(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20221213BHJP
A63B 37/14 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A63B37/00 132
A63B37/00 210
A63B37/14
(21)【出願番号】P 2018229693
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018036557
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐嶌 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】瀧原 広規
(72)【発明者】
【氏名】田窪 敏之
【審査官】神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142599(JP,A)
【文献】特表2014-520654(JP,A)
【文献】特開2013-138788(JP,A)
【文献】特開平11-290482(JP,A)
【文献】特開平08-238336(JP,A)
【文献】特開平01-268580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-37/14
A63B 45/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体の外側に位置するペイント層とを備えたゴルフボールであって、
上記ゴルフボールが、その表面に上記本体の表面形状が反映された形状を有する複数の微小突起を有しており、
上記本体が、その表面に凸部を有しており、
それぞれの微小突起が、上記凸部と上記ペイント層とによって形成されており、
上記ゴルフボールの表面の
、ISO-25178の規定に準拠して倍率が1000であり測定範囲Xが250μmであり測定範囲Yが250μmでありカットオフ値λcが0.25であり観察領域のXが1024ピクセルであり観察領域のYが768ピクセルであり総画素数が786432ピクセルである条件でレーザー顕微鏡で測定された算術平均高さSaが
、0.5μm以上30μm以下であり、
上記微小突起の高さHの平均値Havが、0.5μm以上50μm以下であるゴルフボール。
【請求項2】
上記微小突起の直径Dの平均値Davが、5μm以上50μm以下である
請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
ある微小突起とこの微小突起に隣接する他の微小突起との間の、ピッチPの平均値Pavが、100μm以下である
請求項1又は2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
その表面の
、ISO-25178の規定に準拠して倍率が1000であり測定範囲Xが250μmであり測定範囲Yが250μmでありカットオフ値λcが0.25であり観察領域のXが1024ピクセルであり観察領域のYが768ピクセルであり総画素数が786432ピクセルである条件でレーザー顕微鏡で測定された最大高さSzが
、5μm以上200μm以下である
請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項5】
その表面に複数のディンプルをさらに備えており、
上記微小突起の高さHの平均値Havと上記ディンプルの深さDpの平均値Dpavとが、下記数式(1)を満たす
請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール。
Hav / Dpav ≧0.005 (1)
【請求項6】
上記ペイント層の厚みが5μm以上30μm以下である
請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記ペイント層が、平均粒径が1μm以上15μm以下である粉末を含有する
請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、その表面にペイント層を有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。この現象は、「乱流化」と称される。乱流化によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流化によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。抗力の低減及び揚力の向上は、「ディンプル効果」と称される。優れたディンプルは、よりよく空気の流れを乱す。優れたディンプルは、大きな飛距離を生む。
【0003】
ゴルフボールの飛距離は、キャリーとランとのトータルである。キャリーは、発射地点から落下地点までの距離である。ランは、落下地点から静止地点までの距離である。ショートアイアンでのショットでは、大きなキャリーと小さなランとが望まれている。なぜならば、ショートアイアンでのショットでは、ゴルフプレーヤーは、ゴルフボールを目的地点に静止させることを重視するからである。一方、ドライバーショットでは、大きなキャリーと大きなランとが望まれている。なぜならば、ドライバーショットでは、ゴルフプレーヤーは、ゴルフボールをなるべくピンに近づけたいからである。ロングホールのセカンドショット等では、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットでも、大きなキャリーと大きなランとが望まれることがある。
【0004】
ディンプルの深さは、ゴルフボールの空力特性に影響を与える。深いディンプルは、ゴルフボールに働く揚力を抑制する。深いディンプルを有するゴルフボールの弾道は、低い。従ってこのゴルフボールでは、大きなランが得られる。しかし、このゴルフボールのキャリーは、十分ではない。このゴルフボールの飛距離(トータル)には、改善の余地がある。
【0005】
特開2015-142599公報には、粗さが大きな表面を有するゴルフボールが開示されている。この粗さは、ブラスト処理等によって形成されうる。この粗さは、ディンプルとの相乗効果により、ゴルフボールの空力特性を高める。
【0006】
特開2011-72776公報には、粒子を含む塗料によって形成されたコーティングを有するゴルフボールが開示されている。この粒子は、ディンプルとの相乗効果により、ゴルフボールの空力特性を高める。
【0007】
特開平2-68077号公報には、その底部に1つの凸部を有するディンプルを備えたゴルフボールが開示されている。この凸部を有するディンプルは、ゴルフボールの空力特性を高める。
【0008】
ゴルフボールは、ペイント層を有している。このペイント層の役割は、外観の向上及び本体の保護にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-142599公報
【文献】特開2011-72776公報
【文献】特開平2-68077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゴルフボールに対するゴルフプレーヤーの最大の関心事は、飛距離である。ゴルフプレーヤーは、飛行性能に優れたゴルフボールを求めている。ゴルフプレーヤーは、ドライバーショット並びにロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける大きな飛距離(トータル)を望んでいる。ミドルアイアンでのショットにおける飛距離については、従来の検討は不十分である。
【0011】
ゴルフクラブで打撃されるとき、ゴルフボールはクラブフェースと衝突する。ゴルフボールが落下するとき、このゴルフボールは地面と衝突する。これらの衝突により、本体からペイントが剥離することがある。この剥離は、ゴルフボールの外観を損ねる。
【0012】
本発明の目的は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れたゴルフボールの提供にある。本発明の他の目的は、ペイント層が剥離しにくいゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るゴルフボールは、本体と、この本体の外側に位置するペイント層とを有する。このゴルフボールは、その表面に、本体の表面形状が反映された形状を有する複数の微小突起を有する。このゴルフボールの表面の算術平均高さSaは、0.5μm以上30μm以下である。微小突起の高さHの平均値Havは、0.5μm以上50μm以下である。
【0014】
好ましくは、全ての微小突起の面積の合計の、ゴルフボールの仮想球の表面積に対する比率Ppは、7%以上である。
【0015】
好ましくは、微小突起の直径Dの平均値Davは、5μm以上50μm以下である。
【0016】
好ましくは、ある微小突起とこの微小突起に隣接する他の微小突起との間の、ピッチPの平均値Pavは、100μm以下である。
【0017】
好ましくは、ゴルフボールの表面の最大高さSzは、5μm以上200μm以下である。
【0018】
ゴルフボールが、その表面に複数のディンプルをさらに備えてもよい。好ましくは、微小突起の高さHの平均値Havとディンプルの深さDpの平均値Dpavとは、下記数式(1)を満たす。
Hav / Dpav ≧0.005 (1)
【0019】
好ましくは、ペイント層の厚みは、5μm以上30μm以下である。好ましくは、ペイント層は、平均粒径が1μm以上15μm以下である粉末を含有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るゴルフボールでは、微小突起が飛行中のゴルフボールの揚力を抑制する。このゴルフボールの弾道は、高すぎない。従ってこのゴルフボールでは、ミドルアイアンでのショットにおいて大きな飛距離が得られる。
【0021】
このゴルフボールは、本体の表面形状が反映された形状を有する複数の微小突起を有する。換言すれば、本体は、微小突起の要因である凸部を有する。従って、本体とペイント層とは、大きな面積をもって接触する。凸部はさらに、ペイント層へのアンカーとして機能する。このペイント層は、本体から剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。
【
図4】
図4は、
図1のゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のゴルフボールの表面の一部が示された拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1のゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールの一部が示された断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例7に係るゴルフボールが示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8と、このカバーの外側に位置するペイント層9とを有している。コア4、中間層6及びカバー8は、ゴルフボール2の本体10に含まれる。このゴルフボール2は、その表面に多数のディンプル12を有している。ゴルフボール2の表面のうちディンプル12以外の部分は、ランド14である。本体10が、ワンピース構造、ツーピース構造、フォーピース構造、ファイブピース構造等を有してもよい。
【0025】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。本実施形態に係るゴルフボール2では、その直径は、42.7mmである。
【0026】
このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0027】
好ましくは、コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0028】
コア4が、樹脂組成物から形成されてもよい。コア4が、ゴム組成物と樹脂組成物との混合物から形成されてもよい。中間層6又はカバー8に関して後述される樹脂組成物が、コア4に用いられうる。
【0029】
コア4のゴム組成物は、共架橋剤を含んでいる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物が、共架橋剤と共に有機過酸化物を含むことが好ましい。好ましい有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ-t-ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0030】
コア4のゴム組成物が、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤及び分散剤のような添加剤を含んでもよい。ゴム組成物が、カルボン酸又はカルボン酸塩を含んでもよい。ゴム組成物が、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末を含んでもよい。
【0031】
コア4の直径は30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。コア4の直径は42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア4が、2以上の層を有してもよい。コア4が、その表面にリブを有してもよい。コア4が中空であってもよい。
【0032】
中間層6は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα-オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β-不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジウムイオンが例示される。
【0033】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、中間層6の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
【0034】
中間層6の樹脂組成物が、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。比重調整の目的で、この樹脂組成物がタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末を含んでもよい。
【0035】
中間層6の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。中間層6の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。中間層6の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。中間層6の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。中間層6が、2以上の層を有してもよい。
【0036】
カバー8は、熱可塑性樹脂組成物若しくは熱硬化性樹脂組成物又は両者の混合物から成形されている。好ましくは、カバー8は、熱可塑性樹脂組成物から成形される。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー及び熱可塑性ポリスチレンエラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。アイオノマー樹脂を含むカバー8を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。このゴルフボール2は、ドライバーショットでの飛距離に優れる。中間層6に関して前述されたアイオノマー樹脂が、カバー8に用いられうる。
【0037】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0038】
カバー8の樹脂組成物が、顔料を含んでもよい。樹脂組成物は、無機顔料及び有機顔料を含みうる。無機顔料として、べんがら(Fe2O3)、鉛丹(Pb3O4)、モリブレンレッド及びカドミウムレッドのような赤色顔料;チタンイエロー(20TiO2-NiO-Sb2O3)、リサージ(PbO)、黄鉛(PbCrO4)、黄色酸化鉄(FeO(OH))及びカドミウムイエローのような黄色顔料;コバルトブルー(CoO・Al2O3)、プルシアンブルー及び群青のような青色顔料が例示される。有機顔料として、アゾ顔料、フタロシアニン顔料及びペリレン系顔料が例示される。アゾ顔料が、好ましい。アゾ顔料として、ピグメントイエロー-1、ピグメントイエロー-12、ピグメントレッド3、ピグメントレッド57及びピグメントオレンジ13が例示される。
【0039】
カバー8の樹脂組成物が、充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を適量含んでもよい。
【0040】
カバー8の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。カバー8の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。カバー8の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。カバー8の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。カバー8が、2以上の層を有してもよい。
【0041】
図2は
図1のゴルフボール2が示された拡大正面図であり、
図3はその平面図である。前述の通り、このゴルフボール2は、その表面に多数のディンプル12を有している。それぞれのディンプル12の輪郭は円である。このゴルフボール2は、直径が4.40mmであるディンプルAと、直径が4.30mmであるディンプルBと、直径が4.20mmであるディンプルCと、直径が3.95mmであるディンプルDと、直径が3.50mmであるディンプルEとを有している。ディンプル12の種類数は、5である。ゴルフボール2が円形ディンプル12に代えて、又は円形ディンプル12と共に、非円形ディンプルを有してもよい。
【0042】
ディンプルAの数は30個であり、ディンプルBの数は140個であり、ディンプルCの数は90個であり、ディンプルDの数は40個であり、ディンプルEの数は40個である。ディンプル12の総数は、340個である。これらのディンプル12とランド14とにより、ディンプルパターンが形成されている。
【0043】
図4には、ディンプル12の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った、ゴルフボール2の断面が示されている。
図4における上下方向は、ディンプル12の深さ方向である。
図4において二点鎖線16で示されているのは、仮想球である。仮想球16の表面は、ディンプル12及び微小突起18(後に詳説)が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。仮想球16の直径は、ゴルフボール2の直径と同一である。ディンプル12は、仮想球16の表面から凹陥している。ランド14は、仮想球16の表面と一致している。
【0044】
図4において矢印Dmで示されているのは、ディンプル12の直径である。この直径Dmは、ディンプル12の両側に共通する接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル12のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル12の輪郭を画定する。
【0045】
それぞれのディンプル12の直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプル12は、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.5mm以上がより好ましく、2.8mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるディンプル12は、実質的に球であるというゴルフボール2の本質を損ねない。この観点から、直径Dmは5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。
【0046】
非円形ディンプルの場合、この非円形ディンプルの面積と同じ面積を有する円形ディンプル12が仮想される。この仮想されたディンプル12の直径が、非円形ディンプルの直径と見なされる。
【0047】
図4において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル12の深さである。この深さDpは、ディンプル12の最深部と接線Tgとの距離である。全てのディンプル12の深さDpが合計され、この合計がディンプル12の総数で除されることにより、平均深さDpavが算出される。平均深さDpavは、80μm以上200μm以下が好ましい。平均深さDpavが80μm以上であるゴルフボール2では、大きなランが達成されうる。この観点から、平均深さDpavは100μm以上がより好ましく、110μm以上が特に好ましい。平均深さDpavが200μm以下であるゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、平均深さDpavは180μm以下がより好ましく、160μm以下が特に好ましい。
【0048】
ディンプル12の面積Sは、無限遠からゴルフボール2の中心を見た場合の、ディンプル12の輪郭に囲まれた領域の面積である。円形ディンプル12の場合、面積Sは下記数式によって算出される。
S = (Dm / 2)2 * π
【0049】
本実施形態に係るゴルフボール2では、ディンプルAの面積は15.20mm2であり、ディンプルBの面積は14.52mm2であり、ディンプルCの面積は13.85mm2であり、ディンプルDの面積は12.25mm2であり、ディンプルEの面積は9.62mm2である。
【0050】
十分なディンプル12の総面積が達成されるとの観点から、ディンプル12の総数Nは250個以上が好ましく、280個以上がより好ましく、300個以上が特に好ましい。個々のディンプル12が乱流化に寄与しうるとの観点から、総数Nは500個以下が好ましく、450個以下がより好ましく、400個以下が特に好ましい。
【0051】
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプル12の輪郭を含む平面とディンプル12の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。大きなランが達成されうるとの観点から、ディンプル12の総容積は240mm3以上が好ましく、260mm3以上がより好ましく、270mm3以上が特に好ましい。大きなキャリーが達成されうるとの観点から、総容積は400mm3以下が好ましく、360mm3以下がより好ましく、330mm3以下が特に好ましい。
【0052】
図5は、
図1のゴルフボール2の表面の一部が示された拡大斜視図である。
図5に示されるように、このゴルフボール2は、その表面に多数の微小突起18を備えている。それぞれの微小突起18は、おおむね円柱形状を有する。
図4から明らかなように、微小突起18は、ディンプル12の表面に形成されており、かつ、ランド14の表面にも形成されている。それぞれの微小突起18は、ゴルフボール2の半径方向外向きに起立している。微小突起18が、ディンプル12の表面のみに形成されてもよい。微小突起18が、ランド14の表面のみに形成されてもよい。
【0053】
この微小突起18は、飛行中のゴルフボール2の揚力及び抗力を抑制する。揚力の抑制により、大きなランが達成されうる。抗力の抑制により、大きなキャリーが達成されうる。このゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛行性能に優れる。
【0054】
図5には、第一列Iに属する複数の微小突起18aと、第二列IIに属する複数の微小突起18bとが示されている。
図5において矢印Aで示される方向は、列の延在方向である。それぞれの列において、微小突起18は、等ピッチで並んでいる。換言すれば、微小突起18は規則的に並んでいる。第一列Iに属する微小突起18aと第二列IIに属する微小突起18bとは、ジグザグに並んでいる。ゴルフボール2の表面の一部において、微小突起18が不規則に並んでもよい。
【0055】
図6は、
図1のゴルフボール2の一部が示された拡大断面図である。
図6には、本体10の一部であるカバー8と、ペイント層9とが示されている。
図6には、微小突起18が示されている。カバー8は、凸部22を有している。微小突起18は、この凸部22とペイント層9とによって形成されている。凸部22は、ペイント層9に覆われている。凸部22がゴルフボール2の半径方向外向き(
図6における上向き)に起立しているので、微小突起18もゴルフボール2の半径方向外向きに起立している。換言すれば、微小突起18は、本体10(カバー8)の表面形状が反映された形状を有する。
図6において符号24で示されているのは、微小突起18の底面である。
【0056】
図7は、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
図7には、微小突起18の底面24が示されている。底面24は、カバー8とペイント層9とを含んでいる。前述の通り、微小突起18は円柱形状を有する。従って、底面24の形状は円である。
【0057】
図7において矢印Dで示されているのは、底面24の直径であり、微小突起18の直径である。全ての微小突起18の直径Dが合計され、この合計が微小突起18の数で除されることにより、平均直径Davが算出される。平均直径Davは、5μm以上50μm以下が好ましい。平均直径Davが上記範囲内であるゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛距離に優れる。平均直径Davが上記範囲内であるゴルフボール2では、ペイント層9が剥離しにくい。これらの観点から、平均直径Davは15μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。飛距離の観点から、平均直径Davは40μm以下がより好ましく、35μm以下が特に好ましい。
【0058】
微小突起18の面積は、底面24の面積として定義される。
図6及び7に示された微小突起18の面積Spは、下記の数式によって算出されうる。
Sp = (D / 2)
2 * π
【0059】
全ての微小突起18の面積Spの合計の、ゴルフボール2の仮想球16の表面積に対する比率Ppは、7%以上が好ましい。比率Ppが7%以上であるゴルフボール2は、ミドルアイアンでのショットにおける飛距離に優れる。比率Ppが7%以上であるゴルフボール2では、ペイント層9が剥離しにくい。これらの観点から、比率Ppは15%以上が好ましく、20%以上が特に好ましい。ゴルフボール2のための金型の製造容易の観点から、この比率Ppは50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0060】
図7には、第一の微小突起18cの底面24cと共に、二点鎖線にて、第二の微小突起18dの底面24dも示されている。第二の微小突起18dは、第一の微小突起18cに隣接している。
図7において二点鎖線26で示されているのは、第一の微小突起18cの底面24cの重心Ocと、第二の微小突起18dの底面24dの重心Odとを通過する直線である。
【0061】
図7において矢印Pで示されているのは、ピッチである。ピッチPは、第一の微小突起18cと、この第一の微小突起18cに隣接する第二の微小突起18dとの距離である。ピッチPは、第一の微小突起18cの底面24cの重心Ocと、第二の微小突起18dの底面24dの重心Odとの距離である。「第一の微小突起18cに隣接する第二の微小突起18d」とは、第一の微小突起18cの周辺に存在する微小突起18のうち、第一の微小突起18cとの距離L(後に詳説)が最も小さい微小突起18dである。
【0062】
それぞれの微小突起18に、1つのピッチPが決定される。全ての微小突起18のピッチPが合計され、この合計が微小突起18の数で除されることにより、平均ピッチPavが算出される。平均ピッチPavは、10μm以上が好ましい。平均ピッチPavが10μm以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、平均ピッチPavは20μm以上がより好ましく、25μm以上が特に好ましい。平均ピッチPavは、100μm以下が好ましい。平均ピッチPavが100μm以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、平均ピッチPavは80μm以下がより好ましく、70μm以下が特に好ましい。
【0063】
図7において矢印Lで示されているのは、第一の微小突起18cとこの第一の微小突起18cに隣接する第二の微小突起18dとの間の距離である。距離Lは、ピッチPから、第一の微小突起18cの底面24cの半径、及び第二の微小突起18dの底面24dの半径が減じられた値である。それぞれの微小突起18に、1つの距離Lが決定される。全ての微小突起18の距離Lが合計され、この合計が微小突起18の数で除されることにより、平均距離Lavが算出される。平均距離Lavは、5μm以上50μm以下が好ましい。平均距離Lavが5μm以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、平均距離Lavは10μm以上がより好ましく、15μm以上が特に好ましい。平均距離Lavが50μm以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、平均距離Lavは40μm以下がより好ましく、35μm以下が特に好ましい。
【0064】
図6において矢印Hで示されているのは、微小突起18の高さである。高さHは、ゴルフボール2の半径方向に沿って測定される。全ての微小突起18の高さHが合計され、この合計が微小突起18の数で除されることにより、平均高さHavが算出される。平均高さHavは、0.5μm以上50μm以下が好ましい。平均高さHavが0.5μm以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、平均高さHavは2μm以上がより好ましく、3μm以上が特に好ましい。平均高さHavが50μm以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、平均高さHavは30μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0065】
微小突起18の総数は、1万個以上1000万個以下が好ましい。総数が1万個以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、総数は2万個以上がより好ましく、5万個以上が特に好ましい。総数が1000万個以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、総数は700万個以下がより好ましく、500万個以下が特に好ましい。
【0066】
このゴルフボール2では、微小突起18の平均高さHavとディンプル12の平均深さDpavとは、下記数式(1)を満たす。
Hav / Dpav ≧0.005 (1)
換言すれば、平均高さHavと平均深さDpavとの比(Hav/Dpav)は、0.005以上である。この比(Hav/Dpav)が0.005以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、比(Hav/Dpav)は0.010以上がより好ましく、0.015以上が特に好ましい。比(Hav/Dpav)は、0.100以下が好ましい。比(Hav/Dpav)が0.100以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、比(Hav/Dpav)は0.080以下がより好ましく、0.060以下が特に好ましい。
【0067】
前述の通り、微小突起18は、本体10の凸部22とペイント層9とを含んでいる(
図6参照)。従って、ゴルフクラブで打撃されたり、地面に衝突することによって、ペイント層9が本体10から剥離しても、微小突起18の形状が概ね維持される。よって、空力特性が概ね維持される。この微小突起18の形成に、特殊なペイントは必要ない。このゴルフボール2は、容易に製造されうる。
【0068】
ペイント層9の厚みは、5μm以上30μm以下が好ましい。厚みが5μm以上であるペイント層9は、ゴルフボール2の外観に寄与する。この観点から、厚みは7μm以上がより好ましく、8μm以上が特に好ましい。厚みが30μm以下であるペイント層9を有するゴルフボール2では、微小突起18の形状に凸部22の形状が反映される。この観点から、厚みは25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0069】
ペイント層9が、無機粒子及び光輝材のような粉末を含んでもよい。粉末は、ゴルフボール2の外観に寄与しうる。粉末はさらに、ゴルフボール2の表面の粗さを高める。従ってこの粉末は、ゴルフボール2の空力特性にも寄与しうる。好ましくは、粉末の平均粒径(メジアン径D50)は、1μm以上15μm以下である。典型的な無機粒子は、タルクである。
【0070】
ゴルフボール2の表面の算術平均高さSaは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。算術平均高さSaが0.5μm以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、算術平均高さSaは1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上が特に好ましい。算術平均高さSaが30μm以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、算術平均高さSaは20μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。
【0071】
ゴルフボール2の表面の最大高さSzは、5μm以上200μm以下が好ましい。最大高さSzが5μm以上であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力及び抗力を抑制する。このゴルフボール2では、大きなキャリー及びランが達成されうる。この観点から、最大高さSzは10μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。最大高さSzが200μm以下であるゴルフボール2では、微小突起18が揚力を抑制しすぎない。このゴルフボール2では、大きなキャリーが達成されうる。この観点から、最大高さSzは150m以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。
【0072】
算術平均高さSa及び最大高さSzは、ISO-25178の規定に準拠して、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス社の非接触式表面粗さ・形状測定器)によって測定される。この顕微鏡では、ゴルフボール2の表面にてレーザーがX方向及びY方向に走査される。この走査により、ゴルフボール2の表面の凹凸データが取得される。これによって得られた三次元画像から、算術平均高さSa及び最大高さSzが算出される。測定条件は、以下の通りである。
倍率:1000
測定範囲X:250μm
測定範囲Y:250μm
カットオフ値:λc=0.25
観察領域:X=1024ピクセル、Y=768ピクセル
総画素数:786432ピクセル
【0073】
ゴルフボール2の表面の光沢度は、0.1以上20以下が好ましい。光沢度がこの範囲内であるゴルフボール2は、外観に優れる。この観点から、光沢度は0.3以上17以下がより好ましく、0.5以上15以下が特に好ましい。光沢度は、「ASTM D523-60°」の規定に準拠して測定される。
【0074】
図8は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールの一部が示された断面図である。
図8には、本体の一部であるカバー28と、ペイント層30とが示されている。
図8には、微小突起32が示されている。カバー28は、凸部34を有している。微小突起32は、この凸部34とペイント層30とによって形成されている。凸部34は、ペイント層30に覆われている。凸部34がゴルフボールの半径方向外向き(
図8における上向き)に起立しているので、微小突起32もゴルフボールの半径方向外向きに起立している。換言すれば、微小突起32は、本体(カバー28)の表面形状が反映された形状を有する。
図8において符号36で示されているのは、微小突起32の底面である。
【0075】
凸部34は、円錐台形状を有する。従って、微小突起32も、円錐台形状を有する。このゴルフボールの、凸部34の形状及び微小突起32の形状以外のスペックは、
図1-7に示されたゴルフボール2のスペックと同じである。
【0076】
このゴルフボールでも、微小突起32は、ミドルアイアンでのショットにおける飛距離に寄与する。このゴルフボールでも、ペイント層30は本体(カバー28)から剥離しにくい。
【0077】
ゴルフボールが、円錐、角柱、角錐台、角錐、部分球等の形状を有してもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、27.4質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、160℃で20分間加熱して、直径が38.20mmであるコアを得た。所定の質量のコアが得られるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0080】
26質量部のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミランAM7337」)、26質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミランAM7329」)、48質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(三菱化学社の商品名「ラバロンT3221C」)、4質量部の二酸化チタン(A220)及び0.2質量部の光安定剤光(城北化学工業社の商品名「JF-90」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚みは、1.00mmであった。
【0081】
47質量部のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」)、46質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1557」)、7質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(前述の「ラバロンT3221C」)、4質量部の二酸化チタン(A220)及び0.2質量部の光安定剤光(前述の「JF-90」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。キャビティ面に多数のピンプル及び微小凹みを有するファイナル金型に、コア及び中間層からなる球を投入した。上記樹脂組成物を射出成形法にて中間層の周りに被覆し、カバーを形成した。このカバーの厚みは、1.25mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。カバーにはさらに、微小凹みの形状が反転した形状を有する微小な凸部が形成された。
【0082】
このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が約42.7mmであり質量が約45.6gである実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、表面に多数の微小突起を有している。これらの微小突起の仕様が、下記の表2に示されている。このゴルフボールはさらに、表面に多数のディンプルを有している。これらのディンプルの仕様が、下記の表1に示されている。
【0083】
[実施例2-6及び8-17並びに比較例1-2]
ファイナル金型を変更し、下記の表2-6に示される仕様のディンプル及び微小突起を形成した他は実施例1と同様にして、実施例2-6及び8-17並びに比較例1-2のゴルフボールを得た。ディンプルの仕様が、下記の表1に示されている。
【0084】
[実施例7]
平均粒径が2μmであるタルクを含むペイント層を設けた他は実施例1と同様にして、実施例7のゴルフボールを得た。このペイント層のタルクの含有量は、樹脂成分100質量部に対して100質量部であった。
【0085】
[比較例3及び4]
ファイナル金型を変更し、下記の表6に示される仕様のディンプルを形成した他は実施例1と同様にして、比較例3のゴルフボールを得た。ファイナル金型を変更し、下記の表6に示される仕様のディンプルを形成し、かつタルクを含むペイント層を設けた他は実施例1と同様にして、比較例4のゴルフボールを得た。ディンプルの仕様が、下記の表1に示されている。比較例3及び4に係るゴルフボールは、微小突起を有していない。
【0086】
[フライトテスト]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、アイアンクラブ#7(住友ゴム工業社の商品名「XXIO 10」、シャフト硬度:R)を装着した。ヘッド速度が33m/secである条件でゴルフボールを打撃して、キャリー及びランを測定した。テスト時は、ほぼ無風であった。20回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表2-6に示されている。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表2-6に示されるように、各実施例のゴルフボールは、ミドルアイアンでの飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
前述の微小突起は、スリーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール、シックスピースゴルフボール、糸巻きゴルフボール等、様々な構造を有するゴルフボールに適用されうる。
【符号の説明】
【0095】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8、28・・・カバー
9、30・・・ペイント層
10・・・本体
12・・・ディンプル
14・・・ランド
16・・・仮想球
18、32・・・微小突起
22、34・・・凸部
24、36・・・底面