(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
H01L 35/32 20060101AFI20221213BHJP
H01L 35/24 20060101ALI20221213BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L35/32 Z
H01L35/24
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2019002641
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渕上 雄太
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-281666(JP,A)
【文献】特開2011-216803(JP,A)
【文献】特開2018-067567(JP,A)
【文献】特開2016-207933(JP,A)
【文献】特開2017-092437(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0091197(KR,A)
【文献】国際公開第2015/166595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/32
H01L 35/24
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換単位が直列に複数形成されている基板を、隙間を介して並列に複数備え、
前記基板は、前記直列の方向に進む波形に形成され、前記波形は一つの凸部または凹部が有する一対の斜面からなり、
隣り合う前記基板において、前記波形を構成する凸部の頂点が前記直列の方向の異なる位置に存在し、
前記熱電変換単位は、前記一対の斜面に形成された第一層および第二層を有し、前記第一層および前記第二層の少なくともいずれかは熱電変換材料からなり、前記第一層および前記第二層は電気的に接続され、
隣り合う前記熱電変換単位の前記第一層と前記第二層とが電気的に接続され、
複数の前記基板は、それぞれ、前記直列の方向の両端に、前記第一層および前記第二層にそれぞれ電気的に接続された接続端子を有する熱電変換素子。
【請求項2】
熱電変換単位が直列に複数形成されている基板を、隙間を介して並列に複数備え、
前記基板は、前記直列の方向に進む波形に形成され、前記波形は一つの凸部または凹部が有する一対の斜面からなり、前記一対の斜面の一方は他方よりも傾斜方向の寸法が大きく、
隣り合う前記基板において、前記波形を構成する凸部の頂点が前記直列の方向の同じ位置に存在し、前記並列の方向で前記一方の斜面と前記他方の斜面が交互に存在し、
前記熱電変換単位は、前記一対の斜面に形成された第一層および第二層を有し、前記第一層および前記第二層の少なくともいずれかは熱電変換材料からなり、前記第一層および前記第二層は電気的に接続され、
隣り合う前記熱電変換単位の前記第一層と前記第二層とが電気的に接続され、
複数の前記基板は、それぞれ、前記直列の方向の両端に、前記第一層および前記第二層にそれぞれ電気的に接続された接続端子を有する熱電変換素子。
【請求項3】
前記一対の斜面の一方は他方よりも傾斜方向の寸法が大きい請求項1記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記第一層および前記第二層のうち前記一方の斜面に形成されている層は、前記他方の斜面に形成されている層よりも導電率の高い材料で形成されている請求項2または3記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記隙間は、前記基板の前記並列の方向の寸法以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項6】
複数の前記基板は、一面上に固定され、
隣り合う前記基板の前記接続端子同士の接続により、全ての前記熱電変換単位が全体で直列接続され、前記直列接続の両端に存在する前記接続端子が外部端子として機能する請求項1~5のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子は、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる素子である。熱電変換素子をその両端に温度差が生じる環境に設置することで、可動部を必要とせずに熱電変換素子から電力を取り出すことができる。例えば、排熱から電気エネルギーを生み出すことができる。そのため、熱電変換素子を用いた発電技術は、身の周りの未利用のエネルギーを回収して利用するエナジーハーベスティング技術として、大いに期待されている。
【0003】
熱電変換素子を、例えば、工業製品の生産設備に使用される電動機や排水管などの熱源に設置すれば、付帯する冷却ファンの電源として使用することができ、効率よくエネルギーを使用することが可能となる。また、分散型の自立電源として利用することができれば、大規模センサネットワーク、ウェアラブルエレクトロニクスなどの電源として用いることが可能となる。特に、有機物からなる熱電変換材料を用いた場合には、熱電変換層を印刷パターンで形成できるため、軽量化、低コスト化、大面積による高出力化が可能となる。この場合、熱電変換素子ユニットの平面性を保つため、温度差はユニットの基板に垂直な方向に与えるのが一般的である。
【0004】
特許文献1によると、電動機が高温になると、内部の永久磁石の温度が変化してしまい磁束が乱れ、電動機制御が不安定となる。その対策に、永久磁石の温度を推定して電動機を制御する構成が開示されている。
熱電変換層を印刷パターンとして有する熱電変換素子の一例として、特許文献2に開示された熱電発電素子が挙げられる。特許文献2の熱電変換素子(熱電発電素子)では、底部と頂部とが交互に繰り返された波形の基板(基材)に、印刷パターンからなる複数の熱電変換層(熱電変換単位)が形成され、複数の熱電変換層が直列接続されている。各熱電変換層は、基板の波形を構成する一つの凸部または凹部が有する一対の斜面の一方に形成され、他方には形成されていない。
【0005】
一方、エナジーハーベスティングの分野では電圧が重要であり、同じ発電量(電圧×電流)であっても、電圧が小さいと実用に耐えない。熱電変換モジュールの場合、2種類の異なる金属または半導体を接合して、両端に温度差を生じさせ起電力を生じさせる(ゼーベック効果)。これは、p型半導体とn型半導体を交互に組み合わせて使用することが一般的である。また、電圧はゼーベック係数×温度差×素子数で決まるが、ゼーベック係数は数10~数100μV/Kと小さい。よって、実用化のためには、モジュールの形状において、限られた高さで温度差を、限られた面積で素子数を、それぞれ増やす工夫が必要である。
【0006】
特に、モジュールを構成する素子数(熱電変換単位の数)については、電子デバイスの形状として一般的な長方形のモジュールを考えると、熱電変換単位を列状に並べて、モジュールの端でジグザグに折り返すように直列接続させる構造が作りやすい。特許文献2の熱電変換素子は、この構造を有する。
特許文献2の熱電変換素子では、底部を吸熱側、頂部を放熱側とし、底部側と頂部側の温度差により発電が行われる。また、基板が波形に形成されていることで、吸熱側と放熱側との距離が大きくなる分、大きな温度差を得ることができる。これに対して、凹凸のない基板を有する熱電変換素子では、基板を水平に保持した状態では十分な温度差が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6329887号公報
【文献】国際公開2013/114854号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の熱電素子では、熱電変換単位毎に、熱電変換単位の周囲に大気が触れる状態にすることができないため、放熱側である頂部を効果的に冷却するという点で改善の余地がある。
この発明の課題は、放熱側が効果的に冷却されて、高い発電性能が得られる熱電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の第一態様は、下記の構成(1)~(3)を有する熱電変換素子を提供する。
(1)熱電変換単位が直列に複数形成されている基板を、隙間を介して並列に複数備えている。基板は、前記直列の方向に進む波形(凸凹の繰り返し)に形成されている。波形は一つの凸部または凹部が有する一対の斜面からなる。
(2)隣り合う基板において、波形を構成する凸部の頂点が前記直列の方向の異なる位置に存在する。
(3)熱電変換単位は、波形の一対の斜面に第一層および第二層を有し、これらの第一層および第二層は電気的に接続されている。前記第一層および前記第二層の少なくともいずれかは熱電変換材料からなる。隣り合う熱電変換単位の第一層と第二層とが電気的に接続されている。複数の基板は、それぞれ、前記直列の方向の両端に、第一層および第二層にそれぞれ電気的に接続された接続端子を有する。
【0010】
この発明の第二態様は、上記構成(1)(3)と下記の構成(4)を有する熱電変換素子を提供する。
(4)波形の一対の斜面の一方は他方よりも傾斜方向の寸法が大きい。
(5)隣り合う基板において、波形を構成する凸部の頂点が前記直列の方向の同じ位置に存在し、前記並列の方向で一方の斜面と他方の斜面が交互に存在する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の熱電変換素子によれば、放熱側が効果的に冷却されて、高い発電性能が得られることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態の熱電変換素子を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態の熱電変換素子を示す平面図である。
【
図3】第一実施形態の熱電変換素子を示す側面図である。
【
図4】第一実施形態の熱電変換素子を製造する際に使用する帯状体を示す平面図である。
【
図5】第一実施形態の熱電変換素子を製造する際に使用する板状体を示す平面図である。
【
図7】第二実施形態の熱電変換素子を示す斜視図である。
【
図8】第二実施形態の熱電変換素子を示す平面図である。
【
図9】第二実施形態の熱電変換素子を示す側面図である。
【
図10】第二および第三実施形態の熱電変換素子を製造する際に使用する帯状体を示す平面図である。
【
図11】第二および第三実施形態の熱電変換素子を製造する際に使用する板状体を示す平面図である。
【
図13】第三実施形態の熱電変換素子を示す斜視図である。
【
図14】第三実施形態の熱電変換素子を示す平面図である。
【
図15】第三実施形態の熱電変換素子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。
[第一実施形態]
<構成>
図1~
図3に示すように、この実施形態の熱電変換素子1は、五個の帯状の波形体101~105を有する。
波形体101~105は、それぞれ、帯状の波形基板2の上面に、五個の熱電変換単位10が形成されたものである。五個の波形体101~105は同じものである。波形基板2の波形は、帯状の長手方向に進む波形(凸凹凸の繰り返し)であり、五個の熱電変換単位10は、この長手方向に沿って直列に形成されている。
波形基板2は、長手方向両端に形成された平坦部21と、両平坦部の間に形成された連続する五個の凸部22を有する。五個の凸部22は形状および寸法が同じである。一つの凸部22は一対の斜面221,222からなり、隣り合う凸部22の第一の斜面221および第二の斜面222が凹部23を形成する。
【0014】
凸部22を構成する第一の斜面221と第二の斜面222は、支持板5に垂直な基準線に対して線対称の形状を有する。つまり、
図3に示すように、第一の斜面221の基準線に対する角度θ1と第二の斜面222の基準線に対する角度θ2は同じである。
また、凹部23を構成する第一の斜面221と第二の斜面222についても、支持板5に垂直な基準線に対する第一の斜面221の角度θ3と、第二の斜面222の角度θ4とが同じである。また、θ1=θ2=θ3=θ4である。よって、第一の斜面221と第二の斜面222とで傾斜方向の寸法は同じである。
【0015】
図1および
図2に示すように、熱電変換単位10は、導電率が異なる第一層31および第二層32と、第一層31および第二層32を接続する第一配線層41を有する。第一層31および第二層32は、波形基板2の一つの凸部22を構成する一対の斜面221,222の上面に、それぞれ形成されている。波形基板2の凸部22の最頂部には第一層31および第二層32が存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31および第二層32の端部の上面に第一配線層41が存在する。
第一層31は、p型導電性高分子(熱電変換材料)からなり、第二層32は銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。第二層32としてn型導電性高分子(熱電変換材料)からなる層を設けてもよい。この実施形態では、n型導電性高分子の代替として銀ペーストの硬化物からなる第二層32を設けている。
【0016】
五個の熱電変換単位10は、隣り合う熱電変換単位10の第一層31と第二層32の両方に渡って形成された第二配線層42により、直列に接続されている。第二配線層42も第一配線層41と同様に、基板2の凹部23の最底部には第一層31および第二層32が存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31および第二層32の端部の上面に第二配線層42が存在する。
波形体101~105の長手方向(直列の方向)の両端に、接続端子層43が形成されている。接続端子層43は波形基板2の平坦部21に直接形成され、接続端子層43に連続する第三配線層44が、第一層31および第二層32の上にそれぞれ形成されている。
第一配線層41、第二配線層42、接続端子層43、および第三配線層44は、銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。
【0017】
図2は
図1を上から見た図であり、
図2に示すように、五個の波形体101~105は、長方形の支持板5の上面に、隙間6を介して並列に配置されている。そのため、支持板5を成す長方形の短辺は、波形体101~105の幅(並列の方向Pの寸法)の合計値よりも大きい。そして、隙間6の寸法tは波形体101~105の一つの幅W1よりも小さい。また、支持板5を成す長方形の長辺は、波形体101~105の長手方向寸法よりも大きい。以下においては、支持板5を成す長方形の短辺の寸法を支持板5の幅、長辺の寸法を支持板5の長さと称する。
なお、隙間6の存在により、隣り合う波形体101~105同士が接触して短絡することが防止できるとともに、隣り合う波形体101~105が隙間6を挟んで対向する面の冷却効果が得られる。
【0018】
五個の波形体101~105のうち、支持板5の幅方向両端の波形体101,105と、幅方向中央部の波形体103は、各長手方向一端を支持板5の長さ方向一端に合わせて配置されている。波形体101と波形体103との間の波形体102、および波形体103と波形体105との間の波形体104は、各長手方向他端を支持板5の長さ方向他端に合わせて配置されている。また、波形体101,105,103は、第二層32が形成された端部を支持板5の長さ方向一端に向けて配置され、波形体102,104は、第二層32が形成された端部を支持板5の長さ方向他端に向けて配置されている。そして、波形体101~105の凹部23および平坦部21の下面が、支持板5の上面に固定されている(
図1および
図3参照)。
【0019】
その結果、
図1および
図3に示すように、五個の波形体101~105において、隣り合う波形体101~105の波形は、位相がずれて逆になっている。つまり、隣り合う波形基板2において、波形を構成する凸部22の頂点が長手方向(直列の方向S)の異なる位置に存在している。
また、波形体101と波形体103と波形体105は波形の位相が同じであるが、波形体101と波形体103の間には波形体102がずれた位相で存在するため、両波形体101,103の間には、側面視で波形体102と斜面同士が重なる部分を除いて、波形体102の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。波形体103と波形体105についても同様に、両波形体103,105の間には、側面視で波形体104と斜面同士が重なる部分を除いて、波形体104の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。
【0020】
さらに、
図1および
図2に示すように、隣り合う基板の接続端子層43が配線45で接続されて、全ての熱電変換単位10が全体で直列接続されている。直列接続の両端に存在する接続端子層43が外部端子431として機能し、外部配線46の一端が外部端子431に接続されて、他端が熱電変換素子1の外部に出ている。
図3では配線45および外部配線46が省略されている。
【0021】
<使用方法と作用効果>
この実施形態の熱電変換素子1を使用する際には、支持板5を例えば、電動機などの熱源(例えば、特許文献1の
図3の電動機のハウジングの一部の平面部)の上に設置することにより、第一層31および第二層32の底部(凹部23側の部分)を高温にするとともに、第一層31および第二層32の頂部を冷却して低温にする。この冷却は、例えば、
図3に示す熱電変換素子1の側面から、波形体101~105と支持板5との間に大気を流通させることにより行う。
【0022】
ここで、全ての波形体101~105の波形の位相が同じ(凸部22の頂点が直列の方向Sで一致している)場合には、隙間6が狭いと、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体102~104の幅方向両端面、支持板5の幅方向一端部に配置された波形体101の内側(波形体102側)の端面、および他端部に配置された波形体105の内側(波形体104側)の端面には、ほとんど当たらない。つまり、通気による冷却効果が発揮されない。よって、全ての波形体101~105の冷却が不十分になって、各熱電変換単位10に生じる温度差が小さくなる。
【0023】
これに対して、この実施形態の熱電変換素子1では、五個の波形体101~105の波形の位相が、隣同士で逆になっている(凸部22の頂点が直列の方向Sで異なる)ため、隙間6が狭くても、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体102~104の幅方向両端面と、支持板5の幅方向両端部に配置された波形体101,105の内側の端面にも十分に当たる。よって、全ての波形体101~105が効率的に冷却されて、各熱電変換単位10に生じる温度差が大きくなる。
その結果、この実施形態の熱電変換素子1によれば、各熱電変換単位10に大きな温度差を生じさせて、高い発電性能を得ることができる。
【0024】
<製造方法>
この実施形態の熱電変換素子1は、以下に示す方法で製造することができる。
この方法では、
図4に示す平板状の帯状体7を、波形に成形することで波形体101~105を作製している。そのために、先ず、
図5に示す板状体70を作製する。
図5に示すように、板状体70の平面形状は長方形であって、この長方形の短辺の寸法(幅)W2が、五枚の波形体101~105の幅W1の合計値に相当する。
図6に示すように、板状体70は、基板200、第一層310、第二層320、第一配線層410、第二配線層420、接続端子層430、および第三配線層440を有する。つまり、これらの基板200および各層は、波形体101~105の波形基板2および対応する各層(第一層31、第二層32、第一配線層41、第二配線層42、接続端子層43、第三配線層44)の幅W1の五倍で形成されている。
【0025】
また、板状体70は、第一層310、第二層320、第一配線層410、および第二配線層420で構成された熱電変換単位100を、直列に五個有する。
板状体70を作製する際には、先ず、合成樹脂製の基板200の上面の五箇所に、p型導電性高分子を含むペーストを用いた印刷工程により、第一層310を長方形の平面形状で形成する。つまり、一つの熱電変換単位100に一つの第一層310を形成する。次に、一つの熱電変換単位100に一つの第二層320を、銀ペーストを用いた印刷工程により、第一層310の隣に、所定の隙間を開けて、第一層310と同じ平面形状および厚さで形成する。このようにして、基板200の上面に、五個の熱電変換単位100を構成する全ての第一層310および第二層320からなる熱電変換パターンが形成される。
【0026】
次に、この熱電変換パターン上に、第一配線層410、第二配線層420、接続端子層430、および第三配線層440からなる導電層パターンを、銀ペーストを用いた印刷工程により形成する。
図5および
図6に示すように、第一配線層410および第二配線層420は、基板200上の第一層310と第二層320との隙間内と、この隙間に近い第一層310および第二層320の上の端部に連続して形成する。また、接続端子層430および第三配線層440は連続したパターンであって、接続端子層430は基板200の上に直接、第三配線層440は、
図5の左端では第一層310の上に、右端では第二層320の上に形成する。
【0027】
次に、板状体70を幅方向で五等分に切断して、五枚の帯状体7を得る。
次に、平板状の帯状体7を波形に成形することで波形体101~105を作製する。波形の成形は、波形に対応する雄部および雌部を有する金型を用意し、五分割された基板200の裏面側に雄部を表面側に雌部を押し当てて加熱しながら加圧する(加熱加圧成形を行う)。これにより、第一層31および第二層32と、五分割された基板200の第一層31および第二層32が形成されている部分を延伸変形させて、凸部22と凹部23を形成する。
次に、
図1および
図2に示す配置で、各波形体101~105の凹部23の下面および平坦部21の下面を、支持板5の上面に接着剤で固定する。
【0028】
[第二実施形態]
<構成>
図7~
図9に示すように、この実施形態の熱電変換素子1Aは、五個の帯状の波形体106~110を有する。
波形体106~110は、それぞれ、帯状の波形基板2Aの上面に、五個の熱電変換単位10Aが形成されたものである。五個の波形体106~110は同じものである。波形基板2Aの波形は、帯状の長手方向に進む波形(凸凹凸の繰り返し)であり、五個の熱電変換単位10Aは、この長手方向に沿って直列に形成されている。
【0029】
波形基板2Aは、長手方向両端に形成された平坦部21と、両平坦部の間に形成された連続する五個の凸部22Aを有する。五個の凸部22Aは形状および寸法が同じである。一つの凸部22Aは一対の斜面221A,222Aからなり、隣り合う凸部22Aの斜面221Aおよび斜面222Aが凹部23Aを形成する。
凸部22Aを構成する第一の斜面221Aと第二の斜面222Aは、支持板5に垂直な基準線に対して非対称の形状を有する。つまり、
図9に示すように、第一の斜面221Aの基準線に対する角度θ1と第二の斜面222Aの基準線に対する角度θ2は異なり、θ1はθ2より小さい。この例では、θ1は約14.5°であり、θ2は約55°である。
【0030】
また、凹部23Aを構成する第一の斜面221Aと第二の斜面222Aについても、支持板5に垂直な基準線に対する第一の斜面221Aの角度θ3と、第二の斜面222Aの角度θ4とが異なり、θ3はθ4より小さい。この例では、θ3は約14.5°であり、θ4は約55°である。つまり、θ1=θ3<θ2=θ4である。よって、第一の斜面221Aと第二の斜面222Aとで傾斜方向の寸法が異なり、第一の斜面221Aよりも第二の斜面222Aの方が傾斜方向の寸法が大きい。
なお、θ1~θ4の別の例として、θ1=θ3=5°とθ2=θ4=25°の組合せが挙げられる。凸部22Aの頂部は、製造工程で平板状の帯状体7Aを曲げる際に破損しないための丸みを有する。
【0031】
図7および
図8に示すように、熱電変換単位10Aは、導電率が異なる第一層31Aおよび第二層32Aと、第一層31Aおよび第二層32Aを接続する第一配線層41Aを有する。第一層31Aおよび第二層32Aは、波形基板2Aの一つの凸部22Aを構成する一対の斜面221A,222Aの上面に、それぞれ形成されている。波形基板2Aの凸部22Aの最頂部には第一層31Aおよび第二層32Aが存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31Aおよび第二層32Aの端部の上面に第一配線層41Aが存在する。
【0032】
第一層31Aは、p型導電性高分子(熱電変換材料)からなり、第二層32Aは銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。第二層32Aとしてn型導電性高分子(熱電変換材料)からなる層を設けてもよい。この実施形態では、n型導電性高分子の代替として銀ペーストの硬化物からなる第二層32Aを設けている。つまり、傾斜方向の寸法が大きい第二の斜面222A上の第二層32Aは、傾斜方向の寸法が小さい第一の斜面221A上の第一層31Aよりも、導電率の高い材料で形成されている。
【0033】
五個の熱電変換単位10Aは、隣り合う熱電変換単位10Aの第一層31Aと第二層32Aの両方に渡って形成された第二配線層42Aにより、直列に接続されている。第二配線層42Aも第一配線層41Aと同様に、波形基板2Aの凹部23Aの最底部には第一層31Aおよび第二層32Aが存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31Aおよび第二層32Aの端部の上面に第二配線層42Aが存在する。
波形体106~110の長手方向(直列接続の方向)の両端に、接続端子層43が形成されている。接続端子層43は波形基板2Aの平坦部21に直接形成され、接続端子層43に連続する第三配線層44Aが、第一層31Aおよび第二層32Aの上にそれぞれ形成されている。
第一配線層41A、第二配線層42A、接続端子層43、および第三配線層44Aは、銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。
【0034】
図8は
図7を上から見た図であり、
図8に示すように、五個の波形体106~110は、長方形の支持板5の上面に、隙間6を介して並列に配置されている。そのため、支持板5を成す長方形の短辺は、波形体106~110の幅(並列の方向の寸法)の合計値よりも大きい。そして、隙間6の寸法tは波形体106~110の一つの幅よりも小さい。また、支持板5を成す長方形の長辺は、波形体106~110の長手方向寸法と同じである。以下においては、支持板5を成す長方形の短辺の寸法を支持板5の幅、長辺の寸法を支持板5の長さと称する。
なお、隙間6の存在により、隣り合う波形体106~110同士が接触して短絡することが防止できるとともに、隣り合う波形体106~110が隙間6を挟んで対向する面の冷却効果が得られる。
【0035】
五個の波形体106~110のうち、支持板5の幅方向両端の波形体106,110と、幅方向中央部の波形体108は、各長手方向一端を支持板5の長さ方向一端に合わせて配置されている。波形体106と波形体108との間の波形体107、および波形体108と波形体110との間の波形体109は、各長手方向他端を支持板5の長さ方向他端に合わせて配置されている。また、波形体106,110,108は、第二層32Aが形成された端部を支持板5の長さ方向一端に向けて配置され、波形体107,109は、第二層32Aが形成された端部を支持板5の長さ方向他端に向けて配置されている。そして、波形体106~110の凹部23Aおよび平坦部21の下面が、支持板5の上面に固定されている(
図7および
図9参照)。
【0036】
その結果、
図7および
図9に示すように、隣り合う波形基板2Aにおいて、波形を構成する凸部22Aの頂点は長手方向(直列の方向S)の同じ位置に存在し、幅方向(並列の方向P)で第一の斜面(一方の斜面)221Aと第二の斜面(他方の斜面)222Aが交互に存在している。
また、波形体106と波形体108との間には、側面視で波形体107と斜面同士および凸部22Aの頂部同士が重なる部分を除いて、波形体107の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。波形体108と波形体110についても同様に、両波形体108,110の間には、側面視で波形体109と斜面同士および凸部22Aの頂部が重なる部分を除いて、波形体109の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。
【0037】
さらに、
図7および
図8に示すように、隣り合う基板の接続端子層43が配線45で接続されて、全ての熱電変換単位10Aが全体で直列接続されている。直列接続の両端となる接続端子層43が外部端子431として機能し、外部配線46の一端が外部端子431に接続されて、他端が熱電変換素子1Aの外部に出ている。
図9では配線45および外部配線46が省略されている。
【0038】
<使用方法と作用効果>
この実施形態の熱電変換素子1Aを使用する際には、支持板5を例えば、電動機などの熱源(例えば、特許文献1の
図3の電動機のハウジングの一部の平面部)の上に設置することにより、第一層31Aおよび第二層32Aの底部(凹部23A側の部分)を高温にするとともに、第一層31Aおよび第二層32Aの頂部を冷却して低温にする。この冷却は、例えば、
図9に示す熱電変換素子1の側面から、波形体106~110と支持板5との間に大気を流通させることにより行う。
【0039】
ここで、全ての波形体106~110がそれぞれ有する非対称の凸部22Aが、隣り合う波形体106~110で同じ向きに揃えられている(凸部の頂点が直列の方向Sで一致しているだけでなく、並列の方向Pで第一の斜面221Aおよび第二の斜面222Aが全て同じ位置に存在する)場合には、隙間6が狭いと、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体106~110の幅方向両端面、支持板5の幅方向一端部に配置された波形体106の内側(波形体107側)の端面、および他端部に配置された波形体110の内側(波形体109側)の端面には、ほとんど当たらない。つまり、通気による冷却効果が発揮されない。よって、全ての波形体106~110の冷却が不十分になって、各熱電変換単位10Aに生じる温度差が小さくなる。
【0040】
これに対して、この実施形態の熱電変換素子1Aでは、全ての波形体106~110がそれぞれ有する非対称の凸部22Aの頂点は、直列の方向Sで同じではあるが、第一の斜面221Aおよび第二の斜面222Aが並列の方向Pで交互に存在するため、隙間6が狭くても、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体107~109の幅方向両端面と、支持板5の幅方向両端部に配置された波形体106,110の内側の端面にも十分に当たる。よって、全ての波形体106~110が効率的に冷却されて、各熱電変換単位10Aに生じる温度差が大きくなる。
その結果、この実施形態の熱電変換素子1Aによれば、各熱電変換単位10Aに大きな温度差を生じさせて、高い発電性能を得ることができる。
【0041】
さらに、第二実施形態の熱電変換素子1Aでは、導電率の低い材料で形成された第一層31Aの第一の斜面221Aに沿った長さが、導電率の高い材料で形成された第二層32Aの第二の斜面222Aに沿った長さより短いため、第一層31と第二層32が同じ長さの斜面に形成されている第一実施形態の熱電変換素子1よりも、発熱量を多くすることができる。これは、凸部22,22Aの直列の方向Sの寸法が同じ場合、第二実施形態の熱電変換素子1Aの方が第一実施形態の熱電変換素子1よりも第一層31,31Aの第一の斜面221,221Aに沿った長さが短くなることで、抵抗が小さくなり、第二実施形態の熱電変換素子1Aの方が第一実施形態の熱電変換素子1よりも第二層32,32Aの第二の斜面222,222Aに沿った長さは長くなるが、これに伴う抵抗の上昇量は僅かなためである。
【0042】
なお、この実施形態の熱電変換素子1Aでは、波形基板2Aの幅方向(
図8のP方向)に形成されている熱電変換単位10Aの数は一つであるが、波形基板2Aの幅方向に隙間を開けて複数の熱電変換単位10Aが形成されていてもよい。
また、この実施形態の熱電変換素子1Aは、五個の熱電変換単位10Aが直列に接続された五個の波状体106~110を有するため、25個の熱電変換単位が直列に接続された状態になっている。これに対して、例えば、一つの波状体の直列の数を14個、並列に配置する波状体の数を10個とすることで、140個の熱電変換単位が直列に接続された熱電変換素子を得ることができる。
【0043】
一方、非対称の凸部22Aが、隣り合う波形体106~110で同じ向きに揃えられている点のみが熱電変換素子1Aとは異なる熱電変換素子は、上述のような効率的な冷却効果は得られないが、第一層31Aの斜面に沿った長さが第二層32Aの斜面に沿った長さより短いことで発熱量を多くできる効果は得られる。
【0044】
<製造方法>
この実施形態の熱電変換素子1Aは、以下に示す方法で製造することができる。
この方法では、
図10に示す平板状の帯状体7Aを、波形に成形することで波形体106~110を作製している。そのために、先ず、
図11に示す板状体70Aを作製する。
図11に示すように、板状体70Aの平面形状は長方形であって、この長方形の短辺の寸法(幅)W2が、五枚の波形体106~110の幅W1の合計値に相当する。
図12に示すように、板状体70Aは、基板200、第一層310A、第二層320A、第一配線層410A、第二配線層420A、接続端子層430、および第三配線層440を有する。つまり、これらの基板200および各層は、波形体106~110の波形基板2Aおよび対応する各層(第一層31A、第二層32A、第一配線層41A、第二配線層42A、接続端子層43、第三配線層44A)の幅W1の五倍で形成されている。
【0045】
また、板状体70Aは、第一層310A、第二層320A、第一配線層410A、および第二配線層420Aで構成された熱電変換単位100Aを、直列に五個有する。
板状体70Aを作製する際には、先ず、合成樹脂製の基板200の上面の五箇所に、p型導電性高分子を含むペーストを用いた印刷工程により第一層310Aを長方形の平面形状で形成する。つまり、一つの熱電変換単位100Aに一つの第一層310Aを形成する。次に、一つの熱電変換単位100Aに一つの第二層320Aを、銀ペーストを用いた印刷工程により、第一層310Aの隣に、所定の隙間を開けて、第一層310Aと同じ平面形状および厚さで形成する。このようにして、基板200の上面に、五個の熱電変換単位100Aを構成する全ての第一層310Aおよび第二層320Aからなる熱電変換パターンが形成される。
【0046】
次に、この熱電変換パターン上に、第一配線層410A、第二配線層420A、接続端子層430、および第三配線層440からなる導電層パターンを、銀ペーストを用いた印刷工程により形成する。
図11および
図12に示すように、第一配線層410Aおよび第二配線層420Aは、基板200上の第一層310Aと第二層320Aとの隙間内と、この隙間に近い第一層310Aおよび第二層320Aの上の端部に連続して形成する。また、接続端子層430および第三配線層440は連続したパターンであって、接続端子層430は基板200の上に直接、第三配線層440は、
図11の左端では第一層310Aの上に、右端では第二層320Aの上に形成する。
【0047】
次に、板状体70Aを幅方向で五等分に切断して、五枚の帯状体7を得る。
次に、平板状の帯状体7Aを波形に成形することで波形体106~110を作製する。波形の成形は、波形に対応する雄部および雌部を有する金型を用意し、五分割された基板200の裏面側に雄部を表面側に雌部を押し当てて加熱しながら加圧する(加熱加圧成形を行う)。これにより、第一層31Aおよび第二層32Aと、五分割された基板200の第一層31Aおよび第二層32Aが形成されている部分を延伸変形させて、凸部22Aと凹部23Aを形成する。
次に、
図7および
図8に示す配置で、各波形体106~110の凹部23Aの下面および平坦部21の下面を、支持板5の上面に接着剤で固定する。
【0048】
[第三実施形態]
<構成>
図13~
図15に示すように、この実施形態の熱電変換素子1Bは、五個の帯状の波形体106~110を有する。
波形体106~110は、それぞれ、帯状の波形基板2Aの上面に、五個の熱電変換単位10Aが形成されたものである。五個の波形体106~110は同じものである。波形基板2Aの波形は、帯状の長手方向に進む波形(凸凹凸の繰り返し)であり、五個の熱電変換単位10Aは、この長手方向に沿って直列に形成されている。
【0049】
波形基板2Aは、長手方向両端に形成された平坦部21と、両平坦部の間に形成された連続する五個の凸部22Aを有する。五個の凸部22Aは形状および寸法が同じである。一つの凸部22Aは一対の斜面221A,222Aからなり、隣り合う凸部22Aの第一の斜面221Aおよび第二の斜面222Aが凹部23Aを形成する。
凸部22Aを構成する第一の斜面221Aと第二の斜面222Aは、支持板5に垂直な基準線に対して非対称の形状を有する。つまり、
図15に示すように、第一の斜面221Aの基準線に対する角度θ1と第二の斜面222Aの基準線に対する角度θ2は異なり、θ1はθ2より小さい。この例では、θ1は約14.5°であり、θ2は約55°である。
【0050】
また、凹部23Aを構成する第一の斜面221Aと第二の斜面222Aについても、支持板5に垂直な基準線に対する第一の斜面221Aの角度θ3と、第二の斜面222Aの角度θ4とが異なり、θ3はθ4より小さい。この例では、θ3は約14.5°であり、θ4は約55°である。つまり、θ1=θ3<θ2=θ4である。よって、第一の斜面221Aと第二の斜面222Aとで傾斜方向の寸法が異なり、第一の斜面221Aよりも第二の斜面222Aの方が傾斜方向の寸法が大きい。
なお、θ1~θ4の別の例として、θ1=θ3=5°とθ2=θ4=25°の組合せが挙げられる。凸部22Aの頂部は、製造工程で平板状の帯状体7Aを曲げる際に破損しないための丸みを有する。
【0051】
図13および
図14に示すように、熱電変換単位10Aは、導電率が異なる第一層31Aおよび第二層32Aと、第一層31Aおよび第二層32Aを接続する第一配線層41を有する。第一層31Aおよび第二層32Aは、波形基板2Aの一つの凸部22Aを構成する一対の斜面221A,222Aの上面に、それぞれ形成されている。波形基板2Aの凸部22Aの最頂部には第一層31Aおよび第二層32Aが存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31Aおよび第二層32Aの端部の上面に第一配線層41が存在する。
【0052】
第一層31Aは、p型導電性高分子(熱電変換材料)からなり、第二層32Aは銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。第二層32Aとしてn型導電性高分子(熱電変換材料)からなる層を設けてもよい。この実施形態では、n型導電性高分子の代替として銀ペーストの硬化物からなる第二層32Aを設けている。つまり、傾斜方向の寸法が大きい第二の斜面222A上の第二層32Aは、傾斜方向の寸法が小さい第一の斜面221A上の第一層31Aよりも、導電率の高い材料で形成されている。
【0053】
五個の熱電変換単位10Aは、隣り合う熱電変換単位10Aの第一層31Aと第二層32Aの両方に渡って形成された第二配線層42により、直列に接続されている。第二配線層42も第一配線層41と同様に、波形基板2Aの凹部23Aの最底部には第一層31Aおよび第二層32Aが存在しない部分があり、その部分とこれに連続する第一層31Aおよび第二層32Aの端部の上面に第二配線層42が存在する。
波形体106~110の長手方向(直列接続の方向)の両端に、接続端子層43が形成されている。接続端子層43は波形基板2Aの平坦部21に直接形成され、接続端子層43に連続する第三配線層44Aが、第一層31おAよび第二層32Aの上にそれぞれ形成されている。
第一配線層41A、第二配線層42A、接続端子層43、および第三配線層44Aは、銀ペーストの硬化物(導電性材料)からなる。
【0054】
図14は
図13を上から見た図であり、
図14に示すように、五個の波形体106~110は、長方形の支持板5の上面に、隙間6を介して並列に配置されている。そのため、支持板5を成す長方形の短辺は、波形体106~110の幅(並列の方向の寸法)の合計値よりも大きい。そして、隙間6の寸法tは波形体106~110の一つの幅よりも小さい。また、支持板5を成す長方形の長辺は、波形体106~110の長手方向寸法と同じである。以下においては、支持板5を成す長方形の短辺の寸法を支持板5の幅、長辺の寸法を支持板5の長さと称する。
【0055】
なお、隙間6の存在により、隣り合う波形体106~110同士が接触して短絡することが防止できるとともに、隣り合う波形体106~110が隙間6を挟んで対向する面の冷却効果が得られる。
五個の波形体106~110は、各長手方向両端を支持板5の長さ方向両端に合わせて配置されている。また、波形体106,108,110は、第二層32Aが形成された端部を支持板5の長さ方向一端に向けて配置され、波形体107,109は、第二層32Aが形成された端部を支持板5の長さ方向他端に向けて配置されている。そして、波形体106~110の凹部23Aおよび平坦部21の下面が、支持板5の上面に固定されている(
図13および
図15参照)。
【0056】
その結果、
図13および
図15に示すように、波形体106~110がそれぞれ有する非対称の凸部22Aが、隣り合う波形体106~110で逆向きになっている。つまり、隣り合う波形基板2Aにおいて、波形を構成する凸部22Aの頂点が長手方向(直列の方向S)の異なる位置に存在している。
また、波形体106と波形体108との間には、側面視で波形体107と斜面同士および凹部23Aの底部同士が重なる部分を除いて、波形体107の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。波形体108と波形体110についても同様に、両波形体108,110の間には、側面視で波形体109と斜面同士および凹部23Aの底部が重なる部分を除いて、波形体109の幅方向寸法に隙間6の寸法tの二倍を足した寸法の隙間が存在する。
【0057】
さらに、
図13および
図14に示すように、隣り合う基板の接続端子層43が配線45で接続されて、全ての熱電変換単位10Aが全体で直列接続されている。直列接続の両端となる接続端子層43が外部端子431として機能し、外部配線46の一端が外部端子431に接続されて、他端が熱電変換素子1Bの外部に出ている。
図9では配線45および外部配線46が省略されている。
【0058】
<使用方法と作用効果>
この実施形態の熱電変換素子1Bを使用する際には、支持板5を例えば、電動機などの熱源(例えば、特許文献1の
図3の電動機のハウジングの一部の平面部)の上に設置することにより、第一層31Aおよび第二層32Aの底部(凹部23A側の部分)を高温にするとともに、第一層31Aおよび第二層32Aの頂部を冷却して低温にする。この冷却は、例えば、
図9に示す熱電変換素子1の側面から、波形体106~110と支持板5との間に大気を流通させることにより行う。
【0059】
ここで、全ての波形体106~110がそれぞれ有する非対称の凸部22Aが、隣り合う波形体106~110で同じ向きに揃えられている(凸部22Aの頂点が直列の方向Sで一致しているとともに、並列の方向Pで第一の斜面221Aおよび第二の斜面222Aが全て同じ位置に存在する)場合には、隙間6が狭いと、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体106~110の幅方向両端面、支持板5の幅方向一端部に配置された波形体106の内側(波形体107側)の端面、および他端部に配置された波形体110の内側(波形体109側)の端面には、ほとんど当たらない。つまり、通気による冷却効果が発揮されない。よって、全ての波形体106~110の冷却が不十分になって、各熱電変換単位10Aに生じる温度差が小さくなる。
【0060】
これに対して、この実施形態の熱電変換素子1Bでは、全ての波形体106~110がそれぞれ有する非対称の凸部22Aが、隣同士で逆になっている(凸部22Aの頂点が直列の方向Sで異なる)ため、隙間6が狭くても、冷却の際の大気は、支持板5の幅方向中央部に配置された波形体107~109の幅方向両端面と、支持板5の幅方向両端部に配置された波形体106,110の内側の端面にも十分に当たる。よって、全ての波形体106~110が効率的に冷却されて、各熱電変換単位10Bに生じる温度差が大きくなる。
【0061】
その結果、この実施形態の熱電変換素子1Bによれば、各熱電変換単位10Aに大きな温度差を生じさせて、高い発電性能を得ることができる。
また、第三実施形態の熱電変換素子1Bは、支持板5の上面の長さ方向全体に波形体106~110が存在しているのに対して、第一実施形態の熱電変換素子1では、支持板5の上面の長さ方向の一部に波形体101~105が存在していない部分がある。つまり、第三実施形態の熱電変換素子1Bは第一実施形態の熱電変換素子1よりも、支持板5の上面の利用効率が高いため、小型化の点で有利である。
【0062】
さらに、第三実施形態の熱電変換素子1Bでは、導電率の低い材料で形成された第一層31Aの第一の斜面221Aに沿った長さが、導電率の高い材料で形成された第二層32Aの第二の斜面222Aに沿った長さより短いため、第一層31と第二層32が同じ長さの斜面に形成されている第一実施形態の熱電変換素子1よりも、発熱量を多くすることができる。これは、凸部22,22Aの直列の方向Sの寸法が同じ場合、第三実施形態の熱電変換素子1Bの方が第一実施形態の熱電変換素子1よりも第一層31,31Aの第一の斜面221,221Aに沿った長さが短くなることで、抵抗が小さくなり、第三実施形態の熱電変換素子1Bの方が第一実施形態の熱電変換素子1よりも第二層32,32Aの第二の斜面222,222Aに沿った長さは長くなるが、これに伴う抵抗の上昇量は僅かなためである。
【0063】
なお、この実施形態の熱電変換素子1Bでは、波形基板2Aの幅方向(
図14のP方向)に形成されている熱電変換単位10Aの数は一つであるが、波形基板2Aの幅方向に隙間を開けて複数の熱電変換単位10Aが形成されていてもよい。
また、この実施形態の熱電変換素子1Bは、五個の熱電変換単位10Aが直列に接続された五個の波状体106~110を有するため、25個の熱電変換単位が直列に接続された状態になっている。これに対して、例えば、一つの波状体の直列の数を14個、並列に配置する波状体の数を10個とすることで、140個の熱電変換単位が直列に接続された熱電変換素子を得ることができる。
【0064】
一方、非対称の凸部22Aが、隣り合う波形体106~110で同じ向きに揃えられている点のみが熱電変換素子1Aとは異なる熱電変換素子は、上述のような効率的な冷却効果は得られないが、第一層31Aの第一の斜面221Aに沿った長さが第二層32Aの第二の斜面222Aに沿った長さより短いことで発熱量を多くできる効果は得られる。
【0065】
<製造方法>
この実施形態の熱電変換素子1Bは、以下に示す方法で製造することができる。
第二実施形態の熱電変換素子1Aと同じ方法で波形体106~110を作製した後、
図13および
図14に示す配置で、各波形体106~110の凹部23Aの下面および平坦部21の下面を、支持板5の上面に接着剤で固定する。
【符号の説明】
【0066】
1 熱電変換素子
1A 熱電変換素子
1B 熱電変換素子
10 熱電変換単位
10A 熱電変換単位
101 波形体
102 波形体
103 波形体
104 波形体
105 波形体
106 波形体
107 波形体
108 波形体
109 波形体
110 波形体
2,2A 波形基板
21 平坦部
22,22A 凸部
221,221A 第一の斜面(一方の斜面)
222,222A 第二の斜面(他方の斜面)
23,23A 凹部
31,31A 第一層
32,31A 第二層
41,41A 第一配線層
42,42A 第二配線層
43 接続端子層
431 外部端子
44,44A 第三配線層
45 配線
46 外部配線
5 支持板
6 隙間
S 直列の方向
P 並列の方向