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特許7192484活性エネルギー線硬化型印刷インキおよびその印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型印刷インキおよびその印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20221213BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20221213BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/03
C09D11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018240219
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100742
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真樹
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293832(JP,A)
【文献】特開2002-327136(JP,A)
【文献】特開2002-363446(JP,A)
【文献】国際公開第18/117079(WO,A1)
【文献】国際公開第09/099253(WO,A1)
【文献】特開2001-323037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/101
C09D 11/03
C09D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤(A)と、二重結合を有する化合物(B)と、酸化還元触媒(C)と、有機還元剤(D)と、樹脂(E)とを含んでなる活性エネルギー線硬化型印刷インキであって、
前記光増感剤(A)が、ナフタセン誘導体、アントラキノン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、キサンテン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、フェノチアジン誘導体、ケトクマリン誘導体、及びC60フラーレンからなる群より選ばれる一種以上であり、
前記酸化還元触媒(C)が、オキシアセチルアセトンバナジウム、オキシ硫酸バナジウム、オキシナフテン酸バナジウム、オキシテトラフェニルポルフィリナトバナジル、オキシオクタエチルポルフィリナトバナジル、オキシテトラ-t-ブチルフタロシアニンバナジル、第1コバルトアセチルアセトナト、第2コバルトアセチルアセトナト、ナフテン酸第1コバルト、ナフテン酸第2コバルト、ステアリン酸第1コバルト、ステアリン酸第2コバルト、酢酸コバルト、テトラフェニルポルフィリナトコバルト、オクタエチルポルフィリナトコバルト、オキシテトラ-t-ブチルフタロシアニンコバルト、ステアリン酸第1マンガン、ステアリン酸第2マンガン、第1マンガンアセチルアセトナト、第2マンガンアセチルアセトナト、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、テトラフェニルポルフィリナトマンガン、オクタエチルポルフィリナトマンガン、テトラ-t-ブチルフタロシアニンマンガン、鉄(III)アセチルアセトナト、鉄(III)ベンゾイルアセトナト、テトラフェニルポルフィリナト鉄(III)クロライド、テトラフェニルポルフィリナト鉄(III)クロライド、オクタエチルポルフィリナト鉄(III)クロライド、テトラ-t-ブチルフタロシアニン鉄(III)クロライド、ナフテン酸鉄(III)フェロセン、シクロペンタジエニル-クメン鉄ヘキサフルオロホスフェート、鉄(II)-o-フェナントロリン、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、水酸化鉄(II)ヘキシアノ鉄(II)酸塩(フェロシアン化物)、鉄(II)アセチルアセトナト、鉄(II)ベンゾイルアセトナト、テトラフェニルポルフィリナト鉄(II)、テトラフェニルポルフィリナト鉄(II)、オクタエチルポルフィリナト鉄(II)、テトラ-t-ブチルフタロシアニン鉄〈II〉クロライド、グルコン酸鉄、チタニルアセチルアセトナト、チタノセン、ジシクロペンタジエニルチタニウム(II)ジクロリド、オキシチタニウムアセチルアセトナト、硫酸銅(I)、塩化銅硫酸銅(I)、硝酸銅硫酸銅(I)、及び水酸化銅硫酸銅(I)グルコン酸銅からなる群より選ばれる一種以上であり、
前記有機還元剤(D)が、アスコルビン酸及びその誘導体、バルビツール酸及びその誘導体、リボフラビン及びその誘導体、カテコール及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、ハイドロキノン及びその誘導体、亜ジチオン酸アニオン、亜硫酸アニオンの塩、スルフィン酸、並びにスルフィン酸塩からなる群より選ばれる一種以上である、活性エネルギー線硬化型印刷インキ
【請求項2】
光増感剤(A)が、200~900nm領域の光吸収性を有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項3】
二重結合を有する化合物(B)が、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する化合物を含む請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項4】
樹脂(E)が、ロジン変性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキによって印刷された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型印刷インキおよびその印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリレート化合物等の反応性化合物を含む組成物は、開始剤から発生した活性種により容易にラジカル重合を起こし、硬化物を形成することが知られている。これらの組成物は様々な分野で使用されており、例えば、印刷インキ、オーバーコートワニス、塗料、接着剤、フォトレジスト、3D造形物等を挙げることができる。
【0003】
活性エネルギー線硬化型印刷インキは、(メタ)アクリレート化合物等の活性エネルギー線硬化性を示す二重結合を有する化合物を構成成分として含有しており、活性エネルギー線照射とともに瞬時に硬化し、上記二重結合を有する化合物の3次元架橋による強靭な皮膜を形成する。瞬時に硬化することから、印刷直後に後加工を行うことが出来るため、生産性向上および意匠の保護のために強い皮膜が要求される包装用パッケージ印刷や商業分野におけるフォーム印刷等において活性エネルギー線硬化型印刷インキが好適に使用されている。
【0004】
近年、活性エネルギー線硬化型印刷インキは、医療品および食料品のパッケージ用途等にも使用されつつある。印刷インキ中における、ラジカル重合を引き起こす活性種を発生する光重合開始剤は低分子化合物であるため、ラジカル重合に関与しなかったものは硬化皮膜中に取り残されてしまう。硬化皮膜中に残留する光重合開始剤は、硬化皮膜表面への滲み出しによる臭気、内容物中への浸透による内容物の汚染、品質劣化の懸念がある。よって、印刷インキに含まれる材料の中でも、とりわけ光重合開始剤は可能な限り使用量を減らすか、臭気や内容物の汚染、品質劣化の問題を引き起こさない材料を使うことが求められている。
【0005】
一方、ラジカル重合において、酸素による硬化阻害は積年の課題である。酸素が存在する環境下でラジカル重合反応を行う場合、光重合開始剤から発生したラジカル重合を引き起こす活性種と酸素とが先に反応してしまい、低活性なラジカルが生成し、硬化不良等の問題の原因となる。この酸素阻害を改善する為に、窒素などの不活性雰囲気下で重合反応を行うか、光重合開始剤の使用量を増やすかの対応となり、コストや安全面で大きな課題がある。
【0006】
近年、硬化阻害の最大の要因である酸素を活用した、重合又は硬化反応の研究が行われている。例えば、ローズベンガルに光照射する事で発生した一重項酸素と特定の共役ジエン構造との反応を用いた光硬化型接着剤が提案されている。(特許文献1)。しかしながら、フラン環のような特定の共役ジエン構造を有したもの以外、硬化反応は進行せず、非常に用途が限定されている。
【0007】
更に、同じくローズベンガルに光照射する事で発生した一重項酸素を、有機還元剤であるアスコルビン酸を用いて過酸化水素に変換し、更にアスコルビン酸により過酸化水素からラジカル重合開始可能な活性種であるヒドロキシラジカルを生成し、反応性化合物であるアクリレート化合物をラジカル重合した報告がある(非特許文献1)。しかしながら、重合に要する時間が非常に長時間であり、作業時間やコストに大きな課題がある。
【0008】
したがって、硬化皮膜中に残留し、硬化皮膜表面への滲み出しによる臭気、内容物中への浸透による内容物の汚染、品質劣化の懸念がある従来の光重合開始剤を使用することなく、ラジカル重合性(転換率)が高いラジカル重合を引き起こす重合又は硬化反応は未だないのが現状であり、活性エネルギー線硬化型印刷インキにおいても大きな問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2009/099253号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Macromolecules 2017,50.1832-1846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、臭気やマイグレーションの原因となり得る光重合開始剤や熱重合開始剤を使用しなくてもラジカル重合性(転換率)が高く、硬化性の良好な活性エネルギー線硬化型印刷インキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、光増感剤(A)と、二重結合を有する化合物(B)と、酸化還元触媒(C)と、有機還元剤(D)と、樹脂(E)とを含んでなる活性エネルギー線硬化型印刷インキに関する。
【0013】
また、本発明は、光増感剤(A)が、200~900nm領域の光吸収性を有する上記活性エネルギー線硬化型印刷インキに関する。
【0014】
また、本発明は、二重結合を有する化合物(B)が、アクリロイル基および/またはメタアクリロイル基を有する化合物を含む上記活性エネルギー線硬化型印刷インキに関する。
【0015】
また、本発明は、樹脂(E)がロジン変性樹脂を含むことを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型印刷インキに関する。
【0016】
さらに、本発明は、上記活性エネルギー線硬化型印刷インキによって印刷された印刷物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、硬化皮膜中に残留し、硬化皮膜表面への滲み出しによる臭気、内容物中への浸透による内容物の汚染、品質劣化の懸念がある重合開始剤を使用することなく、硬化性の良好な活性エネルギー線硬化型印刷インキを提供することが出来た。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
なお、本明細書では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」とは、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、並びに「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
【0019】
<光増感剤(A)>
本発明において、光増感剤(A)とは、活性エネルギー線を吸収して励起し、励起エネルギーを酸素に与え得るものを指す。詳細には、活性エネルギー線を吸収することにより励起し、その励起三重項エネルギーが酸素分子へエネルギー移動することにより、一重項酸素を発生させ得るものを指す。光増感剤(A)は、紫外(200nm)~近赤外(900nm)領域に光吸収性を有するものが好ましく、三重項エネルギーレベルが100kJ/mol以上あるものが好ましく、励起一重項から励起三重項への項間交差効率が0.01以上であるものが好ましい。
【0020】
光増感剤(A)としてとしては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体等の縮合多環芳香族誘導体、アクリドン誘導体、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、フルオレセイン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、フェノチアジン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、アゾ化合物、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、C60フラーレン等が挙げられ、その他更に具体的には大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素及び増感剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられる。これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いても構わない。
【0021】
好適に用いられる光増感剤(A)としては、入手のし易さ、一重項酸素の発生量能から、例えば、ルブレン等のナフタセン誘導体、パープリン等のアントラキノン誘導体、アクリジン等のアクリジン誘導体、プロトポルフィリンIX等のポルフィリン誘導体、エオシンY、ローズベンガル等のキサンテン誘導体、テトラフェニルポルフィリン等のテトラフェニルポルフィリン誘導体、メチレンブルー等のフェノチアジン誘導体、3-ケトクマリン等のケトクマリン誘導体、C60フラーレン等が挙げられる。
【0022】
本発明において特に好適に用いられる光増感剤(A)としては、キサンテン誘導体が挙げられ、入手のし易さ、一重項酸素の発生量能に加えて、化合物(B)やロジン樹脂(E)との相溶性等の点から、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表されるフルオレセイン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
(式中、R1~R10は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、アミノ基を表す。)
【0025】
【化2】
【0026】
(式中、R11~R20は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、アミノ基を表す。式中L+は、任意のカチオンを表す。)
【0027】
一般式(1)および一般式(2)におけるR1~R20は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、アミノ基を表し、入手のし易さ、一重項酸素の発生量から、R1~R4、R11~R14が塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはニトロ基でかつ、R7~R10、R17~R20が水素原子または塩素原子が好ましい。
【0028】
一般式(2)中のL+は、任意のカチオンを表し、入手のし易さ等からナトリウムカチオン、カリウムカチオン、トリエチルアンモニウム等のアンモニウムカチオン、1-ヘキサデシルピリジニウムカチオンが好ましい。
【0029】
光増感剤(A)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
2’,4’,5’,7’-テトラブロモ‐フルオロセイン(Solvent Red43)、2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩(エオシンY、Acid Red87)、4’,5’-ジブロモ-2’,7’-ジニトロ-フルオロセイン-ナトリウム塩(エオシンB、Acid Red91)、2’,7’-ジクロロ-フルオロセイン、2’,7’-ジクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩、4’,5’-ジブロモ-フルオロセイン(Solvent Red72)、4’,5’-ジブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩、2’,7’-ジブロモ-フルオロセイン、2’,7’-ジブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩、4’,5’-ジクロロ-フルオロセイン、4’,5’-ジクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩、4’,5’-ジヨード-フルオロセイン(Solvent Red73)、4’,5’-ジヨード-フルオロセイン-ナトリウム塩、2’,7’-ジヨード-フルオロセイン、2’,7’-ジヨード-フルオロセイン-ナトリウム塩、トリブロモ-フルオロセイン、トリブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩、2’,4’,5’,7’-テトラクロロ-フルオロセイン、2’,4’,5’,7’-テトラクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩、2’,4’,5’,7’-テトラヨード-フルオロセイン、2’,4’,5’,7’-テトラヨード-フルオロセイン‐ナトリウム塩(エリスロシンB、Acid Red51)、フルオロセイン(Solvent Yellow94)、フルオロセイン-ナトリウム塩、4-アミノフルオロセイン、5-アミノフルオロセイン、3,4,5,6-テトラクロロ-フルオロセイン、3,4,5,6-テトラクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩、エオシン-1-ヘキサデシルピリジニウム塩、2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-3,4,5,6-テトラクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩(フロキシンB、Acid Red92)、2’,4’,5’,7’-テトラヨード-3,4,5,6-テトラクロロ-フルオロセイン-ナトリウム塩(ローズベンガル、Acid Red94)、2’,4’,5’,7’-テトラヨード-3,4,5,6-テトラクロロ-フルオロセイン-ビス(トリエチルアンモニウム)塩。
【0030】
本発明では、光増感剤(A)として、上記の光増感剤を単独で、または2種類以上組み合わせて使用することが出来る。光増感剤(A)の配合量は、後述する化合物(B)100質量部に対して、0.001~20質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。0.001質量部以上であると、活性エネルギー線照射時に発生する一重項酸素の量が十分であり、所望のラジカル重合性(転換率)を得る事が出来、十分な硬度の重合物を得る事が出来たり、未反応モノマーの残留量を抑制する事で、臭気やマイグレーションの問題改善に繋がる。また、20質量部以下であると、塗膜内部に十分活性エネルギー線が透過する為、未反応モノマーの残留量が抑制されることで、臭気やマイグレーションの問題改善に繋がる。
【0031】
<二重結合を有する化合物(B)>
本発明において、二重結合を有する化合物(B)(以下「化合物(B)」と略記することがある)は、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。化合物(B)は、そのものが重合性組成物に活性エネルギー線を照射した際に発生した活性種によって重合・架橋する。尚、化合物(B)は後述する樹脂(E)を除くものである。
【0032】
化合物(B)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
スチレン、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-メチルピロリドン、アクリロイルモルホリン等の単官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=2~20)、アルカン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、アルカン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジ(メタ)アクリレート等の2官能ビニル化合物、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリ(メタ)アクリレート等の3官能ビニル化合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラ(メタ)アクリレート等の4官能ビニル化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能ビニル化合物。
【0033】
化合物(B)は、上記1種だけを用いても良いし、あるいは、複数種を併用しても良い。
【0034】
<酸化還元触媒(C)>
本発明において、酸化還元触媒(C)は、原子価状態が2以上の状態で存在する事の出来る金属塩又は錯体である。酸化還元触媒(C)は、後述する有機還元剤(D)によって変換された過酸化水素を酸化還元反応により分解し、活性ラジカルを発生させる役割を果たしている。
【0035】
酸化還元触媒(C)の具体例を以下に示すが、本発明に用いる酸化還元触媒(C)は、これらに限定されるものではない。
【0036】
オキシアセチルアセトンバナジウム、オキシ硫酸バナジウム、オキシナフテン酸バナジウム、オキシテトラフェニルポルフィリナトバナジル、オキシオクタエチルポルフィリナトバナジル、オキシテトラ-t-ブチルフタロシアニンバナジル等のオキシバナジウム塩あるいは錯体、第1コバルトアセチルアセトナト、第2コバルトアセチルアセトナト、ナフテン酸第1コバルト、ナフテン酸第2コバルト、ステアリン酸第1コバルト、ステアリン酸第2コバルト、酢酸コバルト、テトラフェニルポルフィリナトコバルト、オクタエチルポルフィリナトコバルト、オキシテトラ-t-ブチルフタロシアニンコバルト等のコバルト塩あるいは錯体、ステアリン酸第1マンガン、ステアリン酸第2マンガン、第1マンガンアセチルアセトナト、第2マンガンアセチルアセトナト、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、テトラフェニルポルフィリナトマンガン、オクタエチルポルフィリナトマンガン、テトラ-t-ブチルフタロシアニンマンガン等のマンガン塩あるいは錯体、鉄(III)アセチルアセトナト、鉄(III)ベンゾイルアセトナト、テトラフェニルポルフィリナト鉄(III)クロライド、テトラフェニルポルフィリナト鉄(III)クロライド、オクタエチルポルフィリナト鉄(III)クロライド、テトラ-t-ブチルフタロシアニン鉄〈III〉クロライド、ナフテン酸鉄(III)フェロセン、シクロペンタジエニル-クメン鉄ヘキサフルオロホスフェート、鉄(II)-o-フェナントロリン、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、水酸化鉄(II)ヘキシアノ鉄(II)酸塩(フェロシアン化物)、鉄(II)アセチルアセトナト、鉄(II)ベンゾイルアセトナト、テトラフェニルポルフィリナト鉄(II)、テトラフェニルポルフィリナト鉄(II)、オクタエチルポルフィリナト鉄(II)、テトラ-t-ブチルフタロシアニン鉄〈II〉クロライド、グルコン酸鉄等の鉄塩あるいは錯体、チタニルアセチルアセトナト、チタノセン、ジシクロペンタジエニルチタニウム(II)ジクロリド、オキシチタニウムアセチルアセトナト等のチタン塩あるいは錯体。硫酸銅(I)、塩化銅硫酸銅(I)、硝酸銅硫酸銅(I)、水酸化銅硫酸銅(I)グルコン酸銅等の銅塩あるいは錯体。
【0037】
本発明では、酸化還元触媒(C)として、上記の化合物を単独で、または2種類以上組み合わせて使用することが出来る。
【0038】
酸化還元触媒(C)は、触媒機能の面から、銅(I)、鉄(II)またはコバルト(II)の塩が好ましく、入手のし易さ等から硫酸鉄(II)が特に好ましい。
【0039】
酸化還元触媒(C)は、化合物(B)100質量部に対して、0.001~5質量部である事が好ましく、0.005~1質量部であることがより好ましい。0.001質量部以上であると、過酸化水素を分解し発生する活性ラジカルの量が、所望のラジカル重合性(転換率)を得る為に十分な量となることから、未反応の化合物(B)の残留量の削減に繋がり、臭気やマイグレーションの問題改善に繋がる。また、5質量部以下であると、酸化還元触媒(C)由来の着色が抑制される。
【0040】
<有機還元剤(D)>
本発明において、有機還元剤(D)は、ヒドリド移動による還元、つまりは水素供与体となり得るものである。有機還元剤(D)は、光増感剤(A)に活性エネルギー線を照射する事で発生した一重項酸素に水素を供与して過酸化水素を発生させる役割を果たす。
【0041】
有機還元剤(D)の具体例を以下に示すが、本発明に用いる有機還元剤(D)は、これらに限定されるものではない。
【0042】
アスコルビン酸及びその誘導体、バルビツール酸及びその誘導体、リボフラビン及びその誘導体、カテコール及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、ハイドロキノン及びその誘導体、亜ジチオン酸アニオン又は亜硫酸アニオンの塩、スルフィン酸、およびスルフィン酸塩。
【0043】
有機還元剤(D)は、化合物(B)100質量部に対して、0.01~5質量部である事が好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましい。0.01質量部以上であると、一重項酸素を還元して発生する過酸化水素が十分な量となる事で、ラジカル重合性(転換率)が得る事が可能となり、未反応の化合物(B)の残留量の削減に繋がり、臭気やマイグレーションの問題改善に繋がる。
【0044】
<樹脂(E)>
樹脂(E)としては、ラジカル重合性を有する樹脂と有しない樹脂とがある。ラジカル重合性を有する樹脂としては、ポリオール、多塩基酸および(メタ)アクリル酸のエステル化物、さらにはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ラジカル重合性を有しない樹脂は熱硬化性または熱可塑性樹脂等があり、例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
上記の樹脂の内、二重結合を有する化合物(B)との相溶性の観点から、ジアリルフタレート樹脂が好ましい。また、基材への密着性の観点から、ロジン変性樹脂が好ましい。ロジン変性樹脂とは、環式ジテルペン骨格を有する樹脂であり、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂(マレイン化ロジンとも称する)、ロジンエステル(ロジン変性アルキッド樹脂、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。
【0047】
ロジン変性フェノール樹脂としては、石炭酸、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、(ターシャリ)ブチルフェノール、(ターシャリ)オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ヘキシルフェノールおよびこれらの混合物等のフェノール類とホルムアルデヒドとを縮合反応させたレゾールまたはノボラックフェノール樹脂と、ロジン類(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をクロマン化反応させ、更にグリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオールをあるいはp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等の酸触媒を使用しエステル化反応させた、重量平均分子量1~100万、好ましくは3~15万の樹脂を含むものが挙げられる。
【0048】
ロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂としては、ロジン酸類とマレイン酸に代表されるα、β-エチレン性不飽和カルボン酸とを付加反応させ、または該無水物を付加反応させ、更に、多価アルコールを反応させたものである。
【0049】
本明細書においてロジン酸類とは、環式ジテルペン骨格を有する有機一塩基酸及びその誘導体を意味する。ロジン酸類は、例えば、ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、およびこれらの化合物のアルカリ金属塩である。具体的には、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d-ピマル酸、イソ-d-ピマル酸、ポドカルプ酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられ、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然樹脂の形態で使用する事が取扱い上好ましく、更に、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸との反応性を考慮すると、アビエチン酸のような共役二重結合を有するロジン酸が好ましい。
【0050】
さらに、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、桂皮酸、2,4-ヘキサジエノ酸等およびこれらの無水物が挙げられる。
【0051】
多価アルコールとしては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば2価アルコールとして、直鎖状アルキレン2価アルコールである1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等が、分岐状アルキレン2価アルコールである2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が、環状アルキレン2価アルコールである1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等、さらにポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0052】
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状及び環状多価アルコールが挙げられる。
【0053】
ロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂は、上述したロジン酸類とα、β-エチレン性不飽和カルボン酸とを付加反応させ、次いで多価アルコール化合物との反応により得られるものである。反応は、ロジン酸類中の共役二重結合とα、β-エチレン性不飽和カルボン酸中の二重結合とのディールスアルダー付加反応、およびロジン酸類またはα、β-エチレン性不飽和カルボン酸中のカルボン酸と多価アルコール化合物中の水酸基とのエステル化反応の2種が起こり得るものである。ロジン酸類とα、β-エチレン性不飽和カルボン酸との付加反応生成物は多価カルボン酸となる為、多価アルコール化合物とのエステル化反応により高分子化が可能となる。更に活性エネルギー線照射時に硬化阻害成分となるロジン酸類中の共役二重結合が付加反応により消失し、ロジン酸類由来による多環構造導入により、乳化特性、高速印刷性、硬化性等の印刷適性と皮膜強度を両立する事が可能となる。上記付加反応とエステル化反応は、同時に行っても良いし、どちらかを先に行っても良い。
【0054】
ディールスアルダー付加反応は、温度120℃~250℃の範囲で好適に行われる。ロジン酸類の50~100モル%、より好ましくは70~100モル%が付加反応に供されていることが好ましい。さらに好ましくは、ロジン酸類中に含有される共役二重結合の80~100モル%が反応に供されていることが好ましい。50モル%未満では、共役二重結合による硬化阻害が起こりやすく、また最終的に得られるロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂の分子量が大きくなり難く好ましくない。
【0055】
また、エステル化反応は、常法に従って行うことが出来る。通常150℃から300℃の範囲で行われるが、使用する化合物の沸点および反応性を考慮して決定することが出来る。また、これらの反応においては、必要に応じて触媒を用いる事が可能である。触媒としてはベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、硫酸、塩酸等の鉱酸、トリフルオロメチル硫酸、トリフルオロメチル酢酸等が挙げられる。さらに、テトラブチルジルコネート、テトライソブチルチタネート等の金属錯体、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属塩触媒等も使用可能である。これら触媒は、ロジン変性マレイン酸樹脂または、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂中0.01~5質量%の範囲で通常使用される。触媒使用による樹脂の着色を抑制するために、次亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィン等を併用することも出来る。
【0056】
ロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂は、必要に応じて一価アルコール化合物および上記α、β-エチレン性不飽和カルボン酸以外のカルボン酸含有化合物を反応させて得る事も可能である。一価アルコール化合物としては、直鎖状アルキル一価アルコールである1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-デカノール、2-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、2-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、2-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、2-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール等が挙げられる。また分岐状アルキル一価アルコールである2-プロピル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、4-メチル-3-ヘプタノール、6-メチル-2-ヘプタノール、2,4,4-トリメチル-1-ペンタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、イソノニルアルコール、3,7-ジメチル-1-オクタノール、2,4-ジメチル-1-ヘプタノール、2-ヘプチルウンデカノール等が挙げられる。また環状アルキル一価アルコールであるシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロペンタンメチロール、ジシクロヘキシルメタノール、トリシクロデカンモノメチロール、ノルボネオール、水添加ロジンアルコール(商品名:アビトール、ハーキュレス(株)社製)等が挙げられる。
【0057】
上記、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸以外の含有化合物としては、一塩基酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、イソクロトン酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ウンデシレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、ゴンドレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ニシン酸等の不飽和脂肪酸、安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸が挙げられる。多塩基酸としては、脂肪族多塩基酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライ酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、o-フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチル-ヘキサヒドロフタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロフタル酸、ハイミック酸、3-メチルハイミック酸、4-メチルハイミック酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等、およびこれらの無水物が挙げられる。さらに、天然油脂の脂肪酸、例えば、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、(脱水)ヒマシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、米ヌカ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、菜種油脂肪酸等、および該脂肪酸のダイマー酸、例えば、桐油ダイマー脂肪酸、アマニ油ダイマー脂肪酸等を用いることもできる。
【0058】
上記ロジン酸類、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸および多価アルコール化合物、および必要に応じて一価アルコール化合物およびカルボン酸化合物との反応により、ロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂が得られる。反応に供されるロジン酸類は、全反応化合物中10~40質量%の範囲が好ましい。10質量%以上用いる事で、ロジン酸類の多環構造に由来する乳化特性、皮膜強度等の物性が好適に発現する。また、40質量%以下にすることで、二重結合を有する化合物(B)へ容易に溶解する。さらに水酸基の総モル数1に対して、カルボン酸基の総モル数が0.5~2の範囲が反応制御上好ましい。
【0059】
上記反応により得られるロジン変性マレイン酸樹脂および、α、β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンエステル樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定ポリスチレン換算重量平均分子量3000~150000、酸価60以下、融点60℃以上が好ましい上記範囲内にあることで、印刷インキにした際の乳化適性、転移性、硬化性等が良好となる。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキにおいて、樹脂(E)は、化合物(B)100質量部に対して10~150質量部が好ましい。
【0061】
<顔料(F)>
本発明において、上記必須成分に加えて、顔料(F)を含んでも良い。顔料(F)を使用することによって、意匠性を付与することが可能となる。
【0062】
顔料(F)は、公知公用の各種顔料であってよく、無機顔料及び有機顔料を使用することが出来る。
【0063】
無機顔料の具体例としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、及びアルミニウム粉末等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、及びピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、
β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、及びピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、
銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、及びスルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、
キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料及び複素環式顔料等が挙げられる。公知公用の各種顔料が使用可能である。
【0064】
顔料(F)は、光増感剤(A)、化合物(B)、酸化還元触媒(C)、有機還元剤(D)、樹脂(E)からなるインキ成分100質量部に対して、5~150質量部である事が好ましい。5~150質量部であると、十分な着色効果が得られる。
【0065】
<その他成分(G)>
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、重合禁止剤、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を目的に応じて常法により添加し、使用することもできる。
【0066】
本発明における活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等を言うが、ラジカル性活性種を発生させ得るものであればいかなるエネルギー種でも良く、可視光線、赤外線、レーザー光線でも良い。エネルギーの付与をする光源として、250nm~900nmの波長領域に発光の主波長を有する光源による可視光線の照射が好ましい。250nm~900nmの波長領域に発光の主波長を有する光源の例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、カーボンアークランプ、重水素ランプ、蛍光灯、Nd-YAG3倍波レーザー、He-Cdレーザー、窒素レーザー、Xe-Clエキシマレーザー、Xe-Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー、250nm~900nmの波長領域に発光波長を有するLEDランプ光源などの各種光源が挙げられる。なお本明細書でいう、紫外線や可視光、近赤外線等の活性エネルギー線の定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
【0067】
本発明において、活性エネルギー線を照射する前に赤外線ヒーター等により活性エネルギー線硬化型印刷インキ層を加温したり、活性エネルギー線を照射後に赤外線ヒーター等により活性エネルギー線硬化型印刷インキ層を加温することは硬化を速く終了させるために有効である。
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、様々な基材上に印字や塗布することが可能であり、活性エネルギー線硬化型印刷インキを印字や塗布する基材は、上質紙等の非塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、白板紙、ボールコート等の板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートが挙げられる。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、通常湿し水を使用する平版オフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し印刷にも好適に用いられる。本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)等の印刷物に適用される。さらにオーバーコートワニスとして使用されることもある。
【0070】
<活性エネルギー線硬化型印刷インキの製造>
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、必要に応じて、上記、光増感剤(A)、化合物(B)、酸化還元触媒(C)、有機還元剤(D)、樹脂(E)、色材(F)、およびその他成分(G)を配合後、均一に混合することによって製造することができる。
【0071】
活性エネルギー線硬化型印刷インキは、常温から100℃の間で上記成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー等の練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【実施例
【0072】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、特に断りのない限り、例中、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0073】
分子量および酸価の測定方法について、以下に記載する。
《分子量》
数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HLC-8320GPC」を用いた。カラムは、「TSKgel SuperHZ 1000」、「TSKgel SuperHZ 2000」、「TSKgel SuperHZM-N」、「TSKgel MultiporeHXL-M」から選択して用い、溶媒としてはテトロヒドロフラン、測定温度40℃で行った。分子量は、分子量既知のポリスチレンの換算により決定した。
【0074】
《酸価(AV》
共栓三角フラスコ中に試料を、約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容積比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
乾燥状態の試料の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0075】
[実施例1]
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン(荒川化学工業社製)10部と無水マレイン酸5部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間加熱撹拌する事により、反応混合物を得た。次に、上記反応混合物に、安息香酸16部と、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物41部と、ペンタエリスリトール28部と、触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、230℃で14時間にわたって脱水縮合反応を行い、ロジン変性樹脂(R1)を得た。樹脂(R1)の酸価は31(mgKOH/g)であり、重量平均分子量(Mw)は、2.8万であった。
次に、上記と同様のフラスコに、上記樹脂(R1)を38部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート61.9部、およびハイドロキノン0.1部を加えて混合し、これらを100℃で加熱溶解することでワニス(V1)を得た。
更に、ワニス(V1)480部、リオノールブルーFG7330(トーヨーカラー社製の藍顔料)73部、トリメチロールプロパンテトラアクリレート100部、2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩0.4部、硫酸鉄(II)0.04部、D-イソアスコルビン酸4部、およびハイドロキノン0.8部を、40℃の三本ロールミルにて練肉し混合物を得た。次いで、インキのタックが9~10になるように、上記混合物にトリメチロールプロパンテトラアクリレートを加えて調整し、活性エネルギー線硬化型印刷インキ(C1)を得た。インキのタックは、東洋精機社製のインコメーターにてロール温度30℃、400rpm、1分後の値を測定した。
【0076】
[実施例2~10]、[比較例1~3]
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成にてロジン変性樹脂(E)を得た。次いで、表2に示す配合組成で各ワニスを得た。更に、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型印刷インキを得た。尚、表1~3中の数値は、特に断りのない限り、部を表す。また、表3で使用した略号の説明を表4に示す。
【0077】
[実施例11]
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、樹脂(E)としてジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA、株式会社大阪ソーダ社製)38部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート61.9部、およびハイドロキノン0.1部を加えて混合し、これらを100℃で加熱溶解することでワニス(V11)を得た。
更に、ワニス(V11)480部、リオノールブルーFG7330(トーヨーカラー社製の藍顔料)73部、トリメチロールプロパンテトラアクリレート100部、2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-フルオロセイン-ナトリウム塩0.4部、硫酸鉄(II)0.04部、D-イソアスコルビン酸4部、およびハイドロキノン0.8部を、40℃の三本ロールミルにて練肉し混合物を得た。次いで、インキのタックが9~10になるように、上記混合物にトリメチロールプロパンテトラアクリレートを加えて調整し、活性エネルギー線硬化型印刷インキ(C11)を得た。インキのタックは、東洋精機社製のインコメーターにてロール温度30℃、400rpm、1分後の値を測定した。
【0078】
実施例および比較例で調整した活性エネルギー線硬化型印刷インキについて、下記の方法に従い、印刷皮膜適性を評価した。
【0079】
<印刷皮膜適性の評価>
実施例1~11、比較例1~3で得られた活性エネルギー線硬化型印刷インキを、RIテスター(明製作所簡易展色装置)を用いて、マリコート紙(北越製紙社製コートボール紙)に1g/m2の塗布量で印刷した後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて20m/分で5回紫外線を照射して印刷物を得た。
【0080】
紫外線照射後の印刷物の硬化性、耐溶剤性、および耐摩擦性について、以下に従って評価した。各評価の結果を表5に示す。
【0081】
(硬化性)
硬化性は、印刷物の印刷面を綿布で擦った時の状態を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で評価した。使用可能なレベルは、「3」以上である。
【0082】
判断基準
4 :印刷面の変化なし。
3 :印刷面の一部にキズが認められるが、剥離は認められない。
2 :印刷物の一部(50%未満)に剥離が認められる。
1 :印刷物の一部(50%以上)、又は全部に剥離が認められる。
【0083】
(耐溶剤性)
耐溶剤性は、MEK(メチルエチルケトン)を含侵した綿棒で印刷面を30回擦った後、印刷面の状態を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で評価した。使用可能なレベルは「3」以上である。
【0084】
判断基準
4 :印刷面の変化なし。
3 :印刷面の一部にキズが認められるが、剥離は認めらない。
2 :印刷物の一部(50%未満)に剥離が認められる。
1 :印刷物の一部(50%以上)、又は全部に剥離が認められる。
【0085】
(耐摩擦性)
耐摩擦性は、印刷物の印刷面(塗膜)に対して、JIS-K5701-1に準じて、試験を行い評価した。具体的には、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、摩擦用紙として上質紙を500g加重で塗膜表面を500回往復させた。次いで、摩擦面(塗膜表面)の変化を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で消化した。使用可能なレベルは「3」以上である。
【0086】
判断基準
4 :印刷面の変化なし。
3 :印刷面の一部にキズが見られるが、剥離は見られない。
2 :印刷物の一部(50%未満)に剥離が見られる。
1 :印刷物の一部(50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、硬化性、耐溶剤性および、耐摩擦性の全ての評価において、使用可能なレベルであり、優れた印刷皮膜適性を有している(実施例1~11)。一方、本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキの必須成分である、光増感剤(A)、酸化還元触媒(C)、有機還元剤(D)のいずれかが添加されていない活性エネルギー線硬化型印刷インキでは、化合物(B)の重合反応に必要な活性ラジカルが十分に発生しない為に、硬化が不十分となり、併せて耐溶剤性、耐摩擦性も不十分となる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキを用いる事により、臭気やマイグレーションの原因となり得る光重合開始剤や熱重合開始剤を使用しなくてもラジカル重合性(転換率)が高く、硬化性の良好な印刷が可能となり、さらに、耐溶剤性、耐摩擦性等の皮膜強度が優れた印刷物を得る事が可能となる。包装用パッケージ印刷用途等、広範な印刷用途に利用する事が可能である。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】