(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】クッションフレーム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/18 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B60N2/18
(21)【出願番号】P 2019017240
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 晋也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 定夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/042939(WO,A1)
【文献】特開2006-231996(JP,A)
【文献】特開平01-243260(JP,A)
【文献】特開2018-131101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートに適用されるクッションフレームにおいて、
シート前後方向に延びるサイドフレームと、
前記サイドフレームを支持する第1リンクであって、上端側が前記サイドフレームの前端側に回転可能に連結され、下端側が乗物に対して間接的又は直接的に回転可能に連結される第1リンクと、
前記第1リンクよりシート後方側に配置されて前記サイドフレームを支持する第2リンクであって、上端側が前記サイドフレームに回転可能に連結され、下端側が乗物に対して間接的又は直接的に回転可能に連結される第2リンクと、
前記サイドフレームを着座位置から上昇変位させて当該サイドフレームを乗降位置とするための駆動力を発揮可能な駆動部と、
前記第1リンク又は前記第2リンクに設けられたロックピン、及び、前記サイドフレームに連結されたフックであって、前記ロックピンと係合可能な係合位置と当該係合が解除可能な非係合位置との間で変位可能なフックを有するロック機構であって、前記サイドフレームが前記着座位置にあるときに、当該サイドフレームの上昇変位を規制するロック機構と
、
前記第1リンク及び前記第2リンクのうち前記ロックピンが設けられたリンクをロックリンクとしたとき、前記サイドフレームが前記着座位置にあるときに、前記サイドフレームに対する前記ロックリンクの位置を決める位置決め部と
を備え
、
前記ロック機構は、前記サイドフレームと前記第1リンク又は前記第2リンクとのなす角が拡大することを規制することにより、前記サイドフレームの上昇変位を規制するクッションフレーム。
【請求項2】
前記ロックピンの長手方向端部側には、当該ロックピンから突出したフランジ部が設けられており
、
前記フックが前記ロックピンと係合している際には、当該フックは、前記フランジ部と前記ロックリンクとの間に位置する請求項
1に記載のクッションフレーム。
【請求項3】
前記フランジ部のうち前記ロックリンクと対向する部位には、突出方向先端に近づくほど前記ロックリンクとの距離が大きくなるテーパ部が設けられている請求項
2に記載のクッションフレーム。
【請求項4】
前記第1リンクと前記サイドフレームとの連結部を第1連結部とし、前記第2リンクと前記サイドフレームとの連結部を第2連結部としたとき、
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記サイドフレームが前記着座位置から前記乗降位置に上昇変位する際に、前記第2連結部の上昇変位量が前記第1連結部の上昇変位量より大きくなるように構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のクッションフレーム。
【請求項5】
前記駆動部は、
前記第1リンクと一体的に回転するセクタ歯車、及び
前記サイドフレームに対して固定され、前記セクタ歯車に噛み合う歯車に回転力を付与する電動モータ
を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のクッションフレーム。
【請求項6】
前記駆動部は、前記セクタ歯車及び前記電動モータに加え、前記駆動力の一部を発揮する駆動バネを有する請求項5に記載のクッションフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シートに適用されるクッションフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の乗物用シートのシートクッションは、着座位置に対してシート前方側にスライドしながら座面角度が変化する。具体的には、当該乗物用シートは、シートクッションを回転可能に支持する支持部、及び当該支持部をスライド可能とするスライド装置等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、特許文献1に記載の構成と異なる構成にてシートクッションの座面位置を変更可能なクッションフレームの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートに適用されるクッションフレームは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、シート前後方向に延びるサイドフレーム(2)と、サイドフレーム(2)を支持する第1リンク(4)であって、上端側がサイドフレーム(2)の前端側に回転可能に連結され、下端側が乗物に対して間接的又は直接的に回転可能に連結される第1リンク(4)と、第1リンク(4)よりシート後方側に配置されてサイドフレーム(2)を支持する第2リンク(6)であって、上端側がサイドフレーム(2)に回転可能に連結され、下端側が乗物に対して間接的又は直接的に回転可能に連結される第2リンク(6)と、サイドフレーム(2)を着座位置から上昇変位させて当該サイドフレーム(2)を乗降位置とするための駆動力を発揮可能な駆動部(8)と、サイドフレーム(2)が着座位置にあるときに、当該サイドフレーム(2)の上昇変位を規制するロック機構(10)とである。
【0006】
これにより、当該クッションフレームが採用された乗物用シートでは、ロック機構(10)によりシートクッションが着座位置に保持される。したがって、シートクッションが着座位置にあるときに、当該乗物用シートに大きな荷重が作用しても当該シートクッションが上昇変位してしまうことが抑制される。
【0007】
当該ロック機構(10)が解除された状態で駆動部(8)が作動すると、シートクッションは乗降位置まで上昇変位する。乗降位置は着座位置に比べて座面の位置が高いので、着席者は、シートクッションを乗降位置とすることにより、容易に乗物に乗降することが可能となり得る。
【0008】
つまり、着座位置が低い場合には、着席者は乗降時に大きく上下動せざるを得ないので、乗物への乗降性が低下する。しかし、乗降位置の座面位置が着座位置の座面位置に比べて高いので、着席者は乗降時に大きく上下動する必要がない。延いては、当該クッションフレームが採用された乗物用シートでは、乗物への乗降性が向上し得る。
【0009】
なお、当該クッションフレームは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、ロック機構(10)は、サイドフレーム(2)と第1リンク(4)又は第2リンク(6)とのなす角が拡大することを規制することにより、サイドフレーム(2)の上昇変位を規制することが望ましい。これにより、ロック機構(10)の構成が簡素な構成となり得る。
【0010】
ロック機構(10)は、第1リンク(4)又は第2リンク(6)に設けられたロックピン(101)、及びサイドフレーム(2)に連結されたフック(102)であって、ロックピン(101)と係合可能な係合位置と当該係合が解除可能な非係合位置との間で変位可能なフック(102)を有していることが望ましい。これにより、ロック機構(10)の構成が簡素となる。
【0011】
第1リンク(4)とサイドフレーム(2)との連結部を第1連結部(41)とし、第2リンク(6)とサイドフレーム(2)との連結部を第2連結部(61)としたとき、第1リンク(4)及び第2リンク(6)は、サイドフレーム(2)が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、第2連結部(61)の上昇変位量が第1連結部(41)の上昇変位量より大きくなるように構成されていることが望ましい。
【0012】
これにより、サイドフレーム(2)が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、当該サイドフレーム(2)は、後端側が前端側より大きく上昇変位する。したがって、当該クッションフレームが採用された乗物用シートでは、乗物への乗降性が向上し得る。
【0013】
なお、駆動部(8)は、第1リンク(4)と一体的に回転するセクタ歯車(81)、及びサイドフレーム(2)に対して固定され、セクタ歯車(81)に噛み合う歯車(82)に回転力を付与する電動モータ(83)を有することが望ましい。
【0014】
ロックピン(101)の長手方向端部側には、当該ロックピン(101)から突出したフランジ部(101B)が設けられており、第1リンク及び第2リンクのうちロックピン(101)が設けられたリンクをロックリンク(6)としたき、フック(102)がロックピン(101)と係合している際には、当該フック(102)は、フランジ部(101B)とロックリンク(6)との間に位置することが望ましい。
【0015】
これにより、サイドフレーム(2)に荷重が作用して、ロックリンク(6)及びサイドフレーム(2)の少なくとも一方が変形した場合であっても、フック(102)がロックピン(101)から外れてしまうことが抑制される。
【0016】
フランジ部(101B)のうちロックリンク(6)と対向する部位には、突出方向先端に近づくほどロックリンク(6)との距離が大きくなるテーパ部(101C)が設けられていることが望ましい。これにより、フック(102)はテーパ部(101C)により係合位置に案内される。したがって、フック(102)がロックピン(101)と確実に係合し得る。
【0017】
サイドフレーム(2)が着座位置にあるときに、サイドフレーム(2)に対するロックリンク(6)の位置を決める位置決め部(102D)を備えることが望ましい。これにより、フック(102)がロックピン(101)と確実に係合し得る。
【0018】
駆動部(8)は、セクタ歯車(81)及び電動モータ(83)に加え、駆動力の一部を発揮する駆動バネ(84)を有する。これにより、電動モータ(83)の大型化が抑制され得る。
【0019】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るクッションフレームを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るクッションフレームを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るクッションフレームの一部分解図である。
【
図4】第1実施形態に係るクッションフレームを示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るクッションフレームを示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るクッションフレームの駆動部を示す図あって、サイドフレームの一部が破断された図である。
【
図7】第1実施形態に係るクッションフレームのロック機構を示す図であって、サイドフレームの一部が破断された図である。
【
図8】第1実施形態に係るクッションフレームのロック機構を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係るクッションフレームのロック機構を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係るクッションフレームの位置決め部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るクッションフレームが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載したものである。
【0023】
したがって、当該クッションフレームは、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は断面図を示すものではない。
【0024】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シート及びクッションフレームは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0025】
(第1実施形態)
1.クッションフレームの概要
図1に示されるクッションフレーム1は、乗物用シートのシートクッションに適用される。具体的には、シートクッションは着席者の臀部を支持するための部位である。当該クッションフレーム1はシートクッションの骨格を構成する。
【0026】
クッションフレーム1は、
図2に示されるように、サイドフレーム2、3、第1リンク4、5、第2リンク6、7、駆動部8、9及びロック機構10、11等を少なくとも備える。
【0027】
クッションフレーム1は、「着座可能状態(
図1参照)」と「乗降可能状態(
図2参照」との間で状態変位可能である。着座可能状態は、当該乗物用シートの利用者が着席する際に利用する状態(ポジション)である。乗降可能状態は、利用者が乗物に乗降する際に利用すると好適な状態(ポジション)である。
【0028】
本実施形態に係るクッションフレーム1は、2つのスライド装置30、31を介して乗物に対して固定される。各スライド装置30、31は、クッションフレーム1をシート前後方向にスライド可能とする機構である。
【0029】
各スライド装置30、31は、乗物に対して固定される固定レール30A、31A、クッションフレーム1が装着される可動レール30B、31B等を有して構成される。なお、可動レール30Bは固定レール30Aに対してスライド可能である。可動レール31Bは固定レール31Aに対してスライド可能である。
【0030】
2.クッションフレームの詳細
当該クッションフレーム1は、略左右対称な構成である。以下の説明は、主に、シート幅方向一端側(本実施形態では、左端側)に配置されたサイドフレーム2等(
図3参照)の説明である。
【0031】
<サイドフレーム、第1リンク及び第2リンク>
サイドフレーム2は、シート前後方向に延びるロアアームを構成する(
図1参照)。第1リンク4及び第2リンク6は、サイドフレーム2を支持するための部材である。第2リンク6は、
図2に示されるように、第1リンク4よりシート後方側に配置されている。
【0032】
第1リンク4及び第2リンク6それぞれの上端側は、サイドフレーム2に回転可能に連結されている。具体的には、第1リンク4の上端側はサイドフレーム2の前端側に連結されている。以下、第1リンク4とサイドフレーム2との連結部を第1連結部41という。
【0033】
第2リンク6の上端側は、第1連結部41よりシート後方側であって、サイドフレーム2の後端よりシート前方側にて当該サイドフレーム2に連結されている。以下、第2リンク6とサイドフレーム2との連結部を第2連結部61という。
【0034】
なお、第2連結部61は、シートベルト連結部2Bより第1連結部41側に位置している。シートベルト連結部2Bは、サイドフレーム2とシートベルト(図示せず。)とを連結するための部材である。
【0035】
第1リンク4及び第2リンク6それぞれの下端側は、乗物に対して間接的又は直接的に回転可能に連結される。本実施形態では、第1リンク4及び第2リンク6それぞれの下端側は、ブラケット30C、30Dを介して可動レール30B、つまりスライド装置30に回転可能に連結される。
【0036】
このため、本実施形態では、サイドフレーム2、第1リンク4及び第2リンク6により四節リンク機構が構成される。したがって、例えば、サイドフレーム2と第1リンク4とのなす角(第1リンク角度という。)を変化させる力がサイドフレーム2及び第1リンク4に作用すると、サイドフレーム2、つまりシートクッションが昇降変位する。
【0037】
同様に、例えば、サイドフレーム2と第2リンク6とのなす角(第2リンク角度という。)を変化させる力がサイドフレーム2及び第2リンク6に作用すると、シートクッションが昇降変位する。
【0038】
以下、クッションフレーム1が着座可能状態にあるときのサイドフレーム2の位置を着座位置という。クッションフレーム1が乗降可能状態にあるときのサイドフレーム2の位置を乗降位置という。
【0039】
そして、本実施形態に係る第1リンク4及び第2リンク6は、サイドフレーム2が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、第2連結部61の上昇変位量が第1連結部41の上昇変位量より大きくなるように構成されている(
図4及び
図5参照)。
【0040】
具体的には、第2リンク6の長手方向寸法が第1リンク4の長手方向寸法より大きくなっている。なお、第1リンク4の長手方向寸法とは、第1連結部41の回転中心から第1リンク4と可動レール30Bとの連結回転中心までの距離である。
【0041】
第2リンク6の長手方向寸法とは、第2連結部61の回転中心から第2リンク6と可動レール30Bとの連結回転中心までの距離である。上昇変位量とは、可動レール30Bの長手方向に対して直交する上下方向(以下、変位方向という。)の変位量をいう。
【0042】
なお、本実施形態では、着座位置にあるサイドフレーム2の長手方向は、可動レール30Bの長手方向と略平行な状態となる(
図4参照)。乗降位置にあるサイドフレーム2の長手方向は、可動レール30Bの長手方向に対して傾いた状態となる(
図5参照)。具体的には、乗降位置では、サイドフレーム2の後端位置は、当該サイドフレーム2の前端位置より上方側に位置する。
【0043】
因みに、本実施形態に係る第1リンク4は、当該第1リンク4の長手方向が上下方向に対してシート前方側に傾いた位置と、当該長手方向が上下方向に対してシート後方側に傾いた位置との間で揺動する。以下、第1リンク4の長手方向と上下方向とが一致した時の第1リンク4の位置を起立位置という。
【0044】
換言すれば、サイドフレーム2が着座位置にあるときには、第1リンク4は起立位置よりシート前方側に傾いた位置となる。サイドフレーム2が乗降位置にあるときには、第1リンク4は起立位置よりシート後方側に傾いた位置となる。つまり、第1リンク角度は、鋭角から鈍角の範囲で変化する。
【0045】
第2リンク6は、サイドフレーム2の位置によらず、当該第2リンク6の長手方向が上下方向と一致する位置よりシート前方側に傾いた位置となる。このため、第2リンク角度は、サイドフレーム2の位置によらず、90度未満である。
【0046】
<駆動部>
駆動部8は、サイドフレーム2を着座位置から上昇変位させて当該サイドフレーム2を乗降位置とするための駆動力を発揮可能な機構である。本実施形態に係る駆動部8は、少なくとも第1リンク角度を大きくする駆動力を発揮可能である。
【0047】
当該駆動部8は、
図6示されるように、セクタ歯車81、歯車82、電動モータ83及び駆動バネ84等を少なくとも有して構成されている。セクタ歯車81は、第1リンク4と一体的に回転する扇形歯車である。
【0048】
本実施形態に係るセクタ歯車81は第1リンク4と共に一体成形された第1リンク4との一体成形品である。歯車82は、セクタ歯車81に噛み合うピニオンである。電動モータ83は、歯車82に回転力を付与する駆動源である。
【0049】
当該電動モータ83は、モータブラケット85(
図3参照)を介してサイドフレーム2に対して固定されている。電動モータ83から出力された回転力は、複数の歯車にて構成された減速機構86を介して歯車82に伝達される。
【0050】
駆動バネ84は、サイドフレーム2を乗降位置とするための駆動力の一部を発揮する。つまり、当該駆動バネ84は、サイドフレーム2を乗降位置とする際に、電動モータ83と協働して駆動力を発揮するアシスト用のバネである。
【0051】
なお、本実施形態に係る電動モータ83は、正転及び逆転が可能である。つまり、電動モータ83が正転すると、サイドフレーム2は乗降位置となる。電動モータ83が逆転正転するサイドフレーム2は着座位置となる。
【0052】
<ロック機構>
ロック機構10は、サイドフレーム2が着座位置にあるときに、当該サイドフレーム2の上昇変位を規制する機構である。具体的には、本実施形態に係るロック機構10は、
図7に示されるように、第2リンク角度が拡大することを規制することにより、サイドフレーム2の上昇変位を規制する。
【0053】
ロック機構10は、ロックピン101、フック102、フックバネ103及びフック制御機構104(
図4参照)等を少なくとも有して構成されている。ロックピン101は、第2リンク6に設けられている。
【0054】
<ロックピン及びフック等>
ロックピン101は、
図8に示されるように、係合部101A及びフランジ部101Bを少なくとも有している。係合部101Aは、シート幅方向に一致する中心軸線を有する円柱状又は円筒状に構成された部位であって、第2リンク6に固定されている。
【0055】
フランジ部101Bは、ロックピン101の長手方向端部側に設けられた部位であって、係合部101Aから径方向に突出した部位である。本実施形態に係るフランジ部101Bは、係合部101Aから全周に亘って突出した鍔状の部位である。
【0056】
なお、係合部101A及びフランジ部101Bは、金属にて構成された一体部品である。本実施形態に係るロックピン101は、係合部101Aに設けられた雄ねじ部101Cにより第2リンク6に固定されている。
【0057】
フック102は、サイドフレーム2に連結された状態で、係合部101Aと係合可能な係合位置(
図7の実線で示される位置)と当該係合が解除可能な非係合位置(
図7の二点鎖線で示される位置)との間で変位可能な部材である。
【0058】
具体的には、フック102は、
図8に示されるように、中心軸線がシート幅方向と一致する支持軸102Aを介してサイドフレーム2に回転可能に連結されている。支持軸102Aの一端側はサイドフレーム2に支持されている。支持軸102Aの他端は軸ブラケット102Bに支持されている。
【0059】
軸ブラケット102Bはサイドフレーム2に固定されている。フック102は、支持軸102Aの大径部102Cと軸ブラケット102Bとにより挟み込まれて、シート幅方向の位置が決められている。
【0060】
フック102が係合部101Aと係合している際には、
図8に示されるように、当該フック102は、フランジ部101Bと第2リンク6との間に位置する。そして、フランジ部101Bのうち第2リンク6と対向する部位には、テーパ部101Cが設けられている。
【0061】
テーパ部101Cは、突出方向先端に近づくほど第2リンク6との距離が大きくなるような傾斜した傾斜面にて構成されている。なお、本実施形態に係るテーパ部101Cは、円錐テーパ状に構成されている。
【0062】
<フックバネ及びフック制御機構等>
フックバネ103は、
図7に示されるように、フック102を係合位置に維持するための弾性力を当該フック102に作用させる弾性部材である。本実施形態に係るフックバネ103は、スパイラル状のぜんまいバネにて構成されている。
【0063】
フック制御機構104は、サイドフレーム2が着座位置から上昇変位し始める前にフック102を非係合位置とするとともに、フック102が非係合位置になってサイドフレーム2が着座位置から上昇変位した後に当該フック102を係合位置に復帰させる。
【0064】
本実施形態に係るフック制御機構104は、
図4に示されるように、解除レバー104A、操作ケーブル104B及びアクチュエータ104C(
図1参照)等を少なくとも有して構成さている。操作ケーブル104Bは、張力を伝達するワイヤーにて構成されている。
【0065】
解除レバー104Aは、フック102を非係合位置側に回転させる力を当該フック102に伝達可能である。なお、本実施形態では、解除レバー104A以外から力を受けてフック102が非係合位置側に回転した際には、当該力は解除レバー104Aに伝達されない。
【0066】
つまり、解除レバー104Aとフック102との間には、解除レバー104Aからフック102には回転力を伝達し、フック102から解除レバー104Aには回転力を伝達しないワンウェイ機構(図示せず。)が設けられている。
【0067】
操作ケーブル104Bの一端は解除レバー104Aに連結されている。操作ケーブル104Bの他端はアクチュエータ104Cに連結されている。アクチュエータ104Cは、操作ケーブル104Bを引っ張り操作する。
【0068】
本実施形態に係るアクチュエータ104Cは、電動モータを利用した電動式のアクチュエータである。当該アクチュエータ104C及び電動モータ83の作動は、制御装置(図示せず。)により制御される。
【0069】
そして、アクチュエータ104Cは、サイドフレーム2が着座位置から上昇変位する際に、操作ケーブル104Bを引いてフック102を非係合位置とする。アクチュエータ104Cは、サイドフレーム2が乗降位置にあるときに、引っ張り操作した操作ケーブル104Bを復帰させる。
【0070】
これにより、フック102は、フックバネ103の弾性力により係合位置に復帰する。このとき、フック102を非係合位置に向けて回転させる力(以下、フック回転力という。)が当該フック102に作用すると、フック102は、非係合位置側に変位する。
【0071】
なお、フック回転力は、
図7に示される外形端102E(以下、カム面102E)と係合部101Aとが接触したときに発生する。カム面102Eは、フック102の外形端のうち溝部102Fを挟んで回転中心と反対側に位置する外形端である。
【0072】
すなわち、溝部102Fは、係合部101Aが着脱自在に嵌り込み可能であって、シート前方側が開口した略U字状の溝である。カム面102Eは、当該カム面102Eが係合部101Aに接触した状態で、サイドフレーム2が着座位置側に変位したときに、フック回転力が発生するように構成されている。
【0073】
<着座時における第2リンクの位置決め>
クッションフレーム1には、サイドフレーム2が着座位置にあるときに、サイドフレーム2に対する第2リンク6の位置を決める位置決め部102D(
図8参照)が設けられている。本実施形態に位置決め部102Dは、
図8に示されるように、軸ブラケット102Bのうち第2リンク6と接触可能な部位に設けられている。
【0074】
本実施形態では、位置決め部102Dと第2リンク6が接触すると、フック102は係合位置に位置する。そして、溝部102Fの内壁のうち、当該フック102の回転中心から遠い内壁と係合部101Aとが接触状態となり、当該回転中心に近い内壁と係合部101Aとは非接触状態となる。
【0075】
3.クッションフレームの作動
クッションフレーム1が着座可能状態にあるときに、利用者が乗降スイッチ(図示せず。)を操作すると、先ず、アクチュエータ104Cが作動してフック102が非係合位置に変位する。
【0076】
次に、電動モータ83が正転し、クッションフレーム1が乗降可能状態となる。フック102が非係合位置となった時から予め決められた時間が経過したときに、アクチュエータ104Cは、フック102を係合位置に復帰させる。
【0077】
クッションフレーム1が乗降可能状態にあるときに、利用者が乗降スイッチを操作すると、電動モータ83が逆転してサイドフレーム2、3が着座位置に向けて降下し始める。このとき、フック102が非係合位置にあるので、係合部101Aがカム面102Eに接触する。
【0078】
係合部101Aがカム面102Eに接触した状態で、サイドフレーム2、3が着座位置に向けて更に降下すると、フック102にフック回転力が作用するため、当該フック102が非係合位置に変位する。
【0079】
そして、係合部101Aが溝部102Fに嵌り込むと、フック回転力が消失するため、フックバネ103の弾性力により、フック102が係合位置に変位してフック102とロックピン101とが係合状態となる。
【0080】
4.本実施形態に係る乗物用シート(特に、クッションフレーム)の特徴
本実施形態に係る乗物用シートでは、ロック機構10によりサイドフレーム2が着座位置にあるときに、当該サイドフレーム2の上昇変位が規制される。
【0081】
これにより、当該乗物用シートでは、ロック機構10によりシートクッションが着座位置に保持される。したがって、シートクッションが着座位置にあるときに、当該乗物用シートに大きな荷重が作用しても当該シートクッションが上昇変位してしまうことが抑制される。
【0082】
因みに、減速機構86の減速比が大きい場合(特に、ウォームとウォームホィールとを含む減速機構の場合)には、ロック機構10を廃止することが可能である。しかし、減速比が大きい場合には、クッションフレーム1を速やかに変位させることが難しい。
【0083】
これに対して、本実施形態に係る乗物用シートでは、クッションフレーム1を速やかに変位可能な減速比が選択され、かつ、ロック機構10にてシートクッションの上昇変位が規制されている。
【0084】
ロック機構10が解除された状態で駆動部8が作動すると、シートクッションは乗降位置まで上昇変位する。乗降位置は着座位置に比べて座面の位置が高いので、着席者は、シートクッションを乗降位置とすることにより、容易に乗物に乗降することが可能となり得る。
【0085】
つまり、着座位置が低い場合には、着席者は乗降時に大きく上下動せざるを得ないので、乗物への乗降性が低下する。しかし、乗降位置の座面位置が着座位置の座面位置に比べて高いので、着席者は乗降時に大きく上下動する必要がない。延いては、当該クッションフレーム1が採用された乗物用シートでは、乗物への乗降性が向上し得る。
【0086】
ロック機構10は、サイドフレーム2と第2リンク6とのなす角が拡大することを規制することにより、サイドフレーム2の上昇変位を規制する。これにより、ロック機構10の構成が簡素な構成となり得る。
【0087】
ロック機構10は、第2リンク6に設けられたロックピン101、及びサイドフレーム2に連結されたフック102を有している。これにより、ロック機構10の構成が簡素となる。
【0088】
第1リンク4及び第2リンク6は、サイドフレーム2が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、第2連結部61の上昇変位量が第1連結部41の上昇変位量より大きくなるように構成されている。
【0089】
これにより、サイドフレーム2が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、当該サイドフレーム2は、後端側が前端側より大きく上昇変位する。したがって、当該クッションフレーム1が採用された乗物用シートでは、乗物への乗降性が向上し得る。
【0090】
ロックピン101の長手方向端部側には、当該ロックピン101から突出したフランジ部101Bが設けられている。フック102がロックピン101と係合している際には、当該フック102は、フランジ部101Bと第2リンク6との間に位置する。
【0091】
これにより、サイドフレーム2に荷重が作用して、第2リンク6及びサイドフレーム2の少なくとも一方が変形した場合であっても、フック102がロックピン101から外れてしまうことが抑制される。
【0092】
フランジ部101Bのうち第2リンク6と対向する部位には、突出方向先端に近づくほど第2リンク6との距離が大きくなるテーパ部101Cが設けられている。これにより、フック102はテーパ部101Cにより係合位置に案内される。したがって、フック102がロックピン101と確実に係合し得る。
【0093】
サイドフレーム2が着座位置にあるときに、サイドフレーム2に対する第2リンク6の位置を決める位置決め部102Dを備える。これにより、フック102がロックピン101と確実に係合し得る。
【0094】
フック102は、シートベルト連結部2Bよりシート後方側にてサイドフレーム2に連結され、かつ、当該フック102の溝部102Fは、シートベルト連結部2B側に向けて開口している。
【0095】
これにより、シートベルトを介してサイドフレーム2に荷重が入力された場合であっても、フック102がロックピン101から外れてしまうことが抑制されるとともに、フック102の可動空間が容易に確保され得る。
【0096】
なお、クッションフレーム1は左右対称構造である。このため、本実施形態に係るクッションフレーム1では、サイドフレーム3側についても上記と同様な特徴が奏される。
(第2実施形態)
本実施形態は、
図9に示されるように、テーパ部101Cが廃止されたロックピン101を用いた例である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。本実施形態に係るクッションフレーム1も左右対称構造である。
【0097】
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る位置決め部102Dは、軸ブラケット102Bに設けられていた。これに対して、本実施形態に係る位置決め部2Aは、
図10に示されるように、サイドフレーム2に設けられている。位置決め部2Aは、第2リンク6と接触することにより、サイドフレーム2に対する第2リンク6の位置を決める。
【0098】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。本実施形態に係るクッションフレーム1も左右対称構造である。
【0099】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るロック機構10は、第2リンク角度が拡大することを規制することを規制した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、第1リンク角度を規制する構成、又はロックピン101がスライド装置30又は車両に設けられ、フック102がサイドフレーム2に設けられた構成であってもよい。
【0100】
上述の実施形態に係るロック機構10は、第2リンク6にロックピン101が設けられ、サイドフレーム2にフック102が設けられた構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、サイドフレーム2にロックピン101が設けられ、第2リンク6にフック102が設けられた構成であってもよい。
【0101】
上述の実施形態に係るロック機構10は、ロックピン101にフック102が係合する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、サイドフレーム2及び第1リンク4又は第2リンク6を貫通するカンヌキにてロック機構10が構成されていてもよい。
【0102】
上述の実施形態では、第1リンク4及び第2リンク6は、サイドフレーム2が着座位置から乗降位置に上昇変位する際に、第2連結部61の上昇変位量が第1連結部41の上昇変位量より大きくなるように構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0103】
すなわち、当該開示は、例えば、第2連結部61の上昇変位量と第1連結部41の上昇変位量とが同一となる構成、又は第2連結部61の上昇変位量が第1連結部41の上昇変位量より小さくなる構成であってもよい。
【0104】
上述の実施形態に係るロックピン101にはフランジ部101Bが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、係合部101Aの中心軸線方向寸法が十分な寸法であれば、フランジ部101Bが廃止されたロックピン101であってもよい。
【0105】
上述の実施形態では、サイドフレーム2が着座位置にあるときに、サイドフレーム2に対する第2リンク6の位置を決める位置決め部102D、2Aを備えていた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、位置決め部102D、2Aが廃止された構成であってもよい。
【0106】
上述の実施形態に係る駆動部8は駆動バネ84を有していた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動バネ84が廃止された構成であってもよい。
【0107】
上述の実施形態に係るロックピン101は、係合部101Aに設けられた雄ねじ部101Cにより第2リンク6に固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、ロックピン101が溶接又はカシメにて第2リンク6に固定された構成であってもよい。
【0108】
上述の実施形態に係るロック機構10は、アクチュエータ104Cにより解除操作される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、解除レバー104Aを操作ケーブルやリンク等を介して手動操作する構成であってもよい。
【0109】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0110】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0111】
1… クッションフレーム 2… サイドフレーム 4… 第1リンク
6… 第2リンク 8… 駆動部 10… ロック機構
101… ロックピン 102… フック