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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】連結ファスナー
(51)【国際特許分類】
   F16B 15/08 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F16B15/08 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018244824
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106082
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】新井 利道
(72)【発明者】
【氏名】米山 覚
(72)【発明者】
【氏名】横地 穏
(72)【発明者】
【氏名】福島 直幸
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-074182(JP,A)
【文献】特開2010-105156(JP,A)
【文献】特開2015-052331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具用のファスナーを複数連結した連結ファスナーであって、
前記ファスナーを1本ずつ保持するスリーブを切り離し可能に接続した連結帯を備え、
前記スリーブと前記ファスナーとの間には、前記ファスナーの足先側に臨むように隙間が形成され
前記スリーブの内周面に凹部を形成することで前記隙間を形成し、
前記スリーブは、前記隙間が形成された端部とは反対側の端部の内周面が前記ファスナーに密着していることを特徴とする、連結ファスナー。
【請求項2】
前記凹部は、ファスナーの周囲を囲むように円筒状に形成されていることを特徴とする、請求項記載の連結ファスナー。
【請求項3】
前記凹部は、足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状を有することを特徴とする、請求項1または2記載の連結ファスナー。
【請求項4】
前記スリーブは、上下非対称に形成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の連結ファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、打ち込み工具用のファスナーを複数連結した連結ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のファスナーを連結帯で連結した連結ファスナーは、多量のファスナーをまとめて打ち込み工具にセットして連続的に射出させることができるため、様々な種類の打ち込み工具において使用されている。
【0003】
こうした連結ファスナーの連結帯は、例えば特許文献1に記載されているように、切り離し可能なスリーブを備え、このスリーブでファスナーを1本ずつ保持するものが一般的である。
【0004】
こうした連結帯のスリーブの内面形状は、挿入したファスナーを保持するように筒状に形成されている。また、スリーブの外形は、ファスナーを打ち出すときに射出経路内でファスナーの姿勢を垂直に保てるように、射出経路の内側に沿うような形状となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4966971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らは、上記したような従来の連結ファスナーを使用した場合、薄鋼板などにファスナーを打ち込んだときに引抜耐力が低下する可能性があることを発見した。すなわち、薄鋼板などにファスナーが貫入すると、その周囲にバーリング形状が形成される。このバーリング形状はファスナーが貫入していくに従い成長しようとするが、ファスナーがある程度まで貫入すると、ファスナーに取り付けられた連結帯がバーリング形状の突端に当たり、バーリング形状を押さえ込むように作用する。バーリング形状が押さえ込まれて潰れたり広がったりすると、バーリング形状がファスナーに密着せずに形成されてしまい、ファスナーの保持力が低下する。
【0007】
本発明は、上記した発見に基づくものであり、薄鋼板などにファスナーを打ち込んだときに、ファスナーの引抜耐力の低下を防止することができる連結ファスナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、打ち込み工具用のファスナーを複数連結した連結ファスナーであって、前記ファスナーを1本ずつ保持するスリーブを切り離し可能に接続した連結帯を備え、前記スリーブと前記ファスナーとの間には、前記ファスナーの足先側に臨むように隙間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の通りであり、スリーブとファスナーとの間には、ファスナーの足先側に臨むように隙間が形成されている。このような構成によれば、薄鋼板などにファスナーを打ち込んだときに、バーリング形状が隙間に入り込むように形成されるので、バーリング形状の成長が妨げられない。よって、バーリング形状がファスナーに密着して形成されるので、打ち込んだファスナーの引抜耐力が低下しない(言い換えると、従来よりもファスナーの引抜耐力が向上する)。
【0010】
また、スリーブの外形は従来の形状をそのまま使用することができるので、射出経路内やマガジン内でファスナーの姿勢を安定させる機能に影響を与えることはない。よって、連結帯による他の機能を低下させずに、また、マガジンや射出経路の形状を変更することなく、ファスナーの引抜耐力のみを向上させることができる。
【0011】
なお、スリーブの内周面に凹部を形成することで隙間を形成するようにしてもよい。このように構成すれば、ファスナーを打ち込んでスリーブが潰されるときに、スリーブの足先側が外側に広がりやすくなるので、つぶし荷重が低下する。このようにスリーブを潰れやすくすることにより、打ち込み時の衝撃が吸収されて薄鋼板の変形が抑制されるので、バーリング形状の変形が抑制され、ファスナーとバーリング形状との密着度を高くすることができる。
【0012】
また、凹部は、ファスナーの周囲を囲むように円筒状に形成されていてもよい。このように構成すれば、ファスナーを打ち込んだときにスリーブが円形状に潰れやすい。スリーブが円形状に潰れることで、スリーブがワッシャーの役目を果たし、ファスナーによる保持力を高めることができる。
【0013】
また、凹部は、足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状を有していてもよい。このように構成すれば、ファスナーを打ち込んでスリーブが潰されるときに、スリーブの足先側が外側に広がりやすくなるので、スリーブの潰れやすさが向上する。
【0014】
また、スリーブは、隙間が形成された端部とは反対側の端部の内周面がファスナーに密着していてもよい。このように構成すれば、スリーブによるファスナーの保持をより安定させることができる。特に、射出経路内においてファスナーを傾きにくくすることができる。
【0015】
また、スリーブは、上下非対称に形成されていてもよい。このように構成すれば、連結ファスナーをマガジンに装填するときの装填方向が決まるので、上下を間違えて取り付けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】連結ファスナーの(a)側面図、(b)正面図である。
図2】打ち込み工具の側面図である。
図3】打ち込み工具の側面断面図であって、打ち込み前の状態を示す図である。
図4】打ち込み工具の側面断面図であって、被打込み材にノーズ部を押し付けた状態を示す図である。
図5】打ち込み工具の側面断面図であって、打ち出されたファスナーが被打込み材に貫入する直前の状態を示す図である。
図6】打ち込み工具の側面断面図であって、打ち出されたファスナーが被打込み材に貫入している途中の状態を示す図である。
図7】打ち込み工具の側面断面図であって、打ち込み完了後の状態を示す図である。
図8】スリーブの形状を説明する図であって、(a)側面図、(b)底面図、(c)正面図、(d)X-X線断面図、(e)スリーブのみのX-X線断面図である。
図9】(a)~(f)は、ファスナーが被打込み材に貫入する様子を順に示す図である。
図10】ファスナーが射出経路内を移動する様子を順に示す図であって、(a)~(c)は頭部側に隙間を設けた場合の図であり、(d)~(f)は頭部側に隙間を設けない場合の図である。
図11】変形例に係る連結ファスナーを説明する図であって、(a)変形例1に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(b)変形例1に係るスリーブのみのX-X線断面図、(c)変形例2に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(d)変形例2に係るスリーブのみのX-X線断面図、(e)変形例3に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(f)変形例3に係るスリーブのみのX-X線断面図、(g)変形例4に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(h)変形例4に係るスリーブのみのX-X線断面図である。
図12】変形例に係る連結ファスナーを説明する図であって、(a)変形例5に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(b)変形例5に係るスリーブのみのX-X線断面図、(c)変形例5に係る連結ファスナーの底面図、(d)変形例6に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(e)変形例6に係るスリーブのみのX-X線断面図、(f)変形例6に係る連結ファスナーの底面図、(g)変形例7に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(h)変形例7に係るスリーブのみのX-X線断面図、(i)変形例7に係る連結ファスナーの底面図、(j)変形例8に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(k)変形例8に係るスリーブのみのX-X線断面図、(l)変形例8に係る連結ファスナーの底面図である。
図13】変形例に係る連結ファスナーを説明する図であって、(a)変形例9に係る連結ファスナーのX-X線断面図、(b)変形例9に係るスリーブのみのX-X線断面図である。
図14】従来の連結ファスナーを説明する図であって、(a)従来の連結ファスナーのX-X線断面図、(b)従来のスリーブのみのX-X線断面図である。
図15】従来の連結ファスナーを説明する図であって、(a)~(f)は、ファスナーが被打込み材に貫入する様子を順に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態に係る連結ファスナー10は、図1に示すように、打ち込み工具30用のファスナー11を複数連結したものである。この連結ファスナー10は、ファスナー11と、連結帯20と、を備えて構成される。
【0019】
ファスナー11は、図1および図8に示すように、頭部12を備えたピンであり、頭部12よりも足先側に略円筒状の軸部13を備え、この軸部13よりも更に足先側に略円錐状(砲弾形状)の先端部15を備えている。
【0020】
連結帯20は、ファスナー11を1本ずつ保持するスリーブ21を接続した合成樹脂製の部材である。スリーブ21には、上下に貫通する挿通穴25が形成されている。この挿通穴25の内周面は、ファスナー11の軸部13に沿う内径で形成されている。このため、スリーブ21にファスナー11を挿通すると、挿通穴25の内面がファスナー11の軸部13に密着して、ファスナー11をしっかりと保持するようになっている。
【0021】
ファスナー11を1本ずつ保持するスリーブ21は、図1に示すような連結部28によって互いに切り離し可能に接続されている。スリーブ21は、図1(a)に示すように、頭部12の高さを揃えた状態で水平に一直線に並べて連結されている。スリーブ21を連結する連結部28は、ファスナー11の打ち込み時に破断するようになっており、連結部28が破断することでスリーブ21が連結帯20から切断され、ファスナー11と一緒に被打込み材40に打ち込まれるようになっている。
【0022】
なお、本実施形態に係るスリーブ21は、図8に示すように、ファスナー11の頭部12側に設けられた頭部側保持部22と、ファスナー11の足先側に設けられた足先側保持部23と、頭部側保持部22と足先側保持部23との間に設けられたくびれ部24と、を備えている。
【0023】
本実施形態に係る足先側保持部23は、頭部側保持部22よりも外周の長さが長くなるように形成されている。具体的には、足先側保持部23の外周は、射出経路35a(後述)の内径とほぼ等しい径の円形で形成されている。一方、頭部側保持部22の外周は、図8(c)に示すように、スリーブ21を正面(連結部28を正面に臨む方向)から見たときに、頭部側保持部22の横幅が、足先側保持部23の横幅よりも小さくなるように形成されている。このように本実施形態に係る頭部側保持部22と足先側保持部23とは異なる形状で形成されており、スリーブ21は上下非対称に形成されている。
【0024】
また、上記した連結部28は、頭部側保持部22と足先側保持部23とにそれぞれ対応して上下の2箇所に設けられている。すなわち、隣り合う頭部側保持部22同士が連結部28で連結されるとともに、隣り合う足先側保持部23同士が連結部28で連結されるようになっている。
【0025】
また、くびれ部24は、頭部側保持部22や足先側保持部23よりも外周の長さが短くなるように形成されている。具体的には、図8(c)に示すように、スリーブ21を正面(連結部28を正面に臨む方向)から見たときに、中間部が最も細くなるように内側にえぐれた形状となっている。また、このくびれ部24には、ファスナー11の軸部13の側面を露出させる開口24aが形成されている。このような形状により、頭部側保持部22と足先側保持部23との間の中間部のボリュームを抑えるとともに、スリーブ21の容積を小さくしつつもファスナー11の軸部13を上下の長い範囲で保持できるようになっている。
【0026】
この連結ファスナー10を使用する打ち込み工具30は、ファスナー11を打ち出すものであればどのようなものでもよいが、例えば図2に示すような構成であればよい。
【0027】
この図2に示す打ち込み工具30は、内部に駆動機構33を収容した出力部32と、出力部32に直交するように接続されたグリップ31およびマガジン37と、を備える。
【0028】
出力部32の先端には、被打込み材40に押し付けられるノーズ部35が設けられており、マガジン37に装填された先頭のファスナー11は、プッシャ38によってこのノーズ部35へと供給される。ノーズ部35へと供給されたファスナー11は、ドライバ34によってノーズ部35の先端に設けられた射出口から打ち出される。
【0029】
なお、ノーズ部35は、ハウジングに対して摺動可能に設けられており、バネによって常時突出方向に付勢されている。作業者が打ち込み作業を行う際には、ノーズ部35を被打込み材40に押し付けて摺動させる。このようにノーズ部35が押し込まれることで、後述するトリガ31aの操作が有効となる。言い換えると、ノーズ部35が摺動していない状態では打ち込み作業が行われないように構成されている。
【0030】
このノーズ部35の内部には、図3に示すように、ファスナー11を射出口へと案内する射出経路35aが形成されている。連結ファスナー10の先頭のファスナー11は、この射出経路35aを通過して、射出経路35aの先端(射出口)から打ち出される。
【0031】
出力部32の内部には、ファスナー11を打ち出すために射出経路35aを往復動可能なドライバ34や、ドライバ34を作動させるための駆動機構33などが配置されている。なお、駆動機構33の動力源は周知のものを使用すればよく、例えば、バネ駆動式、圧縮空気式、ガス燃焼式などの周知の駆動機構33を使用することができる。
【0032】
マガジン37は、連結ファスナー10を装填するためのものである。このマガジン37は、出力部32の先端付近に接続されている。このマガジン37の内部には、マガジン37に装填された連結ファスナー10を射出経路35aの方向に押圧するためのプッシャ38が設けられている。このプッシャ38は、バネによって常に前方へと付勢されており、マガジン37に装填された連結ファスナー10はプッシャ38によって常に前方へと押し付けられる。
【0033】
グリップ31は、打ち込み工具30を使用する作業者が把持するための部位である。このグリップ31は、作業者が把持しやすいように棒状に形成されている。また、作業者がグリップ31を握ったときに作業者の人差し指がかかる位置には、人差し指で引き操作可能なトリガ31aが設けられている。このトリガ31aが操作されると、グリップ31の内部に配置されたトリガスイッチがオンになり、制御装置に操作信号が出力されるようになっている。制御装置は、この操作信号をトリガにして駆動機構33を作動させる。
【0034】
この打ち込み工具30で打ち込みを行う前の状態では、図3に示すように、プッシャ38によって連結ファスナー10が前方へ押し付けられており、連結ファスナー10の先頭のファスナー11がドライバ34の真下で待機している。この状態でノーズ部35を被打込み材40に押し付けると、図4に示すように、打ち込みが可能な状態となる。
【0035】
図4の状態でトリガ31aが操作されると、図5に示すように、駆動機構33が作動してドライバ34が打ち出される。ドライバ34は、連結ファスナー10の先頭のファスナー11の頭部12を叩き、射出経路35aを通って被打込み材40の方向にファスナー11を打ち出す。このとき、先頭のファスナー11を保持しているスリーブ21は連結ファスナー10から切り離され、先頭のファスナー11と一緒に被打込み材40の方向に打ち出される。
【0036】
ドライバ34が下死点付近まで移動すると、図6に示すように、ファスナー11が被打込み材40に貫入して打ち込まれる。このときファスナー11を保持しているスリーブ21は、円形状に潰れてファスナー11の頭部12と被打込み材40との間に挟まれた状態となる。なお、打ち込み時の圧力によりスリーブ21が裂けてファスナー11から外れてしまう場合もあるが、スリーブ21がファスナー11から外れてしまっても差し支えない。
【0037】
このようにファスナー11の打ち込みが終わると、図7に示すように、ファスナー11とスリーブ21が、または、ファスナー11のみが、被打込み材40に固定された状態となる。
【0038】
ここで、本実施形態に係るスリーブ21の内周面には、図8に示すような凹部26が形成されている。この凹部26は、挿通穴25の足先側の開口縁に形成されており、スリーブ21の底面(足先側の面)からファスナー11の軸方向に凹んだ溝である。具体的には、スリーブ21の足先側の端部において、ファスナー11の周囲を囲むように円筒状の凹部26が形成されている。このように凹部26を形成することで、スリーブ21とファスナー11との間には、ファスナー11の足先側に臨むように隙間Gが形成されている。
【0039】
本実施形態に係る凹部26は、テーパ部26aと、テーパ部26aの足先側に連続する大径部26bと、からなる。テーパ部26aは、円錐台形状の内周面を有しており、足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状となっている。また、大径部26bは、円柱形状の内周面を有しており、テーパ部26aの足先側と同じ径で形成されている。
【0040】
この凹部26は、薄鋼板などの被打込み材40にファスナー11を打ち込んだときに、ファスナー11に密着したバーリング形状41を形成させるためのものである。すなわち、図9に示すように、薄鋼板などの被打込み材40にファスナー11が貫入すると、その周囲にバーリング形状41が形成される。このバーリング形状41はファスナー11が貫入していくに従い成長する。そして、ファスナー11がある程度まで貫入するとファスナー11に取り付けられたスリーブ21が被打込み材40に当たるが、ファスナー11の周囲には凹部26による隙間Gが形成されているため、スリーブ21がバーリング形状41の形成を妨げることがない。言い換えると、バーリング形状41は、隙間Gに入り込むことでファスナー11に密着して形成される。このため、打ち込んだファスナー11の引抜耐力を向上することができる。
【0041】
なお、図14に示すように、スリーブ21とファスナー11との間に隙間Gが形成されていない従来の形状では、図15に示すように、スリーブ21が被打込み材40に当たったときに、スリーブ21がバーリング形状41を上から押さえ込んでしまう。このため、バーリング形状41が潰れたり広がったりしてファスナー11に密着せずに形成されてしまい、ファスナー11の引抜耐力が低下してしまう。本実施形態に係る連結ファスナー10を使用すれば、このような引抜耐力の低下を防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係るスリーブ21は、足先側にのみ隙間Gが形成されており、隙間Gが形成された端部とは反対側の端部(頭部12側)の内周面はファスナー11に密着している。このように足先側にのみ隙間Gを形成することで、射出経路35a内でのファスナー11の傾きを抑制することができる。
【0043】
すなわち、図10(a)~(c)に示すように、頭部12側にも隙間Gを形成した場合、ファスナー11の軸部13を保持できる上下の範囲が狭くなるため、射出経路35a内でファスナー11が傾きやすくなる。
【0044】
一方、図10(d)~(f)に示すように、頭部12側には隙間Gを形成しないようにすれば、ファスナー11の軸部13を保持できる上下の範囲が長くなるため、射出経路35a内でファスナー11の傾きを抑制することができる。すなわち、頭部12側に隙間Gを形成した場合のファスナー11の傾きS1(図10(c)参照)よりも、頭部12側に隙間Gを形成しない場合のファスナー11の傾きS2(図10(f)参照)の方が小さくなる。よって、頭部12側に隙間Gを形成しない方が、ファスナー11をまっすぐに打ち出すことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、スリーブ21とファスナー11との間にファスナー11の足先側に臨むように隙間Gが形成されている。このような構成によれば、薄鋼板などにファスナー11を打ち込んだときに、バーリング形状41が隙間Gに入り込むように形成されるので、バーリング形状41の成長が妨げられない。よって、バーリング形状41がファスナー11に密着して形成されるので、打ち込んだファスナー11の引抜耐力が低下しない(言い換えると、従来よりもファスナー11の引抜耐力が向上する)。
【0046】
また、スリーブ21の外形は従来の形状(図14参照)をそのまま使用することができるので、射出経路35a内やマガジン37内でファスナー11の姿勢を安定させる機能に影響を与えることはない。よって、連結帯20による他の機能を低下させずに、また、マガジン37や射出経路35aの形状を変更することなく、ファスナー11の引抜耐力のみを向上させることができる。
【0047】
また、隙間Gは、スリーブ21の内周面に凹部26を形成することで形成されている。このため、ファスナー11を打ち込んでスリーブ21が潰されるときに、スリーブ21の足先側が外側に広がりやすくなっており、つぶし荷重が低下するようになっている。このようにスリーブ21を潰れやすくすることにより、打ち込み時の衝撃が吸収されて薄鋼板などの被打込み材40の変形が抑制されるので、バーリング形状41の変形が抑制され、ファスナー11とバーリング形状41との密着度を高くすることができる。
【0048】
また、凹部26は、ファスナー11の周囲を囲むように円筒状に形成されている。このように構成することで、ファスナー11を打ち込んだときにスリーブ21が円形状に潰れやすい。スリーブ21が円形状に潰れることで、スリーブ21がワッシャーの役目を果たし、ファスナー11による保持力を高めることができる。
【0049】
また、凹部26は、足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状(テーパ部26a)を有している。このように構成することで、ファスナー11を打ち込んでスリーブ21が潰されるときに、スリーブ21の足先側が外側に広がりやすくなるので、スリーブ21の潰れやすさが向上する。
【0050】
また、スリーブ21は、隙間Gが形成された端部とは反対側の端部の内周面がファスナー11に密着している。このように構成することで、スリーブ21によるファスナー11の保持をより安定させることができる。特に、射出経路35a内においてファスナー11を傾きにくくすることができる。
【0051】
また、スリーブ21は、上下非対称に形成されている。このため、連結ファスナー10をマガジン37に装填するときの装填方向が決まるので、上下を間違えて取り付けることを防止できる。
【0052】
なお、上記した実施形態に係る凹部26の形状は一例にすぎない。凹部26の形状としては種々のものが考えられるため、上記した実施形態に係る凹部26に代えて、異なる形状の凹部26を設けてもよい。
【0053】
例えば、図11(a)および(b)に示すように、足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状のみで形成された凹部26を設けてもよい。
【0054】
また、図11(c)および(d)に示すように、挿通穴25に連続する段付き穴形状で凹部26を形成し、凹部26の内径をファスナー11の外径よりも大径としてもよい。
【0055】
また、図11(e)および(f)に示すように、挿通穴25に連続する段付き穴形状で凹部26を形成し、凹部26の内径をファスナー11の外径よりも大径とするとともに、凹部26の内周面を足先側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状としてもよい。
【0056】
また、図11(g)および(h)に示すように、足先側に行くに従って次第に外側に膨出する椀形状の凹部26を設けてもよい。
【0057】
また、断面が円形ではなく多角形状の凹部26を設けてもよい。例えば、図12(a)、(b)および(c)に示すように、断面六角形の凹部26を設けてもよいし、図12(d)、(e)および(f)に示すように、断面八角形の凹部26を設けてもよい。
【0058】
また、凹部26を設ける代わりに、ファスナー11の足先側に突出する複数の脚部27をスリーブ21に設け、これにより隙間Gを形成するようにしてもよい。例えば、図12(g)、(h)および(i)に示すように、ファスナー11の周囲を取り囲むように4本の脚部27を設け、この脚部27とファスナー11との間に隙間Gを形成するようにしてもよい。また、図12(j)、(k)および(l)に示すように、ファスナー11の周囲を取り囲むように8本の脚部27を設け、この脚部27とファスナー11との間に隙間Gを形成するようにしてもよい。このように複数の脚部27を設けた場合、筒状のスリーブ21よりも脚部27の方が変形しやすいので、打ち込み時の変形が安定し、また、打ち込み時の荷重を減少させることができる。
なお、脚部27の配置や形状は上記した例に限らず、適宜変更可能である。例えば、複数の脚部27の形状はすべて同じでなくてもよく、異なる形状の脚部27を組み合わせて設けてもよい。また、隣り合う脚部27の間隔を広く設定することで、打ち込み時の荷重(スリーブ21の変形荷重)を減らすようにしてもよい。ただし、脚部27の間隔はできるだけ均等に配置することが望ましい。脚部27の間隔を均等にすることで、打ち込み時に脚部27が均等に潰れやすくなるので、打ち込み後にワッシャーとしての効果を得やすくなる。また、脚部27の数も自由に変更可能であるが、ファスナー11の垂直姿勢を維持する効果を十分に得るには、周囲に3本以上の脚部27を設けることが望ましい。
【0059】
また、凹部26を設ける代わりに、ファスナー11の径を変更し、これにより隙間Gを形成するようにしてもよい。例えば、図13(a)および(b)に示すように、ファスナー11の、スリーブ21が取り付けられる部分に縮径部14を設け、この縮径部14とスリーブ21との間に隙間Gを形成するようにしてもよい。なお、このような縮径部14を設けたファスナー11と、凹部26を形成したスリーブ21とを組み合わせ、これにより隙間Gを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 連結ファスナー
11 ファスナー
12 頭部
13 軸部
14 縮径部
15 先端部(足先)
20 連結帯
21 スリーブ
22 頭部側保持部
23 足先側保持部
24 くびれ部
24a 開口
25 挿通穴
26 凹部
26a テーパ部
26b 大径部
27 脚部
28 連結部
30 打ち込み工具
31 グリップ
31a トリガ
32 出力部
33 駆動機構
34 ドライバ
35 ノーズ部
35a 射出経路
37 マガジン
38 プッシャ
40 被打込み材
41 バーリング形状
G 隙間
S1、S2 傾き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図15