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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電圧計測方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221213BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20221213BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221213BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20221213BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20221213BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20221213BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20221213BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/262 Z
H02J7/00 Y
H01G11/14
H01G11/84
G01R31/396
H01M10/058
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019043688
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020149784
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】花井 智
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162559(JP,A)
【文献】特開2002-199608(JP,A)
【文献】特開2009-145137(JP,A)
【文献】特開2014-206441(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157065(WO,A1)
【文献】特開2007-103112(JP,A)
【文献】特開2006-254612(JP,A)
【文献】特開2016-225167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-48
H01M 50/20-298
H02J 7/00
H01G 11/14
H01G 11/84
G01R 31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されて電気的に直列に接続された複数の蓄電モジュールと、前記複数の蓄電モジュールを拘束して一体化する拘束部材と、を含む蓄電装置の電圧計測方法であって、
前記蓄電装置の正極端子及び負極端子に接続された充放電装置によって、一括して前記複数の蓄電モジュールの初期充電を行っているときに、前記蓄電装置の全体の電圧である総電圧を計測する総計測工程と、
前記初期充電を行っているときに、前記複数の蓄電モジュールのそれぞれの蓄電モジュールの電圧である個別電圧を計測する個別計測工程と、
前記初期充電の段階において、前記個別電圧に基づいて前記蓄電モジュールの異常を検知する検知工程と、
を備え、
前記初期充電は、前記蓄電装置のエージングの前に実施され、
前記初期充電では、前記複数の蓄電モジュールの一括した充放電を行う、
電圧計測方法。
【請求項2】
前記初期充電、前記総計測工程、及び、前記個別計測工程は、前記蓄電装置を被搭載装置に搭載する際に前記蓄電装置に実装される別部材を、前記蓄電装置に電気的に接続した状態において行われる、
請求項1に記載の電圧計測方法。
【請求項3】
前記検知工程では、前記初期充電中の前記個別電圧の変化を、電圧変化の基準と比較することにより、前記蓄電モジュールの異常を検知する、
請求項1又は2に記載の電圧計測方法。
【請求項4】
前記初期充電では、前記複数の蓄電モジュールの一括した充放電を複数のサイクルにわたって行い、
前記検知工程では、前記初期充電中の前記個別電圧の変化を、前記サイクル毎に異なる電圧変化の基準と比較することにより、前記蓄電モジュールの異常を検知する、
請求項3に記載の電圧計測方法。
【請求項5】
前記検知工程では、前記個別電圧の変化として前記蓄電モジュールの放電電圧の変化を前記基準と比較することにより、前記蓄電モジュールの異常を検知する、
請求項3又は4に記載の電圧計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両搭載用組電池の製造方法が記載されている。この製造方法では、まず、電池を複数用意し、それらの電池をまとめて拘束状態とすることで、車両搭載用組み電池を形成する。続いて、車両搭載用組電池に含まれる各々のリチウムイオン二次電池を初期充電する。この初期充電により、リチウムイオン二次電池が活性化される。続いて、車両搭載用組電池に含まれる各々の電池を、規定の温度で一定時間安置してエージングを行う。その後、車両搭載用組電池に含まれる各々の電池を、25℃の温度環境下で、所定期間放置することにより、自己放電させる自己放電工程を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-225167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の製造方法にあっては、自己放電工程において、車両搭載用組電池に含まれる各々の電池の放置するまえの電池電圧と、放置後の電池電圧と、を計測する。そして、それらの電池電圧差を算出する。電池電圧差が所定の閾値以上である電池は、内部短絡が生じていると判定され、それを1つでも含む車両搭載用組電池は不良品として取り除かれる。上記技術分野においては、より早い段階で確実に不良品の発見を行う要求がある。
【0005】
そこで、本発明は、早期に確実に不良品を検知可能とする電圧計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電圧計測方法は、積層されて電気的に直列に接続された複数の蓄電モジュールと、複数の蓄電モジュールを拘束して一体化する拘束部材と、を含む蓄電装置の電圧計測方法であって、蓄電装置の正極端子及び負極端子に接続された充放電装置によって、一括して複数の蓄電モジュールの初期充電を行っているときに、蓄電装置の全体の電圧である総電圧を計測する総計測工程と、初期充電を行っているときに、複数の蓄電モジュールのそれぞれの蓄電モジュールの電圧である個別電圧を計測する個別計測工程と、総電圧及び/又は個別電圧に基づいて蓄電モジュールの異常を検知する検知工程と、を備える。
【0007】
この方法においては、蓄電装置の初期充電を行っているときに、蓄電装置の全体の電圧である総電圧と、蓄電装置に含まれるそれぞれの蓄電モジュールの電圧である個別電圧と、を計測する。よって、総電圧及び個別電圧に基づいて、初期充電の段階で不良品を検知可能である。特に、総電圧によって蓄電装置全体の状態を把握しつつ、個別電圧によって蓄電モジュールの各々の状態を把握できる。よって、より確実に不良品を検知可能である。
【0008】
本発明に係る電圧計測方法においては、初期充電、総計測工程、及び、個別計測工程は、蓄電装置を被搭載装置に搭載する際に蓄電装置に実装される別部材を、蓄電装置に電気的に接続した状態において行われてもよい。この場合、被搭載部材への搭載時に必要となる別部材を予め蓄電装置に電気的に接続した状態において、初期充電を行い、総電圧及び個別電圧の計測を行うこととなる。よって、別部材の接続に起因して発生した不良品を早期に検知可能である。なお、別部材とは、一例として、蓄電装置及び蓄電モジュールの状態を監視するECU(Electronic Control Unit)等である。
【0009】
本発明に係る電圧計測方法においては、検知工程では、初期充電中の個別電圧の変化を、電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュールの異常を検知してもよい。この場合、個別電圧の基準との比較により蓄電モジュールの不良品を検知できる。
【0010】
本発明に係る電圧計測方法においては、初期充電では、複数の蓄電モジュールの一括した充放電を複数のサイクルにわたって行い、検知工程では、初期充電中の個別電圧の変化を、サイクルごとに異なる電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュールの異常を検知してもよい。この場合、充放電のサイクルごとに異なる個別電圧の変化に対応して蓄電モジュールの不良品を検知できる。
【0011】
本発明に係る電圧計測方法においては、検知工程では、個別電圧の変化として蓄電モジュールの放電電圧の変化を基準と比較することにより、蓄電モジュールの異常を検知してもよい。不良品の蓄電モジュールの電圧変化は、充電時よりも放電時の方が顕著となる。よって、この場合には、より確実に蓄電モジュールの不良品を検知できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、早期に確実に不良品を検知可能とする電圧計測方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図1,2に示された蓄電装置の検査方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図4図1,2に示された蓄電装置の電圧計測方法を示すフローチャートである。
図5】所定の蓄電モジュールの電圧計測によって得られた充電曲線及び放電曲線を示すグラフである。
図6】別の所定の蓄電モジュール2の電圧計測によって得られた充電曲線及び放電曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
引き続いて、図面を参照しつつ、本実施形態に係る蓄電モジュールについて説明する。なお、各図の説明においては、同一又は相当する要素同士には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の図には、X軸、Y軸、及びZ軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。
【0015】
図1は、実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車または電気自動車等の車両のバッテリとして使用され得る。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール2を備えている。蓄電モジュール2は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0016】
複数の蓄電モジュール2は、金属製の導電板3を介して積層されている。蓄電モジュール2及び導電板3の積層体の積層方向(例えばZ軸方向)の最外層(スタック最外層)は、一例として蓄電モジュール2である。蓄電モジュール2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)を有している。導電板3は、隣り合う蓄電モジュール2と電気的に接続されている。これにより、複数の蓄電モジュール2が積層方向に直列に電気的に接続されている。蓄電モジュール2については、後に詳述する。
【0017】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する蓄電モジュール2には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する蓄電モジュール2には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に交差(直交)する方向(例えばX軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。なお、蓄電装置1においては、スタック最外層が導電板3であってもよい。この場合、スタック最外層の導電板3に対して、正極端子4及び負極端子5を設けることができる。
【0018】
導電板3は、蓄電モジュール2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、蓄電モジュール2の積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに交差(直交)する方向(例えばY軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール2からの熱を効率的に外部に放出することができる。
【0019】
また、蓄電装置1は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に拘束して一体化する拘束ユニット(拘束部材)6を備えている。拘束ユニット6は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0020】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と蓄電モジュール2との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を有している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、蓄電モジュール2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。なお、スタック最外層が導電板3である場合には、各拘束プレート7と導電板3との間に絶縁フィルム10が介在されることとなる。
【0021】
次に、蓄電モジュール2の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール2は、電極積層体13と、電極積層体13を封止するための樹脂製の封止体14と、を備えている。電極積層体13は、セパレータ12を介して、積層方向(ここではZ軸方向)に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極11、単一の負極終端電極19、及び、単一の正極終端電極18)を含む。
【0022】
バイポーラ電極11は、電極板15、電極板15の第1面15aに設けられた正極16、及び、電極板15の第1面15aの反対の第2面15bに設けられた負極17を含む。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体13において、一のバイポーラ電極11の正極16は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合う別の電極(バイポーラ電極11又は負極終端電極19)の負極17と対向している。電極積層体13において、一のバイポーラ電極11の負極17は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合うさらに別の電極(バイポーラ電極11又は正極終端電極18)の正極16と対向している。
【0023】
負極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含む。負極終端電極19は、第2面15bが電極積層体13の内側(積層方向についての中心側)に向くように、積層方向の一端に配置されている。負極終端電極19の負極17は、セパレータ12を介して、積層方向の一端のバイポーラ電極11の正極16と対向している。正極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含む。正極終端電極18は、第1面15aが電極積層体13の内側に向くように、積層方向の他端に配置されている。正極終端電極18の正極16は、セパレータ12を介して、積層方向の他端のバイポーラ電極11の負極17と対向している。
【0024】
スタック最外層を除く蓄電モジュール2においては、負極終端電極19の電極板15の第1面15aには、導電板3が接触している。また、スタック最外層を除く蓄電モジュール2においては、正極終端電極18の電極板15の第2面15bには、別の導電板3が接触している。この場合、拘束荷重は、導電板3を介して負極終端電極19及び正極終端電極18から電極積層体13に付加される。すなわち、導電板3は、積層方向に沿って電極積層体13に拘束荷重を付加する。
【0025】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部(バイポーラ電極11、負極終端電極19、及び、正極終端電極18の縁部)は、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域よりも大きくなっている。
【0026】
セパレータ12は、例えばシート状に形成されている。セパレータ12としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ12は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0027】
封止体14は、電極積層体13を取り囲むように配置され、電極(バイポーラ電極11、負極終端電極19、及び、正極終端電極18)の電極板15の周縁部15cをそれぞれ保持する複数の1次樹脂シール20と、これらの1次樹脂シール20を取り囲むように配置された2次樹脂シール21と、を有している。1次樹脂シール20は、積層方向に沿って電極板15毎に配置されている。1次樹脂シール20は、枠状を有している。1次樹脂シール20は、電極板15の周縁部15cに接合(例えば溶着)されている。1次樹脂シール20及び2次樹脂シール21は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成され得る。
【0028】
積層方向に隣り合う電極板15間には、電極板15及び1次樹脂シール20によって画成された内部空間Vが設けられている。内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。1次樹脂シール20は、内部空間Vを封止するためのものである。蓄電モジュール2における1つの蓄電セル23は、2つの電極板15、正極16、負極17、セパレータ12及び1次樹脂シール20により構成され、内部空間Vを有している。すなわち、蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール2を有し、それぞれの蓄電モジュール2は、複数の蓄電セル23を有している。
【0029】
引き続いて、蓄電装置の検査方法の一例について説明する。図3は、図1,2に示された蓄電装置の検査方法の主要な工程を示すフローチャートである。図3に示されるように、まず、蓄電装置1が作製されて初期充電が行われる前において、蓄電装置1の全体の電圧及び抵抗を計測する(工程S1)。この計測において、異常な電圧値又は抵抗値が検出された場合には、蓄電装置1を不良品とする。
【0030】
続いて、蓄電装置1のコンディショニング(初期充電)を行う(工程S2)。すなわち、蓄電装置1の正極端子4及び負極端子5に接続された充放電装置によって、蓄電装置1に含まれる複数の蓄電モジュール2の初期充電を一括して行う。ここでは、複数の蓄電モジュール2の一括した充放電を複数のサイクルにわたって行う。
【0031】
引き続いて、微短検出を行う。具体的には、まず、蓄電装置1の電圧を計測する(工程S3)。続いて、蓄電装置1のエージングを行う(工程S4)。エージングとしては、一例として、蓄電装置1を50℃の環境下で5日間程度放置することにより、自己放電を促す。そして、蓄電装置1を常温に戻しつつ再び蓄電装置1の電圧を計測する(工程S5)。これにより、エージングの前後(工程S3及び工程S5)の電圧の計測値の差が基準値よりも大きい場合には、蓄電装置1を不良品とする。
【0032】
続いて、蓄電装置1の特性検査を行う(工程S6)。ここでは、蓄電装置1の容量、放電量、及び抵抗等の計測を行う。少なくとも以上の工程をクリアした蓄電装置1が、上述した車両等の被搭載装置に搭載されることとなる。特に、本実施形態においては、初期充電を行う工程S2においても、蓄電装置1の不良品を検出し得る電圧計測を行う。引き続いて、初期充電時の電圧計測方法について説明する。
【0033】
図4は、図1,2に示された蓄電装置の電圧計測方法を示すフローチャートである。図4に示されるように、ここでは、蓄電装置1含まれる複数の蓄電モジュール2の初期充電を一括して行っているときに、蓄電装置1の全体の電圧である総電圧を計測する(工程S21:総計測工程)。これと共に、蓄電装置1含まれる複数の蓄電モジュール2の初期充電を一括して行っているときに、蓄電モジュール2のそれぞれの電圧である個別電圧を計測する(工程S22:個別計測工程)。これらの工程は、同時に実施されてもよい。
【0034】
上述したように、初期充電においては、蓄電装置1に含まれる複数の蓄電モジュール2の一括した充放電が複数のサイクルにわたって行われる。したがって、総電圧及び個別電圧の計測値(充放電曲線)は、各サイクルの充電及び放電に応じて複数得られる。図5は、所定の蓄電モジュールの電圧計測によって得られた充電曲線及び放電曲線を示すグラフである。図6は、別の所定の蓄電モジュール2の電圧計測によって得られた充電曲線及び放電曲線を示すグラフである。
【0035】
図5,6において、容量の増加と共に電圧の上昇を示す曲線群CCが充電曲線であり、容量の減少と共に電圧の下降を示す曲線群DCが放電曲線である。図5は、正常な蓄電モジュール2の充放電曲線を示し、図6は、例えば電解液の未含侵等の異常を含む蓄電モジュール2の充放電曲線を示す。図5,6に示されるように、正常な蓄電モジュール2の充放電曲線に比べて、異常を含む蓄電モジュール2の充放電曲線の方が、容量の増加に対する電圧の上昇・下降が大きくなっている。したがって、得られた計測値から、蓄電モジュール2の異常を検知が可能である。
【0036】
より具体的には、続く工程において、初期充電中の個別電圧の変化を、電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュール2の異常を検知する(工程S23:検知工程)。一例として、充放電開始から所定時間後の充放電曲線の傾き(電圧の変化量/容量の変化量)の基準値を保持しておき、その基準値と実際の充放電曲線の傾きとを比較して、実際の充放電曲線の傾きの絶対値が、基準値よりも大きければ異常であると判定できる。
【0037】
特に、充電曲線と比較して放電曲線の方が、異常が顕著に現れる。よって、ここでは、個別電圧の変化として蓄電モジュール2の放電電圧の変化を基準と比較することにより、蓄電モジュール2の異常を検知する。すなわち、放電開始から所定時間後の放電曲線の傾き(電圧の変化量/容量の変化量)の基準値を保持しておき、その基準値と実際の放電曲線の傾きとを比較して、実際の放電曲線の傾きの絶対値が、基準値よりも大きければ異常であると判定する。
【0038】
また、充放電曲線は、サイクルごとに異なる。したがって、サイクルごとに異なる基準を準備しておき、初期充電中の個別電圧の変化を、そのようにサイクルごとに異なる電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュール2の異常を検知してもよい。
【0039】
なお、放電曲線には、傾きが大きく変化する段差部分が生じる。したがって、放電曲線の中に傾きの変化が所定値以上である部分が存在するか否かを、異常の検出に用いてもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る電圧計測方法においては、蓄電装置1の初期充電を行っているときに、蓄電装置1の全体の電圧である総電圧と、蓄電装置1に含まれるそれぞれの蓄電モジュール2の電圧である個別電圧と、を計測する。よって、総電圧及び個別電圧に基づいて、初期充電の段階で不良品を検知可能である。特に、総電圧によって蓄電装置1全体の状態を把握しつつ、個別電圧によって蓄電モジュール2の各々の状態を把握できる。よって、より確実に不良品を検知可能である。
【0041】
なお、初期充電の段階で不良品の蓄電モジュール2が検知された場合には、その蓄電モジュール2を含む蓄電装置1をその後の検査工程に供することなく、不良品である蓄電モジュール2を交換する等の手当てを行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る電圧計測方法は、初期充電中の個別電圧の変化を、電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュール2の異常を検知する検知工程をさらに備える。このため、個別電圧の基準との比較により蓄電モジュール2の不良品を検知できる。
【0043】
また、本実施形態に係る電圧計測方法においては、初期充電では、複数の蓄電モジュールの一括した充放電を複数のサイクルにわたって行い、検知工程では、初期充電中の個別電圧の変化を、サイクルごとに異なる電圧変化の基準と比較することにより、蓄電モジュールの異常を検知する。このため、充放電のサイクルごとに異なる個別電圧の変化に対応して蓄電モジュール2の不良品を検知できる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る電圧計測方法においては、検知工程では、個別電圧の変化として蓄電モジュール2の放電電圧の変化を基準と比較することにより、蓄電モジュール2の異常を検知する。不良品の蓄電モジュール2の電圧変化は、充電時よりも放電時の方が顕著となる。よって、この場合には、より確実に蓄電モジュール2の不良品を検知できる。
【0045】
以上の実施形態は、本発明の一実施形態について説明したものである。したがって、本発明は、上述した電圧計測方法に限定されず、任意に変形したものとされ得る。
【0046】
例えば、蓄電装置1は、上述したように車両等の被搭載装置に搭載されるときには、種々の別部品が設けられる。別部品の一例としては、蓄電装置1及び蓄電モジュール2の状態(例えば電圧や容量等)を監視するECU(Electronic Control Unit)や、導電板3の空隙3aに冷媒を流通させて蓄電モジュール2を冷却するためのダクト及びブロワ等である。特に、ECUやブロワ等の電気的な接続を要する別部品については、その設置時に蓄電装置1の電気的な特性に異常が発生する可能性がある。
【0047】
したがって、上記の方法にあっては、初期充電、総計測工程、及び、個別計測工程を、蓄電装置1を被搭載装置に搭載する際に蓄電装置1に実装される別部材を、蓄電装置1に電気的に接続した状態において行うことができる。この場合、被搭載部材への搭載時に必要となる別部材を予め蓄電装置1に電気的に接続した状態において(より完成品に近い状態において)、初期充電を行い、総電圧及び個別電圧の計測を行うこととなる。よって、別部材の接続に起因して発生した不良品を早期に検知可能である。
【0048】
また、上記の方法にあっては、微短検出の際に、不良品の蓄電モジュール2をさらに検出してもよい。すなわち、工程S3及び/又は工程S5の電圧計測時に、蓄電装置1の総電圧に加えて、蓄電装置1に含まれる複数の蓄電モジュール2のそれぞれの電圧降下を計測する。そして、得られた電圧効果が所定の閾値よりも大きい蓄電モジュール2を不良品として検知する。この場合、蓄電装置1の全体の電圧降下を計測するのみでは誤差の蓄積により発見できない異常を発見できる。
【0049】
さらに、上記の方法にあっては、工程S23において、工程S21で取得された蓄電装置1の総電圧に基づいて蓄電装置1の異常をさらに検知してもよい。すなわち、工程S23では、総電圧及び/又は個別電圧に基づいて蓄電装置1及び/又は蓄電モジュール2の異常を検知してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…蓄電装置、2…蓄電モジュール、4…正極端子、5…負極端子、6…拘束ユニット(拘束部材)。
図1
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図6