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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20221213BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20221213BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20221213BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23J1/00 A
B09B3/70
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018228703
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091068
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田口 昇
(72)【発明者】
【氏名】狩野 真也
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215124(JP,A)
【文献】特開2016-182561(JP,A)
【文献】特開2005-257131(JP,A)
【文献】特開2003-340397(JP,A)
【文献】特開2002-263608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23J 1/00
B09B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子前段駆動機構により駆動される乾燥火格子および燃焼火格子、ならびに火格子後段駆動機構により駆動される後燃焼火格子を有し、前記乾燥火格子、前記燃焼火格子、および前記後燃焼火格子によって廃棄物を送りながら焼却する焼却炉と、
一次空気を、前記乾燥火格子および前記燃焼火格子の下方にのみ供給し、前記後燃焼火格子の下方に供給しないように構成される一次空気供給手段と、
前記焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして前記後燃焼火格子の下方にのみ供給する循環排ガス供給手段と、を備え
前記火格子後段駆動機構は、前記後燃焼火格子を、前記乾燥火格子および前記燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度であって、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させて難溶性の炭酸鉛を生成し、前記焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させて炭酸カルシウムを生成し、前記焼却灰のpHを低下させて鉛の難溶性領域にし、前記焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ前記後燃焼火格子上で前記焼却灰を滞留させる送り速度で駆動するように設定される
ことを特徴とする廃棄物焼却装置。
【請求項2】
前記循環排ガス供給手段は、前記後燃焼火格子の下方にのみ供給する前記循環排ガスの温度を130℃以上250℃以下に調整する
ことを特徴とする請求項に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項3】
前記火格子後段駆動機構は、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上とすること、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすること、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすること、および
前記焼却炉から排出される焼却灰の溶出液のpHを12.0以下とすること、
のうちいずれかを可能とするように、前記後燃焼火格子による前記焼却灰の送り速度または前記後燃焼火格子上の前記焼却灰の滞留時間を設定する
ことを特徴とする請求項またはに記載の廃棄物焼却装置。
【請求項4】
前記循環排ガス供給手段は、前記後燃焼火格子の下方への前記循環排ガスの供給量を、廃棄物燃焼量測定手段によって測定または導出された廃棄物燃焼量の1tあたりに対して、500Nm3以上2000Nm3以下とする
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項5】
火格子前段駆動機構により駆動される乾燥火格子および燃焼火格子、ならびに火格子後段駆動機構により駆動される後燃焼火格子を有し、前記乾燥火格子、前記燃焼火格子、および前記後燃焼火格子によって廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置が実行する廃棄物焼却方法であって、
一次空気供給手段により、一次空気を、前記乾燥火格子および前記燃焼火格子の下方にのみ供給し、前記後燃焼火格子の下方に供給せず、
循環排ガス供給手段により、前記後燃焼火格子の下方にのみ前記焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、
前記火格子後段駆動機構により、前記後燃焼火格子を、前記乾燥火格子および前記燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度であって、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させて難溶性の炭酸鉛を生成し、前記焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させて炭酸カルシウムを生成し、前記焼却灰のpHを低下させて鉛の難溶性領域にし、前記焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ前記後燃焼火格子上で前記焼却灰を滞留させる送り速度で駆動する
ことを特徴とする廃棄物焼却方法。
【請求項6】
前記循環排ガス供給手段により、前記後燃焼火格子の下方にのみ供給する前記循環排ガスの温度を130℃以上250℃以下に調整する
ことを特徴とする請求項に記載の廃棄物焼却方法。
【請求項7】
前記火格子後段駆動機構を、前記後燃焼火格子上での前記焼却灰の滞留時間を30分から120分までの範囲とするように駆動させる
ことを特徴とする請求項に記載の廃棄物焼却方法。
【請求項8】
前記火格子後段駆動機構により、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上とすること、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすること、
前記焼却炉から排出される焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすること、および
前記焼却炉から排出される焼却灰の溶出液のpHを12.0以下とすること、
のうちいずれかを可能とするように、前記後燃焼火格子による前記焼却灰の送り速度または前記後燃焼火格子上の前記焼却灰の滞留時間を設定する
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の廃棄物焼却方法。
【請求項9】
前記循環排ガス供給手段により前記後燃焼火格子の下方に供給される前記循環排ガスの供給量を、廃棄物燃焼量測定手段によって測定または導出された廃棄物燃焼量の1tあたりに対して、500Nm3以上2000Nm3以下とする
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の廃棄物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する火格子式の廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物を焼却した際に発生する焼却残渣は、その殆どが埋め立て処分されている。しかし、近年、埋め立て処分場の確保が困難になり、埋立て処分量を減少させることが要望されている。このため、廃棄物焼却炉から排出される焼却残渣(以下、「焼却灰」という)を資源として有効利用し、埋立て処分量を減少させる試みがなされている。
【0003】
しかし、焼却灰には、有害物質、特に重金属類が含まれている。したがって、焼却灰からの重金属類の溶出量が基準値以上の場合は、そのままでは、焼却灰を資源としての利用が困難である。このような状況に対処するためには、上述のような性状の焼却灰を資源として利用するために、焼却灰から重金属類を除去する処理を行うか、または重金属類を安定化させて焼却灰からの溶出量を基準値以下とする処理を行うように焼却灰の無害化処理を行わなければならない。なお、焼却灰に含まれている重金属類のうち、特に鉛の含有量が多いため、処理の対象になっている重金属類は主として鉛である。
【0004】
焼却灰中の重金属類としての鉛の溶出の抑制(難溶性化)に関しては、次のようなことが知られている。
【0005】
(1)焼却灰に含まれる鉛は、該鉛を二酸化炭素と反応させて炭酸化物を生成することにより、水に対する溶解度が低下する性質を有する。具体的には、酸化鉛PbOから炭酸鉛PbCOに変化することにより、水に対する溶解度は酸化鉛で107mg/lであるところ、炭酸鉛では2.5mg/lと大幅に低下し、難溶性になり焼却灰からの溶出が抑制される。
【0006】
(2)また、焼却灰は塩基性であって溶出液のpHが高い。焼却灰のpHに関しては、焼却灰に含まれる酸化カルシウムCaOを二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムCaCOとせしめることにより、焼却灰のpHを重金属類が難溶性を示す低pHとして難溶性領域とすることも行われる。焼却灰中の重金属類のうち、特に含有量が多い鉛は両性金属であり、強い塩基性を示す焼却灰に対してpHを低下させる処理を施し、難溶性領域とすることで、鉛の溶出量を減少させることができる。
【0007】
上述のように、(1)鉛などの重金属類の炭酸化反応により炭酸鉛などを生成させ難溶性にすることと共に、(2)焼却灰のpHを低下させ難溶性領域にすることも同時に行うことにより、重金属類を難溶化し、焼却灰からの重金属類の溶出を抑制でき、焼却灰を土木資材として利用する際の基準値となる土壌環境基準における重金属類溶出基準を満足させることができる。
【0008】
現状における焼却灰の鉛の溶出量に対する基準値は、資源として有効利用する場合、鉛の溶出量が0.01mg/lである。したがって、焼却灰を利用する場合には、焼却灰をこれらの基準値以下の性状にするための処理をしなければならない。
【0009】
このような焼却灰に含まれる重金属類の難溶性化処理が知られている状況のもとで、焼却灰の無害化処理方法として、特許文献1の段落[0040]~[0042]、図4に開示されている方法が知られている。この特許文献1に開示されている焼却灰の重金属類の無害化処理方法では、廃棄物焼却炉からの燃焼排ガスの一部が煙道から抜き出され送風機により送気され、後燃焼火格子の下方から導入されるようになっており、廃棄物焼却炉の排ガス(循環排ガスという)を後燃焼火格子上の焼却灰に通気することにより、焼却灰中の成分と排ガス中の二酸化炭素との反応がなされ、鉛などの重金属類の炭酸化反応により炭酸鉛などを生成させ難溶性にすることと共に、焼却灰に含まれる酸化カルシウムCaOあるいは水酸化カルシウムCa(OH)2を二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウムCaCOとせしめ、焼却灰のpHを低下させ難溶性領域にすることも行なわれることにより、焼却灰からの重金属類の溶出を抑制する焼却灰の無害化処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-340397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された廃棄物焼却炉からの燃焼排ガスの一部(循環排ガス)を後燃焼火格子の下方から後燃焼火格子上の焼却灰に通気する方法にあっては、焼却灰中の成分と排ガス中の二酸化炭素との反応が十分になされるためには、循環排ガスの供給量を増加すればよいが、循環排ガスの供給量を増加すると焼却炉内温度等の炉内状況に悪影響を与えることがあるという問題があり、循環排ガスの供給量を増加することには制約がある。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑み、焼却灰の重金属類の溶出を抑制する無害化処理を焼却炉内状況に悪影響を与えることなく行えることができる、廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると上述の課題は、次のような構成の廃棄物焼却装置、それらによる廃棄物焼却方法により解決される。
【0014】
[廃棄物焼却装置]
本発明の廃棄物焼却装置は、次の<第一発明>及び<第二発明>のごとく構成される。
【0015】
<第一発明>
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有しこれらの火格子を火格子駆動機構で駆動して廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置において、
乾燥火格子及び燃焼火格子の下方へ一次空気を供給する一次空気供給手段と、
後燃焼火格子の下方へ焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給する循環排ガス供給手段と、
乾燥火格子と燃焼火格子を駆動する火格子前段駆動機構と、
後燃焼火格子を駆動する火格子後段駆動機構とを有し、
火格子後段駆動機構は、後燃焼火格子を、乾燥火格子および燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度であって、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ後燃焼火格子上で焼却灰を滞留させる送り速度で駆動するように設定されていることを特徴とする廃棄物焼却装置。
かかる第一発明において、火格子後段駆動機構は、
焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上とすること、
上記焼却灰に含まれる炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすること、
上記焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすること、
上記焼却灰の溶出液のpHを12.0以下とすること、
のうちいずれかを可能とするように、後燃焼火格子による焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定することが好ましい。
【0016】
<第二発明>
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有しこれらの火格子を火格子駆動機構で駆動して廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置において、
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子の下方へ一次空気を供給する一次空気供給手段と、
後燃焼火格子の下方へ焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給する循環排ガス供給手段と、
乾燥火格子と燃焼火格子を駆動する火格子前段駆動機構と、
後燃焼火格子を駆動する火格子後段駆動機構とを有し、
火格子後段駆動機構は、後燃焼火格子を、乾燥火格子および燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度であって、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ後燃焼火格子上で焼却灰を滞留させる送り速度で駆動するように設定されていることを特徴とする廃棄物焼却装置。
かかる第二発明において、後燃焼火格子の下方へ供給される一次空気と循環排ガスとの混合ガスの二酸化炭素濃度を調整する混合ガス二酸化炭素濃度調整手段を有し、混合ガス二酸化炭素濃度調整手段は、上記混合ガスの二酸化炭素濃度を8vol%以上に調整することが好ましい。
【0017】
[廃棄物焼却方法]
本発明の廃棄物焼却方法は、次の<第三発明>及び<第四発明>のごとく構成される。
【0018】
<第三発明>
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有しこれらの火格子を火格子駆動機構で駆動して廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法において、
一次空気供給手段により、乾燥火格子及び燃焼火格子の下方へ一次空気を供給し、
循環排ガス供給手段により、後燃焼火格子の下方へ焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、
火格子前段駆動機構により、乾燥火格子と燃焼火格子を駆動し、
火格子後段駆動機構により、後燃焼火格子を、乾燥火格子および燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度であって、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ後燃焼火格子上で焼却灰を滞留させる送り速度で駆動することを特徴とする廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法。
かかる第三発明において、火格子後段駆動機構を、後燃焼火格子上での焼却灰の滞留時間を30分から120分までの範囲とするように駆動を行うことが好ましい。
また、第三発明においては、火格子後段駆動機構により、
焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上とすること、
上記焼却灰に含まれる炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすること、
上記焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすること、
上記焼却灰の溶出液のpHを12.0以下とすること、
のうちいずれかを可能とするように、後燃焼火格子による焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定することが好ましい。
【0019】
<第四発明>
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有しこれらの火格子を火格子駆動機構で駆動して廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法において、
一次空気供給手段により、乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子の下方へ一次空気を供給し、
循環排ガス供給手段により、後燃焼火格子の下方へ焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、
火格子前段駆動機構により、乾燥火格子と燃焼火格子を駆動し、
火格子後段駆動機構により、後燃焼火格子を駆動し、
火格子後段駆動機構により、後燃焼火格子を、乾燥火格子および燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度で駆動し、後燃焼火格子上で焼却灰を所定時間滞留させて、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制するために要する時間だけ後燃焼火格子上で焼却灰を滞留させる送り速度で駆動することを特徴とする廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法。
かかる第四発明において、火格子後段駆動機構を、後燃焼火格子上での焼却灰の滞留時間を30分から120分までの範囲とするように駆動を行うことが好ましい。
また、第四発明においては、後燃焼火格子の下方へ供給される一次空気と循環排ガスとの混合ガスの二酸化炭素濃度を混合ガス二酸化炭素濃度調整手段により調整し、上記混合ガスの二酸化炭素濃度を8vol%以上に調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のように、乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有しこれらの火格子を火格子駆動機構で駆動して廃棄物を送りながら焼却する焼却炉を備える廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法において、一次空気供給手段により、乾燥火格子及び燃焼火格子の下方へ、もしくはさらに後燃焼火格子の下方へ一次空気を供給し、循環排ガス供給手段により、後燃焼火格子の下方へ焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、火格子前段駆動機構により、乾燥火格子と燃焼火格子を駆動し、火格子後段駆動機構により、後燃焼火格子を乾燥火格子および燃焼火格子の送り速度より遅い送り速度で駆動し、後燃焼火格子上で焼却灰を所定時間滞留させて、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出が抑制されるように後燃焼火格子を駆動することとしたので、焼却炉内状況に悪影響を与えることなく、後燃焼火格子上の焼却灰に循環排ガス中の二酸化炭素を十分な接触時間で接触反応させて無害化処理を十分に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却装置の概要構成図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る廃棄物焼却装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の第一実施形態を説明する。
【0023】
<廃棄物焼却装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却装置の全体構成を示しており、この廃棄物焼却装置は、廃棄物を焼却する焼却炉1と、該焼却炉1から排出された排ガスとの熱交換により熱回収を行い蒸気を発生させる廃熱ボイラ10と、該廃熱ボイラ10で熱回収された排ガスを除塵する除塵装置としてのバグフィルタ11と、該バグフィルタ11で除塵されかつ他の装置(図示せず)で無害化された排ガスを大気中へ放出するための煙突12とを備えている。
【0024】
焼却炉1は、例えば産業廃棄物や家庭ごみ等の廃棄物を燃焼するための燃焼室2と、この燃焼室2の廃棄物の流れ方向の上流側(図1の左側)の上方に配置され、廃棄物を燃焼室2内に投入するための廃棄物投入口3と、燃焼室2の廃棄物の流れ方向の下流側(図1の右側)の上方に連設される二次燃焼室4とを備える火格子式の焼却炉である。燃焼室2に連設された二次燃焼室4では、燃焼室2で発生した燃焼ガス中の可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)が燃焼(二次燃焼)される。
【0025】
燃焼室2の底部には、廃棄物を上記下流側に向け移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)5が設けられている。廃棄物投入口3の下方には、該廃棄物投入口3から投入された廃棄物を燃焼室2の火格子5上へ押出し供給する押出機3aが設けられている。火格子5は、廃棄物投入口3に近い方から、すなわち、上流側から、乾燥域を形成する乾燥火格子5a、燃焼域を形成する燃焼火格子5b、後燃焼域を形成する後燃焼火格子5cの順に設けられていて、主に乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの上に廃棄物W層が形成され、後燃焼火格子5cに焼却灰A層が形成される。
【0026】
乾燥火格子5aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子5bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、熱分解により発生した可燃性ガスと固形分の燃焼が行われ、可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成する。後燃焼火格子5c上では、燃え残った廃棄物中の固形分の未燃分を完全に燃焼させる熾燃焼が行われ、廃棄物中の固形分が燃焼する際には火炎は発生せず熾燃焼する。この結果、後燃焼火格子5cの上には、完全に燃焼した後の焼却灰の層が形成される。該焼却灰は焼却灰排出部6から排出される。
【0027】
本実施形態では、上記乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの下方から燃焼用の一次空気を供給する一次空気供給手段としての一次空気供給ライン8が設けられている。該一次空気供給ライン8は、送風機7を備えており、該送風機7の下流側で乾燥火格子5aの下方と燃焼火格子5bの下方に接続された分岐ライン8a,8bを有していて、それぞれ一次空気を乾燥火格子5aの下方からそして燃焼火格子5bの下方から送入する。
【0028】
燃焼用の一次空気は、乾燥火格子5a、燃焼火格子5b上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、乾燥火格子5a、燃焼火格子5bの冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
【0029】
バグフィルタ11の出口側の排ガスダクト(煙道)から、バグフィルタ11での除塵後の排ガスの一部を循環排ガスとして後燃焼火格子5cの下方へ送入する循環排ガス供給ライン13が循環排ガス供給手段として設けられている。循環排ガス供給ライン13には流量調整を行う循環排ガス供給量調整手段としてダンパ又はバルブ14が設けられている。また、上記循環排ガス供給ライン13には送風機15も設けられている。
【0030】
上記火格子5は、定角度で傾斜姿勢の固定火格子と可動火格子とが廃棄物の流れ方向に上流側(前部側)から下流側(後部側)に向け交互に配置されており、固定火格子は上記流れ方向での位置が固定されているが可動火格子は上記流れ方向で所定距離だけ前後に往復動可能となっている。乾燥火格子5aは乾燥可動火格子5a-mと乾燥固定火格子5a-sを交互に配することで形成され、燃焼火格子5bは燃焼可動火格子5b-mと燃焼固定火格子5b-sを交互に配することで形成され、後燃焼火格子5cは後燃焼可動火格子5c-mと後燃焼固定火格子5c-sを交互に配することで形成されている。
【0031】
可動火格子には可動火格子を前後に往復駆動する火格子駆動機構が接続されている。該火格子駆動機構は、前後の二つに分かれていて、往復動横部材をなす火格子前段駆動機構21と火格子後段駆動機構22とを有している。火格子前段駆動機構21は乾燥可動火格子5a-mと燃焼可動火格子5b-mに接続されていてこれらの乾燥可動火格子5a-mと燃焼可動火格子5b-mを一括して前後に往復駆動する。火格子後段駆動機構22は火格子前段駆動機構21とは独立して別途に作動し、後燃焼可動火格子5c-mを前後に往復駆動する。
【0032】
火格子前段駆動機構21自体そして火格子後段駆動機構22自体は、図示しない、例えば公知のピストン-クランク機構によりそれぞれ往復駆動を受ける。
【0033】
火格子後段駆動機構22は、火格子前段駆動機構21とは独立しており、後燃焼可動火格子5c-mを乾燥可動火格子5a-mおよび燃焼可動火格子5b-mの送り速度より遅い送り速度で駆動している。
【0034】
火格子前段駆動機構21が作動すると、乾燥可動火格子5a-mと燃焼可動火格子5b-mが同時に駆動され、乾燥火格子5aでは、乾燥可動火格子5a-mと乾燥固定火格子5a-sとを交互に経て廃棄物を順次下流側に送り出し、燃焼火格子5bでは、燃焼可動火格子5b-mと燃焼固定火格子5b-sとを交互に経て廃棄物を順次下流側に送り出す。
【0035】
一方、火格子後段駆動機構22が作動すると、後燃焼可動火格子5c-mが駆動され、後燃焼火格子5cで、後燃焼可動火格子5c-mと後燃焼固定火格子5c-sとを交互に経て焼却灰を、上記乾燥火格子5a上そして燃焼火格子5b上の廃棄物の送り速度より遅い送り速度で順次下流側へ送り出す。
【0036】
この火格子後段駆動機構22による後燃焼可動火格子5c-mの遅い送り速度のもとでは、後燃焼火格子5c上の焼却灰を、乾燥火格子5aと燃焼火格子5b上の廃棄物よりも遅い送り速度そして長い時間で滞留させる。本実施形態では、循環排ガス供給ライン13を経て後燃焼火格子5cの下方へ排ガスの一部が循環排ガスとして送入されているので、該循環排ガスが後燃焼火格子5c上の焼却灰を透過して上昇し、排ガス中の二酸化炭素が焼却灰と接触するが、その際、上記後燃焼火格子5c上で焼却灰が長い滞留時間で滞留するので、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制する処理を行うために要する時間だけ後燃焼火格子上で焼却灰を滞留させることとなる。
【0037】
<廃棄物焼却装置の運転要領>
このような本実施形態の廃棄物焼却装置は、次の要領で運転される。
【0038】
図1の実施形態においては、先ず、廃棄物投入口3へ廃棄物Wが投入されると、廃棄物Wは押出機3aにより押出されて乾燥火格子5aに供給され、各可動火格子5a-m,5b-m,5c-mの動作により、乾燥火格子5a上から燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと順次移動し、各火格子5a,5b,5c上に廃棄物の層を形成する。
【0039】
乾燥火格子5a、燃焼火格子5bは燃焼用ガスとして分岐ライン8a,8bを経てそれぞれ一次空気の供給を受け、これにより乾燥火格子5a、燃焼火格子5b上の廃棄物は乾燥されてから燃焼される。後燃焼火格子5cでは、循環排ガス供給ライン13から焼却炉1の排ガスの一部を循環排ガスとして受け、廃棄物は後燃焼し、その焼却灰は焼却灰排出部6から排出される。
【0040】
燃焼室2内で発生した可燃ガスの未燃分は、二次燃焼室4に導かれ、そこで二次空気と混合・攪拌され二次燃焼し、二次燃焼室4からの燃焼後の排ガスは廃熱ボイラ10で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ10から排出された排ガスは、バグフィルタ11に送られ除塵される。バグフィルタ11で除塵されさらに無害化された後の排ガスは、煙突12から大気中に放出される。
【0041】
本実施形態では、後燃焼火格子5c上の焼却灰は、下方から循環排ガス供給ライン13を経て循環排ガスを受けていて、循環排ガスに含まれる二酸化炭素により焼却灰無害化処理が行われる。無害化処理された後の焼却灰は、焼却灰排出部6より排出される。
【0042】
後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理は、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる鉛とが反応して炭酸化物化して難溶性化することにより、焼却灰からの鉛の溶出が抑制されることによりなされる。また、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる酸化カルシウムとが反応して炭酸カルシウムとなることにより、焼却灰は、pHが低下して、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、焼却灰からの鉛の溶出がさらに抑制される。
【0043】
<焼却灰の滞留時間>
本実施形態では、火格子後段駆動機構22が火格子前段駆動機構21に対して独立して後燃焼可動火格子5cを駆動し、後燃焼火格子5c上で焼却灰を乾燥火格子5aそして燃焼火格子5b上の廃棄物よりも長時間滞留させるように、後燃焼火格子5cによる焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を設定する。
【0044】
このとき、焼却灰中の鉛や酸化カルシウムに対して、十分な接触時間で二酸化炭素を接触させ反応させ、焼却灰からの重金属の溶出を抑制する反応を十分に行うことができるように、後燃焼火格子5cによる焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定する。
【0045】
このように、火格子後段駆動機構22は、後燃焼可動火格子5c-mを乾燥可動火格子5a-mおよび燃焼可動火格子5b-mの送り速度より遅い送り速度のもとで、焼却灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ、焼却灰中の鉛と二酸化炭素とを反応させ難溶性の炭酸鉛を生成し、焼却灰中の酸化カルシウムと二酸化炭素とを反応させ炭酸カルシウムを生成して焼却灰のpHを低下させ鉛の難溶性領域にして、焼却灰からの鉛溶出を抑制する処理を行うのに要するに十分な時間で後燃焼火格子5c上で焼却灰を滞留させることとする送り速度で後燃焼可動火格子5c-mを駆動するように設定されている。
【0046】
後燃焼火格子5c上で焼却灰を30分(下限)から120分(上限)までの範囲で滞留させることが好ましい。下限より短いと焼却灰中の成分と二酸化炭素との反応が不十分であり、上限より長くしても焼却灰の無害化処理の進行程度に変化がなく、滞留時間が過大であると焼却炉の操業に支障が生じることがあるため不適だからである。
【0047】
このように、後燃焼火格子5cによる焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を設定することにより、後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理が十分に進行するため、焼却灰を排出後さらに別の無害化処理を行う必要がなく、処理費用を低くすることができる。
【0048】
<廃棄物燃焼量に基づく循環排ガス供給量制御>
廃棄物の焼却処理運転を行う際に設定された廃棄物燃焼量または測定あるいは導出された廃棄物燃焼量に基づき、適切な循環排ガス供給量を設定し、循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14の開度を調整して循環排ガス供給量を制御する。設定、または測定あるいは導出された廃棄物燃焼量に基づき、適切な循環排ガス供給量を設定する際に、廃棄物燃焼量に対応する適切な循環排ガス供給量との対応関係をテーブル、線図等で予め定めておき、この対応関係に基づき適切な循環排ガス供給量を設定するようにしてもよいし、廃棄物燃焼量から適切な循環排ガス供給量を導出する関係式や導出フローチャートを作成しておき、これを用いるようにしてもよい。廃棄物燃焼量を測定し、廃棄物燃焼量の測定値に基づき、循環排ガス供給量を制御する場合には以下のように行うことが好ましい。
【0049】
<廃棄物燃焼量測定値に基づく循環排ガス供給量の制御要領>
本実施形態の廃棄物焼却装置において、廃棄物燃焼量測定手段により測定される廃棄物燃焼量に基づき、後燃焼火格子5cの下方へ供給する循環排ガス供給量を次の要領で調整する。
【0050】
(1)廃棄物燃焼量測定手段により廃棄物燃焼量を測定あるいは導出する。すなわち、廃棄物燃焼量を、クレーンにより廃棄物投入口3に投入する廃棄物投入量の測定、押出機3aによる火格子5上へ供給する廃棄物供給量の測定、火格子5により搬送する廃棄物供給量の測定のうちいずれか又は組み合わせにより求める。
【0051】
(2)廃棄物燃焼量測定手段により測定、導出された廃棄物燃焼量に基づき、適切な循環排ガス供給量を設定し、循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14の開度を調整して循環排ガス供給量を制御する。
【0052】
循環排ガス供給量は、循環排ガス供給ライン13の送風機15による循環排ガスの送風量を調整することにより調整してもよい。
【0053】
循環排ガス供給量制御装置(図示せず)を設けることにより、上述したように、廃棄物燃焼量測定手段から測定あるいは導出された廃棄物燃焼量を受け、適切な循環排ガス供給量を設定し、循環排ガス供給ラインから循環排ガスが適切な循環排ガス供給量で供給されるように循環排ガス供給量調整手段を制御するようにしてもよい。
【0054】
測定あるいは導出された廃棄物燃焼量に基づき、適切な循環排ガス供給量を設定する際に、廃棄物燃焼量に対応する適切な循環排ガス供給量との対応関係をテーブル、線図等で予め定めておき、この対応関係に基づき適切な循環排ガス供給量を設定するようにしてもよいし、廃棄物燃焼量から適切な循環排ガス供給量を導出する関係式や導出フローチャートを作成しておき、これを用いるようにしてもよい。
【0055】
ここで廃棄物燃焼量は、それぞれの廃棄物燃焼量測定手段により測定する測定量であってもよいし、廃棄物焼却炉の操業計画に基づき設定する設定量であってもよいし、又は廃棄物燃焼量を算定するための操業データから算定する算定量であってもよい。
【0056】
<循環排ガス供給量の適正範囲>
循環排ガス供給量を廃棄物燃焼量に対応する適正範囲に調整するが、好ましくは、循環排ガス供給量を、廃棄物燃焼量1tあたり循環排ガス供給量を500~2000Nmとするように循環排ガス供給量を調整する。このような範囲に限定する理由は、下限値としての500Nmより少ないと焼却灰中の鉛量や酸化カルシウム量に対して、十分な量の二酸化炭素を供給して接触させることができず、焼却灰からの重金属の溶出を抑制する反応を十分に行えないし、また上限値としての2000Nmより多いと循環排ガスにより焼却炉内の温度が低下し廃棄物の燃焼が不安定になりCO発生が多くなり不適となるからである。
【0057】
<焼却灰に含まれる無機炭素濃度又は炭酸カルシウム濃度の制御>
後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定する際、焼却灰からの鉛の溶出抑制処理の進行度の指標として、焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度又は炭酸カルシウム濃度を用いることが好ましい。焼却灰に含まれる酸化カルシムが循環排ガスに含まれる二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムが生成される。焼却灰に含まれる無機炭素は主に炭酸カルシウムである。
【0058】
後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を適切に設定することにより、焼却灰に含まれる酸化カルシウムを、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と反応させ炭酸カルシウムを生成させ、焼却灰のpHを鉛の溶出を抑制する領域にまで低下させて、鉛の溶出を十分に抑制することができる。焼却灰からの鉛の溶出抑制処理の進行度の目標指標として、焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上又は炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすることが好ましい。上記の目標濃度となるように、後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を調整する。
【0059】
焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度は、化学分析により測定し、炭酸カルシウム濃度はX線回折法により測定する。焼却灰に含まれる無機炭素濃度が0.5乾燥wt%未満又は炭酸カルシウム濃度が4.0乾燥wt%未満であると、焼却灰のpHが鉛の溶出を抑制する領域にまで低下しておらず、鉛の溶出を十分に抑制することができないため、不適である。
【0060】
<焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度の制御>
後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定する際、焼却灰からの鉛の溶出抑制処理の進行度の指標として、焼却炉から排出される焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を用いることが好ましい。焼却灰に含まれる酸化カルシムが循環排ガスに含まれる二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムが生成される。
【0061】
後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を適切に設定することにより、焼却灰に含まれる酸化カルシウムを、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と反応させ炭酸カルシウムを生成させ、焼却灰のpHを鉛の溶出を抑制する領域にまで低下させて、鉛の溶出を十分に抑制することができる。焼却灰からの鉛の溶出抑制処理の進行度の目標指標として、焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすることが好ましい。上記の目標濃度となるように、後燃焼火格子5cにおける焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子5c上の焼却灰の滞留時間を調整する。
【0062】
焼却炉から排出される焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度は、X線回折法により測定する。焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度が5.0乾燥wt%より過多であると、焼却灰のpHが鉛の溶出を抑制する領域にまで低下しておらず、鉛の溶出を十分に抑制することができないため、不適である。
【0063】
<焼却灰の溶出液のpHの制御>
焼却炉から排出された焼却灰を環境省告示46号土壌の汚染に係る環境基準による試験方法に基づき鉛溶出試験を行ない、溶出液pHを測定し、溶出液pHが12.0以下となるように、後燃焼火格子による焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定する。溶出液pHを12.0以下とすることにより、焼却灰のpHを鉛が難溶出性となる範囲とすることができ、焼却灰からの鉛の溶出を十分に抑制することができる。
【0064】
かくして、焼却灰に含まれる無機炭素濃度、炭酸カルシウム濃度、酸化カルシウム濃度、焼却灰の溶出液のpHのうちいずれかを測定し、この測定値を焼却灰からの鉛溶出抑制処理の進行程度を判定する指標として用いて、次の(i)~(iv)に示される所定範囲内に到達するように後燃焼火格子による焼却灰の送り速度又は後燃焼火格子上の焼却灰の滞留時間を設定する。
【0065】
(i)焼却炉から排出される焼却灰に含まれる無機炭素濃度を0.5乾燥wt%以上とすること
(ii)焼却灰に含まれる炭酸カルシウム濃度を4.0乾燥wt%以上とすること
(iii)焼却灰に含まれる酸化カルシウム濃度を5.0乾燥wt%以下とすること
(iv)焼却灰の溶出液のpHを12.0以下とすること
【0066】
<循環排ガス温度の調整>
循環排ガス温度の調整に際しては、後燃焼火格子5cの下方へ供給する循環排ガスの温度を130(下限値)~250(上限値)℃とするように、除塵機としてのバグフィルタ11の下流側から抜き出し循環排ガス供給ライン13を介して供給する際にヒーター等による保温を行い、循環排ガスの温度を調整することが好ましい。
【0067】
循環排ガス温度をこのような範囲に限定する理由は、下限値より循環排ガスの温度が低いと、循環排ガスに含まれている水蒸気が火格子の下方で結露し循環排ガスの通風や火格子から落下する灰の排出に支障が生じるし、上限値より循環排ガスの温度が高いと、循環排ガスにより火格子を冷却する作用が十分でなく火格子温度が過剰に高温となり火格子の運転に支障が生じたり、火格子の損傷が生じるなど問題が生じるからである。
【0068】
<後燃焼火格子上の焼却灰層の温度の調整>
本実施形態の焼却炉においては、後燃焼火格子5c上の焼却灰層の温度を400~700℃の範囲とするように、後燃焼火格子5cの下方へ供給する循環排ガス供給量を制御することとしてもよい。後燃焼火格子5c上の焼却灰層の温度を400~700℃の範囲に制御することにより、焼却灰に含まれる酸化カルシウムが循環排ガス中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成する反応を促進させて、焼却灰のpHを鉛が難溶性を示す低pHの難溶性領域とする処理を促進させることができる。焼却灰層の温度が400℃未満では、上述の炭酸カルシウムを生成する反応が生じないし、700℃より高いと生成した炭酸カルシウムが分解される逆反応が生じるため、好ましくないからである。焼却灰層の温度を600~700℃の範囲とすることが、炭酸カルシウムを生成する反応が高い効率で進行するためより好ましい。
【0069】
後燃焼火格子5cの温度と後燃焼火格子5c上の焼却灰層の温度との相関関係を予め把握しておき、後燃焼火格子5cの温度を測定し後燃焼火格子5c上の焼却灰層の温度を求め、求めた焼却灰層の温度に基づき、後燃焼火格子5cの下方へ供給する循環排ガス供給量を制御することが好ましい。循環排ガス供給量は、循環排ガス供給ライン13の送風機15による循環排ガスの供給量、ダンパ又はバルブ14の開度の加減により調整される。
【0070】
[第二実施形態]
次に、添付図面の図2にもとづき、本発明の第二実施形態を説明する。
【0071】
図1に見られる第一実施形態では後燃焼火格子5cの下方へバルブ14を経て循環排ガス供給ライン13から循環排ガスが供給されるようになっているのに対し、この第二実施形態では、図2に見られるように、上記循環排ガス供給ライン13からの循環排ガスに加え、分岐ライン8c、バルブ9cを経て一次空気供給ライン8から一次空気の供給をも受けることに特徴がある。この特徴以外は、図2の第二実施形態は図1の第一実施形態と同様な構成をなしており、図2においては図1と共通部位には同一符号を付して、その構成についての説明を省略することとする。
【0072】
すなわち、本発明の第二実施形態では、乾燥火格子5aと燃焼火格子5bと後燃焼火格子5cの下方から燃焼用の一次空気を供給する一次空気供給手段としての一次空気供給ライン8が設けられている。該一次空気供給ライン8は、送風機7を備えており、該送風機7の下流側で乾燥火格子5aの下方、燃焼火格子5bの下方、そして後燃焼火格子5cの下方にそれぞれ接続された分岐ライン8a,8b,8cを有していて、それぞれ一次空気を乾燥火格子5aの下方から、燃焼火格子5bの下方からそして後燃焼火格子5cの下方から送入する。上記該分岐ライン8cには後燃焼火格子5cへの一次空気の供給量を調整する一次空気供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ9cが設けられている。
【0073】
燃焼用の一次空気は、乾燥火格子5a、燃焼火格子5bそして後燃焼火格子5c上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、乾燥火格子5a、燃焼火格子5bそして後燃焼火格子5cの冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
【0074】
図2に見られるように、バグフィルタ11の出口側の排ガスダクト(煙道)から、バグフィルタ11での除塵後の排ガスの一部を循環排ガスとして後燃焼火格子5cの下方へ送入する循環排ガス供給ライン13が循環排ガス供給手段として設けられているので、後燃焼火格子5cの下方には循環排ガスと上述の一次空気が供給され、混合ガスとして後燃焼火格子5cに供給される。循環排ガス供給ライン13には流量調整を行う循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14が設けられている。また、上記循環排ガス供給ライン13には送風機15も設けられている。循環排ガスと一次空気は、後燃焼火格子5cの下方の空間で混合され、混合ガスを形成する。上記一次空気供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ9cと上記循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14とで、循環排ガスと一次空気の混合ガスの二酸化炭素濃度を調整する混合ガス二酸化炭素濃度調整手段を形成する。
【0075】
本実施形態では、このように、後燃焼火格子5cの下方からは、循環排ガスに加え、一次空気も供給され、混合されて混合ガスとして後燃焼火格子5cの下方から後燃焼火格子5c上の焼却灰に供給される。混合ガス二酸化炭素濃度制御手段(図示せず)が、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度調整手段のうちの循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14により循環排ガス供給量を調整するとともに、混合ガス二酸化炭素濃度調整手段のうちの一次空気供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ9cにより一次空気供給量を調整する。
【0076】
混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように循環排ガス供給量と一次空気供給量を調整することにより、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる鉛とが反応して炭酸化物化して難溶性化することにより、焼却灰からの鉛の溶出が抑制される。また、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる酸化カルシウムとが反応して炭酸カルシウムとなることにより、焼却灰は、pHが低下して、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、焼却灰からの鉛の溶出がさらに抑制される。かくして、後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理が十分に進行するため、焼却灰を排出後さらに別の無害化処理を行う必要がなく、処理費用を低くすることができる。
【0077】
後燃焼火格子5cの下方の空間で、又は後燃焼火格子5cの上方で、混合ガスの二酸化炭素濃度を測定する混合ガス二酸化炭素濃度測定手段を備え、測定された混合ガス二酸化炭素濃度測定値にもとづき、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度制御手段が循環排ガス供給量調整手段と一次空気供給量調整手段とを制御するようにしてもよい。
【0078】
また、循環排ガスの二酸化炭素濃度を把握し後燃焼火格子5cの下方への循環排ガス供給量から循環排ガスによる二酸化炭素供給量を導出し、循環排ガスと一次空気とが混合され形成される混合ガスの二酸化炭素濃度を算出し、算出された混合ガス二酸化炭素濃度算出値にもとづき、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度制御手段が循環排ガス供給量調整手段と一次空気供給量調整手段とを制御するようにしてもよい。
【0079】
<廃棄物焼却装置の運転要領>
このような本実施形態の廃棄物焼却装置は、次の要領で運転される。
【0080】
図2においては、先ず、廃棄物投入口3へ廃棄物Wが投入されると、廃棄物Wは押出機3aにより押出されて乾燥火格子5aに供給され、各火格子5a,5b,5cの動作により、乾燥火格子5a上から燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと順次移動し、各火格子5a,5b,5c上に廃棄物の層を形成する。
【0081】
乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cは燃焼用ガスとして分岐ライン8a、8b、8cを経てそれぞれ一次空気の供給を受け、これにより乾燥火格子5a、燃焼火格子5b上の廃棄物は乾燥されてから燃焼される。後燃焼火格子5cでは、循環排ガス供給ライン13から焼却炉1の排ガスの一部を循環排ガスとして受けるとともに、分岐ライン8cから一次空気を受け、循環排ガスと一次空気との混合ガスを形成して後燃焼火格子5c下方から供給され、廃棄物は後燃焼し、その焼却灰は焼却灰排出部6から排出される。
【0082】
燃焼室2内で発生した未燃ガスは、二次燃焼室4に導かれ、そこで二次空気と混合・攪拌され二次燃焼し、二次燃焼室4からの燃焼後の排ガスは廃熱ボイラ10で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ10から排出された排ガスは、バグフィルタ11に送られ除塵される。バグフィルタ11で除塵されて無害化された後の排ガスは、煙突12から大気中に放出される。
【0083】
本実施形態では、後燃焼火格子5c下方に循環排ガス供給ライン13から循環排ガスを、分岐ライン8cから一次空気を受けて混合ガスが形成され、後燃焼火格子5c上の焼却灰は混合ガスの供給を受け、後燃焼し混合ガスに含まれる二酸化炭素により焼却灰無害化処理が行われる。無害化処理された後の焼却灰は、焼却灰排出部6より排出される。
【0084】
後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理は、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる鉛とが反応して炭酸化物化して難溶性化することにより、焼却灰からの鉛の溶出が抑制されることによりなされる。また、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる酸化カルシウムとが反応して炭酸カルシウムとなることにより、焼却灰は、pHが低下して、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、焼却灰からの鉛の溶出がさらに抑制される。かくして、後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理が十分に進行するため、焼却灰を排出後さらに別の無害化処理を行う必要がなく、処理費用を低くすることができる。
【0085】
<循環排ガスと一次空気との混合ガスの二酸化炭素濃度の制御要領>
本実施形態の廃棄物焼却装置において、混合ガスの二酸化炭素濃度を次の要領で調整する。混合ガス二酸化炭素濃度制御手段(図示せず)が、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度調整手段のうちの循環排ガス供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ14の開度を調整して循環排ガス供給量を調整するとともに、混合ガス二酸化炭素濃度調整手段のうちの一次空気供給量調整手段としてのダンパ又はバルブ9cの開度を調整して一次空気供給量を調整する。循環排ガス供給量は、循環排ガス供給ライン13の送風機15による循環排ガスの送風量を調整することにより調整してもよい。
【0086】
後燃焼火格子5cの下方の空間で、又は後燃焼火格子5cの上方で、混合ガスの二酸化炭素濃度を測定する混合ガス二酸化炭素濃度測定手段を備えることとして、測定された混合ガス二酸化炭素濃度測定値にもとづき、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度制御手段が循環排ガス供給量調整手段と一次空気供給量調整手段とを制御するようにしてもよい。
【0087】
また、循環排ガスの二酸化炭素濃度を把握し後燃焼火格子5cの下方への循環排ガス供給量から循環排ガスによる二酸化炭素供給量を導出し、循環排ガスと一次空気とが混合され形成される混合ガスの二酸化炭素濃度を算出し、算出された混合ガス二酸化炭素濃度算出値にもとづき、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように、混合ガス二酸化炭素濃度制御手段が循環排ガス供給量調整手段と一次空気供給量調整手段とを制御するようにしてもよい。
【0088】
混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とするように循環排ガス供給量と一次空気供給量を調整することにより、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる鉛とが反応して炭酸化物化して難溶性化することにより、焼却灰からの鉛の溶出を抑制する処理が高効率でなされる。また、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とすることにより、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる酸化カルシウムとが反応して炭酸カルシウムとなり、焼却灰のpHが低下して、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、焼却灰からの鉛の溶出を抑制する処理も高効率でなされる。かくして、混合ガスの二酸化炭素濃度を所定範囲とすることにより、後燃焼火格子5c上での焼却灰の無害化処理が十分に進行するため、焼却灰を排出後さらに別の無害化処理を行う必要がなく、処理費用を低くすることができる。
【0089】
<一次空気と循環排ガスとの混合ガスの二酸化炭素濃度の適正範囲>
混合ガス二酸化炭素濃度制御手段は、後燃焼火格子の下方へ供給する混合ガスの二酸化炭素濃度を8vol%以上に調整することが好ましい。このような範囲に限定する理由は、混合ガスの二酸化炭素濃度が8vol%より低いと、二酸化炭素による焼却灰からの重金属の溶出を抑制する反応を十分に行えないことがあるからである。
【0090】
<混合ガス温度の調整>
後燃焼火格子の下方へ供給する循環排ガスと一次空気との混合ガスの温度を130~250℃とするように、循環排ガスと一次空気との混合比率を調整することが好ましい。集塵機の下流側から循環排ガス供給ラインに抜き出す排ガス温度や一次空気温度を調整するようにしてもよい。
【0091】
混合ガス温度をこのような範囲に限定する理由は、下限値より混合ガスの温度が低いと、混合ガスに含まれている水蒸気が火格子の下方で結露し混合ガスの通風や火格子から落下する灰の排出に支障が生じるし、上限値より混合ガスの温度が高いと、混合ガスにより火格子を冷却する作用が十分でなく火格子温度が過剰に高温となり火格子の運転に支障が生じたり、火格子の損傷が生じるなど問題が生じるからである。
【0092】
<後燃焼火格子上の焼却灰層の温度の調整>
本実施形態の焼却炉においては、後燃焼火格子上の焼却灰層の温度を400~700℃の範囲とするように、後燃焼火格子の下方へ供給する一次空気供給量と循環排ガス供給量を制御することとしてもよい。後燃焼火格子上の焼却灰層の温度を400~700℃の範囲に制御することにより、焼却灰に含まれる酸化カルシウムが循環排ガス中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成する反応を促進させて、焼却灰のpHを鉛が難溶性を示す低pHの難溶性領域とする処理を促進させることができる。焼却灰層の温度が400℃未満では、前記の反応が生じないし、700℃より高いと生成した炭酸カルシウムが分解される逆反応が生じるため、好ましくないからである。焼却灰層の温度を600~700℃の範囲とすることが、炭酸カルシウムを生成する反応が高効率で進行するためより好ましい。
【0093】
後燃焼火格子の温度と後燃焼火格子上の焼却灰層の温度との相関関係を予め把握しておき、後燃焼火格子の温度を測定し後燃焼火格子上の焼却灰層の温度を求め、求めた焼却灰層の温度に基づき、後燃焼火格子の下方へ供給する一次空気供給量と循環排ガス供給量を制御することが好ましい。循環排ガス供給量は、循環排ガス供給ライン13の送風機15による循環排ガスの供給量、ダンパ又はバルブ14の開度の加減により調整され、一次空気供給量は、分岐ライン8cのダンパ又はバルブ9cの開度の加減により調整される。
【0094】
<スカム発生抑制効果>
図1の第一実施形態の場合でも図2の第二実施形態の場合においても、灰冷却槽におけるスカム発生抑制効果がある。
【0095】
都市ごみや産業廃棄物などの廃棄物を焼却炉で焼却した際に発生する焼却灰は、焼却炉から排出されて灰冷却槽に投入され槽内の冷却水により冷却され、灰冷却槽から搬出され埋立処分されている。
【0096】
焼却炉から排出される焼却灰を受け該焼却灰を冷却水で冷却する灰冷却槽では、焼却灰から溶解又は分離した成分から発生したスカムと呼ばれる粒子状物質が上記冷却水の水面に浮遊堆積する。スカムは厚さが数十cmで堆積することもあり、灰冷却槽からの冷却後の焼却灰の搬出などに支障が生じるため、散水スプレーやエアレーション等の設備により沈降させ消失させたり、人力作業により除去したりしている。
【0097】
スカムを除去するため、スカム消失のための散水スプレーやエアレーション等を行うには、そのための設備の設置やその運転コストが必要になったり、人力作業によるスカム除去のために作業者の負担が大きくなったり、運転コストがかかるという問題がある。
【0098】
また、灰冷却槽から焼却灰を搬出する際に、搬出用のコンベアにスカムが付着し、コンベアが運転不能となることや、灰冷却槽の水位レベルを測定する水位センサがスカムに埋まってしまい、測定不能となることなどや冷却槽からの冷却水排水配管のスケール付着による閉塞など、灰冷却槽の運転に支障が生ずるという問題が生じている。
【0099】
このような状況のもとで、従来、スカムの発生自体を抑制することができなかった。
【0100】
しかし、本発明によると、第一実施形態では、一次空気供給手段から乾燥火格子及び燃焼火格子の下方へ一次空気を供給するとともに、循環排ガス供給手段から後燃焼火格子の下方へ焼却炉からの排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、そして第二実施形態では、一次空気供給手段から乾燥火格子、燃焼火格子に加え、後燃焼火格子の下方へ一次空気を一次空気を供給するとともに、循環排ガス供給手段から後燃焼火格子の下方へ焼却炉からの排ガスの一部を循環排ガスとして供給し、後燃焼火格子上での焼却灰の滞留時間を長くさせることとしている。したがって、後燃焼火格子上の焼却灰への循環排ガスの供給により、スカムの原因となる焼却灰中の酸化カルシウムが循環排ガスに含まれる二酸化炭素との反応により炭酸化され酸化カルシウムが低減され、また、循環排ガスの吹き込みにより焼却灰の温度が低下して灰冷却槽の冷却水の温度を低下させ冷却水への水酸化カルシウムの溶解度を増加させて水酸化カルシウムの未溶解分が低減され、さらには、アルミネート系セメント水和物の生成反応速度が低下されてアルミネート系セメント水和物の生成が抑制されて、灰冷却槽でのスカム発生を抑制できる。そのため、従来用いていた散水スプレーやエアレーション等設備が不要であり、設備の運転にかかる運転コストや作業者によるスカム除去作業コストを削減できる。また、冷却槽内から焼却灰を搬出するコンベアが運転不能となることや水位センサが測定不能となることや冷却槽からの冷却水排水配管のスケール付着による閉塞などの問題が生じなくなる。
【符号の説明】
【0101】
1 焼却炉
5a 乾燥火格子
5b 燃焼火格子
5c 後燃焼火格子
8 一次空気供給手段(一次空気供給ライン)
13 循環排ガス供給手段(循環排ガス供給ライン)
14 循環排ガス供給量調整手段(バルブ)
21 火格子前段駆動機構
22 火格子後段駆動機構
図1
図2