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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】磁気軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F16C32/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019000461
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020109305
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】岡 諒太朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 武弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 朋浩
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-068221(JP,A)
【文献】特開2001-248640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のティースと、
前記一対のティースに連結された連結部と、
前記ティース及び前記連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されたコイルと、
前記コイルに供給される電流を制御する電流制御部と、を備え、
前記ティース及び前記連結部のうちの前記コイルに係る領域である第2領域に可変磁力磁石が設けられ、
前記電流制御部は、シャフトの回転時において、前記コイルの電流値を、第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、前記第1基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させる磁気軸受。
【請求項2】
一対のティースと、
前記一対のティースに連結された連結部と、
前記ティース及び前記連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されたコイルと、
前記コイルに供給される電流を制御する電流制御部と、を備え、
前記ティース及び前記連結部のうちの前記コイルに係る領域である第2領域に可変磁力磁石が設けられ、
前記電流制御部は、シャフトの回転時において、前記コイルの電流値を、第4基準電流値から負の電流値である第5基準電流値に低下させた後、前記第4基準電流値よりも高い第6基準電流値に上昇させる磁気軸受。
【請求項3】
一対のティースと、
前記一対のティースに連結された連結部と、
前記ティース及び前記連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されたコイルと、
前記コイルに供給される電流を制御する電流制御部と、を備え、
前記ティース及び前記連結部のうちの前記コイルに係る領域である第2領域に可変磁力磁石が設けられ、
前記電流制御部は、シャフトの始動直後において、前記コイルの電流値を、第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、前記第2基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させる磁気軸受。
【請求項4】
一対のティースと、
前記一対のティースに連結された連結部と、
前記ティース及び前記連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されたコイルと、
前記一対のティース、前記連結部及び前記コイルを含む複数のユニットと、
前記コイルに供給される電流を制御する電流制御部と、を備え、
前記ティース及び前記連結部のうちの前記コイルに係る領域である第2領域に可変磁力磁石が設けられ、
前記複数のユニットは、シャフトの周方向に間隔をとって配置され、
前記シャフトの第1径方向に対向する第1ユニット及び第2ユニットと、
前記シャフトの前記第1径方向と交差する第2径方向に対向する第3ユニット及び第4ユニットと、を含み、
前記電流制御部は、前記第1ユニット及び前記第2ユニットにおける前記可変磁力磁石の磁力を増加又は減少させた後に、前記第3ユニット及び前記第4ユニットにおける前記可変磁力磁石の磁力を増加又は減少させる磁気軸受。
【請求項5】
前記第1領域及び前記第2領域は、前記ティースに配置されている請求項1~4の何れか一項に記載の磁気軸受。
【請求項6】
前記第2領域は前記ティースのシャフト側の端部を含む請求項5に記載の磁気軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば回転機械では、回転抵抗を低減してシャフトを支持するために、磁気軸受が用いられているものがある。磁気軸受では、電磁石による磁力によってシャフトを吸引してシャフトを保持する(例えば特許文献1,2参照)。磁気軸受として、シャフトの径方向の荷重を支持するラジアル磁気軸受と、シャフトの軸方向の荷重を支持するアキシャル磁気軸受とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-158215号公報
【文献】特開平4-219494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気軸受では、シャフトの周囲に配置された電磁石のコイルに流す電流値を変更して、電磁石による吸引力を変更し、シャフトに作用する力を変更することができる。電磁石による吸引力は例えばシャフトの回転数又は変位によって異なる。本開示は、コイルの電流値に対するゲイン(応答)特性を変更可能な磁気軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る磁気軸受は一対のティースと、一対のティースに連結された連結部と、ティース及び連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されたコイルと、を備え、ティース及び連結部のうちのコイルに係る領域である第2領域に可変磁力磁石が設けられている。
【0006】
この磁気軸受では、コイルによって形成された磁界により、一対のティース及び連結部を通る磁気回路が形成される。磁気軸受によれば、吸引力を発生させてシャフトの荷重を支えることができる。この磁気軸受では、磁気回路が形成されるところに可変磁力磁石が設けられているので、コイルに流す電流を制御して、可変磁力磁石による磁力を増加又は減少させることができる。これにより、可変磁力磁石による磁力の変更後において、コイルの電流値に対するゲイン特性は、可変磁力磁石による磁力の変更前と比較して変更される。なお、「コイルに係る領域」とは、コイルに囲まれている領域、又はコイルに隣接する領域を含み、コイルの磁界による影響を受ける領域を含む。
【0007】
可変磁力磁石による磁力は、コイルに電流を流す前後で、コイルに電流を流していない状態での磁力に変化が生じうる。そのため、磁力の変更前と変更後について、コイルに電流を流していない状態において可変磁力磁石による磁力を測定することで、可変磁力磁石による磁力の増加又は減少を検出することができる。例えば、可変磁力磁石ではない永久磁石では、コイルに電流を流していない状態において、磁力の変化を検出することはできない。可変磁力磁石ではない磁性体では、コイルに電流を流していない状態において、磁力の変化を検出することができる。
【0008】
いくつかの態様において、第1領域及び第2領域は、ティースに配置されていてもよい。すなわち、コイルはティースの周囲に配置され、可変磁力磁石は、コイルが配置されたティースに設けられていてもよい。いくつかの態様において、第2領域はティースのシャフト側の端部を含んでもよい。すなわち、可変磁力磁石は、ティースのシャフト側の端部に設けられていてもよい。
【0009】
いくつかの態様において、コイルに供給される電流を制御する電流制御部を備え、電流制御部は、シャフトの回転時に、コイルの電流値を、第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、第1基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させてもよい。これにより、シャフトの回転中に、可変磁力磁石による磁力を増加させることができる。その結果、可変磁力磁石による磁力が増加する(増磁)前と比較して、コイルの電流値に対するゲインは増加する。可変磁力磁石の増磁前と比較して少ない電流で、シャフトを保持することができる。シャフトを支えるための支持力を同一とした場合には、増磁後の消費電力は、増磁前の消費電力より減少する。
【0010】
いくつかの態様において、コイルに供給される電流を制御する電流制御部を備え、電流制御部は、シャフトの回転時に、コイルの電流値を、第4基準電流値から負(マイナス)の電流値である第5基準電流値に低下させた後、第4基準電流値よりも高い第6基準電流値に上昇させてもよい。これにより、シャフトの回転中に、可変磁力磁石による磁力を低下させることができる。その結果、可変磁力磁石による磁力が減少する(減磁)前と比較して、コイルの電流値に対するゲインは低下する。電流値を同一とした場合には、減磁後の吸引力は、減磁前の吸引力より弱くなる。コイルの電流値に対するゲインが大きくなり過ぎることを抑制することができる。ゲインが大きくなり過ぎることを抑制し、吸引力の制御精度を向上させることができる。
【0011】
いくつかの態様において、コイルに供給される電流を制御する電流制御部を備え、電流制御部は、シャフトの停止時に、コイルの電流値を、第7基準電流値から第8基準電流値に上昇させた後、第7基準電流値よりも低い第9基準電流値に低下させてもよい。これにより、シャフトの停止時(回転前又は回転後)に、可変磁力磁石による磁力を増加させることができる。その結果、可変磁力磁石が増磁される前と比較して、コイルの電流値に対するゲインは増加する。
【0012】
いくつかの態様において、コイルに供給される電流を制御する電流制御部を備え、電流制御部は、シャフトの始動直後において、コイルの電流値を、第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、第2基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させてもよい。これにより、シャフトの始動直後に、可変磁力磁石による磁力を増加させることができる。その結果、可変磁力磁石が増磁される前と比較して、コイルの電流値に対するゲインは増加する。
【0013】
いつくかの態様において、磁気軸受は、一対のティース、連結部及びコイルを含む複数のユニットと、コイルに供給される電流を制御する電流制御部と、を備えていてもよい。複数のユニットは、シャフトの周方向に間隔をとって配置され、シャフトの第1径方向に対向する第1ユニット及び第2ユニットと、シャフトの第1径方向と交差する第2径方向に対向する第3ユニット及び第4ユニットと、を含み、電流制御部は、第1ユニット及び第2ユニットにおける可変磁力磁石の磁力を増加又は減少させた後に、第3ユニット及び第4ユニットにおける可変磁力磁石の磁力を増加又は減少させてもよい。これにより、複数のユニットにおいて、コイルの電流値が同時にゼロとなることが回避される。そのため、磁気軸受における吸引力が消失してしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、コイルの電流値に対するゲイン特性を変更可能な磁気軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の磁気軸受を備えた回転機械の構成を示す図である。
図2】ラジアル磁気軸受をシャフトの長手方向から示す断面図である。
図3】ラジアル磁気軸受のユニットを拡大して示す断面図である。
図4】アキシャル磁気軸受のユニットを拡大して示す断面図である。
図5】従来技術に係る磁気軸受のシャフト回転数と電磁石平均電流値との関係を示すグラフである。
図6図6(a)は、シャフトの回転数の変化を示すグラフである。図6(b)は、コイルに供給される瞬時電流値の変化を示すグラフである。
図7】一実施形態の磁気軸受のシャフト回転数と電磁石平均電流値との関係を示すグラフである。
図8】磁気軸受のコイルの電流値を制御する制御装置を示すブロック構成図である。
図9】シャフト回転時における磁気軸受の電流制御の手順を示すフローチャートである。
図10】シャフト停止時における磁気軸受の電流制御の手順を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係るラジアル磁気軸受のユニットを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
第1実施形態に係る回転機械1は、図1に示されるように、シャフト2、モータ3、ラジアル磁気軸受4及びアキシャル磁気軸受5を備える。回転機械1は、例えば圧縮機である。シャフト2の第1端部には、タービンインペラ6が設けられ、シャフト2の第2端部には、コンプレッサインペラ7が設けられている。回転機械1は、圧縮機に限定されず、電動機など、その他の回転機械でもよい。シャフト2、モータ3、ラジアル磁気軸受4、アキシャル磁気軸受5、タービンインペラ6及びコンプレッサインペラ7は、回転機械1のハウジングに収容されている。モータ3は、シャフト2に設けられたロータ8と、ロータ8の周囲に配置されたステータ9とを備える。モータ3は、ロータ8を回転させることで、シャフト2を回転させる。なお、図1に示すX方向は、シャフト2が延在する方向(アキシャル方向、軸線方向、長手方向)であり、Y方向は、シャフト2の径方向(ラジアル方向)である。
【0018】
回転機械1は、一対のラジアル磁気軸受4を備える。一対のラジアル磁気軸受4は、シャフト2の長手方向に離間して配置されている。シャフト2は、一対のラジアル磁気軸受4によって回転可能に支持されている。ラジアル磁気軸受4は、シャフト2の径方向の荷重を受ける。アキシャル磁気軸受5は、シャフト2の長手方向において、一対のラジアル磁気軸受4間に配置されている。アキシャル磁気軸受5は、シャフト2の長手方向の荷重を受ける。アキシャル磁気軸受5は、シャフト2から径方向外側に張り出すアキシャルディスク10の両側に設けられている。アキシャルディスク10は円盤状を成している。アキシャルディスク10の板厚方向は、シャフト2の長手方向に沿う方向である。アキシャル磁気軸受5は、シャフト2の長手方向において、アキシャルディスク10を挟むように配置されている。なお、アキシャル磁気軸受5は、一対のラジアル磁気軸受4間に配置されているものに限定されず、シャフト2の長手方向において、ラジアル磁気軸受4の外側に配置されていてもよい。
【0019】
図2及び図3を参照してラジアル磁気軸受4について説明する。ラジアル磁気軸受4は、一対のティース11,12、ヨーク13及びコイル14,15を備える。ラジアル磁気軸受4は、シャフト2の周方向に間隔をとって配置された複数のユニット16~19を備える。このユニット16は、一対のティース11,12、連結部(ヨーク13の一部)20及びコイル14,15を含む。ユニット16~19は、配置が異なるだけであり、同じ構成である。ユニット16~19は、異なる構成でもよい。
【0020】
複数のユニット16~19は、シャフト2の周囲に配置されている。ユニット(第1ユニット)16及びユニット(第2ユニット)17は、シャフト2の第1径方向Y1に対向して配置されている。ユニット(第3ユニット)18及びユニット(第4ユニット)19は、シャフト2の第2径方向Y2に対向して配置されている。ユニット16、ユニット18、ユニット17、ユニット19は、シャフト2の周方向において90度ずつずれて配置されている。第1径方向Y1及び第2径方向Y2は、例えば互いに直交する方向である。なお、第1径方向Y1及び第2径方向Y2は、直交していなくてもよい。また、ユニットの個数は、4個に限定されず、4個未満でもよく、5個以上でもよい。
【0021】
一対のティース11,12は、シャフト2の周方向に離間して配置され、シャフト2の径方向に沿う方向に延在している。ティース11,12は、棒状の部材であり、磁性体からなる。ティース11,12の長手方向に交差する断面は、矩形でもよく、円形でもよい。ティース11,12の先端部11a,12aは、シャフト2側に配置されている。ティース11,12の基端部11b,12bは、先端部11a,12aよりもシャフト2の径方向において外方に配置されている。
【0022】
ヨーク13は、一対のティース11,12に連結されている。ヨーク13は、一対のティース11,12の基端部11b,12b同士を連結している。ヨーク13は、リング状の部材であり、磁性体からなる。ヨーク13の中心線が延在する方向は、シャフト2の中心線が延在する方向に対応している。ヨーク13は、シャフト2の周方向に沿って延在する円弧を含む。一対のティース11,12は、ヨーク13からシャフト2の外周面に向かって延在している。一対のティース11,12の基端部11b,12bは、ヨーク13に連結されている。一対のティース11,12に連結された連結部20は、ヨーク13の一部であり、基端部11b,12b間の部分を含む。一対のティース11,12と、連結部20とは、例えば接着されていてもよく、一体的に成形されていてもよい。一対のティース11,12と連結部20との間で磁気回路M1が形成可能であればよい。
【0023】
ティース11にはコイル14が巻回され、ティース12にはコイル15が巻回されている。コイル14,15は、ティース11,12の長手方向において、所定の長さを有する。コイル14,15は、例えばティース11,12の長手方向において、先端部11a,12a側に配置されている。コイル14,15は、ティース11,12の長手方向の中央部に配置されていてもよく、基端部11b,12b側に配置されていてもよい。コイルは、一対のティース11,12の一方のみに設けられていてもよい。コイル14,15は電源に接続されている。コイル14,15に通電することで、コイル14,15の周囲に磁界が生じる。コイル14,15には例えばパルス波が供給される。
【0024】
シャフト2の外周面には、磁性体部21が形成されている。この磁性体部21は、所定の厚みを有する板状を成し、全周にわたって連続している。磁性体部21は円環状を成している。磁性体部21は、シャフト2の長手方向において、一対のティース11,12に対応する位置に配置されている。一対のティース11,12の先端部11a,12aは、磁性体部21に対向して配置されている。シャフト2において、磁性体部21以外は、非磁性体により形成されている。
【0025】
ここで、一対のティース11,12の先端部11a,12aには、可変磁力磁石22,23が設けられている。ティース11,12の先端部11a,12aは、可変磁力磁石22,23によって構成されている。ティース11,12は、磁性体からなる部分と、可変磁力磁石からなる部分と、を含む。可変磁力磁石22,23は、低保磁力永久磁石である。可変磁力磁石22,23は、コイル14,15による磁界によって不可逆的に磁束密度が変化する程度の保磁力を有する低保磁力永久磁石である。可変磁力磁石22,23は、隣接する磁性体に対して接合されている。可変磁力磁石22,23は、例えば磁性体に接着されている。ティース11,12には、可変磁力磁石22,23と磁性体との境界が形成されている。
【0026】
可変磁力磁石22,23は、ティース11,12の長手方向において所定の長さを有する。可変磁力磁石22,23の一部は、ティース11,12の長手方向において、コイル14,15の内部に配置されている。すなわち、コイル14,15は、可変磁力磁石22,23を囲んでいる。コイル14,15は、可変磁力磁石22,23の外周に沿って巻回されている。可変磁力磁石22,23のうち、磁性体に隣接する部分がコイル14,15の内部に配置されている。可変磁力磁石22,23のうち、シャフト2側の部分は、コイル14,15から露出している。コイル14,15は、可変磁力磁石22,23から隣接する磁性体にわたる部位を囲んで延伸している。コイル14,15に流す瞬時電流値を制御することで、可変磁力磁石22,23に作用する磁界を変化させ、可変磁力磁石22,23の磁力を変化させることができる。
【0027】
次に図1及び図4を参照してアキシャル磁気軸受5について説明する。アキシャル磁気軸受5は、一対のティース31,32、ヨーク33及びコイル34,35を備える。アキシャル磁気軸受5は、シャフト2の周方向に間隔をとって配置された複数のユニット36を備える。複数のユニット36は、アキシャルディスク10を挟むように、シャフト2の長手方向の両側に設けられている。シャフト2の長手方向に離間するユニット36の中間位置に、アキシャルディスク10が配置されている。このユニット36は、一対のティース31,32、ヨーク33及びコイル34,35を含む。ユニット36は、配置が異なるだけであり、同じ構成である。ユニット36は、異なる構成でもよい。
【0028】
複数のユニット36は、アキシャルディスク10の両側において、シャフト2の周囲に配置されている。例えば、複数のユニット36は、アキシャルディスク10の片側において、シャフト2の周囲に4個配置されている。複数のユニット36のうち第1ユニット及び第2ユニットは、シャフト2の第1径方向Y1に対向して配置されている。複数のユニット36のうち第3ユニット及び第4ユニットは、シャフト2の第2径方向Y2に対向して配置されている。第1ユニット、第3ユニット、第2ユニット、第4ユニットは、シャフト2の周方向において90度ずつずれて配置されている。また、ユニットの個数は、アキシャルディスク10の片側において、4個に限定されず、4個未満でもよく、5個以上でもよい。
【0029】
一対のティース31,32は、シャフト2の径方向に離間して配置され、シャフト2の長手方向に延在している。ティース31,32は、棒状の部材であり、磁性体からなる。ティース31,32の長手方向に交差する断面は、矩形でもよく、円形でもよい。ティース31,32の先端部31a,32aは、アキシャルディスク10側に配置されている。ティース31,32の基端部31b,32bは、先端部31a,32aよりもアキシャルディスク10から遠い位置に配置されている。ティース31は、シャフト2の径方向において、ティース32よりも外側に配置されている。
【0030】
ヨーク33は、一対のティース31,32に連結されている。ヨーク33は、一対のティース31,32の基端部31b,32b同士を連結している。ヨーク33は、棒状の部材であり、磁性体からなる。ヨーク33は、シャフト2の径方向に延在している。一対のティース31,32は、ヨーク33からアキシャルディスク10に向かって延在している。一対のティース31,32の基端部31b,32bはヨーク33に連結されている。一対のティース31,32と、ヨーク33とは、例えば接着されていてもよく、一体的に成形されていてもよい。一対のティース31,32とヨーク33との間で磁気回路M2が形成可能であればよい。
【0031】
ティース31にはコイル34が巻回され、ティース32にはコイル35が巻回されている。コイル34,35は、ティース31,32の長手方向において、所定の長さを有する。コイル34,35は、例えばティース31,32の長手方向において、先端部31a,32a側に配置されている。コイル34,35は、ティース31,32の長手方向の中央部に配置されていてもよく、基端部31b,32b側に配置されていてもよい。コイルは、一対のティース31,32の一方のみに設けられていてもよい。コイル34,35は電源に接続されている。コイル34,35に通電することで、コイル34,35の周囲に磁界が生じる。コイル34,35には例えばパルス波が供給される。
【0032】
アキシャルディスク10は、円盤状を成し、磁性体からなる。アキシャルディスク10は、シャフト2に取り付けられ、シャフト2と一体として回転する。アキシャルディスク10は、シャフト2の径方向において、ユニット36よりも外側まで形成されている。アキシャルディスク10の板厚方向は、シャフト2の長手方向に対応している。一対のティース31,32の先端部31a,32aは、アキシャルディスク10の外面に対向して配置されている。
【0033】
ここで、一対のティース31,32の先端部31a,32aには、可変磁力磁石42,43が設けられている。ティース31,32の先端部31a,32aは、可変磁力磁石42,43によって構成されている。ティース31,32は、磁性体からなる部分と、可変磁力磁石からなる部分と、を含む。可変磁力磁石42,43は、低保磁力永久磁石である。可変磁力磁石42,43は、コイル34,35による磁界によって不可逆的に磁束密度が変化する程度の保磁力を有する低保磁力永久磁石である。可変磁力磁石42,43は、隣接する磁性体に対して接合されている。可変磁力磁石42,43は、例えば磁性体に接着されている。ティース31,32には、可変磁力磁石42,43と磁性体との境界が形成されている。
【0034】
可変磁力磁石42,43は、ティース31,32の長手方向において所定の長さを有する。可変磁力磁石42,43の一部は、ティース31,32の長手方向において、コイル34,35の内部に配置されている。すなわち、コイル34,35は、可変磁力磁石42,43を囲んでいる。コイル34,35は、可変磁力磁石42,43の外周に沿って巻回されている。可変磁力磁石42,43のうち、磁性体に隣接する部分がコイル34,35の内部に配置されている。可変磁力磁石42,43のうち、アキシャルディスク10側の部分は、コイル34,35から露出している。コイル34,35は、可変磁力磁石42,43から隣接する磁性体にわたる部位を囲んで延伸している。コイル34,35に流す瞬時電流値を制御することで、可変磁力磁石42,43に作用する磁界を変化させ、可変磁力磁石42,43の磁力を変化させることができる。
【0035】
次に図5を参照して、従来技術に係る磁気軸受におけるシャフト回転数と、電磁石平均電流値(要求吸引力)との関係について説明する。また、従来技術に係る磁気軸受における課題について説明する。従来技術に係る磁気軸受のティースは磁性体から構成され、可変磁力磁石を含んでいない。図5では、横軸にシャフトの回転数[rpm]を示し、縦軸に電磁石平均電流値[A]を示す。磁気軸受の電磁石における要求吸引力は、磁気軸受の電磁石平均電流値[A]に比例する。電磁石は、ティース及びコイルを含む。電磁石平均電流値は、単位時間当たりにコイルに供給された電流の値(電流値)[A]である。
【0036】
N次危険速度は、シャフトの固有振動数と共振する回転速度(単位時間当たりの回転数)である。例えばシャフトの回転数が低い方から、1次危険速度範囲CS1、2次危険速度範囲CS2、3次危険速度範囲CS3、・・・、N次危険速度範囲となる(Nは自然数)。N次危険速度範囲における要求吸引力は、N次危険速度範囲の前後における要求吸引力と比較して大きい。N次危険速度でシャフトを回転する場合における平均電流値は、N次危険速度ではない回転数でシャフトを回転する場合における平均電流値と比較して高い。
【0037】
シャフトの回転数を例えば定格回転数まで上昇させる際に、N次回転速度範囲を超えて回転数を上昇させる必要がある。N次危険速度範囲においては、シャフトの振動を抑制するために、電磁石による吸引力を大きくする必要があるので、吸引力の要求値(要求吸引力)が大きくなる。N次危険速度範囲において、コイルの電流値を増加させて、吸引力を大きくすると、コイルに供給する電流値(電磁石コイル電流)を増大する。これにより、省エネルギー化が抑制されると共に、コイルにおける発熱損失が増える。
【0038】
また、コイルの電流容量の観点からコイルの導線径を大きくすると、コイルの小型化が阻害される。コイルの電流値を増加させると、コイル内を通過するティースにおける磁気飽和を防ぐために、ティース(磁路幅)を大きくする必要があるので、電磁石の小型化が阻害される。
【0039】
次に図6を参照して、ラジアル磁気軸受4におけるシャフト2の回転数と、瞬時電流値との関係について説明する。図6(a)では、横軸に時間経過[sec]を示し、縦軸にシャフト2の回転数[rpm]を示している。図6(b)では、横軸に時間経過[sec]を示し、縦軸にコイル14,15に供給された瞬時電流値[A]を示している。図6(a)及び図6(b)における時間は同時刻である。
【0040】
図6(a)に示されるように、時間t1から時間t6まで、シャフト2の回転数fは例えば一定である(f=f1)。時間t6から時間t7まで、シャフト2の回転数fは増加している。時間t7では、シャフト2の回転数fは、「f2」となっている。時間t7から時間t8まで、シャフト2の回転数fは例えば一定である(f=f2)。時間t8から時間t9まで、シャフト2の回転数fは増加している。時間t9から時間t14まで、シャフト2の回転数fは例えば一定である(f=f3)
【0041】
図6(b)に示されるように、時間t1から時間t2まで、コイル14,15に供給される瞬時電流値iは、一定である(i=i1)。時間t2から時間t3まで、瞬時電流値iは増加している。時間t3では、瞬時電流値iは、「i2」となっている。時間t3から時間t4まで、瞬時電流値iは一定である(i=i2)。時間t4から時間t5まで、瞬時電流値iは減少している。時間t5では、瞬時電流値iは、「i3」となっている。瞬時電流値i3は、瞬時電流値i1よりも低い値である。
【0042】
時間t5から時間t6まで、瞬時電流値iは一定である(i=i3)。時間t6から時間t7まで、瞬時電流値iは増加している。時間t6から時間t7まで、時間の経過に伴って、瞬時電流値iの変化率は増加している。時間t7では、瞬時電流値iは、「i4」となっている。時間t7から時間t8まで、瞬時電流値iは一定である(i=i4)。時間t8から時間t9まで、瞬時電流値iは減少している。時間t8から時間t9まで、時間の経過に伴って、瞬時電流値iの変化率は減少している。時間t9では、瞬時電流値iは、「i5」となっている。瞬時電流値i5は、瞬時電流値i3と同じ値とすることができる。瞬時電流値i5は、瞬時電流値i3と同じ値でなくてもよい。なお、図6(b)では、増磁していない場合の瞬時電流値iの変化を一点鎖線で示している。時間t6から時間t9において、増磁状態の瞬時電流値iは、増磁していない状態の瞬時電流値よりも低下している。
【0043】
時間t9から時間t10まで、瞬時電流値iは一定である(i=i5)。時間t10から時間t11まで、瞬時電流値iは減少している。時間t11では、瞬時電流値iは、「i6」となっている。時間t11から時間t12まで、瞬時電流値iは一定である(i=i6)。瞬時電流値i6は、マイナスの値であり、瞬時電流値i5とは逆向きの電流の値である。減磁状態(瞬時電流値がマイナスの状態)では、増磁状態(瞬時電流値がプラスの状態)とは逆向きの磁界が可変磁力磁石22,23に生じている。
【0044】
時間t12から時間t13まで、瞬時電流値iは増加している。時間t13では、瞬時電流値iは、「i7」となっている。瞬時電流値i7は、瞬時電流値i1と同じ値とすることができる。瞬時電流値i7は、瞬時電流値i1と同じ値でなくてもよい。瞬時電流値i7は、プラスの値である。時間t13から時間t14まで、瞬時電流値iは一定である(i=i7)。
【0045】
図7は、ラジアル磁気軸受4におけるシャフト2の回転数と、電磁石平均電流値との関係を示すグラフである。図7では、横軸にシャフト2の回転数[rpm]を示し、縦軸に電磁石平均電流値[A]を示す。図7では、N次危険速度範囲における従来の電磁石平均電流値を一点鎖線で示している。図7では、N危険度速度範囲とその前後において、電磁石平均電流値は略同じ値となっている。N次危険速度範囲において、図6に示されるように、瞬時電流値を変化させて、可変磁力磁石22,23を増磁状態とすることで、コイル14,15の平均電流値を、従来と比較して低下させることができる。
【0046】
次に、図8を参照して、磁気軸受のコイルの電流値を制御する制御装置について説明する。回転機械1は、コイル14,15,34,35に供給される電流値を制御する制御装置50を備える。制御装置50は、制御ユニット51を含む。制御ユニット51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。制御ユニット51は、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。制御ユニット51には、ラジアル磁気軸受4のコイル14,15が電気的に接続されている。制御ユニット51には、アキシャル磁気軸受5のコイル34,35が電気的に接続されている。
【0047】
制御装置50は、ラジアル磁気軸受4のコイル14,15に電気的に接続された回路部を含んでもよい。制御装置50は、アキシャル磁気軸受5のコイル34,35に電気的に接続された回路部を含んでもよい。これらの回路部は、例えば、ダイオード、コンデンサ、スイッチ等を備える。
【0048】
制御ユニット51には、例えば回転角センサ52が電気的に接続されている。回転角センサ52は、シャフト2の単位時間当たりの回転角を検出する。回転角センサ52は、シャフト2の回転角に関する検出信号を制御ユニット51に送信する。制御ユニット51には、例えば変位センサ53が電気的に接続されていてもよい。変位センサ53は、シャフト2の位置を検出する。変位センサ53は、シャフト2の径方向の位置、及び長手方向の位置を検出する。変位センサ53は、シャフト2の径方向の位置、及び長手方向の位置に関する検出信号を制御ユニット51に送信することができる。
【0049】
制御ユニット51は、回転数検出部54、変位検出部55、判定部56、電流制御部57及び記憶部58を備える。記憶部58は、例えば判定部56による判定に用いられる判定閾値に関するデータを記憶する。また、記憶部58は、シャフト2のN次危険速度範囲に関するデータを記憶する。
【0050】
回転数検出部54は、回転角センサ52から出力された検出信号に基づいて、シャフト2の単位時間当たりの回転数(回転角)を算出する。回転数検出部54は、例えばその他のセンサ又は制御ユニットから信号を受信して、シャフト2の回転数を算出してもよい。例えば、モータ3の制御を司るモータ制御ユニットから、シャフト2の回転数に関する信号を受信して、シャフト2の回転数を算出してもよい。変位検出部55は、変位センサ53から出力された検出信号に基づいて、シャフト2の径方向の位置、及び長手方向の位置を算出する。
【0051】
判定部56は、例えば制御ユニット51による制御の実行時期を判定する。判定部56は、回転数検出部54で算出されたシャフト2の回転数に基づいて、シャフト2が回転時であるか、停止時であるかを判定することができる。また、判定部56は、例えば記憶部58に記憶された判定閾値を参照して、シャフト2の回転数がN次危険度範囲内であるか否かを判定してもよい。判定部56は、シャフト2の回転数に基づいて、所定の条件が成立しているか否かを判定してもよい。判定部56は、例えば、コイルに14,15,34,35に供給される瞬時電流値iの変更時期等を判定するための判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。判定部56は、例えばシャフト2の径方向の位置、及び長手方向の位置に基づいて、判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。また、判定部56は、例えば運転開始からの経過時間に基づいて、判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。
【0052】
電流制御部57は、コイル14,15,34,35に供給される電流値を制御する。電流制御部57は、例えばパルス波を送信して、瞬時電流値を制御することができる。電流制御部57は、単位時間当たりのパルス波数、パルス波の大きさ、パルス波の長さを変化させて、瞬時電流値を制御することができる。電流制御部57は、判定部56による判定結果に基づいて、コイル14,15,34,35に供給する電流値を制御する。
【0053】
電流制御部57は、シャフト2の回転時において、コイル14,15の瞬時電流値を第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、第1基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させる処理(第1電流制御処理)を実行することができる。電流制御部57は、シャフト2の回転時において、図6(b)に示されるように、時間t2から時間t5までの瞬時電流値の制御を行う。この場合において、第1基準電流値は瞬時電流値i1であり、第2基準電流値は瞬時電流値i2であり、第3基準電流値は瞬時電流値i3である。このような第1電流制御処理を実行することで、可変磁力磁石22,23に作用する磁界を一時的に強めて、可変磁力磁石22,23の磁力を、第1電流制御処理の実行前と比較して増加させることができる。
【0054】
電流制御部57は、シャフト2の回転時において、コイル14,15の瞬時電流値を第4基準電流値から第5基準電流値に低下させた後、第4基準電流値よりも高い第6基準電流値に上昇させる処理(第2電流制御処理)を実行することができる。第5基準電流値は、負の電流値である。電流制御部57は、シャフト2の回転時において、図6(b)に示されるように、時間t10から時間t13までの瞬時電流値の制御を行う。この場合において、第4基準電流値は瞬時電流値i5であり、第5基準電流値は瞬時電流値i6であり、第6基準電流値は瞬時電流値i7である。このような第2電流制御処理を実行することで、可変磁力磁石22,23に逆向きの磁界を生じさせて、可変磁力磁石22,23の磁力を、第2電流制御処理の実行前と比較して減少させることができる。
【0055】
第2電流制御処理によって可変磁力磁石22,23による磁力を減少させる場合、第1電流制御処理によって増加した磁力に対応して、磁力の減少量を設定することができる。例えば、第1電流制御処理による磁力の増加分を、第2電流制御処理によって減少させることで、可変磁力磁石22,23の磁力を元に戻すことができる。また、第2電流制御処理において、第1電流制御処理による磁力の増加分を超える磁力を減少させてもよい。第2電流制御処理において、第1電流制御処理による磁力の増加分よりも少ない磁力を減少させてもよい。
【0056】
電流制御部57は、シャフト2の停止時において、コイル14,15の瞬時電流値を第7基準電流値から第8基準電流値に上昇させた後、第7基準電流値よりも低い第9基準電流値に低下させる処理(第3電流制御処理)を実行することができる。電流制御部57は、シャフト2の停止時において、図6(b)に示されるように、時間t2から時間t5までの瞬時電流値の制御を行う。この場合において、第7基準電流値は瞬時電流値i1であり、第8基準電流値は瞬時電流値i2であり、第9基準電流値は瞬時電流値i3である。このような第3電流制御処理を実行することで、可変磁力磁石22,23に作用する磁界を一時的に強めて、可変磁力磁石22,23の磁力を、第3電流制御処理の実行前と比較して増加させることができる。この第3電流制御処理では、シャフト2は停止しているので、シャフト2の回転数は0である。
【0057】
電流制御部57は、シャフト2の回転時において、N次危険速度範囲における電流制御処理を実行することができる。N次危険速度範囲における電流制御処理は、例えばN次危険速度範囲の直前の時間(t6~t7)、N次危険速度範囲の時間(t7~t8)、及びN次危険速度範囲の直後の時間(t8~t9)を含む時間に実行される。電流制御部57は、N次危険速度範囲前に、コイル14,15の瞬時電流値を第10基準電流値から第11基準電流値まで上昇させる。電流制御部57は、N次危険速度範囲において、コイル14,15の電流値を第11基準電流値で維持する。電流制御部57は、N次危険速度範囲後に、コイル14、15の瞬時電流値を第11基準電流値から第12基準電流値まで低下させる。この場合において、第10基準電流値は瞬時電流値i3であり、第11基準電流値は瞬時電流値i4であり、第12基準電流値は瞬時電流値i5である。また、第10基準電流値及び第12基準電流値は同じ値でもよく、異なる値でもよい。
【0058】
電流制御部57は、アキシャル磁気軸受5のコイル34,35に対して、ラジアル磁気軸受4のコイル14,15に対する電流制御処理と同様の制御処理を実行することができる。電流制御部57は、アキシャル磁気軸受5に対して、ラジアル磁気軸受4とは異なる制御処理を実行してもよい。
【0059】
次に、図9を参照してシャフト2の回転時におけるラジアル磁気軸受4の電流制御の手順(磁気軸受の運転方法)について説明する。回転機械1のシャフト2は、モータ3によって駆動されて回転する。制御ユニット51の判定部56は、判定条件が成立しているか否かを判定する(ステップS1)。ここでは、第1電流制御処理の開始時期を判定するための判定条件が成立しているか否かを判定する。判定部56は、回転数検出部54で算出されたシャフト2の回転数に基づいて、判定条件が成立しているか否かを判定する。判定部56は、例えば、N次危険速度範囲より小さいシャフト回転数(判定閾値)を超えた場合に、判定条件が成立していると判定することができる。判定部56は、シャフト回転数がN次危険速度に達したときに、判定条件が成立していると判定してもよい。また、判定部56は、運転開始からの時間に基づいて、所定の時間が経過したときに、判定条件が成立していると判定してもよい。また、判定部56は、コイル14,15に供給する瞬時電流値に基づいて、判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。
【0060】
判定条件が成立していない場合(ステップS1;NO)には、ステップS1の処理を再度実施する。判定条件が成立している場合(ステップS1;YES)には、ステップS2に進む。
【0061】
ステップS2では、制御ユニット51の電流制御部57は、第1電流制御処理を実行する。ここでは、上述したように、コイル14,15の瞬時電流値を第1基準電流値i1から第2基準電流値i2に上昇させた後、第3基準電流値i3に低下させる。これにより、可変磁力磁石22,23による磁力を増加させる。可変磁力磁石22,23は増磁状態となる。
【0062】
続くステップS3では、電流制御部57はN次危険速度範囲における電流制御処理を実行する。例えば電流制御部57は、シャフト2の回転数に応じて、コイル14,15に供給される瞬時電流値を制御することができる。ここでは、上述したように、電流制御部57は、N次危険速度範囲前において、コイル14,15の瞬時電流値を第10基準電流値i3から第11基準電流値i4まで上昇させる。電流制御部57は、N次危険速度範囲内において、瞬時電流値を第11基準電流値i4に維持する。電流制御部57は、N次危険速度範囲後において、瞬時電流値を第11基準電流値i4から第12基準電流値i5まで低下させる。これにより、シャフト2がN次危険速度範囲を通過する際に、ラジアル磁気軸受4による吸引力を増加させることができる。
【0063】
なお、ここでは、ステップS2を実行した後に、ステップS3を連続して実行しているが、ステップS3の実行前において、N次危険速度範囲における電流制御処理の開始時期を判定するための判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。
【0064】
続くステップS4では、電流制御部57は、第2電流制御処理を実行する。ここでは、上述したように、コイル14,15の瞬時電流値を第4基準電流値i5から負の電流値である第5基準電流値i6に低下させた後、第6基準電流値i7に上昇させる。これにより、可変磁力磁石22,23による磁力を低下させる。可変磁力磁石22,23は減磁状態となる。例えば、減磁状態において、可変磁力磁石22,23による磁力は、増磁前の磁力と同じとすることができる。
【0065】
また、ステップS4において、複数のユニット16~19のコイル14,15に瞬時電流値を印加する場合には、ユニット16~19ごとに瞬時電流値を変更する時期を異なるようにすることができる。例えば、ユニット16、ユニット17、ユニット18、ユニット19の順に、第2電流制御処理を実行する。これにより、第1径方向Y1に対向するユニット16,17に対して、第2電流制御処理を実行した後に、第2径方向Y2に対向するユニット18,19に対して、第2電流制御処理を実行することができる。各ユニットに対して、第2電流制御処理を実行する順番は、その他の順番でもよく、例えば、シャフト2の周方向に、ユニット16、ユニット18,ユニット17,ユニット19の順に、第2電流制御処理を実行してもよい。
【0066】
なお、ここでは、ステップS3を実行した後に、ステップS4を連続して実行しているが、ステップS4の実行前において、N次危険速度範囲における電流制御処理の開始時期を判定するための判定条件が成立しているか否かを判定してもよい。
【0067】
続くステップS5では、判定部56は定格運転中であるか否かを判定する。ここでは、回転数検出部54で算出されたシャフト2の回転数に基づいて、定格運転中であるか否かを判定する。シャフト2の回転数が、定格回転数に達している場合には、定格運転中であると判定する。シャフト2の回転数が、定格回転数に達していない場合には、定格運転中ではないと判定する。また、判定部56は、例えばモータ3の制御を司る制御ユニットからの信号を受信して、回転機械1が定格運転中であるか否かを判定してもよい。
【0068】
回転機械1が定格運転中である場合(ステップS5;YES)には、ここでの処理を終了する。回転機械1が定格運転となっていない場合(ステップS5;NO)には、ステップS1に戻り、ステップS1~S5までの処理を繰り返す。その後、回転機械1が定格運転となったらここでの処理を終了する。なお、アキシャル磁気軸受5の電流制御も、ラジアル磁気軸受4の電流制御と同様に実施することができる。
【0069】
次に、図10を参照してシャフト2の停止時におけるラジアル磁気軸受4の電流制御の手順について説明する。回転機械1では、シャフト2の停止時において、ラジアル磁気軸受4の可変磁力磁石22,23による磁力を変更することができる。図10に示す制御は、例えば図9に示す制御が終了した後に実行される。
【0070】
制御ユニット51の判定部56は、シャフト2の回転が停止しているか否かを判定する(ステップS11)。判定部56は、回転数検出部54で算出されたシャフト2の回転数に基づいて、シャフト2が停止しているか否かを判定する。シャフト2が停止していない場合(ステップS11;NO)には、ここでの処理を終了する。シャフト2が停止している場合(ステップS11;YES)には、ステップS12に進む。
【0071】
ステップS12では、電流制御部57は、第3電流制御処理を実行する。ここでは、上述したように、コイル14,15の瞬時電流値を第2基準電流値i2に上昇させた後、第3基準電流値i3に低下させる。これにより、可変磁力磁石22,23による磁力を増加させる。可変磁力磁石22,23は増磁状態となる。ステップS12の処理を終了したら、ここでの処理を終了する。
【0072】
なお、図10に示す制御では、シャフト2の回転が停止した場合に、第3電流制御処理を実行しているが、シャフト2の回転が停止する前であり、シャフト2の回転が所定の判定閾値以下の低速となった場合に、第3電流制御処理を実行してもよい。例えば、回転機械1の運転停止ボタンが操作された場合に、第3電流制御処理を実行してもよい。
【0073】
また、シャフト2の停止時において、可変磁力磁石22,23による磁力を検出し、この検出結果に基づいて、第3電流制御処理を実行してもよい。可変磁力磁石22,23による磁力を検出する磁力計、及びコイル14,15に供給される瞬時電流値を計測する電流計を備える構成とし、これらの磁力計及び電流計による計測値に基づいて、可変磁力磁石22,23による磁力を検出することができる。例えば、シャフト2の停止時において、コイル14,15に正の瞬時電流値を印加して、可変磁力磁石22,23を増磁させてもよい。また、シャフト2の停止時において、コイル14,15に負の瞬時電流値を印加して、可変磁力磁石22,23を減磁させてよい。なお、アキシャル磁気軸受5の電流制御も、ラジアル磁気軸受4の電流制御と同様に実施することができる。
【0074】
コイル14,15に供給される電流値の絶対値は、例えば可変磁力磁石22,23の保磁力よりも大きい値の磁界を生じさせる電流値とすることができる。電流制御部57は、コイル14,15の電流値の絶対値として、可変磁力磁石22,23の保磁力よりも大きい値の磁界を生じさせる電流値を印加して、可変磁力磁石22,23による磁力を増加又は減少させることができる。例えば、コイル14,15の電流値として正(プラス)の電流値を印加する場合に、可変磁力磁石22,23の保磁力よりも大きい値の磁界を生じさせる電流値を印加して、可変磁力磁石による磁力を増加させることができる。コイル14,15の電流値として負の電流値を印加する場合には、可変磁力磁石22,23の保磁力よりも大きな値であり、正の場合とは逆向きの磁界を生じさせる電流値を印加して、可変磁力磁石22,23による磁力を減少させることができる。
【0075】
この回転機械1のラジアル磁気軸受4では、コイル14,15によって形成された磁場により、一対のティース11,12、連結部20、及びシャフト2の外周面(磁性体部21)を通る磁気回路M1が形成される。これにより、シャフト2の周囲に吸引力を発生させて、シャフト2の径方向の荷重を支えることができる。このラジアル磁気軸受4では、一対のティース11,12に可変磁力磁石22,23が設けられているので、コイル14,15に流す電流を制御して、可変磁力磁石22,23による磁力を増加又は減少させることができる。これにより、可変磁力磁石22,23による磁力の変更後において、コイル14,15の電流値に対するゲイン特性は、可変磁力磁石22,23による磁力の変更前と比較して変更される。
【0076】
ラジアル磁気軸受4では、一対のティース11,12の先端部11a,12aに可変磁力磁石22,23が設けられているので、可変磁力磁石22,23と、これに隣接する磁性体との境界を少なくすることができる。可変磁力磁石22,23がティースの長手方向の中間部に配置されている場合と比較して、可変磁力磁石22,23と磁性体との境界を少なくすることができる。これにより、製造時において、可変磁力磁石22,23と磁性体との接合の手間を省くことができる。例えば、製造時において境界における不具合の発生を抑制することができる。
【0077】
ラジアル磁気軸受4では、シャフト2の回転時に、コイル14,15の電流値を、第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、第1基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させることができる。これにより、シャフト2の回転中に、可変磁力磁石22,23による磁力を増加(増磁)させることができる。その結果、可変磁力磁石22,23が増磁される前と比較して、コイル14,15の電流値に対するゲインが増加する。例えば、増磁前と比較して少ない電流値で、増磁前と同等の吸引力を発生させることができる。
【0078】
ラジアル磁気軸受4では、シャフト2の回転時に、コイル14,15の電流値を、第4基準電流値から負の電流値である第5基準電流値に低下させた後、第4基準電流値よりも高い第6基準電流値に上昇させることができる。これにより、シャフト2の回転中に、可変磁力磁石22,23による磁力を低下させることができる。その結果、可変磁力磁石22,23が減磁される前と比較して、コイル14,15の電流値に対するゲインは低下する。電流値を同一とした場合には、減磁後の吸引力は、減磁前の吸引力より弱くなる。コイルの電流値に対するゲインが大きくなり過ぎることを抑制することができる。ゲインが大きくなり過ぎることを抑制し、吸引力の制御精度を向上させることができる。例えば、減磁前と比較して同一の電流値を供給した場合に、減磁後において吸引力の変化を抑制することができるので、より細かい吸引力の制御を行うことができる。そのため、シャフト2の変位を調整する際に、精度よくシャフト2の位置を調整することが可能となる。
【0079】
ラジアル磁気軸受4では、シャフト2の停止時に、コイル14,15の電流値を、第7基準電流値から第8基準電流値に上昇させた後、第7基準電流値よりも低い第9基準電流値に低下させることができる。これにより、シャフト2の停止時(回転前又は回転後)に、可変磁力磁石22,23による磁力を増加させることができる。その結果、可変磁力磁石22,23が増磁される前と比較して、コイルの電流値に対するゲインは増加する。
【0080】
ラジアル磁気軸受4では、第2電流制御処理を実行して、可変磁力磁石22,23の磁力を減少させる場合に、ユニット16,ユニット17,ユニット18,ユニット19の順に、瞬時電流値を変更することができる。これにより、複数のユニット16~19において、コイル14,15の電流値が同時にゼロとなることが回避される。そのため、ラジアル磁気軸受4における吸引力が喪失してしまうことが抑制される。
【0081】
このようなラジアル磁気軸受4によれば、コイル14,15に供給される電流を低減することができるので、消費電力の増大を抑制することができる。また、回転機械1では、コイル14,15に供給される電流を低減できるので、コイル14,15の導線径を抑制することができる。その結果、ラジアル磁気軸受4の小型化を図ることができる。ラジアル磁気軸受4の大型化を抑制することができる。また、ラジアル磁気軸受4の小型化を図ることで、シャフト2の長さを抑制することができる。シャフト2の長さを短くすることで、シャフト2による振動の影響を抑制することができる。ラジアル磁気軸受4によれば、コイル14,15に供給される電流を低減することができるので、コイル14,15における発熱を抑制することができる。
【0082】
また、回転機械1のアキシャル磁気軸受5では、コイル34,35によって形成された磁場により、一対のティース31,32、ヨーク33、及びアキシャルディスク10を通る磁気回路M2が形成される。これにより、シャフト2の周囲において、シャフト2の軸線方向に吸引力を発生させて、シャフト2の長手方向の荷重を支えることができる。このアキシャル磁気軸受5では、一対のティース31,32に可変磁力磁石42,43が設けられているので、コイル34,35に流す電流を制御して、可変磁力磁石42,43による磁力を増加又は減少させることができる。これにより、可変磁力磁石42,43による磁力の変更後において、コイル34,35の電流値に対するゲイン特性は、可変磁力磁石42,43による磁力の変更前と比較して変更される。このようにアキシャル磁気軸受5において、ラジアル磁気軸受4と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
回転機械1では、図6(a)に示されるように、段階的(ステップ状)にシャフト2の回転数fを増加させているが、例えば連続的にシャフト2の回転数fを増加させてもよい。また、シャフト2の回転数を、減少させる場合において、可変磁力磁石22,23による磁力を増加又は減少させてもよい。また、回転機械1において、N次危険速度範囲内に、シャフト2の回転数を維持するように運転してもよい。
【0084】
上記の第1実施形態のラジアル磁気軸受4では、コイル14,15を備え、コイル14、15に供給される電流値を制御して、吸引力を制御すると共に、可変磁力磁石22,23による磁力を変更しているが、吸引力を制御するためのコイル(吸引力制御用コイル)と、可変磁力磁石22,23による磁力を変更するためのコイル(可変磁力磁石用コイル)と、を別々に備える構成でもよい。同様に、アキシャル磁気軸受5において、吸引力制御用コイルと、可変磁力磁石用コイルと、を別々に備える構成でもよい。
【0085】
電流制御部57は、シャフト2の始動直後(回転時)において、コイル14,15の瞬時電流値を第1基準電流値から第2基準電流値に上昇させた後、第2基準電流値よりも低い第3基準電流値に低下させる処理(第4電流制御処理)を実行することができる。電流制御部57は、シャフト2の始動直後において、図6(b)に示されるように、時間t2から時間t5までの瞬時電流値の制御を行う。この場合において、第1基準電流値は瞬時電流値i1であり、第2基準電流値は瞬時電流値i2であり、第3基準電流値は瞬時電流値i3である。このような第4電流制御処理を実行することで、可変磁力磁石22,23に作用する磁界を一時的に強めて、可変磁力磁石22,23の磁力を、第4電流制御処理の実行前と比較して増加させることができる。シャフト2の始動直後とは、シャフト2が停止している状態から回転し始めた後の時間を含む。例えば、シャフト2が回転し始めてからの時間経過に応じて、シャフト2の始動直後であるか否かを判定してもよい。例えば、シャフト2が回転し始めてからの回転数に応じて、シャフト2の始動直後であるか否かを判定してもよい。
【0086】
次に図11を参照して、第2実施形態に係るラジアル磁気軸受について説明する。図11に示される第2実施形態のラジアル磁気軸受61が、第1実施形態のラジアル磁気軸受4と異なる点は、可変磁力磁石62の配置が異なる点である。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0087】
ラジアル磁気軸受61は、一対のティース11,12、ヨーク13及びコイル14,15を備える。一対のティース11,12に連結された連結部20の中央部20aには、可変磁力磁石62が設けられている。中央部20aは、ヨーク13の円周方向において、一対のティース11,12間の中央の部分である。
【0088】
可変磁力磁石62の周囲には、可変磁力磁石用コイル(以下「VM用コイル」という)63が配置されている。VM用コイル63は、可変磁力磁石62に巻回されている。VM用コイル63は、ヨーク13の円周方向において所定の長さを有する。可変磁力磁石62は、VM用コイル63の内側のみに配置されていてもよく、VM用コイル63の外側に配置されていてもよい。VM用コイル63には、電源が接続されている。VM用コイル63を通電することで、VM用コイル63の周囲に磁界が生じる。VM用コイル63には例えばパルス波が供給される。
【0089】
VM用コイル63には、制御ユニットが接続されている。制御ユニットの電流制御部は、上述した第1電流制御処理、第2電流制御処理及び第3電流制御処理を実行し、VM用コイル63に供給される瞬時電流値を制御する。これにより、可変磁力磁石62による磁力を増加又は減少させることができる。また、制御ユニットの電流制御部は、上述したN次危険速度範囲における電流制御処理を実行し、一対のコイル14,15に供給される瞬時電流値を制御する。このような第2実施形態に係るラジアル磁気軸受61を備えた回転機械においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0090】
なお、連結部20に設けられる可変磁力磁石及びVM用コイルは、連結部20の中央部に設けられたものに限定されず、例えば、連結部20の端部に設けられていてもよい。また、アキシャル磁気軸受においても、ヨーク33に可変磁力磁石及びVM用コイルが設けられていてもよい。
【0091】
次に、第1変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第1変形例に係るラジアル磁気軸受が、第1実施形態と違う点について説明する。第1変形例に係るラジアル磁気軸受は、一つのユニットにおいて複数の連結部を備えている。複数の連結部は、シャフト2の径方向において、異なる位置に配置されている。複数の連結部は、ヨーク13の一部である第1連結部20と、ヨーク13の外側(シャフト2の径方向外側)に配置された第2連結部とを含む。
【0092】
第2連結部は、ヨーク13から外側に延びる一対の延長部と、一対の延長部を連結する外側連結部とを含む。一対の延長部は、一対のティース11,12に対応する位置に配置されている。シャフト2の長手方向から見た場合に、ティース及び延長部は、例えば直線上に連続して配置されている。外側連結部には、可変磁力磁石が設けられている。この可変磁力磁石の周囲には、VM用コイルが設けられている。第1変形例では、一対のティース11,12、一対の延長部及び外側連結部を通る磁気回路が形成される。
【0093】
第1変形例では、一対のティース及び第1連結部20には、可変磁力磁石は設けられていない。アキシャル磁気軸受においても、ヨーク33の外側に第2連結部が設けられていてもよい。アキシャル磁気軸受において、第2連結部に可変磁力磁石が設けられ、この可変磁力磁石の周囲にVM用コイルが設けられていてもよい。
【0094】
次に、第2変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第2変形例に係るラジアル磁気軸受が、第1実施形態と違う点について説明する。第2変形例に係るラジアル磁気軸受は、複数の連結部を備えている。複数の連結部は、ヨーク13の一部である第1連結部20と、ヨーク13の内側(シャフト2の径方向内側)に配置された第3連結部とを含む。第3連結部は、ヨーク13の内側で、一対のティース11,12に連結されている。この第3連結部には、可変磁力磁石が設けられている。この可変磁力磁石の周囲には、VM用コイルが設けられている。第2変形例では、一対のティース11,12及び第3連結部を通る磁気回路が形成される。
【0095】
第2変形例では、一対のティース及び第1連結部20には、可変磁力磁石は設けられていない。アキシャル磁気軸受においても、ヨーク33の内側に第3連結部が設けられていてもよい。アキシャル磁気軸受において、第3連結部に可変磁力磁石が設けられ、この可変磁力磁石の周囲にVM用コイルが設けられていてもよい。
【0096】
次に、第3変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第3変形例に係るラジアル磁気軸受が、第2変形例に係るラジアル磁気軸受と違う点は、第1連結部20に、可変磁力磁石及びVM用コイルが設けられている点である。第3変形例では、一対のティース及び第3連結部には、可変磁力磁石は設けられていない。アキシャル磁気軸受においても同様に、可変磁力磁石及びVM用コイルを配置することができる。
【0097】
次に、第4変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第4変形例に係るラジアル磁気軸受が、第1実施形態のラジアル磁気軸受4と違う点は、連結部20からシャフト2の長手方向に延在する第4連結部と、この第4連結部からシャフト2の外周面に向かって延びるティースとを含む点である。ラジアル磁気軸受において、3本以上のティースを備える構成でもよい。ラジアル磁気軸受において、シャフト2の長手方向に離間する複数のティースを備える構成でもよい。第4変形例では、シャフト2の長手方向に延在する第4連結部に可変磁力磁石及びVM用コイルが設けられている。第4連結部からシャフト2の外周面に向かって延びるティースに可変磁力磁石及びVM用コイルが設けられていてもよい。
【0098】
アキシャル磁気軸受において、3本以上のティースを備える構成でもよい。アキシャル磁気軸受において、アキシャルディスクの周方向に延在する連結部を備える構成でもよい。アキシャル磁気軸受において、アキシャルディスクの周方向に延在する連結部に可変磁力磁石及びVM用コイルが設けられていてもよい。
【0099】
次に、第5変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第5変形例に係るラジアル磁気軸受が、第1実施形態のラジアル磁気軸受4と違う点は、可変磁力磁石を備えていないユニットを備えている点である。第5変形例に係るラジアル磁気軸受では、シャフト2の周方向において隣接するユニット16~19間に、可変磁力磁石を備えていないユニットが配置されている。可変磁力磁石を備えていないユニットは、磁性体からなる一対のティース及び連結部を備えている。このようにラジアル磁気軸受は、可変磁力磁石22,23を備えるユニット16~19と、可変磁力磁石を備えていないユニットとを備えていてもよい。同様に、アキシャル磁気軸受においても、可変磁力磁石を備えるユニットと、可変磁力磁石を備えていないユニットと、を含んでもよい。
【0100】
次に、第6変形例に係るラジアル磁気軸受について説明する。第6変形例に係るラジアル磁気軸受が、第1実施形態のラジアル磁気軸受4と違う点は、ティース11,12に可変磁力磁石22,23の他に、永久磁石が設けられている点である。ティース11,12の長手方向において、可変磁力磁石22,23と永久磁石とが隣接して配置されている。例えば、ティース11,12の長手方向において、シャフト2に近い方に、永久磁石が配置され、シャフト2から遠い方に、可変磁力磁石22,23が配置されている。なお、シャフト2から近い方に可変磁力磁石22,23が配置され、シャフト2から遠い方に、永久磁石が配置されていてもよい。同様に、アキシャル磁気軸受においても、ティース31,32に可変磁力磁石42,43の他に,永久磁石が設けられていてもよい。また、連結部に可変磁力磁石が設けられている磁気軸受において、可変磁力磁石の他に永久磁石が設けられていてもよい。また、複数のユニットを備える磁気軸受において、可変磁力磁石及び永久磁石を備えるユニットと、可変磁力磁石を備えていないユニットと、を含んでもよい。また、複数のユニットを備える磁気軸受において、可変磁力磁石を備えるユニットと、永久磁石を備えるユニットと、可変磁力磁石及び永久磁石を備えていないユニットと、を含んでもよい。
【0101】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0102】
上記の実施形態では、磁気軸受を備える回転機械として圧縮機を例示しているが、回転機械は圧縮機に限定されず、例えばターボチャージャ、ポンプ、ブロア、モータ等その他の回転機械でもよい。また、磁気軸受は、回転機械に適用されるものに限定されず、シャフトを回転可能に支持するその他の装置に適用可能である。また、磁気軸受は、シャフトの径方向の荷重を受けるラジアル軸受のみに適用されていてもよく、シャフトの軸方向の荷重を受けるアキシャル軸受のみに適用されていてもよい。
【0103】
また、一対のティースは棒状を成すものに、限定されず、例えば同心円状に配置された複数の筒体を備えるものでもよく、その他の形状のティースでもよい。また、連結部は、複数のユニットに共通するヨークの一部であるものに限定されない。磁気軸受は、ユニットごとに、別々の連結部を備える構成でもよい。
【0104】
また、例えば一対のティース及び連結部は、連続して円弧状を成していてもよい。ティースは直線的に配置されているものに限定されず、湾曲していてもよい。また、上記の実施形態では、ティースのみ又は連結部のみに可変磁力磁石が設けられている構成について説明しているが、ティース及び連結部に連続して、可変磁力磁石が設けられている構成でもよい。同様に、コイルは、可変磁力磁石の配置に対応して、ティース及び連結部に連続するように設けられていてもよい。
【0105】
コイルは、ティース及び連結部のうちの一部分を少なくとも含む領域である第1領域の周囲に配置されていればよい。第1領域は、ティースのみに形成されていてもよく、連結部のみに形成されていてもよく、ティース及び連結部に形成されていてもよい。
【0106】
可変磁力磁石は、ティース及び連結部のうち、第1領域の周囲に配置されたコイルに係る領域である第2領域に設けられていればよい。コイルに係る第2領域とは、コイルによる磁界による影響を受ける領域を含み、コイルの磁界によって、可変磁力磁石の磁力を変更することができる領域を含む。第2領域は、ティースのみに形成されていてもよく、連結部のみに形成されていてもよく、ティース及び連結部に形成されていてもよい。また、第1領域及び第2領域は、同じ領域を含んでもよく、互いに隣り合うように設定されていてもよく、離れていてもよい。
【符号の説明】
【0107】
2 シャフト
4 ラジアル磁気軸受(磁気軸受)
5 アキシャル磁気軸受(磁気軸受)
11、12 ティース
11a、12a 先端部(ティースのシャフト側の端部)
14、15 コイル
16~19 ユニット
20 連結部
22、23 可変磁力磁石
31、32 ティース
33 ヨーク(連結部)
34、35 コイル
36 ユニット
42、43 可変磁力磁石
57 電流制御部
61 ラジアル磁気軸受(磁気軸受)
62 可変磁力磁石
63 可変磁力磁石用コイル(VM用コイル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11