(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】避難支援システム、避難支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/14 20060101AFI20221213BHJP
G08B 5/40 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G08B21/14
G08B5/40 Z
(21)【出願番号】P 2018230727
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】福田 智之
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0132601(US,A1)
【文献】特開2013-209906(JP,A)
【文献】実開昭63-005444(JP,U)
【文献】特開2008-240844(JP,A)
【文献】特開2013-109755(JP,A)
【文献】特開2014-170553(JP,A)
【文献】中国実用新案第206893066(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B1/00-9/20
19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害ガス検知手段から送信された有害ガスの濃度を示す検知信号に基づいて作業エリア内の作業者の避難を支援する避難支援システムであって、
前記有害ガス検知手段と前記作業エリアとの間に設置され、煙放出命令の受信に応じて煙を放出する煙放出手段と、
前記検知信号を受信し、当該検知信号が示す前記有害ガスの濃度が規定濃度以上の時に前記煙放出命令を送信する制御手段と、
を備えることを特徴とする避難支援システム。
【請求項2】
前記有害ガス検知手段は、前記検知信号を周期的に送信し、
前記制御手段は、前記有害ガスの濃度が規定時間に亘って前記規定濃度以上の時に前記煙放出命令を送信することを特徴とする請求項1に記載の避難支援システム。
【請求項3】
有害ガス検知手段から送信された有害ガスの濃度を示す検知信号に基づいて作業エリア内の作業者の避難を支援する避難支援システムによる避難支援方法であって、
前記検知信号を受信するステップと、
当該検知信号が示す前記有害ガスの濃度が規定濃度以上の時に、前記有害ガス検知手段と前記作業エリアとの間に設置された煙放出手段に対して、煙を放出させるための煙放出命令を送信するステップと、
を実行することを特徴とする避難支援方法。
【請求項4】
請求項3に記載の避難支援方法における各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難支援システム、避難支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体に悪影響を及ぼす有害ガスの取扱設備では、取扱設備の周囲に設置されたガス検知器によって有害ガスの漏出を監視している。取扱設備から漏出した有害ガスが届き得る作業エリアで作業者が作業(例えば土木作業)を行っている場合において、ガス検知器が有害ガスの漏出を検知すると作業エリア内の作業者に対して避難指示がなされる。
【0003】
漏出した有害ガスが一酸化炭素や可燃性ガス等の無色無臭の有害ガスであった場合、目視や臭いでは有害ガスの拡散方向を判断できない。この場合、取扱設備の敷地に設置された風向計や吹き流しが示す風向きに基づいて有害ガスの拡散方向を推定し、作業者に対して避難方向が指示される。
風向計や吹き流しは、建物等の障害物によって風向きが変更され難い高所に設置されている。これに対して、作業エリアは風向計等の設置高さよりも低所であり、障害物によって風向きが変更され易い。従って、風向計等が示す高所の風向きと作業エリア付近の低所の風向きとが異なってしまうことがある。高所の風向きと低所の風向きとが異なると、適切な方向への避難指示が困難になってしまう。
【0004】
検知器付近の風向きを考慮した従来技術として、特許文献1に記載された防災システムがある。この防災システムは、風向き検知手段を組み込んだ煙感知器を備えており、風向き検知手段が検知した風向きに応じて避難誘導を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防災システムでは、作業エリア付近の風向きは検知できない。作業エリア付近の風向きは、煙感知器付近における風向きと一致しているとは限らないため、これらの風向きが異なっていた時には、作業エリア内の作業者を適切な方向へ避難させることが困難になる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業エリア内の作業者を適切な方向へ避難させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、有害ガス検知手段から送信された有害ガスの濃度を示す検知信号に基づいて作業エリア内の作業者の避難を支援する避難支援システムであって、前記有害ガス検知手段と前記作業エリアとの間に設置され、煙放出命令の受信に応じて煙を放出する煙放出手段と、前記検知信号を受信し、当該検知信号が示す前記有害ガスの濃度が規定濃度以上の時に前記煙放出命令を送信する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業エリア内の作業者を適切な方向へ避難させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】避難支援システムの概要を説明する図である。
【
図2】(a)はガス検知器の正面図、(b)はガス検知器の構成を説明するブロック図、(c)は制御部の機能を説明するブロック図、(d)はガス検知器の支柱への取り付け態様を説明する図である。
【
図4】(a)は煙放出装置の構成を説明するブロック図、(b)は煙発生部の構成を説明するブロック図、(c)は制御部の機能を説明するブロック図である。
【
図5】(a)は制御装置の構成を説明するブロック図、(b)は制御端末の機能を説明するブロック図である。
【
図6】(a)は有害ガスを検知していない時のガス検知器と制御装置との間の通信を模式的に説明する図、(b)は一つのガス検知器が有害ガスを検知した時のガス検知器と制御装置との間の通信を模式的に説明する図である。
【
図7】制御装置から各煙放出装置への煙放出命令の送信を模式的に説明する図である。
【
図8】煙を放出した煙放出装置を説明する図である。
【
図9】ガス検知器の制御部、制御装置の制御端末、及び煙放出装置の制御部が実行する制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0011】
<避難支援システム1の概要>
最初に避難支援システム1の概要について説明する。
図1は、避難支援システム1の概要を説明する図である。
図1に示す避難支援システム1は、有害ガスHGを取り扱う取扱設備10から漏出した有害ガスHGが届き得る作業エリアWA内で作業中の作業者HMを対象にしている。
取扱設備10が取り扱う有害ガスHGは、一酸化炭素や可燃性ガス等の無色無臭のガスであるが、無色有臭の有害ガスや有色無臭の有害ガスであってもよい。取扱設備10の周囲には、取扱設備10から漏出した有害ガスHGを検知する複数のガス検知器20(有害ガス検知手段)が設置されている。
避難支援システム1は、ガス検知器20から送信された有害ガスHGの濃度を示すセンサ電圧値SG1(検知信号)に基づいて作業エリアWA内の作業者HMの避難を支援するためのものであり、ガス検知器20と作業エリアWAとの間に設置され、煙放出命令SG2の受信に応じて煙SMを放出する煙放出装置30(煙放出手段)と、ガス検知器20が送信したセンサ電圧値SG1を受信し、受信したセンサ電圧値SG1が示す有害ガスHGの濃度が規定濃度以上の時に煙放出命令SG2を煙放出装置30へ送信する制御装置40(制御手段)と、を備えている。
【0012】
この避難支援システム1では、ガス検知器20が規定濃度以上の有害ガスHGを検知した時に煙放出装置30が煙SMを放出するため、煙放出装置30付近における風向きが煙SMによって可視化される。作業エリアWA内で作業中の作業者HMは、煙放出装置30が放出した煙SMの流れる方向に基づいて有害ガスHGが流れてくる方向を推定できるため、有害ガスHGが流れてこない適切な方向へ避難することができる。
【0013】
以下、本実施形態の避難支援システム1について詳細に説明する。
<ガス検知器20について>
最初にガス検知器20について説明する。
図2(a)はガス検知器20の正面図、
図2(b)はガス検知器20の構成を説明するブロック図である。
図2(a)(b)に示すように、ガス検知器20は、外気を吸引するファン21a、有害ガスHGを検知するセンサ21b、及び筒状のケース21cを備えた吸引部21と、測定値等を表示する表示部24、ガス検知器20の制御を行う制御部25、制御部25を収納するハウジング26を備えた本体部22と、ハウジング26の上面に取り付けられ、制御装置40との間で無線通信を行うためのアンテナ23と、を備えている。
【0014】
吸引部21は、ハウジング26の下面に対して下向きに取り付けられている。吸引部21が備えるケース21cの内側空間にはファン21a及びセンサ21bが収納されている。ケース21cの下端は開放されており、ファン21aを回転させることによって外気がケース21c内に吸引され、外気に含まれる有害物質がセンサ21bによって検知される。
センサ21bは、検知対象の有害ガスHGの種類に適した方式(例えば定電位電解式や半導体式)のものが用いられる。
【0015】
表示部24は、例えば液晶表示器やLED(Light emitting diode)表示器であり、ハウジング26の正面に取り付けられている。この表示部24は、制御部25によって制御されて有害ガスHGの濃度等の各種情報を表示する。
制御部25は、ガス検知器20における全体の動作を制御する部分であり、コンピュータプログラム(以下プログラムと称する)に従って情報を処理するCPU(Central Processing Unit)251と、プログラムが格納されると共に、CPU251が情報を処理する際の作業領域として用いられるメモリ252と、ファン21a、センサ21b、表示部24、及びアンテナ23との間で情報や信号の送受信をするI/F(Interface)253と、を備えている。
【0016】
図2(c)は制御部25の機能を説明するブロック図である。この機能は、メモリ252に記憶されたプログラムをCPU251が読み出し、メモリ252の作業領域に展開して実行することにより実現される。
通信制御部25aは、ガス検知器20が制御装置40との間で情報を送受信するための処理を行う。吸引制御部25bは、ファン21aによって外気を吸引するための処理を行う。センサ出力処理部25cは、センサ21bが出力したアナログの電圧信号をデジタルの電圧値(センサ電圧値SG1)に変換する処理を行う。表示制御部25dは、センサ電圧値SG1に応じた有害ガスHGの濃度を表示部24に表示させる制御を行う。
ガス検知器20の動作時において、吸引制御部25bはファン21aの動作を制御して外気をケース21c内に吸引し、センサ21bは外気に含まれる有害物質を検知して有害物質の濃度に応じた電圧のアナログ電圧信号を出力する。センサ出力処理部25cは、一定周期(例えば数ミリ秒乃至数秒)毎に、センサ21bが出力したアナログ電圧信号の電圧値をデジタルのセンサ電圧値SG1に変換する。表示制御部25dは、センサ電圧値SG1に応じた有害ガスHGの濃度を表示部24に表示させる。通信制御部25aは、制御装置40と定期的に通信しており、センサ出力処理部25cが変換したセンサ電圧値SG1をアンテナ23から制御装置40へ送信する。
【0017】
図2(d)はガス検知器20の支柱27への取り付け態様を説明する図である。ガス検知器20は、例えば支柱27に取り付けられており、有害ガスHGの検知に適した高さに配置されている。なお、ガス検知器20は、支柱27以外の場所、例えば取扱設備10の壁面に取り付けてもよい。
【0018】
<煙放出装置30について>
次に煙放出装置30について説明する。
図3は煙放出装置30の斜視図である。
図4(a)は煙放出装置30の構成を説明するブロック図である。
図3に示すように、煙放出装置30は、円筒形状の本体部31と、本体部31の上端に設けられ、本体部31よりも大径であって上面が塞がれた円筒形状の頭部32と、頭部32の上面に設けられたアンテナ33と、本体部31の外周面に取り付けられたスピーカ34と、本体部31の外周面下端に折りたたみ自在に取り付けられた脚部31aと、圧縮空気が充填されたボンベ35と、を備えている。
【0019】
図3及び
図4(a)に示すように、本体部31には、煙SMを発生する煙発生部36と、高圧気体(例えば圧縮空気)の圧力を所定圧力に低下させる減圧弁37と、煙SMの放出時に開放されるノーマリークローズ(NC)タイプの電磁バルブ38(上流側電磁バルブ38a、下流側電磁バルブ38b)と、警報音を出力するスピーカ34と、煙放出装置30における全体の動作を制御する制御部39と、が収容されている。また、頭部32の内部空間には、煙SMを放出するためのノズル321が配置されている。
ボンベ35と減圧弁37との間、減圧弁37と煙発生部36との間、及び煙発生部36とノズル321との間は配管P(上流側配管P1、中間配管P2、下流側配管P3)によって接続されている。また、減圧弁37と煙発生部36とを接続する中間配管P2の途中には上流側電磁バルブ38aが取り付けられており、煙発生部36とノズル321とを接続する下流側配管P3の途中には下流側電磁バルブ38bが取り付けられている。これらの上流側電磁バルブ38a、及び下流側電磁バルブ38bは圧縮空気や煙SMの流れを制御するために用いられ、制御部39によって動作が制御される。
【0020】
図4(b)は煙発生部36の構成を説明するブロック図である。煙発生部36は、煙SMを溜めておくための空所を内部に備えたチャンバー361と、チャンバー361内の空所に取り付けられたヒーター362と、煙SMの元となる油363を貯留した容器364と、基端が容器364内に配置され、先端がヒーター362の直上に配置された供給チューブ365と、供給チューブ365の途中に取り付けられ、容器364内の油363をヒーター362へ供給するポンプ366と、を備えている。ヒーター362、及びポンプ366は、制御部39によって動作が制御される。また、チャンバー361には、中間配管P2と下流側配管P3とが接続されている。
煙発生部36では、加熱したヒーター362に油363を滴下することにより、油363が蒸発して煙SMが発生する。発生した煙SMは、チャンバー361内を満たし、中間配管P2から圧縮空気が流入すると圧縮空気と共に下流側配管P3側へ流れ込み、ノズル321から頭部32の内部空間に放出される。
図3に示すように、頭部32の外周面には複数の煙放出口322が所定角度間隔で設けられている。従って、ノズル321から放出された煙SMは、煙放出口322から装置外へ放出される。
【0021】
図4(a)に示すように、制御部39は、煙放出装置30における全体の動作を制御する部分であり、プログラムに従って情報を処理するCPU391と、プログラムが格納されると共に、CPU391が情報を処理する際の作業領域として用いられるメモリ392と、煙発生部36、電磁バルブ38、スピーカ34、及びアンテナ33との間で情報や信号の送受信をするI/F393と、を備えている。
図4(c)は制御部39の機能を説明するブロック図である。この機能は、メモリ392に記憶されたプログラムをCPU391が読み出し、メモリ392の作業領域に展開して実行することにより実現される。
通信制御部39aは、煙放出装置30が制御装置40との間で情報を送受信するための処理を行う。ヒーター制御部39bは、ヒーター362に対する通電を制御する。ポンプ制御部39cは、ポンプ366による油363のヒーター362への滴下を制御する。バルブ制御部39dは、電磁バルブ38(上流側電磁バルブ38a、下流側電磁バルブ38b)の開閉動作を制御する。警報制御部39eは、警報音を出力させるための警報音信号のスピーカ34への出力を制御する。
【0022】
煙放出装置30の動作時において、通信制御部39aは、制御装置40と定期的に通信しており、アンテナ33を通じて制御装置40からの煙放出命令SG2を受信する。ヒーター制御部39bは、煙放出命令SG2の受信に応じてヒーター362に通電して加熱させ、煙SMの発生後にヒーター362への通電を停止する。ポンプ制御部39cは、ヒーター362が加熱状態になった時にポンプ366を動作させて適量の油363をヒーター362上に滴下させ、煙SMを発生させる。ヒーター362の加熱状態は、例えばヒーター362への通電開始からの経過時間に基づいて判断してもよく、温度センサ(不図示)によって検知してもよい。バルブ制御部39dは、煙SMの発生後に上流側電磁バルブ38a、及び下流側電磁バルブ38bを開放することにより煙SMを装置外へ放出させ、煙SMの放出が終了した時に上流側電磁バルブ38a、及び下流側電磁バルブ38bを閉じる。警報制御部39eは、煙放出命令SG2の受信に応じて警報音を出力させるための警報音信号をスピーカ34に出力する。
【0023】
<制御装置40について>
次に制御装置40について説明する。
図5(a)は制御装置40の構成を説明するブロック図、
図5(b)は制御端末41の機能を説明するブロック図である。
図5(a)に示すように、制御装置40は、制御装置40における全体の動作を制御する制御端末41と、制御端末41に接続され、各種情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示部42と、制御端末41に接続され、情報の入力を行うキーボード等の入力部43と、制御端末41とアクセスポイント45の間の通信を中継する中継部44と、センサ電圧値SG1や煙放出命令SG2を送受信するアンテナ45aを有し、ガス検知器20、及び煙放出装置30と無線通信を行うアクセスポイント45と、を備えている。この制御装置40は、例えば司令室に設置される。
【0024】
制御端末41は、制御装置40における全体の動作を制御する部分であり、プログラムに従って情報を処理するCPU411と、プログラムや閾値等が格納されると共に、CPU411が情報を処理する際の作業領域として用いられるメモリ412と、表示部42、入力部43、及び中継部44との間で情報や信号の送受信をするI/F413と、を備えている。
図5(b)に示す制御端末41の機能は、メモリ412に記憶されたプログラムをCPU411が読み出し、メモリ412の作業領域に展開して実行することにより実現される。
通信制御部41aは、ガス検知器20からのセンサ電圧値SG1を受信したり、煙放出装置30へ煙放出命令SG2を送信するための処理を行う。判定部41bは、ガス検知器20から受信したセンサ電圧値SG1と閾値とを比較し、センサ電圧値SG1が示す有害ガス濃度が規定時間(例えば数秒乃至十数秒)に亘って規定濃度以上(閾値以上)か否かを判定する。開始制御部41cは、有害ガス濃度が規定時間に亘って規定濃度以上であった時に、煙放出命令SG2を煙放出装置30へ送信するための処理を行う。
【0025】
<避難支援システム1の動作について>
次に、避難支援システム1の動作について説明する。最初に、ガス検知器20と制御装置40との間の通信について説明する。
図6(a)は有害ガスHGを検知していない時のガス検知器20と制御装置40との間の通信を模式的に説明する図、
図6(b)は一つのガス検知器20が有害ガスHGを検知した時のガス検知器20と制御装置40との間の通信を模式的に説明する図である。
図6(a)に示すように、取扱設備10から有害ガスHGが漏出していない時には、各ガス検知器20(通信制御部41a、センサ出力処理部25c)はセンサ電圧値SG1を一定周期毎(例えば数ミリ秒乃至数秒)に制御装置40へ送信し、制御装置40(通信制御部41a、判定部41b)は受信したセンサ電圧値SG1に基づいて取扱設備10の周囲における有害ガス濃度を取得する。
図6(b)に示すように、取扱設備10から有害ガスHGが漏出し、一つのガス検知器20によって規定濃度以上の有害ガスHGが検知されると、有害ガスHGを検知したガス検知器20のセンサ電圧値SG1が有害ガスHGの濃度に応じた値に上昇する。制御装置40(通信制御部41a、判定部41b)は受信したセンサ電圧値SG1と閾値とを比較し、センサ電圧値SG1が閾値以上である時に当該ガス検知器20が規定濃度以上の有害ガスHGを検知したと判断する。
【0026】
図7は制御装置40から各煙放出装置30への煙放出命令SG2の送信を模式的に説明する図である。
図7に示すように、制御装置40(判定部41b、開始制御部41c)は、ガス検知器20が規定濃度以上の有害ガスHGを規定時間(例えば数秒乃至十数秒)に亘って検知し続けていると判断した時に、各煙放出装置30に対して煙放出命令SG2を送信する。
このように、本実施形態では、ガス検知器20が規定濃度以上の有害ガスHGを規定時間に亘って検知し続けている時に煙放出命令SG2を送信する構成にしたので、検知対象ではない有害ガスHGが一時的に検知された場合の誤検知を抑制できる。例えば、車両の排気ガスがガス検知器20に検知された場合における有害ガスHGの誤検知を抑制できる。
【0027】
図8は煙SMを放出した煙放出装置30を説明する図である。
図8に示すように、各煙放出装置30(通信制御部41a、ヒーター制御部39b、ポンプ制御部39c、バルブ制御部39d)は、煙放出命令SG2の受信に応じて煙SMを放出する。
すなわち、
図4で説明したように、煙放出装置30の制御部39(ヒーター制御部39b、ポンプ制御部39c)がヒーター362への通電を指示し、ヒーター362が加熱状態になった時にポンプ366を動作させてヒーター362上に油363を滴下する。制御部39(バルブ制御部39d)は、ヒーター362によって加熱された油363が蒸発して煙SMになりチャンバー361内を満たした後に、上流側電磁バルブ38aと下流側電磁バルブ38bとを一定時間に亘って開放状態にし、圧縮空気によってチャンバー361内の煙SMをノズル321側に送り出す。これにより、煙SMは、ノズル321から頭部32内に放出された後、頭部32の煙放出口322から装置外へと放出される。
また、各煙放出装置30(警報制御部39e)は、煙放出命令SG2の受信から一定時間に亘って、スピーカ34から警報音を出力させる。
【0028】
従って、本実施形態の避難支援システム1によれば、少なくとも一つのガス検知器20が規定濃度以上の有害ガスHGを規定時間以上に亘って検知した時に各煙放出装置30が煙SMを放出するため、煙放出装置30付近における風向きWDが煙SMによって可視化される。
作業エリアWA内で作業中の作業者HMは、煙放出装置30が放出した煙SMの流れる方向に基づいて有害ガスHGが流れてくる方向を推定できるため、有害ガスHGが流れてこない適切な方向へ避難することができる。
さらに煙SMの放出に連動してスピーカ34から警報音が出力されるため、作業者の注意を喚起することができる。
【0029】
<動作を実現するための制御について>
次に、上述した動作を実現するための制御について説明する。
図9は、ガス検知器20の制御部25、制御装置40の制御端末41、及び煙放出装置30の制御部39が実行する制御のフローチャートである。
ガス検知器20の制御部25(センサ出力処理部25c)は、センサ電圧値SG1の取得タイミングか否かを判断し(S11)、取得タイミングであった時(S11,Yes)にはセンサ電圧値SG1を取得する(S12)。すなわち、制御部25は、一定周期(例えば数ミリ秒乃至数秒)毎に、センサ21bが出力したアナログ電圧信号の電圧値をデジタルのセンサ電圧値SG1に変換する。一方、取得タイミングではなかった時(S11,Yes)、制御部25はステップS11の処理に戻って取得タイミングか否かを判断する。
制御部25(通信制御部25a、表示制御部25d)は、ステップS12でセンサ電圧値SG1を取得した後、取得したセンサ電圧値SG1を制御端末41へ送信し(S13)、センサ電圧値SG1に対応する有害ガス濃度を表示部24に表示させる(S14)。
制御部39は、ステップS14で有害ガス濃度を表示部24に表示させた後、ステップS11の処理に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0030】
制御装置40の制御端末41(通信制御部41a、判定部41b)は、ガス検知器20からセンサ電圧値SG1を受信したか否かを判断し(S21)、受信した時(S21,Yes)にはセンサ電圧値SG1が閾値以上である否かを判断する(S22)。制御端末41(通信制御部41a、判定部41b、開始制御部41c)は、センサ電圧値SG1が閾値以上であった時(S22,Yes)には、センサ電圧値SG1が閾値以上の状態が規定時間(例えば数秒乃至十数秒)以上連続しているか否かを判断し(S23)、規定時間以上連続している時(S23,Yes)には、煙放出命令SG2を煙放出装置30へ送信する(S24)。
また、制御端末41は、センサ電圧値SG1を受信していない時(S21,No)、センサ電圧値SG1が閾値以上でなかった時(S22,No)、センサ電圧値SG1が閾値以上の状態が規定時間以上連続していない時(S23,No)、及びステップS24で煙放出命令SG2を煙放出装置30へ送信した後は、ステップS21の処理に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0031】
煙放出装置30の制御部39(通信制御部39a、警報制御部39e)は、制御端末41から煙放出命令SG2を受信したか否かを判断し(S31)、受信した時(S31,Yes)には警報音信号をスピーカ34へ出力して警報音の出力を開始させる(S32)。
制御部39(ヒーター制御部39b、ポンプ制御部39c)は、警報音の出力を開始させた後、ヒーター362への通電を開始させ(S33)、ヒーター362が加熱状態になった時にポンプ366を動作させて適量の油363をヒーター362上に滴下させて煙SMを発生させ(S34)、煙SMが発生した後にヒーター362への通電を停止する(S35)。
制御部39(バルブ制御部39d、警報制御部39e)は、上流側電磁バルブ38aと下流側電磁バルブ38bとを一定時間に亘って開放状態にし、チャンバー361内の煙SMを装置の外に放出させ(S36)、その後、スピーカ34への警報音信号を停止して警報音の出力を停止させる(S37)。
また、制御部39は、煙放出命令SG2を受信していない時(S31,No)、及びステップS37で警報音の出力を停止させた後には、ステップS31の処理に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0032】
<変形例について>
前述の実施形態では、ガス検知器20と制御端末41の間、及び制御端末41と煙放出装置30との間を無線通信で接続していたが、無線通信に代えて有線通信で接続してもよい。
前述の実施形態では、検知信号としてセンサ電圧値SG1を例示したが、検知信号はセンサ電圧値SG1に限られない。漏出した有害ガスHGの濃度を示す信号であれば検知信号として使用できる。
前述の実施形態では、有害ガスHGの濃度が規定時間に亘って規定濃度以上の時に煙放出命令SG2を送信する構成としたが、規定濃度以上の有害ガスHGが検知されたら直ちに煙放出命令SG2を送信する構成にしてもよい。
前述の実施形態における煙発生部36は、ヒーター362上に油363を滴下することにより煙SMを発生させていたが、煙発生部36はこの構成に限定されない。例えば、液化炭酸ガスを噴射ノズルから噴射させることにより、白煙を発生させる構成にしてもよい。また、油363に香料を混ぜて煙SMに香りをつけてもよい。
【0033】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様に係る避難支援システム1は、有害ガス検知手段(ガス検知器20)から送信された有害ガスHGの濃度を示す検知信号(センサ電圧値SG1)に基づいて作業エリアWA内の作業者HMの避難を支援する避難支援システム1であって、有害ガス検知手段と作業エリアWAとの間に設置され、煙放出命令SG2の受信に応じて煙SMを放出する煙放出手段(煙放出装置30)と、検知信号を受信し、当該検知信号が示す有害ガスHGの濃度が規定濃度以上の時に煙放出命令SG2を送信する制御手段(制御装置40)と、を備えることを特徴とする。
本態様に係る避難支援システム1によれば、煙放出装置30付近における風向きが煙SMによって可視化されるため、有害ガスHGが流れてこない適切な方向へ作業者HMを避難させることができる。
【0034】
<第二の実施態様>
本態様に係る避難支援システム1では、有害ガス検知手段は、検知信号を周期的に送信し、制御手段は、有害ガスHGの濃度が規定時間に亘って規定濃度以上の時に煙放出命令SG2を送信することを特徴とする。
本態様に係る避難支援システム1によれば、一時的に検出される検知対象外の有害ガス(例えば、車両からの排気ガス)の誤検出を抑制できる。
【0035】
<第三の実施態様>
本態様に係る避難支援方法は、有害ガス検知手段から送信された有害ガスHGの濃度を示す検知信号に基づいて作業エリアWA内の作業者HMの避難を支援する避難支援システム1による避難支援方法であって、検知信号を受信するステップ(ステップS21)と、当該検知信号が示す有害ガスHGの濃度が規定濃度以上の時に、有害ガス検知手段と作業エリアWAとの間に設置された煙放出手段に対して、煙SMを放出させるための煙放出命令SG2を送信するステップ(ステップS24)と、を実行することを特徴とする。
本態様に係る避難支援方法によれば、第一の実施態様と同等の作用効果を奏する。
【0036】
<第四の実施態様>
本態様に係るプログラムは、第三の実施態様に記載の避難支援方法における各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
本態様に係るプログラムによれば、第三の実施態様と同等の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0037】
1…避難支援システム,10…有害ガスの取扱設備,20…ガス検知器(有害ガス検知手段),21b…センサ,25…制御部,25a…通信制御部,25b…吸引制御部,25c…センサ出力処理部,25d…表示制御部,30…煙放出装置(煙放出手段),321…ノズル,322…煙放出口,34…スピーカ,35…ボンベ,36…煙発生部,361…チャンバー,362…ヒーター,363…油,364…容器,365…供給チューブ,366…ポンプ,37…減圧弁,38…電磁バルブ,38a…上流側電磁バルブ,38b…下流側電磁バルブ,39…制御部,39a…通信制御部,39b…ヒーター制御部,39c…ポンプ制御部,39d…バルブ制御部,39e…警報制御部,40…制御装置(制御手段),41…制御端末,41a…通信制御部,41b…判定部,41c…開始制御部,WA…作業エリア,HG…有害ガス,SG1…センサ電圧値(検知信号),SG2…煙放出命令,HM…作業者