(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/032 20160101AFI20221213BHJP
【FI】
H02P29/032
(21)【出願番号】P 2018230161
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】木村 克行
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-286904(JP,A)
【文献】特開2000-107987(JP,A)
【文献】特開2017-220111(JP,A)
【文献】特開2018-148690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動装置と、前記被駆動装置を駆動するモータとを有する駆動機構の動作に生じる異常を前記モータのトルク値が閾値を超えたことにより検知する異常検知部と、
前記駆動機構が休止期間を経て運転を再開した後の所定期間において用いられる前記閾値が通常運転時よりも大きくなるように前記閾値を補正する閾値補正部と、を備え、
前記閾値補正部は、前記所定期間における前記駆動機構の動作回数に基づいて前記閾値を補正する情報処理装置。
【請求項2】
前記異常検知部は、被駆動装置が2つの所定点を移動する前記トルク値の平均を用いて異常検知の判定を行う請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための情報処理プログラムであって、前記異常検知部および前記閾値補正部としてコンピュータを機能させるための情報処理プログラム。
【請求項4】
被駆動装置と、前記被駆動装置を駆動するモータとを有する駆動機構の動作に生じる異常を前記モータのトルク値が閾値を超えたことにより検知する異常検知工程と、
前記駆動機構が休止期間を経て運転を再開した後の所定期間において用いられる前記閾値が通常運転時よりも大きくなるように前記閾値を補正する閾値補正工程と、を含み、
前記閾値補正工程において、前記所定期間における前記駆動機構の動作回数に基づいて前記閾値を補正する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータ機構の異常を検知する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータおよびサーボモータによって駆動される被駆動装置を含むサーボモータ機構は、制御装置によってその動作が制御される。制御装置は、サーボモータ機構の異常を検知すると、アラームを発するなどの措置を行う。このような制御装置には、サーボモータのトルク値を監視することにより、トルク値が正常範囲を超える値を示すと異常を検知するものがある。例えば、特許文献1には、トルク値が閾値を超えると、異常を検知することが開示されている。
【0003】
ところで、サーボモータ機構は、温度による影響を受けることにより、コイルの抵抗の変化、熱変形などを生じる。このため、サーボモータ機構は、サーボモータをトルク制御して、被駆動装置に所定の動作を与える場合においても、温度が異なると、サーボモータのトルクも異なる。よって、サーボモータの異常を検知するためのトルク値は温度の影響を受ける。
【0004】
特許文献1には、トルク値の温度補正を行うことにより、トルク値の温度による影響を軽減するシステムが開示されている。このシステムは、減速機の各温度において、ロボットアームを動作させたときの駆動モータのトルク値の温度特性に基づいてトルク値の温度補正式を作成しておく。そして、当該システムは、異常検出時に、温度センサによって得られた駆動モータあるいは減速機温度測定値を用いて、温度補正式によりトルク値の温度補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-281421号公報(2006年10月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、サーボモータ機構の運転を休止させた後に運転を再開した直後の慣らし運転の状態では、トルク負荷が大きくなる傾向にあり、上記のようなトルク補正を行っても異常を誤検知することがある。また、温度や運転を休止した時間によってトルク負荷が変動する。特に、温度が低い場合、温度が高い場合に比べて、慣らし運転時の動作でのトルク負荷がより大きくなる。このトルク負荷の増大が、異常の誤検知の原因となる。
【0007】
本発明の一態様は、運転再開後のトルク値の異常の誤検知を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
すなわち、本発明の一側面に係る情報処理装置は、被駆動装置と、前記被駆動装置を駆動するモータとを有する駆動機構の動作に生じる異常を前記モータのトルク値が閾値を超えたことにより検知する異常検知部と、前記駆動機構が休止期間を経て運転を再開した後の所定期間において用いられる前記閾値が通常運転時よりも大きくなるように前記閾値を補正する閾値補正部と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、休止期間後の所定期間における異常検知の誤検知を防ぐことができる。特に、休止期間後の再起動直後には、駆動機構に異常が発生しやすい。したがって、再起動直後(休止期間終了直後)に生じ得る異常を早期に発見することができる。
【0011】
前記閾値補正部は、前記モータの温度に基づいて前記閾値を補正してもよい。
【0012】
駆動機構の再起動直後の温度の低い状態では、トルク値が大きくなる。そこで、モータの温度に基づいて閾値を補正することにより、再起動直後に生じ得る異常を早期に発見することができる。
【0013】
前記閾値補正部は、前記休止期間の長さに基づいて前記閾値を補正してもよい。
【0014】
トルク値は休止期間の長さ(休止時間)が長いときに大きくなる。そこで、休止時間に基づいて閾値を補正することにより、再起動直後に生じ得る異常を早期に発見することができる。
【0015】
前記閾値補正部は、前記所定期間における前記駆動機構の動作回数に基づいて前記閾値を補正してもよい。
【0016】
トルク値は、起動直後の1回目の動作時に最も大きく、動作回数を重ねるにしたがって小さくなる。そこで、動作回数に基づいて閾値を補正することにより、再起動直後に生じ得る異常を早期に発見することができる。
【0017】
前記異常検知部は、被駆動装置が2つの所定点を移動する前記トルク値の平均を用いて異常検知の判定を行ってもよい。
【0018】
トルク値の平均を用いるとることにより、広範囲の異常箇所を検知することが可能になる。
【0019】
本発明の一側面に係る情報処理方法は、被駆動装置と、前記被駆動装置を駆動するモータとを有する駆動機構の動作に生じる異常を前記モータのトルク値が閾値を超えたことにより検知する異常検知工程と、前記駆動機構が休止期間を経て運転を再開した後の所定期間において用いられる前記閾値が通常運転時よりも大きくなるように前記閾値を補正する閾値補正工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、運転再開後のトルク値の異常の誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】上記制御システムにおけるサーボモータ機構の異常有無判定を行うための準備の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】慣らし運転期間におけるトルク値のオフセット量を算出するための温度変数と温度との関係を示すグラフである。
【
図4】上記オフセット量を算出するための休止期間変数と休止時間との関係を示すグラフである。
【
図5】上記オフセット量を算出するための動作回数変数と動作回数との関係を示すグラフである。
【
図6】慣らし運転期間における動作回数に対するオフセット量の変化を示すグラフである。
【
図7】慣らし運転における異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す処理において必要なデータを示す工作機械の一例であるボールねじ駆動ステージを示す側面図である。
【
図9】(a)~(c)は上記制御システムによるトルク値のオフセット補正を示す図である。
【
図10】トルク値の温度変化を示す基準曲線に対するオフセットに基づいてトルクの補正値を算出することを説明するための図である。
【
図11】動作回数に対するトルク値の補正値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図
面に基づいて説明する。
【0023】
§1 適用例
図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る制御システム100の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、制御システム100は、PLC(programmable logic controller)1(情報処理装置)と、サーボドライバ2と、サーボモータ機構3(駆動機構)と、温度センサ4とを備えている。サーボモータ機構3は、PLC1の制御対象であり、サーボモータ31と、工作機械32(被駆動部)とを含んでいる。
【0026】
制御システム100は、PLC1によって、サーボモータ31のトルク値に基づいて異常を検知する。トルク値が温度による影響を受けることから、PLC1は、温度に応じたトルク値の基準値をプロットした基準曲線を作成しておく。また、PLC1は、基準曲線を中心にした正常範囲を規定する閾値も併せて設定しておく。また、PLC1は、サーボモータ機構3が運転を休止した時間(休止時間)を経て運転を再開した後の慣らし運転を行う所定期間(慣らし運転期間)の開始直後に、基準曲線を規定するトルク値をオフセットさせるオフセット量Cを算出するための式を作成しておく。
【0027】
PLC1は、異常検知の判断を行う慣らし運転期間に、トルク値を補正した補正値を算出し、当該補正値が閾値を超えると異常を検知し、当該補正値が閾値以下であると異常を検知しない。PLC1は、補正値の算出において、取得した変数を上記の式に適用して算出したオフセット量Cを、サーボモータ31の実際のトルク値および温度に基づいて基準曲線で特定されるトルク値に対する実際のトルク値のオフセット量Xを減算することによって補正値を算出する。
【0028】
§2 構成例
図1を用いて、実施形態1に係る制御システム100の構成例について説明する。
【0029】
サーボモータ31は、工作機械32(被駆動装置)を駆動するモータであり、回転角度および回転角速度を検出するためのロータリエンコーダが回転軸に取り付けられている。工作機械32は、ロボットなどの機械における駆動される部分であり、サーボモータ31が発生する回転駆動力を所定の運動に変換する機構を有している。
【0030】
サーボドライバ2は、PLC1から受けた指令に基づき、サーボモータ31の状態量(回転角度、回転角速度など)に応じた最適な駆動エネルギーとしてトルクを与えることによってサーボモータ31を駆動する。
【0031】
PLC1は、サーボドライバ2に制御指令を与える制御部11と、メモリ12とを含んでいる。制御部11は、サーボドライバ2に与えるモーション制御のための指令位置、指令速度および指令加速度を生成する。また、制御部11は、休止時間記録部111と、動作回数計数部112とを含んでいる。休止時間記録部111は、サーボモータ機構3が休止している休止時間を計測してメモリ12に記憶させる。動作回数計数部112は、サーボモータ機構3が行う所定の動作の繰り返しの回数(動作回数)を計数して、メモリ12に記憶させる。
【0032】
PLC1は、サーボモータ機構3の異常検知を行うために、データ取得部13と、データ補正部14(閾値補正部)と、異常検知部15とを有している。
【0033】
データ取得部13は、PLC1の通信機能を利用して、サーボドライバ2からサーボモータ31のトルク値を取得するとともに、温度センサ4からサーボモータ31の温度を取得する。なお、トルク値は、サーボドライバ2がサーボモータ31に出力する電流値から求められる。温度センサ4は、サーボモータ31の近傍に配置されており、サーボモータ31の温度を検出する。また、データ取得部13は、メモリ12に記憶されている上記の休止時間および動作回数を取得する。
【0034】
データ補正部14は、慣らし運転期間における異常検知の判定に先立って、上述の基準曲線の作成および閾値の設定を行うとともに、オフセット量Cを算出する式の作成を行う。また、データ補正部14は、慣らし運転期間において補正値の算出を行う。また、データ補正部14は、慣らし運転期間において用いられる閾値が通常運転時よりも大きくなるように閾値を補正する。
【0035】
異常検知部15は、上記の補正値を判断基準として、サーボモータ機構3の有無を判定する。
【0036】
以上のように構成される制御システム100による慣らし運転期間における異常判定の動作について説明する。
【0037】
まず、異常判定の処理に先立って、オフセット量Cを算出する算出式を作成する処理を行う。
【0038】
図2は、制御システム100におけるサーボモータ機構の異常有無判定を行うための準備の処理手順を示すフローチャートである。
図3は、トルク値のオフセット量Cを算出するための温度変数と温度との関係を示すグラフである。
図4は、オフセット量Cを算出するための休止期間変数と休止時間との関係を示すグラフである。
図5は、オフセット量Cを算出するための動作回数変数と動作回数との関係を示すグラフである。
図6は、慣らし運転期間における動作回数に対するオフセット量の変化を示すグラフである。
【0039】
図2に示すように、PLC1において、データ取得部13は、通常動作時に、サーボドライバ2からトルク値を取得するとともに、温度センサ4からサーボモータ31の温度を取得する(ステップS1)。
【0040】
データ補正部14は、取得されたトルク値および温度に基づいて基準曲線を作成する(ステップS2)。データ補正部14は、基準曲線の作成において、温度に対応するトルク値をプロットしていく(例えば、
図8の(a)に示す基準曲線R)。
【0041】
次いで、データ補正部14は、基準曲線に対して閾値を設定する(ステップS3)。データ補正部14は、閾値の設定において、基準曲線における各値を基準とするトルク値の正常値の範囲を規定する上限の閾値および下限の閾値を設定していく(例えば、
図8の(a)に示す閾値TH(上限)および閾値TL(下限))。
【0042】
さらに、データ補正部14は、慣らし運転開始直後のオフセット量Cを算出するための算出式を作成する(ステップS4)。データ補正部14は、当該式を3つの変数である温度変数fTemp、休止時間変数fTimeおよび動作回数変数αの関数として次式のように表される。
【0043】
C=f(fTemp,fTime,α)
=α*fTemp*fTime
ここで、オフセット量Cは、上記の3つの変数を全て用いて算出される必要はなく、必要に応じて少なくとも1つの変数が用いられていればよい。オフセット量Cの算出に用いない変数については、定式で当該変数の値が“1”とされる。
【0044】
トルク値が、低温状態では大きく、高温状態では小さいことから、温度変数f
Tempは、
図3に示すように、低温では大きく、高温では小さくなる曲線で表される。また、トルク値が、休止時間が短いほど小さく、休止時間が長くなるに連れて一定値に近づくことから、休止時間変数f
Timeは、
図4に示すように、低温では小さく、高温では大きく(ほぼ一定値)なる曲線で表される。トルク値が、動作回数が多くなるほど、小さくなることから、
図5に示すように、動作回数変数αは、動作回数が1回であるときに最も大きく、動作回数が2,3回であるときに急激に減少し、動作回数が10回であるときにほぼ0に達する曲線で表される。
【0045】
上記の算出式に3つの変数を全て用いて算出されたオフセット量Cは、
図6に示すように、動作回数に対する曲線として表すと、温度および休止時間温の依存性が如実に現れることがわかる。温度が低くかつ休止時間が長い場合、オフセット量Cは、
図6において実線にて示すように、動作回数が1回で大きい値をとり、動作回数が少ない範囲で急峻に減少するような傾斜が急な曲線で表される。一方、温度が低くかつ休止時間が長い場合、オフセット量Cは、
図6において破線にて示すように、動作回数が1回で小さい値をとり、動作回数が2回まで変化が大きいが、それ以降は変化量が少ない緩やかな曲線で表される。
【0046】
続いて、サーボモータ機構3の休止期間が終了した再起動以降の処理について説明する。
【0047】
図7は、慣らし運転における異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
図8は、
図7に示す処理において必要なデータを示す工作機械の一例であるボールねじ駆動ステージを示す側面図である。
図9の(a)~(c)は、上記制御システムによるトルク値のオフセット補正を示す図である。
図10は、トルク値の温度変化を示す基準曲線に対するオフセットに基づいてトルクの補正値を算出することを説明するための図である。
【0048】
なお、休止期間には、休止時間計測部111が休止時間を計測して、メモリ12に記憶させている。また、休止時間が終了してサーボモータ機構3の動作が再開した後に続く慣らし運転期間には、動作回数計数部112が、サーボモータ機構3の動作回数を計数する。
【0049】
図7に示すように、サーボモータ機構3が起動すると、PLC1において、データ取得部13は、メモリ12から休止時間を取得する(ステップS11)。また、データ取得部13は、動作回数計数部112から動作回数を取得するのに同期して、サーボドライバ2からトルク値を取得するとともに、温度センサ4からサーボモータ31の温度を取得する(ステップS12)。
【0050】
ここで、サーボモータ機構3の工作機械32が、
図8に示す、ボールねじ51と、ボールねじ51によって駆動されるステージ52とを備えるボールねじ駆動ステージであるとする。データ取得部13は、このようなボールねじ駆動ステージの動作において、ステージ52が、例えば、ポイントP1(所定点)から、ポイントP3に至るまでのあるポイントP2(所定点)に移動しているときのトルク値と温度とを取得する。
【0051】
次いで、データ補正部14は、取得されたトルク値の、上述のようにして予め作成された基準曲線における、取得された温度に対応するトルク値の基準値に対するオフセット量Xを算出する(ステップS13)。また、データ補正部14は、取得されたトルク値および温度を用いて上述の算出式に基づいてオフセット量Cを算出する(ステップS14)。
【0052】
図9の(a)に示すように、慣らし運転期間Tにおいて、温度が高い状態では、オフセット量Cが小さく算出され、
図9の(b)および(b)に示すように、温度が低くなる程、オフセット量Cが大きくなる。また、
図9の(a)~(c)に示すように、オフセット量Cに応じて基準曲線Rが基準曲線R1~R3にそれぞれ変化し、基準曲線Rの変化に応じて、閾値Rも閾値TH1~TH3および閾値TL1~TL3にそれぞれ変化する。
【0053】
その後、データ補正部14は、
図10に示すように、取得された温度のオフセット量Xから同じ温度のオフセット量Cを減じることによってトルク値の補正値Dを算出する(ステップS15)。また、データ補正部14は、閾値をオフセット量Cの値を加算した値に大きくしておく(閾値補正工程)。
【0054】
そして、異常検知部15は、算出された補正値が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS16,異常検知工程)。異常検知部15は、ステップS16において、補正値が閾値を超えたと判定すると(YES)、異常が発生したことを通知して(ステップS17)、処理をステップS12に戻す。また、異常検知部15は、ステップS16において、補正値が閾値を超えていないと判定すると(NO)、処理をステップS12に戻す。
【0055】
このような処理を動作回数ごとに繰り返すことにより、
図11に示すように、算出された補正値が、通常運転時よりも大きくなるように補正された上限の閾値THnと下限の閾値TLnとの間の正常範囲にあるか否かが判定される。これにより、慣らし運転期間において、温度、休止時間および動作回数の少なくともいずれか1つの値に応じてトルク値が大きくなっても、トルク値が予め算出されたオフセット量Cに基づいて補正されるので、適正にトルク値の異常検知を判定することができる。したがって、誤検知を抑制することが可能になる。
【0056】
なお、ステップS12においては、ステージ52がポイントP1からポイントP2に移動までのトルク値の平均を用いることが好ましい。オフセット量Cをトルクの最大値を用いる算出した場合、当該オフセット量Cによって算出された補正値を基に異常検知を判定すると、異常箇所が局所的な場合に見逃すおそれがある。これに対し、トルク値の平均を用いるとることにより、広範囲の異常箇所を検知することが可能になる。
【0057】
また、本発明に係る情報処理装置は、PLC1に限らず、サーバであってもよい。このように構成する場合、データ取得部13は、別途設けられるPLCから休止時間および動作回数を取得するようにしてもよい。
【0058】
〔ソフトウェアによる実現例〕
PLC1の制御ブロック(特に制御部11、データ取得部13、データ補正部14および異常検知部15)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0059】
後者の場合、PLC1は、各部の機能を実現するソフトウェアである制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがCPUで読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、CPUが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0060】
上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。
【0061】
なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 PLC
3 サーボモータ機構(駆動機構)
4 温度センサ
14 データ補正部(閾値補正部)
15 異常検知部
31 サーボモータ(モータ)
32 工作機械(被駆動装置)