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特許7192525無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20221213BHJP
   H04W 16/20 20090101ALI20221213BHJP
【FI】
H04B17/391
H04W16/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019009704
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020120266
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 宏真
(72)【発明者】
【氏名】和田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】二宮 照尚
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-062468(JP,A)
【文献】特開2005-072667(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099927(WO,A1)
【文献】特開2011-009974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0005166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/391
H04W 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間内の移動体の移動先の位置の数及び無線通信装置の設置数を含むシミュレーション条件を取得する取得部と、
前記移動体による前記無線通信装置の遮蔽の度合の閾値を計算する閾値計算部と、
前記シミュレーション条件と前記閾値に基づいて、レイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う見通し判定頻度を決定する決定部と、
を備え、
前記見通し面の判定は、
前記所定空間内の第1反射面及び最終反射面を見通しである面に限定し、
無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、
ことを特徴とする、無線通信装置設置シミュレーション装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記移動体による遮蔽の度合の大小を、前記無線通信装置から前記移動体までの距離及び前記移動体の大きさに応じて判定することを特徴とする、請求項1記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
【請求項3】
XYZ座標系のXY平面、YZ平面及びZX平面の正方向及び負方向に透視投影を行い、どの面が見通しの位置にあるかを判定する見通し判定処理を行うシミュレーション部を更に備え
前記閾値は、投影面上のサイズの閾値であることを特徴とする、請求項1又は2記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
【請求項4】
前記シミュレーション部は、前記見通し判定処理を、前記所定空間内の移動範囲内における前記移動体の複数の位置のうち、前記無線通信装置から最も近い位置で行うことを特徴とする、請求項記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
【請求項5】
所定空間内の移動体の移動先の位置の数及び無線通信装置の設置数を含むシミュレーション条件を取得し、
前記移動体による前記無線通信装置の遮蔽の度合の閾値を計算し、
前記シミュレーション条件と前記閾値に基づいて、レイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う見通し判定頻度を決定する、
処理をコンピュータが実行し、
前記見通し面の判定は、
前記所定空間内の第1反射面及び最終反射面を見通しである面に限定し、
無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、
ことを特徴とする、無線通信装置設置シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場内等の所定空間に多数のセンサを設置し、無線通信によってデータ収集を行うIoT(Internet of Things)システム等の無線通信システムが提案されている。無線通信は、例えばIoTデバイス等の無線通信装置の一例であるセンサに含まれる送信機と、例えば測位対象に装着された受信機との間で行われる。センサを設置する際には、所定空間内のレイアウトに応じて反射の影響、測位対象が移動する場合は測位対象の動きによる変動等を考慮することが望ましい。しかし、電波は目に見えないため、安定した検出結果が得られる所定空間内の位置にセンサを設置するには試行錯誤が必要となり、センサの設置作業に手間と時間を要する。
【0003】
センサの設置作業前に、センサを設置する候補位置での電波伝搬シミュレーションを行い、シミュレーション結果をもとに候補位置の中から設置位置を決定すれば、試行錯誤により設置位置を決める場合と比較すると、センサの設置作業に要する時間を短縮できる。しかし、センサの設置作業前にシミュレーション結果に基づいて設置位置を決定する場合、繰り返しシミュレーションを行うため、計算時間が長くなる。レイトレース法を用いたシミュレーションのうち、特にイメージング法を用いたシミュレーションの場合には、計算時間が膨大となる。
【0004】
レイトレース法は、電波を光に見立てて伝搬経路を探索する手法である。幾何光学的理論に基づき送信点から受信点へ到達する電波を追跡することにより、伝搬損失(又は、受信レベル)、遅延時間、出射方向、到来方向等を計算する。このような計算は、電波の反射、透過、及び回折の回数を拘束条件とする。
【0005】
イメージング法は、レイトレース法の1つのアルゴリズムであり、送信点、受信点、及びその他全ての反射面の組み合わせから、レイの反射、回折、及び透過を計算し、レイの伝搬経路を求める手法である。送信点より一定角度毎にレイを発射し、受信点の周りに一定の受信エリアを設定し、当該受信エリア内に到達したレイを受信点に到達したレイとみなすレイラウンチング法と比べると、イメージング法の精度は高いが、シミュレーション時間が長くなる。
【0006】
イメージング法では、所定空間内のレイアウト中の面と線の情報からレイの反射、透過、及び回折の経路(又は、パス)候補を生成し、各経路候補が送信点から受信点に到達するか否かを判定する。ところが、各経路候補が送信点から受信点に到達するか否かの判定には、送信点から見通しの位置にない面を第1反射面とする経路の計算等の、無駄な計算処理が含まれる。
【0007】
経路候補の生成の前処理として、どの面が見通しにあるかを判定することにより、経路候補の数を必要最低限に抑え、計算時間を削減することができる。しかし、所定空間内のレイアウトが複雑になると、どの面が見通しの位置にあるかを判定する見通し判定処理自体に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-318308号公報
【文献】特開2002-107397号公報
【文献】特開平10-62468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
センサの設置位置を決定するための従来の電波伝搬のシミュレーションでは、見通し判定処理に時間がかかるため、シミュレーションの高速化が難しい。
【0010】
そこで、1つの側面では、センサの設置位置を決定するための電波伝搬のシミュレーションを高速化することができる無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの案によれば、所定空間内の移動体の移動先の位置の数及び無線通信装置の設置数を含むシミュレーション条件を取得する取得部と、前記移動体による前記無線通信装置の遮蔽の度合の閾値を計算する閾値計算部と、前記シミュレーション条件と前記閾値に基づいて、レイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う見通し判定頻度を決定する決定部と、を備え、前記見通し面の判定は、前記所定空間内の第1反射面及び最終反射面を見通しである面に限定し、無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、無線通信装置設置シミュレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
一態様によれば、センサの設置位置を決定するための電波伝搬のシミュレーションを高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】無線通信装置設置シミュレーション装置の適用例を示す図である。
図2】一実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】一実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】経路候補の生成の一例を説明する図である。
図5】透視投影結果の一例を示す図である。
図6】レイアウトの一例を説明する図である。
図7】移動体と送受信機の位置関係による判定頻度の決定を説明する斜視図である。
図8】移動体の移動による伝搬環境の変化を説明する図である。
図9】移動体の移動による伝搬環境の変化を説明する図である。
図10A】送信機に対する移動体による遮蔽の度合の違いを説明する図である。
図10B】受信機に対する移動体による遮蔽の度合の違いを説明する図である。
図11】ZX平面への投影の一例を示す図である。
図12】YZ平面への投影の一例を示す図である。
図13】第1実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
図14】送信機から見通しの関係にある面の割合を変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。
図15】移動体の面数を変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。
図16】レイトレース及び見通し判定夫々の処理時間を変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。
図17】第2実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明する図である。
図18】第2実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法では、レイトレース法を用いたシミュレーションで所定空間内の見通し面の判定を行い、第1反射面及び最終反射面を見通しである面のみに限定する。無線通信装置からの見通し上で移動体による遮蔽の影響が小さい場合には、無線通信装置の設置位置を、移動体を所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を移動体の位置によらず利用して決定する。一方、移動体による遮蔽の影響が大きい場合には、無線通信装置の設置位置を、移動体の配置位置毎に移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する。
【0015】
以下に、開示の無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法の各実施例を図面とともに説明する。
【実施例
【0016】
先ず、一実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の適用例について説明する。図1は、無線通信装置設置シミュレーション装置の適用例を示す図である。図1に示すIoTデバイス設置シミュレーション装置100は、無線通信装置設置シミュレーション装置の一例である。IoTデバイス設置シミュレーション装置100は、シミュレーション条件のもと、所定空間におけるセンサの設置作業前に、無線通信装置の一例であるセンサを設置する候補位置での送信機と受信機との電波伝搬のシミュレーションを行い、候補位置の中から設置位置を決定する。この例では、センサは、IoTデバイスである。なお、以下の説明では、送信側のセンサが少なくとも送信機を含み、受信側のセンサが少なくとも受信機を含むと仮定するが、送信側のセンサが受信機を含んでも良く、受信側のセンサが送信機を含んでも良いことは、言うまでもない。
【0017】
無線通信装置は、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)ビーコンやセンサ端末等のIoTデバイスに限定されず、例えば無線LAN(Local Area Network)アクセスポイント、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、スマートフォン(Smartphone)等の無線で接続される装置を含む。
【0018】
IoTデバイス設置シミュレーション装置100には、電波伝搬のシミュレーションプログラムを含むIoTデバイス設置シミュレーションプログラム等がインストールされている。IoTデバイス設置シミュレーションプログラムは、無線通信装置設置シミュレーションプログラムの一例である。IoTデバイス設置シミュレーション装置100は、IoTデバイス設置シミュレーションプログラムを実行することで、例えば見通し判定頻度決定部110及びシミュレーション部120の機能を実現できる。
【0019】
見通し判定頻度決定部110は、情報格納部130を参照し、シミュレーション部120が所定空間において送信機と受信機との電波伝搬をシミュレーションするためのシミュレーション条件を取得する。また、見通し判定頻度決定部110は、シミュレーション処理を実行する実行環境を示す情報として、投影面上のサイズの閾値(即ち、後述する移動体による遮蔽の度合の閾値)を計算する。更に、見通し判定頻度決定部110は、シミュレーション条件と閾値に基づいて、例えば最適な見通し判定頻度を決定してシミュレーション部120に通知する。
【0020】
シミュレーション部120は、電波伝搬のシミュレーションにおいて実行するシミュレーション処理について、見通し判定頻度決定部110から通知された見通し判定頻度で見通し判定処理を行う。これにより、シミュレーション部120は、電波伝搬のシミュレーションから、送信機及び受信機の例えば最適な設置位置を探索することができる。
【0021】
なお、図1に示すように、情報格納部130には、例えば、レイアウトモデル140、移動体モデル150、リンク情報160等が格納されている。
【0022】
レイアウトモデル140には、送信機及び受信機が設置される所定空間内のレイアウトに関する情報が含まれる。図1に示す例では、所定空間内に、電波を反射する障害物141が配置されている。
【0023】
移動体モデル150には、所定空間内を移動する、測位対象の一例である移動体151の位置を示す情報が含まれる。図1に示す例では、所定空間内を移動する移動体151の位置として、「位置#1」~「位置#10」が規定されている。移動体モデル150を読み出すことで、移動体151の移動先の位置の数(以下、「ロケーション数」とも言う)を取得することができる。
【0024】
リンク情報160には、所定空間内に設置される送信機及び受信機の設置位置を示す情報が含まれる。図1に示す例では、所定空間内に3台の送信機Tx1~Tx3と、10台の受信機Rx1~Rx10とが設置されている。このため、送信機Tx1~Tx3と受信機Rx1~Rx10との間のリンクの数は、「30」である。
【0025】
なお、上記の例では、3台の送信機Tx1~Tx3の位置を固定して電波伝搬のシミュレーションを実行するが、例えば、1台の送信機Txの位置を変えながら、Tx1~Tx3で示される3箇所の位置で電波伝搬のシミュレーションを実行しても良い。この場合のリンク情報も、リンク情報160と同様で良い。
【0026】
また、上記の例では、電波伝搬のシミュレーションに際して、10台の受信機Rx1~Rx10の位置を固定するが、例えば、2台の受信機Rx1,Rx2を位置を変えながら、Rx1~Rx10で示される5箇所の位置で電波伝搬のシミュレーションを実行しても良い。この場合のリンク情報も、リンク情報160と同様で良い。
【0027】
つまり、リンク情報160を読み出すことで、送信機を設置する候補位置の数と、設置位置に設置される送信機の数とを取得することができる。以下の説明では、送信機を設置する候補位置の数と、設置位置に設置される送信機の数との積を、「送信機の設置数」とも言う。また、リンク情報160を読み出すことで、受信機を設置する候補位置の数と、設置位置に設置される受信機の数とを取得することができる。以下の説明では、受信機を設置する候補位置の数と、設置位置に設置される受信機の数の積を「受信機の設置数」とも言う。
【0028】
このように、見通し判定頻度決定部110は、レイアウトモデル140、移動体モデル150、及びリンク情報160を読み出すことで、ロケーション数、送信機の設置数、受信機の設置数等のシミュレーション条件を取得する。また、見通し判定頻度決定部110は、取得したシミュレーション条件と計算した閾値に基づいて、見通し判定頻度を決定する。シミュレーション部120は、見通し判定頻度決定部110から通知された見通し判定頻度で見通し判定処理を行う。また、シミュレーション部120は、見通し判定処理に基づき、移動体151の移動先の位置毎、各送信機及び各受信機を設置する候補位置毎の電波の経路(又は、パス)候補を夫々計算し、電波伝搬のシミュレーションから、送信機及び受信機の設置位置を探索する。
【0029】
次に、無線通信装置設置シミュレーション装置のハードウェア構成について説明する。図2は、一実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、無線通信装置の一例であるIoTデバイス設置シミュレーション装置100は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、及びRAM(Random Access Memory)203を有する。CPU201、ROM202、及びRAM203は、汎用コンピュータの一例を形成可能である。
【0030】
また、IoTデバイス設置シミュレーション装置100は、補助記憶装置204、操作装置205、表示装置206、通信装置207、及びドライブ装置208を有する。なお、IoTデバイス設置シミュレーション装置100の各部201~208は、バス209を介して互いに接続されている。
【0031】
CPU201は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムを実行するデバイスの一例である。CPU201が実行する各種プログラムには、例えば電波伝搬のシミュレーションプログラムを含むIoTデバイス設置シミュレーションプログラム等が含まれる。
【0032】
ROM202は、不揮発性メモリの一例である。ROM202は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムをCPU201が実行するために用いる各種プログラム、データ等を格納する、主記憶デバイスとして機能可能である。具体的には、ROM202は、BIOS(Basic Input Output System)、EFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能可能である。
【0033】
RAM203は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリの一例である。RAM203は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムがCPU201によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能可能である。
【0034】
補助記憶装置204は、各種プログラム、各種プログラムが実行される際に用いられる情報等を格納する補助記憶デバイスの一例である。補助記憶装置204は、図1に示す情報格納部130を形成可能である。
【0035】
操作装置205は、ユーザがIoTデバイス設置シミュレーション装置100に対して各種指示を入力する際に用いる操作デバイスの一例である。表示装置206は、ユーザに、例えば、電波伝搬のシミュレーション結果を表示する表示デバイスの一例である。なお、操作装置205及び表示装置206は、操作デバイスと表示デバイスを一体的に有するタッチパネルで形成しても良い。通信装置207は、ネットワーク(図示せず)と接続し、外部装置(図示せず)と通信を行う通信デバイスの一例である。
【0036】
ドライブ装置208は、図2中破線で示す記録媒体210をロード・アンロード可能なデバイスの一例である。記録媒体210は、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように、情報を光学的、電気的、或いは、磁気的に記録する媒体により形成可能である。また、記録媒体210は、ROM、フラッシュメモリ等のように、情報を電気的に記録する半導体メモリ等で形成しても良い。
【0037】
なお、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体210がドライブ装置208にロードされ、該記録媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置208により読み出されることでインストールされる。或いは、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、通信装置207を介してネットワークよりダウンロードされることで補助記憶装置204にインストールされても良い。
【0038】
次に、IoTデバイス設置シミュレーション装置100の機能構成をより詳細に説明する。図3は、一実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図3に示すように、IoTデバイス設置シミュレーション装置100の見通し判定頻度決定部110は、入力ファイル読み込み部301、シミュレーション条件取得部302、閾値計算部303、及び決定部304を有する。IoTデバイス設置シミュレーション装置100の各部301~304の機能は、図1に示す見通し判定頻度決定部110の機能に相当する。見通し判定頻度決定部110の各部301~304の機能は、図2に示すCPU201が例えば補助記憶装置204にインストールされているプログラムを実行することで実現できる。
【0040】
入力ファイル読み込み部301は、情報格納部130に格納されているレイアウトモデル140、移動体モデル150、及びリンク情報160を読み出し、シミュレーション条件取得部302に通知する。
【0041】
シミュレーション条件取得部302は、移動体モデル150に基づいてロケーション数を取得し、リンク情報160に基づいて送信機の設置数及び受信機の設置数を取得する。シミュレーション条件取得部302は、ロケーション数、送信機の設置数、及び受信機の設置数を含むシミュレーション条件を取得する取得部の一例である。シミュレーション条件取得部302は、取得したシミュレーション条件を決定部304に通知する。
【0042】
閾値計算部303は、シミュレーション処理を実行する実行環境を示す情報として、投影面上のサイズの閾値(即ち、後述する移動体151による遮蔽の度合の閾値)を計算し、決定部304に通知する。
【0043】
決定部304は、シミュレーション条件取得部302より通知された、ロケーション数、送信機の設置数、及び受信機の設置数を含むシミュレーション条件と、閾値計算部303より通知された閾値に基づいて、例えば最適な見通し判定頻度を決定する。決定部304は、決定した見通し判定頻度を、図1に示すシミュレーション部120に通知する。
【0044】
これにより、シミュレーション部120は、電波伝搬のシミュレーションにおいて実行するシミュレーション処理について、例えば最適な見通し判定頻度で効率的な見通し判定処理を行う。具体的には、シミュレーション部120は、見通し判定処理に基づき、移動体151の移動先の位置毎、各送信機及び各受信機を設置する候補位置毎の電波の経路候補を夫々計算し、電波伝搬のシミュレーションから、送信機及び受信機の設置位置を探索する。この結果、電波伝搬のシミュレーションにかかる時間を短縮できる。
【0045】
次に、経路候補の生成について説明する。図4は、経路候補の生成の一例を説明する図である。図4中、送信機Txから見通しにある面は実線で示し、送信機Txから見通しにない面は破線で示す。
【0046】
送信機Txから見通しでない面を第1反射面から除いて経路(又は、パス)候補を生成し、同様に、受信機Rxから見通しでない面を最終反射面から除いて経路候補を生成する手法が知られている。所定空間500内のレイアウト中の全ての面を反射候補点として経路候補を生成した場合、送信機Txから見通しにない面を第1反射点とする破線で示す経路が含まれるが、透過を考慮しない場合、冗長な経路となるため、削除することで処理の高速化が期待できる。図4中、実線で示す経路は、透過波の影響を考慮していないが、例えば金属製の什器等の障害物141が並ぶ工場等では透過するオブジェクトがないため、透過波の影響を無視しても問題はない。
【0047】
図5は、透視投影結果の一例を示す図であり、図6は、所定空間500内のレイアウトの一例を説明する図である。送受信機Tx,Rxから見通しとなる面の抽出には、様々な手法がある。例えば、XYZ座標系のXY平面、YZ平面、及びZX平面夫々の正(+)方向及び負(-)方向に透視投影を行って、どの面が見通しの位置にあるかを判定する見通し判定処理を行う手法の場合、投影回数=[送信点+受信点)]×6面となる。この場合、投影対象であるオブジェクトの数が多いと、見通し判定処理に時間がかかる。
【0048】
特に人体、物体等のオブジェクトが所定空間500内を移動する場合、オブジェクトの位置毎にレイアウトが変化するため、オブジェクトの位置毎に見通し判定処理が必要となる。この場合、見通し判定処理の判定回数=[送信点+受信点]×[オブジェクトの位置]となり、見通し判定処理により一層時間がかかってしまう。
【0049】
図7は、移動体151と送受信機Tx,Rxの位置関係による判定頻度の決定を説明する斜視図である。図7では便宜上、所定空間500を一点鎖線で示す。移動体151は、例えば人体、自走型ロボット等の測位対象の一例である。障害物141が設置された所定空間500において、受信機Rxの視点で見ると、図7において受信機Rxは移動体151に隣接していることから遮蔽の度合は閾値以上で大きい。一方、送信機Txの視点で見ると、図7において送信機Txは移動体151に隣接しておらず移動体151からの距離は離れており、移動体151は什器等の障害物141に比べて小さいことから遮蔽の度合は閾値未満で小さい。移動体151による遮蔽の度合の大小は、送信機Tx又は受信機Rxから移動体151までの距離及び移動体151の大きさに応じて判定することができる。
【0050】
移動体151に受信機Txを装着し、所定空間500の天井等に設置した送信機Txから受信した電波強度によって移動体151の位置を測位するシステムを例に取る。この場合、受信機Rxは、測位対象(人体)である移動体151が移動する度に座標が変わることに加え、測位対象である移動体151に隣接していて遮蔽の度合が大きいため、位置毎に見通し判定処理を行う。
【0051】
一方、送信機Txは座標が変わらないことに加え、測位対象(人体)である移動体151から離れていて移動体151による遮蔽の度合は小さいため、移動体151を配置しない状態で判定した結果を利用することで見通し判定処理の判定回数を削減できる。
【0052】
また、測位対象(人体)である移動体151の面については見通し判定処理を行わないことで、全ての面を見通しとして扱うことができる。
【0053】
このように、見通し判定結果への移動体151の位置による遮蔽の影響を判定し、遮蔽の影響が小さい場合には移動体151を配置しない状態で判定した結果を共通の結果として使い回す。これにより、見通し判定処理の判定回数を削減してセンサの設置位置を決定するための電波伝搬のシミュレーションを高速化することができる。
【0054】
図8及び図9は、移動体の移動による伝搬環境の変化を説明する図である。図8は、位置#1での伝搬環境を示し、図9は、位置#Nでの伝搬環境を示す。図8及び図9において、実線の矢印は、伝搬パスを示す。
【0055】
図8及び図9からもわかるように、受信機Rxは測位対象(人体)である移動体151が移動する度に座標が変わり、到達する経路候補についても異なるものとなる。
【0056】
図10A及び図10Bは、送信機及び受信機に対する移動体による遮蔽の度合の違いを説明する図である。図10A及び図10B中、移動体151を配置しない状態で見通し外になる面は細い実線、移動体151によって見通し外になる面は破線で示し、移動体151を配置した状態で見通しになる面は太い実線で示す。
【0057】
送信機Txに対しては、図10Aに示すように、移動体151による遮蔽の度合は閾値未満で小さいが、受信機Rxに対しては、図10Bに示すように、半数以上の面が見通し外となる。
【0058】
そこで、送信機Txは共通の判定結果を利用し、受信機Rxは所定空間500内の移動体151の配置位置毎に判定する。この場合、移動体151を所定空間500内に配置しない状態で見通しにある面は、送信機Txについては10個、受信機Rxについては8個となる。また、移動体151を所定空間500内に配置した状態で見通し面にある面は、送信機Txについては9個、受信機Rxについては3個となる。このため、移動体151による遮蔽効果を受ける面は、送信機Txについては1個、受信機Rxについては5個となる。
【0059】
次に、レイトレース法を用いた見通し判定処理について説明する。例えば、図2に示すCPU201が見通し判定処理を実行する。見通し判定処理は、図1に示すシミュレーション部120の機能が実現する処理に含まれ、例えば以下に説明する手順ST1~ST5を含む。
【0060】
手順ST1では、CPU201が移動体151を所定空間500内に配置しない状態で、見通し判定を行い、送受信点からの見通し面の割合(PTx,PRx)を求める。ここで、PTxは送信機Txから見通しの関係にある面の割合を示し、PRxは受信機Rxから見通しの関係にある面の割合を示す。
【0061】
手順ST2では、CPU201が後述する式より、所定空間500内のレイアウトの面数等の条件から、位置毎に見通し判定を行う方が高速化される見通し面の割合PTx'を計算する。
【0062】
手順ST3では、CPU201がΔPTx = PTx - PTx'を計算する。
【0063】
手順ST4では、CPU201が図2に示す表示装置206に表示された画面上に、均等に見通し面が存在すると仮定して、1面当たりの画素数を求め、移動体151の面によって、ΔPTxが変化する画素数を計算する。
【0064】
手順ST5では、CPU201が移動体151の所定空間500内の配置位置毎に、以下のステップst51~st54を実行する。ステップst51では、移動体151を最初に6面に投影する。図11は、ZX平面への投影の一例を示す図であり、図12は、YZ平面への投影の一例を示す図である。ステップst52では、各投影面でサイズが手順ST4で求めた画素数を超えているか否かを判定する。ステップst53では、いずれかの面で閾値を超えている場合には、他のオブジェクトも投影し、見通し判定を実行する。ステップst54では、いずれの面でも閾値を超えない場合には投影せずに、移動体151を所定空間500内に配置しない状態で判定した結果を利用する。
【0065】
反射回数が例えば2回であれば、上記手法により送信機Txが全て共通の結果を使った場合の計算時間Tは、例えば
=LocNo×TxNo×RxNo×[{(Nlayout×PTx+Nhuman
(Nlayout+Nhuman)×PRx}/(Nlayout+Nhuman)]×Traytrace
TxNo×(Nhuman/Nlayout)×Ttrans+LocNo×RxNo×
{(Nlayout+Nhuman)/Nlayout}×Ttrans
なる式から計算できる。ここで、Nlayoutは所定空間500内のレイアウト内の面数、Nhumanは移動体151の面数、Traytraceは見通し判定をしない場合の1リンク当たりのレイトレース計算時間、Ttransは送信機Tx及び受信機Rx毎の見通し判定処理時間、LocNoはロケーション数、TxNoは送信機Txの数、RxNoは受信機Rxの数を夫々示す。
【0066】
また、反射回数が例えば2回であれば、上記手法により送信機Tx及び受信機 Rxがともに位置毎に見通し判定を行う場合の計算時間Tは、例えば
=LocNo×TxNo×RxNo×PTx×PRx×Traytrace+TxNo×
{(Nlayout+Nhuman)/Nlayout}×Ttrans+LocNo×RxNo×
{(Nlayout+Nhuman)/Nlayout}×Ttrans
なる式から計算できる。
【0067】
図13は、第1実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明するフローチャートである。図13に示すレイトレース法を用いたシミュレーションで見通し判定を行う処理は、例えば図2に示すCPU201が補助記憶装置204にインストールされているIoTデバイス設置シミュレーションプログラムを実行することで実行可能である。
【0068】
図14において、ステップS1では、CPU201が、主記憶デバイスに格納されている所定空間500内のレイアウト情報、即ち、レイアウトモデル140の情報を取得する。ステップS2では、CPU201が、主記憶デバイスに格納されている送信機Tx及び受信機Rxの位置の座標情報を取得する。ステップS3では、CPU201が、主記憶デバイスに格納されている移動体モデル情報、即ち、移動体モデル150の情報を取得する。ステップS4では、CPU201が、主記憶デバイスに格納されている移動体モデル150の座標情報、即ち、移動体151の位置の座標情報を取得する。
【0069】
ステップS5では、CPU201が、全てのオブジェクトを所定空間500内に配置する。ステップS6では、CPU201が、移動体151を所定空間500内に配置しない状態で、第1反射面及び最終反射面を見通しである面のみに限定して見通し判定を行う。ステップS7では、CPU201が、主記憶デバイスに格納されている投影面上のサイズの閾値を取得する。
【0070】
次に、CPU201が、後述するステップS8~S14の処理を、SL2A,SL2Bで示すように全ての送信機Tx及び全ての受信機Rxについて実行する処理を、SL1A,SL1Bで示すように移動体151の全ての配置位置(全ての移動体配置位置)に対して実行する。
【0071】
ステップS8では、CPU201が、送信機Tx及び受信機Rxを視点に設定し、ステップS9では、CPU201が、所定空間500内に移動体151を配置する。ステップS10では、CPU201が、XY平面、YZ平面、及びZX平面に対して移動体151のみを投影する。ステップS11では、CPU201が、投影面上の移動体151のサイズが閾値より大きいか否かを判定し、判定結果がYESであると処理はステップS12へ進み、判定結果がNOであると処理はステップS14へ進む。ステップS14では、CPU201が、ステップS6の見通し判定の結果を見通し判定結果とする。ステップS12では、CPU201が、全てのオブジェクトを所定空間500内に配置する。ステップS13では、CPU201が、第1反射面及び最終反射面を見通しである面のみに限定して見通し判定を行う。ステップS8~S14の処理を、SL2A,SL2Bで示すように全ての送信機Tx及び全ての受信機Rxについて実行する処理を、SL1A,SL1Bで示すように全ての移動体配置位置に対して実行した後、処理は終了する。
【0072】
次に、上記見通し判定処理の評価結果について説明する。図14は、送信機Txから見通しの関係にある面の割合PTxを変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。図14中、縦軸は処理時間の差T-T[秒](以下、「[s]」と言う)を示し、横軸は所定空間500内のレイアウト内の面数Nlayoutを示す。図14では、Nlayout=500,Nhuman=30の時にTraytrace=0.4,Ttrans=0.005として、PTx=0.25~0.5の0.05ずつ変化させた場合の計算結果を示す。T<Tであると、移動体151による遮蔽の度合が大きい。
【0073】
図14は、LocNo=1000, TxNo=200, RxNo=2, PRx=0.2として、送信機Txから見通しの関係にある面の割合PTxを変化させた場合の処理時間の変化を示す。図14から、範囲M1で示すように、PTx=0.5の場合にはNlayout=500までは共通の結果を使う手法が有効であり、PTx=0.4の場合にはNlayout=400までは共通の結果を使う手法が有効であることが確認できた。
【0074】
移動体151を所定空間500内に配置しない状態でPTx=0.5の場合、移動体151を所定空間500内に配置してPTx'=0.4となる場合には、範囲M2で示すように、位置毎の見通し判定を行う手法が有効となることが確認できた。この場合、ΔPTx=0.1となるため、例えば閾値を10%として見通し判定を行えば良い。
【0075】
図15は、移動体151の面数Nhumanを変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。図15中、縦軸は処理時間の差T-T[s]を示し、横軸はレイアウト内の面数Nlayoutを示す。図15では、Nlayout=500,Nhuman=30の時にTraytrace=0.4,Ttrans=0.005として、Nhuman=5,Nhuman=30,Nhuman=50,Nhuman=80の場合の計算結果を示す。
【0076】
移動体151の面数Nhumanを変化させた場合、例えばNhuman=30の場合にはNlayout=500まで、例えばNhuman=50の場合にはNlayout=350までは、図14中範囲M2で示すように、位置毎の見通し判定を行う手法が有効であることが確認できた。従って、範囲M2では、移動体151の面数面数Nhumanによって共通の結果を利用するかの判定が可能である。
【0077】
図16は、レイトレース及び見通し判定夫々の処理時間Traytrace,Ttransを変化させた場合の処理時間の評価結果の一例を示す図である。図16中、縦軸は処理時間の差T-T[s]を示し、横軸はレイアウト内の面数Nlayoutを示す。図16では、Nlayout=500,Nhuman=30の時に、Ttrans=0.01の場合にTraytrace=0.2,Traytrace=0.4,Traytrace=0.6とした場合のNhumanの計算結果と、Ttrans=0.005の場合にTraytrace=0.2,Traytrace=0.4,Traytrace=0.6とした場合のNhumanの計算結果とを示す。
【0078】
レイトレース及び見通し判定の処理時間Traytrace,Ttransを変化させた場合には、Traytrace=0.6[s],Ttrans=0.005[s]ではNlayout=400から位置毎での見通し判定が有効であることが確認できた。一方、Traytrace=0.2[s],Ttrans=0.01[s]ではNlayout=1500でも共通の結果を用いた方が有効であることが確認できた。そこで、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)の性能によって共通の結果を利用するかの判定も可能である。
【0079】
このように、本実施例によれば、見通し判定処理に要する時間を短縮し、電波伝搬のシミュレーションを高速化することが可能となる。
【0080】
ところで、送信点又は受信点から最も近い移動体配置位置で、上記ステップst51~st54の判定を行うようにしても良い。これは、移動体が送信点又は受信点に最も近い位置にある場合、移動体の投影面でのサイズが送信点又は受信点に対して最大となるため、最も近い位置でも閾値を超えない場合にはいずれの位置でも超えないためである。
【0081】
図17は、第2実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明する図である。図17中、破線は移動体151の移動範囲を示す。
【0082】
一例として、送信機Txから最も近い位置での判定を行う場合の、最も近い位置での計算例を説明する。先ず、移動体151を、所定空間500内の設定された移動範囲内に例えば一定配置間隔で配置し、移動範囲内の各位置でのシミュレーションを行う。次に、移動体151の各位置での中心座標から送信機Txまでの距離から、最も距離の短い位置を求める。この例では、以下のパラメータを用いる。
Tx :(x,y,z)=(30,20,2)
移動体の移動範囲: [(x1,y1),(x2,y1),(x2,y2),(x1,y2)]=[(0,14),(20,14),(20,15),(0,15)]
移動体の移動範囲内の配置間隔: 1m
移動体の寸法 : 縦(Y軸方向)1m、横(X軸方向)1m
この例における移動体151の配置位置は、(0.5,14.5),(1.5,14.5),...,(19.5,14.5)となり、送信機Txから最も近い配置位置は(19.5,14.5)と求められる。
【0083】
図18は、第2実施例における無線通信装置設置シミュレーション装置の処理の一例を説明するフローチャートである。図18は、送信機Tx又は受信機Rxから最も近い位置での判定を行う場合の処理の一例を示す。図18に示すレイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う処理は、例えば図2に示すCPU201が補助記憶装置204にインストールされているIoTデバイス設置シミュレーションプログラムを実行することで実行可能である。図18中、図13と同一ステップには同一符号を付し、その説明は省略する。
【0084】
図18において、ステップS1~S7の処理が終了すると、処理はステップS21へ進む。具体的には、第1の処理と、第2の処理とを、SL3A,SL3Bで示すように全ての送信機Tx及び全ての受信機Rxについて実行する。ここで、第1の処理は、ステップS21,S22,S8A,S10,S11,S24の処理を含む。一方、第2の処理は、ステップS8B,S9,S12,S13の処理を、SL4A,SL4Bで示すように全ての移動体配置位置に対して実行する処理を含む。
【0085】
ステップS21では、CPU201が、送信機Tx又は受信機Rxから最も近い移動体配置位置を計算する。ステップS22では、CPU201が、最も近い位置に移動体151を配置する。ステップS8Aでは、CPU201が、送信機Tx及び受信機Rxを視点に設定する。ステップS10では、CPU201が、XY平面、YZ平面、及びZX平面に対して移動体151のみを投影する。ステップS11では、CPU201が、投影面上の移動体151のサイズが閾値より大きいか否かを判定し、判定結果がYESであると処理はステップS8Bへ進み、判定結果がNOであると処理はステップS24へ進む。ステップS24では、CPU201が、ステップS6の見通し判定の結果を利用して見通し判定頻度を求める。
【0086】
ステップS8Bでは、CPU201が、送信機Tx及び受信機Rxを視点に設定し、ステップS9では、CPU201が、移動体151を所定空間500内に配置する。ステップS12では、CPU201が、全てのオブジェクトを所定空間500内に配置する。ステップS13では、CPU201が、第1反射面及び最終反射面を見通しである面のみに限定して見通し判定を行う。上記の如く、第1の処理と、第2の処理とを、SL3A,SL3Bで示すように全ての送信機Tx及び全ての受信機Rxについて実行する。ここで、第1の処理は、ステップS21,S22,S8A,S10,S11,S24の処理を含み、第2の処理は、ステップS8B,S9,S12,S13の処理を、SL4A,SL4Bで示すように全ての移動体配置位置に対して実行する処理を含む。
【0087】
上記の各実施例によれば、見通し判定処理を高速化する効果を保ちながら、見通し判定処理によるオーバーヘッドを最小限に抑えることができる。このため、上記の各実施例によれば、レイトレース法を用いたシミュレーションによる見通し判定処理の判定回数を削減して、センサの設置位置を決定するための電波伝搬のシミュレーションを高速化することができる。
【0088】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
所定空間内の移動体の移動先の位置の数及び無線通信装置の設置数を含むシミュレーション条件を取得する取得部と、
前記移動体による前記無線通信装置の遮蔽の度合の閾値を計算する閾値計算部と、
前記シミュレーション条件と前記閾値に基づいて、レイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う見通し判定頻度を決定する決定部と、
を備え、
前記見通し面の判定は、
前記所定空間内の第1反射面及び最終反射面を見通しである面に限定し、
無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、
ことを特徴とする、無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記2)
前記決定部は、前記移動体による遮蔽の度合の大小を、前記無線通信装置から前記移動体までの距離及び前記移動体の大きさに応じて判定することを特徴とする、付記1記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記3)
前記決定部は、XYZ座標系のXY平面、YZ平面及びZX平面の正方向及び負方向に透視投影を行い、どの面が見通しの位置にあるかを判定する見通し判定処理を行い、
前記閾値は、投影面上のサイズの閾値であることを特徴とする、付記1又は2記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記4)
前記見通し判定処理は、各無線通信装置からの視点上に前記移動体のみを投影した投影面上の大きさに応じて見通し面を判定することを特徴とする、付記3記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記5)
前記決定部は、前記見通し面の判定を、前記所定空間内の移動範囲内における前記移動体の複数の位置のうち、前記無線通信装置から最も近い位置で行うことを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記6)
前記見通し面の判定は、
送信側及び受信側の一方の無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、前記一方の無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、
前記送信側及び前記受信側の他方の無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、前記他方の無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、
ことを特徴とする、付記1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記7)
前記一方の無線通信装置は送信機であり、前記他方の無線通信装置は受信機であることを特徴とする、付記6記載の無線通信装置設置シミュレーション装置。
(付記8)
所定空間内の移動体の移動先の位置の数及び無線通信装置の設置数を含むシミュレーション条件を取得し、
前記移動体による前記無線通信装置の遮蔽の度合の閾値を計算し、
前記シミュレーション条件と前記閾値に基づいて、レイトレース法を用いたシミュレーションで見通し面の判定を行う見通し判定頻度を決定する、
処理をコンピュータが実行し、
前記見通し面の判定は、
前記所定空間内の第1反射面及び最終反射面を見通しである面に限定し、
無線通信装置からの見通し上で前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値未満の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体を前記所定空間に配置しない状態で見通し判定を行った結果を前記移動体の位置によらず利用して決定し、前記移動体による遮蔽の度合が前記閾値以上の場合には、当該無線通信装置の設置位置を、前記移動体の配置位置毎に前記移動体を配置した状態で見通し判定を行い決定する、
ことを特徴とする、無線通信装置設置シミュレーション方法。
【0089】
以上、開示の無線通信装置設置シミュレーション装置及び方法を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
100 IoTデバイス設置シミュレーション装置
110 見通し判定頻度決定部
120 シミュレーション部
130 情報格納部
140 レイアウトモデル
150 移動体モデル
151 移動体
160 リンク情報
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 補助記憶装置
205 操作装置
206 表示装置
207 通信装置
208 ドライブ装置
209 バス
210 記録媒体
301 入力ファイル読み込み部
302 シミュレーション条件取得部
303 閾値計算部
304 決定部
500 所定空間
Tx 送信機
Rx 受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18