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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】加工装置およびワークの支持治具
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/02 20060101AFI20221213BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20221213BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B23B31/02 610Z
B23C3/00
F02F1/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019042637
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020142346
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓
(72)【発明者】
【氏名】本山 基彰
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/142149(WO,A1)
【文献】特開2015-120222(JP,A)
【文献】実開平03-123636(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105171072(CN,A)
【文献】中国実用新案第205888179(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196984(US,A1)
【文献】特開平09-225766(JP,A)
【文献】特開2001-259954(JP,A)
【文献】特開2002-346868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00-1/42
F02F 7/00
B23B 31/02
B23B 35/00-49/06
B23C 1/00-9/00
B23D 1/00-13/06
B23D 37/00-43/08
B23D 67/00-81/00
B23Q 1/00-3/18
B23Q 7/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーブロック又はシリンダーヘッドをワークとし、前記ワークの外周壁面のうち少なくとも互いに対向する2つの第1外周壁面を加工する加工装置であって、
前記第1外周壁面以外の外周壁面であって、前記第1外周壁面と直交する方向で互いに対向する第2外周壁面を支持する治具と、
前記直交する方向に延在する軸を有し、前記治具を介して前記軸回りに前記ワークを回転させる回転部と、
前記2つの第1外周壁面の一方の壁面に対応して配置される一方の押圧部材と、
前記2つの第1外周壁面の他方の壁面に対応して配置される他方の押圧部材と、
記一方の壁面が加工された後に他方の壁面が加工部により加工される場合、前記他方の壁面が前記加工部により加工される方向に向けられるように前記回転部を制御し、前記一方の壁面を加工する場合、前記他方の押圧部材が前記他方の壁面を前記一方の壁面の方向に押圧し、前記一方の押圧部材が前記一方の壁面から退避し、前記他方の壁面を加工する場合、前記一方の押圧部材が前記一方の壁面を前記他方の壁面の方向に押圧し、前記他方の押圧部材が前記他方の壁面から退避する制御を実行する制御部と、
を備える、加工装置。
【請求項2】
前記治具は、
前記ワークの前記第2外周壁面を囲むように配置された枠状部材と、
前記ワークの前記第2外周壁面に沿って互いに隙間を空けて配置され、前記枠状部材から前記第2外周壁面に向かって延在して前記ワークの前記第2外周壁面を支持する複数の支持部材と、
を備える、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記ワークは、長手方向および長手方向に対して直交する短手方向にそれぞれの予め定められた長さを有し、
前記軸は、前記短手方向の中央位置であって、前記長手方向に沿って延在する、
請求項1または2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工装置およびワークの支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シリンダーブロックの加工工程の1つとして、シリンダーボア穴(以下、「ボア穴」という)の加工が開示されている。
【0003】
ボア穴の加工は、例えば、次の工程で行われる。先ず、シリンダーブロックの粗材の下面を荒加工する(第1工程)。次に、加工した下面を基準面として、シリンダーのボア穴及び上面を荒加工する(第2工程)。次に、加工した上面を基準面として、下面の仕上げ加工を行う(第3工程)。次に、下面を基準面として、ボア穴の仕上げ加工を行う(第4工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5866272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボア穴の加工後に応力開放があるため、例えば、第2工程におけるボア穴の荒加工と第3工程における下面の仕上げ加工とを同時に行うことができない。その結果、第2工程における基準面を下面とし、第3工程における基準面を上面とするように基準面の変更等、加工基準の入れ替えが多くなる。加工基準の入れ替えが多くなることは、長い加工時間を要する原因となる。
【0006】
また、例えば、第2工程における下面を基準面とする上面の加工(切削)および第3工程における上面を基準面とする下面の加工(切削)のように、基準面毎に各面を切削する際に、切削取り代が多くなる場合がある。切削取り代が多くなる場合、加工中に排出される切粉量が多くなり、切粉が治具に堆積し易くなって、ワークの密着不良を発生させる原因となり、また、ワークを固定するためのクランパーなどの動作機構の動作障害を発生させる原因となる。
【0007】
また、切削取り代が多くなる場合、切削長が長くなる。これにより、長い加工時間を要する。加工時間を短縮するために、高剛性の治具や専用加工機などの対策を採る場合、設備投資が高騰する要因となる。
【0008】
本開示の目的は、ワークの加工時間を短縮することが可能な加工装置およびワークの支持治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示における加工装置は、
シリンダーブロック又はシリンダーヘッドをワークとし、前記ワークの外周壁面のうち少なくとも互いに対向する2つの第1外周壁面を加工する加工装置であって、
前記第1外周壁面以外の外周壁面であって、前記第1外周壁面と直交する方向で互いに対向する第2外周壁面を支持する治具と、
前記直交する方向に延在する軸を有し、前記治具を介して前記軸回りに前記ワークを回転させる回転部と、
前記2つの第1外周壁面の一方の壁面に対応して配置される一方の押圧部材と、
前記2つの第1外周壁面の他方の壁面に対応して配置される他方の押圧部材と、
記一方の壁面が加工された後に他方の壁面が加工部により加工される場合、前記他方の壁面が前記加工部により加工される方向に向けられるように前記回転部を制御し、前記一方の壁面を加工する場合、前記他方の押圧部材が前記他方の壁面を前記一方の壁面の方向に押圧し、前記一方の押圧部材が前記一方の壁面から退避し、前記他方の壁面を加工する場合、前記一方の押圧部材が前記一方の壁面を前記他方の壁面の方向に押圧し、前記他方の押圧部材が前記他方の壁面から退避する制御を実行する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ワークの加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態における加工装置の一例を概略的に示す正面図である。
図2図2は、本開示の実施の形態における加工装置の一例を概略的に示す平面図である。
図3図3は、ワークの加工工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における加工装置の一例を概略的に示す正面図である。図1には、X軸、Y軸およびZ軸が描かれている。図1における左右方向をX方向又はワーク1の長手方向といい、左方向を左側又は「-X方向」、右方向を右側又は「+X方向」という。また、図1における上下方向をY方向又はワーク1の短手方向といい、上方向を上側又は「+Y方向」、下方向を下側又は「-Y方向」という。また、図1の紙面に直交する方向をZ方向又はワーク1の奥行き方向といい、手前方向を手前側又は「+Z方向」、奥方向を奥側又は「-Z方向」という。
【0015】
図2は、本実施の形態における加工装置の一例を概略的に示す平面図である。図1および図2に示すように、ワーク1は、概略的に直方体の形状を有し、長手方向(X方向)、短手方向(Y方向)および奥行き方向(Z方向)にそれぞれ予め定められた長さを有する。ワーク1は、6つの外周壁面2を有する。6つの外周壁面2は、左側壁面2A、右側壁面2B、上側壁面2C、下側壁面2D、手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fである。ワーク1は、例えば、シリンダーブロックである。なお、ワーク1はシリンダーヘッドでもよい。
【0016】
加工装置100は、ワーク1の奥行き方向(Z方向)で互いに対向する手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fを加工する。が本開示の「第1外周壁面」に対応する。手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fは、シリンダー3の軸方向と直交する面である。左側壁面2A、右側壁面2B、上側壁面2Cおよび下側壁面2Dが本開示の「第2外周壁面」に対応する。以下の説明においては、手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fのような加工される外周壁面を「第1外周壁面」という。また、左側壁面2A等のような加工されない外周壁面を「第2外周壁面」という。なお、第1外周壁面および第2外周壁面の両方をいう場合、「外周壁面」という。
【0017】
加工装置100は、コラム11、ベース21、治具30、動力部40(本開示の「回転部」に対応する)、および、制御部50を備える。
【0018】
コラム11は、主軸12およびツール13を有する。
【0019】
主軸12は、軸回りに回転可能に構成され、かつ、左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)および奥行き方向(Z方向)にそれぞれ移動可能に構成されている。
【0020】
ツール13は、主軸12に取り付けられる。ツール13が本開示の「加工部」に対応する。ツール13には、例えば、ワーク1の第1外周壁面2を荒加工する工具、ワーク1の第1外周壁面2を仕上げ加工する工具、ボア穴の荒加工を行う工具、ボア穴の仕上げを行う工具(ボーリング工具、ホーニング工具)、その他の工具が含まれる。主軸12に取り付けられるツール13と、ツールマガジンに収容されるツール(不図示)とは、ワーク1の加工工程に応じて自動的に交換される。
【0021】
ベース21は、ベッド(図示略)に固定されている。ワーク1は、主軸12のX方向、Y方向、およびZ方向の移動、および、主軸12の回転により、加工(切削)される。
【0022】
ベース21には、ポール22,22がX方向に互いに離間して配置される。ポール22,22は、上方向(+Y方向)に延在している。
【0023】
治具30は、回転軸部32、枠状部材34、および、支持部材36を有する。
【0024】
回転軸部32は、ポール22の上端部に設けられる。回転軸部32は、図1に示すように、枠状部材34の短手方向(Y方向)および奥行き方向(Z方向)の中央位置に配置され、長手方向(X方向)に延在し、YZ平面上で回転する。
【0025】
枠状部材34は、矩形状の枠体形状を有する。枠状部材34は、図1に示すように、左側枠部34A、右側枠部34B、上側枠部34Cおよび下側枠部34Dを有する。枠状部材34は、ワーク1の外周壁面2を囲むように配置される。枠状部材34は、回転軸部32回りに回転可能に構成される。
【0026】
左側枠部34Aは、枠体形状における左側に位置し、短手方向(Y方向)に延在する。右側枠部34Bは、枠体形状における右側に位置し、短手方向に延在する。上側枠部34Cは、枠体形状における上側に位置し、長手方向(X方向)に延在する。下側枠部34Dは、枠体形状における下側に位置し、長手方向に延在する。
【0027】
支持部材36は、左側支持部材36A、右側支持部材36B、上側支持部材36Cおよび下側支持部材36Dを有する。
【0028】
左側支持部材36Aは、左側枠部34AのY方向及びZ方向の中央位置(回転軸部32の位置とYZ平面上で一致する)からワーク1の左側壁面2Aの方向へ延在し、左側壁面2Aに当接する。
【0029】
右側支持部材36Bは、右側枠部34BのY方向及びZ方向の中央位置(回転軸部32の位置とYZ平面上で一致する)からワーク1の右側壁面2Bの方向へ延在し、右側壁面2Bに当接する。右側支持部材36Bは、ピストンロッドを有し、ピストンロッドにエア圧又は油圧が作用することにより、ピストンロッドが押し出されて右側壁面2Bを押圧する。左側支持部材36Aおよび右側支持部材36Bは、長手方向(X方向)でワーク1を挟むようにして支持する。
【0030】
上側支持部材36Cは、図1および図2に示すように、上側壁面2Cにおける3箇所(三角形の頂点に相当する位置)に対応して配置されている。上側壁面2Cにおける3箇所は、具体的には、上側壁面2Cにおける上側中央部、下側左端部、および、下側右端部である。
【0031】
上側支持部材36Cは、上側枠部34Cからワーク1の上側壁面2Cの方向へ延在し、上側壁面2Cに当接する。上側支持部材36Cは、ピストンロッドを有し、ピストンロッドにエア圧又は油圧が作用することにより、ピストンロッドが押し出されて上側壁面2Cを押圧する。
【0032】
下側支持部材36Dは、図1および図2に示すように、下側壁面2Dにおける3箇所(三角形の頂点に相当する位置)に対応して配置されている。下側壁面2Dにおける3箇所は、具体的には、下側壁面2Dにおける上側中央部、下側左端部、および、下側右端部である。
【0033】
下側支持部材36Dは、下側枠部34Dからワーク1の下側壁面2Dの方向へ延在し、下側壁面2Dに当接する。下側壁面2Dにおける3箇所の位置と上側壁面2Cにおける3箇所の位置とは、XZ平面上で一致している。上側支持部材36Cおよび下側支持部材36Dは、短手方向(Y方向)でワーク1を挟むようにして支持する。
【0034】
支持部材36A,36B,36C,36Dは、図1に示すように、ワーク1の第2外周壁面2に沿って互いに隙間を空けて配置され、枠状部材34から第2外周壁面2に向かって延在してワーク1の第2外周壁面2を支持する。
【0035】
押圧部材38は、左手前側押圧部材38A、右手前側押圧部材38B、左奥側押圧部材38Cおよび右奥側押圧部材38Dを有する。なお、図1および図2は、押圧部材38を駆動するためのアクチュエータを省略して示す。
【0036】
左手前側押圧部材38Aは、左側枠部34Aの短手方向(Y方向)の中央位置を間にして上下2箇所に設けられている。左手前側押圧部材38Aは、手前側壁面2Eを奥側壁面2Fの方向(-Z方向)に押圧する位置と手前側壁面2Eから退避する位置との間を移動可能に構成される。左手前側押圧部材38Aは、奥側壁面2Fを加工する場合、手前側壁面2Eを押圧する。左手前側押圧部材38Aは、手前側壁面2Eを加工する場合、手前側壁面2Eから退避する。図2は、手前側壁面2Eを押圧する左手前側押圧部材38Aを示す。
【0037】
右手前側押圧部材38Bは、右側枠部34Bの短手方向(Y方向)の中央位置を間にして上下2箇所に設けられている。右手前側押圧部材38Bは、手前側壁面2Eを奥側壁面2Fの方向(-Z方向)に押圧する位置と手前側壁面2Eから退避する位置との間を移動可能に構成される。右手前側押圧部材38Bは、奥側壁面2Fを加工する場合、手前側壁面2Eを押圧する。右手前側押圧部材38Bは、手前側壁面2Eを加工する場合、手前側壁面2Eから退避する。図2は、手前側壁面2Eを押圧する右手前側押圧部材38Bを示す。
【0038】
左奥側押圧部材38Cは、左側枠部34Aの短手方向(Y方向)の中央位置を間にして上下2箇所に設けられている。左奥側押圧部材38Cは、奥側壁面2Fを手前側壁面2Eの方向(+Z方向)に押圧する位置と奥側壁面2Fから退避する位置との間を移動可能に構成される。左奥側押圧部材38Cは、手前側壁面2Eを加工する場合、奥側壁面2Fを押圧する。左奥側押圧部材38Cは、奥側壁面2Fを加工する場合、奥側壁面2Fから退避する。図2は、奥側壁面2Fから退避する左奥側押圧部材38Cを示す。
【0039】
右奥側押圧部材38Dは、右側枠部34Bの短手方向(Y方向)の中央位置を間にして上下2箇所に設けられている。右奥側押圧部材38Dは、奥側壁面2Fを手前側壁面2Eの方向(+Z方向)に押圧する位置と奥側壁面2Fから退避する位置との間を移動可能に構成される。右奥側押圧部材38Dは、手前側壁面2Eを加工する場合、奥側壁面2Fを押圧する。右奥側押圧部材38Dは、奥側壁面2Fを加工する場合、奥側壁面2Fから退避する。図2は、奥側壁面2Fから退避する右奥側押圧部材38Dを示す。
【0040】
動力部40は、ポール22の上端部に設けられている。動力部40は、回転軸部32回りにワーク1を回転させる。例えば、動力部40は、電動モータを有する。電動モータの出力軸と回転軸部32とが接続される。
【0041】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力装置、および、出力装置を有する。CPUは、ROMに格納されたプログラムをRAMに展開して、ベース21のX方向およびY方向の移動制御、主軸12のY方向の移動制御、主軸12の回転制御、動力部40の制御、上記ピストンロッドの制御、および、上記アクチュエータの制御などの種々の制御を実行する。
【0042】
制御部50は、ワーク1が加工される場合、主軸12が、X方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ移動する制御を実行する。また、制御部50は、手前側壁面2Eが加工された後に奥側壁面2Fが加工される場合、奥側壁面2Fがツール13(加工部)に加工される方向に向くように動力部40を制御する。具体的には、制御部50は、ワーク1が手前側壁面2Eと奥側壁面2Fとが成す角度θ(ここでは、180度)だけ回転するように動力部40を制御する。これにより、奥側壁面2Fがツール13の方向に向けられる。
【0043】
次に、ワーク1の加工工程について図3を参照して説明する。図3は、ワーク1の加工工程を示すフローチャートである。ステップS100において、ワーク1の手前側壁面2Eを荒加工する。その後、治具30を回転軸部32回りに180度回転して、ワーク1の奥側壁面2Fを荒加工するとともに、ボア穴を荒加工する。
【0044】
次に、ステップS110において、ワーク1の奥側壁面2Fを仕上げ加工した後、ボア穴のボーリング加工(仕上げ加工)を行う。また、ボア焼き入れや、その他複数の仕上げ加工を行った後、ボア穴のホーニング加工(仕上げ加工)を行う。
【0045】
上記実施の形態における加工装置100によれば、ワーク1の外周壁面2のうち少なくとも互いに対向する2つの第1外周壁面2を加工する加工装置であって、第1外周壁面2以外の外周壁面であって、第1外周壁面2と直交する方向で互いに対向する第2外周壁面2を支持する治具30と、直交する方向に延在する軸を有し、治具30を介して軸回りにワーク1を回転させる動力部40と、2つの第1外周壁面2のうち一方の壁面が加工された後に他方の壁面が加工部により加工される場合、他方の壁面が加工部により加工される方向に向けられるように動力部40を制御する制御部50と、を備える。
【0046】
これにより、回転軸部32の軸を加工基準とし、治具30を介してワーク1を回転軸部32回りに回転することで、加工基準を入れ替えることなく、手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fの加工が可能となるため、加工時間を短縮することが可能となる。
【0047】
また、回転軸部32を加工基準として手前側壁面2Eおよび奥側壁面2Fを加工する場合、基準面毎に手前側壁面2E等を切削しなくて済むため、手前側壁面2Eを基準面として奥側壁面2Fを加工し、奥側壁面2Fを基準面として手前側壁面2Eを加工する場合と比較して、基準面の入れ替わりを少なくすることができる。これによって、製品の最終的な寸法品質を確保し易くなるため、信頼性を向上することが可能となる。
【0048】
また、この場合、切削長を短くすることが可能となる。これにより、加工時間を短縮することが可能となる。
【0049】
また、上記実施の形態における加工装置100によれば、支持部材36A等がワーク1の第2外周壁面2に沿って互いに隙間を空けて配置されている。これにより、加工中に排出される切粉が隙間を通って落下するため、切粉が治具30に堆積しにくくなって、ワークの密着不良や、クランパーなどの動作不良が発生するのを防止することが可能となる。
【0050】
また、上記実施の形態における加工装置100によれば、上側支持部材36Cおよび下側支持部材36Dがワーク1の上側壁面2Cおよび下側壁面2Dにおける3箇所(三角形の頂点の位置)でワーク1を上下方向から挟むように支持するため、ワーク1を安定的に支持することが可能となる。
【0051】
また、上記実施の形態における加工装置100によれば、例えば、奥側壁面2Fを加工する場合、押圧部材38が手前側壁面2Eを奥側壁面2Fに向かって押圧するため、ツール13がワーク1を手前側壁面2Eの方へ押すような場合でも、ワーク1が手前側壁面2Eの方へ移動するようなことがなく、ワーク1を確実に支持するため、ワーク1の加工精度が低下するのを防止することが可能となる。
【0052】
また、回転軸部32は、短手方向(Y方向)の中央位置であって、長手方向(X方向)に沿って延在する。このように回転軸部32が短手方向の中央位置にある構造(短手型構造)において、ツール13がワーク1の短手方向端部を加工する場合にワーク1が受ける回転軸部32回りのトルクは、回転軸部32が長手方向の中央位置にある構造(長手型構造)において、ツール13がワーク1の長手方向端部を加工する場合にワーク1が受ける回転軸部32回りのトルクより小さい。つまり、短手型構造を、加工中に回転軸部32回りのトルクを比較的に受けにくい構造とすることができる。
【0053】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、ワークの加工時間を短縮することが要求される工作機械に好適に利用される。
【符号の説明】
【0055】
1 ワーク
2 外周壁面
2A 左側壁面
2B 右側壁面
2C 上側壁面
2D 下側壁面
2E 手前側壁面
2F 奥側壁面
3 シリンダー
11 コラム
12 主軸
13 ツール
21 ベース
22 ポール
30 治具
32 回転軸部
34 枠状部材
34A 左側枠部
34B 右側枠部
34C 上側枠部
34D 下側枠部
36 支持部材
36A 左側支持部材
36B 右側支持部材
36C 上側支持部材
36D 下側支持部材
38 押圧部材
38A 左手前側押圧部材
38B 右手前側押圧部材
38C 左奥側押圧部材
38D 右奥側押圧部材
40 動力部
50 制御部
100 加工装置
図1
図2
図3