(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ベローズ型空気ばね
(51)【国際特許分類】
F16F 9/04 20060101AFI20221213BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20221213BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20221213BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F16F9/04
F16F9/32 V
F16J15/52 Z
F16J3/04 Z
(21)【出願番号】P 2018236902
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大倉 達也
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-009527(JP,B1)
【文献】特開2018-105454(JP,A)
【文献】特開平05-196079(JP,A)
【文献】特開昭61-256033(JP,A)
【文献】特開昭59-226724(JP,A)
【文献】特表2007-519868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00 - 9/58
F16J 3/00 - 3/06
15/16 -15/32
15/324-15/3296
15/46 -15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム膜から形成された中空筒状をなす空気ばね本体と、前記空気ばね本体の両端開口部にそれぞれ取り付けられた面板とを有するベローズ型空気ばねであって、
前記空気ばね本体の表面に膨出部分が生じた場合に前記膨出部分の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様が、前記空気ばね本体の軸心方向の少なくとも一部において前記空気ばね本体の表面の全周にわたって設けられ
、
前記模様は、前記空気ばね本体の表面の色に対して視認性の高い色で設けられている、
ことを特徴とするベローズ型空気ばね。
【請求項2】
前記模様は、前記空気ばね本体の表面の全域に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のベローズ型空気ばね。
【請求項3】
前記空気ばね本体は、その軸心方向に沿って並べられた少なくとも2つの大径部と、それら大径部の間に締め付けリングが取り付けられたくびれ部とを含んで構成され、
前記大径部は、前記大径部の軸心方向の中央に位置し外径が最も大きい箇所を含む中央領域と、前記中央領域から前記軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に小さくなる一対の端部領域とを有し、
前記模様は、前記端部領域の表面の全周、および前記くびれ部の表面の全周に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のベローズ型空気ばね。
【請求項4】
前記空気ばね本体は、大径部を含んで構成され、
前記大径部は、前記大径部の軸心方向の中央に位置し外径が最も大きい箇所を含む中央領域と、前記中央領域から前記軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に小さくなる一対の端部領域とを有し、
前記模様は、前記中央領域の表面の全周に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のベローズ型空気ばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズ型空気ばねに関する。
【背景技術】
【0002】
ベローズ型空気ばねは、空気の弾性を利用して振動を吸収するばねであって、鉄道車両や自動車、各種産業機器、建築物等に用いられている。
ベローズ型空気ばねは、ゴム膜などの可撓性材料から形成された中空筒状をなす空気ばね本体と、その空気ばね本体の両端開口部に取り付けられた下面板および上面板と、空気ばね本体のくびれ部に取り付けられた締め付けリングとを備えている。
【0003】
ゴム膜は、内面ゴム層と、外面ゴム層と、それらゴム層の間に配置される複数の補強層とが積層されて構成されている。
ベローズ型空気ばねは、例えば、下面板を、床などの下部構造体に取り付け、上面板を、産業機器などの上部構造体に取り付け、下面板の中央部に設けられた給気口から空気ばね本体の内部に空気を供給し、内圧を調整して高さを合わせることで上部構造体の振動を吸収するばねとして利用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで振動を吸収する際、空気ばね本体は伸縮するが、長期使用により伸縮が繰り返されると、ゴム層間の接着力が低下し、それらゴム層を透過する空気により、空気ばね本体の表面が膨出し、空気ばね本体の表面に膨出部分が生じることがある。
このような空気ばね本体の表面に生じる膨出部分の大きさがベローズ型空気ばねの交換時期の目安となっているが、空気ばね本体の平滑な表面の膨出部分を視認しにくく、膨出部分を見付けにくい。
また、ベローズ型空気ばねの交換時期の目安として、空気ばね本体の表面の膨出部分を実測することで大きさの測定を行うが、空気ばねの設置場所は機械下部などの狭い部分が多く、膨出部分の大きさを直接測定することが困難な場合も生じる。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、空気ばね本体の表面に生じた膨出部分を容易に視認できるとともに、膨出部分の膨出状態を識別して損傷度合い判別を容易に行なえ、交換基準を明確にする上で有利なベローズ型空気ばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ゴム膜から形成された中空筒状をなす空気ばね本体と、前記空気ばね本体の両端開口部にそれぞれ取り付けられた面板とを有するベローズ型空気ばねであって、前記空気ばね本体の表面に膨出部分が生じた場合に前記膨出部分の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様が、前記空気ばね本体の軸心方向の少なくとも一部において前記空気ばね本体の表面の全周にわたって設けられ、前記模様は、前記空気ばね本体の表面の色に対して視認性の高い色で設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記模様は、前記空気ばね本体の表面の全域に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記空気ばね本体は、その軸心方向に沿って並べられた少なくとも2つの大径部と、それら大径部の間に締め付けリングが取り付けられたくびれ部とを含んで構成され、前記大径部は、前記大径部の軸心方向の中央に位置し外径が最も大きい箇所を含む中央領域と、前記中央領域から前記軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に小さくなる一対の端部領域とを有し、前記模様は、前記端部領域の表面の全周、および前記くびれ部の表面の全周に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記空気ばね本体は、大径部を含んで構成され、前記大径部は、前記大径部の軸心方向の中央に位置し外径が最も大きい箇所を含む中央領域と、前記中央領域から前記軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に小さくなる一対の端部領域とを有し、前記模様は、前記中央領域の表面の全周に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気ばね本体の軸心方向の少なくとも一部において空気ばね本体の表面の全周にわたって模様が設けられているため、空気ばね本体の表面に生じた膨出部分を容易に視認できるとともに、膨出部分の膨出状態を識別して損傷度合いの判別を容易に行なえ、ベローズ型空気ばねの交換基準を明確にする上で有利となる。
また、模様を空気ばね本体の表面の全域に設けると、空気ばね本体の表面のいずれの箇所に膨出部分が生じても膨出部分を見つけ易い。
また、模様を膨出部分が生じ易い箇所のみに設けると、模様を設ける際のコストを削減する上で有利となる。
また、模様を大径部の中央領域の表面の全周のみに設けると、空気ばね本体の表面の膨出が模様の位置まで達した場合を交換時期の目安とすることで、ベローズ型空気ばねの交換基準を明確にする上で有利となる。
また、模様を、空気ばね本体の表面の色に対して視認性の高い色で設けると、膨出部分を見付け易く、また、膨出部分の膨出状態を識別して損傷度合いの判別を容易に行なえ、ベローズ型空気ばねの交換基準を明確にする上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態のベローズ型空気ばねの半部断面正面図である。
【
図2】本実施の形態のベローズ型空気ばねの表面に膨出部分が生じた状態の半部断面正面図である。
【
図3】(A)乃至(F)は空気ばね本体の表面に設けられる模様の変形例を示す図である。
【
図4】本実施の形態の変形例で、空気ばね本体の大径部の端部領域とくびれ部の端部領域に模様を設けたベローズ型空気ばねの正面図である。
【
図5】本実施の形態の変形例で、空気ばね本体の大径部の中央領域に模様を設けたベローズ型空気ばねの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
ベローズ型空気ばね10は、圧縮空気の弾力性を利用して軸心方向に振動を吸収するばね装置であって、鉄道車両や自動車、プレス機械などの各種産業機器、建築物の免震装置等に用いられている。
図1に示すように、ベローズ型空気ばね10は、ゴム膜から形成された中空筒状をなす蛇腹状の空気ばね本体12と、金属製の面板である下面板14および上面板16と、2つの締め付けリング18とを含んで構成されている。
空気ばね本体12を構成するゴム膜は、内層ゴムと、複数の補強層と、外層ゴムとを貼り合わせて接着した積層ゴムで形成されている。
【0010】
本実施の形態のベローズ型空気ばね10は、軸心方向を鉛直方向に向けて使用される。
空気ばね本体12は、下端に設けられた環板状の下取り付け板部20と、上端に設けられた環板状の上取り付け板部22と、それら下取り付け板部20と上取り付け板部22の間に空気ばね本体12の軸心方向に沿って並べられた3つの大径部24と、それら大径部24の間に設けられた2つのくびれ部26とを含んで構成されている。
また、下取り付け板部20の中心は、下開口部28Aとして形成され、上取り付け板部22の中心は上開口部28Bとして形成されている。
【0011】
各大径部24は、大径部24の軸心方向の中央に位置し最も外径が大きい箇所を含む中央領域24Aと、中央領域24Aから軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に小さくなる一対の端部領域24Bとを有している。
最も下位に位置する大径部24の下側の端部領域24Bの端部は、下取り付け板部20に接続され、最も上位に位置する大径部24の上側の端部領域24Bの端部は、上取り付け板部22に接続されている。
空気ばね本体12は、下開口部28Aと上開口部28Bを形成する下取り付け板部20と上取り付け板部22の内周端2002,2202の厚みが、他の箇所に比べて厚く形成されている。
【0012】
下面板14と上面板16は同一の輪郭で、円板部30と、円板部30の内周部に設けられた環状の突出部32とを含んで構成され、下面板14の円板部30に、空気ばね本体12内部へ空気やガスを供給するための給気口(不図示)が形成されている。
下面板14は、突出部32が下取り付け板部20の下開口部28Aに挿入され、突出部32の内周面が下取り付け板部20の内周端2002の外周面に合され、突出部32の径方向外側の下面板14の上面が下取り付け板部20の上面に合されて空気ばね本体12に取り付けられている。
同様に上面板16は、突出部32が上取り付け板部22の上開口部28Bに挿入され、突出部32の内周面が上取り付け板部22の内周端2202の外周面に合され、突出部32の径方向外側の上面板16の下面が上取り付け板部22の上面に合されて空気ばね本体12に取り付けられている。
【0013】
くびれ部26は、くびれ部26の軸心方向の中央に位置し最も外径が小さい箇所を含む中央領域26Aと、中央領域26Aから軸心方向に沿って離れるにつれて外径が次第に大きくなる一対の端部領域26Bとを有している。
一対の端部領域26Bは、上下方向において隣り合う大径部24の端部領域24Bに接続されている。
【0014】
締め付けリング18は、各くびれ部26の中央領域26Aに設けられている。
締め付けリング18は、金属製で、ベローズ型空気ばね10に供給された空気の内圧による膨れを抑制して形状を保持するものであり、空気ばね本体12のくびれ部26の中央領域26Aに巻き付けられ、ベローズ型空気ばね10の加硫成形時に中央領域26Aに一体的に取着される。
【0015】
ベローズ型空気ばね10は、下面部14を下部構造体Dに取り付け、上面部16を上部構造体Uに取り付けた後に、下面板14の給気口から空気を供給し、内圧を調整し上部構造体Uの高さを合わせることで上部構造体Uの振動を吸収するばねとして使用される。
ベローズ型空気ばね10は、内部の空気の弾性により空気ばね本体14が伸縮することでばねとして機能するが、この伸縮の際に空気ばね本体12が繰り返し屈曲することで、内層ゴムと補強層との間、各補強層の間、補強層と外層ゴムとの間の接着力が低下していく。
この接着力の低下により、空気ばね本体12の内部から透過してきた空気により空気ばね本体12の表面が局所的に膨出してしまうことがある。
【0016】
そこで、本実施の形態では、
図1に示すように、空気ばね本体12の表面が局所的に膨出した場合に、その膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、空気ばね本体12の軸心方向の少なくとも一部において空気ばね本体12の表面の全周にわたって設けられている。
本実施の形態では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、水平方向に延在する横線が等間隔で並べられることで構成され、模様40は空気ばね本体12の表面の全域に設けられている。
【0017】
なお、くびれ部26の中央領域26Aには締め付けリング18が取り付けられ、中央領域26Aは締め付けリング18で覆われるので、くびれ部26の中央領域26Aには模様40を設ける必要がなく、この場合にも模様40は空気ばね本体12の表面の全域に設けられていることになる。
これにより、
図2に示すように、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合に、膨出部分50において横線が歪んだり、横線間の隙間が広がることで、空気ばね本体12の表面の膨出を容易に視認することができる。
さらに、横線の歪みの状態や横線間の隙間の大きさにより、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、ベローズ型空気ばね10の交換時期を簡単に明確に判断できる。
【0018】
図3にはこのような模様40の例を列挙している。
図3(A)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、上下の向きを交互に替えた三角形を並べることで構成され、模様40は空気ばね本体12の表面の全域に連続的に設ける。
これにより、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50において三角形が変形することで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、三角形の変形の状態により、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
また、
図3(B)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、ドットを縦横に規則正しく並べることで構成されている。
この模様40によれば、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50においてドットが均等に並んでいない、すなわちドット間の隙間が不規則となることで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、ドットの隙間の大きさにより、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
【0019】
また、
図3(C)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、斜線が等間隔で並べられることで構成されている。
これにより、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50において斜線が歪んだり、斜線間の隙間が広がることで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、斜線の歪みの状態や斜線間の隙間の大きさにより、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
また、
図3(D)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、長方形を馬目地のように並べることで構成されている。
これにより、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50において長方形が変形することで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、長方形の変形の状態により、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
【0020】
また、
図3(E)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、正方形が縦横に並べられることで構成されている。
これにより、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50において正方形が変形することで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、正方形の変形の状態により、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
また、
図3(F)では、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40が、斜めに傾けた正方形が縦横に並べられることで構成されている。
これにより、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合、膨出部分50において正方形が変形することで、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を容易に視認することができる。
さらに、正方形の変形の状態により、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを判別することができ、空気ばね本体12の交換時期を簡単に明確に判断できる。
【0021】
このように、幾何学的で規則的な模様40を空気ばね本体12の表面の全域に周方向に連続的に設けることで、空気ばね本体12の任意の箇所が膨出した場合に、膨出部分50において模様40が変形して模様の規則性が変化するため、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を見付けやすい。
そして、膨出部分50の膨出状態と損傷度合いとを予め対応付けて定めておくことにより、模様40の変形状態から識別した膨出状態に対する損傷度合いを判別することができる。
さらに、どのくらいの損傷度合いが交換時期であるかを予め定めておくことで、交換するべきか否かを容易に判断できるため、交換基準を明確化できる。
すなわち、目視による空気ばね本体12の表面の膨出部分50の進行状況の確認が可能となるため、ベローズ型空気ばね10の点検の簡易化、明確化を図ることができる。
また、ベローズ型空気ばね10が故障する前に空気ばね本体12を交換できるため、ベローズ型空気ばね10の故障による上部構造体Uをなす機械のダウンタイムを削減する上で有利となる。
【0022】
次に、模様40を空気ばね本体12の表面に設ける方法としては、例えば、空気ばね本体12の製造工程において、レーザー光により模様40を焼き付ける方法が挙げられる。
また、モールドにベント溝として模様40を削り、空気ばね本体12を加硫することで空気ばね本体12の表面に模様40を転写させる方法を用いてもよい。
また、銀インクの塗布具である所謂銀ペンやその他の塗料により、空気ばね本体12の表面に模様40を印字する方法を用いてもよい。
また、模様40を有する薄膜のシートを空気ばね本体12の表面に接着させる方法を用いてもよい。
塗料による印字や、シートの接着により空気ばね本体12の表面に模様40を設ける場合、その幾何学的で規則的な模様40は、空気ばね本体12の表面の色に対して視認性の高い色で設けると、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を見付け易く、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを簡単に明確に判別する上で有利となる。
例えば、空気ばね本体12の表面が黒色である場合、黒色に対して視認性の高い白色、黄色、橙色などで模様40を設けると、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を見付け易く、膨出部分50の膨出状態を識別して損傷度合いを簡単に明確に判別する上で有利となる。
【0023】
次に、ベローズ型空気ばね10の変形例1について
図4を参照して説明する。
空気ばね本体12において、空気ばね本体14の伸縮時、下面板14および上面板16の取り付け位置の近傍である大径部24の端部領域24Bや、締め付けリング18の取り付け位置の近傍である大径部24の端部領域24Bとくびれ部26の端部領域26Bが大きく屈曲するため膨出しやすくなっている。
そこで変形例1では、それら大径部24の端部領域24Bとくびれ部26の端部領域26Bに模様40を設けたものであり、大径部24の中央領域24Aには模様40を設けていない。
変形例1によれば、表面の膨出が生じやすい空気ばね本体12の箇所のみの表面の全周に模様40が設けられているので、表面に膨出部分50が生じた場合、膨出部分50において模様40の規則性が変化するため、空気ばね本体12に生じた膨出分50を見付けやく、また、膨出部分50の膨出状態に対する損傷度合いを判別でき、交換基準を明確化でき、ベローズ型空気ばね10の点検の簡易化、明確化を図る上で有利となる。
また、膨出部分50が生じやすい空気ばね本体12の箇所の表面に模様40が設けられ、表面の膨出が生じにくい大径部24の中央領域24Aには模様40が設けられていないので、模様40を設ける際のコストを削減する上で有利となる。
【0024】
次に、ベローズ型空気ばね10の変形例2について
図5を参照して説明する。
変形例2では、変形例1とは逆に、模様40が大径部24の中央領域24Aの表面の全周に設けられ、大径部24の端部領域24Bとくびれ部26の端部領域26Bには模様40が設けられていない。
変形例2では、大径部24の端部領域24Bやくびれ部26の端部領域26Bの表面に膨出部分50が生じ、この膨出部分50が大径部24の中央領域24Aに達した場合、膨出部分50において模様40の規則性が変化するため、空気ばね本体12の表面の膨出部分50を視認することができる。
そして、空気ばね本体12の表面の膨出部分50が模様40の位置まで達した場合を交換時期の目安とすることで、空気ばね本体12の交換基準を明確にする上で有利となる。
【0025】
なお、本発明において、膨出部分50の膨出状態を識別可能とする幾何学的で規則的な模様40とは、言い換えると、膨出部分50において模様40が変形して模様40の規則性が変化し空気ばね本体12の表面の膨出部分50を見付けやすい模様40とは、具体的には、例えば、
図1、
図2の場合、水平方向に延在する横線の間隔が10cmや20cmのような大きい寸法では、膨出部分50において模様40が変形しにくく模様40の規則性の変化を見付けにくい。また、横線の間隔が1mmや2mmのような小さい寸法でも模様40の規則性の変化を見付けにくい。
したがって、このような事情から水平方向に延在する横線の間隔は、5mm≦20mmであることが好ましく、さらに、5mm≦10mmであることがより好ましい。この間隔は
図3(B)のドットや
図3(C)の斜線の場合も同様である。
また、
図3(E)の模様40のように、線により区画された複数の正方形の領域で模様40が構成される場合には、
図1、
図2の模様40と同様な理由から、正方形の互いに対向する辺の間隔が5mm≦20mmであることが好ましく、さらに、5mm≦10mmであることがより好ましく、正方形の領域の面積は、25mm
2≦400mm
2であることが好ましく、さらに、25mm
2≦100mm
2であることがより好ましい。
同様な理由から
図3(A)、(D)、(F)の模様40の場合も、線で区画された領域の面積が25mm
2≦400mm
2であることが好ましく、さらに、25mm
2≦100mm
2であることがより好ましい。
【0026】
本実施の形態のベローズ型空気ばね10は、空気ばね本体12に3つの大径部24が設けられ、2つのくびれ部26にそれぞれ締め付けリング18を取り付けた例を示したが、大径部24を1つ、または4つ以上設ける構成としてもよく、大径部24が1つの場合には締め付けリング18は省略される。
また、本実施の形態のベローズ型空気ばね10の空気ばね本体12に設けられる幾何学的で規則的な模様40として、
図1、
図3に例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、空気ばね本体に設ける幾何学的で規則的な模様40は、規則性を有しており膨出部50の膨出状態が識別可能な模様40であれば他の模様であってもよい。
また、本実施の形態では、模様40を設ける方法の例を上述のように説明したが、公知の他の方法によって規則的な模様40を設けるなど任意である。
【符号の説明】
【0027】
10 ベローズ型空気ばね
12 空気ばね本体
14 下面板
16 上面板
18 締め付けリング
20 下取り付け板部
22 上取り付け板部
24 大径部
24A 中央領域
24B 端部領域
26 くびれ部
26A 中央領域
26B 端部領域
28A 下開口部
28B 上開口部
40 模様
50 膨出部分