(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16Z 99/00 20190101AFI20221213BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20221213BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20221213BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20221213BHJP
G01N 33/44 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
G16Z99/00
G06F30/10
G06F30/20
G01N33/00 D
G01N33/44
(21)【出願番号】P 2018233274
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆嗣
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6254325(JP,B1)
【文献】特開2015-170262(JP,A)
【文献】特開2016-081297(JP,A)
【文献】特開2016-024178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16Z 99/00
G06F 30/10
G06F 30/20
G01N 33/00
G01N 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法であって、
前記コンピュータが、
複合材料をモデル化した複合材料モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップと、
前記複合材料モデルに相互作用を設定する第2ステップと、
前記解析用モデルの数値解析を実行する第3ステップと、
前記解析用モデルの内部空間に複数の評価ポイントを配置する第4ステップと、
複数の前記評価ポイントごとに、前記解析用モデルの特性値を算出する第5ステップと、
前記特性値の算出結果に基づいて、前記評価ポイントを可視化するステップと、
を含
み、
前記コンピュータは、近隣の前記評価ポイント同士の特性値の勾配に基づいて、可視化する前記評価ポイントを選択する、
ことを特徴とする、複合材料の解析方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、前記第3ステップを実行する前に、前記複合材料モデルを架橋させるステップを含む、
請求項1に記載の複合材料の解析方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントを前記内部空間に均等に配置する、
請求項1または2に記載の複合材料の解析方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントごとに評価領域を設定し、複数の前記評価領域に含まれる粒子の数に基づいて前記特性値を算出する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントと、その近傍に位置する粒子との距離及び前記距離から算出される物理量の少なくとも一方から前記特性値を算出する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
【請求項6】
前記コンピュータは、ユーザによって指定された指定区間の前記評価ポイントのみを可視化する、
請求項
1~5のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
【請求項7】
前記コンピュータは、前記指定区間の前記評価ポイントの近傍に、前記評価ポイントを再配置する、
請求項
6に記載の複合材料の解析方法。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記指定区間に含まれる前記評価ポイントの数に基づいた演算を実行する、
請求項
6に記載の複合材料の解析方法。
【請求項9】
前記コンピュータは、前記特性値の時間変化を算出する、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
【請求項10】
前記コンピュータは、互いに異なる複数の前記数値解析を実行し、複数の前記数値解析の実行結果を比較する、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の複合材料の解析方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、複合材料の解析用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムに関し、例えば、2以上の物質を含む複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子動力学を用いた複合材料のシミュレーション方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の複合材料のシミュレーション方法では、モデル作成領域内にポリマーモデル及びフィラーモデルを作成した後、フィラーモデル表面の結合位置にポリマーモデルを結合する。これにより、特許文献1に記載の複合材料の解析方法では、フィラー表面におけるポリマー粒子の結合状態が、複合材料の材料特性に与える影響を解析することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤの耐摩耗性能を向上させるゴム材料の開発を加速させるためには、ゴム材料の変形に伴うナノ構造の破壊のメカニズムを明らかにすることが一助となる。変形前後のゴム材料のナノ構造の破壊を解析することにより、実際のタイヤに用いられるフィラー充填ゴムの破断強度向上の材料開発を加速させることができる。
【0005】
しかしながら、従来の分子動力学による数値解析では、ゴム材料の変形に伴うナノ構造の破壊を解析するためには、ゴム材料中のポリマー粒子の粒子間結合を破断して消去する必要がある。粒子間結合を破断した後のゴム材料の伸長過程において、ゴム材料の内部には、ボイドが発生する。ボイドは、ナノ構造の破壊のメカニズムに影響を与えていると考えられるため、ボイドの発生する位置や、ボイドの大きさ及び形状を算出することが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ボイドに関する特性値を算出することのできる複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複合材料の解析方法は、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法であって、前記コンピュータが、複合材料をモデル化した複合材料モデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップと、前記複合材料モデルに相互作用を設定する第2ステップと、前記解析用モデルの数値解析を実行する第3ステップと、前記解析用モデルの内部空間に複数の評価ポイントを配置する第4ステップと、複数の前記評価ポイントごとに、前記解析用モデルの特性値を算出する第5ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る複合材料の解析方法によれば、解析用モデルの内部空間に発生したボイドに関する特性値を算出することができる。そのため、破壊のメカニズムに与えるボイドの影響を算出することができる。
【0009】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータが、前記第3ステップを実行する前に、前記複合材料モデルを架橋させるステップを含むことが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、複合材料モデルにおける架橋結合が、ボイドの発生のし易さに与える影響を評価することができる。その結果、ボイドがナノ構造の破壊のメカニズムに与える影響をより詳細に評価することができるので、解析精度が向上する。
【0010】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントを前記内部空間に均等に配置することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、評価ポイントごとの特性値を均等に評価することができる。その結果、評価ポイントごとの特性値が均等に評価されるので、解析精度が向上する。
【0011】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントごとに評価領域を設定し、複数の前記評価領域に含まれる粒子の数に基づいて前記特性値を算出することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、評価ポイントごとの評価領域を密度で定義することができる。その結果、密度と、ボイドとの関係を評価することができる。
【0012】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントと、その近傍に位置する粒子との距離及び前記距離から算出される物理量の少なくとも一方から前記特性値を算出することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、評価ポイントごとの評価領域を距離に関する物理量で定義することができる。その結果、距離に関する物理量と、ボイドとの関係を評価することができる。
【0013】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータが、前記特性値の算出結果に基づいて、前記評価ポイントを可視化するステップをさらに含むことが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、解析用モデルの内部を可視化することができる。その結果、ユーザは、解析用モデルの内部に発生したボイドの位置や形状を把握しやすくなる。
【0014】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、ユーザによって指定された指定区間の前記評価ポイントのみを可視化することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、ボイドのみを可視化したり、界面のみを可視化したりすることができる。その結果、ユーザは、ボイドの形状をより把握しやすくなる。
【0015】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、複数の前記評価ポイントのうち、互いに近接する前記評価ポイントの前記特性値の差に基づいて、前記可視化する評価ポイントを選択することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、ボイドの表面のみを可視化することができる。その結果、ユーザは、ボイドの形状をより把握しやすくなる。
【0016】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、前記指定区間の前記評価ポイントの近傍に、前記評価ポイントを再配置することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、評価点ポイントの特性値をより詳細に解析することができる。その結果、ボイドなどの特定領域の形状の認識精度がより向上する。
【0017】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、前記指定区間に含まれる前記評価ポイントの数に基づいた演算を実行することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、解析用モデルに含まれる評価ポイントに基づいた演算を実行することができる。その結果、指定区間に含まれる、ボイドなどの特定領域の体積、表面積などを算出することができる。
【0018】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、前記特性値の時間変化を算出することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、解析用モデルにおける複数時点の特性値を算出することができる。その結果、評価ポイントごとの特性値の時間履歴を算出することができる。
【0019】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記コンピュータは、互いに異なる複数の前記数値解析を実行し、複数の前記数値解析の実行結果を比較することが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、ナノ構造と、ボイドとの関係などの異なる数値解析の結果を比較することができる。その結果、ユーザは、複数の数値解析の結果の相関性を把握しやすくなる。
【0020】
本発明の複合材料の解析用コンピュータプログラムは、上記複合材料の解析方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0021】
本発明の複合材料の解析用コンピュータプログラムによれば、解析用モデルの内部空間に発生したボイドに関する特性値を算出することができる。そのため、破壊のメカニズムに与えるボイドの影響を算出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボイドに関する特性値を算出することのできる複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る複合材料の解析方法の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る複合材料の解析用モデルの一例を示す概念図である。
【
図3A】
図3Aは、評価ポイントを配置する方法の一例を示す模式図である。
【
図3B】
図3Bは、評価ポイントを配置する方法の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る複合材料の解析方法及び複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る複合材料の解析方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6A】
図6Aは、架橋結合がない場合の解析用モデルで発生するボイドを説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、架橋結合がある場合の解析用モデルで発生するボイドを説明するための模式図である。
【
図7A】
図7Aは、架橋密度の比較的小さい解析用モデルで発生するボイドの一例を示す模式図である。
【
図7B】
図7Bは、架橋密度の比較的大きい解析用モデルで発生するボイドの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。なお、以下においては、解析対象となる複合材料がポリマー及びフィラーを含む例について説明しているが、本発明は、2種類の以上の物質を含有する複合材料にも適用可能である。また、本発明は、フィラー及びポリマー以外の物質を含有する複合材料にも適用可能である。
【0025】
図1は、本実施形態に係る複合材料の解析方法の概略を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る複合材料の解析方法は、第1ステップST11と、第2ステップST12と、第3ステップST13と、第4ステップST14と、第5ステップST15とを含む、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析方法である。
【0026】
第1ステップST11では、コンピュータは、ポリマーをモデル化したポリマーモデル及びフィラーをモデル化したフィラーモデルを含む複合材料の解析用モデルを作成する。
【0027】
第2ステップST12では、コンピュータは、解析対象となるポリマーモデル又はフィラーモデルに属する、少なくとも一対の粒子間に相互作用を設定する。
【0028】
第3ステップST13では、コンピュータは、解析用モデルの数値解析を実行する。例えば、コンピュータは、相互作用が設定された粒子間の判断処理を実行する数値解析を実行する。
【0029】
第4ステップST14では、コンピュータは、数値解析を実行した後の解析用モデルの内部に複数の評価ポイントを配置する。
【0030】
第5ステップST15では、コンピュータは、配置した評価ポイントごとに特性値を算出する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る複合材料の解析用モデル1の一例を示す概念図である。
図2に示すように、解析用モデル1は、例えば、一辺の長さが距離Lの略立方体形状の仮想空間であるモデル作成領域A内でモデル化される。モデル作成領域Aは、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸方向に広がる三次元空間となっている。解析用モデル1は、複数のフィラー粒子11aがモデル化された4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dと、複数のポリマー粒子21a及び結合鎖21bがモデル化された4つのポリマーモデル21とを含む。なお、
図2に示す例では、解析用モデル1が、4つのフィラーモデル11A,11B,11C,11Dがモデル化された例について説明するが、モデル化されるフィラーモデルの数に制限はない。解析用モデル1は、4未満のフィラーモデル11を含んでいてもよく、4つを超えるフィラーモデル11を含んでいてもよい。また、
図2においては、4つのポリマーモデル21のみを示しているが、解析用モデル1では、複数のポリマーモデル21がモデル作成領域A内の全域に亘って存在している。さらに、
図2に示す例では、モデル作成領域Aが、略直方体形状の仮想空間である例について示しているが、球状、楕円状、直方体形状、多面体形状など任意の形状であってもよい。
【0032】
フィラーモデル11は、複数のフィラー粒子11aがそれぞれ略球状体に集合した状態でモデル化される。また、フィラーモデル11は、互いに所定間隔をとって離れた状態で配置されている。なお、フィラーモデル11とは、相互に凝集した状態で外縁部が共有結合によって相互に連結されていてもよい。
【0033】
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどが含まれる。フィラー粒子11aは、複数のフィラーの原子が集合されてモデル化される。また、フィラー粒子11aは、複数のフィラー粒子11aが集合してフィラー粒子群を構成する。フィラー粒子11aは、複数のフィラー粒子11a間の結合鎖(不図示)によって相対位置が特定されている。この結合鎖(不図示)は、フィラー粒子11a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各フィラー粒子11a間を拘束している。結合鎖は、フィラー粒子11aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。フィラーモデル11は、フィラーを分子動力学で取り扱うためのフィラー粒子11aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む数値データである。フィラーモデル11の数値データは、コンピュータに入力される。
【0034】
ポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマー粒子21aは、複数のポリマーの原子が集合されてモデル化される。また、ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21aが集合してポリマー粒子群を構成する。ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。ポリマーモデル21は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子21aがモデル作成領域A内に所定密度で充填されてモデル化される。ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21a間の結合鎖21bによって結合されて相対位置が特定されている。この結合鎖21bは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。結合鎖21bは、ポリマー粒子21aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。また、結合鎖21bは、複数のポリマー粒子21aが直列状に連結されてなるポリマーモデル21間にも架橋結合(不図示)として結合されていてもよい。このポリマーモデル21は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子21aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。ポリマーモデル21の数値データは、コンピュータに入力される。
【0035】
解析用モデル1は、分子動力学法による数値解析により各種物理量が取得される。数値解析としては、例えば、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析が挙げられる。これらの運動解析で取得する物理量は、運動解析の結果得られた変位などの値を用いてもよく、所定の演算処理を実行した歪みであってもよい。これらの中でも、運動解析としては、複合材料のコンパウンドの力学特性を解析可能となる観点から、変形解析が好ましい。
【0036】
解析用モデル1において数値解析を実行する際に、作成したフィラーモデル11とポリマーモデル21との間に相互作用を設定する。フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用としては、例えば、分子間力及び水素結合などの引力及び斥力などの化学的な相互作用、及び共有結合などの物理的な相互作用が挙げられる。なお、フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用は、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間及びフィラー粒子11aとポリマー粒子21aとの間に必要に応じて設定されるものである。そのため、必ずしも全てのフィラー粒子11a及びポリマー粒子21aに設定されるものではない。また、ポリマーモデル21が複数の種類のポリマー粒子21aで構成されている場合には、複数の種類のポリマー粒子21aにそれぞれ相互作用を設定してもよい。また、複数の種類の各ポリマー粒子21aとフィラーモデル11との相互作用は同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、ポリマー粒子Aとフィラー粒子11aの相互作用とポリマー粒子Bとフィラー粒子11aの相互作用とは異なる相互作用を設定してもよい。
【0037】
本発明においては、解析用モデル1において数値解析を実行した後、解析用モデル1に発生したボイドを算出することができる。具体的には、本発明は、解析用モデル1において数値解析を実行した後、解析用モデル1に発生したボイドを可視化することができる。
【0038】
図3Aと、
図3Bとを用いて、数値解析を実行した後の解析用モデル1のモデル作成領域A内に評価ポイントを配置する方法について説明する。
図3Aと、
図3Bとは、評価ポイントを配置する方法の一例を示す模式図である。
【0039】
図3Aに示すように、モデル作成領域Aには、評価ポイントP1と、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4とが含まれている。ここで、モデル作成領域A内には、4つの評価ポイントが示されているが、これは例示であり、本発明を限定するものではない。本発明では、評価ポイントは、モデル作成領域Aにおいて、任意に配置してよい。
【0040】
本実施形態では、評価ポイントP1と、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4の特性値を算出する。例えば、本実施形態では、評価ポイントP1と、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4との地点がボイドであるか否かを判定する。ボイドの存在はゴムなどの複合材料の破壊のメカニズムに影響を与えていると考えられる。そのため、ボイドの存在を把握することで、破壊のメカニズムの解明の一助となる。
【0041】
本実施形態では、評価ポイントは、モデル作成領域Aの内部空間に均等に配置することが好ましい。均等に配置する方法に特に制限はないが、例えば、評価ポイントは、モデル作成領域Aの内部空間に、格子状に配置する方法が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態では、評価ポイントP1と、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4との特性値の算出結果を、可視化して表示してもよい。これにより、ユーザは、ボイドの位置と、形状とを把握しやすくなる。また、ユーザは、例えば、ポリマー構造やフィラーの位置とボイドの発生する位置との対応が把握しやすくなる。
【0043】
また、本実施形態では、評価ポイントP1と、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4との周囲に評価領域を設定して、評価領域に含まれる粒子数に基づいて、評価領域の特性値を算出するようにしてもよい。
図3Aにおいて、評価ポイントP1の周囲には、評価領域R1が設定されている。評価ポイントP2の周囲には、評価領域R2が設定されている。評価ポイントP3の周囲には、評価領域R3が設定されている。評価ポイントP4の周囲には、評価領域R4が設定されている。評価領域R1と、評価領域R2と、評価領域R3と、評価領域R4とは、例えば、球形状である。評価領域R1と、評価領域R2と、評価領域R3と、評価領域R4とは、例えば、楕円球上であってもよい。また、評価領域R1と、評価領域R2と、評価領域R3と、評価領域R4とは、互いに重複していてもよい。
図3Aでは、評価領域R1と、評価領域R2との一部の領域が重複している。また、評価領域R2と、評価領域R4との一部の領域が重複している。また、それぞれの評価領域において、評価ポイントからの距離に応じて重みづけして特性値を加算してもよい。
【0044】
また、
図3Bには、評価ポイントP5と、評価ポイントP6と、評価ポイントP7と、評価ポイントP8とが示されている。評価ポイントP5の周囲には、評価領域R5が設定されている。評価ポイントP6の周囲には、評価領域R6が設定されている。評価ポイントP7の周囲には、評価領域R7が設定されている。評価ポイントP8の周囲には、評価領域8が設定されている。
図3Bにおいて、評価領域R5と、評価領域R6と、評価領域R7と、評価領域R8とは、例えば、立方体である。すなわち、評価領域は、球や楕円球でなくともよい。また、評価領域は、立方体以外の多面体であってもよい。
【0045】
再び
図3Aを参照する。本実施形態では、評価ポイントと、その近傍の粒子の距離や、距離に関する物理量(例えば、相互作用)に基づいて特性値を算出してもよい。例えば、評価ポイントP1を例に説明すれば、評価ポイントP1と、評価ポイントP1の近傍に位置するポリマー粒子との距離や、評価ポイントP1と、ポリマー粒子間との間に働く相互作用に基づいて、特性値を算出してもよい。なお、
図3Bについては、以下で説明する
図3Aと同様の方法で、特性値を算出したり、ボイドを可視化したりすることができるので、説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、例えば、ユーザによって指定された指定区間に含まれる評価ポイントのみを可視化してもよい。
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1はボイドであり、評価ポイントP2と、評価ポイントP3と、評価ポイントP4とはボイドではなかったとする。この場合、ユーザによって指定された、評価ポイントP1のみを可視化するようにしてもよい。これにより、本実施形態は、ボイドのみを可視化することができる。その結果、ユーザはボイドの形状を把握しやすくなる。
【0047】
本実施形態では、例えば、近隣の評価ポイント同士の特性値の勾配に基づいて、可視化する評価ポイントを選択してもよい。
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1と、評価ポイントP2との特性値の差に基づいて、可視化する評価ポイントを選択する。特性値の勾配を算出した結果、評価ポイントP1がボイドであり、評価ポイントP2がボイドでなかった場合、評価ポイントP1を可視化する評価ポイントとして選択する。これにより、本実施形態は、ボイドの表面のみを可視化することができる。
【0048】
本実施形態では、例えば、ユーザによって指定された指定区間の評価ポイントの特性値を算出した後、その評価ポイントの近傍に評価ポイントを再配置してもよい。そして、再配置した評価ポイントの特性値を再度算出してもよい。具体的には、
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1の特性値を算出した後、評価ポイントP1がボイドであった場合、評価ポイントP1の近傍に評価ポイントP1を再配置する。そして、本実施形態は、再配置した評価ポイントP1の特性値を算出する。これにより、本実施形態は、評価ポイントP1に位置するボイドの形状を詳細に算出することができる。
【0049】
本実施形態では、例えば、ユーザによって指定された指定区間に含まれるボイドに対応する評価ポイントの数に基づいた演算を実行してもよい。評価ポイントがボイドに対応しているか否かについては、評価ポイントの特性値を算出することで判定することができる。具体的には、
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1と、評価ポイントP2とがボイドに対応する評価ポイントであり、評価ポイントP3と、評価ポイントP4とがボイドに対応していない評価ポイントであるとする。この場合、本実施形態は、例えば、評価ポイントP1と、評価ポイントP2とに基づいた演算を実行する。これにより、本実施形態は、ボイドなどの特定領域の体積及び表面積などを算出することができる。
【0050】
本実施形態では、例えば、複数の時間における、評価ポイントの特性値を算出してもよい。具体的には、
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1の複数の時間の特性値を算出してもよい。これにより、本実施形態は、評価ポイントP1の特性値の時間履歴を算出することができる。より具体的には、本実施形態は、評価ポイントP1のボイドの状態の時間履歴を算出することができる。また、本実施形態では、算出した特性値の時間履歴を可視化して表示しもよい。また、本実施形態は、ボイドの状態の変化(成長)をアニメーションにして表示してもよい。また、ボイドの体積の変化の時間履歴をグラフ化してもよい。
【0051】
本実施形態では、例えば、異なる複数の数値解析の結果を比較してもよい。具体的には、
図3Aにおいて、例えば、評価ポイントP1のボイドの変化と、ゴム材料のナノ構造の変化を比較してもよい。なお、本実施形態は、これらに限らず、その他の数値解析の結果を比較してもよい。
【0052】
次に、本実施形態に係る複合材料の解析方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムについてより詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る複合材料の解析方法及び複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
【0053】
図4に示すように、本実施形態に係る複合材料の解析方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーの各種物性値、ポリマー及びフィラーを含有する複合材料を用いた伸張試験結果の実測結果、及び解析における境界条件などを処理部52又は記憶部54へ入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
【0054】
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開する。そして、処理部52は、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデルの作成及び複合材料の解析用モデルを用いた複合材料の解析に関する各種処理を実行する。
【0055】
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法により複合材料の解析用モデル1を作成する際のフィラー及びポリマーなどの複合材料の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデルに含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定を行う。また、モデル作成部52aは、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間及びフィラー・ポリマー粒子の水素結合、分子間力などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。また、モデル作成部52aは、必要に応じてポリマーモデル21の架橋による架橋結合の作成などの架橋解析などを作成してもよい。
【0056】
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(1)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用のパラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
【0057】
【0058】
条件設定部52bは、変温解析及び変圧解析などの数値解析、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析などの各種数値解析条件を設定する。
【0059】
解析部52cは、条件設定部52bによって設定された解析条件に基づいて解析用モデル1の各種数値解析を実行する。また、解析部52cは、モデル作成部52aによって作成された複合材料の解析用モデル1を用いて分子動力学法による数値解析を実行して物理量を取得する。ここでは、解析部52cは、数値解析として、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析などを実行する。また、解析部52cは、数値解析の結果得られた変位などの値又は得られた値に所定の演算処理を実行した歪みなどの物理量を取得する。
【0060】
また、解析部52cは、数値解析による運動解析の結果得られる運動変位及び公称応力又は運動変位を演算して得られる公称歪みなどの各種物理量を取得する。このような数値解析及び運動解析により、解析時間毎に変化する解析用モデル全体のポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度、配向などの物理量などのセグメントの状態変化を表す数値と歪みとの関係などを評価できる。解析部52cは、ポリマーモデルに架橋結合が含まれている場合には、架橋点間と自由末端の速度又は結合長などを評価することができる。また、解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と圧力又は解析時間との関係などを評価できる。さらに、解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と温度又は解析時間との関係などを評価できる。これにより、ポリマー分子の局所的な分子状態変化のより詳細な解析が可能となる。
【0061】
また、解析部52cは、数値解析によって得られたポリマーモデル21の破断座標を特定し、特定した破断座標を評価する。ここでは、解析部52cは、破断した粒子間結合を可視化して評価してもよく、破断座標を可視化して評価してもよい。さらに、解析部52cは、複数のフィラーモデル11の周囲に発生した破断座標を集約して評価してもよく、複数のフィラーモデル11の周囲に発生した破断座標を1つの代表フィラーモデルに集約して評価してもよい。また、解析部52cは、複数の解析用モデル1を用いて別途解析した解析結果を集約して評価してもよい。解析部52cは、解析した複合材料の解析結果を記憶部54に格納する。
【0062】
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD-ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
【0063】
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータであるゴムカーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーのデータなどが格納されている。また、記憶部54には、予め設定した物理量履歴である応力歪み曲線及び本実施の形態に係る複合材料の解析方法、複合材料の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0064】
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
【0065】
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
図5を用いて、本実施形態の実施例に係る複合材料の解析方法について説明する。
図5は、本実施形態の実施例に係る複合材料の解析方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、各ステップは、
図4に図示の解析装置50が実行するものとして説明する。
【0067】
まず、解析装置50は、数値解析を実行するための解析用モデルを作成する(ステップST21)。そして、解析装置50は、ステップST22に進む。
【0068】
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれるポリマーモデルの架橋を作成する(ステップST22)。そして、解析装置50は、ステップST23に進む。
【0069】
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれるフィラーと、ポリマーとの間に相互作用を設定する(ステップST23)。また、解析装置50は、解析用モデルに含まれるポリマーと、ポリマーとの間に相互作用を設定する。そして、解析装置50は、ステップST24に進む。
【0070】
次に、解析装置50は、解析用モデルに含まれる切断を考慮する材料(結合鎖)を選定する(ステップST24)。そして、解析装置50は、ステップST25に進む。
【0071】
次に、解析装置50は、ステップST21~ステップST24で設定した条件に従って数値解析を実施する(ステップST25)。そして、解析装置50は、ステップST26に進む。
【0072】
次に、解析装置50は、数値解析を実行した解析用モデルにおいて、評価ポイントを配置する(ステップST26)。そして、解析装置50は、ステップST27に進む。
【0073】
次に、解析装置50は、配置した評価ポイントにおいて、評価領域及び評価距離を設定する(ステップST27)。なお、ステップST27では、解析装置50は、評価領域のみを設定してもよい。そして、解析装置50は、ステップST28に進む。
【0074】
次に、解析装置50は、設定した各評価領域に含まれる粒子数から特性値を算出する(ステップST28)。そして、解析装置50は、ステップST29に進む。
【0075】
次に、解析装置50は、ステップST28で算出した特性値に基づいて、解析用モデルに含まれるボイドを可視化する(ステップST29)。そして、解析装置50は、
図5の処理を終了する。
【0076】
次に、本発明を用いた実施例として、架橋密度が異なる2つのモデルを作成し、それぞれのボイドを可視化した。なお、本実施例では、2つの解析用モデルにおいては、架橋密度が異なっているが、その他の構造因子が異なっていてもよい。
【0077】
(ボイドの評価)
図6Aと、
図6Bとを用いて、架橋結合の有無における、発生するボイドの差異について説明する。
図6Aは、架橋結合がない解析用モデルで発生するボイドの一例を示している。
図6Bは、架橋結合がある解析用モデルで発生するボイドの一例を示している。
【0078】
図6Aに示すように、架橋結合がない解析用モデルでは、ポリマー粒子を繋ぐ結合鎖が凝集し易くなる。そのため、架橋結合がない解析用モデルでは、結合鎖が凝集し比較的大きなボイド31Aが発生する。
【0079】
図6Bに示すように、架橋結合がある解析用モデルでは、ポリマー粒子間にネットワークが形成されるので、結合鎖が凝集し難くなる。そのため、架橋結合がある解析用モデルでは、架橋結合がない解析用モデルに比べて、小さなボイド31Bが発生する。具体的には、細かいボイド31Bがモデル領域Aの全体に分布するように発生している。
【0080】
次に、
図7Aと、
図7Bとを用いて、架橋密度の違いによる発生するボイドの大きさについて説明する。
図7Aは、架橋密度の比較的小さい解析用モデルで発生するボイドの一例を示している。
図7Bは、架橋密度の比較的大きい解析用モデルで発生するボイドの一例を示している。
【0081】
図7Aに示すように、架橋密度の比較的小さな解析用モデルでは、比較的小さなボイド31Aが比較的多数発生している。一方、
図7Bに示すように、架橋密度の比較的大きな解析用モデルでは、比較的大きなボイド31Bが少数発生している。また、
図7Bでは、細かなボイド31Cがモデル作成領域Aの全体に分布するように発生している。
【0082】
上述のように、本発明では、異なる条件で数値解析を実行した後の、解析用モデルで発生するボイドの発生を比較することができる。また、本発明では、架橋結合の有無や、架橋結合の密度の大小で発生するボイドの差異を比較することができる。具体的には、本発明では、架橋結合の有無や、架橋結合の密度の大小で発生するボイドを可視化して評価することができる。これにより、本発明は、例えば、ボイドがナノ構造の破壊のメカニズムに与える影響を評価することができる。また、本発明は、ボイドを可視化してユーザに提供することができる。これにより、ユーザは、例えば、ボイドの形状がナノ構造の破壊のメカニズムに与える影響を把握し易くなる。
【符号の説明】
【0083】
1 解析用モデル
11,11A,11B,11C,11D フィラーモデル
11a フィラー粒子
21 ポリマーモデル
21a ポリマー粒子
21b 結合鎖
50 解析装置
51 入出力装置
52 処理部
52a モデル作成部
52b 条件設定部
52c 解析部
53 入力手段
54 記憶部
55 表示手段
A モデル作成領域