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特許7192544記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 209
B41J2/01 451
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019020060
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020124901
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 優
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131403(JP,A)
【文献】特開2010-125806(JP,A)
【文献】特開2004-224042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のラインヘッドと第2のラインヘッドとを備えた画像記録装置において、前記各ラインヘッドによる記録媒体への画像記録位置を補正する記録位置補正方法であって、
前記第1のラインヘッドは、複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成されており、前記吐出ノズル列に交差する方向に相対的に移動操作される前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させ、
前記第2のラインヘッドは、前記第1のラインヘッドと同様の構成を有し、前記第1のラインヘッドから前記記録媒体の相対的移動方向に離間して配置され、前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させ、
前記第1及び第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの前記記録媒体の相対的移動方向の画像記録位置の基準位置に対する位置誤差と、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの傾きの基準線に対する傾き誤差と、を検知するための検知チャートを、前記第1及び第2のラインヘッドにより印刷し、
前記印刷された検知チャートを読み取って前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールについて、隣接するヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差を取得し、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールについて、対応する前記第1のラインヘッドのヘッドモジュールによる記録位置を基準位置とする位置誤差及び傾き誤差を取得し、
前記取得した前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差に基づき、前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを補正し、
前記取得した前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの傾き誤差に基づき、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体に記録する記録画像の傾きを補正し、
前記取得した前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差及び前記第2のラインヘッドの前記記録画像の傾きの補正に基づき、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを補正することを特徴とする記録位置補正方法。
【請求項2】
前記記録画像の傾きの補正は、前記ヘッドモジュールの傾き誤差を相殺する形状に前記記録画像を補正することを特徴とする請求項1記載の記録位置補正方法。
【請求項3】
前記記録画像の傾きの補正は、前記傾き誤差が所定の許容値を超えている場合に行うことを特徴とする請求項記載の記録位置補正方法。
【請求項4】
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの傾き誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの吐出ノズル列を基準線とする傾き誤差であることを特徴とする請求項1~に何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項5】
前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該第1のラインヘッド内で隣接するヘッドモジュール間で、一方のヘッドモジュールの位置を基準位置とする他方のヘッドモジュールの位置誤差であり、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる画像記録タイミングの補正後の記録位置を基準位置とする位置誤差であることを特徴とする請求項1~に何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項6】
前記検知チャートは、
同一のラインヘッド内で隣接するヘッドモジュール間で、一方のヘッドモジュールの位置を基準位置とする他方のヘッドモジュールの位置誤差を示す第1の検知パターンと、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる記録位置を基準位置とする前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差を示す第2の検知パターンと
を少なくとも含むことを特徴とする請求項記載の記録位置補正方法。
【請求項7】
前記第1の検知パターン及び前記第2の検知パターンは、互いに同一構造であり、2つ以上の異なるヘッドモジュールによって印刷されることを特徴とする請求項記載の記録位置補正方法。
【請求項8】
前記第2のラインヘッドの第1の検知パターンと、前記第2の検知パターンとを、前記記録媒体の相対的移動方向について対応する位置に印刷することを特徴とする請求項又は記載の記録位置補正方法。
【請求項9】
前記第1のラインヘッドについての位置誤差は、該第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含み、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる画像記録タイミングの補正後の記録位置を基準位置とする位置誤差であることを特徴とする請求項1~に何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項10】
前記第1のラインヘッドについての位置誤差は、該第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含み、
前記第2のラインヘッドについての位置誤差は、前記第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする該第2のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールの位置誤差と、該第2のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含むことを特徴とする請求項1~に何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項11】
前記画像記録タイミングの再補正は、前記記録画像の傾きの補正によって生ずる記録位置の変動量を加算した位置誤差に基づいて行うことを特徴とする請求項10の何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項12】
前記傾き誤差は、各ヘッドモジュールの一端部近傍の位置誤差と他端部近傍の位置誤差との差分に基づいて算出することを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項13】
前記第1のラインヘッドにより、前記第2のラインヘッドにより吐出させるインクよりも明度の低いインクを吐出させることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載の記録位置補正方法。
【請求項14】
前記第1のラインヘッドにより、ブラック色のインクを吐出させることを特徴とする請求項13記載の記録位置補正方法。
【請求項15】
複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成され、前記吐出ノズル列に交差する方向に相対的に移動操作される記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる第1のラインヘッドと、
前記第1のラインヘッドと同様の構成を有し、前記第1のラインヘッドから前記記録媒体の相対的移動方向に離間して配置され、前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる第2のラインヘッドと、
前記第1及び第2のラインヘッドにより、前記第1及び第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの前記記録媒体の相対的移動方向の画像記録位置の基準位置に対する位置誤差と、前記第2のラインヘッドのヘッドモジュールの傾きの基準線に対する傾き誤差と、を検知するための検知チャートを印刷する検知チャート印刷手段と、
前記検知チャートを読み取って前記第1及び第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差と前記第2のラインヘッドのヘッドモジュールの傾き誤差とを取得する誤差取得手段と、
前記位置誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを補正する記録タイミング補正手段と、
前記傾き誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体に記録する記録画像の傾きを補正する画像傾き補正手段と
を備え、
前記記録タイミング補正手段により、前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差に基づいて前記第1のラインヘッドの画像記録タイミングを補正し、前記画像傾き補正手段により、前記傾き誤差に基づいて前記第2のラインヘッドの記録画像の傾きを補正し、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差及び前記記録画像の傾きの補正に基づき、前記第2のラインヘッドの画像記録タイミングを補正して、前記第1及び第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる前記記録媒体への画像記録位置を補正することを特徴とする画像記録装置。
【請求項16】
請求項2~1の何れかに記載の記録位置補正方法を実行することを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項17】
コンピュータ装置において実行されて画像記録装置を制御するプログラムであって、
請求項1~1の何れかに記載の記録位置補正方法を実行することを特徴とする記録位置補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラムに関し、より詳しくは、同一のラインヘッド内の各ヘッドモジュールが記録する画像間のつながりを実現する補正と、異なるラインヘッドの対応するヘッドモジュールが記録する画像間の記録位置の一致を実現する補正(色ズレ補正)とを両立できる記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「ワンパスインクジェット印刷装置」は、1ライン(行)ずつ画像を記録していく方式の画像記録装置であり、1ドットずつ画像を記録していく「シリアルプリンタ」よりも高速な記録が可能であるため、従来から業務用の画像記録装置として好適に使用されている。詳しくは、ワンパスインクジェット印刷装置は、記録媒体の幅に沿う長尺の記録ヘッド(ラインヘッド)が固定されて配置され、その直下を記録媒体が搬送されるように構成され、搬送中の記録媒体に向けてラインヘッドがインクを吐出し、記録媒体に1ラインずつ画像を記録する。
【0003】
ワンパスインクジェット印刷装置においては、多数のインクの吐出口(吐出ノズル)を記録媒体の全幅にわたって記録媒体の相対的移動方向と交差する方向に正確に配列しなければ記録画像の品質が低下する。ラインヘッドの製造には精度が要求され、その製造は困難で、それ自体が高価なものとなっている。そのため、近年、複数の短尺のヘッドモジュールを繋ぎ合わせるように記録媒体の幅方向に配列させ、長尺のラインヘッドを構成させたワンパスインクジェット印刷装置が提案されている。
【0004】
このようなラインヘッドを記録媒体の搬送方向に離間して複数備えたワンパスインクジェット印刷装置においては、機械的取付け精度の限界から、同一のラインヘッド内のヘッドモジュール間での位置ずれや、異なるラインヘッド間での位置ずれが生ずる虞がある。
【0005】
特許文献1に記載された画像記録装置では、基準となるラインヘッドでラインヘッド内誤差を取得する補正パターンを記録し、基準となるラインヘッド及び他のラインヘッドによりラインヘッド間誤差を取得する補正パターンを記録する。これらの補正パターンを読み取って各誤差を取得し、ラインヘッド内誤差に基づいて基準となるラインヘッドの各ヘッドモジュールの画像記録タイミングを補正し、ラインヘッド間誤差に基づいて他のラインヘッドの各ヘッドモジュールの画像記録タイミングを補正している。
【0006】
特許文献2に記載された画像記録装置では、異なるヘッドモジュールによって記録された画像間のずれを検出する検出手段と、検出手段による検出結果に基づいて画像間のずれを補正する補正手段とを備えている。画像間のずれには、ヘッドモジュールの傾きに起因するずれも含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-66851号公報
【文献】特開2005-53167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来の画像記録装置においては、同一のラインヘッド内の各ヘッドモジュールが記録する画像間のつながりを実現する補正と、異なるラインヘッドの対応するヘッドモジュールが記録する画像間の(記録媒体の搬送方向の)記録位置の一致を実現する補正(色ズレ補正)とを両立できない。
【0009】
特許文献1では、ラインヘッド間誤差を、ヘッドモジュールを代表する1点で取得している。そのため、ラインヘッド間の対応するヘッドモジュールにおいて、吐出ノズル列の方向が一致しない場合(傾きがある場合)には、記録媒体の搬送方向の記録位置を良好に補正できない。また、ラインヘッド間誤差を優先的に補正するため、ラインヘッド内誤差が良好に補正されない。
【0010】
特許文献2では、各ヘッドモジュールの傾きを取得する検出センサの、製造時の取り付け誤差を予め把握しておく必要があり、この取付け誤差に起因して良好な補正ができない。また、ヘッドモジュールの傾きに起因するずれを補正すると、ラインヘッド間誤差に影響が生じてしまい、この影響が補正されない。
【0011】
そこで本発明は、同一のラインヘッド内の各ヘッドモジュールが記録する画像間のつながりを実現する補正と、異なるラインヘッドの対応するヘッドモジュールが記録する画像間の記録位置の一致を実現する補正(色ズレ補正)とを両立できる記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラムを提供することを課題とする。
【0012】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
1.
第1のラインヘッドと第2のラインヘッドとを備えた画像記録装置において、前記各ヘッドモジュールによる記録媒体への画像記録位置を補正する記録位置補正方法であって、
前記第1のラインヘッドは、複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成されており、前記吐出ノズル列に交差する方向に相対的に移動操作される前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させ、
前記第2のラインヘッドは、前記第1のラインヘッドと同様の構成を有し、前記第1のラインヘッドから前記記録媒体の相対的移動方向に離間して配置され、前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させ、
前記各ヘッドモジュールの前記記録媒体の相対的移動方向の画像記録位置の基準位置に対する位置誤差と、前記各ヘッドモジュールの傾きの基準線に対する傾き誤差と、を検知するための検知チャートを印刷し、
前記印刷された検知チャートを読み取って前記各ヘッドモジュールの位置誤差と傾き誤差とを取得し、
前記取得した位置誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを補正し、
前記取得した傾き誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体に記録する記録画像の傾きを補正し、
前記記録画像の傾きの補正に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを再補正することを特徴とする記録位置補正方法。
2.
前記画像記録タイミングの補正は、前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールについて行い、
前記記録画像の傾きの補正は、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールについて、前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールを基準として行い、
前記画像記録タイミングの再補正は、前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールについて行うことを特徴とする前記1記載の記録位置補正方法。
3.
前記記録画像の傾きの補正は、前記ヘッドモジュールの傾き誤差を相殺する形状に前記記録画像を補正することを特徴とする前記1又は2記載の記録位置補正方法。
4.
前記記録画像の傾きの補正は、前記傾き誤差が所定の許容値を超えている場合に行うことを特徴とする前記3記載の記録位置補正方法。
5.
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの傾き誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの吐出ノズル列を基準線とする傾き誤差であることを特徴とする前記1~4に何れかに記載の記録位置補正方法。
6.
前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該第1のラインヘッド内で隣接するヘッドモジュール間で、一方のヘッドモジュールの位置を基準位置とする他方のヘッドモジュールの位置誤差であり、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる画像記録タイミングの補正後の記録位置を基準位置とする位置誤差であることを特徴とする前記1~5に何れかに記載の記録位置補正方法。
7.
前記検知チャートは、
同一のラインヘッド内で隣接するヘッドモジュール間で、一方のヘッドモジュールの位置を基準位置とする他方のヘッドモジュールの位置誤差を示す第1の検知パターンと、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる記録位置を基準位置とする前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差を示す第2の検知パターンと
を少なくとも含むことを特徴とする前記6記載の記録位置補正方法。
8.
前記第1の検知パターン及び前記第2の検知パターンは、互いに同一構造であり、2つ以上の異なるヘッドモジュールによって印刷されることを特徴とする前記7記載の記録位置補正方法。
9.
前記第2のラインヘッドの第1の検知パターンと、前記第2の検知パターンとを、前記記録媒体の相対的移動方向について対応する位置に印刷することを特徴とする前記7又は8記載の記録位置補正方法。
10.
前記第1のラインヘッドについての位置誤差は、該第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含み、
前記第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差は、該各ヘッドモジュールに対応する前記第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる画像記録タイミングの補正後の記録位置を基準位置とする位置誤差であることを特徴とする前記1~5に何れかに記載の記録位置補正方法。
11.
前記第1のラインヘッドについての位置誤差は、該第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含み、
前記第2のラインヘッドについての位置誤差は、前記第1のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする該第2のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールの位置誤差と、該第2のラインヘッドのいずれか一つのヘッドモジュールを位置基準とする隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールを位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールについての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールについての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含むことを特徴とする前記1~5に何れかに記載の記録位置補正方法。
12.
前記画像記録タイミングの再補正は、前記記録画像の傾きの補正によって生ずる記録位置の変動量を加算した位置誤差に基づいて行うことを特徴とする前記6~11の何れかに記載の記録位置補正方法。
13.
前記傾き誤差は、各ヘッドモジュールの一端部近傍の位置誤差と他端部近傍の位置誤差との差分に基づいて算出することを特徴とする前記1~12の何れかに記載の記録位置補正方法。
14.
前記第1のラインヘッドにより、前記第2のラインヘッドにより吐出させるインクよりも明度の低いインクを吐出させることを特徴とする前記1~13の何れかに記載の記録位置補正方法。
15.
前記第1のラインヘッドにより、ブラック色のインクを吐出させることを特徴とする前記14記載の記録位置補正方法。
16.
複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成され、前記吐出ノズル列に交差する方向に相対的に移動操作される記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる第1のラインヘッドと、
前記第1のラインヘッドと同様の構成を有し、前記第1のラインヘッドから前記記録媒体の相対的移動方向に離間して配置され、前記記録媒体に前記吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる第2のラインヘッドと、
前記各ラインヘッドにより、前記各ヘッドモジュールの前記記録媒体の相対的移動方向の画像記録位置の基準位置に対する位置誤差と、前記各ヘッドモジュールの傾きの基準線に対する傾き誤差と、を検知するための検知チャートを印刷する検知チャート印刷手段と、
前記検知チャートを読み取って前記各ヘッドモジュールの位置誤差と傾き誤差とを取得する誤差取得手段と、
前記位置誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体への画像記録タイミングを補正する記録タイミング補正手段と、
前記傾き誤差に基づき、前記各ヘッドモジュールそれぞれの前記記録媒体に記録する記録画像の傾きを補正する画像傾き補正手段と
を備え、
前記記録タイミング補正手段により、前記位置誤差に基づいて画像記録タイミングを補正し、前記画像傾き補正手段により、前記傾き誤差に基づいて記録画像の傾きを補正し、該記録画像の傾きの補正に基づき、画像記録タイミングを再補正して、前記各ヘッドモジュールによる前記記録媒体への画像記録位置を補正することを特徴とする画像記録装置。
17.
前記2~15の何れかに記載の記録位置補正方法を実行することを特徴とする前記16記載の画像記録装置。
18.
コンピュータ装置において実行されて画像記録装置を制御するプログラムであって、
前記1~15の何れかに記載の記録位置補正方法を実行することを特徴とする記録位置補正プログラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一のラインヘッド内の各ヘッドモジュールが記録する画像間のつながりを実現する補正と、異なるラインヘッドの対応するヘッドモジュールが記録する画像間の記録位置の一致を実現する補正(色ズレ補正)とを両立できる記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る画像記録装置の全体構成を示す模式図
図2】前記画像記録装置の要部側面図(a)及びラインヘッド上面から搬送ドラムを俯瞰した平面図(b)
図3】前記画像記録装置の制御部の構成を示すブロック図
図4】前記画像記録装置の制御部の画像処理部における記録画像データの分割を示す図
図5】前記画像記録装置における制御信号を示すタイムチャート
図6】前記画像記録装置が印刷する検知チャートを示す図
図7】前記検知チャートにおける第1及び第2の検知パターンを示す図
図8】位置誤差の取得方法を説明する図
図9】位置誤差検知パターンの拡大図
図10】傾き誤差取得のための位置誤差の取得を説明する図
図11】傾き誤差の取得方法を説明する図
図12】ヘッドモジュールの傾き補正を説明する図
図13】位置誤差及び傾き誤差がない場合の検出パターン(a)及びヘッドモジュールの配置を示す図(b)
図14】位置誤差及び傾き誤差がある場合の検出パターン(a)及びヘッドモジュールの配置を示す図(b)
図15】位置誤差を補正したK色直線(a)及び位置誤差と傾き誤差を補正したC色直線(b)
図16】位置誤差及び傾き誤差の補正手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る画像記録装置について、図面を参照して説明する。本発明の実施の形態に係る記録位置補正方法は、この画像記録装置の動作として具現化され、また、この画像記録装置が本発明の実施の形態に係る記録位置補正プログラムを実行することによって実施される。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0018】
〔画像記録装置の構成〕
図1は、実施の形態に係る画像記録装置の全体構成を示す模式図である。
【0019】
画像記録装置1は、図1に示すように、給紙部10と、検知チャート印刷手段ともなる画像形成部20と、排紙部30と、制御部40と、インク供給部50とを備えている。画像記録装置1では、制御部40の制御に基づいて、給紙部10から画像形成部20に搬送された記録媒体Pに対して、インク供給部50から供給されたインクにより画像形成部20で画像を形成した後、その記録媒体Pを排紙部30に排出する。
【0020】
給紙部10は、画像形成が行われる記録媒体Pを保持し、この記録媒体Pを画像形成部20に供給する。給紙部10は、給紙トレー11と、搬送部12とを有する。
【0021】
給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを重ねて載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するように設けられており、記録媒体Pが搬送部12により搬送される位置で保持される。
【0022】
搬送部12は、輪状のベルト123を複数(例えば、2本)のローラー121,122により回転駆動してベルト123上の記録媒体Pを搬送する搬送機構、及び、給紙トレー11に載置された記録媒体Pをベルト123に受け渡す供給部を有する。搬送部12は、供給部によりベルト123に受け渡された記録媒体Pをベルト123の回転動作によって搬送する。
【0023】
画像形成部20は、搬入された記録媒体P上にインクを吐出させて画像を形成する。画像形成部20は、受け渡しユニット22と、用紙加熱部23と、搬送ドラム21と、インクジェットヘッド24と、定着部25と、デリバリー部26と、用紙センサ27とを有している。
【0024】
受け渡しユニット22は、給紙部10の搬送部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、搬送部12により搬送された記録媒体Pを搬送ドラム21に受け渡す。受け渡しユニット22は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持するスイングアーム部221や、スイングアーム部221に担持された記録媒体Pを搬送ドラム21に受け渡す円筒状の受け渡しドラム222等を有する。受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pをスイングアーム部221により取り上げ、受け渡しドラム222に受け渡し、この記録媒体Pを搬送ドラム21の外周面に沿う向きに誘導して、搬送ドラム21に受け渡す。
【0025】
用紙加熱部23は、搬送ドラム21に担持された記録媒体Pを加熱する。用紙加熱部23は、例えば、赤外線ヒータ等を有し、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、搬送ドラム21の外周面の近傍であって、搬送ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてインクジェットヘッド24の上流側に設けられる。用紙加熱部23は、搬送ドラム21に担持されて用紙加熱部23の近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように、その発熱を制御部40により制御される。
【0026】
搬送ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転されることにより記録媒体Pを搬送し、インクジェットヘッド24に対して相対的に移動させる。搬送ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、インクジェットヘッド24及び定着部25に対向し、搬送する記録媒体Pに対して画像形成に係る処理が順次行われるようにする。
【0027】
インクジェットヘッド24は、搬送ドラム21に担持された記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。インクジェットヘッド24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色について個別に設けられている。図1では、搬送ドラム21の回転により搬送される記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したインクジェットヘッド24が順次設けられている。
【0028】
インクジェットヘッド24は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(幅方向)について記録媒体Pの全幅をカバーする長さ(幅)で設けられている。すなわち、この実施形態における画像記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型画像記録装置である。インクジェットヘッド24は、4個のラインヘッドから構成されている。本発明では、ラインヘッドのうちの1個が「第1のラインヘッド」となり、他のラインヘッドが「第2のラインヘッド」となる。
【0029】
第1のラインヘッド(K(ブラック))は、複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成され、吐出ノズル列に交差する方向に相対的に移動操作される記録媒体Pに吐出ノズルから吐出するインクを着弾させる。第2のラインヘッド(C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー))は、第1のラインヘッドと同様の構成を有し、第1のラインヘッドから記録媒体Pの相対的移動方向に離間して配置されている。
【0030】
定着部25は、インクジェットヘッド24により記録媒体P上にインクが吐出された後に、そのインクを硬化させるためのエネルギー線を記録装置Pに照射する。定着部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を有し、蛍光管を発光させて紫外線等のエネルギー線を照射する。定着部25は、搬送ドラム21の外周面の近傍であって、搬送ドラム21の回転による記録媒体Pの搬送方向についてインクジェットヘッド24の下流側に設けられる。定着部25は、搬送ドラム21に担持されてインクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射し、エネルギー線の作用により記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させる。
【0031】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザ光源、メタルハライドランプ、発光ダイオード等が挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば、発光ダイオード等)が望ましい。また、エネルギー線は紫外線に限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて選択できる。
【0032】
デリバリー部26は、定着部25によりエネルギー線が照射された記録媒体Pを搬送ドラム21から排紙部30に搬送する。デリバリー部26は、輪状のベルト263を複数(例えば、2本)のローラー261,262により回転駆動してベルト263上の記録媒体Pを搬送する搬送機構や、記録媒体Pを搬送ドラム21から搬送機構に受け渡す円筒状の受け渡しドラム264等を有する。デリバリー部26は、受け渡しドラム264によりベルト263に受け渡された記録媒体Pをベルト263により搬送して排紙部30に送り出す。
【0033】
用紙センサ27は、搬送ドラム21に保持された記録媒体Pを検出する。用紙センサ27は、例えば、光反射型センサである。
【0034】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pを格納する。排紙部30は、板状の排紙トレー31等を有し、この排紙トレー31上に画像形成後の記録媒体Pを重ねて載置させる。
【0035】
インク供給部50は、インクを貯留し、このインクを画像形成部20のインクジェットヘッド24に供給し、各色のインクをインクジェットヘッド24の吐出ノズルから吐出可能とする。
【0036】
本実施の形態の画像記録装置1で用いられるインクは、特に限られないが、例えば、紫外線(UV)硬化型のインクである。この紫外線硬化型インクは、紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態とゾル(液体)状態との間で相変化する。例えば、このインクは、所定の温度、例えば、40℃~100℃程度が相変化温度であり、この相変化温度以上に加熱されることで一様にゾル化(液化)する。一方、このインクは、通常の室温程度(0℃~30℃)を含む所定の温度以下では、ゲル化する。
【0037】
この実施形態の画像記録装置では、インクジェットヘッド24は、C、M、Y、Kの各色に対応して4個が設けられているが、インクジェットヘッド24の個数はなんら限定されず、より多くの色に対応させてより多くの個数のインクジェットヘッドを設けてもよい。インクジェットヘッド24のインク吐出の方式はなんら限定されず、公知のいかなる方式のインクジェットヘッドであってもよい。また、この画像記録装置では、搬送ドラム21の回転により記録装置Pを搬送しているが、ベルトやローラ等を用いて、記録装置Pを平面状態に維持したままで搬送してもよく、さらに、記録装置Pを固定し、インクジェットヘッド24を搬送して、記録媒体Pに対して相対的に移動させてもよい。
【0038】
〔ラインヘッドの配置〕
図2は、前記画像記録装置の要部側面図(a)及びラインヘッド上面から搬送ドラムを俯瞰した平面図(b)である。
【0039】
各ラインヘッドY、M、C、Kは、図2(a)(b)に示すように、複数の吐出ノズルが列状に形成された短尺のヘッドモジュールが、吐出ノズル列方向に複数配列されて構成されている。この実施形態では、各ラインヘッドY、M、C、Kは、それぞれ4つのヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4により構成されている。各ヘッドモジュールは、それぞれ取付部材に取り付けられている。
【0040】
各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4は、それぞれが複数の記録素子を内蔵している。各記録素子は、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、吐出ノズルとを備える。ヘッドモジュールの駆動回路から圧電素子へ駆動電圧が印加されると、駆動電圧の大きさに応じて圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通する吐出ノズルからインクが吐出される。図2(b)では、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の吐出ノズルを点として描いている。各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の吐出ノズルは、搬送ドラム21に対向する側(インク吐出面)に開口している。
【0041】
各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4が備える複数の吐出ノズルは、搬送ドラム21に対向する側において、記録媒体Pの搬送方向(Y方向)と直交する幅方向(X方向)に、記録媒体Pへの記録幅(例えば300mm)に亘って、等間隔に配列されている。
【0042】
各ラインヘッドY、M、C、Kを構成する各4つのヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4は、X方向についての配置範囲が互いに一部重複し、X方向に沿って1番目と3番目、及び2番目と4番目のヘッドモジュールの記録素子が同一線上に位置し、Y方向の間隔Dnで千鳥格子状に配置されている。ヘッドモジュールの端部は、隣接するヘッドモジュールの端部とY方向において重複する。各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4は、例えば3584個の記録素子を含み、隣接するヘッドモジュールとY方向において重複する記録素子は、例えば54個である。
【0043】
各ラインヘッドY、M、C、Kに含まれる記録素子のX方向についての配置範囲は、搬送ドラム21により保持され搬送される記録媒体Pのうち画像が記録される領域のX方向の幅をカバーしている。各ラインヘッドY、M、C、Kは、少なくとも画像の記録時には、前述したように、搬送ドラム21に対して位置が固定されて用いられる。
【0044】
この画像記録装置1において、各ラインヘッドY、M、C、KのX方向及びY方向の記録解像度は、例えば1200dpiであり、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の記録素子は、X方向に1インチ当たり1200個の密度で配置されている。
【0045】
定着部25は、紫外線LEDランプを有し、搬送ドラム21の外周面に保持された記録媒体Pに対して紫外線LEDランプの発光により紫外線を照射し、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させ定着させる。定着部25は、記録媒体Pの搬送方向について各ラインヘッドY、M、C、Kの下流側に配置される。
【0046】
定着部25のさらに記録媒体Pの搬送方向下流側には、誤差取得手段を構成するインラインセンサ28が配置されている。インラインセンサ28は、搬送ドラム21の外周面に対向して配置され、搬送ドラム21により保持され搬送される記録媒体Pに記録されている画像を撮像し、二次元撮像データを出力する。インラインセンサ28は、記録媒体Pの幅方向(X方向)に所定の配置間隔で配列された複数の撮像素子を備えたCCDセンサである。CCDセンサは、図示しない光源から射出され記録媒体Pの表面で反射した光の強度に応じた信号を出力する。また、インラインセンサ28は、撮像素子から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部40に出力する回路を備えている。
【0047】
インラインセンサ28から出力される撮像データの記録媒体Pの幅方向(X方向)の解像度は、例えば600dpi、記録媒体Pの搬送方向(Y方向)の解像度は、例えば300dpiである。
【0048】
各ラインヘッドY、M、C、K及びインラインセンサ28は、搬送ドラム21の外周面に沿って配置された用紙センサ27からの距離が、それぞれDy,Dm,Dc,Dk,Dsとなる位置に配置されている。
【0049】
図3は、前記画像記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【0050】
制御部40は、図3に示すように、CPU401を有している。CPU401は、画像記録装置1の全体動作を統括制御し、各種演算及び制御を実行する。CPU401には、RAM402及びROM403が接続されている。RAM402は、CPU401に作業用のメモリー空間を提供するとともに、一時データを記憶する。ROM403は、CPU401により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。CPU401に接続されたインタフェース404は、外部装置60との間でデータの送受信を行う手段であり、各種シリアルインターフェース又は各種パラレルインターフェースのいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成されている。
【0051】
外部装置60には、画像入力部405が接続されている。画像入力部405は、外部装置60から記録画像データを受信する手段であり、各種シリアルインターフェース又は各種パラレルインターフェースのいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成されている。画像入力部405が受信した記録画像データは、画像傾き補正手段ともなる画像処理部406に送られる。
【0052】
画像処理部406は、外部装置60から入力された記録画像データに対して中間調(ハーフトーン)処理等の画像処理を施すとともに、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録画像データに分割する。
【0053】
図4は、前記画像記録装置の制御部の画像処理部における記録画像データの分割を示す図である。
【0054】
画像処理部406は、図4に示すように、入力された記録画像データを、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録画像データに分割する。すなわち、画像処理部406は、入力された記録画像データを、まず、色分解して、Y色の記録画像、M色の記録画像、C色の記録画像及びK色の記録画像のデータとする。次に画像処理部406は、各色の記録画像のデータのそれぞれを、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録画像データに分割する。
【0055】
図3に示すように、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録画像データに分割された画像データは、記録タイミング補正手段ともなる画像記録制御部407に送られる。画像記録制御部407は、画像処理部406から入力された各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録画像データに分割された画像データを一時格納し、制御信号生成部408から入力される画像記録制御信号に従って、各ラインヘッド(インクジェット記録部)Y、M、C、Kへ送出する。
【0056】
CPU401に接続された機構制御部409は、CPU401からの司令及び制御信号生成部408から入力される制御信号に基づいて、搬送ドラム21を回転させるモータ等のインクジェット機構部410を制御する。
【0057】
CPU401に接続されたインラインセンサ制御回路411は、CPU401からの司令及び制御信号生成部408から入力される制御信号に基づいて、インラインセンサ28に所定のタイミングで撮像を行わせるための制御信号を、ラインセンサ28に出力する。
【0058】
CPU401に接続された読取り画像メモリ412には、インラインセンサ28により撮像された画像データが格納される。
【0059】
図5は、前記画像記録装置における制御信号を示すタイムチャートである。
【0060】
制御信号生成部408から出力される制御信号は、図5に示すように、インク吐出クロックを基準として生成される。インク吐出クロックは、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4により、搬送方向(Y方向)の所定の記録解像度(1200dpi)で記録するための、インク吐出タイミングを示すクロック信号である。
【0061】
また、制御信号は、ILS(インラインセンサ)画像取得クロックを含んでいる。ILS画像取得クロックは、インラインセンサ28の、搬送方向(Y方向)の所定の解像度(300dpi)で画像取得をするための、画像取得タイミングを示すクロック信号である。
【0062】
また、制御信号は、ILS(インラインセンサ)画像取得期間信号を含んでいる。ILS画像取得期間信号は、インラインセンサ28による画像取得を行う期間を示す信号である。
【0063】
制御信号は、用紙センサ信号を含んでいる。用紙センサ信号は、用紙センサ27が搬送ドラム21上の記録媒体P(長さL)の始端及び終端を検出したことを示す信号である。
【0064】
制御信号は、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の記録期間を制御する記録期間信号を含んでいる。記録期間信号は、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4毎の、インク吐出(画像記録)期間を示す信号である。インク吐出期間には、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4には、記録画像データが送出される。
【0065】
このように構成された本実施形態の画像記録装置1においては、記録位置補正方法を実行する場合には、インクジェットヘッド24を検知チャート印刷手段として用いて、各ラインヘッドY、M、C、Kにより、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の記録媒体Pの搬送方向(Y方向)の画像記録位置の基準位置に対する位置誤差と、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の傾きの基準線(吐出ノズル列)に対する傾き誤差と、を検知するための検知チャートを印刷する。
【0066】
画像記録装置が印刷する検知チャートは、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4に位置誤差及び傾き誤差がなければ、画像データ通りの正しい形状に印刷されるのであるが、位置誤差及び傾き誤差により、画像データとは異なる形状に印刷される。印刷された検知チャートにおける画像データに対する差異を検知することによって、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の位置誤差及び傾き誤差を検知することができる。
【0067】
図6は、前記画像記録装置が印刷する検知チャートを示す図である。
【0068】
画像記録装置が印刷する検知チャートは、図6に示すように、隣接する各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の記録領域の境界部に、隣接ヘッドモジュール間の位置誤差を検知するための第1の検知パターンを有する。第1の検知パターンは、同一のラインヘッド内で隣接するヘッドモジュール間で、一方のヘッドモジュールの位置を基準位置とする他方のヘッドモジュールの位置誤差を示すものである。
【0069】
また、検知チャートは、第1のラインヘッド(K色)を除く第2のラインヘッド(Y、M、C色)の各ヘッドモジュールの記録領域端部近傍に、K色の記録位置を基準とする色間の位置誤差を検知するための第2の検知パターンを有する。第2の検知パターンは、第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールに対応する第1のラインヘッドの各ヘッドモジュールによる記録位置を基準位置とする第2のラインヘッドの各ヘッドモジュールの位置誤差を示すものである。
【0070】
なお、同一のラインヘッドの位置誤差検知パターン(第1の検知パターン及び第2の検知パターン)を、記録媒体Pの搬送方向について同じ位置に(幅方向に並べて)印刷することにより、記録媒体Pの搬送速度の微細な変動などの外乱要因を低減することができる。
【0071】
この記録位置補正方法においては、後述するように、第1のラインヘッド(K色)についての位置誤差は、第1のラインヘッド(K色)のいずれか一つのヘッドモジュールK-1~4を位置基準とする隣接するヘッドモジュールK-1~4についての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールK-1~4を位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールK-1~4についての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールK-1~4についての直近のヘッドモジュールK-1~4を位置基準とする位置誤差とを全て含む。
【0072】
また、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4の位置誤差は、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4に対応する第1のラインヘッド(K色)の各ヘッドモジュールK-1~4による画像記録タイミングの補正後の記録位置を基準位置とする位置誤差であることが好ましい。
【0073】
さらに、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)についての位置誤差は、第1のラインヘッド(K色)のいずれか一つのヘッドモジュールK-1~4を位置基準とする第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)のいずれか一つのヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4の位置誤差と、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)のいずれか一つのヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4を位置基準とする隣接するヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4についての位置誤差と、この隣接するヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4を位置基準とするさらに隣接するヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4についての位置誤差と、順次隣接するヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4についての直近のヘッドモジュールを位置基準とする位置誤差とを全て含むことが好ましい。
【0074】
図7は、前記検知チャートにおける第1及び第2の検知パターンを示す図である。
【0075】
第1の検知パターン(隣接ヘッドモジュール間の位置誤差検知パターン)と、第2の検知パターン(色間の位置誤差検知パターン)とは、図7に示すように、同一構造であり、基準側ヘッドモジュール及び誤差検知側ヘッドモジュールのそれぞれにより、4個の位置決めマークに囲まれた領域の規定位置に、複数の位置検知線を等間隔で印刷したものである。誤差検知側ヘッドモジュールによる位置検知線は、基準側ヘッドモジュールによる位置検知線とは異なる間隔(例えば、16ライン間隔及び18ライン間隔)で記録する。また、基準側ヘッドモジュールによる位置検知線及び誤差検知側ヘッドモジュールによる位置検知線のそれぞれには、仮想線番号が付与されている。基準側ヘッドモジュールによる位置検知線及び誤差検知側ヘッドモジュールによる位置検知線において、中央の検知線(仮想線番号0)は、位置誤差がないときには、記録媒体Pの搬送方向(Y方向)の位置が一致している。
【0076】
図7に示す位置誤差検知パターンでは、基準側ヘッドモジュールによる位置検知線と誤差検知側ヘッドモジュールによる位置検知線との記録間隔の差が2ラインで、中央の検知線(仮想線番号0)に対して2ずつ増減する仮想線番号を付与している。この実施形態では、仮想線番号の増減を2ずつ(整数値)にしているが、この増減値は限定されず、また、位置誤差は、整数値であるとは限らない。
【0077】
〔位置誤差の検知〕
以下、位置誤差の取得について説明する。
図8は、位置誤差の取得方法を説明する図である。
【0078】
まず、図8(a)に示すように、インラインセンサ28による検知チャートの読取り画像から、各位置誤差検知パターンを含む矩形領域をそれぞれ切り出す。これら矩形領域は、予め位置が判っている。次に、基準側ヘッドモジュールによる位置検知線を基準として、誤差検知側ヘッドモジュールによる位置検知線の位置誤差を検知する。位置誤差の検知は、図8(b)に示すように、位置誤差検知パターンを含む矩形領域画像から、基準側及び誤差検知側の各位置検知線の座標(Y座標)を求め、仮想線番号をx軸として一次元近似(直線近似)を行う。2つの一次元近似(直線近似)の交点の仮想線番号を算出し、その符号を反転したものが、基準側ヘッドモジュールを基準とする、誤差検知側ヘッドモジュールの位置誤差となる。
【0079】
隣接ヘッドモジュール間の位置誤差も、色間の位置誤差も、同様の方法によって求めることができる。
【0080】
図9は、位置誤差検知パターンの拡大図である。
【0081】
図9(a)に示す位置誤差検知パターンの読取画像より、検知線の座標を取得するには、図9(b)に示すように、読取画像における紙面(白)の輝度を閾値として、この閾値より輝度が小さい(暗い)領域に検知線があるとみなし、この領域の輝度値を反転した濃度重心座標(Y座標)を求め、この座標を検知線の座標とする。
【0082】
色間の位置誤差は、検知線の読取画像の輝度振幅が最も大きくなる(最も明度の低い)色材(K色)を基準色として求めることが好ましい。輝度振幅が最も大きい色材による検知線の読取画像は、記録媒体Pの表面状態(微細な凹凸)などに起因する変動(雑音成分)の影響が小さいからである。なお、図9には、2本の検知線のみを示している。また、検知線の座標は、整数値であるとは限らない。
【0083】
〔位置誤差の補正〕
この画像記録装置1においては、制御信号生成部408を記録タイミング補正手段として用いて、位置誤差に基づいて、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4それぞれの記録期間のタイミングを変更することにより、それぞれの記録媒体Pの搬送方向の画像記録位置を補正することができる。
【0084】
〔傾き誤差の検知〕
K色用のヘッドモジュールK-1~4を基準として、C色用のヘッドモジュールC-1~4の傾き誤差を検知する方法を説明する。
図10は、傾き誤差取得のための位置誤差の取得を説明する図である。
【0085】
図10に示すように、ヘッドモジュールCの左端側及び右端側それぞれの、C-K間の位置誤差検知パターンから、K色を基準とするC色の位置誤差を検出する。図10では、(+2)及び(-2)が検知される。
【0086】
図11は、傾き誤差の取得方法を説明する図である。
【0087】
図11(a)に示すように、C色用のヘッドモジュールCの左端側及び右端側の位置誤差(K色基準)が(+2)、(-2)であるとき、図11(b)に示すように、ヘッドモジュールCの左端側及び右端側のうち位置誤差の大きい方を「C傾き基準点」として、ヘッドモジュールCの傾き誤差に換算する。図11(b)では、傾き誤差は、(-4)となる。このような換算により、傾き補正の方向を、1方向に限定することができる。なお、位置誤差の大きい端を「傾き基準点」とすることにより、補正すべき方向が1方向(+)に限定される。なお、ここでは位置誤差を整数値として例示しているが、前述したように、位置誤差は整数値であるとは限らない。
【0088】
〔傾き誤差の補正〕
この画像記録装置1では、図11(c)に示すように、取得された傾き誤差に基づいて傾き補正を行う。傾き補正は、画像処理部406を画像傾き補正手段として用いて、ヘッドモジュールCの記録媒体Pに記録する記録画像の傾きの補正(記録画像を菱形にする補正)によって行う。
【0089】
基準のヘッドモジュールKの基準線(吐出ノズル列)を基準とする傾き誤差を補正した場合には、図11(c)に示すように、ヘッドモジュールCの左端側及び右端側は、ともに基準のヘッドモジュールKを基準とする位置誤差のみを有する状態となる。この位置誤差を補正する方向に、図11(d)に示すように、ヘッドモジュールCの画像記録タイミングを変更して位置補正することが好ましい。
【0090】
図12は、ヘッドモジュールの傾き補正を説明する図である。
【0091】
前述したようにヘッドモジュール毎に分割された記録画像データにおいて、図12に示すように、傾き補正が必要なモジュールの記録画像データの傾き補正は、整数ライン単位での補正となる。そのため、左端-右端間の必要な補正量を記録画像データ幅で按分し、近い整数値に丸め込み(四捨五入し)、記録画像データを補正方向にシフトする。
【0092】
なお、ヘッドモジュール毎に分割された記録画像データの傾き補正は、その画像データ全体の補正処理であり、処理時間などの負荷が大きくなることがある。その場合には、ヘッドモジュールの微細な(例えば0.1mm未満)傾きの補正を省略しても、印刷画像上での色ずれ許容値を満たすと判断されるならば、記録画像データの傾きの補正は、ヘッドモジュールの傾き誤差が所定の許容値を超えている場合にのみ行うようにしてもよい。
【0093】
〔位置誤差及び傾き誤差の補正〕
この画像記録装置1では、インラインセンサ28を誤差取得手段として用いて、検知チャートを読み取り、各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4の位置誤差及び傾き誤差を取得する。次に、制御信号生成部408を記録タイミング補正手段として用いて、取得された位置誤差に基づいて、第1のラインヘッド(K色)の各ヘッドモジュールK-1~4それぞれの画像記録タイミングを変更することにより、それぞれの記録媒体Pの搬送方向の画像記録位置を補正する。さらに、画像処理部406を画像傾き補正手段として用いて、取得された傾き誤差に基づいて、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4それぞれの記録媒体Pに記録する記録画像の傾きを補正する。
【0094】
前述のように傾き誤差を補正した場合には、ヘッドモジュールの左端側及び右端側は、ともに基準のヘッドモジュール(K色)を基準とする位置誤差のみを有する状態となる。さらに、この位置誤差を補正する方向に、各ヘッドモジュールの画像記録タイミングを変更して補正することが好ましい。
【0095】
すなわち、この画像記録装置1では、記録タイミング補正手段により位置誤差に基づいて画像記録タイミングを補正し、画像傾き補正手段により傾き誤差に基づいて記録画像の傾きを補正した後に、記録画像の傾きの補正に基づいて、画像記録タイミングを再補正して、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4による記録媒体Pへの画像記録位置を再補正することが好ましい。
【0096】
以下、具体的な位置補正及び傾き誤差の手順を説明する。
図13は、位置誤差及び傾き誤差がない場合の検出パターン(a)及びヘッドモジュールの配置を示す図(b)である。
図13図16において、細実線は、記録媒体Pの幅方向のK色の直線を示し、太破線は、記録媒体Pの幅方向のC色の直線を表す。なお、記録媒体Pの搬送方向の位置誤差を誇張して示している。また、誤差の検知値を整数値として示しているが、検知値は整数値であるとは限らない。
【0097】
この例では、基準となる第1のラインヘッドをK色用とし、第2のラインヘッドをC色用として説明する。Y色用及びM色用のラインヘッドも、この例におけるC色用のラインヘッドと同様に補正することができる。
【0098】
図13に示すように、第1のラインヘッド(K色)及び第2のラインヘッド(C色)に位置誤差及び傾き誤差がない場合には、これらラインヘッドK、Cにより印刷したK色の直線及びC色の直線のいずれにも、位置ずれも傾きも生じない。
【0099】
図14は、位置誤差及び傾き誤差がある場合の検出パターン(a)及びヘッドモジュールの配置を示す図(b)である。
【0100】
図14に示すように、隣接するヘッドモジュールK-1、K-2の境界部に位置誤差があり、ヘッドモジュールK-2~K-4の範囲では、境界部に位置誤差はないが、ヘッドモジュールK-3が他のヘッドモジュールK-2,K-4に対して傾いている場合について説明する。K色直線には、これら位置ずれ及び傾きに相当する位置誤差及び傾き誤差が現れている。
【0101】
ヘッドモジュール及びラインヘッドの実装時の位置調整により、±0.2mm以下の位置精度を実現することが可能であるが、図14に示す隣接するヘッドモジュールK-1、K-2間のように、ヘッドモジュールの境界部に位置誤差があり、その位置にハーフトーンスクリーンのような規則的なパターンを印刷する場合には、位置誤差が微細(例えば0.05mm程度)であっても、規則性が崩れるために視認されやすい。また、図14に示すC色-K色間のように、異なる色間で位置誤差がある場合には、その差が微細(例えば0.1mm程度)であっても、印刷された画像上では色ずれとして視認される。
【0102】
一方、図14に示す他のヘッドモジュールK-2、K-4に対してヘッドモジュールK-3が傾いているような場合には、各ヘッドモジュールK-2、K-3、K-4により記録される直線(それぞれ約70mm)に対して、実装位置精度に相当するする傾きは、ほぼ視認されない。
【0103】
図15は、位置誤差を補正したK色直線(a)及び位置誤差と傾き誤差を補正したC色直線(b)である。
【0104】
そこで、第1のラインヘッド(K色)については、図15(a)に示すように、ヘッドモジュールの位置誤差のみを補正して、ヘッドモジュールの境界部においてK色直線に段差が生じないように「つなぎ補正」を行い、第2のラインヘッド(C色)については、図15(b)に示すように、ヘッドモジュールの位置誤差及び傾き誤差を補正して、第1のラインヘッド(K色)を基準として「色ずれ補正」を行うことが好ましい。
【0105】
上述のように、この記録位置補正方法、画像記録装置及び記録位置補正プログラムにおいては、同一のラインヘッド内の各ヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4が記録する画像間のつながりを実現する補正と、異なるラインヘッドの対応するヘッドモジュールY-1~4、M-1~4、C-1~4、K-1~4が記録する画像間の記録位置の一致を実現する補正(色ズレ補正)とを両立することができる。
【0106】
〔位置誤差及び傾き誤差の具体的な数値の補正〕
以下、具体的な数値を挙げつつ位置補正及び傾き誤差の手順を説明する。なお、説明中の数値は例示であり、発明を限定する数値ではない。本実施形態では、ラインヘッド毎の位置基準を、記録媒体Pの幅方向中央位置としている。
【0107】
この例では、基準となる第1のラインヘッドをK色用とし、第2のラインヘッドをC色用として説明する。Y色用及びM色用のラインヘッドも、この例におけるC色用のラインヘッドと同様に補正することができる。
【0108】
まず、〔表1〕に示すように、第1のラインヘッド(K色)の隣接するヘッドモジュール(HM)間の位置誤差を検知する。
【表1】
【0109】
次に、〔表2〕に示すように、第2のラインヘッド(C色)の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差を検知する。
【表2】
【0110】
〔表3〕に示すように、第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差を検知する。
【表3】
【0111】
〔表3〕の検知値を用いて、〔表4〕に示すように、位置誤差の大きい方を「C傾き基準点」として「C傾き誤差」に換算する。
【表4】
【0112】
〔表4〕の数値から、〔表5〕に示すように、「C傾き誤差」を相殺する補正量を決定する。
【表5】
【0113】
〔表6〕に示すように、〔表5〕の補正量に基づく補正結果を用いて、〔表2〕の「第2のラインヘッド(C色)の隣接ヘッドモジュール間の位置誤差(検知値)」を補正する。この補正は、C色右端換算傾き(表5-C-1右端~C-3右端)を位置誤差(表2)から減算し、C色左端換算傾き(表5-C-2左端~C-4左端)を位置誤差(表2)に加算する。
【表6】
【0114】
〔表7〕に示すように、〔表5〕の補正量に基づく補正結果を用いて、〔表3〕の「第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差(検知値)」を補正する。この補正は、C色左右端の補正量(表5-C-1左端~C-4左端、C-1右端~C-4右端)をそれぞれ位置誤差(表3)に加算する。
【表7】
【0115】
このような「第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差」の補正の結果、ヘッドモジュール左右端の位置誤差が同一となり、左右端の区別なくヘッドモジュール毎に一意の「第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差」となる。
【0116】
左右端の区別がないので、〔表8〕に示すように、C色傾き補正(表5)を反映した「第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差」が求められる。
【表8】
【0117】
〔表1〕の「第1のラインヘッド(K色)の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差(検知値)」と、〔表6〕の「第2のラインヘッド(C色)の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差(C傾き誤差(表5)を反映した補正値)」と、〔表8〕の「第1のラインヘッド(K色)と第2のラインヘッド(C色)との色間の位置誤差(C傾き補正(表5)を反映した補正値)」とから、各ヘッドモジュールについて画像記録タイミングの補正量を決定する。
【0118】
〔画像記録タイミングの補正量の決定手順(1)〕
〔表9〕に示すように、〔表1〕の位置誤差(検知値)から、ヘッドモジュールK-3を基準位置として、他のヘッドモジュールK-1、K-2、K-4の位置誤差を求める。
【表9】
【0119】
〔表10〕に示すように、〔表6〕の位置誤差(補正値)から、ヘッドモジュールC-3を基準位置として、他のヘッドモジュールC-1、C-2、C-4の位置誤差を求める。
【表10】
【0120】
〔表11〕に示すように、〔表10〕の位置誤差に、〔表8〕のC傾き補正を反映して補正したヘッドモジュールC-3、K-3間の色間の位置誤差を加算し、ヘッドモジュールK-3を基準とする第2のラインヘッド(C色)の各ヘッドモジュールC-1、C-2、C-3、C-4の位置誤差を求める。
【表11】
【0121】
〔表12〕に示すように、〔表9〕及び〔表11〕から、ヘッドモジュールK-3を基準とする位置誤差を相殺するように、各ヘッドモジュールK-1、K-2、K-4、C-1、C-2、C-3、C-4の画像記録タイミングの補正量を決定する。
【表12】
【0122】
実際に設定可能な補正量は、ライン単位の整数値であるので、ここで決定した画像記録タイミングの補正量が整数値でない場合には、最も近い整数値を補正量として採用する。
【0123】
〔画像記録タイミングの補正量の決定手順(2)〕
〔表13〕に示すように、〔表1〕の位置誤差(検知値)から、ヘッドモジュールK-3を基準位置として、他のヘッドモジュールK-1、K-2、K-4の位置誤差を求める。
【表13】
【0124】
〔表14〕に示すように、〔表8〕の色間の位置誤差(補正値)に〔表13〕の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差をそれぞれ加算すると、ヘッドモジュールK-3を基準位置とする第2のラインヘッド(C色)の各ヘッドモジュールC-1、C-2、C-3、C-4の位置誤差が求められる。
【表14】
【0125】
〔表15〕に示すように、〔表13〕及び〔表14〕から、ヘッドモジュールK-3を基準とする位置誤差を相殺するように、各ヘッドモジュールK-1、K-2、K-4、C-1、C-2、C-3、C-4の画像記録タイミングの補正量を決定する。
【表15】
【0126】
実際に設定可能な補正量は、ライン単位の整数値であるので、ここで決定した画像記録タイミングの補正量が整数値でない場合には、最も近い整数値を補正量として採用する。
【0127】
〔記録位置補正方法の動作〕
図17は、位置誤差及び傾き誤差の補正手順を示すフローチャートである。
【0128】
この画像記録装置1において記録位置補正方法を実行すると、図17に示すように、S1で記録位置補正を開始し、S2で検知チャートを印刷し、S3に進む。
【0129】
S3では、検知チャートを読取り、S4に進む。S4では、検知パターンを切り出し、誤差検知を開始して、S5に進む。S5では、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールの傾き補正量を算出し、S6に進む。S6では、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールによる記録画像データの傾き補正を行って、S7に進む。S7では、位置誤差の検知値を補正し、S11又はS21に進む。
【0130】
S8では、画像記録タイミングの補正量を決定し、S9に進んで終了する。
【0131】
S11では、ヘッドモジュール間の位置誤差の算出を開始し、S12に進む。S12では、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)内の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差を算出し、S13に進む。S13では、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の代表ヘッドモジュールの色間の位置誤差を加算し、S8に進む。
【0132】
S21では、ヘッドモジュール間の位置誤差の算出を開始し、S22に進む。S22では、第1のラインヘッド(K色)内の隣接するヘッドモジュール間の位置誤差を算出し、S23に進む。S23では、第2のラインヘッド(Y色、M色、C色)の各ヘッドモジュールの色間の位置誤差を加算し、S8に進む。
【符号の説明】
【0133】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
20 画像形成部
21 搬送ドラム
23 用紙加熱部
24 インクジェットヘッド
25 定着部
27 用紙センサ
28 インラインセンサ
30 排紙部
40 制御部
50 インク供給部
406 画像処理部
407 画像記録制御部
409 機構制御部
Y 第2のラインヘッド
Y-1~4 ヘッドモジュール
M 第2のラインヘッド
M-1~4 ヘッドモジュール
C 第2のラインヘッド
C-1~4 ヘッドモジュール
K 第1のラインヘッド
K-1~4 ヘッドモジュール
P 記録媒体
X 幅方向
Y 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16