(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20221213BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2019010207
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 智樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069414(JP,A)
【文献】特開2012-183291(JP,A)
【文献】特開2018-030021(JP,A)
【文献】特開2018-199186(JP,A)
【文献】特開2017-136313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0009405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0094188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
A61F 2/54 - 2/74
A61H 1/00 - 1/02
A61H 3/00
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の少なくとも腰部に装着される身体装着具と、
前記身体装着具と装着者の大腿部とに装着されて、前記装着者の腰部に対する大腿部又は前記装着者の大腿部に対する腰部の動作を支援するアシストトルクを発生するアクチュエータユニットと、
前記装着者の動作状態を検出して時系列的に記憶する動作状態検出装置と、
前記アクチュエータユニットを駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記アクチュエータユニットによって前記アシストトルクを発生する際に、前記動作状態検出装置によって検出された動作検出情報に基づいて、前記装着者の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記姿勢推定部によって推定された推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であるか否かを判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢でないと判定された場合に、前記動作検出情報に基づいて、前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行するか否かを判定する移行判定部と、
を有する、
アシスト装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のアシスト装置において、
前記装着者に対して報知する報知装置を備え、
前記制御装置は、
前記姿勢判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定された場合は、前記報知装置によって腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢である旨を報知するように制御する、
アシスト装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のアシスト装置において、
前記装着者に対して報知する報知装置を備え、
前記制御装置は、
腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとれるように前記推定姿勢を補正する補正動作を決定する補正動作決定部
を有し、
前記移行判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行すると判定された場合には、前記報知装置によって、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行する旨を報知するように制御すると共に、前記補正動作決定部によって決定された前記補正動作を教示するように制御する、
アシスト装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載のアシスト装置において、
前記動作状態検出装置は、
前記装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度を検出するピッチ角度検出装置と、
前記装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度を検出する腰部角度検出装置と、
を有し、
前記姿勢推定部は、前記ピッチ角度と前記前傾角度に基づいて前記装着者の姿勢を推定する、
アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の動作を支援するアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の身体に装着された状態で、作業を補助するアシスト装置が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載される装着式動作補助装置は、装着者の腰に装着される腰フレーム、背当て部、腹当て部、背当て部と腹当て部を結合する結合部材、大腿部に固定される大腿固定部、腰フレームに対して大腿固定部を駆動する駆動機構を備えている。更に、装着式動作補助装置は、装着者の皮膚に貼り付けられる生体信号検出センサ、生体信号検出センサから出力された生体信号に基づいて駆動機構を制御する制御部、を備えている。
【0003】
例えば、装着者が両足の筋力を増大して腰より下方を固定した場合、駆動機構を構成する左右の駆動モータに内蔵された角度センサによって検出される左右の股関節角度は、ほぼ均等になる。そして、左右の駆動モータは、装着者の左右の大腿に締結された各第2の連結部を固定側として、腰フレームに固定された左右の第1連結部を可動側として駆動トルクを腰フレームの背当て部及び腹当て部に伝達する。これにより、装着者は、腰及び背中、腹を各駆動モータの駆動トルクにより保持され、床面に載置された重量物を持ち上げる作業を行う際の腰の負担を軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装着式動作補助装置では、装着者は、床面等に載置された重量物を持ち上げる作業を行う際の腰の負担を軽減されるが、無理な姿勢で重量物を持ち上げる作業を行うと、腰部に無理な力が掛かって、腰痛になる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、装着者が無理な姿勢で重量物を持ち上げる作業を抑制し、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制できるアシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明は、装着者の少なくとも腰部に装着される身体装着具と、前記身体装着具と装着者の大腿部とに装着されて、前記装着者の腰部に対する大腿部又は前記装着者の大腿部に対する腰部の動作を支援するアシストトルクを発生するアクチュエータユニットと、前記装着者の動作状態を検出して時系列的に記憶する動作状態検出装置と、前記アクチュエータユニットを駆動制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アクチュエータユニットによって前記アシストトルクを発生する際に、前記動作状態検出装置によって検出された動作検出情報に基づいて、前記装着者の姿勢を推定する姿勢推定部と、前記姿勢推定部によって推定された推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であるか否かを判定する姿勢判定部と、を有する、アシスト装置である。
【0008】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係るアシスト装置において、前記制御装置は、前記姿勢判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢でないと判定された場合に、前記動作検出情報に基づいて、前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行するか否かを判定する移行判定部を有する、アシスト装置である。
【0009】
次に、第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係るアシスト装置において、前記装着者に対して報知する報知装置を備え、前記制御装置は、前記姿勢判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定された場合は、前記報知装置によって腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢である旨を報知するように制御する、アシスト装置である。
【0010】
次に、第4の発明は、上記第2の発明に係るアシスト装置において、前記装着者に対して報知する報知装置を備え、前記制御装置は、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとれるように前記推定姿勢を補正する補正動作を決定する補正動作決定部を有し、前記移行判定部によって前記推定姿勢が腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行すると判定された場合には、前記報知装置によって、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行する旨を報知するように制御すると共に、前記補正動作決定部によって決定された前記補正動作を教示するように制御する、アシスト装置である。
【0011】
次に、第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか一の発明に係るアシスト装置において、前記動作状態検出装置は、前記装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度を検出するピッチ角度検出装置と、前記装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度を検出する腰部角度検出装置と、を有し、前記姿勢推定部は、前記ピッチ角度と前記前傾角度に基づいて前記装着者の姿勢を推定する、アシスト装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、制御装置は、アクチュエータユニットによって装着者の腰部に対する大腿部又は装着者の大腿部に対する腰部の動作を支援するアシストトルクを発生する際に、動作状態検出装置によって検出された動作検出情報に基づいて、装着者の姿勢を推定する。そして、制御装置は、推定した装着者の推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であるか否かを判定する。
【0013】
これにより、制御装置は、装着者の推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定した場合には、アクチュエータユニットによってアシストトルクを発生する際に、装着者に対して腰部に無理な力が掛かる姿勢である旨を警告することが可能となる。従って、装着者が無理な姿勢で重量物を持ち上げる作業を抑制し、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制できる。
【0014】
第2の発明によれば、制御装置は、装着者の推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢でないと判定された場合に、動作状態検出装置によって検出された動作検出情報に基づいて、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行するか否かを判定する。これにより、制御装置は、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行すると判定した場合には、装着者に対して、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行する旨を警告することが可能となる。従って、装着者が無理な姿勢で重量物を持ち上げる作業を抑制し、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制できる。
【0015】
第3の発明によれば、制御装置は、装着者の推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定した場合には、報知装置によって腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢である旨を装着者に対して報知する。これにより、装着者は、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢で重量物を持ち上げる旨を容易に認識することができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を更に効果的に抑制することができる。
【0016】
第4の発明によれば、制御装置は、装着者の推定姿勢が、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行すると判定した場合には、報知装置によって腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢に移行する旨を装着者に対して報知する。また、制御装置は、報知装置によって、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとれる補正動作を装着者に対して教示する。これにより、装着者は、補正動作を行うことによって、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとることができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を更に効果的に抑制することができる。
【0017】
第5の発明によれば、制御装置は、ピッチ角度検出装置によって検出された装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度と、腰部角度検出装置によって検出された装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度とに基づいて、装着者の姿勢を推定できる。これにより、簡易な構成によって、装着者の姿勢を推定することが可能となり、アシスト装置の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るアシスト装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すアシスト装置の分解斜視図である。
【
図3】右アクチュエータユニットの内部構造の例を説明する分解斜視図である。
【
図4】右アクチュエータユニットの内部構造の例を説明する断面図である。
【
図5】操作ユニットの外観の例を説明する図である。
【
図7】アシスト装置を装着した装着者が背筋を伸ばしている直立状態を説明する図である。
【
図8】
図7に示す状態から、装着者が前傾姿勢となり、仮想回動軸線回りにフレーム部等が回動した状態を説明する図である。
【
図9】アシスト装置の制御装置が実行する「腰痛抑制処理」の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図9の「姿勢警告処理」のサブ処理の一例を示すサブフローチャートである。
【
図11】装着者の持ち上げ作業の様子を説明する図である。
【
図12】装着者が持ち上げ作業を行った際、時間に対する、前屈み角度及び持ち上げアシストトルクの変化の様子を説明する図である。
【
図13】上半身のピッチ角度と、大腿部に対する腰部の前傾角度とに応じた装着者の姿勢が属する姿勢領域を示す姿勢領域情報の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るアシスト装置を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るアシスト装置1の概略構成について
図1乃至
図8に基づいて説明する。尚、各図中のX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、アシスト装置1を装着した装着者から見て、X軸方向は前方向、Y軸方向は左方向、Z軸方向は上方向、に対応している。
【0020】
図1及び
図2に示すように、アシスト装置1は、腰サポート部10、ジャケット部20、フレーム部30、バックパック部37、クッション37G、右アクチュエータユニット4R、左アクチュエータユニット4L等にて構成されている。そして、腰サポート部10、ジャケット部20、フレーム部30、バックパック部37、クッション37Gにて、装着者の上半身に装着される身体装着具2が構成されている。また、アシスト装置1は、装着者が、動作モード(持ち下げアシスト、持ち上げアシスト等)や、アシストトルクのゲインや、アシストトルクの増量速度の調整を行ったり、調整した状態等の確認を行ったりするための、操作ユニットR1(いわゆるリモコン)と、操作ユニットR1を収容する収容部R1Sを有している。
【0021】
身体装着具2は、装着者の少なくとも腰周りに装着されるものである。右アクチュエータユニット4R及び左アクチュエータユニット4Lは、身体装着具2を構成する腰サポート部10と、装着者の大腿部と、に装着されて、装着者の腰部に対する大腿部あるいは装着者の大腿部に対する腰部、の動作を支援(アシスト)する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、身体装着具2は、装着者の腰周りに装着される腰サポート部10と、装着者の肩周り及び胸周りに装着されるジャケット部20と、ジャケット部20が接続されるフレーム部30と、フレーム部30に取り付けられたバックパック部37及びクッション37Gと、を有している。フレーム部30は、装着者の背中及び腰周りに配置される。
【0023】
フレーム部30は、メインフレーム31と、右サブフレーム32Rと、左サブフレーム32L等を有している。メインフレーム31は、両側縁部に複数のベルト接続孔31Hが上下方向に配置された各支持体31SR、31SLと、略円筒状の接続部31Rと、略円筒状の接続部31Lと、を有している。接続部31Rには、右サブフレーム32Rの一方端(上端)が接続され、接続部31Lには、左サブフレーム32Lの一方端(上端)が接続されている。各接続部31R、31Lは、いわゆる円筒ダンパであり、同軸に配置された内筒と外筒とを有し、内筒と外筒との間には筒状弾性体が配置されている。
【0024】
そして、接続部31Rの外筒は、メインフレーム31の右側縁部に固定され、内筒には右サブフレーム32Rの一方端(上端)が固定されている。同様に、接続部31Lの外筒は、メインフレーム31の左側縁部に固定され、内筒には左サブフレーム32Lの一方端(上端)が固定されている。これにより、右サブフレーム32Rは、接続部31Rの中心軸回りに回動可能であり、左サブフレーム32Lは、接続部31Lの中心軸回りに回動可能である。また、
図1に示すように、右サブフレーム32Rの下端部は、右アクチュエータユニット4Rの接続部41RSに接続(固定)され、左サブフレーム32Lの下端部は、左アクチュエータユニット4Lの接続部41LSに接続(固定)されている。
【0025】
腰サポート部10は、
図2に示すように、装着者の右半身の腰周りに装着される右腰装着部11Rと、装着者の左半身の腰周りに装着される左腰装着部11Lとを有している。右腰装着部11Rの背中側端部と、左腰装着部11Lの背中側端部とは、背面腰ベルト16A、臀部上ベルト16B、臀部下ベルト16Cにて接続されている。また、右腰装着部11Rの前側端部と、左腰装着部11Lの前側端部とは、右腰締めベルト13RA、腰ベルト保持部材13RB(腰バックル)、左腰締めベルト13LA、腰ベルト保持部材13LB(腰バックル)等によって着脱可能に接続されている。
【0026】
また、腰サポート部10は、
図1及び
図2に示すように、ジャケット部20の連結部29RSと連結される連結リング19RSを有する連結ベルト19Rと、ジャケット部20の連結部29LSと連結される連結リング19LSを有する連結ベルト19Lとを有している。また、
図2に示すように、腰サポート部10の右腰装着部11Rには、仮想回動軸線15Yと交差する位置に、右アクチュエータユニット4Rの連結部40RSに接続するための取付孔15Rを有している。また、腰サポート部10の左腰装着部11Lには、仮想回動軸線15Yと交差する位置に、左アクチュエータユニット4Lの連結部40LSに接続するための取付孔15Lを有している。
【0027】
バックパック部37は、
図1及び
図2に示すように、フレーム部30の上端部となるメインフレーム31に取り付けられている。バックパック部37内には、シンプルな箱状の形状を有し、制御装置61(
図6参照)、モータドライバ62(
図6参照)、電源ユニット63(
図6参照)、通信装置64(
図6参照)等が収容されている。また、バックパック部37内には、X軸Y軸Z軸のそれぞれの軸方向における装着者の上半身の傾きを検出する3軸加速度・角速度センサ35が収容されている。
【0028】
これにより、後述のように、制御装置61(
図6参照)は、装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)(
図7、
図8参照)を3軸加速度・角速度センサ35(ピッチ角度検出装置)によって検出することができる。また、バックパック部37には、スピーカ36(報知装置)が、例えば、上面部に取り付けられている。これにより、後述のように、制御装置61は、スピーカ36によって音声案内等を行うことができる。
【0029】
バックパック部37は、
図1及び
図2に示すように、メインフレーム31の側に背当て部37Cを有している。そして、背当て部37Cは、メインフレーム31に固定されている。メインフレーム31の右側縁部に設けられた支持体31SRのいずれかのベルト接続孔31H(ベルト接続部)には、
図1に示すように、右肩ベルト24Rのベルト接続部24RSが接続される。同様に、メインフレーム31の左側縁部に設けられた支持体31SLのいずれかのベルト接続孔31H(ベルト接続部)には、
図1に示すように、左肩ベルト24Lのベルト接続部24LSが接続される。尚、各支持体31SR、31SLは、バックパック部37に設けられていてもよい。
【0030】
ここで、ベルト接続孔31H(ベルト接続部)は、装着者の体格に応じて、フレーム部30に対するジャケット部20の高さ方向の位置を調整可能とするように、上下方向に沿って複数設けられている。従って、装着者の体格に合わせてジャケット部20の高さを適切な位置に調整できる。
【0031】
バックパック部37の下端の左右には、
図1及び
図2に示すように、各ベルト接続部37FR、37FLが設けられている。ベルト接続部37FRには、
図1に示すように、右腋ベルト25Rのベルト接続部25RSが接続される。同様に、ベルト接続部37FLには、
図1に示すように、左腋ベルト25Lのベルト接続部25LSが接続される。尚、ベルト接続部37FR、37FLは、メインフレーム31に設けられていてもよい。
【0032】
また、装着者の上半身が前に傾いた場合であっても、背中に接触するクッション37G(または背当て部37C)を、装着者の肩から腰の方向へと長くすることで、アシストトルクを出力する各アクチュエータユニット4R、4Lを適切に支持することができる。更に、装着者の上半身が左右に傾いた場合であっても、装着者の背中の曲がり中心にクッション37G(または背当て部37C)が接触することで、アシストトルクを出力する各アクチュエータユニット4R、4Lをより適切に支持することができる(支持剛性が高くなる)。
【0033】
ジャケット部20は、
図1及び
図2に示すように、装着者の右半身の胸周りに装着される右胸装着部21Rと、装着者の左半身の胸周りに装着される左胸装着部21Lとを有している。右胸装着部21Rは、左胸装着部21Lと、例えば面ファスナ21Fや、バックル21Bによって接続されており、装着者へのジャケット部20の着脱を容易にしている。
【0034】
右胸装着部21Rは、メインフレーム31のベルト接続孔31Hに接続される右肩ベルト24R及びベルト接続部24RSと、バックパック部37のベルト接続部37FRに接続される各右腋ベルト26R、25R及びベルト接続部25RSと、を有している。また、左胸装着部21Lは、メインフレーム31に接続される左肩ベルト24L及びベルト接続部24LSと、バックパック部37のベルト接続部37FLに接続される各左腋ベルト26L、25L及びベルト接続部25LSと、を有している。
【0035】
右腋ベルト26Rと右腋ベルト25R、また、左腋ベルト26Lと左腋ベルト25Lは、装着者の胸周りにズレることなく密着させるために、長さを調節可能に接続されている。また、右胸装着部21Rは、右腰装着部11Rと連結するための連結ベルト29R及び連結部29RSを有しており、左胸装着部21Lは、左腰装着部11Lと連結するための連結ベルト29L及び連結部29LSを有している。
【0036】
右アクチュエータユニット4Rは、
図1及び
図2に示すように、トルク発生部40Rと、トルク伝達部である出力リンク50Rと、を有している。また、左アクチュエータユニット4Lは、
図1及び
図2に示すように、トルク発生部40Lと、トルク伝達部である出力リンク50Lと、を有している。右アクチュエータユニット4Rと左アクチュエータユニット4Lは、左右対称に構成されている。以降の説明では、左アクチュエータユニット4Lについては説明を省略し、右アクチュエータユニット4Rについて説明する。
【0037】
図1に示すように、トルク発生部40Rは、アクチュエータベース部41Rと、カバー41RBと、連結ベース4ARと、を有している。
図7に示すように、出力リンク50Rは、アシスト対象身体部(この場合、大腿部)の関節(この場合、股関節)回りに回動してアシスト対象身体部(この場合、大腿部)に装着される。尚、出力リンク50Rを介してアシスト対象身体部の回動をアシストするアシストトルクは、トルク発生部40R内の電動モータ47R(
図3参照)にて発生される。また、アシストトルクは、アシスト力であり、腰部を回転軸と想定して作用するトルクとしている。
【0038】
出力リンク50Rは、アシストアーム51R(第1リンクに相当)と、第2リンク52Rと、第3リンク53Rと、大腿装着部54R(身体保持部に相当)と、を有している。アシストアーム51Rは、トルク発生部40R内の電動モータ47Rによって発生したアシストトルクと、装着者の大腿部の動作による対象者トルクと、が合成された合成トルクによって、仮想回動軸線15Y回りに回動する。
【0039】
アシストアーム51Rの先端には第2リンク52Rの一方端が回動軸線51RJ回りに回動可能に接続され、第2リンク52Rの他方端には第3リンク53Rの一方端が回動軸線52RJ回りに回動可能に接続されている。そして第3リンク53Rの他方端には、第3ジョイント部53RS(この場合、球面ジョイント)を介して大腿装着部54Rが接続されている。
【0040】
大腿装着部54Rは、装着者の大腿部を一周するように巻回される大腿ベルト55Rが設けられている。大腿ベルト55Rは伸縮する弾性体で形成されており、一方端の側は大腿装着部54Rに固定され、他方端の側は面ファスナとされている。また大腿装着部54Rにおける大腿ベルト55Rの他方端の側と対向する位置には、面ファスナが設けられており、装着者の大腿部への大腿装着部54R及び大腿ベルト55Rの着脱を容易にしている。
【0041】
次に、トルク発生部40Rの構成について
図3及び
図4に基づいて説明する。尚、
図4は
図3におけるA-A矢視断面図である。
図3及び
図4に示すように、カバー41RB内には、減速機42R、プーリ43RA、伝達ベルト43RB、フランジ部43RDを有するプーリ43RC、渦巻バネ45R、軸受46R、電動モータ47R(アクチュエータ)、サブフレーム48R等が収容されている。またカバー41RBの外側には、軸部51RAを有するアシストアーム51Rが配置されている。
【0042】
また、各アクチュエータユニット4R、4Lにおけるフレーム部30に近い部分に、各電動モータ47R、47L(
図6参照)の駆動用、制御用、通信用、の各ケーブルの取出口33RS、33LS(
図2参照)が設けられている。そして、ケーブルの取出口33RS、33LS(
図2参照)に接続されたケーブル(図示省略)は、フレーム部30に沿って配置され、バックパック部37に接続される。
【0043】
尚、トルク発生部40Rは、
図4に示すように、電動モータ47R等を搭載したサブフレーム48Rが取り付けられたアクチュエータベース部41Rと、アクチュエータベース部41Rの一方側に取り付けられるカバー41RBと、アクチュエータベース部41Rの他方側に取り付けられる連結ベース4ARと、を有している。連結ベース4ARには、仮想回動軸線15Y回りに回動可能な連結部40RSが設けられている。
【0044】
図3及び
図4に示すように、アクチュエータベース部41Rに対するアシストアーム51Rの回動角度、つまり、装着者の右大腿部に対する腰部の前傾角度θR(t)(
図8参照)を検出する出力リンク回動角度検出装置(腰部角度検出装置)43RS(例えば、回動角度センサ等)が、減速機42Rの増速軸42RBに接続されたプーリ43RAに接続されている。出力リンク回動角度検出装置43RSは、例えば、エンコーダや角度センサであり、回転角度に応じた検出信号を制御装置61(
図6参照)に出力する。また電動モータ47Rには、モータ軸(出力軸に相当)の回転角度を検出可能なモータ回転角度検出装置47RSが設けられている。モータ回転角度検出装置47RSは、例えば、エンコーダや角度センサであり、回転角度に応じた検出信号を制御装置61(
図6参照)に出力する。
【0045】
図3に示すように、サブフレーム48Rには、減速機42Rの減速機ハウジング42RCを固定する貫通孔48RAと、電動モータ47Rの出力軸47RAを挿通する貫通孔48RBと、が形成されている。アシストアーム51Rの軸部51RAは、減速機42Rの減速軸42RAの穴部42RDに嵌め込まれ、減速機42Rの減速機ハウジング42RCはサブフレーム48Rの貫通孔48RAに固定される。
【0046】
これにより、アシストアーム51Rは、アクチュエータベース部41Rに対して、仮想回動軸線15Y回りに回動可能に支持され、減速軸42RAと一体となって回動する。また、電動モータ47Rはサブフレーム48Rに固定され、出力軸47RAはサブフレーム48Rの貫通孔48RBに挿通されている。サブフレーム48Rは、ボルト等の締結部材にて、アクチュエータベース部41Rの取付部41RHに固定される。
【0047】
図3に示すように、減速機42Rの増速軸42RBには、プーリ43RAが接続され、プーリ43RAには出力リンク回動角度検出装置43RSが接続されている。そして、出力リンク回動角度検出装置43RSには、サブフレーム48Rに固定される支持部材43RTが接続されている。これにより、出力リンク回動角度検出装置43RSは、サブフレーム48Rに対する(すなわち、アクチュエータベース部41Rに対する)増速軸42RBの回動角度を検出することができる。
【0048】
しかも、アシストアーム51Rの回動角度は、減速機42Rの増速軸42RBによって増加された回動角度となるので、出力リンク回動角度検出装置43RS及び制御装置61(
図6参照)は、より高い分解能にて、アシストアーム51Rの回動角度を検出することができる。出力リンクの回動角度をより高い分解能で検出することで、制御装置61は、より高精度な制御を実行することができる。尚、アシストアーム51Rの軸部51RA、減速機42R、プーリ43RA、出力リンク回動角度検出装置43RSは、仮想回動軸線15Yに沿って同軸となるように配置されている。
【0049】
減速機42Rは、減速比n(1<n)が設定されており、減速軸42RAが回動角度θR(t)だけ回動された場合に、増速軸42RBを回動角度nθR(t)だけ回動させる。また、減速機42Rは、増速軸42RBが回動角度nθR(t)だけ回動された場合に、減速軸42RAを回動角度θR(t)だけ回動させる。減速機42Rの増速軸42RBが接続されたプーリ43RAと、プーリ43RCには、伝達ベルト43RBが掛けられている。従って、アシストアーム51Rからの対象者トルクは増速軸42RBを介してプーリ43RCに伝達され、電動モータ47Rからのアシストトルクは、渦巻バネ45Rとプーリ43RCを介して増速軸42RBに伝達される。
【0050】
渦巻バネ45Rは、バネ定数Ksを有し、中心側に内側端部45RC、外周側に外側端部45RAを有する渦巻き形状を有している。渦巻バネ45Rの内側端部45RCは、電動モータ47Rの出力軸47RAに形成された溝部47RBに嵌め込まれている。渦巻バネ45Rの外側端部45RAは、円筒状に巻回されて、プーリ43RCのフランジ部43RDに設けられた伝達軸43REが嵌め込まれ、当該伝達軸43REにて支持されている(プーリ43RCは、フランジ部43RDと伝達軸43REが一体とされている)。
【0051】
プーリ43RCは、回動軸線47RY回りに回動可能に支持され、一体とされたフランジ部43RDの外周縁部の近傍には、渦巻バネ45Rの側に突出する伝達軸43REが設けられている。伝達軸43REは、渦巻バネ45Rの外側端部45RAに嵌め込まれ、外側端部45RAの位置を回動軸線47RY回りに移動させる。また、電動モータ47Rの出力軸47RAとプーリ43RCとの間には、軸受46Rが設けられている。
【0052】
つまり、プーリ43RCに出力軸47RAは固定されておらず、出力軸47RAは、プーリ43RCに対して自由に回転できる。プーリ43RCは、渦巻バネ45Rを介して電動モータ47Rから回転駆動される。以上の構成にて、電動モータ47Rの出力軸47RA、軸受46R、フランジ部43RDを有するプーリ43RC、渦巻バネ45R、は回動軸線47RYに沿って同軸となるように配置されている。
【0053】
渦巻バネ45Rは、電動モータ47Rから伝達されたアシストトルクを蓄えるとともに、装着者の大腿部の動作によってアシストアーム51Rと減速機42Rとプーリ43RA及びプーリ43RCを経由して伝達された対象者トルクを蓄え、その結果として、アシストトルクと対象者トルクとを合成した合成トルクを蓄える。そして、渦巻バネ45Rに蓄えられた合成トルクは、プーリ43RC及びプーリ43RAと減速機42Rを介してアシストアーム51Rを回動させる。以上の構成により、電動モータ47Rの出力軸47RAは、出力軸47RAの回転角度を減量する減速機42Rを介して出力リンク(
図3の場合、アシストアーム51R)に接続されている。
【0054】
渦巻バネ45Rに蓄えられている合成トルクは、無負荷状態からの角度変化量とバネ定数に基づいて求められ、例えば、アシストアーム51Rの回動角度(出力リンク回動角度検出装置43RSにて求められる)と、電動モータ47Rの出力軸47RAの回転角度(モータ回転角度検出装置47RSにて求められる)と、渦巻バネ45Rのバネ定数Ksと、に基づいて求められる。そして求められた合成トルクから対象者トルクが抽出され、当該対象者トルクに応じたアシストトルクが電動モータから出力される。
【0055】
また、
図4に示すように、右アクチュエータユニットのトルク発生部40Rは、仮想回動軸線15Y回りに回動可能な連結部40RSを有している。そして連結部40RSは、
図1及び
図2に示すように、腰サポート部10の取付孔15Rを介してボルト等の連結部材にて連結(固定)される。また、
図1及び
図2に示すように、右アクチュエータユニット4Rの接続部41RSには、フレーム部30の右サブフレーム32Rの下端部が接続(固定)される。
【0056】
同様に、
図1及び
図2に示すように、左アクチュエータユニット4Lのトルク発生部40Lの連結部40LSは、腰サポート部10の取付孔15Lを介してボルト等の連結部材にて連結(固定)される。また、
図1及び
図2に示すように、左アクチュエータユニット4Lの接続部41LSには、フレーム部30の左サブフレーム32Lの下端部が接続(固定)される。
【0057】
つまり、
図2において、右アクチュエータユニット4Rのトルク発生部40Rに、腰サポート部10とフレーム部30が固定され、左アクチュエータユニット4Lのトルク発生部40Lに、腰サポート部10とフレーム部30が固定される。そして、右アクチュエータユニット4Rと左アクチュエータユニット4Lとフレーム部30は一体とされ、仮想回動軸線15Y回りに回動可能な連結部40RS、40LSにて、腰サポート部10に対して回動可能である(
図7、
図8参照)。
【0058】
次に、装着者がアシスト装置1のアシスト状態を容易に調整等するための操作ユニットR1の概略構成について
図5及び
図6に基づいて説明する。
図6に示すように、操作ユニットR1は、バックパック部37(
図1参照)内の制御装置61と有線または無線の通信回線R1Tにて接続されている。操作ユニットR1の制御装置R1Eは、通信装置R1EAを介して制御装置61と情報の送受信が可能であり、制御装置61は、通信装置64を介して操作ユニットR1内の制御装置R1Eと情報の送受信が可能である。尚、
図1に示すように、装着者は、操作ユニットR1を操作しない場合、例えば、ジャケット部20に設けられたポケット等の収容部R1Sに収容しておくことができる(
図1参照)。
【0059】
図5に示すように、操作ユニットR1は、メイン操作部R1A、ゲインUP操作部R1BU、ゲインDOWN操作部R1BD、増量速度UP操作部R1CU、増量速度DOWN操作部R1CD、表示部R1D等を有している。また、
図6に示すように、操作ユニットR1内には、制御装置R1E、操作ユニット用電源R1F等を有している。尚、メイン操作部R1A、ゲインUP操作部R1BU、ゲインDOWN操作部R1BD、増量速度UP操作部R1CU、増量速度DOWN操作部R1CDは、操作ユニットR1が収容部R1S(
図1参照)に収容されている際の誤操作を防止するために、配置されている面から突出していないことが好ましい。
【0060】
メイン操作部R1Aは、装着者からの操作によって、アシスト装置1によるアシスト制御の開始と停止を行うためのスイッチである。尚、
図6に示すように、アシスト装置1の全体の起動と停止を行うための主電源スイッチ65が、例えば、バックパック部37に設けられている。主電源スイッチ65がON側に操作されると、制御装置61及び制御装置R1Eが起動し、主電源スイッチ65がOFF側に操作されると、制御装置61及び制御装置R1Eの動作が停止される。
【0061】
図5に示すように、例えば、操作ユニットR1の表示部R1Dにおける表示エリアR1DBには、現在のアシスト装置1の運転状態がON(運転)であるかOFF(停止)であるかが表示される。ゲインUP操作部R1BUは、装着者からの操作によって、アシスト装置1が発生するアシストトルクのゲインを大きくするスイッチである。ゲインDOWN操作部R1BDは、装着者からの操作によって、アシスト装置1が発生するアシストトルクのゲインを小さくするスイッチである。
【0062】
例えば、制御装置R1Eは、装着者によってゲインUP操作部R1BUが操作される毎に、記憶しているゲイン番号を「0」、「1」、「2」、「3」と1つずつ増加し、ゲインDOWN操作部R1BDが操作される毎に、ゲイン番号を「3」、「2」、「1」、「0」と1つずつ減少する。尚、ゲイン番号が「0」~「3」の4個の例を示しているが、4個に限定されるものではない。
図6に示すように、制御装置R1Eは、例えば、操作ユニットR1の表示部R1Dにおける表示エリアR1DCに、現在のゲイン番号に応じた表示を行う。
【0063】
また、ゲインUP操作部R1BUを、例えば5[sec]以上長押しした場合、ゲインUP操作部R1BUは、動作モード切替スイッチとして機能する。ゲインUP操作部R1BUを長押しした場合、ゲインUP操作部R1BUを押す毎に、動作モード(モード番号)が「1(持ち下げアシスト)」――>「2(自動調整持ち上げアシスト)」――>「3(手動調整持ち上げアシスト)」へと、順番に切り替わる。
図5に示すように、制御装置R1Eは、例えば、操作ユニットR1の表示部R1Dにおける表示エリアR1DEに、現在の動作モードに応じた表示を行う。尚、「歩行」モードは、ゲインUP操作部R1BUから指示することはできないが、制御装置61(
図6参照)が、装着者が「歩行」していることを認識した場合に、自動的に切り替わる動作モードである。
【0064】
増量速度UP操作部R1CUは、装着者からの操作によって、アシスト装置1が発生するアシストトルクの増量速度を速くするスイッチである。増量速度DOWN操作部R1CDは、装着者からの操作によって、アシスト装置1が発生するアシストトルクの増量速度を遅くするスイッチである。例えば、制御装置R1Eは、増量速度UP操作部R1CUが操作される毎に、記憶している増量速度に対応する速度番号を「-1」、「0」、「1」、「2」、「3」、「4」と1つずつ増加する。
【0065】
また、制御装置R1Eは、増量速度DOWN操作部R1CDが操作される毎に、記憶している増量速度に対応する速度番号を「4」、「3」、「2」、「1」、「0」、「-1」と1つずつ減少する。
図5に示すように、制御装置R1Eは、例えば、操作ユニットR1の表示部R1Dにおける表示エリアR1DDに、現在の速度番号に応じたアシストトルクの増量速度の表示を行う。尚、速度番号が「-1」~「4」の6個に限定されるものではない。
【0066】
そして、操作ユニットR1の制御装置R1Eは、所定時間間隔(例えば、数[msec]~数100[msec]間隔)、又は、メイン操作部R1AとゲインUP操作部R1BUとゲインDOWN操作部R1BDと増量速度UP操作部R1CUと増量速度DOWN操作部R1CDのいずれかが操作される毎に、通信装置R1EA(
図6参照)を介して操作情報を制御装置61(
図6参照)へ送信する。操作情報には、上記の停止指示または起動指示、モード番号、ゲイン番号、速度番号等が含まれている。
【0067】
バックパック部37に収容される制御装置61(
図6参照)は、通信装置64を介して操作情報を受信すると、受信した操作情報を記憶する。そして、制御装置61は、アシスト装置1の駆動に用いる電源ユニット63の電池の状態を示す電池情報と、アシスト状態を示すアシスト情報等を含む応答情報を、通信装置64(
図6参照)を介して送信する。尚、応答情報に含まれている電池情報には、電源ユニット63の残量等が含まれている。
【0068】
また、応答情報に含まれているアシスト情報には、例えば、アシスト装置1に異常が発見された場合には異常の内容を示すエラー情報が含まれている。
図5に示すように、操作ユニットR1の制御装置R1Eは、例えば、操作ユニットR1の表示部R1Dにおける表示エリアR1DAに、電池残量等を表示し、エラー情報が含まれていた場合は、表示部R1Dのいずれかの位置に、エラー情報を表示する。
【0069】
また、制御装置R1Eからの操作情報を受信した制御装置61(
図6参照)は、受信した操作情報に起動指示が含まれていた場合には、アシスト装置1を起動し、受信した操作情報に停止指示が含まれていた場合にはアシスト装置1を停止する。また、制御装置61は、例えば、動作モードを表すモード番号を受信した場合には、受信したモード番号に対応する動作モードを記憶する。また、制御装置61は、例えば、ゲイン番号を受信した場合には、ゲイン番号に対応するゲインCPの値(0~3)を記憶する。また、制御装置61は、例えば、速度番号を受信した場合には、速度番号に対応させて(右)増量速度CSR(右用速度番号:-1~4)、(左)増量速度CSL(左用速度番号:-1~4)を記憶する。
【0070】
以上に説明したように、操作ユニットR1の操作によって、装着者は、所望するアシスト状態とするための調整を、容易に行うことができる。また、操作ユニットR1の表示部R1Dに電池残量やエラー情報等を表示させるので、装着者は、アシスト装置1の状態を容易に把握することができる。尚、表示部R1Dに表示される各種の情報の形態は、
図5に示す例に限定されるものではない。
【0071】
次に、アシスト装置1の制御構成について
図6乃至
図8に基づいて説明する。
図6に示すように、アシスト装置1は、アシスト装置1の全体を制御する制御装置61を備えている。
図6に示す例では、バックパック部37内に、制御装置61、モータドライバ62、電源ユニット63等が収容されている。制御装置61は、例えば、ECU66と、記憶装置67(例えば、HDD:Hard Disk Drive等であって、制御プログラムや各種パラメータ等を格納)と、通信装置64等を有している。尚、制御装置61は、後述する姿勢推定部61A、姿勢判定部61B、移行判定部61C、補正動作決定部61D等を有している。
【0072】
ECU66は、不図示のCPU、RAM、ROM、タイマ、バックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種プログラムや各種パラメータに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えば、アシスト装置1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
【0073】
モータドライバ62は、制御装置61からの制御信号に基づいて、各電動モータ47R、47Lを駆動する駆動電流を出力する電子回路である。電源ユニット63は、例えば、リチウムイオン電池であり、制御装置61とモータドライバ62に電力を供給する。ECU66には、通信装置64を介して、操作ユニットR1からの操作情報が入力される。
【0074】
また、制御装置61には、各モータ回転角度検出装置47RS、47LS、各出力リンク回動角度検出装置43RS、43LS、3軸加速度・角速度センサ35、スピーカ36等が電気的に接続されている。制御装置61は、各モータ回転角度検出装置47RS、47LSから入力された検出信号に基づいて、各電動モータ47R、47Lのモータ軸の回転角度θrMを求め、求めた回転角度θrMに応じた制御信号をモータドライバ62に出力する。
【0075】
また、ECU66は、3軸加速度・角速度センサ35から入力された加速度と角速度との検出信号に基づいて、
図7及び
図8に示すように、装着者6の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)を検出する。また、ECU66は、各出力リンク回動角度検出装置43RS、43LSから入力された検出信号に基づいて、
図7及び
図8に示すように、装着者6の右大腿部に対する腰部の前傾角度θR(t)と、左大腿部に対する腰部の前傾角度θL(t)を検出する。
【0076】
[腰痛抑制処理]
次に、上記のように構成されたアシスト装置1において、装着者の持ち上げ動作の開始時に、ECU66が実行する「腰痛抑制処理」について
図9乃至
図13に基づいて説明する。尚、
図9及び
図10にフローチャートで示されるプログラムは、記憶装置67に記憶されており、装着者が、メイン操作部R1AをONにすると、ECU66によって所定時間毎(例えば、数ミリ秒毎~数十ミリ秒毎である。)に起動される。当該処理が起動されると、ECU66は、ステップS11へと処理を進める。
【0077】
図9に示すように、ステップS11において、ECU66は、持ち上げアシストフラグを不図示のRAMから読み出し、ONに設定されているか否かを判定する。尚、持ち上げアシストフラグは、制御装置61の起動時に「OFF」に設定されて不図示のRAMに記憶される。そして、装着者が操作ユニットR1によって自動調整持ち上げアシスト、又は、手動調整持ち上げアシストの動作モードを選択した際に、持ち上げアシストフラグは、「ON」に設定される。一方、装着者が操作ユニットR1によって持ち下げアシストの動作モードを選択した際、又は、動作モードが「歩行」モードに自動的に切り替わった際に、持ち上げアシストフラグは、「OFF」に設定される。
【0078】
そして、持ち上げアシストフラグがOFFに設定されていると判定した場合には(S11:NO)、ECU66は、後述のステップS16に進む。一方、持ち上げアシストフラグがONに設定されている判定した場合には(S11:YES)、ECU66は、ステップS12に進む。ステップS12において、ECU66は、3軸加速度・角速度センサ35から入力された加速度と角速度との検出信号に基づいて、装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)を検出して、不図示のRAMに時系列的に記憶する。
【0079】
続いて、ステップS13において、ECU66は、各出力リンク回動角度検出装置43RS、43LSから入力された検出信号に基づいて、装着者の右大腿部に対する腰部の前傾角度θR(t)と、左大腿部に対する腰部の前傾角度θL(t)を検出して、不図示のRAMに時系列的に記憶する。その後、ステップS14において、ECU66は、前屈み動作の終了を表す前屈み動作終了フラグを不図示のRAMから読み出し、ONに設定されているか否かを判定する。尚、前屈み動作終了フラグは、制御装置61の起動時に「OFF」に設定されて不図示のRAMに記憶される。
【0080】
そして、前屈み動作終了フラグがONに設定されていると判定した場合には(S14:YES)、ECU66は、後述のステップS18に進む。一方、前屈み動作終了フラグがOFFに設定されていると判定した場合には(S14:NO)、ECU66は、ステップS15に進む。ステップS15において、ECU66は、装着者の前屈み動作が終了したか否かを判定する。
【0081】
具体的には、ECU66は、上記ステップS13で検出した左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)をRAMから読み出し、
図11に示す装着者の前屈み角度θF(t)を下記式(1)から算出して、RAMに時系列的に記憶する。続いて、ECU66は、装着者の前屈み角度θF(t)の増加がほぼ停止したか否かを判定する。
【0082】
θF(t)=180°-(θR(t)+θL(t))/2 ・・・・(1)
【0083】
そして、前屈み動作が終了していないと判定した場合、つまり、
図12に示すように、前屈み角度θF(t)が増加していると判定した場合には(S15:NO)、ECU66は、ステップS16に進む。ステップS16において、ECU66は、持ち上げ作業の開始時における、装着者の持ち上げ姿勢を表す初期姿勢データとしてRAMに記憶している装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とを読み出し、初期化して(例えば、「0」を代入して)再度、初期姿勢データとしてRAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0084】
一方、前屈み動作が終了したと判定した場合、つまり、
図12に示すように、前屈み角度θF(t)が増加していないと判定した場合には(S15:YES)、ECU66は、ステップS17に進む。例えば、
図12に示すように、時間0にて装着者が直立状態から前屈み動作を開始して、前屈み角度θF(t)を徐々に大きくしながら時間T11にて、前屈み動作が終了して、前屈み角度θF(t)の増加がほぼ停止している。
【0085】
尚、
図12に示すように、ECU66は、装着者が時間T12にて持ち上げ動作を開始した後、装着者の前屈み角度θF(t)が減少して、ほぼ「0度」になる時間T13まで各電動モータ47R、47Lを所定の持ち上げアシストトルクで駆動制御する。また、ECU66は、時間T13になった際に、前屈み動作の終了を表す前屈み動作終了フラグを不図示のRAMから読み出し、OFFに設定した後、再度RAMに記憶する。
【0086】
図11に示すように、持ち上げアシストトルクは、持ち上げ方向(
図11中、-(負)側)へのアシストトルクであり、装着者の腰部の負担を軽減し、持ち上げ作業を適切にアシストすることができる。尚、所定の持ち上げアシストトルクは、記憶装置67に予め記憶されている。
【0087】
続いて、
図9に示すように、ステップS17において、ECU66は、前屈み動作の終了を表す前屈み動作終了フラグを不図示のRAMから読み出し、ONに設定して、再度RAMに記憶する。その後、ステップS18において、ECU66は、上記ステップS12で検出した装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)と、上記ステップS13で検出した左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)と(動作検出情報)、を読み出す。
【0088】
そして、ECU66は、上記ステップS12で検出した装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)と、下記式(2)よって算出した装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度(背骨と大腿骨の角度)θ(t)とを、持ち上げ作業における装着者の持ち上げ姿勢を推定した姿勢推定情報としてRAMに記憶した後、ステップS19に進む。従って、ステップS18の処理は、
図6に示す姿勢推定部61Aに相当している。
【0089】
θ(t)=(θL(t)+θR(t))/2 ・・・・(2)
【0090】
ステップS19において、ECU66は、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報をRAMから再度読み出し、
図13に示す姿勢領域情報71に基づいて、持ち上げ作業における装着者の持ち上げ姿勢が、腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」であるか否かを判定する。尚、
図13に示す姿勢領域情報71は、記憶装置67に予め記憶されている。
【0091】
ここで、姿勢領域情報71について
図13に基づいて説明する。
図13に示すように、姿勢領域情報71は、縦軸を上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)とし、横軸を上記式(2)から算出される大腿部に対する腰部の前傾角度(背骨と大腿骨の角度)θ(t)としている。また、縦軸に設けられたピッチ角度θP(t)は、0度から90度まで等間隔で増加するように設定されている。横軸に設けられた大腿部に対する腰部の前傾角度(背骨と大腿骨の角度)θ(t)は、180度から0度まで等間隔で減少するように設定されている。
【0092】
そして、姿勢領域情報71は、持ち上げ作業時において、腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢の領域(網掛け領域)71A」と、腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢の領域(斜線領域)71B」と、無理な姿勢の領域71Aと安全な姿勢の領域71Bとによって上下を挟まれた「中間領域(無模様領域)71C」と、に区画されている。また、安全な姿勢の領域71B内において、大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)が90度でピッチ角度θP(t)が0度の位置を中心とする所定範囲(例えば、上方に突出する半円形状の範囲)が、姿勢の状態を持続することが難しい「困難な姿勢の領域71D」に設定されている。
【0093】
無理な姿勢の領域71Aは、大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)が180度でピッチ角度θP(t)が0度の位置と、前傾角度θ(t)が0度でピッチ角度θP(t)が約40度の位置と、を左右の下端点とし、上方に略半円弧状に突出する下端縁部から上方の全領域に設定されている。無理な姿勢の領域71Aの下端縁部の頂点は、大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)が約110度でピッチ角度θP(t)が約60度の位置に設定されている。
【0094】
安全な姿勢の領域71Bは、ピッチ角度θP(t)が0度で、大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)が180度から0度までを下端縁部とし、上方に略矩形状に突出する領域であって、半円形状の「困難な姿勢の領域71D」を除いた領域に設定されている。安全な姿勢の領域71Bの上端縁部は、ピッチ角度θP(t)が約25度で、大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)が約160度から約20度までの位置に設定されている。
【0095】
図13に示すように、例えば、前傾角度θ(t)が約90度で、ピッチ角度θP(t)が約90度の黒丸印81Aに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、無理な姿勢の領域71Aに属している。つまり、黒丸印81Aに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、膝が伸びた状態で、且つ、腰が前側に約90度曲った状態で物を持ち上げる姿勢であって、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる姿勢であることを示している。
【0096】
また、例えば、上半身のピッチ角度θP(t)が約45度で、前傾角度θ(t)が約135度の黒丸印81Bに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、中間領域71Cに属している。つまり、黒丸印81Bに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、膝がほぼ伸びた状態で、且つ、腰が前側に約45度曲った状態で物を持ち上げる姿勢であって、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に大きな力が掛かる姿勢であることを示している。
【0097】
また、例えば、前傾角度θ(t)が約180度で、ピッチ角度θP(t)が約0度の黒丸印81Cに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、無理な姿勢の領域71Aの左下端部に属している。つまり、黒丸印81Cに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、膝がほぼ伸びた状態で、且つ、腰がほぼ伸びた状態で物を持ち上げる姿勢であって、腰部に無理な力が掛からなくなる姿勢であり、無理な姿勢の領域71Aの端部であることを示している。
【0098】
また、例えば、前傾角度θ(t)が約90度で、ピッチ角度θP(t)が約0度の黒丸印81Dに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、姿勢の状態を持続することが難しい「困難な姿勢の領域71D」に属している。つまり、黒丸印81Dに対応する装着者の持ち上げ姿勢は、装着者がとり難い姿勢であることを示している。
【0099】
従って、
図9に示すように、ステップS19において、ECU66は、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報をRAMから再度読み出し、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢の領域71B」に属しているか否かを判定する。つまり、ECU66は、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」であるか否かを判定する。
【0100】
そして、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢の領域71B」に属していると判定した場合、つまり、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」であると判定した場合には(S19:YES)、ECU66は、ステップS20に進む。
【0101】
例えば、
図13に示すように、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報の前傾角度θ(t)が約90度で、ピッチ角度θP(t)が約15度に対応する黒丸印81Eは、姿勢領域情報71の「安全な姿勢の領域71B」に属している。その結果、ECU66は、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」であると判定して(S19:YES)、ステップS20に進む。
【0102】
ステップS20において、ECU66は、スピーカ36を介して、持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かかる姿勢である旨、又は、装着者の腰部に無理な力が掛かる姿勢になる旨を表す警告音等を発しているか否かを判定する。そして、スピーカ36を介して、持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かかる姿勢である旨、又は、装着者の腰部に無理な力が掛かる姿勢になる旨を表す警告音等を発していないと判定した場合には(S20:NO)、ECU66は、当該処理を終了する。
【0103】
一方、スピーカ36を介して、持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かかる姿勢である旨、又は、装着者の腰部に無理な力が掛かる姿勢になる旨を表す警告音等を発していると判定した場合には(S20:YES)、ECU66は、ステップS21に進む。ステップS21において、ECU66は、スピーカ36による警告音等を停止して、警告を解除した後、当該処理を終了する。
【0104】
他方、上記ステップS19で装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢の領域71B」に属していないと判定した場合、つまり、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」でないと判定した場合には(S19:NO)、ECU66は、ステップS22に進む。
【0105】
ステップS22において、ECU66は、持ち上げ作業の開始時における、装着者の持ち上げ姿勢を表す初期姿勢データが、不図示のRAMに記憶されているか否かを判定する。具体的には、ECU66は、初期姿勢データとしてRAMに記憶している装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とが、初期化されていないか否かを判定する。
【0106】
そして、持ち上げ作業の開始時における、装着者の持ち上げ姿勢を表す初期姿勢データが、不図示のRAMに記憶されていると判定した場合、つまり、初期姿勢データとしてRAMに記憶している装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とが、初期化されていないと判定した場合には(S22:YES)、ECU66は、後述のステップS24の処理に進む。
【0107】
一方、持ち上げ作業の開始時における、装着者の持ち上げ姿勢を表す初期姿勢データが、不図示のRAMに記憶されていないと判定した場合、つまり、初期姿勢データとしてRAMに記憶している装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とが、初期化されていると判定した場合には(S22:NO)、ECU66は、ステップS23に進む。
【0108】
ステップS23において、ECU66は、上記ステップS12で検出した装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)と、上記ステップS13で検出した左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)と(動作検出情報)、を読み出し、初期姿勢データとして不図示のRAMに記憶した後、ステップS24に進む。ステップS24において、ECU66は、後述の「姿勢警告処理」のサブ処理を実行した後、当該処理を終了する。
【0109】
[姿勢警告処理]
次に、上記ステップS24で実行される「姿勢警告処理」のサブ処理について
図10に基づいて説明する。
図10に示すように、ステップS31において、ECU66は、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報をRAMから再度読み出し、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢の領域71A」に属しているか否かを判定する。つまり、ECU66は、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」であるか否かを判定する。従って、ステップS19及びステップS31の処理は、
図6に示す姿勢判定部61Bに相当している。
【0110】
そして、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢の領域71A」に属していると判定した場合、つまり、装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」であると判定した場合には(S31:YES)、ECU66は、ステップS32に進む。
【0111】
ステップS32において、ECU66は、スピーカ36を介して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰を痛める可能性が高い旨を表す第1警告音(例えば、ブザー音等である。)を発して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる無理な持ち上げ姿勢である旨を報知した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
【0112】
一方、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)と、装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度θ(t)とで特定される装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71(
図13参照)の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢の領域71A」に属していないと判定した場合、つまり、装着者の持ち上げ姿勢が、姿勢領域情報71の「中間領域71C」に属していると判定した場合には(S31:NO)、ECU66は、ステップS33に進む。
【0113】
ステップS33において、ECU66は、初期姿勢データを読み出し、初期持ち上げ姿勢を推定する。そして、ECU66は、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報をRAMから再度読み出し、
図13に示す姿勢領域情報71に基づいて、持ち上げ作業における装着者の持ち上げ姿勢の姿勢変化を推定して、ステップS34に進む。
【0114】
具体的には、ECU66は、初期姿勢データとしてRAMに記憶している装着者の上半身の鉛直方向(Z軸方向)に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とを読み出す。そして、ECU66は、初期姿勢データの装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)と、上記式(2)よって算出した装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度(背骨と大腿骨の角度)θ(t)と、を初期持ち上げ姿勢として推定する。そして、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報を読み出し、
図13に示す姿勢領域情報71に基づいて、装着者の持ち上げ姿勢の姿勢変化を推定して、ステップS34に進む。
【0115】
ステップS34において、ECU66は、装着者の持ち上げ姿勢の変化が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する変化であるか否かを判定する。そして、装着者の持ち上げ姿勢の変化が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する変化でない、つまり、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定した場合には(S34:NO)、ECU66は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
【0116】
尚、装着者の持ち上げ姿勢の変化がない場合も、ECU66は、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定する。従って、ステップS34の処理は、
図6に示す移行判定部61Cに相当している。
【0117】
例えば、初期姿勢データから算出した初期持ち上げ姿勢の、前傾角度θ(t)が約45度で、ピッチ角度θP(t)が約45度の場合には、
図13に示すように、初期持ち上げ姿勢は、姿勢領域情報71の中間領域71Cに属する黒丸印81Fに相当する。そして、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報で表される装着者の持ち上げ姿勢の前傾角度θ(t)とピッチ角度θP(t)が、
図13に示すように、黒丸印81Fから姿勢領域情報71の「安全な姿勢の領域71B」に属する黒丸印81Eに向かう矢印85上、若しくは、矢印85の近傍に位置する姿勢変化の場合には、ECU66は、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定する。
【0118】
一方、装着者の持ち上げ姿勢の変化が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定した場合、つまり、重量物を持ち上げる際に、装着者が腰を痛める可能性が高いと判定した場合には(S34:YES)、ECU66は、ステップS35に進む。例えば、初期姿勢データから算出した初期持ち上げ姿勢の、前傾角度θ(t)が約45度で、ピッチ角度θP(t)が約45度の場合には、
図13に示すように、初期持ち上げ姿勢は、姿勢領域情報71の中間領域71Cに属する黒丸印81Fに相当する。
【0119】
そして、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報で表される装着者の持ち上げ姿勢の前傾角度θ(t)とピッチ角度θP(t)が、
図13に示すように、黒丸印81Fから姿勢領域情報71の「無理な姿勢の領域71A」に属する黒丸印81Gに向かう矢印86上、若しくは、矢印86の近傍に位置する姿勢変化の場合には、ECU66は、重量物を前に屈んだ姿勢で物を持ち上げると、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定する。つまり、ECU66は、装着者の姿勢変化は、重量物を持ち上げる際に、装着者が腰を痛める可能性が高い姿勢変化であると判定して、ステップS35に進む。
【0120】
また、上記ステップS18で記憶した姿勢推定情報で表される装着者の持ち上げ姿勢の前傾角度θ(t)とピッチ角度θP(t)が、
図13に示すように、黒丸印81Fから姿勢領域情報71の「中間領域71C」に属する黒丸印81Hに向かう矢印87上、若しくは、矢印87の近傍に位置する姿勢変化の場合には、ECU66は、腰を伸ばすような動きで物を持ち上げる姿勢であって、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定する。つまり、ECU66は、装着者の姿勢変化は、重量物を持ち上げる際に、装着者が腰を痛める可能性が高い姿勢変化であると判定して、ステップS35に進む。
【0121】
そして、ステップS35において、ECU66は、スピーカ36を介して、重量物を持ち上げる際に、装着者が腰を痛める可能性が高い旨を表す第2警告音(例えば、ピーピー音等である。)を発して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化である旨を報知する。また、ECU66は、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」をとれるように、装着者の持ち上げ姿勢を補正する補正動作を決定する。そして、ECU66は、スピーカ36を介して、この補正動作を音声案内により教示した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。従って、ステップS35の処理は、
図6に示す補正動作決定部61Dに相当している。
【0122】
例えば、
図13に示すように、ECU66は、装着者の姿勢変化が、黒丸印81Fから姿勢領域情報71の「安全な姿勢の領域71B」に属する黒丸印81Eに向かう矢印85上、若しくは、矢印85の近傍に位置する姿勢変化となるように補正する補正動作を決定する。具体的には、ECU66は、上半身のピッチ角度θP(t)を小さくするように立ち上がる補正動作、つまり、「体を起こして立ち上がる」補正動作を決定する。そして、ECU66は、スピーカ36を介して、「体を起こして立ち上がって下さい。」と音声案内により、補正動作を装着者に教示する。
【0123】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るアシスト装置1では、ECU66は、バックパック部37内に収容された3軸加速度・角速度センサ35によって、装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)を検出する。また、ECU66は、各アクチュエータユニット4R、4L内に配置された各出力リンク回動角度検出装置43RS、43L3によって、装着者6の右大腿部に対する腰部の前傾角度θR(t)と、左大腿部に対する腰部の前傾角度θL(t)を検出する。
【0124】
そして、ECU66は、装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)と、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)とから、装着者の持ち上げ姿勢を推定する。これにより、簡易な構成によって、装着者の姿勢を推定することが可能となり、アシスト装置1の軽量化を図ることができる。
【0125】
また、ECU66は、推定した装着者の持ち上げ姿勢が、
図13に示す姿勢領域情報71の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢の領域71A」に属している場合には、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定する。そして、推定した装着者の持ち上げ姿勢が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢であると判定した場合には、ECU66は、スピーカ36を介して、第1警告音を発して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる無理な持ち上げ姿勢である旨を報知する。これにより、装着者は、腰部に無理な力が掛かる無理な姿勢で重量物を持ち上げる旨を容易に認識することができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制することができる。
【0126】
また、ECU66は、推定した装着者の持ち上げ姿勢が、
図13に示す姿勢領域情報71の「中間領域71C」に属していると判定した場合には、持ち上げ作業における装着者の姿勢変化が、重量物を持ち上げる際に、腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であるか否かを判定する。そして、装着者の持ち上げ姿勢の変化が、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であると判定した場合、つまり、装着者が腰を痛める可能性が高いと判定した場合には、第2警告音を発して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化である旨を報知する。
【0127】
また、ECU66は、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」をとれるように装着者の持ち上げ姿勢を補正する補正動作を決定し、スピーカ36を介して、この補正動作を音声案内により教示する。これにより、装着者は、補正動作を行うことによって、重量物を持ち上げる際に、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとることができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態に係るアシスト装置1は、上記姿勢推定(ステップS18、S33、S34)時に機械学習(ニューラルネットワーク等)を用いてもよい。例えば、装着者の上半身のピッチ角度θP(t)、左右大腿部に対する腰部の前傾角度θL(t)、θR(t)等の姿勢情報から現在の持ち上げ姿勢の推定と、次に取る持ち上げ姿勢の推定をしてもよい。
【0129】
また、上記ステップS18で記憶に使われるRAM等に学習用の記憶領域を追加(記憶容量を増やす)して、学習モデルを記憶するようにして、操作ユニットR1から操作して学習動作をするようにしてもよい(学習の正解情報も操作ユニットR1から入力する。)。そして、学習した学習モデルを上記ステップS18で記憶に使われるRAM等に反映して、学習した学習モデルによって、現在の持ち上げ姿勢の推定と、次に取る持ち上げ姿勢の推定をしてもよい。また、他のアシスト装置1の学習モデルを操作ユニットR1等を経由して記憶させ、他のアシスト装置1の学習モデルによって、現在の持ち上げ姿勢の推定と、次に取る持ち上げ姿勢の推定をしてもよい。
【0130】
また、姿勢判定(ステップS19、S34)等の判定処理についても、持ち上げ姿勢の推定と同様に、機械学習(ニューラルネットワーク等)を用いてもよい。例えば、上記ステップS18で記憶に使われるRAM等に学習用の記憶領域を追加(記憶容量を増やす)して、学習モデルを記憶するようにして、操作ユニットR1から操作して学習動作をするようにしてもよい(学習の正解情報も操作ユニットR1から入力する。)。
【0131】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。尚、以下の説明において上記
図1乃至
図13の前記実施形態に係るアシスト装置1の構成等と同一符号は、前記実施形態に係るアシスト装置1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0132】
(A)例えば、各出力リンク回動角度検出装置43RS、43L3に替えて、各出力リンク50R、50Lの各アシストアーム51R、51Lに、それぞれ3軸加速度・角速度センサ35を更に取り付けるようにしてもよい。また、この各3軸加速度・角速度センサ35を制御装置61に電気的に接続するようにしてもよい。そして、ECU66は、各アシストアーム51R、51Lに取り付けた各3軸加速度・角速度センサ35の検出信号に基づいて、左右の大腿部に対する腰部の各前傾角度θR(t)、θL(t)を検出するようにしてもよい。これにより、ECU66は、上記式(2)によって装着者の大腿部に対する腰部の前傾角度(背骨と大腿骨の角度)θ(t)を算出することが可能となる。
【0133】
(B)また、例えば、前記実施形態では、ECU66は、持ち上げ作業における装着者の持ち上げ姿勢を推定して、重量物を持ち上げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」か否かを判定した。同様に、ECU66は、持ち下げ作業における装着者の持ち下げ姿勢も同様にして推定し、装着者の持ち下げ姿勢の変化が、重量物を持ち下げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する変化であるか否かを判定するようにしてもよい。そして、装着者の持ち下げ姿勢の変化が、重量物を持ち下げる際に、腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する変化であると判定した場合には、警告するようにしてもよい。
【0134】
また、ECU66は、装着者の持ち下げ姿勢が、重量物を持ち下げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない「安全な姿勢」をとれるように姿勢を補正する補正動作をスピーカ36を介して、音声案内等によって教示するようにしてもよい。これにより、装着者は、補正動作を行うことによって、重量物を持ち下げる際に、装着者の腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとることができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制することができる。
【0135】
(C)また、例えば、上記ステップS35において、ECU66は、装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向へのピッチ角度θP(t)が変化しない場合には、スピーカ36を介して、この補正動作を音声案内により教示するとともに、各電動モータ47R、47Lを駆動しないで、装着者の持ち上げ作業をアシストしないようにしてよい。これにより、装着者は、重量物を持ち上げる際に、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとる必要性を容易に知ることができ、腰部に無理な力が掛かりにくくして、腰痛を効果的に抑制することができる。
【0136】
(D)また、例えば、3軸加速度・角速度センサ35をバックパック部37だけでなく、装着者の腕部にも設けるようにしてもよい。これにより、バックパック部37と腕部に設けた3軸加速度・角速度センサ35によって、装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)を検出することが可能となり、推定した装着者の持ち上げ姿勢の正確さの向上を図ることができる。
【0137】
(E)また、例えば、前記実施形態では、3軸加速度・角速度センサ35によって装着者の上半身の鉛直方向に対する前側方向(X軸方向)へのピッチ角度θP(t)を検出したが、上半身のロール角度も検出して、装着者の持ち上げ姿勢をより詳細に推定するようにしてもよい。これにより、腰部に無理な力が掛からない安全な姿勢をとることが可能となる補正動作の精度を向上させることが可能となる。
【0138】
(F)また、例えば、姿勢領域情報71の「無理な姿勢の領域71A」の下端縁が、「安全な姿勢の領域71B」側へ段階的に近づくように設定された複数種類の姿勢領域情報71を設けるようにしてもよい。そして、装着者が、腰痛経験があり、腰痛になりやすい人の場合には、操作ユニットR1の操作によって、「無理な姿勢の領域71A」の下端縁が、「安全な姿勢の領域71B」側へ近くなるように設定された姿勢領域情報71を選択して、設定できるようにしてもよい。これにより、装着者が、腰痛経験があり、腰痛になりやすい人であっても、腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であるか否かを適切に判定することが可能となり、装着者の腰痛を効果的に抑制することができる。
【0139】
(G)また、例えば、アシスト装置1は、装着者の両足に足裏荷重センサを設けるようにしてもよい。そして、各足裏荷重センサを制御装置61に電気的に接続するようにしてもよい。そして、ECU66は、バックパック部37内に収容された3軸加速度・角速度センサ35と、各出力リンク回動角度検出装置43RS、43LSと、各足裏荷重センサの検出信号に基づいて、重量物の持ち上げ作業時に、装着者の持ち上げ姿勢を推定するようにしてもよい。これにより、装着者が重量物を持ち上げているか否かを判定することが可能となり、重量物の持ち上げ作業時に、装着者の腰部に無理な力が掛かる「無理な姿勢」に移行する姿勢変化であるか否かを適切に判定することが可能となり、腰痛を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 アシスト装置
2 身体装着具
4R、4L アクチュエータユニット
35 3軸加速度・角速度センサ
36 スピーカ
43RS、43LS 出力リンク回動角度検出装置
61 制御装置
66 ECU
67 記憶装置