回動可能に支持されている。また分岐板45は、硬貨制御部12(
図2)の制御に基づき、所定のアクチュエータにより、上流側である上端近傍を左側又は右側へ変位させるようにして回動する。
【0055】
前補回分岐部19Aにおける分岐孔41Hの左側には、前補回案内部61が設けられている。この前補回案内部61は、傾斜面を形成する部材やその周囲を囲む部材により形成されており、
図2に示したように、前補回分岐部19Aの左側から硬貨を落下若しくは滑降させながら、補充回収庫24の上面近傍まで案内する。
【0056】
分岐板45は、
図6(A)に示したように、上流側である上端近傍が左側へ回動されると、分岐孔41Hを閉塞し、その右側面により主ガイド板41の搬送面41Sとほぼ連続した平面を形成する。このとき前補回分岐部19Aは、ピンベルト50により搬送されてきた硬貨CNを、引き続きピンベルト搬送部18の搬送ガイド40に沿って、さらに下流側へ進行させる。
【0057】
一方、分岐板45は、
図6(B)に示すように、上流側である上端近傍が右側へ回動されると、分岐孔41Hの上流側を開放すると共に、この上端近傍を主ガイド板41から右側へ十分に離れた位置に到達させる。このとき前補回分岐部19Aは、ピンベルト50により搬送されてきた硬貨を、分岐板45の左側面によって分岐孔41Hの内部へ、すなわち主ガイド板41の搬送面41Sよりも左側へ進行させ、前補回案内部61に沿って進行させる。因みに分岐板45には、搬送ピン52との干渉を回避するための凹みや切欠等が適宜形成されている。
【0058】
このように前補回分岐部19A(
図4)は、硬貨制御部12(
図2)の制御に基づいて分岐板45を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて前補回案内部61に沿って進行させるかを、切り替えることができる。
【0059】
また前第1リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fは、何れも搬送経路W18の方向に合わせて前補回分岐部19Aを反時計回りに90度回転させたように構成されている。
【0060】
補充リジェクト分岐部としての前第1リジェクト分岐部19Bの左側には、硬貨を第1補充リジェクト庫25の上面近傍へ進行させる前第1リジェクト案内部62が設けられている。因みに前第1リジェクト案内部62には、さらに前第2リジェクト分岐部19G(
図2)が設けられている。前第2リジェクト分岐部19Gは、前補回分岐部19A等と同様に構成されており、その左側には、硬貨を第2補充リジェクト庫26の上面近傍へ進行させる前第2リジェクト案内部67が設けられている。
【0061】
また一時保留分岐部19Cの左側には、硬貨を一時保留部23へ進行させる一時保留案内部63が設けられている。後第1リジェクト分岐部19Dの左側には、硬貨をリジェクト庫27の上面近傍へ進行させる後第1リジェクト案内部64が設けられている。後第2リジェクト分岐部19Eの左側には、硬貨を取忘取込庫28の上面近傍へ進行させる取忘分岐部としての後第2リジェクト案内部65が設けられている。後補回分岐部19Fの左側には、補充回収庫24が硬貨処理装置筐体11(
図2)の後側に取り付けられた場合(詳しくは後述する)に、該補充回収庫24の上面近傍へ硬貨を進行させる後補回案内部66が設けられている。
【0062】
さらにピンベルト搬送部18(
図4)には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20(20A、20B、20C、20D、20E及び20F)が設けられている。各スタッカ分岐部20は、搬送経路W18の方向に合わせて前補回分岐部19Aを時計回りに90度回転させたように構成されている。スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部(後述する)が設けられている。
【0063】
すなわち各スタッカ分岐部20は、分岐板45(
図5)を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて各スタッカ部21へ進行させるかを、切り替えることができる。
【0064】
このようにピンベルト搬送部18は、認識搬送部16から受渡部17を介して受け渡された硬貨を搬送経路W18に沿って搬送し、該硬貨の搬送経路を分岐部19又はスタッカ分岐部20により適宜分岐させて補充回収庫24やスタッカ部21等へ進行させ、或いは入出金部13へ進行させるようになっている。
【0065】
[2-4.スタッカ部、出金搬送部及び一時保留部の構成]
硬貨処理装置10(
図2)には、前後方向に沿って6個のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)が整列配置されている。各スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられている。このスタッカ部21は、大きく分けて、スタッカ分岐部20の近傍となる上側に設けられた案内部71と、該案内部の下側においてスタッカ部21の大部分を占める集積部72と、該集積部の下側に設けられた繰出部73とにより構成されている。
【0066】
集積部72は、硬貨の盤面をほぼ水平とした姿勢で順次積み上げるようにして、上下方向に沿って集積する円筒状の集積筒72Yを有している。因みに集積部72では、3本の集積筒72Yが設けられており、これらを水平面内で移動させ得るようになっている。案内部71は、スタッカ分岐部20から引き渡される硬貨を集積筒72Yの上端近傍へ案内し、該集積筒72Y内に既に集積されている他の硬貨の上側に載置させる。
【0067】
繰出部73は、集積筒72Yの下端近傍において、該集積筒72Yに集積されている硬貨のうち最も下側の1枚を繰り出す。具体的に繰出部73は、
図5に模式的な断面図を示したように、集積筒72Yの真下から右側にかけてベルト及びプーリの組合せでなる搬送機構を構成しており、このベルトの上面を右方向へ向けて走行させることにより、集積筒72Y内に集積されている最も下側の硬貨を右方向へ搬送して繰り出す。
【0068】
ここで
図5に示したように、スタッカ部21は下ピンベルト搬送部18Lのほぼ真上に位置している。またスタッカ部21における繰出部73は、ベルトの右端を出金搬送部22の真上に、すなわち下ピンベルト搬送部18Lの右側に位置させている。このためスタッカ部21から繰り出された硬貨CNは、下ピンベルト搬送部18Lへ落下することなく、出金搬送部22又は一時保留部23(
図2)へ落下する。
【0069】
出金搬送部22(
図2)は、後側から4個のスタッカ部21、すなわちスタッカ部21A~21Dの右下側に位置している。この出金搬送部22は、上側及び前側が開放された中空の直方体のような形状となっており、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22の底部には、左端近傍及び右端近傍にそれぞれプーリが配置されており、その周囲にベルトが張架されている。すなわち出金搬送部22は、
図5に示したように、左右それぞれに側板が配置され、その間の下部に配置されたベルトの上面が、内部に形成された空間の底面となっている。
【0070】
出金搬送部22は、上側のスタッカ部21から硬貨が落下してくると、これらを内部空間に収容し、ベルトの上面に載置させ、若しくは既に収容している他の硬貨と共に集積させる。また出金搬送部22は、硬貨制御部12(
図2)の制御に基づいてプーリを回転させることにより、ベルトの上面を前方向へ進行させ、該ベルト上に載置若しくは集積されている硬貨を前方向へ搬送し、やがて一時保留部23内へ落下させる。
【0071】
このとき出金搬送部22は、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で搬送することができる。説明の都合上、以下ではこのように硬貨を搬送することを群搬送とも呼ぶ。
【0072】
一時保留部23は、硬貨を一時的に集積させる箇所であり、出金搬送部22の前側、すなわちスタッカ部21E及び21Fの右下側に位置している。この一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成している。この一時保留部23は、出金搬送部22と同様、上側が開放されている。
【0073】
また一時保留部23における後側の側面は、下側部分がほぼ閉塞されているものの、その上側の部分、すなわち出金搬送部22のベルトよりも上側の部分が開放されている。このため一時保留部23の内部空間は、出金搬送部22の内部空間と連通している。さらに一時保留部23の底部は、出金搬送部22の底部と同様、ベルトが組み込まれている。
【0074】
このため一時保留部23は、スタッカ部21E及び21Fから硬貨が繰り出されて落下してくると、これらを内部空間に収容し、ベルト上に載置させ、若しくは他の硬貨と共に集積させる。また一時保留部23は、出金搬送部22から搬送されてきた硬貨も、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。
【0075】
さらに一時保留部23における左側の側板には、一時保留案内部63(
図2及び
図4)からの繰出口となる孔部が形成されている。このため一時保留部23は、ピンベルト搬送部18から一時保留分岐部19C及び一時保留案内部63を介して硬貨が引き渡されると、この硬貨も内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。
【0076】
この一時保留部23(
図2)は、ベルトを停止させている場合、内部空間に集積している硬貨をそのまま保持する。一方、一時保留部23は、硬貨制御部12(
図2)の制御に基づいてベルトの上面を前上方向に走行させた場合、集積している硬貨を前斜め上方へ進行させていき、やがて該ベルトの前端部分から繰り出して上分離部15に受け渡すこと、すなわち認識搬送部16へ搬送させることができる。
【0077】
このとき一時保留部23は、出金搬送部22と同様、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で搬送すること、すなわち群搬送を行うことができる。
【0078】
[2-5.補充回収庫、リジェクト庫等及び下分離部の構成]
補充庫及び回収庫としての補充回収庫24は、硬貨処理装置筐体11の下部前側に設けられており、右方向から見て英大文字の「L」に似た立体形状となっている。他の観点から見れば、補充回収庫24は、直方体における後上側部分を仕切って第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26とした場合の残った部分となっている。
【0079】
この補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する空間が形成されており、上面が上面板により閉塞されているものの、該上面板における前補回案内部61との接続部分に、硬貨を通過させる通過孔が形成されている。また補充回収庫24の底部には、出金搬送部22と同様、複数のプーリの周囲に張架されたベルト24Bが配置されている。補充庫搬送部としてのベルト24Bは、前側においてほぼ水平となっているものの、後側の約1/3乃至1/4の範囲において、後側を高めるように傾斜されている。さらにベルト24Bの後端近傍には、硬貨を通過させる孔部(図示せず)が形成されている。
【0080】
このため補充回収庫24は、ピンベルト搬送部18から前補回分岐部19A(
図4)及び前補回案内部61を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に進行させて集積する。また補充回収庫24は、ベルト24Bを停止させている場合には、硬貨を集積した状態を保持する一方、硬貨制御部12の制御に基づいてベルト24Bの上面を後方へ進行させるように走行させた場合、この硬貨を後方へ搬送して該ベルト24Bの後端近傍から補充回収庫24の後方へ繰り出すことができる。
【0081】
第1補充リジェクト庫25は、補充回収庫24の後上側における右側に位置しており、該補充回収庫24と比較して十分に小さい直方体状に形成されている。また第1補充リジェクト庫25は、補充回収庫24と同様、内部に硬貨を集積する空間が形成されており、上面が上面板により閉塞されているものの、該上面板における前第1リジェクト案内部62との接続部分には、硬貨を通過させる通過孔が形成されている。この第1補充リジェクト庫25は、ピンベルト搬送部18から前第1リジェクト分岐部19B(
図4)及び前第1リジェクト案内部62を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。
【0082】
第2補充リジェクト庫26は、第1補充リジェクト庫25の左側に位置しており、該第1補充リジェクト庫25とほぼ同様に構成されている。この第2補充リジェクト庫26は、ピンベルト搬送部18から前第1リジェクト分岐部19B(
図4)、前第1リジェクト案内部62、前第2リジェクト分岐部19G及び前第2リジェクト案内部67を順次介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。
【0083】
ところで補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、一体に構成されて補回カセット81となっている。これを換言すれば、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、補回カセット81の内部が適宜仕切られることにより形成されている。
【0084】
補回カセット81は、硬貨処理装置筐体11の下部前側に設けられた前装填部11CFに装着されている。この補回カセット81は、
図7(A)に模式的な斜視図を示すように、全体として中空の直方体状でなり、上側を閉塞する上面板が前面板の上端に対して回動可能に取り付けられている。
【0085】
リジェクト庫27(
図2)は、第1補充リジェクト庫25と同様に構成されており、後第1リジェクト案内部64を介して進行してきた硬貨を内部に収容する。取忘取込庫28は、リジェクト庫27の左側に設けられており、第2補充リジェクト庫26と同様に構成され、後第2リジェクト案内部65を介して進行してきた硬貨を内部に収容する。
【0086】
このリジェクト庫27及び取忘取込庫28は、一体に構成されてリジェクトカセット82となっている。これを換言すれば、リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、リジェクトカセット82の内部が適宜仕切られることにより形成されている。またリジェクトカセット82は、
図7(B)に模式的な斜視図を示すように、補回カセット81と同様、上面板が開閉可能に構成されている。
【0087】
補充搬送部としての下分離部29(
図2)は、硬貨処理装置筐体11の下部における中央付近であり、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっており、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。
【0088】
集積分離部29Aは、補充回収庫24において硬貨を繰り出す繰出口と隣接する箇所に硬貨を受け取る受取口(図示せず)が形成されており、この受取口を介して補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積する。また集積分離部29Aは、内部の円盤29Cを回転させることにより、集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。
【0089】
分離搬送部29Bは、下側部分が集積分離部29Aと接続される一方、上側部分が一時保留部23の後側面に形成された放出口と接続されている。このため分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出することができる。
【0090】
このように下分離部29は、硬貨処理装置10内において比較的下側に位置する補充回収庫24から繰り出された硬貨を、これよりも上側に位置する一時保留部23へ搬送することができる。
【0091】
ところで補回カセット81は、硬貨処理装置筐体11(
図2)の下部前側に設けられた前装填部11CF、又は該硬貨処理装置筐体11の下部後側に設けられた後装填部11CRに対し、着脱可能に構成されている。またリジェクトカセット82は、前装填部11CFの後上側部分又は後装填部11CRの前上側部分に装着可能に構成されており、硬貨処理装置筐体11に対し、補回カセット81が装着されていない方に装着される。
【0092】
図2に示したように、硬貨処理装置10では、一の構成形態として、硬貨処理装置筐体11の前装填部11CFに補回カセット81を装着し、且つ後装填部11CRの前上側部分にリジェクトカセット82を装着することができる。説明の都合上、このように硬貨処理装置10において前装填部11CFに補回カセット81が装着された構成を前面機とも呼ぶ。
【0093】
一方、
図2と対応する
図8に示すように、硬貨処理装置10では、他の構成形態として、硬貨処理装置筐体11の後装填部11CRに補回カセット81を装着し、且つ前装填部11CFの後上側部分にリジェクトカセット82を装着することもできる。この場合、補回カセット81及びリジェクトカセット82は、前面機(
図2)の場合と比較して、水平面内で半回転させることにより前後及び左右を反対向きとする。説明の都合上、このように硬貨処理装置10において後装填部11CRに補回カセット81が装着された構成を後面機とも呼ぶ。
【0094】
後面機の硬貨処理装置10(
図8)では、前第1リジェクト案内部62及び前第2リジェクト案内部67に、リジェクト庫27及び取忘取込庫28がそれぞれ接続される。また後面機の硬貨処理装置10では、後第1リジェクト案内部64及び後第2リジェクト案内部65に第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26がそれぞれ接続され、さらに後補回案内部66に補充回収庫24が接続される。
【0095】
[3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について、それぞれ詳細に説明する。ここでは、現金自動預払機1と顧客との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での処理についてそれぞれ説明し、さらに硬貨処理装置10内で補充処理、回収処理及び精査処理を行う場合についてもそれぞれ説明する。
【0096】
[3-1.入金取引における硬貨の搬送]
まず、現金自動預払機1(
図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、顧客に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納するようになっている。
【0097】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6(
図1)を介して顧客から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、
図9に示す入金計数処理を開始する。
【0098】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して硬貨入出金口5(
図1)のシャッタ及び入出金部13の上シャッタ13Bを開いて顧客に収容器13A内へ硬貨を投入させる。次に硬貨制御部12は、顧客から操作表示部6(
図1)を介して硬貨の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、硬貨入出金口5のシャッタ及び入出金部13の上シャッタ13Bを閉塞した上で、矢印R1として示すように、収容器13Aからシュート部14を介して上分離部15に硬貨を引き渡す。
【0099】
上分離部15は、矢印R2として示すように、硬貨を1枚ずつに分離して繰り出し、認識搬送部16へ引き渡す。認識搬送部16は、矢印R3として示すように、硬貨を1枚ずつ搬送しながら認識し、受渡部17に引き渡すと共に、得られた認識結果を硬貨制御部12へ通知する。
【0100】
これに応じて硬貨制御部12は、通知された認識結果を基に、当該硬貨を受け入れ得るか否かを判定すると共にその搬送先を決定し、さらに記憶する。このとき硬貨制御部12は、当該硬貨が取扱可能な金種であり、且つ正当である(すなわち偽造されていない)と判定した場合にこれを受入可能とし、それ以外の場合を受入不可能とする。また硬貨制御部12は、受入可能と判定した硬貨の金額を逐次加算することにより合計金額を集計する。
【0101】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が受入可能であれば、矢印R4として示すように、一時保留分岐部19Cまで搬送し、一時保留案内部63側へ分岐させて一時保留部23へ進行させ、該一時保留部23に集積させる。またピンベルト搬送部18は、当該硬貨が受入不可能であれば、破線の矢印R5として示すように、入出金部13まで搬送して収容器13A内へ繰り出して収容させる。
【0102】
やがて硬貨制御部12は、上分離部15から全ての硬貨を繰り出し終えると、収容器13Aに受入不可能な硬貨を収容していれば、主制御部9(
図1)と協働し上シャッタ13B等を開放させ、当該硬貨を顧客に返却して確認させると共に、必要に応じて再投入させる。一方、硬貨制御部12は、収容器13Aに受入不可能な硬貨を収容していなければ、入金計数処理を完了し、入金計数処理を完了したこと及び集計した合計金額(以下これを入金額と呼ぶ)を主制御部9に通知する。これに応じて現金自動預払機1の主制御部9は、所定の操作指示画面を操作表示部6(
図1)に表示させ、顧客にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか、或いは中止するかを選択させる。
【0103】
ここで入金取引の中止が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、
図10に示す入金返却処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
【0104】
具体的に硬貨制御部12は、まず矢印R7として示すように、一時保留部23のベルトを走行させることにより、一時保留部23内に集積している硬貨を前方へ搬送して繰り出し、上分離部15に順次引き渡す。上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18は、矢印R2、R3及びR5として示すように、硬貨を順次搬送して入出金部13の収容器13A内へ繰り出し、該収容器13A内に集積させる。硬貨制御部12は、全ての硬貨を搬送し終えると、入出金部13の上シャッタ13Bを開放して顧客に硬貨を受け取らせ、その後上シャッタ13Bを閉塞して入金返却処理を終了する。
【0105】
一方、顧客から入金取引の継続が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、
図11に示す入金収納処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨をスタッカ部21へ搬送して金種ごとに集積させる。
【0106】
具体的に硬貨制御部12は、まず入金返却処理(
図10)の場合と同様、矢印R7として示すように、一時保留部23のベルトを走行させることにより、一時保留部23内に集積している硬貨を前方へ搬送して繰り出し、上分離部15に順次引き渡す。上分離部15及び認識搬送部16は、矢印R2及びR3として示すように、硬貨を1枚ずつに分離してから認識すると共に、受渡部17へ引き渡す。
【0107】
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、当該硬貨が再利用可能であるか否か、すなわち以降の出金処理において出金可能な硬貨であるか否かを判定し、当該硬貨の搬送先を決定する。このとき硬貨制御部12は、当該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21(21A~21F)を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0108】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用可能であれば、矢印R5として示すように、前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L及び後ピンベルト搬送部18R(
図4)により当該硬貨を順次搬送する。やがてピンベルト搬送部18は、当該硬貨が上ピンベルト搬送部18Uに到達すると、金種に応じたスタッカ分岐部20(20A~20F)により当該硬貨を分岐させ、矢印R8として示すように、スタッカ部21の案内部71を介して集積部72に集積させる。
【0109】
ところでスタッカ部21では、集積部72の集積筒72Y(
図2及び
図5)に集積可能な硬貨の最大枚数が規定されており、既に最大枚数の硬貨が集積されている場合、新たな硬貨を集積することができない。このような場合、硬貨制御部12は、当該硬貨を入出金部13まで搬送して繰り出し、さらに矢印R1として示すようにシュート部14を介して上分離部15へ進行させる。これにより当該硬貨は、やがて矢印R2、R3及びR5として示す搬送経路に沿って再びスタッカ部21まで搬送される。
【0110】
一方スタッカ部21は、複数の集積筒72Yを水平面内で移動させるための移動機構(図示せず)を有しており、1個の集積筒72Yに最大枚数の硬貨が集積された場合、当該集積筒72Yを案内部71の下側から他の箇所へ移動させると共に、他の集積筒72Yを案内部71の下側に移動させる。すなわちスタッカ部21は、その内部において、案内部71の下側に位置する集積筒72Yを交換する。これによりスタッカ部21は、次に硬貨が搬送されてきたときに、当該硬貨を集積できる。
【0111】
一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用不可能であれば、破線の矢印R9として示すように、後第1リジェクト分岐部19Dまで搬送し、後第1リジェクト案内部64側へ分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、入金収納処理を終了する。
【0112】
[3-2.出金取引における硬貨の搬送]
次に、現金自動預払機1(
図1)において顧客との間で出金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、顧客に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。さらに硬貨処理装置10は、所定時間内に入出金部13の硬貨が受け取られなかった場合、この硬貨を取り込む取込処理を行うようになっている。
【0113】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して顧客から出金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、
図12に示す出金処理を開始する。
【0114】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して操作表示部6を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、硬貨制御部12において出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を決定する。続いて各スタッカ部21は、矢印R11として示すように、決定した金種及び枚数に応じて、集積部72に集積している硬貨を繰出部73によりそれぞれ繰り出し、下側の出金搬送部22又は一時保留部23内へ落下させ、集積させる。出金搬送部22は、矢印R12として示すように、ベルトの上面を前方へ走行させることにより、集積されている硬貨を前方へ搬送し、一時保留部23内へ落下させて集積させる。
【0115】
その後、硬貨制御部12は、入金返却処理(
図10)及び入金収納処理(
図11)の場合と同様、矢印R7、R2及びR3として示すように、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識して受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0116】
また硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に当該硬貨が出金可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定すると共に記憶する。すなわち硬貨制御部12は、当該硬貨が出金可能であれば、入出金部13を搬送先とし、出金不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、出金不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0117】
ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が出金可能であれば、矢印R5として示すように、入出金部13へ搬送して収容器13A内へ繰り出して収容させる。一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が出金不可能であれば、破線の矢印R9として示すように、後第1リジェクト分岐部19Dまで搬送し、後第1リジェクト案内部64側へ分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。因みに硬貨制御部12は、リジェクト硬貨が発生した場合、当該硬貨と同一金種の新たな硬貨をスタッカ部21から繰り出させる。
【0118】
やがて硬貨制御部12は、出金額に応じた金種及び枚数の硬貨を入出金部13の収容器13A内に収容し終えると、主制御部9(
図1)と協働して上シャッタ13B等を開放して顧客に当該硬貨が取り出されるのを待ち受ける。その後、硬貨制御部12は、顧客により収容器13A内の硬貨が取り出されたことを検知すると、再び主制御部9と協働して上シャッタ13B等を閉塞し、出金処理を終了する。
【0119】
一方、硬貨制御部12は、上シャッタ13Bを開放してから所定の待機時間(例えば30秒間)が経過しても収容器13A内に1枚以上の硬貨が残っていた場合、顧客が当該硬貨を取り忘れて立ち去ったものと判断し、出金処理を終了すると共に、
図13に示す取込処理を行う。以下では、このとき収容器13A内に残っていた硬貨を取忘硬貨とも呼ぶ。
【0120】
硬貨制御部12は、この取込処理において、入金計数処理(
図9)と一部同様の処理を行う。すなわち硬貨制御部12は、矢印R1、R2及びR3として示すように、硬貨を収容器13Aからシュート部14を介して上分離部15に引き渡し、該上分離部15により該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出し、認識搬送部16により硬貨を搬送しながら認識すると共に、受渡部17に引き渡す。また硬貨制御部12は、このとき得られた認識結果を基に、硬貨の金種ごとの枚数や合計金額を集計して記憶する。
【0121】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、矢印R13として示すように、後第2リジェクト分岐部19Eまで搬送し、後第2リジェクト案内部65側へ分岐させて取忘取込庫28へ進行させ、収容させる。硬貨制御部12は、入出金部13の収容器13A内に残っていた全ての取忘硬貨を取忘取込庫28へ搬送し終えると、取込処理を終了する。
【0122】
[3-3.補充処理における硬貨の搬送]
次に、補充処理について説明する。補充処理は、硬貨処理装置10のスタッカ部21に集積している硬貨の枚数が減少してきた場合等に、補充回収庫24を利用して外部から硬貨を補充する処理である。ここで硬貨処理装置10は、作業員等により硬貨処理装置筐体11の前装填部11CFから補回カセット81が取り外され、補充回収庫24に硬貨が収納された後、該補回カセット81が再び前装填部11CFに装填された状態であるとする。
【0123】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して作業員等から補充処理を開始する旨の操作入力を受け付けると、
図14に示す補充処理を開始する。
【0124】
まず補充回収庫24は、矢印R21として示すように、内部のベルト24Bを走行させることにより、後側の繰出口から硬貨を繰り出して下分離部29に引き渡す。下分離部29は、矢印R22として示すように、硬貨を1枚ずつに分離しながら上方へ搬送して一時保留部23へ引き渡し、集積させる。
【0125】
その後、硬貨制御部12は、入金収納処理(
図11)の場合と概ね同様に、矢印R7、R2及びR3として示すように、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識すると共に受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0126】
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、当該硬貨が再利用可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定する。すなわち硬貨制御部12は、当該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21(21A~21F)を搬送先とし、再利用不可能であれば、第1補充リジェクト庫25を搬送先とする。因みに以下では、再利用不可能と判定された硬貨を補充リジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0127】
ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用可能であれば、矢印R5として示すように、当該硬貨をその金種に応じたスタッカ分岐部20(20A~20F)まで搬送して分岐させ、さらに矢印R8として示すように、スタッカ部21へ進行させ集積させる。一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用不可能であれば、破線の矢印R23として示すように、前第1リジェクト分岐部19Bまで搬送し、前第1リジェクト案内部62側へ分岐させて第1補充リジェクト庫25へ進行させ、収容させる。
【0128】
因みに硬貨制御部12は、スタッカ部21の集積筒72Y(
図2及び
図4)に最大枚数の硬貨が集積されていた場合、入金収納処理(
図11)の場合と同様、当該硬貨を入出金部13へ搬送して周回させると共に、該スタッカ部21内で集積筒72Yを交換させ、他の集積筒72Yに集積させる。
【0129】
また硬貨制御部12は、所定金種のスタッカ部21における全ての集積筒72Y(
図2及び
図4)に最大枚数の硬貨が集積されていた場合、以降の処理において、当該金種について硬貨の搬送先を補充回収庫24に決定する。ピンベルト搬送部18は、硬貨の搬送先が補充回収庫24であれば、破線の矢印R24として示すように、前補回分岐部19Aまで搬送し、前補回案内部61側へ分岐させて補充回収庫24へ進行させ、該補充回収庫24に集積させる。すなわち硬貨制御部12は、スタッカ部21に収納しきれない硬貨を補充回収庫24に戻して収容する。
【0130】
やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、入金収納処理を終了する。また硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6に補充処理を終了したことや関連する情報(例えば補充した硬貨の金種及び枚数等)を表示し、作業員等に通知する。
【0131】
[3-4.回収処理における硬貨の搬送]
次に、回収処理について説明する。回収処理は、硬貨処理装置10のスタッカ部21に集積している硬貨を、補充回収庫24を利用して回収する処理である。具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して作業員等から回収処理を開始する旨や回収する硬貨の金種及び枚数等の操作入力を受け付けると、
図15に示す回収処理を開始する。
【0132】
まず硬貨制御部12は、出金処理(
図12)の場合と同様に、指示された金種及び枚数に応じて、矢印R11として示すように、各スタッカ部21の集積部72に集積している硬貨を繰出部73によりそれぞれ繰り出し、下側の出金搬送部22又は一時保留部23内へ落下させ、集積させる。出金搬送部22は、矢印R12として示すように、ベルトの上面を前方へ走行させることにより、集積されている硬貨を前方へ搬送し、一時保留部23内へ落下させて集積させる。
【0133】
その後、硬貨制御部12は、やはり出金処理(
図12)の場合と同様、矢印R7、R2及びR3として示すように、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識すると共に受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0134】
また硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、当該硬貨が再利用可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定すると共に記憶する。すなわち硬貨制御部12は、当該硬貨が再利用可能であれば、補充回収庫24を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、このとき再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0135】
ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用可能であれば、矢印R24として示すように、前補回分岐部19Aまで搬送し、前補回案内部61側へ分岐させて補充回収庫24へ進行させ、該補充回収庫24に集積させる。一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用不可能であれば、破線の矢印R9として示すように、後第1リジェクト分岐部19Dまで搬送し、後第1リジェクト案内部64側へ分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。
【0136】
やがて硬貨制御部12は、指示された金種及び枚数の硬貨、若しくは各スタッカ部21の集積部72に集積されている全ての硬貨を補充回収庫24に搬送し終えると、回収処理を終了する。また硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6に回収処理を終了したことや関連する情報(例えば回収した硬貨の金種及び枚数等)を表示し、作業員等に通知する。
【0137】
かくして硬貨処理装置10では、補充回収庫24に硬貨が回収されているため、作業員等により硬貨処理装置筐体11の前装填部11CFから補回カセット81が取り外されると、該補充回収庫24内の硬貨を外部に取り出させること、すなわち回収させることができる。
【0138】
[3-5.精査処理における硬貨の搬送]
次に、精査処理について説明する。精査処理は、硬貨処理装置10のスタッカ部21に集積している硬貨を1枚ずつ認識搬送部16により認識し、金種や枚数等を再確認する処理である。因みに硬貨処理装置10では、1つの金種における1つの集積筒72Y(
図2及び
図4等)を対象として、1回の精査処理を行うようになっている。
【0139】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6を介して作業員等から精査処理を開始する旨、並びに金種及び集積筒72Yの指示等に関する操作入力を受け付けると、
図16に示す精査処理を開始する。
【0140】
まず硬貨制御部12は、出金処理(
図12)や回収処理(
図15)の場合と同様、矢印R11として示すように、指示された金種のスタッカ部21における指示された集積筒72Yから、集積している全ての硬貨を繰出部73により順次繰り出し、下側の出金搬送部22又は一時保留部23内へ落下させ、集積させる。出金搬送部22は、矢印R12として示すように、ベルトの上面を前方へ走行させることにより、集積されている硬貨を前方へ搬送し、一時保留部23内へ落下させて集積させる。一時保留部23は、ベルトを走行させることにより、集積している硬貨を上分離部15へ順次繰り出す。
【0141】
その後、硬貨制御部12は、入金収納処理(
図11)や補充処理(
図14)の場合と同様、矢印R2及びR3として示すように、上分離部15の硬貨を1枚ずつ分離して繰り出させ、認識搬送部16により搬送しながら各硬貨を認識させ、当該硬貨を受渡部17に引き渡させる。受渡部17は認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0142】
また硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、当該硬貨が再利用可能であるか否かを判定し、その搬送先を決定すると共に記憶する。すなわち硬貨制御部12は、当該硬貨が再利用可能であれば、その金種のスタッカ部21を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、このとき再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0143】
ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用可能であれば、矢印R5として示すように、当該硬貨をその金種に応じたスタッカ分岐部20(20A~20F)まで搬送して分岐させ、さらに矢印R8として示すように、スタッカ部21へ進行させ集積させる。一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用不可能であれば、破線の矢印R9として示すように、後第1リジェクト分岐部19Dまで搬送し、後第1リジェクト案内部64側へ分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。
【0144】
因みに硬貨制御部12は、スタッカ部21の集積筒72Yに最大枚数の硬貨が集積されたことが検知され、該集積筒72Yに集積できない硬貨が発生した場合、入金収納処理(
図11)の場合等と同様、当該硬貨を入出金部13へ搬送して周回させると共に、該スタッカ部21内で集積筒72Yを交換させ、他の集積筒72Yに集積させる。
【0145】
やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、精査処理を終了する。また硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(
図1)と連携することにより、操作表示部6に精査処理の結果(例えば金種及び枚数等)を表示し、作業員等に通知する。
【0146】
[4.効果等]
以上の構成において、現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、ピンベルト搬送部18(
図4等)とは別に認識搬送部16(
図3)を設け、硬貨を圧接搬送しながら当該硬貨を撮像して認識処理を行い、当該硬貨の金種や真偽等を判定するようにした。
【0147】
このうちピンベルト搬送部18は、
図5に示したように、搬送ガイド40において硬貨が搬送面41Sにもたれかかるようにして盤面を該搬送面41Sに当接させた状態で、ピンベルト50の搬送ピン52により、硬貨の進行方向と反対側から周側面に対して進行方向へ力を作用させる。また搬送ピン52は、その先端分を、搬送ガイド40における搬送面41Sに形成された溝部43の内部にまで到達させているため、搬送ベルト51の撓み等により左右方向(すなわち搬送面41Sに対し離接する方向)にある程度変位したとしても、硬貨の周側面から外れる可能性が極めて低い。
【0148】
このためピンベルト搬送部18では、6個のスタッカ部21の下側、後側及び上側を順次走行するような、すなわち該スタッカ部21の周囲を周回するような比較的長い搬送経路を有するものの、硬貨の摺動に伴う摩擦を極めて小さく抑えながら、且つ搬送ピン52を硬貨から外すことなく極めて安定的に、搬送することができる。
【0149】
一方、認識搬送部16は、
図3に示したように、圧接搬送ベルト35により硬貨の盤面を搬送ガイド31及びガラス板32の搬送面31S及び32Sに押し付けながら、該圧接搬送ベルト35及び硬貨の間の摩擦を利用して搬送する。これにより認識搬送部16は、硬貨をガラス板32に密着させることができるので、撮像部33により鮮明な画像を撮像し得る。
【0150】
このとき認識搬送部16では、硬貨を搬送面に押し付けながら摺動させることによる部品の摩耗や、圧接搬送ベルト35が硬貨に対して滑ることによる搬送効率の低下等を発生させる恐れがあるものの、その搬送距離が極めて短いため、その影響を極めて小さく抑えることができる。
【0151】
また認識搬送部16では、ピンベルト搬送部18(
図4)における搬送ガイド40のように溝部43を形成する必要が無く、ガラス板32を平板状に形成できるため、該ガラス板32を介して撮像される硬貨の画像に歪みを生じることが無く、鮮明な画像を撮像できる。
【0152】
このように硬貨処理装置10では、認識搬送部16においてのみ極めて短い距離に渡って圧接搬送を行うと共に、他の各部を結ぶように比較的長い距離に渡りピンベルト搬送部18においてピン搬送を行うことにより、当該硬貨を高い精度で認識することと、当該硬貨を安定して確実に搬送することとを、高い次元で両立させ得る。
【0153】
ところで、特許文献1に示した硬貨処理装置では、精査処理を行う場合、金種別スタッカから繰り出した硬貨を搬送部により搬送し、識別部において識別してから一時保留部へ搬送して収納し、全ての硬貨を識別し終えると、搬送部を逆送させて一時保留部から金種別スタッカに戻していた。すなわちこの硬貨処理装置では、搬送部の搬送方向を切り替えながら硬貨を往復させるため、精査処理の開始から完了までに非常に長い時間を要していた。またこの硬貨処理装置では、回収処理においても、同様に硬貨を往復させるため、同様に非常に長い時間を要していた。
【0154】
一方、本実施の形態による硬貨処理装置10では、ピンベルト搬送部18においてピンベルト50が走行する方向、すなわち硬貨の搬送方向を、矢印E50(
図4)として示した片方向のみとした。これにより硬貨処理装置10では、硬貨の搬送方向を双方向とする場合と比較して、搬送方向の切替に要する時間を必要としないため、各種処理を高速化できる。
【0155】
また硬貨処理装置10では、精査処理(
図16)において、スタッカ部21の繰出部73から認識搬送部16に至る搬送経路(矢印R11、R12、R7及びR2)と、該認識搬送部16からスタッカ部21の案内部71に至る搬送経路(矢印R5及びR8)とを、互いに独立させ、且つ両者の交差や重複を排除した。このため硬貨処理装置10では、精査処理において、硬貨を効率良く搬送できるので、極めて短い時間で完了できる。
【0156】
また硬貨処理装置10では、回収処理(
図15)においても、スタッカ部21の繰出部73から認識搬送部16に至る搬送経路(矢印R11、R12、R7及びR2)と、該認識搬送部16から補充回収庫24に至る搬送経路(矢印R24)とを、互いに独立させ、且つ両者の交差や重複を排除した。これにより硬貨処理装置10では、スタッカ部21から硬貨を出金搬送部22又は一時保留部23へ繰り出しながら、これと並行して該一時保留部23から上分離部15を介して認識搬送部16へ硬貨を搬送させ、さらに補充回収庫24へ搬送させることができる。この結果、硬貨処理装置10では、回収処理においても、硬貨を効率良く搬送できるので、極めて短い時間で完了できる。
【0157】
他の観点から見れば、硬貨処理装置10では、ピンベルト搬送部18が硬貨を受け取る相手を、受渡部17を介した認識搬送部16のみとした(
図2)。このため硬貨処理装置10は、ピンベルト搬送部18が硬貨を受け取る際に搬送ピン52の周期に合わせて硬貨を受け渡すために受渡部17を設ける必要があるところ、認識搬送部16の下流側に該受渡部17を1箇所のみ設ければ良く、構成をできるだけ簡素に抑えることができる。
【0158】
さらにこれを換言すれば、硬貨処理装置10では、上分離部15により1枚ずつに分離され、認識搬送部16において1枚ずつ認識された硬貨を、受渡部17を介してピンベルト搬送部18が受け取り、搬送するようにした。すなわちピンベルト搬送部18は、1枚ずつに分離され且つそれぞれ認識された硬貨のみを、その順序を維持したまま個別搬送するようにした。これにより硬貨処理装置10では、認識された結果に応じて硬貨制御部12により搬送先が決定された各硬貨を、該硬貨制御部12により制御された分岐部19及びスタッカ分岐部20により、それぞれの搬送先へ正確に搬送することができる。
【0159】
その一方で硬貨処理装置10では、上分離部15よりも上流側となるシュート部14や一時保留部23及び出金搬送部22において、個別に認識される前の硬貨を連なった状態やある程度まとまった状態のまま、群移動させ、又は群搬送するようにした。これにより硬貨処理装置10では、認識処理が行われる前であり個別に取り扱う必要がない硬貨を、短時間で効率良く移動させ、若しくは搬送することができる。また硬貨処理装置10では、一時保留部23及び出金搬送部22の上流側において、硬貨を1枚ずつ分離する必要が無いため、上分離部15のような機構を設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0160】
ところで硬貨処理装置10では、補充回収庫24を硬貨処理装置筐体11の最下部に配置しているため、この補充回収庫24から繰り出された硬貨を一時保留部23内へ搬送する場合、上下方向に関する移動距離が比較的長くなる。このため、仮に硬貨処理装置10において補充回収庫24の後側に一時保留部23と同様の傾斜したベルト機構を設ける場合、硬貨を搬送し得る傾斜角度の制約等により、前後方向にも比較的長い距離を必要とする。
【0161】
その一方で硬貨処理装置10(
図2)では、補回カセット81を前側に装着するための前装填部11CFと、該補回カセット81を後側に装着するための後装填部11CRをいずれも設ける必要があり、前装填部11CF及び後装填部11CRの間に十分な大きさの空間を確保することが困難となっている。
【0162】
そこで硬貨処理装置10では、前装填部11CF及び後装填部11CRの間に、上分離部15と類似した構成でなる下分離部29を設けた。これにより硬貨処理装置10では、前後方向に比較的短い空間を用いながら、上下方向に十分に長い距離に渡って硬貨を持ち上げることができる。また硬貨処理装置10では、下分離部29を構成する部品の多くを上分離部15と共通化することができるので、設計や製造に要するコストの低廉化を図ることができる。
【0163】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、ピンベルト搬送部18(
図4等)とは別に認識搬送部16(
図3)を設け、硬貨を圧接搬送しながら当該硬貨を撮像して画像信号を生成し、これを基に硬貨制御部12により当該硬貨を認識するようにした。これにより硬貨処理装置10では、認識搬送部16においてのみ極めて短い距離に渡って圧接搬送を行うと共に、他の各部を結ぶように比較的長い距離に渡りピンベルト搬送部18においてピン搬送を行うため、当該硬貨を高い精度で認識することと、当該硬貨を安定して確実に搬送することとを、高い次元で両立させることができる。
【0164】
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、ピンベルト搬送部18における硬貨の搬送方向を片方向のみとする場合について述べた(
図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばピンベルト搬送部18における硬貨の搬送方向を双方向としても良い。
【0165】
また上述した実施の形態においては、ピンベルト搬送部18をスタッカ部21の周囲に、すなわち該スタッカ部21における前側の一部、下側、後側及び上側を順次通るように配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の箇所を通るように配置しても良い。
【0166】
さらに上述した実施の形態においては、ピンベルト搬送部18(
図2及び
図4)の末端、すなわち最も下流側の端部を入出金部13の収容器13Aに接続させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばピンベルト搬送部18の末端近傍を下方向へ延長して一時保留部23内へ硬貨を放出するようにしても良い。この場合、ピンベルト搬送部18には、前補回分岐部19A及び前補回案内部61等と同様に、所定の分岐部及び案内部を追加することにより、硬貨を入出金部13の収容器13Aへ案内し得るようにすれば良い。
【0167】
さらに上述した実施の形態においては、ピンベルト搬送部18(
図2及び
図4)の前ピンベルト搬送部18F及び下ピンベルト搬送部18Lに合計6個の分岐部19を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば後ピンベルト搬送部18Rや上ピンベルト搬送部18Uを含め、ピンベルト搬送部18における任意の箇所に分岐部19を設けても良い。また分岐部19の数は5個以下や7個以上としても良い。
【0168】
さらに上述した実施の形態においては、認識搬送部16(
図3)において、搬送ガイド31及びガラス板32により平坦な搬送面31S及び32Sを形成し、圧接搬送ベルト35により硬貨をこの搬送面31S及び32Sに押し付けながら(すなわち圧接しながら)搬送する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の構成により硬貨を搬送しても良い。要は、搬送中に硬貨の盤面を撮像部33により撮像した際に、鮮明な画像を生成できれば良い。
【0169】
さらに上述した実施の形態においては、搬送ガイド31にサファイアガラスでなるガラス板32をはめ込む場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、可視光を透過させると共に十分な硬度を有する種々の材料でなる板状部材を搬送ガイド31にはめ込んでも良い。
【0170】
さらに上述した実施の形態においては、認識搬送部16(
図3)に撮像部33及び認識処理部34を設け、撮像部33により生成した画像信号を基に認識処理部34により認識処理を行う場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば認識搬送部16から認識処理部34を省略し、硬貨制御部12が撮像部33から画像信号を取得して認識処理を行うようにしても良い。
【0171】
さらに上述した実施の形態においては、出金搬送部22及び一時保留部23を連接するように配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば出金搬送部22を省略すると共に一時保留部23を出金搬送部22に相当する部分まで後方へ延長しても良い。この場合、一時保留部23の形状に応じて底部にベルトを張架させ、該ベルトの走行により一時保留部23内の硬貨を上分離部15へ搬送できれば良い。
【0172】
さらに上述した実施の形態においては、一時保留部23とほぼ同等の高さに上分離部15の集積分離部15Aを配置し、一時保留部23に組み込まれたベルトを走行させることにより、該一時保留部23内の硬貨を上方へ搬送して集積分離部15Aの上側から繰り出す場合について述べた(
図2)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば一時保留部23の底部からベルトを省略すると共に後側を高く前側を低くするよう傾斜させ、集積分離部15Aをこの一時保留部23よりも低い位置に設けても良い。
【0173】
さらに上述した実施の形態においては、入金計数処理(
図9)において、認識搬送部16において認識され受入可能と判定された硬貨を一時保留部23に集積した状態で入金処理を完了する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば一時保留部23に集積した硬貨をさらに上分離部15へ搬送して集積分離部15A(
図2)の集積空間内に集積させた状態で入金処理を完了しても良い。これにより、入金返却処理(
図10)や入金収納処理(
図11)の開始後に一時保留部23から上分離部15へ硬貨を搬送する必要が無くなるため、各処理の所要時間を短縮できる。
【0174】
さらに上述した実施の形態においては、下分離部29(
図2)を上分離部15と同様に構成し、集積された硬貨を1枚ずつに分離してから上方へ搬送する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置筐体11において前装填部11CF及び後装填部11CRの間に十分に大きい空間を確保できる場合に、下分離部29に代えて、一時保留部23の底部のような傾斜したベルト等でなる搬送機構を設けても良い。これにより、硬貨の群搬送が可能となるため、硬貨を1枚ずつ搬送する下分離部29と比較して、搬送速度を高めて所要時間を短縮することができる。
【0175】
さらに上述した実施の形態においては、補回カセット81を着脱可能に構成すると共に硬貨処理装置筐体11に前装填部11CF及び後装填部11CRを設け、該補回カセット81の装填位置に応じて硬貨処理装置10を前面機(
図2)又は後面機(
図8)に変更し得るように構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置10を前面機又は後面機の何れか一方に固定した構成としても良い。この場合、例えば前面機であれば、後補回分岐部19F及び後補回案内部66(
図4)を省略できる。
【0176】
さらに上述した実施の形態においては、ピンベルト搬送部18(
図2及び
図4)から分岐した前第1リジェクト案内部62、前第2リジェクト案内部67、後第1リジェクト案内部64及び後第2リジェクト案内部65に、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27及び取忘取込庫28をそれぞれ接続する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27及び取忘取込庫28をそれぞれ任意の案内部に接続しても良い。例えば、前第1リジェクト案内部62に第2補充リジェクト庫26を接続すると共に、前第2リジェクト案内部67に第1補充リジェクト庫25を接続しても良い。また、後第1リジェクト案内部64に取忘取込庫28を接続すると共に、後第2リジェクト案内部65にリジェクト庫27を接続しても良い。
【0177】
さらに上述した実施の形態においては、補回カセット81(
図7(A))における補充回収庫24の後上側において、右側に第1補充リジェクト庫25を設けると共に左側に第2補充リジェクト庫26を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補回カセット81における補充回収庫24の後上側において、左側に第1補充リジェクト庫25を設けると共に右側に第2補充リジェクト庫26を設けても良い。またリジェクトカセット82(
図7(B))についても同様に、左側にリジェクト庫27を設けると共に右側に取忘取込庫28を設けても良い。
【0178】
さらに上述した実施の形態においては、スタッカ部21とは別に硬貨を収納し得る箇所として第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27及び取忘取込庫28を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27及び取忘取込庫28のうち何れか1個以上を省略しても良い。具体的には、例えば補回カセット81(
図7)において、単純に第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26の何れかを使用しないようにしても良い。或いは、例えば第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26の間を仕切る板状部材を省略することにより、第2補充リジェクト庫26を省略すると共に第1補充リジェクト庫25の容積を拡大しても良い。これらの場合、省略される第2補充リジェクト庫26等と対応する分岐部や案内部も適宜省略できる。
【0179】
さらに上述した実施の形態においては、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26を一体化して補回カセット81(
図7(A))とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26を互いに独立した構成としても良い。リジェクト庫27及び取忘取込庫28を一体化したリジェクトカセット82(
図7(B))についても同様である。
【0180】
さらに上述した実施の形態においては、スタッカ部21(
図2及び
図5)の集積部72に3本の集積筒72Yを設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、集積部72に2本以下又は4本以上の集積筒72Yを設けても良い。
【0181】
さらに上述した実施の形態においては、硬貨処理装置10に6個のスタッカ部21を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、5個以下又は7個以上の
スタッカ部21を設けても良い。この場合、ピンベルト搬送部18にスタッカ部21と同数のスタッカ分岐部20を設ければ良い。
【0182】
さらに上述した実施の形態においては、現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば自動券売機等のように顧客との間で硬貨に関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置等に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0183】
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0184】
さらに上述した実施の形態においては、入出金部としての入出金部13と、分離部としての上分離部15と、認識部としての撮像部33及び認識処理部34と、主搬送部としてのピンベルト搬送部18と、スタッカ部としてのスタッカ部21と、制御部としての硬貨制御部12とによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。このうち主搬送部については、搬送ガイドとしての搬送ガイド40と、搬送ベルトとしての搬送ベルト51と、搬送ピンとしての搬送ピン52とにより構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入出金部と、分離部と、認識部と、主搬送部と、スタッカ部と、制御部とによって硬貨処理装置を構成しても良い。またこの場合、種々の構成でなる搬送ガイドと、搬送ベルトと、搬送ピンとによって主搬送部を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明は、例えば顧客との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等でも利用できる。
【符号の説明】
【0186】
1……現金自動預払機、6……操作表示部、9……主制御部、10……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、11CF……前装填部、11CR……後装填部、12……硬貨制御部、13……入出金部、13A……収容器、13B……上シャッタ、14……シュート部、15……上分離部、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19……分岐部、19A……前補回分岐部、19B……前第1リジェクト分岐部、19C……一時保留分岐部、19D……後第1リジェクト分岐部、19E……後第2リジェクト分岐部、19F……後補回分岐部、19G……前第2リジェクト分岐部、20……スタッカ分岐部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、24……補充回収庫、24B……ベルト、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、31……搬送ガイド、31S……搬送面、32……ガラス板、32S……搬送面、33……撮像部、34……認識処理部、35……圧接搬送ベルト、40……搬送ガイド、41……主ガイド板、41S……搬送面、43……溝部、45……分岐板、50……ピンベルト、51……搬送ベルト、52……搬送ピン、61……前補回案内部、62……前第1リジェクト案内部、63……一時保留案内部、64……後第1リジェクト案内部、65……後第2リジェクト案内部、66……後補回案内部、67……前第2リジェクト案内部、71……案内部、72……集積部、73……繰出部、81……補回カセット、82……リジェクトカセット、CN……硬貨、W16、W18……搬送経路。