(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システム、及び、印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20221213BHJP
G06F 1/32 20190101ALI20221213BHJP
【FI】
B41J29/38 104
G06F1/32
(21)【出願番号】P 2019015330
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬之
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168758(JP,A)
【文献】特開2007-072907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0314309(US,A1)
【文献】特開2018-171737(JP,A)
【文献】特開2003-280778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
G06F 1/26 - 1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置による電力により動作する印刷装置であって、
印刷を実行する印刷部と、
外部装置とUSB接続し、該外部装置に前記電力を供給する通信部と、
該通信部により受信された印刷コマンドに従って前記印刷部に印刷を実行させる印刷制
御部と、を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷部が前記印刷を実行する場合に、前記外部装置を省電力状
態に移行させる省電力移行指示を前記通信部に送信させ
る処理と、前記印刷コマンドに基
づいて前記外部装置に省電力状態を維持させる省電力維持期間を決定し、前記省電力維持
期間を前記通信部に送信させる処理とを行う、印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御部は、前記外部装置が前記省電力状態に移行したことを確認した後に前記
印刷部に前記印刷を実行させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御部は、前記印刷部が前記印刷を完了すると前記省電力状態を解除する省電
力解除指示を前記通信部に送信させる、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
電源装置による電力により動作する印刷装置、及び、外部装置を含む印刷システムであ
って、
前記外部装置は、
前記印刷装置とUSB接続し、前記印刷装置から前記電力を受け取る第一通信部と、
該第一通信部に印刷コマンドを送信させる通信制御部と、
前記外部装置を省電力状態に移行させる省電力移行指示が前記第一通信部により受信
された時に前記外部装置を省電力状態に移行させる電力制御部と、を備え、
前記印刷装置は、
印刷を実行する印刷部と、
前記外部装置とUSB接続し、該外部装置に前記電力を供給する第二通信部と、
該第二通信部により受信された前記印刷コマンドに従って前記印刷部に印刷を実行さ
せる印刷制御部と、を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷部が前記印刷を実行する場合に前記省電力移行指示を前
記第二通信部に送信させ
る処理と、前記印刷コマンドに基づいて前記外部装置に省電力状
態を維持させる省電力維持期間を決定し、前記省電力維持期間を前記第二通信部に送信さ
せる処理とを行い、
前記外部装置の電力制御部は、前記省電力維持期間に基づいて省電力状態を制御する、
印刷システム。
【請求項5】
電源装置による電力により動作し、外部装置とUSB接続し、前記外部装置に前記電力
を供給する印刷装置のための印刷方法であって、
前記外部装置から印刷コマンドを受信する印刷コマンド受信工程と、
前記印刷コマンドに従って印刷を実行する場合に、前記外部装置に対して該外部装置を
省電力状態に移行させる省電力移行指示を送信する省電力移行指示工程と、
前記印刷コマンドに基づいて前記外部装置に省電力状態を維持させる省電力維持期間を
決定し、前記省電力維持期間を送信する工程と、を含む、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷システム、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
USBインターフェイスを介して外部装置から受信した印刷コマンドに従って印刷を実行する印刷装置が知られている。ここで、USBは、Universal Serial Busの略称である。特許文献1には、ホストコンピューターから電力供給をうける印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、外部装置がIoT Box等と呼ばれる小型コンピューターである場合、電源装置を備えている印刷装置から小型コンピューターに電力を供給することが考えられる。尚、IoTは、Internet of Thingsの略称である。印刷装置から外部装置に電力を供給する場合、システム全体として省電力化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、電源装置による電力により動作する印刷装置であって、
印刷を実行する印刷部と、
外部装置とUSB接続し、該外部装置に前記電力を供給する通信部と、
該通信部により受信された印刷コマンドに従って前記印刷部に印刷を実行させる印刷制御部と、を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷部が前記印刷を実行する場合に、前記外部装置を省電力状態に移行させる省電力移行指示を前記通信部に送信させる、態様を有する。
【0006】
また、本発明の印刷システムは、電源装置による電力により動作する印刷装置、及び、外部装置を含む印刷システムであって、
前記外部装置は、
前記印刷装置とUSB接続し、前記印刷装置から前記電力を受け取る第一通信部と、
該第一通信部に印刷コマンドを送信させる通信制御部と、
前記外部装置を省電力状態に移行させる省電力移行指示が前記第一通信部により受信された時に前記外部装置を省電力状態に移行させる電力制御部と、を備え、
前記印刷装置は、
印刷を実行する印刷部と、
前記外部装置とUSB接続し、該外部装置に前記電力を供給する第二通信部と、
該第二通信部により受信された前記印刷コマンドに従って前記印刷部に印刷を実行させる印刷制御部と、を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷部が前記印刷を実行する場合に前記省電力移行指示を前記第二通信部に送信させる、態様を有する。
【0007】
さらに、本発明の印刷方法は、電源装置による電力により動作し、外部装置とUSB接続し、前記外部装置に前記電力を供給する印刷装置のための印刷方法であって、
前記外部装置から印刷コマンドを受信する印刷コマンド受信工程と、
前記印刷コマンドに従って印刷を実行する場合に、前記外部装置に対して該外部装置を省電力状態に移行させる省電力移行指示を送信する省電力移行指示工程と、を含む、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】印刷装置と外部装置を含む印刷システムの構成例を模式的に示すブロック図。
【
図2】印刷装置と外部装置の構成例を模式的に示すブロック図。
【
図3】印刷システムの処理の例を示すシーケンス図。
【
図4】印刷コマンド受信工程における電力供給状態の例を模式的に示すブロック図。
【
図5】省電力移行指示工程における電力供給状態の例を模式的に示すブロック図。
【
図6】印刷実行工程における電力供給状態の例を模式的に示すブロック図。
【
図7】省電力解除工程における電力供給状態の例を模式的に示すブロック図。
【
図8】装置の使用電力と変換効率の例を模式的に示す図。
【
図9】商用電源の交流から一定電圧の出力直流に変換する電源装置の変換効率の例を模式的に示す図。
【
図10】比較例として、IoT端末とプリンターを含む印刷システムを模式的に示すブロック図。
【
図11】比較例として、プリンターとIoT端末の使用電力の例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~11に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る印刷装置(例えば
図1,2に示すプリンター1)は、電源装置10による電力により動作する印刷装置(1)であって、印刷を実行する印刷部20、外部装置100とUSB接続した通信部(例えば
図2に示す第二通信部30)であって前記外部装置100に前記電力を供給する通信部(30)、及び、該通信部(30)により受信された印刷コマンドCM1(例えば
図4参照)に従って前記印刷部20に印刷を実行させる印刷制御部40を備えている。前記印刷制御部40は、前記印刷部20が前記印刷を実行する場合に、前記外部装置100を省電力状態に移行させる省電力移行指示CM2(例えば
図5参照)を前記通信部(30)に送信させる。
ここで、USB接続とはUSB規格に従った接続を意味し、USB接続するとはUSB規格に従って接続することを意味する。
【0012】
図10は、比較例として、IoT端末930とプリンター(印刷装置)940を含む印刷システム900を模式的に示している。インターネット901には、システム900を管理するサーバーコンピューター910、スマートフォンといった携帯端末920、及び、情報処理装置であるIoT端末930が有線又は無線により接続されている。IoT端末930は、USBケーブルによりプリンター940とUSB接続している。ユーザー921が携帯端末920を操作することにより携帯端末920がインターネット901を介してIoT端末930に印刷データを送信すると、IoT端末930は印刷データを印刷コマンドに変換する。IoT端末930がUSBケーブルを介して印刷コマンドをプリンター940に送信すると、プリンター940は印刷コマンドに基づいて印刷を実行する。
【0013】
電子機器は、直流電源で動作するため、商用電源の交流から直流に変換する電源装置が必要となる。上述のシステム900では、電源装置941がプリンター940に設けられ、電源装置941とは別の電源装置931がIoT端末930に設けられている。これらの電源装置931,941は、商用電源950に接続され、商用電源950の交流を直流に変換する。しかし、プリンターとIoT端末とがそれぞれ電源装置を備えていると、プリンターとIoT端末の両方を商用の交流電源に接続する必要があるため、物理的な配置をする上での制約になる。
【0014】
印刷装置と外部装置とが電源装置を共有する場合、電源装置の変換効率に関して、以下の課題がある。
図9は、商用電源の交流から一定電圧の直流に変換する電源装置の変換効率の例を模式的に示している。電源装置が交流を直流に変換する際に損失が生じるので、電力の変換効率は100%未満となる。変換効率は、出力電流に依存する。最大効率Emaxとなる出力電流から多くなっても少なくなっても、変換効率が低下する。
【0015】
印刷装置は、記録ヘッドや紙送り等の駆動部があるため、印刷時に大量の電力を消費し、印刷の待機時にはあまり電力を消費しない。このように、印刷装置は、電力需要のばらつきが非常に大きい。印刷装置から外部装置に電力を供給する場合、それぞれの装置の電力消費に増減があり、各装置の使用電力のピークが偶発的に重複する可能性がある。
【0016】
図11は、比較例として、2つの印刷ジョブを連続して処理する場合におけるプリンターとIoT端末の使用電力を模式的に例示している。
図11において、横軸は時間tであり、縦軸は使用電力を相対的に表す百分率であり、細線は電源装置を除く部分のプリンターの使用電力を示し、太線はIoT端末の使用電力を示している。電源装置は、プリンターの使用電力がピークとなった時に電力の変換効率が最大となるように設計されている。IoT端末の使用電力には印刷データを印刷コマンドに変換する時のピークp91,p92があり、プリンターの使用電力には印刷を実行する時のピークp93,p94がある。ピークp93,p94はピークp91,p92から遅れており、偶発的にIoT端末の使用電力のピークp92とプリンターの使用電力のピークp93が重なっている。両装置の使用電力が電源装置の定格を超えると電力不足によってプリンターやIoT端末の異常動作を招く可能性がある。両装置の使用電力が電源装置の定格を超えなくても、電源装置による電力の変換効率が落ちることにより無駄な電力消費が生じたり発熱を引き起こしたりする可能性がある。また、ピークp93とピークp94の間のタイミングt91では、プリンターとIoT端末を合わせた電力消費が少なくなるため、電力の変換効率が落ちる。
【0017】
上述した態様1では、外部装置100とUSB接続した通信部(30)が外部装置100に電力を供給し、通信部(30)により受信された印刷コマンドCM1に従って印刷部20が印刷を実行する場合に通信部(30)が外部装置100に省電力移行指示CM2を送信する。省電力移行指示CM2を受信した外部装置100が省電力状態に移行することにより、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費が抑えられ、電源装置10が出力する電力の効率の低下が抑えられる。従って、本態様は、外部装置にUSB給電する印刷装置の省電力性能を向上させることができる。
【0018】
ここで、印刷制御部が省電力移行指示を通信部に送信させるタイミングは、印刷部が印刷を開始する印刷開始時点と関連性があればよい。従って、前述のタイミングは、印刷開始時点と一致してもよいし、印刷開始時点よりも前でもよいし、印刷開始時点よりも後でもよい。いずれのタイミングも、上述した態様1に含まれるタイミングである。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0019】
[態様2]
図3等に例示するように、前記印刷制御部40は、前記外部装置100が前記省電力状態に移行したことを確認した後に前記印刷部20に前記印刷を実行させてもよい。外部装置100が省電力状態に移行した後に印刷が実行されることにより、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費がより確実に抑えられ、電源装置10が出力する電力の効率の低下がさらに抑えられる。従って、本態様は、外部装置にUSB給電する印刷装置の省電力性能をさらに向上させることができる。
ここで、外部装置が省電力状態に移行したことは、外部装置に流す電流が減少したこと、電源装置が出力する電流が減少したこと、外部装置から省電力状態に移行した省電力移行通知を受けること、等により確認することができる。
【0020】
[態様3]
図3等に例示するように、前記印刷制御部40は、前記印刷部20が前記印刷を完了すると前記省電力状態を解除する省電力解除指示CM3を前記通信部(30)に送信させてもよい。省電力解除指示CM3を受信した外部装置100が省電力状態を解除することにより、印刷の完了に伴って印刷装置(1)の電力消費が減ってから外部装置100の省電力状態が解除される。従って、本態様は、より効率的な処理を外部装置に実行させることができる。
尚、態様3には含まれないが、印刷装置は、省電力移行指示の送信時に省電力状態を維持させる省電力維持期間を送信してもよい。省電力維持期間を受信した外部装置が省電力維持期間の経過時に省電力状態を解除することにより、より効率的な処理が外部装置で実行される。
【0021】
[態様4]
また、本技術の一態様に係る印刷システムSY1は、電源装置10による電力により動作する印刷装置(1)、及び、外部装置100を含む。前記外部装置100は、前記印刷装置(1)とUSB接続した第一通信部130であって前記印刷装置(1)から前記電力を受け取る第一通信部130、該第一通信部130に印刷コマンドCM1を送信させる通信制御部140、及び、前記外部装置100を省電力状態に移行させる省電力移行指示CM2が前記第一通信部130により受信された時に前記外部装置100を省電力状態に移行させる電力制御部150を備えている。前記印刷装置(1)は、印刷を実行する印刷部20、前記外部装置100とUSB接続した第二通信部30であって該外部装置100に前記電力を供給する第二通信部30、及び、該第二通信部30により受信された前記印刷コマンドCM1に従って前記印刷部20に印刷を実行させる印刷制御部40を備えている。前記印刷制御部40は、前記印刷部20が前記印刷を実行する場合に前記省電力移行指示CM2を前記第二通信部30に送信させる。
【0022】
上述した態様4では、印刷装置(1)の第二通信部30が外部装置100に電力を供給し、外部装置100の第一通信部130が印刷装置(1)に印刷コマンドCM1を送信する。印刷コマンドCM1を受信した印刷装置(1)は、印刷を実行する場合に外部装置100に省電力移行指示CM2を送信する。省電力移行指示CM2を受信した外部装置100は、省電力状態に移行する、これにより、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費が抑えられ、電源装置10が出力する電力の効率の低下が抑えられる。従って、本態様は、外部装置にUSB給電する印刷装置の省電力性能を向上させることができる。
ここで、「第一」及び「第二」は、互いに類似する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するために使用している。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0023】
[態様5]
さらに、本技術の一態様に係る印刷方法は、電源装置10による電力により動作し、外部装置100とUSB接続し、前記外部装置100に前記電力を供給する印刷装置(1)のための印刷方法であって、前記外部装置100から印刷コマンドCM1を受信する印刷コマンド受信工程ST1(例えば
図4参照)、及び、前記印刷コマンドCM1に従って印刷を実行する場合に、前記外部装置100に対して該外部装置100を省電力状態に移行させる省電力移行指示CM2を送信する省電力移行指示工程ST2(例えば
図5参照)を含む。
【0024】
上述した態様5では、外部装置100から受信した印刷コマンドCM1に従って印刷が実行される場合に外部装置100に省電力移行指示CM2が送信される。省電力移行指示CM2を受信した外部装置100が省電力状態に移行することにより、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費が抑えられ、電源装置10が出力する電力の効率の低下が抑えられる。従って、本態様は、外部装置にUSB給電する印刷装置の省電力性能を向上させることができる。
【0025】
さらに、本技術は、上述した印刷装置を含む複合装置、上述した印刷システムのための印刷方法、上述した印刷装置の制御プログラム、上述した印刷システムの制御プログラム、上述した外部装置の制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。前述のいずれかの装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0026】
(2)印刷装置と外部装置を含む印刷システムの構成の具体例:
図1は、印刷装置と外部装置を含む印刷システムの構成の具体例を模式的に示している。
図1において、プリンター1は本技術の印刷装置の例である。本具体例のプリンター1はインクジェットプリンターであるものとするが、プリンター1は、レーザープリンターといった電子写真式プリンター等でもよい。また、プリンター1は、複写機、ファクシミリ、これらの機能を備えた複合機、等でもよい。本具体例の外部装置100はIoT Boxと呼ばれる小型のIoT端末であるものとするが、外部装置100は、プリンター1から供給される電力により動作する限り、タブレット端末を含めてパーソナルコンピューター等でもよい。尚、小型のIoT端末は、パーソナルコンピューターと呼ばれていないものの、基本的な構成においてパーソナルコンピューターとの差異は無い。
【0027】
図1に示す印刷システムSY1は、印刷システムSY1を管理するサーバーコンピューターSE1、プリンター1、情報処理装置である外部装置100、及び、スマートフォンといった携帯端末200を含んでいる。サーバーコンピューターSE1、外部装置100、及び、携帯端末200は、インターネットNE1に対して有線又は無線により接続されている。外部装置100は、商用の交流電源AC1に接続されておらず、Type-C規格の第一USBコネクター138を備えており、プリンター1から直流電力を得る。プリンター1は、交流電源AC1からの交流を直流に変換する電源装置10、及び、Type-C規格の第二USBコネクター38を備えている。第一USBコネクター138と第二USBコネクター38とは、Type-C規格のUSBケーブルCA1により接続されている。ユーザーUS1が携帯端末200を操作することにより携帯端末200がインターネットNE1を介して外部装置100に印刷データを送信すると、外部装置100は印刷データを印刷コマンドに変換する。外部装置100がUSBケーブルCA1を介して印刷コマンドをプリンター1に送信すると、プリンター1は印刷コマンドに基づいて印刷を実行する。
【0028】
図2は、印刷システムSY1においてシステム全体として省電力化するための構成を模式的に例示している。
図2中、AC電力は交流の電力を示し、DC電力は直流の電力を示している。
印刷システムSY1に含まれるプリンター1は、電源装置10、印刷部20、第二通信部30、及び、印刷制御部40を備えている。
【0029】
電源装置10は、電流量検出部11を有し、商用電源である交流電源AC1に接続され、交流電源AC1の交流に基づいて直流の出力電力を生成する。電源装置10からの出力電力は、印刷部20、第二通信部30、及び、印刷制御部40に供給される。従って、プリンター1は、電源装置10からの出力電力により動作する。
電流量検出部11は、電源装置10が出力する電流の量を検出する。尚、外部装置100が
図3に示す省電力移行通知RE1を返信する場合、電源装置10に電流量検出部11が無くてもよい。
【0030】
印刷部20は、インク滴といった液滴Drを被印刷物(print substrate)ME1に吐出する記録ヘッド21、及び、被印刷物ME1を搬送する紙送り部25を有している。プリンター1が記録ヘッド21のキャリッジを有するシリアルプリンターである場合、キャリッジを移動させる駆動部も印刷部20に設けられる。記録ヘッド21は、液滴Drが吐出される複数のノズル22、及び、各ノズル22から液滴Drを噴射させる駆動回路23を有している。駆動回路23には、各ノズル22に連通する圧力室の液体に圧力を加える圧電素子を駆動する回路、各圧力室の液体に対して熱により気泡を発生させるサーマル素子を駆動する回路、等を用いることができる。紙送り部25により搬送された被印刷物ME1に液滴Drが着弾することにより、印刷データに対応する印刷画像が被印刷物ME1に形成される。
尚、被印刷物(print substrate)は、印刷画像を保持する素材のことである。被印刷物には、紙、樹脂、金属、等を用いることができる。被印刷物の形状は、長方形又はロール状が一般的であるが、光ディスクのような略円形、長方形以外の多角形、立体形状、等でもよい。
【0031】
第二通信部30は、上述した第二USBコネクター38を有している。第二USBコネクター38は、バスパワー線、データ線、等を有し、USBケーブルCA1により第一USBコネクター138に接続されている。これにより、第二通信部30は、外部装置100とUSB接続している。本具体例の第二USBコネクター38のバスパワー線は、外部装置100に電力を供給することができる。例えば、第二USBコネクター38がType-C規格に従っている場合、バスパワー線は、外部装置100からプリンター1に電力を供給可能であり、且つ、プリンター1から外部装置100に電力を供給可能である。
以上より、第二通信部30は、電源装置10からの出力電力を外部装置100に供給する。
【0032】
尚、第二通信部30は、第二USBコネクター38のバスパワー線を流れる電流の量を検出するバスパワー電流量検出部を有していてもよい。この場合、電源装置10に電流量検出部11が無くてもよい。
【0033】
第二通信部30は、
図3に示す印刷コマンドCM1等を受信可能であり、
図3に示す省電力移行指示CM2等を送信可能である。印刷コマンドCM1は、印刷データに基づく印刷画像をプリンター1に形成させるコマンドである。省電力移行指示CM2は、外部装置100を通常動作状態から省電力状態に移行させる指示である。印刷コマンドCM1等の受信、及び、省電力移行指示CM2等の送信は、USB規格の定義に従ってもよいし、独自の定義に従ってもよい。例えば、第二USBコネクター38がType-C規格に従っている場合、Configuration Channel上でUSB Power DeliveryのGotoMinメッセージを送る命令を利用することにより省電力移行指示CM2の送信が可能である。むろん、
図3に示す省電力解除指示CM3等を送信することを考慮して、省電力移行指示CM2の送信に独自の定義が採用されてもよい。
【0034】
印刷制御部40は、CPU41、メモリー42、タイマー回路43、等を有し、第二通信部30により受信された印刷コマンドに従って印刷部20に印刷を実行させる。メモリー42は、半導体メモリーであるROM、半導体メモリーであるRAM、及び、データを書き換え可能な不揮発性メモリーを含んでいる。不揮発性メモリーには、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気記憶装置、等が用いられる。メモリー42には、本具体例の印刷方法を実施するための制御プログラム42pが記録されている。CPU41は、RAMをワークエリアとして使用しながらプログラム42pを実行することにより、本具体例の印刷方法を実施するための機能をコンピューターであるプリンター1に実現させる。尚、CPUはCentral Processing Unitの略称であり、ROMはRead Only Memoryの略称であり、RAMはRandom Access Memoryの略称である。
【0035】
図2に示す外部装置100は、CPU101、メモリー102、タイマー回路103、I/F104、第一通信部130、等を有し、プリンター1からの電力により動作する。ここで、I/Fは、インターフェイスの略称である。メモリー102は、半導体メモリーであるROM、半導体メモリーであるRAM、及び、データを書き換え可能な不揮発性メモリーを含んでいる。不揮発性メモリーには、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気記憶装置、等が用いられる。メモリー102には、コンピューターである外部装置100を通信制御部140及び電力制御部150として機能させる制御プログラム102pが記録されている。I/F104は、インターネットNE1を介して携帯端末200等と通信を行うネットワークI/Fを含んでいる。CPU101は、RAMをワークエリアとして使用しながらプログラム102pを実行することにより、本具体例の印刷方法を実施するための機能を外部装置100に実現させる。
【0036】
第一通信部130は、上述した第一USBコネクター138を有している。第一USBコネクター138は、バスパワー線、データ線、等を有し、USBケーブルCA1により第二USBコネクター38に接続されている。これにより、第一通信部130は、プリンター1とUSB接続している。本具体例の第一USBコネクター138のバスパワー線は、プリンター1から電力を受け取ることができる。第一USBコネクター138には、例えば、Type-C規格のUSBコネクターを用いることができる。
以上より、第一通信部130は、プリンター1からの出力電力を受け取る。
【0037】
第一通信部130は、
図3に示す印刷コマンドCM1等を送信可能であり、
図3に示す省電力移行指示CM2等を受信可能である。むろん、印刷コマンドCM1等の送信、及び、省電力移行指示CM2等の受信は、USB規格の定義に従ってもよいし、独自の定義に従ってもよい。
【0038】
通信制御部140は、
図3に示す印刷コマンドCM1等をプリンター1に対して第一通信部130に送信させ、第一通信部130が受信した省電力移行指示CM2等を把握する。
【0039】
電力制御部150は、クロック制御部151、及び、スリープ制御部152を有し、
図3に示す省電力移行指示CM2が第一通信部130により受信された時に外部装置100を通常動作状態から省電力状態に移行させる。クロック制御部151は、CPU101を動作させるクロックの周波数を変更可能である。例えば、通常時のクロックの周波数をfn(Hz)とし、クロックダウン時のクロックの周波数を0<fd<fnであるfd(Hz)とする。この場合、クロック制御部151は、CPU101を動作させるクロックを、通常時に周波数fnに設定し、クロックダウン時に周波数fdに設定する。スリープ制御部152は、外部装置100を通常動作状態からスリープ状態に切り替えたり、スリープ状態から通常動作状態に切り替えたりする。スリープ状態は、外部装置100が印刷データを印刷コマンドに変換する処理を停止した状態とする。スリープ状態の外部装置100は、通常動作状態に復帰するための最小限の動作、例えば、タイマー回路103により省電力維持期間T1の経過を判断する処理、又は、第一通信部130により省電力解除指示CM3を受信する処理を行っているものとする。
尚、クロック制御部151とスリープ制御部152の一方は、省略されてもよい。
【0040】
(3)印刷システムの処理の具体例:
図3は、印刷システムSY1の印刷処理を模式的に例示している。
図3の括弧書きは、省略可能な処理を示している。ここで、ステップS104は、
図4に例示する印刷コマンド受信工程ST1に対応している。ステップS106は、
図5に例示する省電力移行指示工程ST2に対応している。ステップS114は、
図6に例示する印刷実行工程ST3に対応している。ステップS116は、
図7に例示する省電力解除工程ST4に対応している。以下、「ステップ」の記載を省略する。S102以降の処理が行われる前提として、外部装置100は通常動作状態であるものとする。
【0041】
図1に示す携帯端末200が印刷データを外部装置100に送信すると、S102において、外部装置100の第一通信部130が印刷データを受信し、通信制御部140が印刷データを取得する。
S104において、外部装置100の通信制御部140は、印刷データを印刷コマンドCM1に変換し、第一通信部130に印刷コマンドCM1を送信させる。プリンター1では、第二通信部30が印刷コマンドCM1を受信し、印刷制御部40が印刷コマンドCM1を取得する。この時、
図4に示すように、電源装置10からのDC電力は印刷部20、第二通信部30、及び、印刷制御部40に供給され、第二通信部30から第一通信部130にDC電力が送り出されている。印刷部20は印刷を実行していないので、印刷部20の電力消費は少ない。通常動作状態の外部装置100は、印刷データを印刷コマンドCM1に変換する処理、及び、印刷コマンドCM1を送信する処理のために電力消費が多くなっている。
【0042】
S106において、プリンター1の印刷制御部40は、外部装置100を通常動作状態から省電力状態に移行させる省電力移行指示CM2を第二通信部30に送信させる。従って、印刷部20に駆動信号が送信される前に省電力移行指示CM2が外部装置100に送信される。外部装置100では、第一通信部130が省電力移行指示CM2を受信し、通信制御部140と電力制御部150が省電力移行指示CM2を把握する。この時も、
図5に示すように、電源装置10からのDC電力は印刷部20、第二通信部30、及び、印刷制御部40に供給され、第二通信部30から第一通信部130にDC電力が送り出されている。印刷部20は印刷を実行していないので、印刷部20の電力消費は少ない。
【0043】
また、印刷制御部40は、省電力移行指示CM2の送信時に省電力状態を維持させる省電力維持期間T1を送信してもよい。印刷制御部40は、印刷コマンドCM1に基づいて印刷にかかる印刷実行期間を予測し、印刷実行期間に応じた省電力維持期間T1を決定すればよい。むろん、省電力維持期間T1が無くても外部装置100が印刷の完了を確認したり予測したりすることができる場合、省電力維持期間T1の送信は不要である。
【0044】
S108において、外部装置100の電力制御部150は、省電力移行指示CM2が第一通信部130により受信された時に外部装置100を通常動作状態から省電力状態に移行させる省電力移行処理を行う。
【0045】
省電力状態がクロックダウン状態である場合、電力制御部150のクロック制御部151がCPU101の動作クロックを通常時の周波数fnからクロックダウン時の周波数fdに切り替える。これにより、外部装置100は比較的低い周波数fdで省電力時の動作を行い、外部装置100で低速の処理が行われる。外部装置100の電力消費が少なくなる結果、USBケーブルCA1のバスパワー線を流れる電流が減り、
図6に示すようにプリンター1の第二通信部30から外部装置100の第一通信部130に供給されるDC電力が減少する。
【0046】
省電力状態がスリープ状態である場合、電力制御部150のスリープ制御部152が外部装置100を通常動作状態からスリープ状態に切り替える。これにより、外部装置100はスリープ時における最小限の動作のみ行い、外部装置100の電力消費が少なくなる。この結果、USBケーブルCA1のバスパワー線を流れる電流が減り、
図6に示すようにプリンター1の第二通信部30から外部装置100の第一通信部130に供給されるDC電力が減少する。
【0047】
通常動作状態から省電力状態に移行する外部装置100の通信制御部140は、S110において、省電力状態に移行したことを表す省電力移行通知RE1を第一通信部130に送信させてもよい。この場合、プリンター1では、第二通信部30が省電力移行通知RE1を受信し、印刷制御部40が省電力移行通知RE1を把握する。むろん、省電力移行通知RE1が無くても外部装置100が省電力状態に移行したことをプリンター1が確認したり予測したりすることができる場合、省電力移行通知RE1の送信は不要である。
【0048】
外部装置100でS108~S110の処理が行われている間、プリンター1の印刷制御部40は、S112において、外部装置100が省電力状態に移行したことを確認する省電力移行確認処理を行ってもよい。外部装置100がプリンター1に省電力移行通知RE1を送信する場合、プリンター1の第二通信部30が省電力移行通知RE1を受信すると省電力状態への移行が確認される。そこで、プリンター1の印刷制御部40は、第二通信部30が省電力移行通知RE1を受信したことをトリガーとして印刷を実行させるS114の処理を行ってもよい。電源装置10が電流量検出部11を有している場合、電流量検出部11が検出する電流量が減少すると省電力状態への移行が確認される。そこで、プリンター1の印刷制御部40は、電流量検出部11が検出した電流量が所定量以上、減少したことをトリガーとして印刷を実行させるS114の処理を行ってもよい。
尚、省電力性能を向上させる点からは省電力移行確認処理が行われることが好ましいものの、省電力移行指示CM2を送信するS106の処理を行った直後にS114の処理を開始することも可能である。また、S108の省電力移行処理が完了してからS114の処理を開始するまでタイムラグが生じてもよい。
【0049】
S114において、プリンター1の印刷制御部40は、印刷コマンドCM1に従って印刷部20の駆動信号を生成し、駆動信号を印刷部20に供給することにより印刷コマンドCM1に従った印刷を印刷部20に実行させる。これにより、印刷データに対応する印刷画像が被印刷物ME1に形成される。この時、
図6に示すように、第二通信部30から第一通信部130に送り出されるDC電力は減少した状態であり、電源装置10から印刷部20に供給されるDC電力は増加する。印刷が完了すると、電源装置10から印刷部20に供給されるDC電力は減少する。
【0050】
印刷を完了したプリンター1の印刷制御部40は、S116において、外部装置100の省電力状態を解除する省電力解除指示CM3を第二通信部30に送信させてもよい。この状態が
図7に示されている。省電力解除指示CM3が送信される場合、外部装置100では、第一通信部130が省電力解除指示CM3を受信し、通信制御部140と電力制御部150が省電力解除指示CM3を把握する。これにより印刷の完了が確認されるので、電力制御部150は、第一通信部130が省電力解除指示CM3を受信したことをトリガーとして省電力状態を解除させるS118の処理を行ってもよい。むろん、省電力解除指示CM3が無くても印刷が完了したことを外部装置100が確認したり予測したりすることができる場合、省電力解除指示CM3の送信は不要である。例えば、プリンター1が外部装置100に省電力維持期間T1を送信する場合、省電力維持期間T1が経過すると省電力状態への移行が予測される。そこで、外部装置100の電力制御部150は、タイマー回路103により省電力維持期間T1の経過を判断する処理を行い、省電力維持期間T1の経過をトリガーとして省電力状態を解除させるS118の処理を行ってもよい。
S118において、外部装置100の電力制御部150は、外部装置100を省電力状態から通常動作状態に移行させる省電力解除処理を行ってもよい。
【0051】
省電力状態がクロックダウン状態である場合、電力制御部150のクロック制御部151がCPU101の動作クロックをクロックダウン時の周波数fdから通常時の周波数fnに切り替える。これにより、外部装置100は元の周波数fnで通常時の動作を行い、外部装置100で高速の処理が行われる。外部装置100の電力消費が多くなっても、電源装置10から印刷部20に供給されるDC電力が減少しているので、電源装置10は高い変換効率でDC電力を供給することができる。
【0052】
省電力状態がスリープ状態である場合、電力制御部150のスリープ制御部152が外部装置100をスリープ状態から通常動作状態に切り替える。これにより、外部装置100は通常時の動作を行う。外部装置100の電力消費が多くなっても、電源装置10から印刷部20に供給されるDC電力が減少しているので、電源装置10は高い変換効率でDC電力を供給することができる。
【0053】
図8は、2つの印刷ジョブを連続して処理する場合における使用電力と変換効率を模式的に例示している。
図8において、横軸は時間tであり、上段のグラフの縦軸はプリンター1と外部装置100の使用電力を相対的に表す百分率であり、中段のグラフの縦軸は電源装置10による電力の変換効率を相対的に表す百分率であり、下段のグラフの縦軸は電源装置10の発熱量を相対的に表す百分率である。上段のグラフにおいて、細い実線は電源装置10を除く部分のプリンター1の使用電力を示し、太い実線は外部装置100の使用電力を示し、太い破線は省電力状態に移行しない場合に想定される外部装置100の使用電力を示している。中段のグラフにおいて、破線は外部装置100が省電力状態に移行しない場合に想定される変換効率を示している。下段のグラフにおいて、破線は外部装置100が省電力状態に移行しない場合に想定される電源装置10の発熱量を示している。電源装置10は、プリンター1の使用電力がピークとなった時に電力の変換効率が最大となるように設計されている。
【0054】
まず、通常動作状態の外部装置100の使用電力には、最初の印刷ジョブにおける印刷データを印刷コマンドCM1に変換する時のピークp1が生じる。外部装置100からプリンター1に印刷コマンドCM1が送られると、プリンター1から外部装置100に省電力移行指示CM2が通知され、外部装置100が省電力状態に移行する。
図8は、省電力状態がクロックダウン状態である場合の使用電力及び変換効率を示している。外部装置100がクロックダウン状態である場合に、プリンター1の印刷部20は印刷を実行し、外部装置100は2つ目の印刷ジョブにおける印刷データを印刷コマンドに変換する低速の処理を行う。これにより、プリンター1の使用電力には印刷実行時のピークp3が生じ、外部装置100の使用電力には2つ目の印刷ジョブにおける印刷データを印刷コマンドCM1に変換する時の幅の広いピークp2が生じる。
図11で示した通常動作状態のピークp92よりも省電力状態のピークp2が低いので、
図8の中段に示すように、電源装置10が電力を変換する効率の低下が少なくなる。また、
図8の下段に示すように、電源装置10の発熱量も少なくなる。
【0055】
外部装置100からプリンター1に2つ目の印刷コマンドCM1が送られると、プリンター1の使用電力には2つ目のピークp4が生じる。ピークp3とピークp4の間のタイミングt1では、省電力状態の外部装置100が低速の処理を続けている。このため、タイミングt1では、
図11で示した場合と比べて電力消費が多くなり、
図8の中段に示すように、電源装置10が電力を変換する効率の低下が少なくなる。また、
図8の下段に示すように、電源装置10の発熱量も少なくなる。
【0056】
以上説明したように、プリンター1が印刷コマンドCM1に従った印刷を実行する場合において省電力移行指示CM2により外部装置100が省電力状態に移行することにより、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費が抑えられる。これにより、電源装置10が出力する電力の効率の低下が抑えられる。また、外部装置100が省電力状態に移行した後に印刷部20が印刷を実行すると、電力消費が増える印刷時に外部装置100の電力消費がより確実に抑えられ、電源装置10が出力する電力の効率の低下がさらに抑えられる。さらに、印刷が完了した後に外部装置100の省電力状態が解除されると、電源装置10が出力する電力の効率の低下が抑えられながら外部装置100が効率的に動作する。
従って、本具体例は、外部装置100にUSB給電するプリンター1の省電力性能を向上させることができる。
【0057】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
本技術を適用可能な印刷システムは、
図1で示した印刷システムに限定されず、印刷装置と外部装置がある限り、任意に構成することができる。従って、インターネットNE1に付加的な装置が接続されてもよく、印刷システムにサーバーコンピューターSE1や携帯端末200が無くてもよい。外部装置がスマートフォンといった携帯端末である場合、印刷装置から電力を供給されている携帯端末が印刷コマンドを印刷装置に送信することにより印刷コマンドに基づいた印刷を印刷装置に実行させることができる。
図3で示した印刷処理は、CPUにより実行されることに限定されず、ASICといった「別の電子部品」によって実行されてもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。また、印刷処理は、複数のCPUに振り分けられた状態で実行されてもよいし、CPUと「別の電子部品」とに振り分けられた状態で実行されてもよい。
【0058】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、外部装置にUSB給電する印刷装置の省電力性能を向上させる技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…プリンター、10…電源装置、11…電流量検出部、20…印刷部、30…第二通信部、38…第二USBコネクター、40…印刷制御部、100…外部装置、130…第一通信部、138…第一USBコネクター、140…通信制御部、150…電力制御部、151…クロック制御部、152…スリープ制御部、AC1…交流電源、CA1…USBケーブル、CM1…印刷コマンド、CM2…省電力移行指示、CM3…省電力解除指示、RE1…省電力移行通知、ST1…印刷コマンド受信工程、ST2…省電力移行指示工程、ST3…印刷実行工程、ST4…省電力解除工程、SY1…印刷システム、T1…省電力維持期間。