(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221213BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20221213BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20221213BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M6/02 Z
H01M6/02 A
B65H20/02 Z
(21)【出願番号】P 2019010652
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃大
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181396(JP,A)
【文献】特開2007-326178(JP,A)
【文献】特許第5952504(JP,B1)
【文献】特開2018-131325(JP,A)
【文献】特開昭61-111735(JP,A)
【文献】特開2015-048220(JP,A)
【文献】特開2013-129515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 6/02-16
H01G 11/00-13/06
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シート,負極シート,セパレータシートを搬送しつつ,これら各シートを積層位置にて積層して積層シート群となし,
前記積層シート群を,前記積層位置よりも搬送方向における下流の捲回位置にて捲回することで捲回体を構成し,
前記捲回体を電極体として電池を製造する電池の製造方法において,
前記積層位置から前記捲回位置までの間における前記積層シート群の搬送経路では,前記積層シート群を,その厚み方向に挟み込みつつ回転する複数の搬送ローラ対によって搬送し,
前記搬送ローラ対として,
前記積層シート群のうち,前記搬送方向に対する幅方向における一部の領域である第1の領域を挟み込みつつ回転する第1の搬送ローラ対と,
前記積層シート群のうち,前記幅方向について前記第1の領域とは異なる第2の領域を
,前記第1の搬送ローラ対による前記第1の領域の挟み込みに係る圧力と同じ圧力に調整された圧力で挟み込みつつ回転する第2の搬送ローラ対とを用いることを特徴とする電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電池の製造方法に関する。より詳細には,シート状の正極,負極,セパレータを積層して捲回してなる電極体を備えた電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの電池には,正極および負極を,これらの間にセパレータを挟み込みつつ,捲回により積層してなる捲回型の電極体を備えているものがある。そのような捲回型の電極体を備える電池の製造方法として,例えば,特許文献1に記載のような方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1では,正極シート,負極シート,セパレータシートをそれぞれ各巻出部より巻き出し,巻き出した各シートを積層手段にて積層させ,その後,捲回手段にて捲回することで捲回型の電極体を構成している。そして,積層手段など,シートの搬送を行う構成としては,シートを挟み込みつつ回転するローラ対が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,電極体を構成するための各シートは,必ずしも厚みが均一であるとは限らない。すなわち,各シートは,部分によって厚みが異なっていることがある。例えば,各シートの厚みは,シートの搬送方向に対する幅方向について,異なっていることがある。そして,幅方向について厚みが異なるシートを複数毎,積層した積層状態では,各シートの厚みの差が積み上がることで,積層状態のシート群の全体として,幅方向における厚みの差が大きなものとなってしまうことがあった。
【0006】
このような幅方向における厚みの差が大きな積層状態のシート群を,ローラの幅方向の長さがシートと同程度であり,直径の大きさが幅方向について一定のローラ対によって搬送した場合,シート群が真っ直ぐに搬送されず,蛇行してしまうことがあった。また,積層されたシート群が蛇行しつつ搬送されている状態で,その捲回を行った場合には,シート群が幅方向についてズレた状態で捲回されてしまうという問題があった。そして,シートが幅方向にズレた状態で捲回がなされてなる電極体を用いた場合には,所望の電池性能を有する電池を製造できないおそれがあった。すなわち,高い品質の電池を安定して製造できないおそれがあった。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点の解決を目的としてなされたものである。すなわちその課題とするところは,品質の高い電池を安定して製造することができる電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の電池の製造方法は,正極シート,負極シート,セパレータシートを搬送しつつ,これら各シートを積層位置にて積層して積層シート群となし,積層シート群を,積層位置よりも搬送方向における下流の捲回位置にて捲回することで捲回体を構成し,捲回体を電極体として電池を製造する電池の製造方法であって,積層位置から捲回位置までの間における積層シート群の搬送経路では,積層シート群を,その厚み方向に挟み込みつつ回転する複数の搬送ローラ対によって搬送し,搬送ローラ対として,積層シート群のうち,搬送方向に対する幅方向における一部の領域である第1の領域を挟み込みつつ回転する第1の搬送ローラ対と,積層シート群のうち,幅方向について第1の領域とは異なる第2の領域を,第1の搬送ローラ対による第1の領域の挟み込みに係る圧力と同じ圧力に調整された圧力で挟み込みつつ回転する第2の搬送ローラ対とを用いることを特徴とする電池の製造方法である。
【0009】
本発明に係る電池の製造方法では,積層シート群の幅方向についての第1の領域と第2の領域とをそれぞれ,第1の搬送ローラ対と第2の搬送ローラ対とにより挟み込むことができる。このため,第1の搬送ローラ対と第2の搬送ローラ対とによる積層シート群の挟み込みに係る圧力を,それぞれに調整することができる。そして,第2の搬送ローラ対による第2の領域の挟み込みに係る圧力は,第1の搬送ローラ対による第1の領域の挟み込みに係る圧力と同じ圧力に調整されている。これにより,積層シート群の第1の領域と第2の領域とにかかる張力を,それぞれに調整することができ,積層シート群の搬送時の蛇行を抑制することができる。これにより,品質の高い電池を安定して製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,品質の高い電池を安定して製造することができる電池の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態に係る二次電池の電極体の斜視図である。
【
図3】実施形態に係る電極体を構成する正極板,負極板,セパレータを示す図である。
【
図4】実施形態に係る捲回装置の概略構成図である。
【
図5】実施形態に係る捲回装置の搬送ローラ対を下方から見たときの図である。
【
図6】積層シート群の厚みが幅方向について均一であるときの搬送ローラ対を示す図である。
【
図7】幅方向について,厚みが均一でない積層シート群を例示する図である。
【
図8】積層シート群の厚みが幅方向について均一でないときの搬送ローラ対を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1に,本実施形態に係る製造方法により製造される電池の具体的な例としての二次電池1を示している。本形態の二次電池1は,リチウムイオン二次電池である。また,
図2に,二次電池1の内部に収容されている電極体20の斜視図を示す。
図3には,電極体20を構成する正極板30,負極板40,セパレータ50の断面図を示している。
【0014】
図1に示すように,二次電池1は,電池ケース10,電池ケース10に支持された正極端子部70および負極端子部80を有している。また,電池ケース10内には,電極体20と,電解液60とが収容されている。電解液60は,リチウム塩を含む非水電解液である。電解液60の一部は電極体20内部に含浸されている。
【0015】
本形態の電極体20は,
図2に示すように,扁平形状をした捲回型のものである。電極体20は,
図3に示すように正極板30,負極板40,2枚のセパレータ50を重ね合わせつつ,これらを捲回し,
図2に示す状態としたものである。具体的に,正極板30,負極板40,セパレータ50はいずれも,
図3において紙面奥行き方向に長いシート状のものである。
図3には,正極板30,負極板40,セパレータ50の幅方向Wを示している。そして,
図2に示す電極体20は,
図3の幅方向Wを捲回軸の方向として,長尺の正極板30,負極板40,セパレータ50を捲回して製造されたものである。
【0016】
図3に示すように,正極板30は,正極集電箔31の表面の一部に正極活物質層32を形成してなるものである。正極集電箔31としては,アルミニウム箔を用いることができる。また,正極活物質層32は,正極活物質を結着材によって正極集電箔31上に結着させることで形成されたものである。正極活物質は,リチウムイオンを吸蔵および放出することができるものであり,例えば,コバルト酸リチウム(LiCoO
2),マンガン酸リチウム(LiMnO
2),ニッケル酸リチウム(LiNiO
2),NMC(LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)などが例示される。また,本形態の正極活物質層32には,導電性を高めるための導電材が含まれている。
【0017】
負極板40は,負極集電箔41の表面の一部に負極活物質層42を形成してなるものである。負極集電箔41としては,銅箔を用いることができる。負極活物質層42は,負極活物質を結着材によって負極集電箔41上に結着させることで形成されたものである。負極活物質は,リチウムイオンを吸蔵および放出することができるものであり,例えば,炭素系材料,リチウム遷移金属複合酸化物,リチウム遷移金属複合窒化物などが例示される。
【0018】
セパレータ50は,正極板30と負極板40との短絡を防止しつつ,リチウムイオンを透過させることができる多孔質部材である。この多孔質部材の材質としては,ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE)などが例示される。そして,セパレータ50としては,1種の多孔質部材を単体で用いることができる。あるいは,2種以上の多孔質部材を厚み方向に積層してなる多層構造のものをセパレータ50として用いることもできる。
【0019】
また,
図3に示すように,正極板30には,正極活物質層32が形成されておらず,正極集電箔31が露出している部分がある。負極板40についても,負極活物質層42が形成されておらず,負極集電箔41が露出している部分がある。そして,
図2に示す捲回後の電極体20において,幅方向Wの一方(右側)の端部は,正極板30における正極集電箔31の露出部分が積層されてなる正極集電箔積層部21である。また,
図2に示す電極体20において,幅方向Wの正極集電箔積層部21とは反対側(左側)の端部は,負極板40における負極集電箔41の露出部分が積層されてなる負極集電箔積層部22である。また,
図2に示す電極体20において,幅方向Wの中央部分23は,正極板30の正極活物質層32の形成されている部分,および,負極板40の負極活物質層42が形成されている部分が,セパレータ50を介して重なっている部分である。
【0020】
図1に示すように,電池ケース10は,直方体箱状で金属からなるものである。この電池ケース10は,上側に開口する開口12が形成されている有底角筒状のケース本体部材11と,ケース本体部材11の開口12を塞いでいるケース蓋部材13とから構成されている。ケース本体部材11とケース蓋部材13とは,溶接等により接合されている。
【0021】
正極端子部70は,ケース蓋部材13に,ケース蓋部材13と絶縁された状態で固定されている。正極端子部70は,
図1に示すように,電池ケース10の外に露出している正極外部端子部71と,電池ケース10内に位置する正極集電部72とを有している。正極集電部72は,電極体20の正極集電箔積層部21に接続されている。
【0022】
負極端子部80は,ケース蓋部材13に,ケース蓋部材13と絶縁された状態で固定されている。また,負極端子部80は,電池ケース10の外に露出している負極外部端子部81と,電池ケース10内に位置する負極集電部82とを有している。負極集電部82は,電極体20の負極集電箔積層部22に接続されている。
【0023】
本形態の二次電池1は,電極体20および電解液60を,電池ケース10の内部に収容することで製造できる。電極体20は,例えば,ケース蓋部材13に固定された正極端子部70,負極端子部80にそれぞれ正極集電箔積層部21,負極集電箔積層部22を接続した後,開口12よりケース本体部材11内へと収容することができる。電解液60は,例えば,ケース蓋部材13に注液口を形成しておき,その注液口より注入によって電池ケース10の内部へと収容することができる。
【0024】
次に,本形態における電極体20の製造方法について説明する。本形態では,電極体20を,
図4に示す捲回装置100を用いて製造する。
図4は,捲回装置100の概略構成図である。
【0025】
捲回装置100は,負極板40を巻き出すための負極巻出部111,正極板30を巻き出すための正極巻出部112,2枚のセパレータ50をそれぞれ巻き出すためのセパレータ巻出部113,114を有している。そして,それぞれの巻出部より巻き出された負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50は,積層位置Xに向けて搬送され,積層位置Xにおいて積層される。また,積層位置Xにて負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50が積層されることで,積層シート群90が構成される。このように,積層位置Xでは,負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50の積層工程が行われる。また,積層シート群90は,その後,捲回位置Yに向けて搬送される。
【0026】
積層位置Xから捲回位置Yまでの積層シート群90の搬送経路上には,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140,検査部150,カッター160,捲回部170がこの順で設けられている。
【0027】
第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140はそれぞれ,積層シート群90の搬送経路について対称に設けられた2つのローラにより構成されている。具体的に,第1搬送ローラ対120は,積層シート群90を挟んで互いに対向して設けられた第1上ローラ121および第1下ローラ122により構成されている。第2搬送ローラ対130は,積層シート群90を挟んで互いに対向して設けられた第2上ローラ131および第2下ローラ132により構成されている。第3搬送ローラ対140は,積層シート群90を挟んで互いに対向して設けられた第3上ローラ141および第3下ローラ142により構成されている。
【0028】
第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140はいずれも,積層シート群90を挟み込みつつ回転することで,積層シート群90を,積層位置Xから捲回位置Yに向かう方向に搬送することができる。なお,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140うち,最も上流側に位置している第1搬送ローラ対120の対向位置が,積層位置Xである。また,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140は,積層位置Xから搬送方向の下流に向けて連続して配置されている積層ローラ対群である。
【0029】
検査部150は,搬送される積層シート群90における不良個所の検出に使用されるものである。カッター160は,積層シート群90を,電極体20に使用する所定の長さに切断するものである。
【0030】
捲回部170は,捲回位置Yにて所定の向きに回転することにより,積層シート群90を巻き取るためのものである。具体的に,捲回部170は,カッター160による切断によって形成された,捲回における先端側を,回転軸に固定した状態で回転する。これにより,積層シート群90の捲回を行い,負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50が所定の積層状態で捲回されてなる捲回体を製造することができる。捲回体において,捲回部170の回転軸に固定された先端箇所は,内周側に位置することとなる。このように,捲回位置Yでは,負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50の捲回工程が行われる。
【0031】
捲回が終了した捲回体は,捲回部170から取り出される。これにより,捲回装置100では,捲回体を連続的に製造することができる。なお,本形態では,検査部150によって不良箇所が検出されなかった良品の捲回体については,その後の二次電池1の製造工程へと流される。すなわち,良品の捲回体については,その後,径方向に圧迫され,扁平形状に成形して電極体20とされた後,正極端子部70および負極端子部80が接続され,電池ケース10の内部へと収容される。一方,検査部150によって検出された不良箇所を含む不良品の捲回体については,その後の電池の製造工程へと流さず,製造工程から除去される。
【0032】
ここで,本形態の第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140について説明する。第1搬送ローラ対120は,積層シート群90の搬送時には,第1上ローラ121および第1下ローラ122の少なくとも一方を他方に向けて,所定の一定圧力で押し付けられる。このような構造として,エアー式のロールプレスを採用することができる。第2搬送ローラ対130および第3搬送ローラ対140についても同様である。このため,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140はいずれも,通過する積層シート群90を同じ圧力で挟み込むことができるようになっている。
【0033】
図5には,捲回装置100における第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140の下面図を示している。
図5に示すように,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140はいずれも,積層シート群90の幅方向Wにおける一部の領域のみを挟み込む配置となっている。また,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140により挟み込まれる積層シート群90の領域はそれぞれ,幅方向について異なる領域となっている。
【0034】
図6には,捲回装置100における第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140の側面図を示している。
図6に示すように,第1搬送ローラ対120は,積層シート群90の幅方向Wにおける一部の領域である第1領域91を,積層シート群90の厚み方向Tについて挟み込んでいる。第2搬送ローラ対130は,積層シート群90の幅方向Wにおける一部の領域である第2領域92を厚み方向Tについて挟み込んでいる。第3搬送ローラ対140は,積層シート群90の幅方向Wにおける一部の領域である第3領域93を厚み方向Tについて挟み込んでいる。なお,本形態において,第1領域91,第2領域92,第3領域93はいずれも,電極体20において中央部分23となる範囲内の領域である。また,第1領域91,第2領域92,第3領域93はそれぞれ,他の領域と重ならない領域となっている。さらに,第1領域91,第2領域92,第3領域93の幅方向Wにおける長さは,いずれも同じ長さである。
【0035】
また,
図6には,積層シート群90の第1領域91を挟み込む第1搬送ローラ対120の加圧力P1を示している。さらに,積層シート群90の第2領域92を挟み込む第2搬送ローラ対130の加圧力P2,積層シート群90の第3領域93を挟み込む第3搬送ローラ対140の加圧力P3についても示している。前述したように,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140は,積層シート群90を同じ圧力で挟み込む。このため,本形態では,加圧力P1,加圧力P2,加圧力P3はいずれも同じである。これにより,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140による挟み込みにより積層シート群90が受ける圧力は,幅方向Wについて均一となっている。
【0036】
そして,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140は,積層シート群90の搬送時には,同じ周速となるように回転する。このため,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140により積層シート群90へとかかる張力は,幅方向Wについて均一となっている。
【0037】
ここで,搬送ローラにより積層シート群90にかかる張力が,幅方向Wについて偏っている場合,積層シート群90には蛇行が生じてしまうことがある。そして,蛇行した状態で搬送された積層シート群90が捲回位置Yにて捲回された場合,その捲回体においては,負極板40,正極板30,2枚のセパレータ50が幅方向Wについてズレた状態となる。すなわち,電極体20の正極集電箔積層部21,負極集電箔積層部22,中央部分23を適切に形成できず,このような電極体20を用いて製造された二次電池1においては,所望の電池性能が発揮されないおそれがある。さらに,二次電池1の電池性能にバラつきが生じてしまうおそれもある。さらに,蛇行の程度が大きな場合,積層シート群90がその搬送経路から外れてしまうおそれもある。このような場合,搬送経路から外れてしまった各シート(正極板30等)を一旦除去し,新たに巻き出した各シートを搬送ロールの間に通し直す等の手間がかかってしまい,生産性が低下してしまう。
【0038】
これに対し,本形態では,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140により積層シート群90へとかかる張力が,幅方向Wについて均一であることで,積層シート群90の蛇行を抑制することができる。これにより,高い品質の二次電池1を安定して製造することができる。また,生産性の低下を抑制することもできる。
【0039】
なお,
図6には,負極板40,正極板30,セパレータ50が,幅方向Wについて,厚みが均一であったときを示している。しかし,負極板40,正極板30,セパレータ50の厚みは,幅方向Wについて,必ずしも均一ではない。すなわち,幅方向Wについて,厚みに差が生じていることがある。そして,例えば,負極板40,正極板30,セパレータ50は,幅方向Wについて,厚みの薄い箇所同士,厚みの厚い箇所同士が重なってしまうこともあり得る。
図7には,負極板40,正極板30,セパレータ50の厚みの薄い箇所同士,厚みの厚い箇所同士が重なり合った場合の積層シート群90を示している。
【0040】
図7に示す正極板30は,正極活物質層32が,図中左側ほど厚みが薄いものとなっている。また,負極板40の負極活物質層42およびセパレータ50についても,左側ほど厚みが薄いものとなっている。このため,これらが積層されてなる積層シート群90においても,
図7における左側ほど,厚みが薄いものである。そして,このようなケースでは,厚みの薄い箇所同士,厚みの厚い箇所同士がそれぞれ重なり合っていることで,積層シート群90全体として,幅方向Wにおける厚みの差が大きなものとなってしまう。
【0041】
しかし,本形態の第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140は,積層シート群90の第1領域91,第2領域92,第3領域93をそれぞれ,同じ圧力で挟み込むものである。よって,
図8に示すように,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140は,幅方向Wについて厚みの異なる積層シート群90の第1領域91,第2領域92,第3領域93のそれぞれの表面に沿って,これらを挟み込む。そして,幅方向Wについて厚みの異なる積層シート群90についても,加圧力P1,加圧力P2,加圧力P3を同じ圧力とすることができる。これにより,幅方向Wについて厚みの異なる積層シート群90においても,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140による挟み込みにより積層シート群90が受ける圧力を,幅方向Wについて均一にすることができる。
【0042】
よって,幅方向Wについて厚みの異なる積層シート群90の搬送においても,第1搬送ローラ対120,第2搬送ローラ対130,第3搬送ローラ対140により積層シート群90へとかかる張力を,幅方向Wについて均一にすることができる。従って,幅方向Wについて厚みの異なる積層シート群90の搬送においても,蛇行を抑制することができる。これにより,積層シート群90の厚みに幅方向Wのバラつきが生じたような場合にも,高い品質の二次電池1を安定して製造することができる。また,生産性の低下を抑制することもできる。
【0043】
なお,本形態とは異なり,例えば,搬送ローラ対として,積層シート群90の幅と同程度の幅を持ち,外径が一定のストレートタイプのローラを使用した場合,
図7のような幅方向Wの厚みが不均一な積層シート群90の搬送において,大きな蛇行が生じ得る。このような搬送ローラ対で幅方向Wの厚みが不均一な積層シート群90を挟み込んだ場合には,その幅方向Wにおける一端側にかかる圧力と他端側にかかる圧力とが異なってしまうからである。
【0044】
以上詳細に説明したように,本実施の形態では,正極板30,負極板40,セパレータ50を搬送しつつ積層位置Xにて積層して積層シート群90とする。さらに,積層シート群90を,積層位置Xよりも搬送方向における下流の捲回位置Yにて捲回することで捲回体を構成し,その捲回体を電極体20として二次電池1を製造する。正極板30,負極板40,セパレータ50はいずれも,シート状のものである。また,捲回体を製造する捲回装置100において,積層位置Xから捲回位置Yまでの積層シート群90の搬送経路上に,積層シート群90を厚み方向Tに挟み込みつつ回転する複数の搬送ローラ対を有する。搬送ローラ対には,第1搬送ローラ対120と第3搬送ローラ対140とがある。第1搬送ローラ対120は,積層シート群90のうち,幅方向Wにおける一部の領域である第1領域91を挟み込みつつ回転する。第3搬送ローラ対140は,積層シート群90のうち,幅方向Wについて第1領域91とは異なる第3領域93を挟み込みつつ回転する。これにより,品質の高い電池を安定して製造することができる電池の製造方法が実現されている。
【0045】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,上記の実施形態では,電池の電極体を,扁平形状をした捲回型のものとして説明した。しかし,電極体は,円筒形状の捲回体のままで用いられるものであってもよい。また例えば,上記の実施形態では,扁平形状をした捲回型の電極体を,円筒形状に捲回した後,径方向に圧迫成形することで製造することとして説明した。しかし,扁平形状をした捲回型の電極体は,捲回位置において,積層シート群を扁平形状に巻き取ること等によっても製造することができる。
【0046】
また例えば,上記の実施形態では,搬送ローラ対として,エアシリンダによって,少なくとも一方のロールを,対向する他方のロールに向けて押し付けるエアー式のロールプレスを用いることとして説明した。しかし,積層シート群の幅方向について,圧力の大きな偏りなく加圧力を付与できる構成であればよく,例えば,エアシリンダに替えてばねを用いたものであってもよい。
【0047】
また例えば,上記の実施形態では,複数の搬送ローラ対を,積層シート群の搬送方向について異なる位置に配置している。しかし,複数の搬送ローラ対は,積層シート群の幅方向について異なる領域を挟み込むように配置されていればよく,搬送方向については同じ位置に設けてもよい。具体的には,例えば,複数の搬送ローラ対について,搬送経路から見て同じ方向に設けられている複数のローラを,同軸上に並べて配置してもよい。
【0048】
また例えば,上記の実施形態では,複数の搬送ローラ対が挟み込む各領域を,
図6等に示すように,幅方向について重なり合わないように設けている。しかし,複数の搬送ローラ対が挟み込む各領域は,幅方向について重なる範囲があってもよい。
【0049】
また例えば,上記の実施形態では,積層シート群を幅方向に分けた3つの領域についてそれぞれ,搬送ローラ対を設けている。しかし,例えば,幅方向の真ん中に位置する搬送ローラ対はなくてもよい。幅方向の両外側に位置する2つの搬送ローラ対により,幅方向における中央よりも一端側の領域にかかる張力と他端側の領域にかかる張力とが釣り合っていれば,積層シート群の蛇行を抑制できるからである。すなわち,複数の搬送ローラ対の数や配置は,幅方向における中央よりも一端側の領域にかかる張力と他端側の領域にかかる張力とが釣り合うものであればよい。つまり,搬送ローラ対の数や,各搬送ローラ対が挟み込む領域については,上記の実施形態に限られるものではない。
【0050】
また例えば,上記の実施形態では,リチウムイオン二次電池に本発明を適用した例について説明した。しかし,リチウムイオン二次電池に限らず。シート状の電極板等を搬送しつつ積層し,捲回によって電極体を構成する電池であれば,本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 二次電池
20 電極体
30 正極板
40 負極板
50 セパレータ
100 捲回装置
120 第1搬送ローラ対
130 第2搬送ローラ対
140 第3搬送ローラ対
170 捲回部
X 積層位置
Y 捲回位置