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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ロック機構および媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/462 20170101AFI20221213BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20221213BHJP
   E05B 65/02 20060101ALI20221213BHJP
   G07D 11/125 20190101ALI20221213BHJP
【FI】
E05B65/462
E05B47/00 R
E05B65/02 D
G07D11/125
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018217287
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020084482
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 健志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊貴
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-183359(JP,A)
【文献】実開平03-002169(JP,U)
【文献】実開昭61-115468(JP,U)
【文献】特開2017-160604(JP,A)
【文献】特開2013-213339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00 -47/02
E05B 65/00 -65/02
E05B 65/462
E05B 65/467-65/468
G07D 11/00 -13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に収納される第一ユニットおよび第二ユニットの引き出しを規制するロック機構であって、
前記筐体に回動可能な状態で取り付けられているロックレバーと、
前記ロックレバーを第一位置と第二位置とに移動させるアクチュエータと、を備え、
前記ロックレバーは、
前記第一ユニットと前記第二ユニットとの間に配置され、
前記第一位置で前記第一ユニットおよび前記第二ユニットの引き出しを規制し、
前記第二位置で前記第一ユニットおよび前記第二ユニットの引き出しを許容する、
ことを特徴とするロック機構。
【請求項2】
前記ロックレバーは、
前記第一ユニットまたは当該第一ユニットに関連する関連部材に係合することで、前記第一ユニットの引き出しを規制する第一係合部と、
前記第二ユニットまたは当該第二ユニットに関連する関連部材に係合することで、前記第二ユニットの引き出しを規制する第二係合部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記ロックレバーの回動量に対する前記第一係合部の移動量と前記第二係合部の移動量とが同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記ロックレバーは、断面視でコの字状の単一部品として構成されており、
基部と、
前記基部から連続して形成されており、回動軸部が軸通すると共に前記第一係合部が形成されている第一レバー部と、
前記基部から連続して形成されており、前記回動軸部が軸通すると共に前記第二係合部が形成されている第二レバー部と、を有する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のロック機構。
【請求項5】
前記ロックレバーは、複合部品で構成されており、
第一回動軸部が軸通すると共に前記第一係合部が形成されている第一ロックレバーと、
第二回動軸部が軸通すると共に前記第二係合部が形成されている第二ロックレバーと、を有する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のロック機構。
【請求項6】
前記アクチュエータを駆動するトリガーとなるトリガー機構をさらに備え、
前記トリガー機構は、錠と、前記錠の施錠状態と開錠状態とでONとOFFとが切り替わるスイッチと、を有し、
前記アクチュエータは、前記スイッチの動作を検出した場合に前記ロックレバーを移動させる、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のロック機構。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載のロック機構を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構および媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現金自動預払機(ATM:Automated /Automatic Teller Machine)等の媒体処理装置として、例えば、特許文献1に示す構成のものが開発されている。特許文献1に示す現金自動預払機は、上部ユニットおよび下部ユニットを有する紙幣入出金機(紙幣入出金ユニット)を備えている。この上部ユニットおよび下部ユニットは、スライドレールによって前後方向へ移動可能に構成されており、上部ユニットには、損傷の程度が大きい紙幣を収納するリジェクト収納庫(リジェクトカセット)が設けられ、また、下部ユニットには、紙幣を収納する複数の紙幣収納庫(金種カセット)が設けられている。紙幣収納庫およびリジェクト収納庫は、スライドレールに取り付けられたフレームに形成された複数のスロットに着脱させる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-124644号公報(段落0014~0076、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、セキュリティの観点から、収納庫(カセット)の抜き取り可否を制御することが検討されている。例えば、ソレノイド等のアクチュエータを使用して、個々のカセットの抜き取りを電気的にロックすることが検討されている。しかしながら、収納庫(カセット)に応じた数のアクチュエータが必要になり、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、収納庫(カセット)の抜き取り可否を簡易な構造で制御できる、ロック機構および媒体処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係るロック機構は、筐体に収納される第一ユニットおよび第二ユニットの引き出しを規制するロック機構であって、前記筐体に回動可能な状態で取り付けられているロックレバーと、前記ロックレバーを第一位置と第二位置とに移動させるアクチュエータと、を備え、前記ロックレバーは、前記第一ユニットと前記第二ユニットとの間に配置され、前記第一位置で前記第一ユニットおよび前記第二ユニットの引き出しを規制し、前記第二位置で前記第一ユニットおよび前記第二ユニットの引き出しを許容する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る媒体処理装置は、前記ロック機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収納庫(カセット)の抜き取り可否を簡易な構造で制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る現金自動預払機の外観斜視図である。
図2】紙幣入出金機の外観斜視図である。
図3】紙幣入出金機の内部構造を示す概略図である。
図4図2のIV-IVに対応する縦断面図である。
図5】ロック機構の外観斜視図である。
図6】ロック機構の動作を説明するための図であり、(a)は規制状態(ロックした状態)のロック機構の平面図であり、(b)は許容状態(ロックを解除した状態)のロック機構の平面図である。
図7】トリガー機構の構成および動作を説明するための図であり、(a)は施錠状態のトリガー機構の斜視図であり、(b)は開錠状態のトリガー機構の斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るロック機構を説明するための図であり、(a)は規制状態のロック機構の側面図であり、(b)は許容状態のロック機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
≪第1実施形態に係る現金自動預払機の構成≫
図1ないし図7を参照して、第1実施形態に係る現金自動預払機1の構成について説明する。現金自動預払機1の説明における「上下」、「左右」、「前後」は、図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。
【0012】
図1に示す現金自動預払機1は、顧客に対して金融サービスを提供するためのアクセスポイントとしての役割を果たすものである。現金自動預払機1は、例えば銀行の支店、コンビニなどに設置され、利用者(すなわち金融機関等の顧客)との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行う。
【0013】
現金自動預払機1の前面には、接客部2が設けられている。接客部2は、例えば、操作表示部3、カード入出口4、レシート発行口5、入出金口6、およびテンキー7からなり、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。なお、接客部2の構成はあくまで例示であり、ここで説明したものに限定されない。
【0014】
現金自動預払機1の内部には、現金自動預払機1全体(後記する電磁ロック機構20も含む)を統括制御する制御部8や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。制御部8は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また制御部8は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0015】
図2に示すように、紙幣入出金機10は、中空の直方体状に構成された筐体11と、筐体11の内部に収納された上部ユニット12および下部ユニット13とを主に備える。図1に示す現金自動預払機1の前側には、開閉可能な扉9が取り付けられており、扉9を開放することで紙幣入出金機10を視認することが可能になる。
【0016】
図3を参照して、紙幣入出金機10の構成について説明する。なお、紙幣入出金機10の構成はあくまで例示であり、ここで説明するものに限定されない。
上部ユニット12は、顧客との間で紙幣を授受する入出金部12aと、紙幣を鑑別する鑑別部12bと、紙幣を一時的に収納する一時保留部12cと、損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判断された紙幣(いわゆるリジェクト紙幣)を収納するリジェクトカセット12dと、紙幣を各部へ搬送する搬送部12eと、を主に備える。
下部ユニット13は、紙幣を金種毎に収納する金種カセット13a,13b,13cと、出金用の紙幣を金種カセット13a,13b,13cへ補充または金種カセット13a,13b,13cから出金用の紙幣を回収するための補充回収カセット13dと、を主に備える。
【0017】
図2に示すように、筐体11には二組のスライド機構14,15が設けられている。上部ユニット12は、スライド機構14を用いて筐体11に設置されており、また、下部ユニット13は、スライド機構15を用いて筐体11に設置されている。これにより、上部ユニット12および下部ユニット13は、前後方向へ摺動可能である。現金自動預払機1の扉9(図1参照)を開いた状態で上部ユニット12を手前に引き出すことにより、リジェクトカセット12d(図3参照)を抜き取ることができる。また、現金自動預払機1の扉9(図1参照)を開いた状態で下部ユニット13を手前に引き出すことにより、金種カセット13a,13b,13c(図3参照)および補充回収カセット13d(図3参照)を抜き取ることができる。
【0018】
図2に示すスライド機構14は、一対のスライドレール14L,14Rからなる。一方のスライドレール14Lは、上部ユニット12の左側面下部に配置されており、他方のスライドレール14Rは、上部ユニット12の右側面下部に配置されている。各々のスライドレール14L,14Rは、複数(二個以上)の部材を重ねた伸縮自在な構造になっており、例えば、伸ばした状態において一端側(最後端)の部材が筐体11の内壁面に固定されており、他端側(最先端)の部材が上部ユニット12の外壁面に固定されている。スライドレール14L,14Rは、伸縮方向が前後方向になるように配置される。
【0019】
図2に示すスライド機構15は、一対のスライドレール15L,15Rからなる。一方のスライドレール15Lは、下部ユニット13の左側面上部に配置されており、他方のスライドレール15Rは、下部ユニット13の右側面上部に配置されている。各々のスライドレール15L,15Rは、複数(二個以上)の部材を重ねた伸縮自在な構造になっており、例えば、伸ばした状態において一端側(最後端)の部材が筐体11の内壁面に固定されており、他端側(最先端)の部材が下部ユニット13の外壁面に固定されている。スライドレール15L,15Rは、伸縮方向が前後方向になるように配置される。
【0020】
図2に示すように、紙幣入出金機10は、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出し可否を電気的に制御する電磁ロック機構20を備える。ここでの電磁ロック機構20は、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを物理的に規制するロック機構21と、ロック機構21を駆動するトリガーとなるトリガー機構22と、を主に備える。電磁ロック機構20(ロック機構21およびトリガー機構22)は、筐体11に固定されている。ここでは、ロック機構21がスライドレール14Rとスライドレール15Rとの間に配置され、また、トリガー機構22はロック機構21の近くに配置されている。しかしながら、ロック機構21は、スライドレール14Lとスライドレール15Lとの間に配置される構成でもよい。また、トリガー機構22とロック機構21とは、所定の距離をとって配置されてもよい。
【0021】
図4ないし図6を参照して(適宜、図1ないし図3参照)、ロック機構21について説明する。図4に示すように、ロック機構21は、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを規制する(ロックする)ロックレバー23と、ロックレバー23をロック解除方向(図5のα1方向)に変位(移動)させるためのアクチュエータ24と、ロックレバー23とアクチュエータ24とを連結する連結部材25と、ロックレバー23をロック方向(図5のα2方向)に引き寄せるスプリング26とからなる。
【0022】
ロックレバー23は、上部ユニット12および下部ユニット13、または上部ユニット12および下部ユニット13に関連する関連部材の動きを規制する。関連部材は、上部ユニット12や下部ユニット13の移動を実現する移動機構(例えば、スライドレール)や、上部ユニット12や下部ユニット13と移動機構とを結合する結合部材(例えば、ブラケット)などである。ここでは、上部ユニット12とスライドレール14L,14R(図2参照)とを上部ブラケット16(図4参照)を用いて結合するとともに、下部ユニット13とスライドレール15L,15R(図2参照)とを下部ブラケット17(図4参照)を用いて結合している。
【0023】
図4に示す上部ブラケット16は、スライドレール14L,14Rの伸縮にともない上部ユニット12と一体になって移動する。また、下部ブラケット17は、スライドレール15L,15Rの伸縮にともない下部ユニット13と一体になって移動する。本実施形態では、ロックレバー23が上部ブラケット16および下部ブラケット17に係合することで、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを規制する。上部ブラケット16には、ロックレバー23に係合する被係合部16aが形成されており、また、下部ブラケット17には、ロックレバー23に係合する被係合部17aが形成されている。
【0024】
図4に示すロックレバー23は、回動軸部23aによって筐体11に回動可能に軸支されており、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを規制する(ロックする)規制位置(第一位置)と、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを許容する(ロック解除した)許容位置(第二位置)とを移動する。なお、図4では、ロックレバー23が規制位置にある状態を示している。
【0025】
図5に示すように、ロックレバー23は、上下左右平面で切断した断面視がコの字状(またはU字状)の単一部品として構成されている。ロックレバー23は、回動軸部23aに平行な矩形板状の基部23bと、基部23bの上辺から垂直(ここでは、左方向)に張り出した板状の第一レバー部23cと、基部23bの下辺から垂直(ここでは、左方向)に張り出した板状の第二レバー部23dと、基部23bの後辺から第一レバー部23cおよび第二レバー部23dとは反対側に張り出したリミッタ部23eと、を主に備える。第一レバー部23cと第二レバー部23dとは同じ形状を呈している。
【0026】
第一レバー部23cの先端側には、上部ブラケット16(図4参照)の被係合部16aに係合する第一係合部23fが形成されている。第一係合部23fは、ロックレバー23が規制位置にある状態で上部ユニット12が引き出された場合に、上部ブラケット16との係合が解除しない形状(例えば、L字状、爪状、鉤状など)を呈している。同様に、第二レバー部23dの先端側には、下部ブラケット17(図4参照)の被係合部17aに係合する第二係合部23gが形成されている。
【0027】
第二レバー部23dの後部には、連結部材25の一端を軸支する受け部23hが形成されている。受け部23hは、回動軸部23aよりも外側に位置している。図6(a)に示すように、リミッタ部23eは、規制位置で筐体11の一部に当接し、さらなるロック方向(図5のα2方向)への回動を制限する。なお、第一レバー部23cの先端は、先細りになるように傾斜する傾斜部23iが形成され、また、第二レバー部23dの先端も同様に、先細りになるように傾斜する傾斜部23jが形成されている。
【0028】
アクチュエータ24は、ON/OFF制御によってロックレバー23をロック解除方向(図5のα1方向)に変位させることができるものであればよく、例えばソレノイドである。ここでのアクチュエータ24は、可動鉄芯24aを有し、可動鉄芯24aの先端には、連結部材25の他端が軸支されている。アクチュエータ24が駆動することにより、可動鉄芯24aがアクチュエータ24の内部に引き込まれ(図5のβ1方向)、連結部材25を介してロックレバー23をロック解除方向(図5のα1方向)に変位させる。これにより、図6(a)に示す規制位置から図6(b)に示す許容位置にロックレバー23が移動し、第一係合部23fと被係合部16aとの係合および、第二係合部23g(図5参照)と被係合部17a(図4参照)との係合がともに解除される。
【0029】
ここで、第一レバー部23cと第二レバー部23dとが同じ形状を呈することで、回動軸部23aから第一係合部23fまでの距離と、回動軸部23aから第二係合部23gまでの距離とが等しい。そのため、ロックレバー23が規制位置から許容位置まで回動した場合における第一係合部23fの移動量と第二係合部23gの移動量とが等しく、第一係合部23fと被係合部16aとの係合および、第二係合部23g(図5参照)と被係合部17a(図4参照)との係合をともに解除するタイミングを取り易くなっている。
【0030】
図5に示すスプリング26は、ねじりコイルばねであり、回動軸部23aに巻かれている。スプリング26の一端側の端部26aは、筐体11の一部11a(図4参照)に固定されており、他端側の端部26bは、ロックレバー23の基部23bに固定されている。図6(a)に示す規制位置から図6(b)に示す許容位置にロックレバー23が移動することで、スプリング26が巻き込む方向に変形し、変形によってロックレバー23をロック方向(図5のα2方向)に移動させる弾性力が発生する。
【0031】
図7を参照して(適宜、図1ないし図6参照)、トリガー機構22について説明する。図7に示すように、トリガー機構22は、アクチュエータ24(図4参照)を駆動するトリガーとなる機構であり、錠27と、スイッチ28と、を主に備える。
【0032】
図7に示す錠27は、現金自動預払機1の扉9(図1参照)を開放した状態で、鍵穴が前面に露出するように配置されている。錠27は、鍵Kの操作に連動して回動するプレート27aを有している。錠27の施錠状態(図7(a)参照)では、プレート27aは、スイッチ28に干渉(接触)する位置にあり、また、錠27の開錠状態(図7(b)参照)では、プレート27aは、スイッチ28に干渉(接触)しない位置にある。
【0033】
スイッチ28は、錠27の施錠状態(図7(a)参照)と開錠状態(図7(b)参照)とで「ON」と「OFF」とが切り替わるようになっている。ここでのスイッチ28は、錠27に対向する位置に板バネ28aを有しており、錠27の施錠状態(図7(a)参照)では、板バネ28aは、プレート27aによって押し込まれ(「ON」の状態)、また、錠27の開錠状態(図7(b)参照)では、板バネ28aは、プレート27aに接触せずに元の形状になる(「OFF」の状態)。
【0034】
現金自動預払機1の制御部8(図1参照)は、スイッチ28の「ON」,「OFF」の状態により錠27の「開錠」,「施錠」の状態を検知して、アクチュエータ24の制御を行う。例えば、制御部8は、錠27が開錠状態の場合に、アクチュエータ24を駆動して上部ユニット12および下部ユニット13の規制を解除する。そのため、現金自動預払機1の作業員は、錠27が開錠状態の場合に、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体11から引き出して、リジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、および補充回収カセット13dを抜き取ることができる。
【0035】
また、制御部8(図1参照)は、錠27が施錠状態の場合に、アクチュエータ24を駆動せずに上部ユニット12および下部ユニット13の規制を解除しない。なお、現金自動預払機1が商用電源に接続されていない場合(つまり、電力の供給が断たれている場合)には、錠27を開錠したとしてもアクチュエータ24への電力の供給が行われないので、アクチュエータ24は駆動せずに上部ユニット12および下部ユニット13の規制は維持される(解除しない)。そのため、現金自動預払機1の作業員は、錠27が施錠状態の場合や商用電源に接続されていない場合に、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体11から引き出せず、リジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、および補充回収カセット13dを引き取ることもできない。
【0036】
≪第1実施形態に係る現金自動預払機を用いた保守作業およびそれに伴う現金自動預払機の動作≫
図1ないし図7を参照して、作業員による現金自動預払機1を用いた保守作業および現金自動預払機1の動作について説明する。ここで、保守を行う作業員は、図7に示す錠27の鍵Kを所持している。
【0037】
<正規な手続きに基づく保守作業の場合>
最初に、作業員は、現金自動預払機1が商用電源に接続されていることを確認すると共に、現金自動預払機1の扉9(図1参照)を開放し、所持する鍵Kを用いて錠27を開錠する。錠27の開錠を検知した制御部8は、アクチュエータ24を駆動し、ロックレバー23がスプリング26の弾性力に抗してロック解除方向(図5のα1方向)に回動する。そして、ロックレバー23が許容位置まで移動することで上部ユニット12および下部ユニット13の規制が解除される(図6(b)参照)。この際に、制御部8は、例えば、錠27を開錠した日時や時刻を履歴として記憶する。
【0038】
次に、作業員は、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体11から引き出して、リジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、補充回収カセット13dなどを抜き取り、紙幣の補充や回収などの作業を行う。なお、上部ユニット12および下部ユニット13の何れか一方のみを引き出して作業を行うこともできる。作業が終わった作業員は、抜き出したリジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、補充回収カセット13dなどを上部ユニット12や下部ユニット13に戻し、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体11に装着する。
【0039】
そして、上部ユニット12や下部ユニット13の筐体11への装着を終えた作業員が、鍵Kを用いて錠27を施錠すると、制御部8は、アクチュエータ24の駆動を停止させる。これによってスプリング26による弾性力によりロックレバー23はロック方向(図5のα2方向)に回動し、リミッタ部23eが筐体11の一部に当接することでロックレバー23が規制位置(図6(a))で停止して、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体から引き出せない状態になる。作業員は、現金自動預払機1の扉9(図1参照)を閉じて保守作業を終了する。
【0040】
なお、上部ユニット12や下部ユニット13を筐体11に装着する前に錠27を施錠したとしても、上部ユニット12を筐体11内に所定量だけ押し入れることで上部ブラケット16の被係合部16aがロックレバー23の傾斜部23iに当接し、スプリング26の弾性力に抗して上部ユニット12をさらに押し入れることで上部ユニット12が筐体11に装着される。同様に、下部ユニット13を筐体11内に所定量だけ押し入れることで下部ブラケット17の被係合部17aがロックレバー23の傾斜部23jに当接し、スプリング26の弾性力に抗して下部ユニット13をさらに押し入れることで下部ユニット13が筐体11に装着される。これにより、上部ユニット12および下部ユニット13は、引き出せない状態になる。
【0041】
<正規な手続きに基づかない作業の場合>
鍵Kを所持していない第三者は、錠27を開錠できない。そのため、上部ユニット12および下部ユニット13を引き出すことができず、リジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、および補充回収カセット13dを抜き取ることができない。
【0042】
また、第三者が作業員から不正な方法などにより鍵Kを入手し、錠27を開錠したとしても、錠27の開錠を検知した制御部8は、錠27を開錠した日時や時刻を履歴として記憶する。そのため、錠27を不正に開錠された場合でも、履歴を検証することで不正が行われた時刻を早期に特定することができるので、その後の対応に有利である。
【0043】
さらに、開錠の履歴が残るのを恐れて、鍵Kを入手した第三者が現金自動預払機1への電力の供給を断った状態で錠27を開錠しようとしても、アクチュエータ24は駆動せずに上部ユニット12および下部ユニット13の規制は維持される(解除しない)。そのため、上部ユニット12および下部ユニット13を引き出すことができず、リジェクトカセット12d、金種カセット13a,13b,13c、および補充回収カセット13dを抜き取ることができない。
【0044】
以上のように、第1実施形態に係るロック機構21および現金自動預払機1は、一つのアクチュエータ24で上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを規制する。そのため、収納庫(カセット)の抜き取り可否を簡易な構造で制御できる。
【0045】
また、第1実施形態に係るロック機構21および現金自動預払機1は、錠27の開錠に連動させてアクチュエータ24を駆動する。そのため、収納庫(カセット)の抜き取り作業の権限を与える範囲の管理が容易である。
【0046】
また、第1実施形態に係るロック機構21および現金自動預払機1は、錠27の開錠を検知した制御部8が、錠27を開錠した日時や時刻を履歴として記憶する。そのため、錠27を不正に開錠された場合でも、履歴を検証することで不正が行われた時刻を早期に特定することができるので、その後の対応に有利である。
【0047】
また、第1実施形態に係るロック機構21および現金自動預払機1は、電力の供給を断った状態では、アクチュエータ24が駆動せずに上部ユニット12および下部ユニット13の規制は維持される(解除しない)。そのため、収納庫(カセット)の抜き取りが行われた場合での履歴漏れを防げる(つまり、収納庫(カセット)の抜き取りが行われた場合には、必ず履歴が残る)。
【0048】
[第2実施形態]
第1実施形態では、図4に示すように、ロックレバー23の回動軸部23aを上部ユニット12および下部ユニット13の配置方向(上下方向)に設定し、ロックレバー23を配置方向に直交する平面(水平面)上を移動させていた。第2実施形態では、ロックレバーが配置方向を含んだ平面(垂直面)上を移動する。なお、第1実施形態との違いは、ロック機構の構成であるので、以下では相違点であるロック機構について説明する。
【0049】
≪第2実施形態に係るロック機構の構成≫
図8を参照して(適宜、図1および図2参照)、第2実施形態に係るロック機構31について説明する。ロック機構31は、上部ユニット12および下部ユニット13の引き出しを規制する(ロックする)第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bと、第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bをロック解除方向(図8(b)のα3方向)に変位させるためのアクチュエータ24と、第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bとアクチュエータ24とを連結する連結部材35と、第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bをロック方向(図8(a)のα4方向)に引き寄せる図示しないスプリングとからなる。
【0050】
第一ロックレバー33Aは、上部ユニット12または上部ユニット12に関連する関連部材(ここでは、上部ブラケット16)の動きを規制する。また、第二ロックレバー33Bは、下部ユニット13または下部ユニット13に関連する関連部材(ここでは、下部ブラケット17)の動きを規制する。
【0051】
第一ロックレバー33Aは、第一回動軸部33Aaによって筐体11に回動可能に軸支されており、上部ユニット12の引き出しを規制する規制位置(図8(a)参照)と、上部ユニット12の引き出しを許容する許容位置(図8(b)参照)とを移動する。第二ロックレバー33Bは、第二回動軸部33Baによって筐体11に回動可能に軸支されており、下部ユニット13の引き出しを規制する規制位置(図8(a)参照)と、下部ユニット13の引き出しを許容する許容位置(図8(b)参照)とを移動する。第一ロックレバー33Aと第二ロックレバー33Bとは、鏡面対称な形状を呈している。なお、規制位置は、「第一位置」の例示であり、許容位置は、「第二位置」の例示である。
【0052】
第一ロックレバー33Aは、第一回動軸部33Aaに直交するL字板状を呈している。第一ロックレバー33Aの先端側には、上部ブラケット16の被係合部16cに係合する係合部33fが形成されている。係合部33fは、第一ロックレバー33Aが規制位置にある状態で上部ユニット12が引き出された場合に、上部ブラケット16との係合が解除しない形状を呈している(例えば、L字状、爪状、鉤状など)。第一ロックレバー33Aの後端側には、連結部材35の一端が連結される長孔33Ahが形成されている。
【0053】
第二ロックレバー33Bは、第二回動軸部33Baに直交する逆L字板状を呈している。第二ロックレバー33Bの先端側には、下部ブラケット17の被係合部16dに係合する係合部33gが形成されている。係合部33gは、第二ロックレバー33Bが規制位置にある状態で下部ユニット13が引き出された場合に、下部ブラケット17との係合が解除しない形状を呈している(例えば、L字状、爪状、鉤状など)。第二ロックレバー33Bの後端側には、連結部材35の一端が連結される長孔33Bhが形成されている。
【0054】
以上説明した第2実施形態に係るロック機構31によっても、第1実施形態と略同等の効果を奏することができる。
【0055】
また、第2実施形態に係るロック機構31であれば、第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bが垂直面上を移動するので、左右方向の幅を狭くすることができる。なお、第1実施形態に係るロック機構21であれば、ロックレバー23が水平面上を移動するので、上下方向の幅を狭くすることができる。さらに、第1実施形態に係るロック機構21であれば、部品点数が少ないので、より安価に製造することができる。
【0056】
[変形例]
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【0057】
各実施形態では、媒体処理装置として現金自動預払機(ATM:Automated /Automatic Teller Machine)を例示して説明したが、媒体を取り扱うと共に少なくとも二つの引き出し可能なユニットを備える装置に本発明を適用できる。
【0058】
また、各実施形態では、紙幣入出金機10が、上部ユニット12と下部ユニット13とを備える構成を想定していたが、二つのユニットの配置は上下に限定されない。つまり、引き出し可能な二つのユニットが並べて配置されている装置であればよい。
【0059】
また、各実施形態では、アクチュエータ24としてソレノイドを想定していたが、アクチュエータ24は、ON/OFF制御によってロックレバー23や第一ロックレバー33Aおよび第二ロックレバー33Bをロック解除方向に変位させることができるものであればよく、他の構成要素であってもよい。アクチュエータ24は、例えば、モータなどであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 現金自動預払機(媒体処理装置)
2 接客部
8 制御部
9 扉
10 紙幣入出金機
11 筐体
12 上部ユニット(第一ユニット)
13 下部ユニット(第二ユニット)
14,15 スライド機構
16 上部ブラケット(関連部材)
17 下部ブラケット(関連部材)
20 電磁ロック機構
21,31 ロック機構
22 トリガー機構
23 ロックレバー
24 アクチュエータ
27 錠
28 スイッチ
33A 第一ロックレバー
33B 第二ロックレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8