(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20221213BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20221213BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20221213BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221213BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H01L23/36 C
H01L33/64
H05K1/02 F
H05K7/20 F
H05K7/20 E
(21)【出願番号】P 2018234411
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 航
(72)【発明者】
【氏名】森田 友真
(72)【発明者】
【氏名】長友 義幸
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-114224(JP,A)
【文献】特開2000-200865(JP,A)
【文献】特開2016-046356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H01L33/00
H01L33/48 -33/64
H05K 1/00 - 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に回路層
、他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板と、前記
金属層の前記回路層とは反対側の面に
ろう付け接合されたヒートシンクとを備えたヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造であって、
前記回路層の外周部を押圧部材により前記筐体に向けて押圧させ
、前記ヒートシンクを前記筐体に押圧した状態で該押圧部材が前記筐体に固定されることを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記回路層の外周部に当接する回路層当接部と、前記回路層当接部に接続され、前記ヒートシンクに当接するヒートシンク当接部と、を有し、
前記ヒートシンク当接部が前記ヒートシンクを介して前記筐体に固定されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記回路層の外周部に当接する回路層当接部と、前記回路層当接部に接続され、前記筐体に当接する筐体当接部と、を有し、前記筐体当接部が前記筐体に固定されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【請求項4】
前記ヒートシンクは、前記セラミックス基板とは反対側の面に複数のフィンを有し、
前記筐体は、前記ヒートシンク付き絶縁回路基板が前記筐体に固定された際に前記複数のフィンを収容する開口部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【請求項5】
前記ヒートシンクと前記筐体の該ヒートシンクに当接する面との間にグリースを介して前記ヒートシンク付き絶縁回路基板を前記筐体に取り付けることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【請求項6】
前記回路層の前記外周部より内側の実装面には、LED素子が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板等の絶縁回路基板にヒートシンクが接合されたヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール用基板として、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板からなる絶縁層の一方の面にアルミニウムやアルミニウム合金からなる回路層が形成された絶縁回路基板や、回路層に銅層が接合された絶縁回路基板が知られている。これらをLED(Light Emitting Diode)放熱モジュールに適用する場合、セラミックス基板の裏面に金属層が設けられていないため、セラミックス基板と回路層との熱膨張係数の差に起因して、接合時に絶縁回路基板は基本的に回路層側から見て凹状に反る。一方、絶縁回路基板の回路層と反対側の面にヒートシンクが設けられたヒートシンク付き絶縁回路基板については、多くは回路層側から見て凸状に反るが、回路層が銅層を備えている場合や、その構成次第で、回路層側から見て凹状に反る場合もある。
【0003】
このようなヒートシンク付き絶縁回路基板の反りを改善する方法として、例えば、特許文献1に記載のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の製造方法が知られている。この製造方法では、ヒートシンクを金属層に対し降伏応力の高い材料により形成し、ヒートシンクとパワーモジュール用基板との接合時において、ヒートシンクとパワーモジュール用基板との積層体を、その積層方向のヒートシンクとは反対側から見て凹状の反りを生じさせた状態とし、加熱した状態で所定時間保持した後に冷却することにより、反りを低減したヒートシンク付きパワーモジュール用基板を得ることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の製造方法により製造されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、反りが小さいため、これを用いたパワーモジュールのモジュール性能に与える影響はわずかであった。しかしながら、電子部品としてLED素子を用い、ヒートシンク付き絶縁回路基板が配光制御機能を持つLED放熱モジュールとして用いられる場合、回路層における実装面へのLED素子の実装位置やその角度は、極めて精密に制御する必要があるため、パワーモジュールとして用いる場合には問題とならなかったわずかな反りも各光源の光軸をずらす要因となり、LED放熱モジュールとしての使用が難しい場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電子部品等の実装面となる回路層の平面度を向上できるヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造は、セラミックス基板の一方の面に回路層、他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板と、前記金属層の前記回路層とは反対側の面にろう付け接合されたヒートシンクとを備えたヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造であって、前記回路層の外周部を押圧部材により前記筐体に向けて押圧させ、前記ヒートシンクを前記筐体に押圧した状態で該押圧部材が前記筐体に固定される。
【0008】
ここで、ヒートシンク付き絶縁回路基板が凹状に沿っている場合、回路層もその中心が最も深く外周部に向かうに従って上側に反る形状(いわゆるすり鉢状)となる。このため、回路層の平面度が低く、この回路層の外周部より内側に位置する実装面にLED素子等を実装してLED放熱モジュールとして用いた場合、LED素子(LED光源)から放射される光の光軸がずれ、配光制御機能が低下する。これに対し、本発明では、ヒートシンク付き絶縁回路基板は、回路層の外周部を押圧部材により押圧させた状態で押圧部材が筐体に固定されることにより、回路層の外周部を筐体に向けて押圧する押圧力が発生する。このため、回路層の平面度を向上できる。すなわち、回路層におけるLED素子等が実装される実装面の平面度を向上できる。
【0009】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造の一つの態様としては、前記押圧部材は、前記回路層の外周部に当接する回路層当接部と、前記回路層当接部に接続され、前記ヒートシンクに当接するヒートシンク当接部と、を有し、前記ヒートシンク当接部が前記ヒートシンクを介して前記筐体に固定される。
【0010】
上記態様では、押圧部材のヒートシンク当接部がヒートシンクを介して筐体に固定されることから、ヒートシンクが筐体に向けて押圧された状態となり、ヒートシンクの反りを改善できる。このため、ヒートシンクに当接する押圧部材のヒートシンク当接部が確実にヒートシンクに当接でき、これにより該ヒートシンク当接部に接続される回路層当接部により、回路層の外周部を確実に筐体に向けて押圧できる。したがって、回路層の平面度を確実に向上できる。
【0011】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造の他の一つの態様としては、前記押圧部材は、前記回路層の外周部に当接する回路層当接部と、前記回路層当接部に接続され、前記筐体に当接する筐体当接部と、を有し、前記筐体当接部が前記筐体に固定される。
【0012】
上記態様では、押圧部材の回路層当接部に接続された筐体当接部が筐体に固定されることから、筐体当接部に接続された回路層当接部により回路層の外周部を筐体に向けて押圧できる。したがって、ヒートシンクの反りの程度にかかわらず、回路層の平面度を確実に向上できる。
【0013】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造のさらに他の一つの態様としては、前記ヒートシンクは、前記セラミックス基板とは反対側の面に複数のフィンを有し、前記筐体は、前記ヒートシンク付き絶縁回路基板が前記筐体に固定された際に前記複数のフィンを収容する開口部を有する。
【0014】
上記態様では、ヒートシンクが複数のフィンを有している場合でも、筐体に固定された際に開口部内に収容されるので、ヒートシンク付き絶縁回路基板の放熱性能を高めることができる。
【0015】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造のさらに他の一つの態様としては、前記ヒートシンクと前記筐体の該ヒートシンクに当接する面との間にグリースを介して前記ヒートシンク付き絶縁回路基板を前記筐体に取り付ける。
【0016】
なお、上記グリースとしては、アルミニウム粉末又はカーボン粉末が含まれていることが好ましい。
上記態様では、ヒートシンクと筐体のヒートシンクに当接する面との間にグリースが設けられているので、ヒートシンクの熱を筐体に伝達させやすくでき、筐体を介してヒートシンクの熱を放熱できる。したがって、ヒートシンク付き絶縁回路基板の放熱性能をさらに高めることができる。
【0017】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造のさらに他の一つの態様としては、前記回路層の前記外周部より内側の実装面には、LED素子が設けられている。
【0018】
上記態様では、回路層におけるLED素子等が実装される実装面の平面度が高いため、LED素子から放射される光の光軸がずれることを抑制できる。したがって、ヒートシンク付き絶縁回路基板が固定された筐体、すなわち、LED放熱モジュールとして適切に使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子部品等の実装面となる回路層の平面度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るヒートシンク付き絶縁回路基板の筐体への取り付け構造を用いたLED放熱モジュールを示す断面図である。
【
図2】
図1に示すLED放熱モジュールの平面図である。
【
図3】上記第一実施形態の第一変形例に係るLED放熱モジュールを示す断面図である。
【
図4】上記第一実施形態の第二変形例に係るLED放熱モジュールを示す断面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るLED放熱モジュールの断面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るLED放熱モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態におけるLED放熱モジュール100の断面図であり、
図2は、LED放熱モジュール100の平面図である。なお、
図1におけるLED放熱モジュール100の断面図は、
図2のA1-A1線に沿う矢視断面図である。
【0022】
[LED放熱モジュールの概略構成]
本実施形態に係るLED放熱モジュール100は、
図1に示すように、ヒートシンク付き絶縁回路基板1が筐体50に取り付けられることにより構成される。このようなLED放熱モジュール100は、例えば、自動車のヘッドランプ等に用いられる。
【0023】
[ヒートシンク付き絶縁回路基板の構成]
このヒートシンク付き絶縁回路基板1は、絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合されたヒートシンク付き絶縁回路基板1にLED素子30が設けられたものである。具体的には、絶縁回路基板10は、いわゆるパワーモジュール用基板であり、絶縁回路基板10の上面には、
図1及び
図2に示すように、4つのLED素子30が搭載され、LEDモジュール40となる。なお、本実施形態では、LED素子30が設けられているが、これに限らず、例えば、半導体を備えた電子部品であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。
【0024】
この場合、LED素子30は、図示を省略するが、上部に上部電極部が設けられ、下部に下部電極部が設けられており、下部電極部が回路層12の上面121にはんだ等により接合されることで、LED素子30が回路層12の上面121に搭載される。例えば、本実施形態では、回路層12の上面121における外周部Ar1の内側に位置する実装面Ar2に4つ搭載されている。また、LED素子30の上部電極部は、はんだ等で接合されたリードフレーム等を介して回路層12の回路電極部等に接続され、LEDモジュール40が製造される。
【0025】
[絶縁回路基板の構成]
絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に形成された金属層13とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)等により形成され、その板厚は0.2mm~1.2mmである。
【0026】
回路層12は、セラミックス基板11に接合されている。この回路層12は、純度99質量%以上の純アルミニウム(例えば、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は、1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)や、A6063系等のアルミニウム合金等を用いることができ、その厚さは0.05mm~0.2mmに設定されている。
金属層13は、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、JIS規格では1000番台のアルミニウム、特に1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができ、その厚さは0.6mm~1.6mmに設定されている。
【0027】
そして、これら回路層12及び金属層13は、回路層12、セラミックス基板11、及び金属層13の順に、例えば、Al-Si系やAl-Si-Mg系のろう材を介して積層され、これらを積層方向に加圧して加熱することにより接合されて絶縁回路基板10となる。
【0028】
[ヒートシンクの構成]
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、A6063系等のアルミニウム合金を鍛造により成形することにより形成される。このヒートシンク20の上面に絶縁回路基板10の金属層13が、Al-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合されて、ヒートシンク付き絶縁回路基板1となる。
【0029】
次に、本実施形態のヒートシンク付き絶縁回路基板1(LEDモジュール40)の筐体50への取り付け構造について説明する。
このようなヒートシンク付き絶縁回路基板1は、
図1及び
図2に示すように、回路層12の上面121における外周部Ar1を筐体50に向けて押圧する押圧部材60により押圧された状態で筐体50に固定される。この押圧部材60は、ねじにより構成される固定部材70により、押圧部材60及びヒートシンク20が重なった状態で筐体50に固定される。
【0030】
[押圧部材の構成]
押圧部材60は、例えば、SUS(ステンレス鋼)等により構成されている。この押圧部材60は、
図1及び
図2に示すように、回路層12の外周部Ar1に当接する回路層当接部61と、回路層当接部61に接続され、ヒートシンク20に当接するヒートシンク当接部62と、を有している。回路層当接部61は、
図1及び
図2に示すように、矩形平板状に形成され、中央に矩形状の開口部611を有している。この開口部611は、押圧部材60が筐体50に固定された際に、回路層12の上面121の外周部Ar1の内側に位置する実装面Ar2に対向して配置される。すなわち、開口部611から回路層12の実装面Ar2に配置されたLED素子30が外部に露出する。
【0031】
回路層当接部61の外周端部には、ヒートシンク当接部62が接続されている。このヒートシンク当接部62は、回路層当接部61の下面612の外周端部から筐体50に向けて直線状に延びる筒状部621と、筒状部621の下端部から外側に向かって延びる当接部622と、を備えている。これらのうち、当接部622は、
図2に示すように、その下面623がヒートシンク20の上面に当接する。
【0032】
また、回路層当接部61の幅寸法L1は、5mm~10mmに設定され、開口端部から2mm~5mmの範囲が回路層12の外周部Ar1に当接する。すなわち、外周部Ar1の幅寸法L0は、2mm~5mmとされる。また、ヒートシンク当接部62の幅寸法L2(ヒートシンク20と当接する面の幅寸法)は、10mm~20mmに設定されている。また、押圧部材60の厚さ寸法L3は、3mm~10mmに設定され、回路層当接部61及びヒートシンク当接部62(当接部622)の厚さ寸法は同じである。さらに、当接部622の下面623(ヒートシンク20の上面)から回路層当接部61の下面612までの寸法L4は、絶縁回路基板10と同じ厚さ若しくは若干小さく設定され、例えば2mm~2.3mmに設定されている。また、押圧部材60の幅寸法L5は20mm~45mmに設定され、ヒートシンク20の幅寸法よりも若干小さく設定されている。なお、押圧部材60の幅寸法L5は、ヒートシンク20の幅寸法と同一であってもよい。
【0033】
このような押圧部材60は、回路層当接部61の下面612が回路層12の外周部Ar1に当接させられ、かつヒートシンク20の上面に当接させられた状態で、固定部材70がヒートシンク当接部62及びヒートシンク20を貫通して、これらが筐体50に固定される。これにより、ヒートシンク当接部62が筐体50に向けて押圧されることとなり、回路層12の外周部Ar1が筐体50に向けて押圧された状態となる。さらに、ヒートシンク20も筐体50に押圧された状態となる。これにより、回路層12の実装面Ar2及びヒートシンク20の平面度が向上する。
【0034】
なお、固定部材70は、
図2に示すように、押圧部材60の4つの角部及びこれらの間に1つずつ設けられているが、これに限らず、4つの角部にのみ設けられてもよいし、さらに多くの固定部材70が設けられてもよい。また、固定部材70は、ねじにより構成されることとしたが、これに限らず、例えばクランプ等により構成されてもよい。
【0035】
また、ヒートシンク20と筐体50のヒートシンク20に当接する面との間には、アルミニウム粉末又はカーボン粉末が含まれているグリース41を介してヒートシンク付き絶縁回路基板1が筐体50に取り付けられている。なお、本実施形態では、グリース41を介して筐体50にヒートシンク付き絶縁回路基板1が固定されることとしたが、グリース41はなくてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、回路層当接部61は、回路層12の外周部Ar1の全領域に重なって配置されることとしたが、これに限らず、例えば、回路層12の4つの角部に重なって配置されない形状であってもよいし、回路層12の外周部Ar1のうち、対向する2辺のみを押圧する形状であってもよい。すなわち、回路層12の平面度を向上できれば、回路層12の形状は問わない。
【0037】
本実施形態では、ヒートシンク付き絶縁回路基板1は、回路層12の外周部Ar1を筐体50に向けて押圧部材60により押圧された状態で筐体50に固定されるので、回路層12の平面度を向上できる。また、固定部材70によりヒートシンク20が筐体50に向けて押圧された状態で筐体50に固定されるので、ヒートシンク20の反りを改善できる。このため、ヒートシンク20に当接する押圧部材60のヒートシンク当接部62が確実にヒートシンク20の上面に当接でき、これによりヒートシンク当接部62に接続される回路層当接部61により、回路層12の外周部Ar1を確実に筐体50に向けて押圧できる。すなわち、回路層12におけるLED素子30等が実装される実装面Ar2の平面度を向上できる。このように回路層12におけるLED素子30等が実装される実装面Ar2の平面度が高いため、LED素子30から放射される光の光軸がずれることを抑制できる。したがって、ヒートシンク付き絶縁回路基板1が固定された筐体50、すなわち、LED放熱モジュール100として適切に使用することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、ヒートシンク20と筐体50のヒートシンク20に当接する面との間にグリース41が設けられているので、ヒートシンク20の熱を筐体50に伝達させやすくでき、筐体50を介してヒートシンク20の熱を放熱できる。したがって、ヒートシンク付き絶縁回路基板1の放熱性能をさらに高めることができる。
【0039】
[第一実施形態の第一変形例]
上記実施形態では、回路層12は、純度99質量%以上の純アルミニウムやアルミニウム合金等により構成される一層の金属層により構成されていることとしたが、これに限らず、例えば、回路層12は、複数の金属層により構成されることとしてもよい。
図3は、第一実施形態の第一変形例に係るLED放熱モジュール100Aの断面を示す断面図である。なお、以下の説明では、第一実施形態と同一又は略同一の部分については、説明を省略又は簡略化する。
【0040】
本変形例の回路層12は、
図3に示すように、セラミックス基板11に接合される第一回路層14と、第一回路層14の上面に接合される第二回路層15とを備えている。これらのうち第一回路層14は、純アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されている。一方、第二回路層15は、純銅や無酸素銅又は銅合金により構成されている。また、第一回路層14の厚さは0.02mm~0.2mmに設定され、第二回路層15の厚さは0.2mm~1mmに設定され、いずれも同形状(矩形平板状)とされる。
そして、第二回路層15、第一回路層14、セラミックス基板11、及び金属層13の順に、例えば、Al-Si系やAl-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより、接合されて絶縁回路基板10Aとなる。
【0041】
なお、本変形例では、絶縁回路基板10Aの回路層12Aが第一回路層14及び第二回路層15を備えていることから、上記第一実施形態の絶縁回路基板10よりもその厚さが大きい。このため、本変形例では、ヒートシンク当接部62の当接部622の下面623(ヒートシンク20の上面)から回路層当接部61の下面612までの寸法L6は、上記寸法L4より大きく、かつ、絶縁回路基板10Aと同じ厚さ若しくは若干小さく設定され、例えば2.5mm~2.8mmに設定されている。
【0042】
[第一実施形態の第二変形例]
上記実施形態では、絶縁回路基板10は、金属層13を有することとしたが、これに限らず、例えば、金属層13はなくてもよい。
図4は、第一実施形態の第二変形例に係るLED放熱モジュール100Bの断面を示す断面図である。なお、以下の説明では、第一実施形態と同一又は略同一の部分については、説明を省略又は簡略化する。
【0043】
本変形例では、絶縁回路基板10Bは、金属層13を備えていない。このため、セラミックス基板11の回路層12とは反対側の面にヒートシンク20が直接接合されている。また、本変形例では、絶縁回路基板10Bが金属層13を備えていないことから、上記第一実施形態の絶縁回路基板10よりもその厚さが小さい。このため、本変形例では、ヒートシンク当接部62の当接部622の下面623(ヒートシンク20の上面)から回路層当接部61の下面612までの寸法L7は、上記寸法L4より小さく、かつ、絶縁回路基板10Bと同じ厚さ若しくは若干小さく設定され、例えば0.5mm~0.7mmに設定されている。
【0044】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面を用いて説明する。
図5は、第二実施形態に係るLED放熱モジュール100Cの断面を示す断面図である。本実施形態のLED放熱モジュール100Cは、ヒートシンク20Cが複数のピン状フィン201を備えている点及び筐体50Cが複数のピン状フィン201を収容する開口部501を備えている点で上記第一実施形態と異なる。
なお、以下の説明では、第一実施形態と同一又は略同一の部分については、説明を省略又は簡略化する。
【0045】
本実施形態では、
図5に示すように、ヒートシンク20Cの絶縁回路基板10との接合面とは反対側の面に、複数のピン状フィン201が立設されている。これら複数のピン状フィン201の高さは0.5~10mmとされている。なお、ヒートシンク20Cに立設されるフィンの形状は特に限定されるものではなく、本実施形態のようなピン状フィン201の他、ひし形フィンや帯板状のフィン等を形成することもできる。
また、筐体50は、開口部501を備え、この開口部501は、ヒートシンク20Cに立設された複数のピン状フィン201に対向するように配置され、ヒートシンク付き絶縁回路基板1Cが筐体50に固定された際に、複数のピン状フィン201を収容する。
【0046】
なお、本実施形態では、ヒートシンク20Cと筐体50との間には、グリース41を配置しないこととしたが、これに限らず、これらの間にグリース41を配置することとしてもよい。
本実施形態では、ヒートシンク20Cが複数のピン状フィン201を有している場合でも、筐体50に固定された際に開口部501内に収容されるので、ヒートシンク付き絶縁回路基板1Cの放熱性能を高めることができる。
【0047】
[第三実施形態]
次に本発明の第三実施形態について、図面を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るLED放熱モジュール100Dの断面を示す断面図である。
本実施形態のLED放熱モジュール100Dは、上記第二実施形態と同様にヒートシンク20Cを備え、かつ筐体50Cが開口部501を備えている点、の他、押圧部材60に代えて、押圧部材60Dを備えている点で上記第一実施形態と異なる。
なお、以下の説明では、第一及び第二実施形態と同一又は略同一の部分については、説明を省略又は簡略化する。
【0048】
本実施形態の押圧部材60Dは、
図6に示すように、回路層12の外周部Ar1に当接する回路層当接部61Dと、回路層当接部61Dに接続され、筐体50Cに当接することで回路層当接部61Dにより回路層12の外周部Ar1を筐体50Cに向けて押圧させる筐体当接部63と、を有している。この回路層当接部61Dは、第一実施形態の回路層当接部61と略同形状に形成され、矩形状の開口部611を備えている。また、回路層当接部61Dの幅寸法L9は、第一実施形態の回路層当接部61の幅寸法L1よりも大きく設定される。具体的には、
図6に示すように、回路層当接部61Dの幅寸法L9は、10mm以上30mm以下に設定され、その外周端部がヒートシンク20Cの外周端部よりも外側に位置している。また、第一実施形態と同様に、回路層当接部61Dの開口端部から2mm~5mmの範囲が回路層12の外周部Ar1に当接する。すなわち、外周部Ar1の幅寸法L0は、上記第一実施形態と同じとされる。
【0049】
回路層当接部61Dの外周端部には、筐体当接部63が接続されている。この筐体当接部63は、回路層当接部61Dの下面612の外周端部から筐体50Cに向けて直線状に延びる筒状部631と、筒状部631の下端部から外側に向かって延びる当接部632と、を備えている。これらのうち、当接部632は、
図6に示すように、その下面633が筐体50Cの上面に当接する。また、筐体当接部63の幅寸法L2(筐体50Cと当接する面の幅寸法)は、上記第一実施形態のヒートシンク当接部62の幅寸法L2より小さく、例えば、10mm以上15mm以下に設定される。さらに、当接部632の下面633(筐体50の上面)から回路層当接部61Dの下面612までの寸法L11は、絶縁回路基板10及びヒートシンク20のピン状フィン201を除く部位と同じ厚さ若しくは若干小さく設定され、例えば7mm~7.3mmに設定されている。また、押圧部材60Dの幅寸法L8は上記第一実施形態の押圧部材60の幅寸法L5に比べて大きく、かつ、ヒートシンク20Cの幅より大きく設定されている。この幅寸法L8は、例えば、60mm以上に設定されている。
【0050】
このような押圧部材60Dは、回路層当接部61Dの下面612が回路層12の外周部Ar1に当接させられ、かつ筐体50Cの上面に当接させられた状態で、固定部材70が筐体当接部63を貫通して筐体50Cに固定される。これにより、筐体当接部63が筐体50Cに向けて押圧されることとなり、これにより回路層12の外周部Ar1が筐体50Cに向けて押圧された状態となる。これにより、回路層12の実装面Ar2の平面度が向上する。
なお、本実施形態では、ヒートシンク20Cは、固定部材70により固定されていないため、ヒートシンク20Cは回路層12側から見て若干凹状に沿っている可能性がある。このため、
図6には図示していないが、筐体50Cのヒートシンク20Cに当接する部位とヒートシンク20Cとの間にグリース41を配置するとよい。
【0051】
本実施形態では、押圧部材60Dの回路層当接部61Dに接続された筐体当接部63が筐体50Cに向けて押圧された状態で筐体50Cに固定されるので、ヒートシンク20Cの反りの程度にかかわらず、回路層12の平面度を確実に向上できる。
【0052】
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、回路層12,12Aの実装面Ar2には、LED素子30を搭載することとしたが、これに限らず、その他の電子部品を搭載してもよい。すなわち、本発明は、LED放熱モジュールに限らず、パワーモジュール等にも適用できる。
【実施例】
【0053】
絶縁回路基板として、窒化珪素(Si3N4)により形成された平面視で70mm×70mm、厚さ0.32mmのセラミックス基板の一方の面にA6063系のアルミニウム合金からなる回路層、他方の面に4Nアルミからなる金属層を接合したものを用い、これに、外径が100mm×100mm、厚さ4mmのヒートシンクを接合したヒートシンク付き絶縁回路基板を製造した。なお、これらの接合については、回路層、セラミックス基板、金属層及びヒートシンクをAl-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより接合し、ヒートシンク付き絶縁回路基板を製造した。
【0054】
そして、ヒートシンク付き絶縁回路基板の回路層(回路層の外周部の内側に位置する実装面)の中央に複数のLED素子からなるLED光源を1つ搭載し、LEDモジュールとし、このLEDモジュールを筐体に固定することによりLED放熱モジュールを製造した。実施例1では、上記第一実施形態に示した押圧部材を用いて回路層の外周部を筐体に向けて押圧した状態で筐体に固定してLED放熱モジュールとした。なお、絶縁回路基板の厚さとヒートシンクの上面から押圧部材の下面までの距離とは、同じとした。一方、比較例1では、LEDモジュールを、押圧部材を用いずに筐体にねじ固定して、LED放熱モジュールとした。
このようにして製造された実施例1及び比較例1のLED放熱モジュールについて、全光量に対する直進した光量の比率(光量比)を評価した。
【0055】
(回路層の実装面における反り量)
実装面の平面度は、回路層の上面における外周部の内側に位置する実装面(10mm×10mm)を測定面とし、AkroMetrix社製Thermoire PS200を用い、測定面のプロファイルから最小二乗面を求め、その最小二乗面を基準として、最高点と最低点の差分を反りして測定した。
【0056】
(光量比)
光量比は、全光量に対する直進した光量の比率であり、照度計(アズワン社製LM331)を用いて、測定した。具体的には、LED光源の先端から照度計の検出部までの距離を1000mmとし、LED光源の直径を10mm、検出部の直径も10mmとした。この条件下において、LED光源の全光量に対するLED光源から直進した光の光量の比率を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1から明らかなように、押圧部材により回路層の外周部を押圧した実施例1は、実装面の反りが5μmと小さいため、光量比が25.0%と高かった。一方、回路層を押圧部材により押圧しなかった比較例では、実装面の反りが30μmと大きいため、光量比が8.7%と低かった。このため、押圧部材により回路層の外周部を筐体に向けて押圧した状態で筐体に取り付けることにより、実装面の反りを小さくでき、LED放熱モジュールとして適切に使用できることがわかった。
【符号の説明】
【0059】
1 1C ヒートシンク付き絶縁回路基板
10 10A 10B 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 12A 回路層
13 金属層
14 第1回路層
15 第2回路層
20 20C ヒートシンク
201 ピン状フィン
30 LED素子
40 LEDモジュール
50 50C 筐体
501 開口部
60 60D 押圧部材
61 61D 回路層当接部
611 開口部
612 下面
62 ヒートシンク当接部
63 筐体当接部
621 631 筒状部
622 632 当接部
623 633 下面
100 100A 100B 100C 100D LED放熱モジュール