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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3822 20150101AFI20221213BHJP
【FI】
H04B1/3822
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019036154
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141287
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-12-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敏之
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232949(JP,A)
【文献】特開2004-032156(JP,A)
【文献】特開2014-239345(JP,A)
【文献】特開2015-046789(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032813(WO,A1)
【文献】特開2013-223166(JP,A)
【文献】特開2006-279629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の外部との通信を行う車両用無線通信装置(1)であって、
電波を送信する機能を有する電波送信部(33)と、
電波を受信する機能を有する電波受信部(33)と、
測位を行う機能を有する測位部(34)と、
当該車両用無線通信装置の温度を取得するように構成された温度取得部(S110)と、
前記温度に応じて、前記電波を送信する機能、前記電波を受信する機能、及び前記測位を行う機能のうちの複数の機能を抑制し、或いは抑制した機能を復帰させるように構成された機能制御部(S130,S240)と、
を備え、
前記機能制御部は、前記温度に応じて前記複数の機能を抑制するように構成され、
前記機能制御部は、前記複数の機能を順に抑制し、この際、1つの機能を抑制する度に、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、別の1つの機能を抑制するように構成され、
前記機能制御部は、前記複数の機能を抑制する際に、前記電波を送信する機能、前記電波を受信する機能、前記測位を行う機能の順で、機能を抑制する
ように構成された車両用無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用無線通信装置であって、
前記機能制御部は、前記温度に応じて複数の機能を復帰させるように構成され、
前記機能制御部は、複数の機能を順に復帰させ、この際、1つの機能を復帰させる度に、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、別の1つの機能を復帰させる
ように構成された車両用無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用無線通信装置であって、
前記機能制御部は、前記温度に応じて前記複数の機能を抑制するように構成され、
前記複数の機能が抑制される際に、前記車両の乗員に報知を行うように構成された報知部(S160)、
をさらに備える車両用無線通信装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の車両用無線通信装置であって、
前記機能制御部は、前記温度に応じて前記複数の機能を抑制するように構成され、
前記機能制御部は、前記温度が予め設定された抑制閾値以上であり、かつ前記温度の変化率が正である場合に、前記複数の機能を抑制し、前記温度が前記抑制閾値未満である、或いは前記温度の変化率が正でない場合に、前記複数の機能を抑制しない
ように構成された車両用無線通信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の車両用無線通信装置であって、
前記機能制御部は、前記温度に応じて前記複数の機能を復帰させるように構成され、
前記機能制御部は、前記温度が予め設定された復帰閾値未満であり、かつ前記温度の変化率が負である場合に、抑制している複数の機能を復帰させ、前記温度が前記復帰閾値以上である、或いは前記温度の変化率が負でない場合に、前記抑制している複数の機能を復帰させない
ように構成された車両用無線通信装置。
【請求項6】
請求項を引用する請求項に記載の車両用無線通信装置であって、
前記抑制閾値は、前記復帰閾値よりも高い温度に設定される
車両用無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の外部との通信を行う車両用無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用無線通信装置において、温度及び日照量に応じて通信の際の送信電力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6160246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、車両用無線通信装置の小型軽量化が求められている。また、車両用無線通信装置の機能が増加し、消費電力は増加傾向にある。発明者の詳細な検討の結果、このような事情を鑑みると、送信電力を抑制するだけでは車両用無線通信装置の温度を管理しきれない場合があるという課題が見出された。
【0005】
本開示の1つの局面は、車両の外部との通信を行う車両用無線通信装置において、車両用無線通信装置の温度を良好に管理できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両に搭載され、当該車両の外部との通信を行う車両用無線通信装置(1)である。車両用無線通信装置は、電波送信部(33)と、電波受信部(33)と、測位部(34)と、温度取得部(S110)と、機能制御部(S130,S240)と、を備える。
【0007】
電波送信部は、電波を送信する機能を有する。電波受信部は、電波を受信する機能を有する。測位部は、測位を行う機能を有する。温度取得部は、当該車両用無線通信装置の温度を取得するように構成される。機能制御部は、温度に応じて、電波を送信する機能、電波を受信する機能、及び測位を行う機能のうちの複数の機能を抑制し、或いは抑制した機能を復帰させるように構成される。
【0008】
このような構成によれば、温度に応じて、電波を送信する機能だけでなく、電波を受信する機能、又は測位を行う機能についても抑制し、或いは抑制した機能を復帰させることができる。このように、複数の機能を抑制又は復帰させることで、車両用無線通信装置による消費電力の増減による発熱量を制御できるので、車両用無線通信装置の温度を良好に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】温度保護処理の一部を示すフローチャートである。
図3】タスク停止順の一例を示すリストである。
図4】温度保護処理の他の一部を示すフローチャートである。
図5】温度変化と閾値との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の一態様の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
本開示が適用された車両用無線通信装置1は、乗用車等の車両に搭載され、当該車両の外部との通信を行う装置である。特に、車両用無線通信装置1は、車両内外の何らかの機器と通信を行うV2X(Vehicle to X)サービスを行う際に用いられる。
【0011】
車両用無線通信装置1は、電波を送信する機能、電波を受信する機能、車両の内部で通信する機能、及び測位を行う機能を備える。車両用無線通信装置1は、例えば、1つのモジュール部品として構成され、小型軽量化されている。
【0012】
車両用無線通信装置1は、小型軽量化されると、表面積が小さくなり放熱しにくくなる傾向があり、温度管理が難しくなることが一般的である。しかし、本実施形態の車両用無線通信装置1では、温度を監視しつつ、車両用無線通信装置1が有する複数の機能を、順次、抑制又は復帰させることで、車両用無線通信装置1の機能を極力確保できるようにしている。車両用無線通信装置1の具体的構成の一例を以下に示す。
【0013】
図1に示す車両用無線通信装置1は、メインマイコン10と、RFIC33と、GNSSIC34とを備える。また、車両用無線通信装置1は、サブマイコン20と、電源回路31と、CAN(登録商標、Controller Area Network)トランシーバ32と、温度センサ36と、複数のパワーアンプ41A,41Bと、を備えてもよい。また、複数のローノイズアンプ42A,42B,51と、複数のスイッチ43A,43Bと、を備えてもよい。
【0014】
電源回路31は、車両用無線通信装置1を構成する各構成要素に電力を供給する回路である。電源回路31は、例えば、サブマイコン20が起動すると、その旨の信号を受け、電力の供給を開始するよう構成される。
【0015】
CANトランシーバ32は、車内LANの通信線を介して車両内の他の通信装置と通信を行うトランシーバである。CANトランシーバ32は、他の通信装置の1つとして、ディスプレイユニット35と通信可能に構成される。ディスプレイユニット35は、車両用無線通信装置1から、警告に関する表示画像の表示であるコーション表示を行うよう指示を受けると、コーション表示を行い、コーション表示を中止するよう指示を受けるとコーション表示を終了する。
【0016】
RFIC33は、Radio Frequency Integrated Circuitの略であり、RF帯の信号を処理する集積回路である。RFIC33は、電波を送信する機能、及び電波を受信する機能を有する。
【0017】
詳細には、RFIC33は、DSRC-V2X(登録商標、Dedicated Short Range Communications Vehicle to Everythingの略)あるいはC-V2X(CELLULAR-V2Xの略)に適応した電波の送受信を、複数の系統を利用して行うダイバーシチ機能を有する。すなわち、RFIC33は、2つのパワーアンプ41A,41Bに対して送信すべき信号を出力し、2つのパワーアンプ41A,41Bがこの信号を増幅して、2つのアンテナ44A,44Bからそれぞれ電波を放射する。
【0018】
また、2つのアンテナ44A,44Bにて受信した電波は、2つのローノイズアンプ42A,42Bでそれぞれ増幅され、RFIC33に送られる。なお、ローノイズアンプ42A,42Bは、信号を増幅する機能と、ノイズを除去するフィルタとしての機能とを有する。
【0019】
また、2つのアンテナ44A,44Bは、複数のスイッチ43A,43Bで接点が切り替えられることで、パワーアンプ41A,41B又はローノイズアンプ42A,42Bに接続される。つまり、2つのアンテナ44A,44Bは、複数のスイッチ43A,43Bで接点が切り替えられることで、電波の送信に用いられるか、電波の受信に用いられるかが切り替えられる。
【0020】
GNSSIC34は、人工衛星からの信号に基づいて測位を行う機能を有する。車両用無線通信装置1では、GNSS(全球測位衛星システム:Global Navigation Satellite System)アンテナ54にて得られた信号を、ローノイズアンプ51にて増幅し、GNSSIC34に入力する。GNSSIC34は、信号処理を行うことで車両の現在地を演算し、メインマイコン10に対して出力する。
【0021】
温度センサ36は、車両用無線通信装置1内の構成要素のうちの比較的発熱量が大きいメインマイコン10に隣接して配置される。なお、温度センサ36は、メインマイコン10以外であっても、比較的発熱量が大きい構成要素の付近に配置されてもよい。温度センサ36による検知結果は、サブマイコン20を介してメインマイコン10に入力される。
【0022】
メインマイコン10及びサブマイコン20は、それぞれ、CPU11,21と、例えば、ROM12,22及びRAM13,23等の半導体メモリと、を有するマイクロコンピュータを備える。メインマイコン10及びサブマイコン20の各機能は、CPU11,21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、半導体メモリが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、非遷移的実体的記録媒体とは、記録媒体のうちの電磁波を除く意味である。また、メインマイコン10及びサブマイコン20は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0023】
メインマイコン10は、後述する温度保護処理を実行するようにプログラムされる。サブマイコン20は、温度センサ36及びCANトランシーバ32とメインマイコン10との間でやり取りされるデータを中継する機能を備える。また、サブマイコン20は、メインマイコン10の機能の一部を担い、或いはメインマイコン10の機能を補完するように構成されてもよい。
【0024】
メインマイコン10及びサブマイコン20に含まれる各部の機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は、デジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0025】
[1-2.処理]
次に、メインマイコン10、特にCPU11が実行する温度保護処理について、図2及び図4のフローチャートを用いて説明する。温度保護処理は、温度に応じて、車両用無線通信装置1が有する複数の機能を抑制し、或いは抑制した機能を復帰させる処理である。温度保護処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始される。なお、後述するポインタpの初期値は0に設定される。
【0026】
温度保護処理では、まず、S110で、メインマイコン10は、温度センサ36にて検知された当該車両用無線通信装置1の温度を取得し、温度が条件Aを満たすか否かを判定する。ここで、条件Aは、機能を抑制する際の条件である。具体的に、条件Aは、温度が予め設定された抑制閾値Vthh以上であり、かつ温度の変化率が正であることを示す。
【0027】
温度の変化率が正であるとは、温度が上昇していることを示す。なお、温度センサ36から取得された温度は、RAM13に一時的に格納され、温度の変化率は、過去において取得された温度と最新の温度と差を、これらの温度を検知した時間間隔で除することで求められる。
【0028】
メインマイコン10は、S110で、温度が条件Aを満たさないと判定した場合には、後述するS210へ移行する。一方、メインマイコン10は、S110で、温度が条件Aを満たすと判定した場合には、S120へ移行し、ポインタpの値がPmax以下であるか否かを判定する。ここで、ポインタpは、車両用無線通信装置1が有する複数の機能のうちの、作動している機能、及び抑制されている機能を特定するための値である。
【0029】
ポインタpの値と複数の機能とは、例えば、図3に示すような、タスク停止順リストにて対応付けられている。すなわち、p=0には、「DSRC送信ダイバーシチ機能停止」が対応付けられている。「DSRC送信ダイバーシチ機能停止」とは、DSRCでの電波送信を行う際に、2つのアンテナ44A,44Bから電波を送出する機能を抑制し、2つのアンテナ44A,44Bのうちの一方のみ電波を送出することを示す。
【0030】
このようなダイバーシチ機能停止によって、RFIC33内部における送信ダイバーシチ機能を実現する回路ブロック、或いはソフトウェア処理の作動を停止し、さらに、パワーアンプ41A,41Bのうち1つの作動が停止する。これによって、通信エリアは狭くなるものの送信機能は作動を継続する。
【0031】
また、p=1には、「送信デューティ、送信電力の低減」が対応付けられている。「送信デューティ、送信電力の低減」とは、DSRCでの電波送信を行う際に、送信波のデューティ比、或いは送信電力を低減することを示す。
【0032】
また、p=2には、「DSRC送信機能停止」が対応付けられている。「DSRC送信機能停止」とは、DSRCでの電波送信を停止することを示す。
また、p=3には、「DSRC受信ダイバーシチ機能停止」が対応付けられている。「DSRC受信ダイバーシチ機能停止」とは、DSRCでの電波受信を行う際に、2つのアンテナ44A,44Bから電波を受信する機能を抑制し、2つのアンテナ44A,44Bで受信した電波のうちの一方のみ電波を増幅して信号処理を行うことを示す。
【0033】
なお、電波を受信する機能を抑制するには、DSRC受信ダイバーシチ機能停止に限らず、受信感度の低減、通信エリアの縮小、通信可能な車両台数の低減、単位時間あたりの受信パケット数の低減、等を採用してもよい。
【0034】
また、p=4には、「DSRC受信処理停止、測位機能停止」が対応付けられている。「DSRC受信処理停止、測位機能停止」とは、DSRCでの情報を受信する機能、及びGNSSIC34を用いた測位機能を停止することを示す。特に、測位機能停止では、メインマイコン10の内部で実行している測位処理を停止するとともに、GNSSIC34の電源をOFFするとよい。
【0035】
また、p=5には、「CAN通信機能停止」が対応付けられている。「CAN通信機能停止」とは、CANトランシーバ32を用いた車内通信を停止させることを示す。この際、CANトランシーバ32の電源を切るとともに、メインマイコン10及びサブマイコン20ではCAN送受信に関する機能を停止する。
【0036】
なお、Pmaxは、タスク停止順リストにおけるポインタpの最大値である。本実施形態の場合、Pmaxは、5である。ポインタpの値が大きくなると、そのポインタp以下の値が対応する全ての機能が停止される。例えば、p=2の場合には、p=2が対応する「DSRC送信機能停止」だけでなく、p=1及びp=0が対応する「送信デューティ、送信電力の低減」及び「DSRC送信ダイバーシチ機能停止」が実行される。
【0037】
ここで、図3に示すタスク停止順リストは、下記の設計思想に基づいて、優先順位が設定される。
[1]CAN機能の作動を最高優先度にする。CAN機能を停止させると、当該車両用無線通信装置1と通信する他の通信装置が異常を検知し、通信途絶ダイアグが残ってしまうためである。
【0038】
[2]測位機能の作動を2番目の優先度とする。測位機能が作動しなければV2Xサービスを提供できないためである。
[3]受信機能を3番目の優先度とし、送信機能を4番目の優先度とする。温度が高い状態では異常なデータを送信する可能性が高まるためである。また、送信機能を受信機能よりも優先度を低くするのは、より早い段階で異常なデータを送信する機能を停止するためである。
【0039】
つまり、メインマイコン10は、複数の機能を抑制する際に、電波を送信する機能、電波を受信する機能、測位を行う機能の順で、機能を抑制するように構成される。
図2の説明に戻り、メインマイコン10は、S120でポインタpの値がPmaxよりも大きいと判定した場合には、これ以上抑制できる機能がないため、S110に戻る。一方、メインマイコン10は、S120でポインタpの値がPmax以下であると判定した場合には、S130へ移行し、タスク停止順リストのポインタpが指す機能を停止又は低減させる。
【0040】
S130の処理が何度か実施されることで、メインマイコン10は、温度に応じて、電波を送信する機能、電波を受信する機能、及び測位を行う機能のうちの複数の機能を順に抑制するように構成される。ただし、メインマイコン10は、温度が抑制閾値Vthh未満である、或いは温度の変化率が正でない状態に遷移すれば、さらなる機能の抑制をしない。
【0041】
つまり、メインマイコン10は、1つの機能を抑制した後、温度が抑制閾値Vthh未満であるか、温度が上昇していない状態になれば、既に抑制している機能についてはそのまま抑制した状態を継続し、新たな機能の抑制をしないようにする。
【0042】
続いて、S140で、メインマイコン10は、ポインタpの値をインクリメントする。続いて、S150で、メインマイコン10は、ポインタpの値が1であるか否かを判定する。メインマイコン10は、S150でポインタpの値が1でないと判定した場合には、S170に移行する。
【0043】
一方、メインマイコン10は、S150でポインタpの値が1であると判定した場合には、S160へ移行し、コーション表示開始コマンドをディスプレイユニット35に対して送信する。つまり、メインマイコン10は、複数の機能のうちの何れかが抑制される際に、車両の乗員に、コーション表示による報知を行うように構成される。コーション表示は、通信に関する機能の何れかが抑制されていることを、文字や画像で警告するための表示である。ただし、メインマイコン10は、表示に限らず、警告音や音声で報知してもよい。また、メインマイコン10は、コーション表示で車室内温度を下げる操作を実施することを促すメッセージを表示させてもよい。
【0044】
このように、車両の乗員に対して機能が抑制されること通知することで、車両の乗員に車室内温度を下げる操作、例えばエアコンを入れる、窓を開ける等の操作を促すことができる。この場合、より早く車両用無線通信装置1の温度を低下させることができるので、車両用無線通信装置1の機能をより早く正常復帰させることができる。また、車両用無線通信装置1の各種機能が作動していない場合には、その旨を車両の乗員に通知するので、車両の乗員に対して、車両用無線通信装置1の各種機能が搭載されていない車両と同じような緊張感での運転操作を促すことができる。
【0045】
なお、車両用無線通信装置1の各種機能が抑制された際に、車両の乗員にその旨が通知されない場合、車両の乗員は、車両が故障であると誤認して、カーディーラ等に修理を依頼する可能性がある。本実施形態の構成では、このような通知がない場合に起こる各種の不具合を抑制することができる。
【0046】
続いて、S170で、メインマイコン10は、10秒間待機した後、S110に戻る。つまり、メインマイコン10は、1つの機能を抑制した直後に他の機能が抑制されることがないように、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、必要であれば別の1つの機能を抑制するように構成される。
【0047】
次に図4示すように、S210で、メインマイコン10は、温度が条件Bを満たすか否かであるか否かを判定する。ここで、条件Bは、抑制している機能を復帰させるための条件である。具体的に、条件Bは、温度が予め設定された復帰閾値Vthl未満であり、かつ温度の変化率が負であることを示す。温度の変化率が負であるとは、温度が下降していることを示す。
【0048】
復帰閾値Vthlは、上述の抑制閾値Vthhと同じ値でもよいが、本実施形態では、復帰閾値Vthlは、抑制閾値Vthhよりも低い温度に設定される。換言すれば、本実施形態では、複数の閾値である復帰閾値Vthl及び抑制閾値Vthhに、ヒステリシスを持たせている。このようにするのは、機能が抑制された直後に復帰したり、機能が復帰した直後に抑制されたりすることを防ぐためである。
【0049】
メインマイコン10は、S210で温度が条件Bを満たさないと判定した場合には、抑制している機能を復帰させない。この場合、S110に戻る。一方、メインマイコン10は、S210で温度が条件Bを満たすと判定した場合には、S220へ移行し、ポインタpの値が0であるか否かを判定する。
【0050】
メインマイコン10は、S220でポインタpの値が0であると判定した場合には、S230へ移行し、コーション表示停止コマンドをディスプレイユニット35に送信した後、S110に戻る。コーション表示停止コマンドが送信されると、ディスプレイユニット35でのコーション表示が終了し、警告に関する表示は消灯される。
【0051】
一方、メインマイコン10は、S220でポインタpの値が0でないと判定した場合には、S240へ移行し、タスク停止順リストのポインタp-1が指している機能を再起動する。S220の処理が繰り返して実施されると、メインマイコン10は、温度に応じて、測位を行う機能、電波を受信する機能、及び電波を送信する機能を順に復帰させる。
【0052】
続いて、S250で、メインマイコン10は、ポインタpをデクリメントする。続いて、S260で、メインマイコン10は、10秒間待機した後、S110に戻る。つまり、メインマイコン10は、1つの機能を復帰させる度に、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、別の1つの機能を復帰させるように構成される。
【0053】
[1-3.作動例]
車両用無線通信装置1の作動例を図5に示すグラフを用いて説明する。図5に示すグラフでは、縦軸に温度センサ36による温度、横軸に時間を示している。なお、グラフの左端、つまり、時間が0であるときに、車両用無線通信装置1が作動を開始する。
【0054】
グラフ中の[A]の時間帯では、温度は上昇しているが、温度が抑制閾値Vthhより低い状態である。[A]の時間帯では、メインマイコン10は、S110,S210の処理で否定判定するため、機能抑制も復帰もさせない。
【0055】
次に、グラフ中の[B]の時間帯では、温度が抑制閾値Vthhより高く、かつ上昇している状態を示している。[B]の時間帯では、メインマイコン10は、S110,S120の処理で肯定判定するため、S130の処理で機能を優先度が低い順に抑制する。
【0056】
次に、グラフ中の[C]の時間帯では、温度が復帰閾値Vthlより高く、かつ低下している状態を示している。[C]の時間帯では、メインマイコン10は、S110,S210の処理で否定判定するため、機能抑制も復帰もさせない。
【0057】
次に、グラフ中の[D]の時間帯では、温度がVthlより低く、かつ低下している状態を示している。[D]の時間帯では、メインマイコン10は、S210の処理で肯定判定するため、S240の処理で機能を優先度が高い順に復帰させる。
【0058】
[1-4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、車両に搭載され、当該車両の外部との通信を行う車両用無線通信装置1である。車両用無線通信装置1は、メインマイコン10と、RFIC33と、GNSSIC34とを備える。
【0059】
RFIC33は、電波を送信する機能、及び電波を受信する機能を有する。GNSSIC34は、測位を行う機能を有する。メインマイコン10は、S110で、当該車両用無線通信装置1の温度を取得するように構成される。メインマイコン10は、S130,S240で、温度に応じて、電波を送信する機能、電波を受信する機能、及び測位を行う機能のうちの複数の機能を抑制し、或いは抑制した機能を復帰させるように構成される。
【0060】
このような構成によれば、温度に応じて、電波を送信する機能だけでなく、電波を受信する機能、又は測位を行う機能についても抑制し、或いは抑制した機能を復帰させることができる。このように、複数の機能を抑制又は復帰させることで、車両用無線通信装置1による消費電力の増減による発熱量を制御できるので、車両用無線通信装置1の温度を良好に管理することができる。
【0061】
(1b)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S130で、温度に応じて複数の機能を抑制するように構成される。また、メインマイコン10は、S130で、複数の機能を順に抑制し、この際、1つの機能を抑制する度に、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、別の1つの機能を抑制するように構成される。
【0062】
このような構成によれば、複数の機能を抑制する際に、同時に機能を抑制することなく、時間差を設けて機能を抑制することができる。よって、1つの機能を抑制することによる効果を確認してから他の機能を抑制するか否かを設定することができる。
【0063】
(1c)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S130で、複数の機能を抑制する際に、電波を送信する機能、電波を受信する機能、測位を行う機能の順で、機能を抑制するように構成される。
【0064】
このような構成によれば、車両全体の制御への影響が少ない順に機能を抑制することができる。
(1d)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S240で、温度に応じて複数の機能を復帰させるように構成される。また、メインマイコン10は、S240で、複数の機能を順に復帰させ、この際、1つの機能を復帰させる度に、予め設定された所定時間だけ待機し、その後、別の1つの機能を復帰させるように構成される。
【0065】
このような構成によれば、複数の機能を復帰させる際に、同時に機能を復帰させることなく、時間差を設けて機能を復帰させることができるので、1つの機能を復帰することによる影響を確認してから他の機能を復帰させるか否かを設定することができる。
【0066】
(1e)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S160で、複数の機能が抑制される際に、車両の乗員に報知を行うように構成される。
このような構成によれば、機能が制限される場合に、車両の乗員に報知を行うことができる。車両の乗員は、機能が制限されているときの各機能の作動と、機能が制限されていないとないときの各機能の作動との相違を認識すると、機能が制限されているときの作動に違和感を覚える場合がある。しかし、本構成では、機能が制限される場合に、車両の乗員に報知を行うので、車両の乗員は機能が制限されていることを認識することができる。よって、車両の乗員が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0067】
(1f)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S130,S240で、温度が予め設定された抑制閾値Vthh以上であり、かつ温度の変化率が正である場合に、複数の機能を抑制するように構成される。また、温度が抑制閾値Vthh未満である、或いは温度の変化率が正でない場合に、複数の機能を抑制しないように構成される。
【0068】
このような構成によれば、温度が抑制閾値以上であり、かつ温度の上昇が継続している場合のみに、複数の機能を抑制することができる。
(1g)本開示の一態様では、メインマイコン10は、S240で、温度が予め設定された復帰閾値Vthl未満であり、かつ温度の変化率が負である場合に、抑制している複数の機能を復帰させるように構成される。また、温度が復帰閾値Vthl以上である、或いは温度の変化率が負でない場合に、抑制している複数の機能を復帰させないように構成される。
【0069】
このような構成によれば、温度が閾値未満であり、かつ温度の降下が継続している場合のみに、複数の機能を復帰させることができる。
(1h)本開示の一態様では、抑制閾値Vthhは、復帰閾値Vthlよりも高い温度に設定される。
【0070】
このような構成によれば、抑制閾値Vthhが復帰閾値Vthlよりも高い温度に設定されるので、温度が抑制閾値Vthhになって機能が抑制されると、温度がより低い復帰閾値Vthlになるまで機能が復帰することがない。よって、機能が抑制され、その機能が復帰されという作動が頻繁に繰り返されることを抑制することができる。
【0071】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0072】
(2a)上記実施形態では、1つずつ機能を抑制或いは復帰させるよう構成したが、これに限定されるものではない。例えば、温度の変化率の絶対値が予め設定された変化率よりも大きい場合、すなわち急激に温度が変化している場合には、メインマイコン10は、1つずつ機能を抑制或いは復帰させるのではなく、同時に複数の機能を抑制させ、或いは復帰させてもよい。このようにすれば、急激に温度が上昇している場合に、さらなる温度の急上昇を抑制することができる。
【0073】
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0074】
(2c)上述した車両用無線通信装置1の他、当該車両用無線通信装置1を構成要素とするシステム、当該車両用無線通信装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、車両用無線通信装置1の保護方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0075】
[3.上記実施形態の構成と本開示の構成との対応関係]
上記実施形態においてRFIC33は、本開示での電波送信部及び電波受信部に相当し、GNSSIC34は、本開示での測位部に相当する。また、メインマイコン10が実行する処理のうちのS110の処理は、本開示での温度取得部に相当し、S130,S240の処理は、本開示での機能制御部に相当し、S160の処理は、本開示での報知部に相当する。
【符号の説明】
【0076】
1…車両用無線通信装置、10…メインマイコン、11…CPU、12…ROM、13…RAM、20…サブマイコン、31…電源回路、32…CANトランシーバ、33…RFIC、34…GNSSIC、35…ディスプレイユニット、36…温度センサ、41A,41B…パワーアンプ、42A,42B,51…ローノイズアンプ、43A,43B…スイッチ、44A,44B,54…アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5