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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】旋盤
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20221213BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20221213BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23B25/00 A
B23B29/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018221129
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020082279
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】染矢 拓範
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120156(JP,A)
【文献】特開2010-115763(JP,A)
【文献】特開2012-056020(JP,A)
【文献】実開平06-085751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23B 25/00
B23B 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持して回転する主軸と、ワークを切削加工する工具を保持する複数の工具保持部を装着可能であり、回転することにより1つの前記工具保持部を定められた加工位置に割り出すタレットと、を有する本体部を備え、
前記主軸に保持されて回転するワークと前記工具とを相対的に移動させることによりワークを切削加工することが可能であり
前記複数の工具保持部のうち少なくとも1つは、
前記工具の刃先を囲む開口部と、前記工具による切削加工時にワークから生じる切屑が前記開口部を介して入り込む空間部とを形成するカバーを備え、
前記本体部は、
前記空間部に接続されて前記切屑を排出先に案内する切屑排出路と、
前記切屑排出路内の前記切屑を前記排出先に向けて送るための排出装置と、を備え、
前記タレットは、前記本体部に設けられた軸部に対して回転可能であり、
前記切屑排出路は、
前記空間部に接続されて前記タレットとともに回転する第1切屑排出路と、
前記排出先まで延び、かつ前記加工位置に割り出された前記タレットの回転位置で前記第1切屑排出路と接続する第2切屑排出路と、を備える、旋盤。
【請求項2】
ワークを保持して回転する主軸と、ワークを切削加工する工具を保持する複数の工具保持部を装着可能であり、回転することにより1つの前記工具保持部を定められた加工位置に割り出すタレットと、を有する本体部を備え、
前記主軸に保持されて回転するワークと前記工具とを相対的に移動させることによりワークを切削加工することが可能であり、
前記複数の工具保持部のうち少なくとも1つは、
前記工具の刃先を囲む開口部と、前記工具による切削加工時にワークから生じる切屑が前記開口部を介して入り込む空間部とを形成するカバーを備え、
前記本体部は、
前記空間部に接続されて前記切屑を排出先に案内する切屑排出路と、
前記切屑排出路内の前記切屑を前記排出先に向けて送るための排出装置と、を備え、
前記排出装置は、前記排出先側から前記切屑排出路内を吸引する吸引装置、又は前記カバー側から前記切屑排出路内に所定ガスを供給するガス供給装置であり、
前記タレットは、前記本体部に設けられた軸部に対して回転可能であり、
前記切屑排出路は、
前記空間部に接続されて前記タレットとともに回転する第1切屑排出路と、
前記排出先まで延び、かつ前記加工位置に割り出された前記タレットの回転位置で前記第1切屑排出路と接続する第2切屑排出路と、を備える、旋盤。
【請求項3】
前記第2切屑排出路は、前記タレットの回転軸と交差する方向に延びるように、前記本体部に固定された非回転部材を貫通して設けられる、請求項1又は請求項2に記載の旋盤。
【請求項4】
前記カバーは、取り外し可能に前記工具保持部に取り付けられる、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の旋盤。
【請求項5】
前記空間部内及び前記切屑排出路内のうち一方又は双方の圧力を検出する圧力検出部を備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の旋盤。
【請求項6】
前記排出装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記圧力検出部の検出結果が所定値を超える場合に、前記排出装置を停止させる、請求項に記載の旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤を用いた切削加工では、ワークの材質等により、長く連なった連続型の切屑が発生することがある。連続型の切屑は、切削工具又はワークに絡みつき易い。切屑が切削工具又はワークに絡みつくと、ワークの被加工面を傷つけることがある。被加工面に傷がついたワークは、商品価値が低くなり、不良品となることもある。このため、旋盤では、切屑が切削工具又はワークに絡みつくことを防止することが要求されている。
【0003】
特許文献1には、切削加工により発生する切屑を処理する手段を設けた旋盤が記載されている。この旋盤は、主軸に支持されて回転するワークに対し相対的に移動してワークを切削加工する加工手段を備える。この加工手段は、主軸に対して相対的に移動可能な移動部材に複数の工具が装着された刃物台を有し、各工具に工具側切屑案内手段を設け、加工位置に位置する工具の工具側切屑案内手段の出口に入口が整合するように移動部材に設けられた移動部材側切屑案内手段と、移動部材側切屑案内手段により案内された切屑を切断する切屑切断手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-056020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旋盤は、切屑が工具あるいはワークに絡みつくことを、さらに抑制することが求められている。本発明は、切屑が工具あるいはワークに絡みつくことを効果的に抑制することができ、かつ、切屑を容易に排出することが可能な旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、旋盤が提供される。旋盤は、ワークを保持して回転する主軸と、ワークを切削加工する工具を保持する複数の工具保持部を装着可能であり、回転することにより1つの工具保持部を定められた加工位置に割り出すタレットと、を有する本体部を備える。旋盤は、主軸に保持されて回転するワークと工具とを相対的に移動させることによりワークを切削加工することが可能である。複数の工具保持部のうち少なくとも1つは、工具の刃先を囲む開口部と、工具による切削加工時にワークから生じる切屑が開口部を介して入り込む空間部とを形成するカバーを備える。本体部は、空間部に接続されて切屑を排出先に案内する切屑排出路を備える。本体部は、切屑排出路内の切屑を排出先に向けて送るための排出装置を備える。タレットは、本体部に設けられた軸部に対して回転可能である。切屑排出路は、空間部に接続されてタレットとともに回転する第1切屑排出路を備える。切屑排出路は、排出先まで延び、かつ加工位置に割り出されたタレットの回転位置で第1切屑排出路と接続する第2切屑排出路を備える。
【0007】
本発明の第2態様によれば、旋盤が提供される。旋盤は、ワークを保持して回転する主軸と、ワークを切削加工する工具を保持する複数の工具保持部を装着可能であり、回転することにより1つの工具保持部を定められた加工位置に割り出すタレットと、を有する本体部を備える。旋盤は、主軸に保持されて回転するワークと工具とを相対的に移動させることによりワークを切削加工することが可能である。複数の工具保持部のうち少なくとも1つは、工具の刃先を囲む開口部と、工具による切削加工時にワークから生じる切屑が開口部を介して入り込む空間部とを形成するカバーを備える。本体部は、空間部に接続されて切屑を排出先に案内する切屑排出路を備える。本体部は、切屑排出路内の切屑を排出先に向けて送るための排出装置を備える。排出装置は、排出先側から切屑排出路内を吸引する吸引装置、又はカバー側から切屑排出路内に所定ガスを供給するガス供給装置である。タレットは、本体部に設けられた軸部に対して回転可能である。切屑排出路は、空間部に接続されてタレットとともに回転する第1切屑排出路を備える。切屑排出路は、排出先まで延び、かつ加工位置に割り出されたタレットの回転位置で第1切屑排出路と接続する第2切屑排出路を備える
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様の旋盤によれば、切屑が工具あるいはワークに絡みつくことを抑制することができ、かつ切屑を容易に排出することができる。また、本発明の態様の旋盤によれば、タレットを有する旋盤において、簡単な構成で実施することができる。
【0009】
また、排出装置が、排出先側から切屑排出路内を吸引する吸引装置、又はカバー側から切屑排出路内に所定ガスを供給するガス供給装置である構成では、切屑排出路内の切屑を効果的に排出することができ、切屑排出路内に切屑が詰まることを抑制することができる。また、タレットが、本体部に設けられた軸部に対して回転可能であり、切屑排出路は、空間部に接続されてタレットとともに回転する第1切屑排出路と、排出先まで延び、かつ加工位置に割り出されたタレットの回転位置で第1切屑排出路と接続する第2切屑排出路と、を含む構成では、タレットに設けられる複数の装着部のうちの任意の装着部に、切屑が入り込むカバーを有する工具保持部を装着することができる。また、この構成では、第1切屑排出路とカバーとが接続された状態で、タレットとともに回転するので、第1切屑排出路とカバーとの位置ずれを抑制することができる。
【0010】
また、第2切屑排出路が、タレットの回転軸と交差する方向に延びるように本体部に固定された非回転部材を貫通して設けられる構成では、第2切屑排出路の形状がより直線に近い形状となって、切屑が流れやすくなるので、切屑排出路内に切屑が詰まることを抑制することができる。また、カバーが、取り外し可能に工具保持部に取り付けられる構成では、カバーを取り外すことができるため、工具保持部の工具を容易にメンテナンスできる。また、空間部内及び切屑排出路内のうち一方又は双方の圧力を検出する圧力検出部を備える構成では、空間部内あるいは切屑排出路内における切屑の詰まりの発生を迅速に検出することができるので、空間部内あるいは切屑排出路内に大量の切屑が詰まることを防止することができる。また、旋盤が排出装置を制御する制御部を備え、制御部が、圧力検出部の検出結果が所定値を超える場合に、排出装置を停止させる構成では、切屑が詰まった場合に排出装置を停止させることができるので、排出装置の不要な動作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る旋盤の一例を示す斜視図である。
図2】タレット及び工具保持部の一例を示す斜視図である。
図3】旋盤の一例を示す正面図である。
図4】(A)から(C)は、工具保持部の一例を示す図である。(A)は-X側から見た時の側面図である。(B)は工具の部分の拡大図である。(C)は、-Z側から見た時の正面図である。
図5】(A)から(C)は、工具保持部の分解斜視図である。(A)は斜め上方から見た時の斜視図である。(B)は斜め下方から見た時の斜視図である。(C)はカバーを外した状態を示す図である。
図6】(A)から(C)はカバーの一例を示す図である。(A)は斜視図である。(B)は-X方向から見た時の側面図である。(C)は、図6(B)に示すB-B線に沿った断面を示す図である。
図7図4(A)に示すA-A線の断面図である。
図8】タレットの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXZ平面とする。このXZ平面において、後述する主軸4の回転軸AX1に沿った方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をX方向と表記する。また、XZ平面に垂直な方向はY方向と表記する。X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。また、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれについて、適宜、矢印の先の側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を-側(例、-X側)と称す。
【0013】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る旋盤の一例を示す斜視図である。図1は、-Z側から見た時の斜視図である。図2は、タレット及び工具保持部の一例を示す斜視図である。図2は、+Z側から見た時の斜視図である。図3は、本実施形態に係る旋盤を+Z側から見た時の正面図である。
【0014】
旋盤1は、本体部2を備える。本体部2は、フレーム3(図3参照)と、主軸4と、タレット5と、切屑排出路6と、排出装置7と、圧力検出部8と、を備える。また、旋盤1は、排出先10(図3参照)と、制御部11と、を備える。
【0015】
フレーム3は、主軸4及びタレット5等の旋盤1の各部を支持する(図3参照)。主軸4は、ワークWを保持して回転する(図1参照)。主軸4は、基端(-Z側の端部)がフレーム3に支持され(図3参照)、フレーム3から+Z方向に沿って延びている。主軸4は、不図示の軸受、駆動部等によって、中心軸(回転軸)AX1周りに回転する(図1参照)。中心軸AX1は、Z方向に平行である。
【0016】
主軸4の先端(+Z側の端部)には、ワークWを保持するチャック13が配置される。チャック13は、ワークWを把握する把握爪13aを有する。把握爪13aは、主軸4の回転方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。例えば、把握爪13aは、主軸4の中心軸AX1の軸周りに120°間隔で3つ配置される。各把握爪13aは、不図示のチャック駆動部により、主軸4の径方向において、主軸4の中心軸AX1に対して近接又は離間する方向に移動する。チャック13は、把握爪13aが中心軸AX1に向かって移動する閉動作によってワークWを把持し、把握爪13aが中心軸AX1に対して外側に移動する開動作によって、ワークWの把持を解放する。ワークWの概形は、例えば、円筒状あるいは円柱状等である。チャック13は、中心軸AX1とワークWの中心軸とがほぼ一致するように、ワークWを把持する。主軸4の上記動作は、後述する制御部11により制御される。
【0017】
旋盤1は、主軸4に保持されて回転するワークWと工具Tとを相対的に移動させることによりワークWを切削加工する(図1参照)。
【0018】
タレット5は、ワークWを切削加工する工具Tを保持する。旋盤1は、タレット5に装着された工具Tにより、ワークWを加工する。タレット5は、主軸4の軸線方向から外れて配置される。タレット5は、主軸4の+X側に配置される(図3参照)。タレット5は、本体部2に設けられた軸部15に取り付けられている。軸部15の概形は円柱状である。軸部15は、基端(-Z側の端部)がフレーム3に支持され、フレーム3から+Z方向に沿って延びている。
【0019】
タレット5は、軸部15の先端(+Z側の端部)に取り付けられている。タレット5は、軸部15の先端の外周部分に設けられている。タレット5は、軸部15に対して回転可能である。タレット5は、軸部15の中心軸AX2と同軸に配置される。中心軸AX2は、Z方向と平行な方向である。
【0020】
タレット5の周面には、後述する工具保持部16を装着可能な装着部17が複数設けられている。本実施形態では、タレット5が8つの装着部17を有する例を説明するが、装着部17の数は限定されず任意である。本実施形態のタレット5の概形は、+Z方向から見た時に8角形状である。装着部17は、タレット5の中心軸AX2に対して放射状に8つ設けられている。
【0021】
なお、本実施形態では、複数の装着部17のうち1つの装着部17に、工具保持部16が装着される例を示すが、複数の装着部17は、それぞれ、工具保持部16を装着可能である。また、複数の装着部17は、旋盤1において一般的に用いられる工具保持部を装着可能である。一般的な工具保持部としては、ワークWに対して切削加工を施すバイト等の他、ドリルやエンドミル等の回転工具を保持する工具保持部が挙げられる。
【0022】
また、タレット5は、不図示の軸受等により、軸部15に対して回転可能に設けられている。タレット5は、回転駆動部21を有する。回転駆動部21は、モータ等の駆動装置である。タレット5は、回転駆動部21の駆動により、軸部15の中心軸AX2周りに回転する。タレット5が回転することにより、1つの工具保持部16を定められた加工位置P1に割り出す。タレット5が回転することにより、タレット5に装着される複数の工具保持部16から、切削加工に用いる所望の工具保持部16を定められた加工位置P1に割り出すことができる。
【0023】
また、軸部15は、フレーム3に対して、少なくともX方向及びZ方向に移動可能に構成されている。軸部15は、駆動部22により、X方向及びZ方向に移動する。駆動部22は、モータ等の駆動装置(駆動源)及び駆動力を伝達する駆動力伝達機構(図示せず)を含む。軸部15の上記の移動は、制御部11により制御される。タレット5は、軸部15の上記の移動により、主軸4に対して相対的に移動する。なお、タレット5については、後にさらに説明する。なお、軸部15は、X方向及びZ方向に加えて、Y方向にも移動可能な構成としてもよい。
【0024】
図4(A)から(C)は、工具保持部16の一例を示す図である。図4(A)は-X側から見た時の側面図である。図4(B)は工具Tの部分の拡大図である。図4(C)は、-Z側から見た時の正面図である。図5(A)から(C)は、工具保持部16の分解斜視図である。図5(A)は斜め上方から見た時の斜視図である。図5(B)は斜め下方から見た時の斜視図である。図5(C)はカバーを外した状態を示す図である。図6(A)から(C)は、カバーの一例を示す図である。図6(A)は斜視図である。図6(B)は-X方向から見た時の側面図である。図6(C)は、図6(B)に示すB-B線に沿った断面を示す図である。
【0025】
本実施形態の旋盤1は、少なくとも1つの工具保持部16を備える。この工具保持部16は、図5(A)から(C)に示すように、各部を支持する本体部24と、工具Tを装着可能な工具装着部25と、カバー26と、を備える。本体部24は、ねじ締結をする固定部19により、タレット5の装着部17に固定される(図4(A)参照)。
【0026】
工具Tは切削工具である。工具Tは、ワークWを切削する刃を有するチップ30と、チップ30を保持するシャンク31(バイトホルダ)と、を有する(図5(A)、(B)参照)。チップ30は、シャンク31の-Z側の端部に取り付けられている。工具T(チップ30及びシャンク31)は、工具装着部25に装着される(図5(C)参照)。工具装着部25は、シャンク31の下方を支持する支持部33を有する。工具装着部25は、シャンク31を位置決めして支持する(図5(C)参照)。工具Tは、ねじ締結をする固定部34により、工具装着部25に固定される。工具装着部25は、シャンク31を取り付ける位置を変更可能である。
【0027】
チップ30のすくい面は、切削時の切屑35がチップ30に対して+Z側に生じるように形成されている。工具装着部25の支持部33は、-Z側(加工対象のワークW側)に傾斜部33a(ガイド)を有している。傾斜部33aは、-Z側から+Z側にかけて下方に傾斜する。傾斜部33aは、後述する切屑35を+Z側且つ下方に導く。切屑35が+Z側且つ下方に導かれることにより、切屑35は空間部38に入りやすくなる。
【0028】
カバー26は、本体部24に取り付けられて、工具Tの刃先を囲む開口部37(図1図4(C)等参照)と、工具Tによる切削加工時にワークWから生じる切屑35が開口部37を介して入り込む空間部38(図4(A)、図6(B)等参照)と、を形成する。
【0029】
カバー26は、-Z側から見た時に、L字状の形状である(図6(A)等参照)。カバー26の形状がL字状である場合、容易に取り付けることができる。カバー26は、ガイド26aを有する。ガイド26aは、カバー26において、本体部24側(+X側)に形成される。ガイド26aは、XZ平面と平行な矩形板状である。ガイド26aは、Z方向に沿って設けられる。ガイド26aの-Z側の端部は、本体部24に取り付けた時に、支持部33の-Z側の端部と同様の位置に配置されるように形成されている。
【0030】
カバー26の底部26cは、XY平面における断面がV字状に形成される(図6(C)参照)。カバー26の底部26cの断面がV字状に形成されることにより、切屑35は下方に導かれる。切屑35が下方に導かれることにより、切屑35は空間部38に入りやすくなる。カバー26は、-Z側の端部に、傾斜部26b(ガイド)を有する。傾斜部26bは、-Z側から+Z側に行くにしたがって下方に傾斜している。傾斜部26bは、切屑35を排出先10側(+Z側)且つ下方に導く。切屑35を+Z側且つ下方に導くことにより、切屑35は空間部38に入りやすくなる。
【0031】
カバー26は、取り外し可能に本体部24に取り付けられる(図5(A)、(B)参照)。カバー26は、ねじ締結をする固定部40により、本体部24に取り付けられている(図4(A)参照)。カバー26が取り外し可能に工具保持部16に取り付けられる構成の場合、カバー26を取り外すことができるため、工具保持部16の工具Tを容易にメンテナンスできる。
【0032】
カバー26は、本体部24及び工具Tにほぼ密着した状態で取り付けられる。これにより、カバー26の内部(本体部24側)は、開口部37以外が密閉された空間(空間部38)となる。カバー26は、その-Z側の端部が本体部24の-Z側の端部とほぼ同様の位置になるように、本体部24に取り付けられる。
【0033】
カバー26を本体部24に取り付けた際、工具T(チップ30)の刃先は、カバー26及び本体部24により囲まれる。工具Tの刃先の上方(+Y方向)、下方(-Y方向)、及び側方(+X方向及び-X方向)が、カバー26及び本体部24により囲まれる。また、カバー26を本体部24に取り付けた際、工具Tの刃先以外の部分(刃先よりも+Z側の部分)は、カバー26及び本体部24により密閉される。工具Tの刃先は、カバー26を工具保持部16に取り付けた状態において、本体部24の端部から加工対象のワークW側(-Z側)に突出するように配置される(図4(B)参照)。工具Tの刃先の突出量は、任意に設定可能であるが、例えば1mmから5mm程度に設定される。
【0034】
工具T(チップ30)の刃先がカバー26及び本体部24により囲まれて、加工対象のワークW側(-Z側)に開口する開口部37が形成される(図1図4(C)、図6(A)参照)。開口部37は、加工対象のワークW側(-Z側)から見た時に、矩形状である(図1参照)。開口部37が工具Tの刃先を囲むので、切屑35は開口部37を介してカバー26内(本体部24側、+X側)の空間部38に確実に導かれて、切屑35がカバー26から漏れることが抑制され、切屑35を容易に排出することができる。
【0035】
空間部38は、カバー26を本体部24に取り付けた際に、カバー26の内側(本体部24側)に形成される空間である。空間部38は、切屑35の流路となる。空間部38は、後述する第1切屑排出路6aと接続され、切屑35を第1切屑排出路6aに案内する。空間部38は、カバー26を本体部24に取り付けた際に、ガイド26aの下方にも形成される(図6(B)参照)。ガイド26aの下方の空間部38は、本体部24とガイド26aとカバー26の底部26cとにより形成される。ガイド26aの下方の空間部38は、XY平面における断面が、野球に用いられるホームベースの形状となる(図6(C)参照)。
【0036】
ガイド26aの上面及び支持部33の下面は平面状に形成され、カバー26を本体部24に取り付けた状態において、ガイド26aの上面と支持部33の下面とが密着する。この構成の場合、カバー26の取り付け作業を容易に行うことができるとともに、切屑35がガイド26aと工具装着部25との間に入り込むことを抑制しつつ、切屑35を空間部38に確実に導くことができる。
【0037】
切屑排出路6について説明する。切屑排出路6は、切屑35を排出先10(図2参照)に案内する。切屑排出路6は、第1切屑排出路6aと、第2切屑排出路6bと、を備える(図2参照)。第1切屑排出路6a及び第2切屑排出路6bは、管状部材である。空間部38は、第1切屑排出路6aと接続される。空間部38は、カバー26及び第1切屑排出路6aの端部に設けられたフランジ部材42により、第1切屑排出路6aと接続される(図6(A)、(B)参照)。
【0038】
図7は、図4(A)に示すA-A線の断面図である。図8は、タレット5の動作を示す図である。第1切屑排出路6aは、空間部38に接続されてタレット5とともに回転する(図8参照)。第1切屑排出路6aは、タレット5とともに回転する回転部材43に設けられている。回転部材43は、非回転部材18の外周部分に設けられる。非回転部材18は、本体部2に固定されている。非回転部材18は、接続部材20を介して軸部15に固定されて、タレット5が回転する際にも回転しない(図7参照)。非回転部材18の外形は、端部がテーパ状である円柱状である(図2図7参照)。非回転部材18は、回転軸AX2と同軸に配置される。回転部材43は、タレット5とともに回転軸AX2周りに回転する。なお、非回転部材18は、本体部2に固定される構成であれば、上記の構成に限定されない。また、回転部材43は、タレット5とともに回転する構成であれば、上記の構成に限定されない。
【0039】
第2切屑排出路6bは、非回転部材18に設けられる(図7参照)。非回転部材18及び第2切屑排出路6bは、軸部15の+Z側に設けられる。非回転部材18及び第2切屑排出路6bは、タレット5が回転した場合にも、位置が固定される。第2切屑排出路6bは、タレット5の回転軸AX2と交差する方向に延びるように設けられ、非回転部材18を貫通して設けられる(図7参照)。この構成の場合、第2切屑排出路6bの形状がより直線に近い形状となって、切屑35が流れやすくなるので、切屑35の詰まりを抑制することができる。
【0040】
第2切屑排出路6bは、排出先10まで延びている(図3参照)。第2切屑排出路6bは、タレット5から下方に延びている。排出先10は、フレーム3(旋盤1)の外部に設けられる。切屑35は、排出先10に排出される。排出先10は、タレット5の下方に配置される。排出先10は、切屑35を収容する容器である。切屑35を排出先10に排出する構成の場合、切屑35を容易に処理することができる。
【0041】
第2切屑排出路6bは、加工位置P1に割り出されたタレット5の回転位置で、第1切屑排出路6aと接続される(図7図4(A)参照)。第1切屑排出路6aと第2切屑排出路6bとは、ほぼ密着して接続される。また、第2切屑排出路6bは、加工位置P1以外に割り出されたタレット5の回転位置P2において、第1切屑排出路6aとの接続が解除される(図8参照)。
【0042】
旋盤1が上記の第1切屑排出路6a及び第2切屑排出路6bを含む構成では、タレット5の複数の装着部17のうちの任意の装着部17に、カバー26を有する工具保持部16を装着することができる。また、第1切屑排出路6aとカバー26とが接続された状態で、タレット5とともに回転するので、第1切屑排出路6aとカバー26との位置ずれを抑制することができる。
【0043】
第1切屑排出路6aと第2切屑排出路6bとが接続されることにより、カバー26の空間部38と第1切屑排出路6aと第2切屑排出路6bとが接続され、これらは密閉された空間となる。この構成により、後述する排出装置7による力により、効果的に切屑35を排出することができる。
【0044】
排出装置7は、切屑排出路6内の切屑35を排出先10に向けて送る(図3参照)。排出装置7は、排出先10側から切屑排出路6内を吸引する吸引装置7aである。なお、排出装置7は、吸引装置7aに限定されず、例えば、カバー26側から切屑排出路6内に所定ガスを供給するガス供給装置(図示せず)の構成でもよい。
【0045】
排出装置7が吸引装置7a又はガス供給装置である構成では、切屑排出路6内の切屑35を効果的に排出することができ、切屑排出路6内に切屑35が詰まることを抑制することができる。排出装置7の動作は、後述する制御部11に制御される。排出装置7は、制御部11の制御により、工具保持部16による切削加工時に駆動する。
【0046】
旋盤1は、空間部38内及び切屑排出路6内のうち一方又は双方の圧力を検出する圧力検出部8を備える(図1参照)。圧力検出部8は圧力センサである。圧力検出部8は制御部11に接続され、検出結果を制御部11に送る。旋盤1が圧力検出部8を備える場合、空間部38内あるいは切屑排出路6内における切屑35の詰まりの発生を迅速に検出することができるので、空間部38内あるいは切屑排出路6内に大量の切屑35が詰まることを防止することができる。
【0047】
制御部11(図1参照)は、旋盤1の各部(例、駆動部22、回転駆動部21、排出装置7、圧力検出部8等)と接続され、旋盤1の各部を制御する。本実施形態では、制御部11は、圧力検出部8の検出結果が所定値を超える場合に、排出装置7を停止させる。この所定値は、任意に設定可能である。圧力検出部8の検出結果が所定値を超える場合に、排出装置7を停止させる構成の場合、切屑35が詰まった場合に、排出装置7を停止させることができるので、排出装置7の不要な動作を抑制することができる。なお、制御部11は、圧力検出部8の検出結果が所定値を超える場合に、旋盤1の動作(例、加工動作)を停止させるように、各部を制御してもよい。
【0048】
本実施形態の旋盤1の動作を説明する。ワークWを加工する際、まず、タレット5を回転させるにより、加工に用いる工具Tが保持された工具保持部16を加工位置P1に割り出す。工具保持部16が加工位置P1に割り出されると、第1切屑排出路6aと第2切屑排出路6bとが接続される。制御部11は、工具保持部16を加工位置P1に割り出し際に、吸引装置7a(排出装置7)を駆動させる。吸引装置7aが駆動することにより、空間部38、第1切屑排出路6a、及び、第2切屑排出路6bの内部が引圧となる。
【0049】
次に、制御部11は、加工プログラムに基づいて、ワークWを加工する。制御部11は、ワークWを保持した主軸4を回転させ、主軸4に保持されて回転するワークWとタレット5に保持された工具Tとを相対的に移動させることにより、ワークWを切削加工する。
【0050】
切削加工により生じた切屑35は、図4(A)に示すように、カバー26により形成された開口部37を介して空間部38に入り込む。開口部37が、上記したように工具Tの刃先を囲む構成であるので、切屑35が開口部37に容易に入り込み、切屑35が開口部37から漏れることが抑制される。空間部38に入り込んだ切屑35は、吸引装置7aにより、空間部38、第1切屑排出路6a、及び、第2切屑排出路6bの内部が引圧となっているので、容易に排出先10(図3参照)に排出される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の旋盤1は、ワークWを保持して回転する主軸4と、ワークWを切削加工する工具Tを保持する複数の工具保持部16を装着可能であり、回転することにより1つの工具保持部16を定められた加工位置P1に割り出すタレット5と、を有する本体部2を備え、主軸4に保持されて回転するワークWと工具T(Ta)とを相対的に移動させることによりワークWを切削加工する旋盤1であって、複数の工具保持部16のうち少なくとも1つは、工具Tの刃先を囲む開口部37と、工具Tによる切削加工時にワークWから生じる切屑35が開口部37を介して入り込む空間部38とを形成するカバー26を備え、本体部2は、空間部38に接続されて切屑35を排出先10に案内する切屑排出路6と、切屑排出路6内の切屑35を排出先10に向けて送るための排出装置7と、を備える。この構成によれば、切屑35が工具TあるいはワークWに絡みつくことを効果的に抑制することができ、かつ、切屑35を容易に排出することができる。また、本実施形態の旋盤1は、タレット5を有する旋盤においても簡単な構成で実施することができる。また、本実施形態の旋盤1は、上記した工具保持部16等を既存の旋盤に後付することでも実施可能である。なお、旋盤1が上記以外の構成を備えるか否かは任意であり、例えば、旋盤1は上記以外の構成を備えなくてもよい。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0053】
上述の説明では、旋盤1の一例として、1つの主軸4を有する旋盤を例に説明したが、この例に限定されない。例えば、旋盤1は、2つの主軸4を有する構成でもよい。
【0054】
また、上述の説明では、主軸4の一例として、主軸4が固定型である例を説明したが、この例に限定されない。例えば、主軸4は、フレーム3に対して移動する構成でもよい。
【0055】
また、上述の説明では、工具保持部16及び工具Tの一例としてワークWの端面(+Z側の面)を切削加工する切削工具の例を示したが、この例に限定されない。例えば、工具保持部16は、ワークWの円周面を加工する工具Tを保持する構成でもよい。
【0056】
また、上述の説明では、カバー26の一例として、図3から図5等に示す構成を例に説明したが、この例に限定されない。カバー26の構成は、開口部37と空間部38とを形成する構成を含む構成であれば、任意である。例えば、カバー26、開口部37、及び空間部38の形状は、それぞれ、任意である。
【0057】
また、上述の説明では、切屑排出路6の一例として、第1切屑排出路6aと、第2切屑排出路6bと、を備える例を説明したが、この例に限定されない。例えば、切屑排出路6は、第2切屑排出路6bを備えずに、第1切屑排出路6aが排出先10に接続される構成でもよい。
【0058】
また、上述の説明では、排出先10が1つの構成の例を説明したが、この例に限定されない。例えば、旋盤1は、排出先10を複数備え、タレット5の回転位置に応じて排出先10を切り替える構成でもよい。この構成の場合、工具保持部16の種類に応じて、切屑35の排出先10を変えることができる。例えば、材質が異なる切屑35の排出先10を変えることにより、材質が異なる切屑35を分別することができる。
【0059】
なお、旋盤1は、カバー26の空間部38と第1切屑排出路6aと第2切屑排出路6bとの間に、切屑35を破断するチップブレーカーを備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
W・・・ワーク
T・・・工具
1・・・旋盤
2・・・本体部
3・・・フレーム
4・・・主軸
5・・・タレット
6・・・切屑排出路
6a・・・第1切屑排出路
6b・・・第2切屑排出路
7・・・排出装置
7a・・・吸引装置
8・・・圧力検出部
10・・・排出先
11・・・制御部
13・・・チャック
15・・・軸部
16・・・工具保持部
17・・・装着部
18・・・非回転部材
21・・・回転駆動部
22・・・駆動部
25・・・工具装着部
26・・・カバー
30・・・チップ
31・・・シャンク
33・・・支持部
33a・・・傾斜部
35・・・切屑
37・・・開口部
38・・・空間部
42・・・フランジ部材
43・・・回転部材
AX1・・・中心軸、回転軸(主軸)
AX2・・・中心軸、回転軸(タレット)
P1・・・加工位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8