(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】吸収性複合体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20221213BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20221213BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B41J2/17 203
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2018224032
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 洋一
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-065052(JP,A)
【文献】特開2018-043516(JP,A)
【文献】特開平09-158024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0022791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0296403(US,A1)
【文献】米国特許第05981070(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0262104(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0160455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B41J 2/01,2/165-2/20,2/21-2/215
D04H 1/00-18/04
C09D 11/00-13/00
C09K 3/00,3/20-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット用インクの吸収に用いる吸収性複合体であって、
繊維および吸水性樹脂を含む小片の集合体を含み、
前記小片は、長手形状をなすものであり、長手方向の長さが0.5mm以上200mm以下であり、幅が0.1mm以上100mm以下であり、厚さが0.05mm以上2mm以下であり、
前記小片のBET比表面積の平均値が0.70m
2/g以上1.50m
2/g以下であることを特徴とする吸収性複合体。
【請求項2】
前記集合体のかさ密度が0.01g/cm
3以上0.50g/cm
3以下である請求項1に記載の吸収性複合体。
【請求項3】
前記小片は、前記繊維を含有する繊維基材と、前記繊維基材の少なくとも一方の面に担持された前記吸水性樹脂を有する請求項1または2に記載の吸収性複合体。
【請求項4】
前記小片は、前記繊維を含有する繊維基材を複数有し、
前記吸水性樹脂は、複数の前記繊維基材の間に設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸収性複合体。
【請求項5】
前記小片は、可撓性を有
するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸収性複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターでは、通常、インクの目詰まりによる印刷品質の低下を防止するために実施されるヘッドクリーニング動作や、インクカートリッジ交換後のインク充填動作の際に、廃インクが発生する。そこで、このような廃インクがプリンター内部の機構等に対して不本意な付着が生じないようにするために、廃インクを吸収する液体吸収体を備えている。
【0003】
従来、液体吸収体としては、親水性繊維と、高吸水性ポリマーとを含む吸液ブロックが用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の液体吸収体では、インクの浸透性に劣り、速やかに廃インクを吸収できないため、例えば、インク吸収体を収容する容器が転倒した場合に、インクが漏出するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0007】
本発明の適用例に係る吸収性複合体は、インクジェット用インクの吸収に用いる吸収性複合体であって、
繊維および吸水性樹脂を含む小片の集合体を含み、
前記小片は、長手形状をなすものであり、長手方向の長さが0.5mm以上200mm以下であり、幅が0.1mm以上100mm以下であり、厚さが0.05mm以上2mm以下であり、
前記小片のBET比表面積の平均値が0.70m2/g以上1.50m2/g以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る吸収性複合体の形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る吸収性複合体料を製造する製造工程を示す図であって、載置台に繊維基材を載置した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、吸水性樹脂を付与している状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材を加熱および加圧している状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材に吸水性樹脂を付与した後に折り曲げた状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材を加熱および加圧している状態を示す図である。
【
図10】
図10は、吸収性複合体をインク吸収材料として用いたインク吸収器および印刷装置の一例を示す部分垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[吸収性複合体]
以下、本発明の吸収性複合体について説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る吸収性複合体の形態の一例を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の一例を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の断面図である。
図4は、第1実施形態に係る吸収性複合体料を製造する製造工程を示す図であって、載置台に繊維基材を載置した状態を示す図である。
図5は、第1実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、吸水性樹脂を付与している状態を示す図である。
図6は、第1実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材を加熱および加圧している状態を示す図である。
【0011】
なお、以下では、説明の都合上、
図1~
図6中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。後述する
図7~
図10についても同様である。
【0012】
図1~
図3に示すように、本発明の吸収性複合体10Aは、繊維および吸水性樹脂3を含む小片1を複数備える小片集合体10を含む。
【0013】
これにより、ブロック状の液体吸収体に比べて、液体が付与された場合に、液体と接触する機会を多く確保することができる。また、液体との接触面積を多く確保することができる状態で、繊維が液体を一旦保持し、その後、液体を繊維から吸水性樹脂3により効率よく送り込むことができ、小片集合体10全体としての液体の吸収特性を向上させることができる。
【0014】
また、吸収性複合体10Aは、小片1を複数備える小片集合体10で構成されているため、形状を自由に変化させることができる。よって、容器内に所望の量だけ好適に収納することができる。その結果、液体の吸収特性にムラが生じるのを効果的に防止することができる。
【0015】
また、本発明の吸収性複合体10Aでは、繊維に吸水性樹脂3を担持させた小片1のBET比表面積を所定の範囲の値に調整することにより、浸透速度や初期吸収速度を十分に速くしつつ、単位質量当たりの液体吸収量を多くすることができる点に特徴を有する。
【0016】
すなわち、本発明の吸収性複合体10Aは、繊維および吸水性樹脂3を有する小片1のBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積の平均値が、0.70m2/g以上1.50m2/g以下であることを特徴とする。ここで、「BET比表面積の平均値」とは、小片集合体10を構成する小片を複数個サンプリングし、それらの各小片1のBET比表面積の平均値を言う。
なお、小片1のBET比表面積は、主に、繊維のBET比表面積の大きさに依存する。
【0017】
このような構成とすることにより、浸透速度や初期吸収速度を十分に速くしつつ、単位質量当たりの液体吸収量を多くすることができる。
【0018】
また、吸収性複合体10Aは、比較的短時間で液体を好適に吸収することができるため、例えば、吸収性複合体10Aを収容する容器が転倒した場合であっても、液体の漏出を効果的に防止することができる。
【0019】
また、吸収性複合体10Aの量に対する吸収させるべき液体量の比率が比較的大きい場合であっても、好適に液体を吸収することができる。
【0020】
また、容器内に収納される吸収性複合体10Aの体積が比較的大きい場合であっても、当該容器内の吸収性複合体10Aの各部位で液体の吸収の程度に不本意なムラが生じることを効果的に防止することができ、吸収性複合体10A全体としての液体の吸収効率を優れたものとすることができる。したがって、大型の容器を備える装置等にも好適に適用することができる。
【0021】
これに対し、上記のような構成を満たさないと、上述したような優れた効果が得られない。
【0022】
例えば、BET比表面積の平均値が前記下限値未満であると、吸収性複合体に液体が付与された場合に、当該液体を繊維が速やかに吸収することが困難となり、吸収性複合体としての液体の初期吸収速度を十分に速くすることができない。また、繊維から吸水性樹脂への液体の受け渡しも円滑に進行しないため、液体の浸透速度を十分に速くすることが困難となる。単位質量当たりの吸収性複合体による液体吸収量も少なくなってしまう。
【0023】
また、BET比表面積の平均値が前記上限値を超えると、発塵量が多くなり、取り扱い性が低下するとともに、小片が吸水性樹脂を好適に担持することが困難となる。その結果、吸収性複合体の液体の吸収特性が劣ったものとなる。
【0024】
小片1のBET比表面積の平均値は、0.70m2/g以上1.50m2/g以下であればよいが、0.80m2/g以上1.30m2/g以下であるのが好ましく、1.00m2/g以上1.28m2/g以下であるのがより好ましく、1.10m2/g以上1.25m2/g以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0025】
なお、本明細書において、BET比表面積は、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いたガス吸着法である定容量式吸着法によって測定されたガス吸着量を、BET法で解析することによって求めた値のことを指す。BET比表面積は、例えば、マイクロトラック・ベル社製、BELSORP-max-N-VP-CMを用いた測定により求めることができる。
【0026】
このような小片1の集合体である小片集合体10を含む吸収性複合体10Aは、通常、所定の容器、例えば、後述するようなインク吸収器100における容器9に充填されて用いられる。
【0027】
吸収性複合体10Aを所定の容器内に充填する際に、各小片1は、容器内において、底部方向等の二次元方向または三次元方向にランダムに収納される。
【0028】
このような収納状態では、小片1同士の間に間隙が形成され易い。これにより、液体は、間隙を通過したり、また、間隙が微小の場合、毛細管現象で濡れ広がったりすることができる、すなわち、液体の通液性を確保することができる。これにより、容器内で下方に向かって流れる液体が途中で堰き止められるのが防止され、よって、容器の底部まで浸透することができる。これにより、各小片1で好適に液体を吸収し、長期間保持することができる。
【0029】
以下、吸収性複合体10Aを構成する小片1の構成について説明する。
各小片1は、可撓性を有し、長手形状をなすものであるのが好ましい。ここで、長尺形状とは、アスペクト比が1.5以上のものを言い、いわゆる短冊状のものや、シュレッダー片等がこれに該当する。
【0030】
このような形状の各小片1は、変形し易いものとなる。特に、吸収性複合体10Aを容器に収納した際、各小片1は、容器の内側の形状に関わらず変形して、すなわち、形状追従性がより効果的に発揮され、よって、吸収性複合体10Aは、一括して無理なく収納される。また、吸収性複合体10A全体としての液体との接触面積をできる限り確保することができ、よって、液体を吸収する吸収特性が向上する。
【0031】
吸収性複合体10Aを構成する小片1は、湾曲形状を有する形状でもよいし、屈曲形状を有する形状でもよいし、捩れ形状を有する形状でもよいし、らせん形状を有する形状でもよい。また、これらの組み合わせでもよい。すなわち、小片1は、湾曲部、屈曲部、捩れ部のうちの少なくとも1つを有するものであるのが好ましい。これにより、後述する小片集合体10のかさ密度を容易に達成でき、保水性および浸透性に優れた吸収性複合体10Aを得ることができる。これにより、吸収性複合体10Aのかさ密度が後述するような適度な値となり、上述した吸収特性のさらなる向上を図ることができる。
【0032】
吸収性複合体10Aは、繊維および吸水性樹脂3を含む小片1の集合体である小片集合体10を含んでいる。
【0033】
なお、本明細書における「吸水」とは、水そのものや、インク、体液等の水を含む液体を吸収することを言う。また、本明細書において、「液体」とは、特に断りのない限り、水そのものや、インク、体液等の水を含む液体のことを指す。特に、好ましい液体としては、水を50質量%以上の含有率で含む液体が挙げられる。
【0034】
繊維は、吸水性樹脂以外の材料で構成された繊維であり、吸水性樹脂3を担持する。
これにより、吸水性樹脂3の不本意な脱落等を効果的に防止することができ、吸収性複合体10Aを収容する容器からの吸水性樹脂3の漏出をより好適に防止することができる。特に、吸収性複合体10Aに液体が付与された場合に、当該液体を繊維がいったん保持し、その後、吸水性樹脂3により効率よく送り込むことができ、吸収性複合体10A全体としての液体の吸収特性を向上させることができる。
【0035】
吸収性複合体10Aに含まれる繊維は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0036】
また、吸収性複合体10Aにおいては、例えば、複数本の繊維が独立して存在していてもよい。また、吸収性複合体10Aにおいて、繊維は、例えば、綿状で含まれていてもよい。また、繊維は、例えば、シート状、短冊状、小片状等に成形されたものであってもよい。
【0037】
本実施形態では、小片1は、繊維を含有する繊維基材2と、繊維基材2の少なくとも一方の面側に担持された吸水性樹脂3とを有している。
【0038】
吸水性樹脂3が繊維基材2の少なくとも一方の面側に担持されていることにより、繊維基材2の吸水性樹脂3が担持されている面、特に、
図3に示す構成では、表側の面21側に到達した液体を吸収することができるとともに、その反対の裏側の面22に到達した液体を迅速に伝搬、浸透することができる。
【0039】
なお、図示の構成では、繊維基材2の一方の面側のみに吸水性樹脂3が担持されているが、吸水性樹脂3は、繊維基材2の両側の面、すなわち、表側の面21および裏側の面22に、担持されていてもよい。この場合、表側の面21と裏側の面22とで、吸水性樹脂3の付着量が異なっているのが好ましい。これにより、液体の吸収および伝搬をより好適に調整することができる。
【0040】
<繊維基材>
繊維基材2は、吸水性樹脂3をその表面に担持する支持体である。繊維基材2により、吸水性樹脂3を好適に担持させることができ、繊維基材2から吸水性樹脂3の脱落をより好適に防止することができる。また、小片1に液体が付与された場合に、当該液体を繊維基材2が一旦保持し、その後、吸水性樹脂3により効率よく送り込むことができ、小片1全体としての液体の吸収特性を向上させることができる。また、一般に、セルロース繊維等の繊維は、吸水性樹脂3に比べて安価であり、小片1の製造コストの低減の観点からも有利である。特に、古紙由来の繊維を用いた場合、上記のような効果はより顕著に発揮される。また、廃棄物の削減、資源の有効活用等の観点からも有利である。
【0041】
繊維基材2を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成樹脂繊維;セルロース繊維、ケラチン繊維、フィブロイン繊維等の天然樹脂繊維やその化学修飾物等が挙げられ、これらを単独でまたは適宜混合して用いることができるが、セルロース繊維を主とするのが好ましく、ほぼ全部がセルロース繊維であるのがより好ましい。
【0042】
セルロースは、好適な親水性を有する材料であるため、小片1に液体が付与された場合に、当該液体を好適に取り込むことができるとともに、一旦取り込んだ液体を、好適に吸水性樹脂3に送り込むことができる。その結果、小片1全体としての液体の吸収特性を特に優れたものとすることができる。また、セルロースは、一般に吸水性樹脂3との親和性が高いため、繊維の表面に吸水性樹脂3をより好適に担持させることができる。また、セルロース繊維は、再生可能な天然素材で、各種繊維の中でも、安価で入手が容易であるため、小片1の生産コストの低減、安定的な生産、環境負荷の低減等の観点からも有利である。
【0043】
なお、本明細書において、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。
【0044】
繊維の平均長さは、特に限定されないが、0.1mm以上7mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上5mm以下であるのがより好ましく、0.1mm以上3mm以下であるのがさらに好ましい。繊維の平均幅は、特に限定されないが、0.05mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上1mm以下であるのがより好ましい。
【0045】
繊維の平均アスペクト比、すなわち、平均幅に対する平均長さの比率は、特に限定されないが、10以上1000以下であるのが好ましく、15以上500以下であるのがより好ましい。
【0046】
以上のような数値範囲により、吸水性樹脂3の担持や、繊維による液体の保持・当該液体の吸水性樹脂3への送り込みをより好適に行うことができ、小片1全体としての液体の吸収特性をより優れたものとすることができる。
【0047】
本発明の吸収性複合体10A中における繊維の含有率は、0.5質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上70質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以上67質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0048】
これにより、前述したような吸水性樹脂3を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、繊維を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0049】
<吸水性樹脂>
吸収性複合体10Aの構成成分である吸水性樹脂3は、吸水性を有する樹脂であればよく、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、イソブチレンとマレイン酸との共重合体等、アクリロニトリル共重合体やアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリエチレンオキサイド、ポリスルフォン酸系化合物、ポリグルタミン酸や、これらの塩、架橋体等が挙げられる。ここで、吸水性とは、親水性を有し、水分を保持する機能を言う。吸水性樹脂3には、吸水するとゲル化するものが多い。
【0050】
中でも、吸水性樹脂3は、側鎖に官能基を有する樹脂が好ましい。官能基としては、例えば、酸基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0051】
特に、吸水性樹脂3は、側鎖に酸基を有する樹脂であるのが好ましく、側鎖にカルボキシル基を有する樹脂であるのがより好ましい。
【0052】
吸水性樹脂3を構成するカルボキシル基含有単位としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、ケイ皮酸やこれらの無水物、塩等の単量体から誘導されるものが挙げられる。
【0053】
吸収性複合体10Aが側鎖に酸基を有する吸水性樹脂3を含む場合、当該吸水性樹脂3中に含まれる酸基のうち中和されて塩を形成しているものの割合は、30mol%以上100mol%以下であるのが好ましく、50mol%以上95mol%以下であるのがより好ましく、60mol%以上90mol%以下であるのがさらに好ましく、70mol%以上80mol%以下であるのがもっとも好ましい。
【0054】
これにより、吸収性複合体10Aによる液体の吸収性をより優れたものとすることができる。
【0055】
中和の塩の種類は、特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニア等の含窒素塩基性物の塩等が挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。
【0056】
これにより、吸収性複合体10Aによる液体の吸収性をより優れたものとすることができる。
【0057】
側鎖に酸基を有する吸水性樹脂3は、液体吸収時に酸基同士の静電反発が起こり、吸収速度が速くなるため好ましい。また、酸基が中和されていると、浸透圧により液体が吸水性樹脂3の内部に吸収されやすくなる。
【0058】
吸水性樹脂3は、酸基を含有していない構成単位を有していてもよく、このような構成単位としては、例えば、親水性の構成単位、疎水性の構成単位、重合性架橋剤となる構成単位等が挙げられる。
【0059】
前記親水性の構成単位としては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクレリート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等のノニオン性化合物から誘導される構成単位等が挙げられる。
【0060】
前記疎水性の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソブテン、エチレン、プロピレン、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の化合物から誘導される構成単位等が挙げられる。
【0061】
前記重合性架橋剤となる構成単位としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ビスフェノールジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルオキシ酢酸塩等から誘導される構成単位等が挙げられる。
【0062】
吸水性樹脂3としては、吸収特性、コスト等の観点から、ポリアクリル酸塩共重合体またはポリアクリル酸重合架橋体が好ましい。
【0063】
ポリアクリル酸重合架橋体としては、分子鎖を構成する全構成単位に占めるカルボキシル基を有する構成単位の割合が、50mol%以上のものが好ましく、80mol%以上のものがより好ましく、90mol%以上のものがさらに好ましい。
【0064】
カルボキシル基を含有する構成単位の割合が少なすぎると、液体の吸収特性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。
【0065】
ポリアクリル酸重合架橋体中のカルボキシル基は、一部が中和されて塩を形成していることが好ましい。
【0066】
ポリアクリル酸重合架橋体中の全カルボキシル基中に占める中和されているものの割合は、30mol%以上99mol%以下であるのが好ましく、50mol%以上99mol%以下であるのがより好ましく、70mol%以上99mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0067】
また、吸水性樹脂3は、前述した重合性架橋剤以外の架橋剤で架橋した構造を有していてもよい。
【0068】
吸水性樹脂3が酸基を有する樹脂である場合、当該架橋剤としては、例えば、酸基と反応する官能基を複数持った化合物を好ましく用いることができる。
【0069】
吸水性樹脂3が酸基と反応する官能基を有する樹脂である場合には、当該架橋剤として、分子内に酸基と反応する官能基を複数個有する化合物を好適に用いることができる。
【0070】
酸基と反応する官能基を複数個有する化合物である架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン等の多価アミン類等が挙げられる。また、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の多価イオン類等も、吸水性樹脂3が有する酸基と反応して架橋剤として機能するため、好適に用いることができる。
【0071】
吸水性樹脂3は、例えば、鱗片状、針状、繊維状、粒子状等、いかなる形状をなしていてもよいが、その大半が粒子状をなしているのが好ましい。吸水性樹脂3が粒子状をなしている場合には、液体の浸透性を容易に確保することができる。また、繊維基材2に吸水性樹脂3を好適に担持させることができる。なお、粒子状とは、最大長さに対する最少長さとの比が0.7以上1.0以下のもののことを言う。
【0072】
粒子の平均粒径は、10μm以上800μm以下であるのが好ましく、20μm以上600μm以下であるのがより好ましく、30μm以上500μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果をより確実に発揮させることができる。
【0073】
これに対し、粒子の平均粒径が小さすぎると、吸収性複合体10Aの内部への液体の浸透性が低下しやすくなる。
【0074】
また、粒子の平均粒径が大きすぎると、吸水性樹脂3の比表面積が小さくなり、液体の吸収特性が低下し、液体の吸収速度が低下する。
【0075】
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径をいう。平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置、すなわちレーザー回折式粒度分布測定装置による測定で求めることができる。
【0076】
また、吸水性樹脂3が粒子状をなす場合、吸水性樹脂3の平均粒径をD[μm]、繊維の平均長さをL[μm]としたときに、0.15≦L/D≦467の関係を満足するのが好ましく、0.25≦L/D≦333の関係を満足するのがより好ましく、2≦L/D≦200の関係を満足するのがさらに好ましい。
【0077】
これにより、吸水性樹脂3の担持や、繊維による液体の保持・当該液体の吸水性樹脂3への送り込みをより好適に行うことができ、吸収性複合体10A全体としての液体の吸収特性をより優れたものとすることができる。
【0078】
粒子中には、吸水性樹脂以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、フィラー、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0079】
吸水性樹脂3は、その全体が均一な構成を有するものであってもよいし、各部位で構成が異なるものであってもよい。例えば、吸水性樹脂3は、表面付近の領域、より具体的には、例えば、表面から厚さ1μmの領域が、他の部位に比べて、架橋度が高いものであってもよい。
【0080】
これにより、液体の吸収倍率、吸収速度、吸水性樹脂3の強度等をよりバランスよく向上させることができる。
【0081】
また、吸水性樹脂3と繊維との密着性をより優れたものとすることができ、繊維がいったん保持した液体を吸水性樹脂3により効率よく送り込むことができ、吸収性複合体10A全体としての吸収特性をさらに向上させることができる。
【0082】
また、
図3に示すように、吸水性樹脂3は、繊維基材2の一方の面側に担持されている。また、吸水性樹脂3は、繊維基材2の一方の面から内側に一部が入り込んでいる。すなわち、吸水性樹脂3は、一部が繊維基材2に含浸している。これにより、吸水性樹脂3の繊維基材2に対する担持力を高めることができる。よって、容器9内で吸水性樹脂3が脱落するのを防止することができる。その結果、高い液体の吸収特性を長期にわたって発揮することができるとともに、吸水性樹脂3が容器9内で偏在するのを防止することができ、液体の吸収特性にムラが生じるのを防止することができる。
【0083】
なお、本明細書中における「含浸」とは、吸水性樹脂3の粒子の少なくとも一部が繊維基材2の表面から内側に入り込んでいる埋入状態のことを言う。また、全ての粒子が含浸していなくてもよい。また、吸水性樹脂3の粒子が軟化によって繊維基材2内を貫通し、繊維基材2の裏面にまで出ている状態も含んでいる。
【0084】
小片1における吸水性樹脂3の含有量は、繊維に対して、25質量%以上300質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上150質量%以下であるのがより好ましい。これにより、吸水性および浸透性を十分に確保することができる。
【0085】
小片1における吸水性樹脂3の含有量が少なすぎると、吸水性が不十分になる可能性がある。一方、小片1における吸水性樹脂3の含有量が多すぎると、小片1の膨張率が大きくなる傾向を示し、浸透性が低下するおそれがある。
【0086】
また、小片1は、前述した以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、フィラー、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の着色剤、難燃剤、流動性向上剤等が挙げられる。
【0087】
小片1中におけるその他の成分の含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0088】
小片1の長手方向の長さは、容器の形状や大きさにもより、特に限定されないが、0.5mm以上200mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上100mm以下であるのがより好ましく、2.0mm以上30mm以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
これにより、吸水性樹脂3の担持や、繊維による液体の保持・当該液体の吸水性樹脂3への送り込みをより好適に行うことができ、小片1全体としての液体の吸収特性をより優れたものとすることができる。
【0090】
また、小片1の幅も、容器の形状や大きさにもより、特に限定されないが、0.1mm以上100mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上50mm以下であるのがより好ましく、1mm以上20mm以下であるのがさらに好ましい。
【0091】
また、小片1の幅に対する長手方向の長さの比率であるアスペクト比は、1以上200以下であるのが好ましく、1以上30以下であるのがより好ましい。
【0092】
小片1の厚さは、0.05mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上1mm以下であるのがより好ましい。
【0093】
以上のような数値範囲により、吸水性樹脂3の担持や、繊維による液体の保持・当該液体の吸水性樹脂3への送り込みをより好適に行うことができ、小片1全体としての液体の吸収特性をより優れたものとすることができる。さらに、吸収性複合体10A全体として変形させ易く、容器への形状追従性に優れる。
なお、吸収性複合体10Aには、大きさ、形状が異なる小片1が含まれていてもよい。
【0094】
また、吸収性複合体10Aには、全長、幅、アスペクト比、厚さのうちの少なくとも1つが同じ小片1が含まれていてもよいし、これらが全て異なる小片1が含まれていてもよい。
【0095】
吸収性複合体10Aにおける、最大幅が3mm以下の小片1の含有量は、30質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、40質量%以上80質量%以下であるのがより好ましい。これにより、液体の吸収特性にムラが生じるのをより効果的に防止することができる。
【0096】
最大幅が3mm以下の小片1の含有量が少なすぎると、容器に吸収性複合体10Aを収納した際に、小片1同士の間に間隙が形成されやすくなり、容器内において、液体の吸収特性にムラが生じるおそれがある。一方、最大幅が3mm以下の小片1の含有量が多すぎると、小片1同士の間に間隙を形成するのが難しくなる傾向を示し、吸収性複合体10Aのかさ密度を調整しにくくなる。
【0097】
また、小片1は、不規則な形状をなすものでもよいし、規則的な形状をなすものであってもよい。具体的には、小片1は、シュレッダー等によって規則的な形状に裁断(粗砕)されたものであるのが好ましい。これにより、吸収性複合体10Aのかさ密度に不本意なムラが生じにくくなり、容器内において、液体の吸収特性に不本意なムラが生じるのを防止することができる。また、規則的な形状に裁断(粗砕)された小片1(裁断片、粗砕片)は、切断面の面積を可及的に小さくすることができる。よって、適度な液体吸収特性を確保しつつ、繊維や吸水性樹脂3の飛散等による発塵を抑制することができる。
【0098】
なお、本明細書において、「規則的な形状」とは、例えば、長方形、正方形、三角形、五角形等の多角形、円形、楕円形等の形状のことを言う。また、各小片1は、同一の寸法であってもよく、相似形状であってもよい。また、例えば、長方形の場合、各辺の長さが異なっていても、長方形の範疇であれば規則的な形状とする。
【0099】
また、本明細書において、「不規則な形状」とは、粗く裁断したり、手で千切ったような形状等、前述したような「規則な形状」以外の形状のことを言う。
【0100】
規則的な形状をなす小片1の含有量は、小片集合体10全体のうちの30重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのがより好ましく、70重量%以上であるのがさらに好ましい。
【0101】
前述したように、各小片1は、長尺状をなす、すなわち、長手方向を有するものである。そして、容器内では、各々の小片1の延在方向が互いに異なるように充填されている。すなわち、小片1の延在方向が互いに揃わずに交差するよう、各小片1が規則性を持たずに、集合体として複数、容器内に納められている。さらに換言すれば、各小片1は、容器内において、二次元方向または三次元方向にランダムに収納されている。
【0102】
このような収納状態では、小片1同士の間に間隙が形成され易い。これにより、液体は、間隙を通過したり、また、間隙が微小の場合、毛細管現象で濡れ広がったりすることができる、すなわち、液体の通液性を確保することができる。これにより、容器内で下方に向かって流れる液体が途中で堰き止められるのが防止され、よって、容器の底部まで浸透することができる。これにより、各小片1で好適に液体を吸収し、長期間保持することができる。
【0103】
また、小片集合体10は、形状を自由に変化させることができる。よって、容器内に吸収性複合体10Aを所望の量だけ好適に収納することができるとともに、例えば、かさ密度の調整を容易に行うことができる。その結果、液体の吸収特性にムラが生じるのを効果的に防止することができる。
【0104】
また、各小片1がランダムに収納されているため、吸収性複合体10A全体として、液体と接触する機会が増え、よって、液体を吸収する吸収特性が向上する。また、吸収性複合体10Aを容器に収納する際、各小片1を無作為に容器に投入することができ、よって、その収納作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0105】
ここでいう、かさ密度とは、材料のみのかさ密度を示しており、材料/ケース容器により求められるかさ密度(容器内嵩密度)とは異なるものである。
【0106】
また、吸収性複合体10Aのかさ密度は、0.01g/cm3以上0.50g/cm3以下であるのが好ましく、0.05g/cm3以上0.30g/cm3以下であるのがより好ましく、これらの中でも0.08g/cm3以上0.25g/cm3以下であるのが特に好ましい。
これにより、液体の保水性および浸透性をより高いレベルで両立することができる。
【0107】
特に、上述したようなBET比表面積とかさ密度の両方の条件を満たすときに、吸収性複合体10Aは、より優れた浸透速度、初期吸収速度を有するほか、液体の保水性および浸透性を特に高いレベルで両立することができ、吸収性複合体10Aは、特に優れた吸収特性を有するものとなる。
【0108】
このような条件を満足することにより、比較的短時間で液体を好適に吸収することができ、例えば、吸収性複合体を収容する容器が転倒した場合であっても、液体の漏出を効果的に防止することができる。
【0109】
なお、本明細書において「かさ密度」は、所定重量の小片集合体10を容器に入れ、その容積から算出することができる。
【0110】
小片集合体10は容器形状に自由に追従するため、小片集合体10を容器に入れ、エアーで攪拌した後、所定の条件で、タッピングし、その容積から、かさ密度を算出することができる。
【0111】
かさ密度を求める際のタッピングは、例えば、小片集合体10を投入した容器の開口部を上側にした状態で、当該容器を10mm下の厚さ1cmのステンレス鋼製の板材上に自由落下・衝突させる動作を30回繰り返すという条件で行うことができる。
【0112】
次に、前述した吸収性複合体10Aの製造方法の一例について説明する。
吸収性複合体10Aの製造方法は、配置工程と、加熱加圧工程と、小片化工程とを有する。
【0113】
まず、
図4に示すように、裁断されて小片1となる以前のシート状の繊維基材2を載置台300に配置する、配置工程を行う。
【0114】
そして、シート状の繊維基材2に、一方の面側から水を含む液体、例えば、純水を付与する。この付与の方法としては、スプレーによる塗布や、スポンジローラーに水を含む液体を染み込ませておき、該スポンジローラーをシート状の繊維基材2の一方の面上で転がす方法等が挙げられる。
【0115】
次いで、
図5に示すように、メッシュ部材400を介して吸水性樹脂3をシート状の繊維基材2の一方の面上に付与する。メッシュ部材400は、網目401を有しており、吸水性樹脂3のうち、該網目401よりも大きい粒子は、メッシュ部材400上に補足され、該網目401よりも小さい粒子は、網目401を通過してシート状の繊維基材2の一方の面上に付与される。ここで、吸水性樹脂3は、水を吸収して軟化する。
【0116】
このように、メッシュ部材400を用いることにより、吸水性樹脂3の粒径を可及的に均一にすることができる。よって、繊維基材2の場所によって吸水性にムラが生じることをより効果的に防止することができる。
【0117】
網目401の最大幅は、0.06mm以上0.15mm以下であるのが好ましく、0.08mm以上0.12mm以下であるのがより好ましい。これにより、繊維基材2に付与される吸水性樹脂3の粒径を前記範囲内の値に好適に調整することができる。
【0118】
また、網目401の形状としては、特に限定されず、三角形、四角形、それ以上の多角形、円形、楕円形等、いかなる形状であってもよい。
【0119】
次いで、
図6に示すように、吸水性樹脂3が付着しているシート状の繊維基材2を、一対の加熱ブロック500の間に配置する。そして、一対の加熱ブロック500を加熱するとともに、一対の加熱ブロック500が接近する方向に加圧して、繊維基材2をその厚さ方向に加圧する、加熱加圧工程を行う。これにより、吸水により軟化していた吸水性樹脂3が加圧により繊維基材2の内側に入り込むとともに、乾燥して、
図3に示すように繊維基材2に強固に担持される。
【0120】
本工程での加圧力は、0.1kg/cm2以上1.0kg/cm2以下であるのが好ましく、0.2kg/cm2以上0.8kg/cm2以下であるのがより好ましい。また、本工程での加熱温度は、80℃以上160℃以下であるのが好ましく、100℃以上120℃以下であるのがより好ましい。
【0121】
そして、上記のようにして得られた吸水性樹脂3が担持されたシート状の繊維基材2を小片化する小片化工程を行う。小片化工程は、例えば、はさみ、カッター、ミル、シュレッダー等により、細かく裁断・粗砕・粉砕したり、手で細かく千切ったりすることにより行う。
【0122】
例えば、繊維の種類や、この裁断・粗砕・粉砕により得られる小片1の大きさや形状等により、小片1のBET比表面積を好適に調整することができる。また、小片1は、裁断・粗砕・粉砕により得られる外縁部以外に、比表面積が増加する様に、小片1に加工を施して表面積が大きくなるように調整したものでもよい。
【0123】
一般的には、小片1の大きさが小さくなるほど、小片1のBET比表面積は大きくなる傾向がある。
【0124】
そして、この吸収性複合体10Aは、例えば、所望量計量し、手でほぐしたりすることにより、かさ密度を調整して、所定の容器に収納して用いられる。
【0125】
なお、容器に収納される小片1の枚数は、特に限定されず、例えば、吸収体の用途等の諸条件に応じて、適宜必要枚数選択される。そして、この小片1の収納量の大小によって、吸収性複合体10Aでの液体の最大吸収量が調整される。
【0126】
また、吸収性複合体10Aは、小片1以外の構成を含んでいてもよい。例えば、解繊物としての繊維や、繊維に担持されていない吸水性樹脂、吸水性樹脂を担持していない繊維製の小片等を含んでいてもよい。ただし、吸収性複合体10A中における小片1以外の構成の含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0127】
≪第2実施形態≫
図7は、第2実施形態に係る吸収性複合体が備える小片の断面図である。
図8は、第2実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材に吸水性樹脂を付与した後に折り曲げた状態を示す図である。
図9は、第2実施形態に係る吸収性複合体を製造する製造工程を示す図であって、シート状の繊維基材を加熱および加圧している状態を示す図である。
【0128】
以下、これらの図を参照して吸収性複合体10Aの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0129】
図7に示すように、本実施形態では、小片1は、2枚の繊維基材2を有している。そして、吸水性樹脂3は、これらの繊維基材2の間に設けられている。言い換えると、本実施形態では、小片1は、積層された複数の繊維基材2を有し、吸水性樹脂3は、各繊維基材2の間に設けられている。
【0130】
これにより、吸水性樹脂3は、各繊維基材2に挟まれて覆われた構成となり、小片1の外表面に露出することが防止されている。その結果、吸水性樹脂3が繊維基材2から脱落することがさらに効果的に防止されている。したがって、高い液体の吸収特性をさらに長期にわたって発揮することができるとともに、吸水性樹脂3が容器内で偏在するのをより効果的に防止することができ、液体の吸収特性にムラが生じることをより効果的に防止することができる。
【0131】
なお、図示の構成では、小片1が、2枚の繊維基材2を有し、これらの繊維基材2の間に吸水性樹脂3が配されているが、例えば、小片1は、3枚以上の繊維基材2を有し、これらの各繊維基材2の間に吸水性樹脂3が配されていてもよい。
【0132】
次に、吸収性複合体10Aの製造方法について説明する。
本製造方法は、配置工程と、挟込工程と、加熱加圧工程と、小片化工程とを有する。なお、配置工程および小片化工程は、前述した実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0133】
図8に示すように、挟込工程では、吸水性樹脂3が付与されたシート状の繊維基材2を半分に折り曲げることにより、層状に配された吸水性樹脂3の両面側を繊維基材2で覆う。
【0134】
次いで、
図9に示すように、折り曲げたシート状の繊維基材2、言い換えると、層状に配された吸水性樹脂3の両面側に繊維基材2が配された積層体を、一対の加熱ブロック500の間に配置する。そして、一対の加熱ブロック500を加熱するとともに、一対の加熱ブロック500が接近する方向に加圧して、繊維基材2をその厚さ方向に加圧する、加熱加圧工程を行う。これにより、吸水により軟化していた吸水性樹脂3が加圧により繊維基材2の内側に入り込むとともに、乾燥する。また、この際、折り曲げられて重なった吸水性樹脂3同士が接合した状態で乾燥する。
【0135】
このような製造方法によれば、1枚の繊維基材2に吸水性樹脂3を塗布して折り曲げるという簡単な方法で繊維基材2が積層された構成とすることができる。すなわち、2枚の繊維基材2にそれぞれ吸水性樹脂3を塗布するという作業を省略することができる。よって、製造工程を簡素にすることができる。
【0136】
さらに、加熱加圧工程では、繊維基材2のうち、加熱ブロック500が接触する面は、吸水性樹脂3が付着していない面であるため、加熱ブロック500に吸水性樹脂3が付着するのを防止することができる。よって、加熱ブロック500の洗浄工程を省略することができ、生産性に優れる。
【0137】
[インク吸収器および印刷装置]
次に、本発明の吸収性複合体をインク吸収材料として用いた、インク吸収器および印刷装置について説明する。
【0138】
図10は、吸収性複合体をインク吸収材料として用いたインク吸収器および印刷装置の一例を示す部分垂直断面図である。
【0139】
図10に示すインク吸収器100は、インク吸収材料としての吸収性複合体10Aと、吸収性複合体10Aを収納する容器9と、容器9を封止する蓋体8と、を備える。これにより、前述した吸収性複合体10Aの効果を発揮することができるインク吸収器100を得ることができる。
【0140】
なお、本明細書における「インク吸収」とは、水系溶媒に色材が溶解した水系インクを吸収することはもちろん、溶剤にバインダーが溶解した溶剤系インクや、UV照射により硬化する液状のモノマー中にバインダーが溶解したUV硬化性インクや、分散媒にバインダーが分散したラテックスインク等、インク全般を吸収することを言う。特に、本発明は、水の含有率が50質量%以上であるインクに対して適用するのが好ましい。
【0141】
図10に示す印刷装置200は、例えば、インクジェット式のカラープリンターである。この印刷装置200は、インクQの廃液を回収する回収部205を備え、インク吸収器100が回収部205に設置されている。これにより、前述したインク吸収器100の効果を発揮することができる印刷装置200を得ることができる。
【0142】
この印刷装置200は、インクQを吐出するインク吐出ヘッド201と、インク吐出ヘッド201のノズル201aの目詰まりを防止するキャッピングユニット202と、キャッピングユニット202とインク吸収器100とを接続するチューブ203と、インクQをキャッピングユニット202から送液するローラーポンプ204と、回収部205と、を備えている。
【0143】
インク吐出ヘッド201は、下方に向かってインクQを吐出するノズル201aを複数有している。このインク吐出ヘッド201は、図示しないPPCシート等のような記録媒体に対して相対的に移動しつつ、インクQを吐出して、印刷を施すことができる。
【0144】
キャッピングユニット202は、インク吐出ヘッド201が待機位置にあるときに、ローラーポンプ204の作動により、各ノズル201aを一括して吸引して、ノズル201aの目詰まりを防止するものである。
【0145】
チューブ203は、キャッピングユニット202を介して吸引されたインクQをインク吸収器100に向かって通過させるものである。このチューブ203は、可撓性を有している。
【0146】
ローラーポンプ204は、チューブ203の途中に配置され、ローラー部204aと、ローラー部204aとの間でチューブ203の途中を挟持する挟持部204bとを有している。ローラー部204aが回転することにより、チューブ203を介して、キャッピングユニット202に吸引力が生じる。そして、ローラー部204aが回転し続けることにより、ノズル201aに付着したインクQを回収部205まで送り込むことができる。
【0147】
回収部205には、インク吸収材料として吸収性複合体10Aが収納されたインク吸収器100が設置されており、インクQは、インク吸収器100に送り込まれ、廃液として、インク吸収器100内の吸収性複合体10Aで吸収される。なお、インクQには、種々の色のものが含まれている。
【0148】
図10に示すように、インク吸収器100は、吸収性複合体10Aと、吸収性複合体10Aを収納する容器9と、容器9を封止する蓋体8とを備えている。
【0149】
このインク吸収器100は、印刷装置200に対し、着脱自在に装着され、その装着状態で、前述したようにインクQの廃液吸収に用いられる。このように、インク吸収器100を、いわゆる「廃液タンク」として用いることができる。そして、インク吸収器100のインクQの吸収量が限界に達したら、このインク吸収器100を、新たなインク吸収器100に交換することができる。なお、インク吸収器100のインクQの吸収量が限界に達したか否かについては、印刷装置200内の図示しない検出部によって検出される。また、インク吸収器100のインクQの吸収量が限界に達した場合には、その旨が、例えば、印刷装置200に内蔵されたモニター等の報知部により報知される。
【0150】
容器9は、吸収性複合体10A、すなわち小片集合体10を収納するものである。この容器9は、平面視で例えば四角形状をなす底板としての底部91と、底部91の各辺から上方に向かって立設した4つの側壁部92とを有する箱状をなすものである。そして、底部91と、4つの側壁部92とに囲まれた収納空間93内に、吸収性複合体10Aを収納することができる。
【0151】
なお、容器9は、平面視で四角形状をなす底部91を有するものに限定されず、例えば、平面視で円形状をなす底部91を有し、全体が円筒状のものであってもよい。
【0152】
容器9は、硬質のものである、換言すれば、容器9に内圧または外力が作用した場合に、容積が10%以上変化しない程度の形状保持性を有するものである。これにより、容器9は、吸収性複合体10Aの各小片1がインクQを吸収した後膨張して、その小片1からの力を内側から受けても、容器9自身の形状を維持することができる。よって、印刷装置200内での容器9の設置状態が安定し、各小片1がインクQを安定して吸収することができる。
【0153】
なお、容器9は、インクQを透過しない材料で構成されていればよく、その構成材料は、特に限定されないが、例えば、環状ポリオレフィンやポリカーボネート等のような各種樹脂材料を用いることができる。また、容器9の構成材料としては、前記各種樹脂材料の他に、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等のような各種金属材料を用いることができる。
【0154】
また、容器9は、内部視認性を有する透明なもの、または、不透明なもののいずれでもよい。なお、ここでの「透明」とは、容器9の内部の吸収性複合体10Aの概形や、吸収性複合体10AのインクQが付着した部位を識別できる程度の視認性を有するものであればよく、半透明を含む概念である。
【0155】
前述したように、インク吸収器100は、容器9を封止する蓋体8を備えている。
図10に示すように、蓋体8は、板状をなし、容器9の上部開口部94に嵌合することができる。この嵌合により、上部開口部94を液密的に封止することができる。これにより、例えば、インクQがチューブ203から排出されて落下した際に、吸収性複合体10Aに衝突して跳ね上がった場合でも、そのインクQが外方に飛散するのを防止することができる。よって、インクQがインク吸収器100の周辺に付着して汚れるのを防止することができる。
【0156】
蓋体8の中央部には、チューブ203が接続される接続口81が形成されている。接続口81は、蓋体8を厚さ方向に貫通した貫通孔で構成されている。そして、この接続口81に、チューブ203の下流側の端部を挿入して接続することができる。また、このとき、チューブ203の排出口203aは、下方を向く。
【0157】
なお、蓋体8の下面の接続口81の周囲には、例えば、放射状のリブや溝が形成されていてもよい。リブや溝は、例えば、容器9内でのインクQの流れの方向を規制する規制部として機能することができる。
【0158】
また、蓋体8は、インクQを吸収する吸収性を有していてもよいし、インクQを弾く撥液性を有していてもよい。
【0159】
蓋体8の厚さとしては、特に限定されず、例えば、1mm以上20mm以下であるのが好ましく、8mm以上10mm以下であるのがより好ましい。なお、蓋体8は、このような数値範囲の板状をなすものに限定されず、それよりも薄いフィムル状のものであってもよい。この場合、蓋体8の厚さとしては、特に限定されず、例えば、10μm以上1mm未満であるのが好ましい。
【0160】
なお、容器9に収納される小片1の枚数は、特に限定されず、例えばインク吸収器100の用途等の諸条件に応じて、適宜必要枚数選択される。このように、インク吸収器100は、容器9に小片1を必要枚数収納したという簡単な構成のものとなっている。そして、この小片1の収納量の大小によって、インク吸収器100でのインクQの最大吸収量が調整される。
【0161】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されるものではない。
【0162】
例えば、前述した実施形態では、吸収性複合体を構成する小片が、繊維基材の表面に吸水性樹脂を担持するものである場合について説明したが、吸収性複合体を構成する小片は、繊維および吸水性樹脂を含むものであればよく、各部位で繊維と吸水性樹脂とを均一に含むものであってもよい。
【0163】
また、前述した実施形態では、吸収性複合体の製造時に、吸水性樹脂を、水を含む液体と接触させて軟化させる過程を経ることにより、繊維と吸水性樹脂との密着性を高める構成について代表的に説明したが、繊維と吸水性樹脂との接合に、接着剤を用いてもよい。
【0164】
また、前述した第2実施形態では、挟込工程を、吸水性樹脂が付与されたシート状の繊維基材2を半分に折り曲げることにより行う場合について説明したが、例えば、吸水性樹脂が付与されたシート状の繊維基材を2枚用意し、これらを、吸水性樹脂を担持する側の面で対向させることにより行ってもよい。
【0165】
また、本発明に係る吸収性複合体は、前述したような方法で製造されたものに限定されない。
【実施例】
【0166】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、以下の説明において、温度条件、湿度条件を示していない処理は、温度25℃、相対湿度35%の環境下で行ったものである。また、各種測定についても、温度条件、湿度条件を示していないものは、温度25℃、相対湿度35%で行った。
【0167】
[1]吸収性複合体の製造
(実施例1)
まず、シート状の繊維基材として、縦30cm、横22cm、厚さ0.5mmの古紙であるトッパン・フォームズ社製、G80A4Wを用意した。また、紙の重さは4g/1枚であった。
次いで、この古紙に一方の面側から純水2gをスプレーで古紙の全面に塗布した。
【0168】
次いで、側鎖に酸基としてのカルボキシル基を有する吸水性樹脂であるポリアクリル酸重合架橋体としてのサンフレッシュ 500MPSA(三洋化成工業社製)を、古紙の純水を塗布した面側から付与した。この際、吸水性樹脂を、目開き寸法が0.106mmの網目を有するふるい(JTS-200-45-106 東京スクリーン社製)にかけながら付与した。古紙1枚当たりの吸水性樹脂の塗布量は、3gであった。
【0169】
そして、吸水性樹脂が付着した面に谷が形成されるようにして、古紙を半分に折り曲げた。この折り曲げた状態で、
図6に示すような一対の加熱ブロックを用いて、シート状の繊維基材をその厚さ方向に加圧するとともに加熱した。加圧は、0.15kg/cm
2で行い、加熱温度は、100℃であった。また、加熱、加圧を行った時間は、120秒間であった。
【0170】
そして、加熱、加圧を解除して、室温で12時間放置し、シート状の繊維基材が常温になったら、シート状の繊維基材を、基本シュレッドサイズが2mm×15mmのシュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いて、幅2mm、長さ15mmの短冊形状に切断することにより、複数の小片の集合体を含む吸収性複合体を得た。得られた小片は、シュレッダー片であり、可撓性を有し、湾曲部や屈曲部を有する形状であった。
【0171】
小片における吸水性樹脂の含有量は、繊維に対して75質量%であり、吸水性樹脂の平均粒径は、35~50μmであった。また、各小片では、吸水性樹脂は、繊維基材中に含浸していた。また、小片の厚さは1.0mmであった。吸水性樹脂は、繊維基材に一部含浸していた。
【0172】
(実施例2)
吸水性樹脂が担持され、折り曲げた状態で加圧加熱処理されたシート状の繊維基材に対して、シュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いた切断を行った後に、当該切断により得られた小片に対して、さらにもう1回、前記シュレッダーを用いて切断処理を行った以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0173】
(実施例3)
吸水性樹脂が担持され、折り曲げた状態で加圧加熱処理されたシート状の繊維基材に対して、シュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いた切断を行った後に、当該切断により得られた小片に対して、さらにもう3回、前記シュレッダーを用いて切断処理を行った以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0174】
(実施例4)
吸水性樹脂が担持され、折り曲げた状態で加圧加熱処理されたシート状の繊維基材に対して、シュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いた切断を行った後に、当該切断により得られた小片に対して、さらにもう5回、前記シュレッダーを用いて切断処理を行った以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0175】
(実施例5)
シート状の繊維基材として、王子製紙社製のマルチカットペーパーホワイトを用いた以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0176】
(実施例6)
古紙1枚当たりの吸水性樹脂の塗布量を1gに変更した以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0177】
(実施例7)
シュレッダーを用いた切断の代わりに、鋏を用いた切断を行い、直径25mmの円形シートを得た以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0178】
(実施例8)
前記実施例7と同様にして得られた円形シートと別に、さらに、シュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いて切断して作成した前記実施例1と同様にして得られたシュレッダー片をシート重量:シュレッド片重量=5:1で混合する事で得られた異形状材料の混合された、吸収性複合体を製造した。
【0179】
(実施例9)
前記実施例7と同様にして得られた小片円形シートと別に、さらに、シュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いて切断して作成した前記実施例3と同様にして得られたシュレッダー片をシート重量:シュレッド片重量=5:1で混合する事で得られた異形状材料の混合された、吸収性複合体を製造した。
【0180】
(比較例1)
古紙1枚当たりの吸水性樹脂の塗布量を4gに変更した以外は、前記実施例7と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0181】
(比較例2)
シート状の繊維基材に対して、純水および吸水性樹脂の付与、折り曲げ、加熱、加圧を行うことなく、そのまま、基本シュレッドサイズが2mm×15mmのシュレッダー(石澤製作所社製、SeCuretシリーズ F3143SP)を用いて、幅2mm、長さ15mmの短冊形状に切断した以外は、前記実施例1と同様にして吸収性複合体を製造した。
【0182】
(比較例3)
まず、古紙であるトッパン・フォームズ社製、G80A4Wを用意し、これに、解繊処理を施し、綿状の解繊物を得た。解繊処理は、ハイスピードミル(UNIWORLD社製、HGBL)を用いて行った。
【0183】
次いで、側鎖に酸基としてのカルボキシル基を有する吸水性樹脂であるポリアクリル酸重合架橋体としてのサンフレッシュ 500MPSA(三洋化成工業社製)20質量部を付与した。この際、吸水性樹脂を、目開き寸法が0.106mmの網目を有するふるい(JTS-200-45-106 東京スクリーン社製)にかけながら付与した。
【0184】
その後、この混合物をビニール袋に入れ、30秒間、振幅100mm、周波数3Hzの振動を加えて、混合することにより、吸収性複合体を製造した。
【0185】
前記各実施例および各比較例の吸収性複合体について、小片のBET比表面積および集合体のかさ密度を表1に示す。表1中、BET比表面積の値としては、以下のような測定により求めた値を示した。すなわち、小片のBET比表面積は、まず、前処理として、試料を25℃の窒素雰囲気下において12時間以上真空排気し、その後、吸着ガスとしてクリプトンガスを用い、マイクロトラック・ベル社製、BELSORP-max-N-VP-CMを用いて測定した。同様の測定を2回繰り返し行い、これらの平均値をBET比表面積の値として採用した。また、表1中、かさ密度の値としては、以下のような測定により求めた値を示した。すなわち、まず、テルモ社製のプラスチックシリンジ(規格SS-50ESZ)を複数個用意し、それぞれ異なる前記プラスチックシリンジに、吸収性複合体の各試料:3gを、10分の1量入れる毎に、振幅30mm、周波数3Hzの水平振動を5秒間加える操作を、10回繰り返し行った。その時点での体積を求め、当該体積と質量から、かさ密度を求めた。前記各実施例および各比較例の吸収性複合体について、それぞれ、3個のプラスチックシリンジを用いて、かさ密度を求め、これらの平均値をかさ密度の値として採用した。
【0186】
【0187】
[2]評価
まず、前記各実施例および各比較例について、前記のかさ密度の測定に用いた、各3個の吸収性複合体入りのプラスチックシリンジを用意した。
【0188】
次に、吸収性複合体を収容したプラスチックシリンジの中心位置に、市販のインクジェット用インクであるセイコーエプソン社製のBK(RDH-BK)とC(RDH-C)とM(RDH-M)とY(RDH-Y)とを質量比で3:1:1:1で混合した混合インク:50ccを3秒間で滴下した。
【0189】
前記各実施例および各比較例の各3個のプラスチックシリンジについて、インクの滴下完了時から、それぞれ、1分後、10分後、30分後に、メッシュをあけて、各時点でのインクの未吸収量を計測し、その結果から、インク吸収量を求め、以下の基準に従い評価した。インク吸収量が多いほど、液体の吸収特性に優れていると言える。
【0190】
なお、解繊物を用いた比較例3については、インクの滴下前に、当該解繊物を前記プラスチックシリンジ内で25ccの容積となるように加圧し、このような圧縮状態で評価を行った。
【0191】
S:50cc全量吸収。
A:インク吸収量が40cc以上50cc未満。
B:インク吸収量が30cc以上40cc未満。
C:インク吸収量が20cc以上30cc未満。
D:インク吸収量が10cc以上20cc未満。
E:インク吸収量が10cc未満。
【0192】
これらの結果を表2に示す。なお、インクの滴下途中でプラスチックシリンジからインクがあふれ出たものは、その時点でインクの滴下を中止し、表2中では「-」と示した。
【0193】
【0194】
表2から明らかなように、本発明では優れた吸収特性が確認できた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【0195】
また、上記で用いたセイコーエプソン社製のインクジェット用インクの混合インクの代わりに、キヤノン社製のインクジェット用インクであるBCI-381sBK、ブラザー社製のインクジェット用インクであるLC3111BK、ヒューレット・パッカード社製のインクジェット用インクであるHP 61XL CH563WAを用いた以外は、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
【0196】
また、容器の容積、形状およびインクの付与量を種々変更した以外は、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向の結果が得られた。
【0197】
また、小片における吸水性樹脂の含有量を、繊維に対して、25質量%以上300質量%以下の範囲内で変更した以外は、前記実施例と同様にして吸収性複合体を製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0198】
1…小片、2…繊維基材、3…吸水性樹脂、8…蓋体、9…容器、10…小片集合体、10A…吸収性複合体、21…表側の面、22…裏側の面、81…接続口、91…底部、92…側壁部、93…収納空間、94…上部開口部、100…インク吸収器、200…印刷装置、201…インク吐出ヘッド、201a…ノズル、202…キャッピングユニット、203…チューブ、203a…排出口、204…ローラーポンプ、204a…ローラー部、204b…挟持部、205…回収部、300…載置台、400…メッシュ部材、401…網目、500…加熱ブロック、Q…インク