(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】布帛印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06H 1/02 20060101AFI20221213BHJP
B41M 1/26 20060101ALI20221213BHJP
D06B 1/12 20060101ALI20221213BHJP
D06B 3/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
D06H1/02
B41M1/26
D06B1/12
D06B3/18
(21)【出願番号】P 2019030319
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】出田 康平
(72)【発明者】
【氏名】油 努
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-247837(JP,A)
【文献】特開2017-171907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176184(US,A1)
【文献】特開2018-038575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 1/00- 7/24
D06B 1/00-23/30
B41M 1/00- 3/18,
7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド印刷により布帛に視覚情報層を印刷する布帛印刷物の製造方法であって、
布帛の平面空隙率が20%以下であり、視覚情報層の少なくとも一部分は該布帛に含浸され、
平面空隙率が0%以上3%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2400μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が3%以上5%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2200μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が5%以上13%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2000μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が13%以上15%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2600μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が15%以上20%である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが3000μm以上4000μm以下である、
布帛印刷物
の製造方法。
【請求項2】
前記布帛が編物、織物、および不織布の中から選ばれる請求項1に記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項3】
前記布帛の厚みが1000μm以下である請求項1または2に記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項4】
前記平面空隙率が
13%以上20%以下である請求項1~3いずれかに記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項5】
前記布帛がポリエステル系繊維を含む請求項1~4のいずれかに記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項6】
前記布帛が衣類である請求項1~5のいずれかに記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項7】
前記視覚情報層がポリエステル樹脂を含む請求項1~6のいずれかに記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項8】
前記視覚情報層が、ウレタン結合および尿素結合のうち少なくとも一方を有する、請求項1~7のいずれかに記載の布帛印刷物
の製造方法。
【請求項9】
樹脂印刷版を用いる請求項1~8のいずれかに記載の布帛印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂印刷版の凹部に網点を有する樹脂印刷版を用いる請求項9に記載の布帛印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視覚情報層を有する布帛印刷物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の布帛には製造元、サイズ、素材、製品名、取り扱い上の注意情報など多様な視覚情報が表示されている。情報表示方法としては、情報が記載されたタグを縫い付ける方法が一般的ではあるが、タグが直接肌に触れるインナーウェアなどでは、着用者を刺激する恐れがあるため、着心地を重視し、タグを用いず布帛上に直接情報表示する方法が提案されている。このような布帛上に直接情報表示する方法としては、特許文献1に示すような昇華型感熱転写プリンター、特許文献2に示す熱転写ラベル、特許文献3に示すパッド印刷による方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-321133号公報
【文献】特開2007-276486号公報
【文献】米国特許第7,498,277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は視覚情報を視認性よく印字するにはある程度の大きさが必要であり、それゆえ限られた範囲内に多くの視覚情報を表示することができなかった。特許文献2に記載の技術は細かい視覚情報の視認性は問題ないが、転写シールを使用するためコストがかさむこと、転写する際に100℃以上の熱をかけるため適用できない繊維があること、シール部分が肌に当たると肌に張り付き違和感を与えるなどの問題があった。特許文献3に記載の技術は細かい視覚情報を低コストで表示できるが、布帛の種類によっては視認性が低下するため、視覚情報を大きくする必要があった。
【0005】
そこで本発明は、視覚情報の視認性を維持しつつ、限られた範囲内に多くの情報を表示可能な、肌への違和感のない布帛印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パッド印刷により布帛に視覚情報層を印刷する布帛印刷物の製造方法であって、布帛の平面空隙率が20%以下であり、視覚情報層の少なくとも一部分は該布帛に含浸され、
平面空隙率が0%以上3%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2400μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が3%以上5%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2200μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が5%以上13%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2000μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が13%以上15%未満である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが2600μm以上4000μm以下であり、
平面空隙率が15%以上20%である場合、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが3000μm以上4000μm以下である、
布帛印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、視覚情報の視認性を維持しつつ、限られた範囲内に多くの情報を表示可能な、肌への違和感のない布帛印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明における視覚情報のサイズの定義を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0010】
本発明において、布帛は、平面空隙率が20%以下であることが必要である。ここで言う平面空隙率は、次の方法で求めることができる。まず、視覚情報層を印刷する布帛上の任意の領域を光学顕微鏡であるデジタルマイクロスコープ“VHX-2000”((株)キーエンス製)を用い、レンズZ20、倍率30倍、透過光量1/4目盛の条件で透過光画像を撮影する。次に、画像をグレースケールに変換し、さらに画像解析ソフト“ImageJ”(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、Threshold条件をAuto、Dark Backgraound、Analyze条件をAnalze particle、Sizeを5-Infinite、Circularityを0.00-1.00として光透過部分の面積を計測する。レンズZ20、倍率30倍、透過光量1/4目盛の条件で撮影した透過光画像において、任意の5点を選択し、各点について下記式を用いて平面空隙率を算出する。それらの相加平均値を、本発明における平面空隙率とする。
【0011】
平面空隙率(%)=光透過部分の合計面積(pixel)/測定全画面面積(pixel)×100
平面空隙率は、視覚情報の視認性の観点から好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは13%以下である。平面空隙率を下げることで布帛表面が緻密になり、背面が透けて見えなくなるため、視覚情報の視認性が向上する。また視覚情報の視認性の観点から好ましくは0%以上でありより好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。平面空隙率を上げることで布帛表面が粗になり、印刷時のインク滲みによる文字潰れを防止できる。
【0012】
本発明に係る布帛印刷物は、視覚情報層を有する。本発明において、視覚情報とは文字、数字、記号、コードの視覚に訴える情報をいう。例えば、トレードマーク、サービスマーク、ハウスマーク、屋号、キャラクターを表示する文字、画像(絵)、ワンポイントマーク、ブランドマーク、団体を表示するマークや文字、模様、品質表示マーク、取扱法表示マーク、製造ロット番号、“QRコード”(登録商標)等の視覚に訴えることのできる文字、画像、マーク、デザイン、模様などが付与されていることをいう。また、本発明における視覚情報は、品質表示マーク、取扱法表示マーク、製造ロット番号、“QRコード”(登録商標)を含むものであることが好ましい。また、視覚情報層とは、そのような視覚情報を含む層をいう。
【0013】
本発明において、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは600μm以上、4000μm以下である必要がある。文字、数字、記号またはコードのサイズとは、
図1に示すように、視覚情報1を囲む4つの角が全て等しい四角形(以下、四角形という)の長辺3の長さで規定する。ここで、視覚情報を囲む四角形の各辺は、視覚情報の接線である。視覚情報の接線とは、少なくとも一点以上、視覚情報と接点を有するものである。
図1では、四角形の各辺が、視覚情報とP
1~P
4で表す接点を1つずつ有する。
【0014】
視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは、視覚情報を視認する観点から、600μm以上が好ましく、より好ましくは1400μm以上である。また、本発明に係る布帛印刷物がより多くの視覚情報を有することができる観点から、4000μm以下が好ましく、より好ましくは3500μm以下、さらに好ましくは3000μm以下である。
【0015】
本発明において、視覚情報層は少なくとも一部分が布帛に含浸されている必要がある。ここで言う含浸とは、布帛に視覚情報層が、フィルムや接着剤などを間に介在させることなく接着しているか、または染み込んでいることをいう。視覚情報層が布帛に含浸されていることで、洗濯や摩擦に対する耐久性を向上させる。
【0016】
平面空隙率と視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは、次の関係を満たすことが好ましい。すなわち、平面空隙率が15%以上20%以下であれば、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは2200μm以上4000μm以下が好ましく、2600μm以上4000μm以下がより好ましく、3000μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0017】
平面空隙率が13%以上15%未満であれば、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは1400μm以上4000μm以下が好ましく、2000μm以上4000μm以下がより好ましく、2600μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0018】
平面空隙率が5%以上13%未満であれば、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは600μm以上4000μm以下が好ましく、1400μm以上4000μm以下がより好ましく、2000μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0019】
平面空隙率が3%以上5%未満であれば、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは800μm以上4000μm以下が好ましく、1600μm以上4000μm以下がより好ましく、2200μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0020】
平面空隙率が0%以上3%未満であれば、視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズは1000μm以上4000μm以下が好ましく、1800μm以上4000μm以下がより好ましく、2400μm以上4000μm以下がさらに好ましい。平面空隙率と視覚情報層を構成する文字、数字、記号またはコードのサイズが上記のような関係を満たす場合、視覚情報の視認性の向上と、視覚情報層により多くの情報を有することが両立可能となる点で好ましい。
【0021】
本発明において、布帛は、常法に従って布帛を製造することによって得られ、織物、編物もしくは不織布のいずれであってもよく、例えば、織り・編みこんだ交編織編地の布帛であってもよい。
【0022】
織物の組織は、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織などの変化組織、蜂の巣織、模紗織、梨地織などの特別組織、たて二重織、よこ二重織などの片二重組織、風通織、袋織、二重ビロード、タオル、シール、ベロア等のたてパイル織、別珍、よこビロード、ベルベット、コール天などのよこパイル織、絽、紗、紋紗等のからみ組織などが好ましい。また、製織は有杼織機(フライシャットル織機等)または無杼織機(レピア織機、グリッパー織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機等)等によって行われるのが好ましい。
【0023】
編物の種類は、よこ(緯)編物であってもよく、また、たて(経)編物等であってもよい。編物の組織は、よこ編は、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、レース編、添毛等が好ましく、たて編は、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャカード編等が好ましい。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。また、製編は、丸編機、横編機、コットン式編機のような平型編機、トリコット編機、ラッシェル編機、ミラニーズ編機等によって行われるのが好ましい。
【0024】
本発明において、布帛は、織物または編物が好ましく、編物がさらに好ましい。
【0025】
また、本発明において、布帛は、布帛を構成する繊維が複数色の繊維を含む布帛であってもよい。具体的な例としては、木目のように濃い色と薄い色が混ざり合った生地が好ましく、例えば、白色繊維と黒色繊維を含む布帛で、杢布帛が知られている。繊維には、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸を用いることができ、このような布帛としては、杢布帛がある。
【0026】
本発明において、布帛は、ポリエステル系繊維を用いることができる。ポリエステル系繊維にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等いずれを使用しても良いが、ポリエチレンテレフタレート系繊維は良好な風合い、光沢を有し、またしわになりにくいなどのイージーケア性があり、伸縮性を有する布帛を構成する繊維素材として好適である。また、ポリエチレンテレフタレート系繊維は、ポリウレタンウレア弾性繊維との組合せで用いる場合に好適であって、良好なストレッチ布帛とすることが可能である。ポリエステル系繊維は一般に分散染料を用いて染められるが、分散染料は色移り等堅牢度不良を発生させることがある。そのためカチオン染料で良好に染色することの出来るカチオン可染ポリエステル系繊維を用いることが好ましい。また布帛の厚みは、風合いとストレッチ性の観点から1000μm以下であることが好ましい。
【0027】
本発明において、布帛は衣類として用いられることが好ましい。例えば製造元、サイズ、素材、製品名、取り扱い上の注意情報など多様な視覚情報を直接、衣類に印刷する方式への適用があげられる。本発明を用いることで、細かい視覚情報を視認可能な印刷物を提供することができる。
【0028】
また、視覚情報層はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂は、ポリエステル系繊維を含む布帛との密着性が良好で、視覚情報層の洗濯や摩擦に対する耐久性を向上させる。また、硬化剤を含むことで、さらに視覚情報層の洗濯や摩擦に対する耐久性を向上させるため好ましい。視覚情報層に含まれる硬化剤には制限はないが、イソシアネート化合物が好ましく用いられる。イソシアネート化合物は架橋により、ウレタン結合および/または尿素結合による架橋構造を形成し、視覚情報層の耐久性をより強化することができる。視覚情報層は、ウレタン結合および尿素結合のうち少なくとも一方を有することが好ましい。
【0029】
次に本発明の布帛印刷物の製造方法について説明する。
【0030】
本発明に係る布帛印刷物は、布帛上に視覚情報層を構成する文字、数字、記号もしくはコードを印刷することで製造する。印刷方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷することによって形成可能だが、細かい視覚情報を印刷する観点からパッド印刷が好ましい。パッド印刷は、(i)樹脂印刷版の版面上にインクを載せ、(ii)金属製のドクター刃で掻き取ること、もしくは、ドクター刃の役割をするリング状のセラミックス製または特殊金属製エッジ付きインクカップの中にインクを入れて版面上をインクカップで掻き取ることによって、(iii)樹脂印刷版の凹部にインクを充填し、そのインクをシリコーンゴムなどの柔軟なパッド面に転写させ、(iv)該パッドのインク付着面を被印刷体に圧着することによって印刷するオフセット印刷の一種である。印刷速度が他方式よりも早いこと、インクの乾燥速度を調整することでにじみのない印刷物を作製できるため、パッド印刷が好ましく用いられる。
【0031】
パッド印刷で用いられる樹脂印刷版は、下記樹脂印刷版に限定されないが、(a)炭素鋼などをエッチングして作製した金属製の印刷版、(b)樹脂および顔料を含む樹脂層をレーザー彫刻により凹部を形成した樹脂印刷版、または(c)感光性樹脂層を露光現像により凹部を形成した樹脂印刷版を用いることができる。
【0032】
このうち、感光性樹脂層から形成した樹脂印刷版は、原画に対して、凹部の線巾の精度が高く、再現性の高い視認性の良好な印刷物を与えることができるため好ましい。このような樹脂印刷版に用いられる感光性樹脂層は、少なくともバインダーポリマー、エチレン性二重結合を有する化合物、および光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物から形成されることが好ましい。このような感光性樹脂層を有する印刷版材としては、感光性樹脂凹版“PU52LR”(東レ(株)製)などが知られている。
【0033】
なお、樹脂印刷版の凹部には網点を有する印刷版を用いることが好ましい。凹部に網点を有することで、樹脂印刷版の版面上にインクを載せ、金属製のドクター刃で掻き取る際に、インクの掻き取りムラを防止することができるため、均一な色の印刷層を形成することが可能となる。
【0034】
また、樹脂印刷版の凹部に設けられた網点の頂部と深さ方向の最深部の高低差が40~120μmである樹脂印刷版を用いることが好ましい。40μm以上であることで、十分な濃度の印刷層を形成することができ、120μm以下であることで、布帛にパッド印刷した際に、布帛へのインクの転移量が多すぎず、布帛の裏側にインクが裏移りするのを防止することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、以下に記載する実施例3~4、6、8は比較例に読み替えるものとする。
【0036】
[評価方法]
実施例1:
(1)布帛の平面空隙率
光学顕微鏡であるデジタルマイクロスコープ“VHX-2000”((株)キーエンス製)を用い、視覚情報層を印刷する布帛上の任意の領域をレンズZ20、倍率30倍、透過光量1/4目盛の条件で布帛の透過光画像を撮影した。次に画像をグレースケールに変換し、さらに画像解析ソフト“ImageJ”(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、Threshold条件をAuto、Dark Backgraound、Analyze条件をAnalze particle、Size(pixel)を5-Infinite、Circularityを0.00-1.00として光透過部分の面積を計測した。計測した値を下記式で計算し、平面空隙率を算出した。表2には、レンズZ20、倍率30倍、透過光量1/4目盛の条件で撮影した透過光画像における、任意の5点について、下記式を用いて算出した平面空隙率の相加平均値を示す。
平面空隙率(%)=光透過部分の合計面積(pixel)/測定全画面面積(pixel)×100
(2)視覚情報の視認性
ブラックカーボンフィルムTK100((株)タカノ機械製作所製)を赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基材側がドラムに接するように装着した。レーザー出力9kW、ドラム回転数400rpmの条件で、表1に示す原画部に網点を有するテストパターンを描画し、ポジフィルム1~6を作製した。
【0037】
7cm×14cmの感光性樹脂印刷版原版“PU52LR”(東レ(株)製)からカバーフィルムのポリエステルフィルムのみを剥離した(剥離後の感光性樹脂印刷版原版の最表面は乾燥膜厚1μmの剥離補助層)。次に、表1のポジフィルム1を真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL-36020ワット(三菱電機オスラム(株)製)でグレースケール感度13±1段となる条件で露光し(主露光)、7cm×14cmの感光性樹脂層の全面を光硬化した。その後、液温25℃のエタノール水溶液(エタノール/水=80/20)でブラシ式現像装置により1分間現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL-36020ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、凹版印刷版1を得た。凹版印刷版1を、hermetic6-12 universal(TAMPOPRINT社製、パッド印刷機)に装着し、URETHANE2502 EO BLACK(EPTA社製)1g、URETHANE2501 L WHITE(EPTA社製)19gを混合した後、硬化剤HARDENERN.2(EPTA社製)3gを添加したインクを用いて、1回スキージした。その後、凹版印刷版1をパッドに転写し、表2に示す布帛に印刷した。なお、ポジフィルム1は、本明細書で定義した文字サイズが2700μmとなる文字“あ”が10個並ぶように設計されたものである。また網点の頂部と深さ方向の最深部の高低差が60μmとなるように設計されている。
【0038】
布帛に印刷された視覚情報の視認性は、5人の判定者が目視で確認した。判定者は矯正視力を含む両眼の測定の視力0.7以上で、サンプルと目との距離は50cmとした。各判定者は布帛に印刷された10個の文字を読み、すべて読めた場合を視認できたとした。判定の基準は以下の通りである。
A: 視認できた人数が5人
B: 視認できた人数が3~4人
C: 視認できた人数が1~2人
D: 視認できた人数が0人。
【0039】
実施例2~8
製版部材であるポジフィルム、印刷する布帛を表2の実施例2~8のとおり変更した以外は実施例1と同様にして布帛印印刷物を作製した。評価結果を表2に示す。
【0040】
比較例1~2
製版部材であるポジフィルム、印刷する布帛を表2の比較例1~2のとおり変更した以外は実施例1と同様にして布帛印印刷物を作製した。評価結果を表2に示す。
【0041】
【0042】
【符号の説明】
【0043】
1 視覚情報
2 長方形の短辺
3 長方形の長辺
P1、P2、P3、P4 視覚情報と長方形の接点