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特許7192495画像読取システム、画像読取方法、及びコンピュータプログラム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】画像読取システム、画像読取方法、及びコンピュータプログラム。
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20221213BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20221213BHJP
   H04N 1/21 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H04N1/00 567M
H04N1/00 567H
H04N1/12 Z
H04N1/04 106A
H04N1/21
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018246965
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020108063
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-074442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
H04N 1/21
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に原稿を読み取るように構成された読取部と、
前記第一の方向とは交差する第二の方向に前記原稿を搬送するように構成された搬送部と、
前記読取部及び前記搬送部を制御する処理を実行するように構成された制御部であって、前記処理は、前記第二の方向に前記原稿を搬送する搬送動作を前記搬送部に実行させながら、前記第一の方向に前記原稿を読み取って前記原稿の読取画像データを生成する読取動作を前記読取部に繰返し実行させることを含む制御部と、
前記読取動作毎に生成される前記読取画像データを逐次記憶するように構成される記憶部と、
を備え、
前記制御部は、
前記処理として、第一の読取条件で前記原稿が読み取られるように前記読取部及び前記搬送部を制御する第一の制御処理を実行し、
前記第一の制御処理の実行過程で前記記憶部に記憶された前記読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断し、
前記総量が前記閾値を超えたと判断されたことを条件に、前記第一の制御処理を中止して、前記搬送部に前記原稿の排出動作を実行させ、
前記排出動作時の前記搬送部による前記原稿の搬送量に基づき、前記原稿の前記第二の方向の長さを判定し、
前記判定した長さと、前記記憶部が記憶可能な前記読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、前記原稿に対する読取が完了するときの前記読取画像データの総量が前記データ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定し、
決定した前記第二の読取条件で前記原稿が読み取られるように前記読取部及び前記搬送部を制御する第二の制御処理を実行する
ように構成される画像読取システム。
【請求項2】
前記搬送部は、前記原稿を検出するように構成されたセンサを備え、
前記制御部は、前記センサからの入力信号に基づき、前記搬送動作及び前記排出動作時の前記搬送部による前記原稿の搬送量を計測して、前記原稿の前記第二の方向の長さを判定する請求項1記載の画像読取システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサからの入力信号に基づき、前記搬送動作により前記原稿の先端が前記センサによる検出地点に進入してから前記排出動作により前記原稿の後端が前記検出地点を通過するまでの前記搬送部による前記原稿の搬送量を計測することによって、前記長さを判定する請求項2記載の画像読取システム。
【請求項4】
前記第二の読取条件は、前記第一の読取条件における読取画像の品質に関わる少なくとも一つのパラメータの値を変更することにより決定される請求項1~請求項のいずれか一項記載の画像読取システム。
【請求項5】
前記第一の読取条件及び前記第二の読取条件は、少なくとも一つのパラメータによって定義され、
前記少なくとも一つのパラメータは、読取画像の圧縮率、解像度、階調数、及びカラーの有無、並びに読取面数のうちの少なくとも一つを含む請求項1~請求項のいずれか一項記載の画像読取システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第二の読取条件での原稿読取を、ユーザインタフェースを通じてユーザに提案し、前記ユーザインタフェースを通じて前記原稿読取が指示されたことを条件に、前記第二の制御処理を実行する請求項1~請求項のいずれか一項記載の画像読取システム。
【請求項7】
第一の方向に原稿を読み取って前記原稿の読取画像データを生成する読取動作を、前記第一の方向とは交差する第二の方向に前記原稿を搬送しながら繰返し実行する読取処理を、第一の読取条件で前記原稿を読み取るように実行することと、
前記読取動作毎に生成される前記読取画像データを記憶部に逐次格納することと、
前記記憶部における前記読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断することと、
前記総量が前記閾値を超えたと判断されたことを条件に、前記読取処理を中止して、前記原稿を排出することと、
前記排出時の前記原稿の搬送量に基づき、前記原稿の前記第二の方向の長さを判定することと、
前記判定した長さと、前記記憶部が記憶可能な前記読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、前記原稿に対する読取が完了するときの前記読取画像データの総量が前記データ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定することと、
決定した前記第二の読取条件で前記原稿を読み取るように、前記読取処理を再実行することと、
を含む画像読取方法。
【請求項8】
第一の方向に原稿を読み取るように構成された読取部と、前記第一の方向とは交差する第二の方向に前記原稿を搬送するように構成された搬送部と、を制御することを含む処理であって、前記第二の方向に前記原稿を搬送する搬送動作を前記搬送部に実行させながら、前記第一の方向に前記原稿を読み取って前記原稿の読取画像データを生成する読取動作を前記読取部に繰返し実行させる処理を、第一の読取条件で前記原稿が読み取られるように実行することと、
前記読取動作毎に生成される前記読取画像データを記憶部に逐次格納することと、
前記記憶部に格納された前記読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断することと、
前記総量が前記閾値を超えたと判断されたことを条件に、前記処理を中止して、前記搬送部に前記原稿の排出動作を実行させることと、
前記排出動作時の前記搬送部による前記原稿の搬送量に基づき、前記原稿の前記第二の方向の長さを判定することと、
前記判定した長さと、前記記憶部が記憶可能な前記読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、前記原稿に対する読取が完了するときの前記読取画像データの総量が前記データ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定することと、
決定した前記第二の読取条件で前記原稿が読み取られるように、前記処理を再実行することと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像読取システム、画像読取方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取システムとしては、フラットベッド(FB)型の画像読取システム及びオートドキュメントフィーダ(ADF)型の画像読取システムが知られている。
【0003】
読取画像データを記憶するメモリにオーバーフローが発生した場合には、読取画像データの圧縮率を自動的に1段階大きい圧縮率に変更して、原稿の読取をやり直すディジタル複写機もまた知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-65474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メモリのオーバーフローが発生する度、圧縮率を段階的に変更して読取をやり直す技術では、複数回のやり直しによらなければオーバーフローを解消できない可能性がある。
【0006】
オートドキュメントフィーダ(ADF)型の画像読取システムでは、原稿を副走査方向に搬送しながら、原稿を主走査方向に読み取る動作を繰返し実行して、原稿全体を読み取る。従って、ADF型の画像読取システムでは、A4等の規格サイズの原稿よりも副走査方向に長い原稿を読み取ることが可能である。
【0007】
しかしながら、読取対象の原稿の副走査方向の長さが規格サイズから大きく乖離している場合には、1段階の圧縮率の変更によっても低減される読取画像データのデータ量が十分ではなく、再度、メモリのオーバーフローが発生してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本開示の一側面によれば、原稿の長さに応じた適切な原稿の再読取を可能にする技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面によれば、画像読取システムが提供される。画像読取システムは、読取部と、搬送部と、制御部と、記憶部と、を備える。読取部は、第一の方向に原稿を読み取るように構成される。搬送部は、第一の方向とは交差する第二の方向に原稿を搬送するように構成される。
【0010】
制御部は、読取部及び搬送部を制御する処理を実行するように構成される。処理は、第二の方向に原稿を搬送する搬送動作を搬送部に実行させながら、第一の方向に原稿を読み取って原稿の読取画像データを生成する読取動作を読取部に繰返し実行させることを含む。記憶部は、読取動作毎に生成される読取画像データを逐次記憶するように構成される。
【0011】
具体的に、制御部は、第一の読取条件で原稿が読み取られるように読取部及び搬送部を制御する第一の制御処理を実行する。制御部は更に、第一の制御処理の実行過程で記憶部に記憶された読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断する。
【0012】
制御部は更に、総量が閾値を超えたと判断されたことを条件に、第一の制御処理を中止して、搬送部に原稿の排出動作を実行させる。制御部は更に、排出動作時の搬送部による原稿の搬送量に基づき、原稿の第二の方向の長さを判定する。
【0013】
制御部は更に、判定した長さと、記憶部が記憶可能な読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、原稿に対する読取が完了するときの読取画像データの総量がデータ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定する。
【0014】
制御部は更に、決定した第二の読取条件で原稿が読み取られるように読取部及び搬送部を制御する第二の制御処理を実行する。
【0015】
本開示の一側面によれば、上述したように、排出動作時の搬送部による原稿の搬送量に基づき、原稿の第二の方向の長さが判定される。そして、判定された長さに基づき、第二の読取条件が決定される。従って、原稿の長さに応じて適切に読取条件を変更して原稿の読取を再実行可能である。
【0016】
本開示の一側面によれば、画像読取方法が提供されてもよい。画像読取方法は、第一の方向に原稿を読み取って原稿の読取画像データを生成する読取動作を第一の方向とは交差する第二の方向に原稿を搬送しながら繰返し実行する読取処理を、第一の読取条件で原稿を読み取るように実行することを含む。
【0017】
上記方法は更に、読取動作毎に生成される読取画像データを記憶部に逐次格納することを含む。上記方法は更に、記憶部における読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断することを含む。
【0018】
上記方法は更に、総量が閾値を超えたと判断されたことを条件に、読取処理を中止して、原稿を排出することを含む。上記方法は更に、排出時の原稿の搬送量に基づき、原稿の第二の方向の長さを判定することを含む。
【0019】
上記方法は更に、判定した長さと、記憶部が記憶可能な読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、原稿に対する読取が完了するときの読取画像データの総量がデータ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定することを含む。
【0020】
上記方法は更に、決定した第二の読取条件で原稿を読み取るように、読取処理を再実行することを含む。この画像読取方法によれば、原稿の長さに応じて適切に読取条件を変更して原稿の読取を再実行可能である。
【0021】
本開示の一側面によれば、コンピュータプログラムが提供されてもよい。コンピュータプログラムは、読取部と搬送部とを制御することを含む処理であって、第二の方向に原稿を搬送する搬送動作を搬送部に実行させながら、第一の方向に原稿を読み取って原稿の読取画像データを生成する読取動作を読取部に繰返し実行させる処理を、第一の読取条件で原稿が読み取られるように実行することと、読取動作毎に生成される読取画像データを記憶部に逐次格納することと、記憶部に格納された読取画像データの総量が閾値を超えたかを判断することと、総量が閾値を超えたと判断されたことを条件に、処理を中止して、搬送部に原稿の排出動作を実行させることと、排出動作時の搬送部による原稿の搬送量に基づき、原稿の第二の方向の長さを判定することと、判定した長さと、記憶部が記憶可能な読取画像データの総量に対応するデータ量上限とに基づき、原稿に対する読取が完了するときの読取画像データの総量がデータ量上限以下に収まる第二の読取条件を決定することと、決定した第二の読取条件で原稿が読み取られるように、処理を再実行することと、をコンピュータに実行させるように構成されてもよい。
【0022】
このコンピュータプログラムは、上述した画像読取システム及び画像読取方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】画像読取システムの概略構成を表す断面図である。
図2】画像読取システムの電気的構成を表す概略ブロック図である。
図3】メインユニットが実行する原稿読取処理(その1)を表すフローチャートである。
図4】メインユニットが実行する原稿読取処理(その2)を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の画像読取システム1は、オートドキュメントフィーダ(ADF)型のスキャナ装置として構成される。
【0025】
この画像読取システム1は、原稿トレイ10及び排出トレイ15を備える。読取対象の原稿Qは、原稿トレイ10から排出トレイ15に向けて副走査方向に搬送される。画像読取システム1は、両面読取のために、原稿トレイ10と排出トレイ15との間の原稿Qの搬送路上に対向する二つのラインセンサ20を備える。原稿トレイ10から搬送される原稿Qは、これらラインセンサ20により副走査方向とは直交する主走査方向に読み取られ、その後、排出トレイ15に排出される。
【0026】
画像読取システム1は、原稿Qを搬送するために、分離機構30と搬送機構40とを備える。分離機構30は、原稿トレイ10の下端に、分離ローラ31とリバースローラ32とを備える。
【0027】
分離ローラ31は、伝達機構52(図2参照)を通じて、第一モータ51からの動力を受けて回転する。伝達機構52は、第一モータ51が正回転するとき、分離ローラ31を、原稿Qが副走査方向下流に搬送される方向に回転させる。この回転により、分離ローラ31は、原稿トレイ10に載置された、分離ローラ31に接触する最下層の原稿Qを分離し、これを下流に搬送する。
【0028】
リバースローラ32は、分離ローラ31に対向して設けられ、分離ローラ31が原稿Qを下流に搬送するとき、分離ローラ31に従動回転する。リバースローラ32は、原稿Qを後退させる必要が生じたときに、伝達機構56(図2参照)を通じて、第二モータ55からの動力を受けて、原稿Qを後退させる方向に回転する。このとき、分離ローラ31は、リバースローラ32に従動回転する。
【0029】
搬送機構40は、分離機構30の下流に配置される。この搬送機構40は、第一のローラ対である搬送ローラ41及び従動ローラ42と、第二のローラ対である排紙ローラ45及び従動ローラ46とを備える。これらのローラ対は、原稿Qの搬送路上に設けられ、上流からの原稿Qを回転により下流に搬送する。
【0030】
搬送ローラ41及び排紙ローラ45は、原稿Qを下流に搬送するとき、伝達機構56を通じて、第二モータ55からの動力を受けて回転する。伝達機構56は、第二モータ55が正回転するとき、搬送ローラ41及び排紙ローラ45に動力を伝達して、原稿Qが副走査方向下流に搬送される方向に、搬送ローラ41及び排紙ローラ45を回転させる。伝達機構56は、第二モータ55が逆回転するとき、リバースローラ32に動力を伝達して、リバースローラ32を、原稿Qが後退する方向に回転させる。
【0031】
二つのラインセンサ20は、搬送機構40により搬送される原稿Qの両面を読み取るために、搬送ローラ41と排紙ローラ45との間の搬送路に対向するように設けられる。これらのラインセンサ20は、例えばCISイメージセンサとして構成される。
【0032】
画像読取システム1は更に、原稿トレイ10と排出トレイ15との間の原稿Qの搬送路に、原稿Qを検出するための複数のセンサFS,RSを備える。具体的に、画像読取システム1は、原稿トレイ10の下端に、原稿トレイ10に載置された原稿Qを検出するためのセンサFSを備える。以下では、このセンサFSのことをフロントセンサFSと表現する。
【0033】
画像読取システム1は更に、フロントセンサFSよりも副走査方向下流に、原稿トレイ10からの原稿Qを検出するためのセンサRSを備える。以下では、センサRSのことを、リアセンサRSと表現する。
【0034】
図1によれば、リアセンサRSは、搬送ローラ41より副走査方向上流の地点に設けられ、この地点を通過する原稿Qを検出する。別例として、リアセンサRSは、搬送ローラ41よりも副走査方向下流、且つ、ラインセンサ20による原稿Qの読取地点よりも上流の地点に設けられてもよく、この地点を通過する原稿Qを検出してもよい。リアセンサRSは、フロントセンサFSよりも副走査方向下流において複数箇所に設けられてもよい。
【0035】
フロントセンサFS及びリアセンサRSは、対応する地点に原稿Qが存在するときオン信号を出力し、原稿Qが存在しないときオフ信号を出力する。
【0036】
図2に示すように、画像読取システム1は、メインユニット60、読取制御ユニット70、モータ制御ユニット80、ユーザインタフェース90、及び、通信インタフェース95を更に備える。メインユニット60は、画像読取システム1の全体を統括制御する制御部として機能する。
【0037】
メインユニット60は、CPU61と、ROM63と、RAM65と、NVRAM67とを備える。CPU61は、ROM63に記憶されたコンピュータプログラムに従う処理を実行する。
【0038】
RAM65は、CPU61による処理実行時に作業領域として使用される。NVRAM67は、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリであり、設定データ等を記憶する。メインユニット60による統括制御は、CPU61が、ROM63に記憶されたコンピュータプログラムに従う処理を実行することにより実現される。
【0039】
例えば、メインユニット60は、読取指令が入力されると、コンピュータプログラムに従うスキャン処理を開始して、原稿トレイ10に載置された原稿Qを一枚ずつ分離し、分離した原稿Qを読み取るための制御を行う。
【0040】
具体的に、メインユニット60は、原稿トレイ10に載置された原稿Qがなくなるまで、原稿Qの一枚毎に、原稿読取処理(図3参照)を実行して、原稿Qのそれぞれを読み取る。
【0041】
読取指令は、ユーザインタフェース90を介してユーザから、あるいは、通信インタフェース95を介して外部装置3から入力される。ユーザインタフェース90は、例えば、タッチパネル式のディスプレイである。
【0042】
原稿読取処理において、メインユニット60は、搬送機構40に原稿Qを副走査方向に搬送させながら、その搬送動作に合わせて、ラインセンサ20に原稿Qに対する主走査方向の読取動作を、ライン毎に実行させるように、読取制御ユニット70及びモータ制御ユニット80を制御する。
【0043】
読取制御ユニット70は、メインユニット60からの指令に基づき、原稿Qの搬送動作に合わせてラインセンサ20がライン毎の読取動作を実行するように、ラインセンサ20の駆動制御を行う。読取制御ユニット70は、ラインセンサ20の読取動作により生成されるライン毎の読取画像データを、逐次メインユニット60に入力する。各ラインの読取画像データは、原稿Qにおける、対応するラインの読取画像を表す。
【0044】
モータ制御ユニット80は、メインユニット60からの指令に基づき、第一モータ51及び第二モータ55の駆動制御を行うことによって、原稿トレイ10から排出トレイ15までの原稿Qの搬送制御を実現する。本実施形態において画像読取システム1に設けられる第一モータ51及び第二モータ55は、ステッピングモータである。
【0045】
メインユニット60は、ラインセンサ20の読取動作によって生成されるライン毎の読取画像データを、逐次RAM65に格納する。メインユニット60は、1ページ分の読取画像データがRAM65に蓄積されると、1ページ分の読取画像データをまとめたページ画像データを生成し、このページ画像データをRAM65から取り出し、通信インタフェース95を介して、外部装置3に送信する。
【0046】
続いて、メインユニット60が原稿Qの一枚毎に実行する原稿読取処理の詳細を、図3及び図4を用いて説明する。原稿読取処理を開始すると、メインユニット60は、原稿読取に関する動作パラメータの値を、読取指令元から指定された読取条件に対応する値に設定する(S110)。即ち、メインユニット60は、指定された読取条件で原稿Qが読み取られるように、動作パラメータを設定する。
【0047】
動作パラメータは、原稿読取に関する処理動作を定義付けるパラメータである。読取条件は、圧縮率、解像度、カラー、階調数、読取面数、及び斜行補正に関する条件を含む。圧縮率は、画像データの圧縮率を意味する。解像度は、主走査方向及び副走査方向の単位長さ当たりの画素数(DPI)で定義される。
【0048】
カラーに関する条件は、カラーの有無、換言すればモノクロ読取及びカラー読取のいずれかを指定する。但しここでいう「モノクロ」は、モノクロ2階調及びグレースケールを含むものと理解されたい。階調数は、1画素当たりの階調数を意味する。読取面数に関する条件は、片面読取(即ち読取面数1)及び両面読取(即ち読取面数2)のいずれかを指定する。
【0049】
S110の処理実行後、メインユニット60は、ステップ数Nをゼロに設定する(S120)。更に、メインユニット60は、読取対象の原稿Qの先端がラインセンサ20による読取地点に移動するように、モータ制御ユニット80に第一モータ51及び第二モータ55を駆動させ、それにより分離機構30及び搬送機構40を駆動させ、分離機構30及び搬送機構40に原稿Qを副走査方向下流に搬送させる(S130)。
【0050】
その後、メインユニット60は、リアセンサRSによる原稿検出地点を、原稿Qの先端が通過することにより、リアセンサRSからの入力信号がオフ信号からオン信号に切り替わるまで待機し(S140)、リアセンサRSからの入力信号がオフ信号からオン信号に切り替わると(S140でYes)、ステップ数Nのカウントアップを開始する(S150)。
【0051】
具体的に、メインユニット60は、モータ制御ユニット80を通じて、ステッピングモータである第二モータ55の回転を監視し、リアセンサRSからの入力信号がオフ信号からオン信号に切り替わってからの第二モータ55の回転ステップ数を示すように、ステップ数Nを、第二モータ55の回転に応じてカウントアップする処理を開始する(S150)。
【0052】
更に、メインユニット60は、原稿Qの先頭がラインセンサ20による読取地点に到来した時点で、読取制御処理を開始する(S160)。読取制御処理(S160)において、メインユニット60は、動作パラメータに従う読取条件で原稿Qが読み取られるように、副走査方向に原稿Qを搬送する搬送動作を搬送機構40に実行させながら、主走査方向に原稿Qを読み取る読取動作をラインセンサ20に繰返し実行させる。
【0053】
具体的には、メインユニット60は、副走査方向解像度に対応する速度で原稿Qが副走査方向に定速搬送されるように、モータ制御ユニット80を通じて搬送機構40を制御する。
【0054】
更に、メインユニット60は、搬送機構40による原稿搬送過程において副走査方向解像度に対応する距離だけ原稿Qが搬送される度に、ラインセンサ20に原稿Qに対する主走査方向の読取動作を実行させて、ラインセンサ20に主走査方向解像度に対応した読取画像データを生成させるように、読取制御ユニット70を通じてラインセンサ20を制御する。
【0055】
メインユニット60は更に、ラインセンサ20により生成される読取画像データを、読取制御ユニット70を通じてライン毎に取得し、RAM65に逐次格納する。ラインセンサ20により生成される読取画像データは、読取制御ユニット70において、指定の圧縮率でデータ圧縮された後、メインユニット60に入力される。
【0056】
読取制御処理(S160)について詳述すると、メインユニット60は、読取条件として両面読取が指定されている場合には、二つのラインセンサ20に読取動作を実行させる。読取条件として片面読取が指定されている場合には、二つのラインセンサ20のうち、原稿Qの読取対象面を向く一方のラインセンサ20に読取動作を実行させる。
【0057】
メインユニット60は、カラーに関する条件としてカラー読取が指定されているときには、主走査方向の読取動作として、ラインセンサ20に、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の各色の読取動作を実行させることで、ラインセンサ20から読取制御ユニット70を通じて、読取条件に従うカラーの読取画像データを取得する。
【0058】
メインユニット60は、カラーに関する条件としてモノクロ読取が指定されているときには、主走査方向の読取動作として、ラインセンサ20に単色、具体的には緑色(G)の読取動作を実行させることで、ラインセンサ20から読取制御ユニット70を通じて単色の読取画像データを取得する。ラインセンサ20により生成される読取画像データは、読取制御ユニット70において、読取条件に従うモノクロの読取画像データに変換されて、メインユニット60に入力される。
【0059】
上述の読取制御処理は、少なくともリアセンサRSからの入力信号がオフ信号に切り替わるか、読取中止条件が満足されるまでの期間、継続的に実行される。メインユニット60は、読取制御処理の実行中、ラインセンサ20による繰返しの読取動作により生成されるライン毎の読取画像データを、逐次RAM65に格納する。
【0060】
メインユニット60は、読取制御処理の開始後、リアセンサRSからの入力信号がオン信号からオフ信号に切り替わったか否かを繰返し判断する(S170)。メインユニット60は、リアセンサRSからの入力信号がオン信号に維持されている場合には、S170で否定判断する。その後、読取中止条件が満足されているか否かを判断する(S180)。読取中止条件は、読取画像データを記憶するためのRAM65の領域が不足しそうな場合に、読取動作を中止するために定められる。
【0061】
具体的に、メインユニット60は、ラインセンサ20から読取制御ユニット70を通じて入力されたRAM65で記憶すべき読取画像データの総量が予め定められた閾値Mを超えると、読取中止条件が満足されたと判断する(S180でYes)。
【0062】
閾値Mは、例えば読取画像データの記憶容量よりも余裕量だけ小さい値に定められる。ここでいう記憶容量は、RAM65における読取画像データの格納領域のサイズである。即ち、閾値Mは、RAM65が記憶可能な読取画像データの総量より所定量だけ小さい値に定められる。
【0063】
S180において、メインユニット60は、読取開始からの原稿Qの搬送量に基づき、読取画像データの総量を算出してもよい。即ち、メインユニット60は、読取制御処理開始からの第二モータ55の回転ステップ数を、所定の計算式に代入して、回転ステップ数に対応する読取画像データの総量を算出してもよい。そして、算出した総量が閾値Mを超えると、読取中止条件が満足されたと判断してもよい。読取条件から1ライン当たりの読取画像データのデータ量を特定することができる。更に回転ステップ数から、読取ライン数を特定することができる。従って、上記計算式は、読取条件から特定可能である。
【0064】
更なる別例として、メインユニット60は、読取制御処理開始からの第二モータ55の回転ステップ数が閾値を超えたか否かを判断することにより、読取中止条件が満足されたか否かを判断してもよい。即ち、読取中止条件は、読取制御処理開始からの第二モータ55の回転ステップ数が閾値を超えたことであってもよい。閾値は、読取条件に応じた値に定められてもよい。
【0065】
メインユニット60は、読取中止条件が満足されていないと判断すると(S180でNo)、S170に移行する。そして、読取中止条件が満足されることなく、リアセンサRSからの入力信号がオフ信号に切り替わると(S170でYes)、原稿Qの後端までの読取動作が完了次第、読取制御処理を終了し(S190)、原稿Qの排出動作を搬送機構40に実行させた後(S195)、原稿読取処理を終了する。
【0066】
この他、メインユニット60は、読取中止条件が満足されたと判断すると(S180でYes)、原稿読取を中止する(S200)。具体的には、メインユニット60は、読取制御処理を中止し、それによりラインセンサ20による読取動作を停止させ、更には、RAM65にこれまでに格納された読取画像データを破棄する。但し、ステップ数Nのカウントアップ動作については中止しない。
【0067】
その後、メインユニット60は、搬送機構40に原稿Qを排出トレイ15まで排出させるように、モータ制御ユニット80を通じて搬送機構40を駆動させる(S210)。この搬送機構40による排出動作時にも、ステップ数Nのカウントアップ動作は継続される。
【0068】
排出動作時には、原稿Qの排出が完了する前に、原稿Qの後端が、リアセンサRSによる原稿検出地点を通過して、リアセンサRSからの入力信号がオン信号からオフ信号に切り替わる。
【0069】
メインユニット60は、搬送機構40に排出動作を開始させた後(S210)、このように、リアセンサRSからの入力信号がオン信号からオフ信号に切り替わるまで待機する(S220)。そして、リアセンサRSからの入力信号がオン信号からオフ信号に切り替わると(S220でYes)、オフ信号に切り替わった時点でのステップ数Nに基づき、原稿長Lを算出する(S230)。
【0070】
原稿長Lは、原稿Qの副走査方向の長さである。原稿長Lは、ステップ数Nに、1ステップ当たりの原稿搬送量Dを乗算することにより、算出可能である(L=D・N)。原稿長Lを算出し終えると(S230)、メインユニット60は、再読取条件を決定する(S240)。
【0071】
再読取条件は、原稿長Lを考慮して、同一原稿Qの再読取の際に、読取中止事象が発生しない読取条件に決定される。具体的に、再読取条件は、現在の読取条件の一部を変更することによって決定される。
【0072】
主走査方向の読取幅がW(ミリメートル)であるときに、原稿長がL(ミリメートル)である原稿Qの全体を読み取るときの読取画像データの総量Z(バイト)は、次式で表わされる。
Z=A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・EN
【0073】
上式におけるパラメータAは、読取面数を表し、片面読取であるときにはA=1であり、両面読取であるときにはA=2である。パラメータCは、色数を表し、カラー読取であるときにはC=3であり、モノクロ読取であるときには、C=1である。
【0074】
パラメータKは、1画素1色当たりのビット数、換言すれば1画素1色当たりの階調数をビット単位で表す。256階調であるとき、K=8である。パラメータRxは、主走査方向解像度(DPI)を表し、パラメータRyは、副走査方向解像度(DPI)を表す。
【0075】
パラメータENは、画像データの圧縮率を表す。圧縮率100%、即ち非圧縮であるときEN=1である。1インチが、25.4ミリメートルであることから理解できるように、上式における値25.4は、解像度Rx,Ryを、ミリメートル当たりの画素数に置換するように作用する。
【0076】
再読取条件は、上式における複数のパラメータA,C,K,Rx,Ry,ENの一つ以上を現在の読取条件から変更することにより決定可能である。以下では、S240における再読取条件の決定方法を複数例説明する。以下で説明する例は、読取中止条件が満足されない読取画像データの総量の上限がM(バイト)であることを前提とした再読取条件の決定方法の例である。
【0077】
[第一例]
第一例では、圧縮率ENを変更することにより、再読取条件が決定される。
【0078】
読取中止条件が満足されないように原稿Qの再読取を行うためには、原稿Qの全体を読み取ったときの読取画像データの総量Zが値M以下であるような圧縮率ENを求めればよい。従って、再読取条件は、条件式M≧A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENを満足する、選択可能な圧縮率ENの最大値を求めることにより決定される。
【0079】
即ち、第一例では、固定値M及び現在の読取条件に従う固定値B1=A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)に対して、条件式EN≦M/B1を満足する圧縮率ENの最大値を求める。圧縮率ENを、求めた最大値に変更するように、現在の読取条件を変更したときの変更後の読取条件を、再読取条件に決定する。
【0080】
[第二例]
第二例では、主走査方向解像度Rx及び副走査方向解像度Ryを変更することにより、再読取条件が決定される。具体的には、条件式M≧A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENを満足する、選択可能な最大の主走査方向解像度Rx及び副走査方向解像度Ryの組合せを求めることにより再読取条件が決定される。
【0081】
画像読取システム1で実現可能な主走査方向解像度Rxの最低値がRx0、副走査方向解像度Ryの最低値がRy0であり、画像読取システム1で選択可能な主走査方向解像度Rx及び副走査方向解像度Ryが、最低値Rx0及びRy0のH倍(但しHは1以上整数)である環境では、固定値M及び現在の読取条件に従う固定値B2=A・C・(K/8)・(W・Rx0/25.4)・(L・Ry0/25.4)・ENに対して、条件式H≦M/B2を満足するパラメータHの最大値を求めることにより再読取条件を決定することができる。
【0082】
即ち、第二例では、条件式H≦M/B2を満足するパラメータHの最大値を用いて、主走査方向解像度Rxを、H・Rx0に変更し、副走査方向解像度Ryを、H・Ry0に変更するように、現在の読取条件を変更したときの変更後の読取条件を、再読取条件に決定する。
【0083】
[第三例]
第三例では、現在の読取条件がカラー読取を指定する場合に、カラー読取をモノクロ読取に変更し、必要に応じて更に圧縮率ENを変更することにより、再読取条件が決定される。
【0084】
具体的には、色数Cを、C=3からC=1に変更したときの、読取画像データの総量Z=A・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENが、値M以下であるときには、モノクロ読取に変更するように現在の読取条件を変更して、再読取条件を決定する。
【0085】
求めた総量Zが値Mを超えるときには、C=1としたまま、第一例と同様に、条件式M≧A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENを満足する圧縮率ENの最大値を求めることにより、再読取条件を決定する。
【0086】
即ち、圧縮率ENを、条件式EN≦M/B1を満足する圧縮率ENの最大値に変更し、更には、カラーに関する条件を、モノクロ読取に変更するように、現在の読取条件を変更して、再読取条件を決定する。第三例では、圧縮率ENに代えて、第二例のように解像度Rx,Ryを変更して、再読取条件を決定してもよい。
【0087】
[第四例]
第四例では、現在の読取条件が両面読取を指定する場合に、両面読取を片面読取に変更し、更には、必要に応じて圧縮率ENを変更することにより、再読取条件が決定される。
【0088】
具体的には、読取面数Aを、A=2からA=1に変更したときの、読取画像データの総量Z=C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENが、値M以下であるときには、片面読取に変更するように現在の読取条件を変更して、再読取条件を決定する。
【0089】
求めた総量Zが値Mを超えるときには、A=1としたまま、第一例と同様に、条件式M≧A・C・(K/8)・(W・Rx/25.4)・(L・Ry/25.4)・ENを満足する圧縮率ENの最大値を求めることにより、再読取条件を決定する。
【0090】
即ち、圧縮率ENを、条件式EN≦M/B1を満足する圧縮率ENの最大値に変更し、更には、読取面数に関する条件を、片面読取に変更するように、現在の読取条件を変更して、再読取条件を決定する。第四例では、圧縮率ENに代えて、第二例のように解像度Rx,Ryを変更して、再読取条件を決定してもよい。
【0091】
以上には、4つの具体的な再読取条件の決定例を説明したが、再読取条件の決定は、この例に限定されない。例えば、階調数Kの変更により再読取条件は決定されてもよい。あるいは、副走査方向解像度Ryを変更することなく主走査方向解像度Rxを変更することによって再読取条件は決定されてもよい。あるいは、圧縮率EN及び解像度Rx,Ryを所定の順序で段階的に調整することにより、総量Zが値M以下となる圧縮率EN及び解像度Rx,Ryの組合せを求めて、再読取条件を決定してもよい。
【0092】
S240で再読取条件を決定すると、メインユニット60は、再読取条件の詳細を、ユーザインタフェース90を通じてユーザに表示することで、この読取条件での原稿Qの再読取を提案する(S250)。
【0093】
S250の処理では、再読取のために、S210の処理を通じて排出トレイ15に排出された読取対象の原稿Qを、原稿トレイ10の最下層に再配置するように促すメッセージを、ユーザインタフェース90を通じてユーザに表示することができる。
【0094】
その後、メインユニット60は、原稿Qの再読取を指示する再読取指示が入力されるか、再読取を希望しない旨のキャンセル指示が、ユーザインタフェース90を通じて入力されるまで待機する(S260)。キャンセル指示が入力されると、メインユニット60は、原稿Qの再読取に係る処理を実行せずに、原稿読取処理を終了する。
【0095】
一方、メインユニット60は、再読取指示が入力されると(S260でYes)、原稿読取に関する動作パラメータの値を、再読取条件に対応する値に設定する(S270)。その後、メインユニット60は、S120以降の処理を実行し、上記決定した再読取条件で原稿Qが読み取られるように、読取制御ユニット70及びモータ制御ユニット80を通じてラインセンサ20による読取動作及び搬送機構40による搬送動作を制御する(S160)。
【0096】
再読取条件は、読取中止条件が満足されないように設定されているため、通常、S270からS120に移行した後には、S180の処理で肯定判断されることなく、原稿Qの全体が正常に再読取されて、原稿読取処理が終了する。
【0097】
以上に説明した本実施形態の画像読取システム1によれば、読取対象の原稿Qが副走査方向に長く、それにより原稿Qの読取画像データを蓄積するRAM65内の格納領域が不足した場合に、原稿長Lに応じた適切な読取条件を再設定して、格納領域の不足が再度生じないように、原稿Qの再読取を行うことができる。例えば、解像度Rx,Ryや圧縮率ENなどの読取画像の品質に関わる読取条件を調整することにより、読取画像データの総量を上限以下に抑制するように、原稿Qの再読取を行うことができる。
【0098】
本実施形態では特に、原稿搬送に関係する第二モータ55の回転動作を監視して、原稿Qの先端がリアセンサRSによる原稿検出地点に進入してから原稿Qの後端が原稿検出地点を通過するまで、ステップ数Nのカウントアップ動作を行う。これにより、リアセンサRSによる原稿検出地点を原稿Qが先端から後端まで通過するまでの第二モータ55の回転量を計測し、これにより原稿Qの搬送量を計測し、原稿長Lを判定する。
【0099】
特徴的なことには、RAM65における読取画像データの格納領域の不足により原稿Qの読取を中止した後にも、ステップ数Nのカウントアップ動作を継続し、読取を中止する前の原稿Qの搬送動作における原稿Qの搬送量と原稿Qの排出動作における原稿Qの搬送量との和に対応するステップ数Nから、原稿長Lを判定する。
【0100】
従って、本実施形態によれば、読取中止時には、原稿長Lが不明な原稿Qについても、適切な再読取条件を設定して、原稿長Lに応じた適切な原稿Qの再読取を実現することができる。
【0101】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができることは言うまでもない。上記実施形態は、両面読取可能な画像読取システム1に、本開示の技術を適用した例である。しかしながら、本開示の技術は、ラインセンサ20を一つのみ備える片面読取用の画像読取システムに適用されてもよい。
【0102】
上記実施形態では、原稿長Lの判定のためにS210における排出動作前からステップ数Nをカウントアップしたが、ステップ数Nのカウントアップ動作は排出動作の開始時からリアセンサRSからの入力信号がオフ信号に切り替わるまでの期間だけ実行されてもよい。そして、この期間のステップ数Nと、上述の値M及び読取条件から導出される原稿Qの副走査方向の読取長と、リアセンサRSによる原稿検出地点からラインセンサ20による読取地点までの距離と、に基づいて、原稿長Lを判定してもよい。
【0103】
上記実施形態では、単一の再読取条件を決定して、この再読取条件をユーザに呈示した。しかしながら、複数の再読取条件をユーザに呈示し、これら複数の再読取条件のうちのユーザにより選択された一つの再読取条件に基づいて、原稿Qの再読取に係る処理を実行するように、画像読取システム1は構成されてもよい。
【0104】
この他、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0105】
1…画像読取システム、3…外部装置、10…原稿トレイ、15…排出トレイ、20…ラインセンサ、30…分離機構、31…分離ローラ、32…リバースローラ、40…搬送機構、41…搬送ローラ、42…従動ローラ、45…排紙ローラ、46…従動ローラ、51…第一モータ、52…伝達機構、55…第二モータ、56…伝達機構、60…メインユニット、61…CPU、63…ROM、65…RAM、67…NVRAM、70…読取制御ユニット、80…モータ制御ユニット、90…ユーザインタフェース、95…通信インタフェース、FS,RS…センサ。
図1
図2
図3
図4