(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ガス濃度測定装置の較正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/61 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01N21/61
(21)【出願番号】P 2019054241
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 克彦
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275754(JP,A)
【文献】特開昭59-168342(JP,A)
【文献】特開平06-034637(JP,A)
【文献】特開平08-101173(JP,A)
【文献】米国特許第05422485(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが収容される試料セルと、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出する検出器と、該検出器の出力に基づいて前記試料ガスの濃度を求める演算部と、を備えたガス濃度測定装置を較正する方法であって、
所定の濃度を有する標準ガスをガス供給源から前記試料セル中に供給し、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出器で検出するという動作を、互いに異なる濃度を有する複数の標準ガスについて繰り返し実行する測定ステップと、
前記検出器の出力と前記標準ガスの濃度との二次元プロットを多項式近似によりフィッティングして較正式を作成する較正式作成ステップと、
前記較正式について1階微分を行って1階微分式を算出する1階微分ステップと、
前記較正式について2階微分を行って2階微分式を算出する2階微分ステップと、
前記1階微分式及び前記2階微分式のそれぞれにおいて値がマイナスになるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記1階微分式で値がマイナスになるか、又は、前記2階微分式で値がマイナスになるかのいずれか一方であるときに、前記較正式が異常であると判断する
異常判定ステップと、
を有する、ガス濃度測定装置の較正方法。
【請求項2】
前記ガス供給源は、標準ガス分割器を有し、
前記
異常判定ステップにおいて前記較正式が異常であると判断されたときに、前記標準ガス分割器を調整する調整ステップ、をさらに含む、請求項1に記載のガス濃度測定装置の較正方法。
【請求項3】
前記ガス濃度測定装置は、前記較正式を表示する表示部を備え、
前記
異常判定ステップでは、前記較正式が異常であると判断したときに、前記表示部に警告表示を行う、請求項1又は2に記載のガス濃度測定装置の較正方法。
【請求項4】
前記ガス濃度測定装置は、NDIR法により試料ガス中の特定のガス成分の濃度を測定するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス濃度測定装置の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度測定装置の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO、CO2、CH4などの特定のガス成分の濃度を測定する可搬型のガス濃度測定装置では、構成が比較的簡素であり安定性に優れた非分散型赤外線吸収(Non-Dispersive Infrared:NDIR)法が測定法として採用されていることが多い(特許文献1等参照)。NDIR法によるガス濃度測定装置にはシングルビーム方式とダブルビーム方式とがあるが、いずれの方式でも、光が透過する窓が両端に形成された筒状の試料セルに試料ガスを流す。そして、一方の窓から試料セル内に赤外光を入射し、該試料セル中の試料ガス中の成分による吸収を受けたあとの赤外光を他方の窓から出射させて光検出器に入射させ、光の強度を測定する。そして、目的の成分が有る場合と無い場合との光強度の差から光吸収量を求める。
【0003】
よく知られているように、試料セル中のガスによる光の吸収はランベルト-ベール(Lambert-Beer)の法則に従い、その吸収量は試料ガスの濃度に対し対数の関係にある。そのため、測定により求まった光吸収量から試料ガス濃度を求める際には、光吸収量を濃度に変換する較正式(検量線を示す式)が用いられる。
【0004】
但し、実際の装置では、検出器に入射する光は、試料セル中を直線的に通過して来る光だけでなく、試料セルの内壁で1又は複数回反射したために、より長い光路長を通過して来る光も含まれる。そのため、光吸収量と試料ガス濃度とが対数の関係にならないことがしばしばある。そのため、一般には、較正式として高次の多項式が用いられる。その場合、較正式の曲線の形状は高次多項式の係数で決まるが、この曲線形状は試料セルの内壁の反射率、試料セルの長さ、光検出器の特性など、装置固有の要因や測定レンジによって変わる。そのため、通常、ガス濃度測定装置のメーカーは、装置1台毎に、工場出荷時に標準ガスを用いた実測を行い、多項式の係数を決めて内部のメモリに記憶させるようにしている。
【0005】
一般に、上記標準ガスとしてはスパンガスを分割することで調製したガスが使用される。例えば、スパンガスの濃度を1としたとき、濃度が1、0.8、0.6、0.4、0.2、及び0である標準ガスが調製され、濃度が相違する各標準ガスを実測して得られた複数の検出器出力に対し、最小二乗法を適用することで較正式を表す多項式の係数が算出される。上記のようにスパンガスを分割して複数種類の濃度の標準ガスを得るのには、例えば非特許文献1に記載のような標準ガス分割器が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「標準ガス分割器 SGD-SC series」、[online]、株式会社堀場エステック、[2019年2月25日検索]、インターネット<URL: http://www.horiba.com/uploads/media/87314_SG-DJ_01.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、標準ガスを実測する際に生じる様々な要因によって、較正式が不正確なものとなる場合がある。例えば、標準ガスを調製するための標準ガス分割器に不具合がある、用意された成分ガスや希釈ガスの残量が少ない、或いは、標準ガス分割器の操作が不適切である等のために、標準ガスの濃度が規定の濃度から外れてしまうと、正確な較正式が得られなくなる。較正作業を担う担当者による操作ミス等が原因で該担当者がそれに気付いたような場合には、標準ガスの測定をやり直す等の対応が可能であるものの、そうでない場合には、不正確な較正式に基づいて誤差の大きな測定が実施されることになる。
【0009】
装置を使用するユーザー側で標準ガスを実測した結果に基づいて較正式が適切であるか否かを検査することは可能であるものの、濃度が相違する複数の標準ガスをユーザーが用意するのはコスト的な負担が大きく、実用的でない。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、検量に用いられる較正式が異常である場合に、少なくとも一部の異常を、実際にガス測定を実行することなく検出することができる、ガス濃度測定装置の較正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によるガス濃度測定装置の較正方法は、試料ガスが収容される試料セルと、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出する検出器と、該検出器の出力に基づいて前記試料ガスの濃度を求める演算部と、を備えたガス濃度測定装置を較正する方法であって、
所定の濃度を有する標準ガスをガス供給源から前記試料セル中に供給し、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出器で検出するという動作を、互いに異なる濃度を有する複数の標準ガスについて繰り返し実行する測定ステップと、
前記検出器の出力と前記標準ガスの濃度との二次元プロットを多項式近似によりフィッティングして較正式を作成する較正式作成ステップと、
前記較正式について1階微分を行って1階微分式を算出する1階微分ステップと、
前記較正式について2階微分を行って2階微分式を算出する2階微分ステップと、
前記1階微分式及び前記2階微分式のそれぞれにおいて値がマイナスになるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記1階微分式で値がマイナスになるか、又は、前記2階微分式で値がマイナスになるかのいずれか一方であるときに、前記較正式が異常であると判断する異常判定ステップと、
を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
ガス成分による光吸収は物理現象であり、ガス成分濃度を横軸、検出器出力を縦軸としたときの両者の関係を表す曲線の曲がりは、滑らかで下に凸状であり、且つガス成分濃度の増加に伴いその傾きは大きくなる。したがって、較正式で示される曲線の形状がこれに反している場合には、その較正式は異常であると判断することができる。本発明の一態様では、較正式に対する1階微分式及び2階微分式を用いることで上記のような曲線の異常の有無を判定する。
【0013】
本発明の一態様によるガス濃度測定装置の較正方法によれば、較正式に対する演算処理とその演算結果に対する判定処理のみによって、該較正式の異常を検出することができる。もちろん、本発明の一態様による方法で検出可能である異常状態は、起こり得る異常の一部ではあるものの、後述するように、比較的起こりがちな、つまりは比較的頻度が高い異常である。そのため、本発明の一態様による較正方法によれば、適切でない較正式を用いることで誤差の大きな測定結果が得られるといった状況を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の較正方法を実施するガス濃度測定装置の一実施形態の概略構成図。
【
図2】本実施形態のガス濃度測定装置における較正式異常検出の手順を示すフローチャート。
【
図5】
図3に示した較正式の1階微分及び2階微分を示す図。
【
図6】
図4に示した較正式の1階微分及び2階微分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るガス濃度測定装置の較正方法の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
<本実施形態による装置の構成>
図1は、本発明に係る較正方法を実施するガス濃度測定装置の一実施形態の概略構成図である。このガス濃度測定装置は、シングルビーム方式のNDIR法により試料ガス中の特定のガス成分の濃度を測定する装置である。但し、シングルビーム方式をダブルビーム方式に代えることは当業者にとって容易なことは明らかである。
【0017】
このガス濃度測定装置は、光源1と、回転セクタ2と、光学フィルタ3と、試料セル4と、検出器5と、信号処理部6と、操作部7と、表示部8と、を含む。回転セクタ2は、光源1から出射された光を周期的に遮蔽するものである。光学フィルタ3は、目的とするガス成分の吸収波長に応じた特定の波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルタである。但し、検出器5として特定波長だけに感度を有するガス封入型などの検出器を使用した場合には、光学フィルタを含まない場合がある。信号処理部6は、機能ブロックとして、較正式作成部61、較正式チェック部62、較正式記憶部63、及び光量-濃度換算部64などを含む。なお、信号処理部6は、CPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータを中心として構成することができるが、例えばその機能の一部又は全部をデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの専用のハードウェアで実現することもできる。
【0018】
また、
図1中に記載の標準ガス発生部9は、較正式を作成する際に用いられるものであり、希釈ガス貯留部91、成分ガス貯留部92、標準ガス分割部93を含む。標準ガス発生部9は、本実施形態のガス濃度測定装置に含まれるものではない。
【0019】
<本実施形態の装置における測定動作>
本実施形態のガス濃度測定における特徴的な測定動作を概略的に説明する。このときには、較正式記憶部63に、ガス成分濃度と検出器出力との関係を較正するための較正式が格納されているものとする。
【0020】
光源1から出射された光は、回転セクタ2により間欠的に光学フィルタ3及び試料セル4に入射される。例えば目的成分がCOである場合、COの吸収波長付近の波長帯域の光が光学フィルタ3で選択されて試料セル4に入射する。試料セル4には試料ガスが流通され、試料セル4に導入された光は該試料ガスに含まれる目的成分(CO)による吸収を受ける。そうして光量が減衰した光が検出器5に到達し、検出器5はその光量に応じた検出信号を出力する。なお、赤外線検出器は一般に、入射光の強度変化に対して検出信号が出力されるため、回転セクタ2を用いて光変調を行う。
【0021】
また、目的成分を含む試料ガスの測定に引き続いて、目的成分を含まない(除去した)試料ガスについても同様の測定を行い、光量に応じた検出信号を取得する。信号処理部6において光量-濃度換算部64は、目的成分有りの試料ガスに対する測定結果と目的成分無しの試料ガスに対する測定結果とから、目的成分による光吸収量を算出する。光量-濃度換算部64はさらに、較正式記憶部63に格納されている較正式を用いて、光吸収量から目的成分の濃度を算出する。そして、その結果を表示部8に出力する。
【0022】
<本実施形態の装置における較正式>
図3は、較正式記憶部63に格納される較正式を表す曲線(較正曲線)の一例を示す図である。較正式を算出する際には、標準ガス発生部9を試料セル4に接続し、目的成分のスパンバス(成分ガス貯留部92に貯留されているガス)を1、0.8、0.6、0.4、0.2に希釈したガスを標準ガスとして順番に測定する。そして、それら各濃度に対応する検出器出力を取得する。較正式作成部61は、導入したガスの濃度(「1」がスパンパスの濃度、「0」が濃度ゼロ)をx、ガス濃度「1」に対応する検出器出力を「1」とし、ガス濃度「0」に対応する検出器出力を「0」としたときの相対的な検出器出力をyとして、
図3に示すようなグラフ上に実測による検出器出力をプロットする。そして、その複数(6点)のプロット点に基づく最小二乗法により所定の次数の多項式の係数を決定し、その多項式を較正式とする。
【0023】
ガス成分による光吸収は物理現象であり、較正曲線は
図3に示すように、その曲がりが滑らかで下に凸形状であり、且つガス濃度が増加するに従いその傾きが大きくなる。ところが、較正式作成のための標準ガスの実測時に、濃度が0.4である筈の標準ガスの濃度が実際には0.4からずれていて他の濃度の標準ガスは適正であった場合、較正曲線が
図4に示すようになってしまうことがある。これは、濃度が0.4である筈の標準ガスのみ、その実際の濃度が0.4よりも大きい場合である。
【0024】
例えば非特許文献1に記載の標準ガス分割器は毛細管式流量比混合法により濃度を調整しているが、例えば特定の毛細管が破損したり詰まったりしたことにより、特定の濃度を選択したときに希釈ガスの流量が減少すると、上述したように実際の濃度が設定値からずれてしまうことになる。一般に、上記のようにガス濃度が不正確になるという不具合の頻度はそれほど高くはないものの、そうした不具合の原因が分割器自体の不具合であるケースは多い。また、標準ガスの測定の途中で成分ガスや希釈ガスが枯渇してボンベを入れ替えたり、圧力調整をし直したりした場合にも同様の異常が発生する場合がある。
【0025】
当然のことながら、較正式が
図4に示した例のように不適切なものであると、光吸収量の測定自体が適切であっても、濃度の誤差が大きくなることが避けられない。これに対し、本実施形態の装置では、上述したように作成された較正式をチェックする機能が備えられている。
【0026】
<較正式の異常検出方法>
図2は、較正式チェック部62で実施される較正式異常検出処理の手順を示すフローチャートである。
まず、較正式チェック部62は較正式記憶部63から処理対象の較正式を読み込む(ステップS1)。この較正式は、
図3や
図4に示すような較正曲線を表す多項式である。次に、その較正式をxについて1階微分して1階微分式y’を算出する(ステップS2)。
【0027】
次いで、1階微分式y’においてx=0付近で微分値にマイナス値があるか否かを判定する(ステップS3)。x=0付近で微分値にマイナス値があることはx=0付近で較正曲線が単調に増加していないことを意味しており、これは較正曲線として異常である。なお、ステップS3では、x=0~1の範囲全体で微分値にマイナス値があるか否かを判定しても構わないが、実際にマイナス値になる可能性があるのはx=0付近のみであるので、x=0付近の所定の範囲内のみで判定を行えば十分である。
【0028】
ステップS3でYesと判定された場合には後述するステップS7へと進む。一方、ステップS3でNoと判定された場合には、上記較正式をxについて2階微分して2階微分式y''を算出する(ステップS4)。そして、2階微分式y''においてx=0~1の範囲全体で2階微分値にマイナス値があるか否かを判定する(ステップS5)。x=0~1の全範囲で2階微分値にマイナス値があることは較正曲線の傾きが単調増加でない、つまり途中で変曲点が存在することを意味しており、これも較正曲線として異常である。
【0029】
そこで、ステップS5でYesと判定された場合には上記ステップS3でYesと判定された場合と同様にステップS7へ進み、較正式が異常であると判定し、その判定結果を表示部8に出力する。一方、ステップS5でNoと判定された場合には、少なくともこのチェックにおいては正常であると判定し、その判定結果を表示部8に出力する(ステップS6)。
【0030】
図5は、
図3に示した正常な較正式の1階微分及び2階微分を示す図である。また、
図6は、
図4に示した異常な較正式の1階微分及び2階微分を示す図である。
図5に示すように、較正曲線が正常である場合には、ステップS3及びS5のいずれの判定処理もクリアしている。これに対し、較正曲線が
図4に示しように異常である場合には、
図6に示すように1階微分の微分値はx=0のごく近傍でマイナス値になっている。また、2階微分の微分値はかなりの部分でマイナス値となっている。したがって、ステップS3及びS5のいずれの判定処理で異常と判定される。
【0031】
なお、一般に較正曲線の傾きは測定レンジによりかなり異なり、測定レンジを広げると較正曲線の傾きは急になる。そのように較正曲線の傾きが急である場合に、或る濃度で実測により得られたプロット点の位置が適切でないと、較正曲線がx=0付近で下降し易い。
【0032】
なお、
図4に示した例は、0~1の範囲の6点の濃度のうちの一つの濃度が適正でない場合の例であるが、複数の濃度が適正でない場合であっても、上述した手法で検出できる場合があることは明らかである。
【0033】
また、上記実施形態は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば上記説明では、較正式のチェックを装置のメーカーが実施することを前提としていたが、ユーザー側で同様のチェックが可能であることは明白である。また、標準ガス分割部93にマスフローコントローラ式ガス希釈器を使用した場合でも、同様の効果が得られることは明白である。
【0034】
<本発明の各種態様の説明>
以上、図面を参照して本発明における種々の実施形態を説明したが、最後に、本発明の種々の態様について説明する。
【0035】
本発明の第1の態様に係るガス濃度測定装置の較正方法は、試料ガスが収容される試料セルと、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出する検出器と、該検出器の出力に基づいて前記試料ガスの濃度を求める演算部と、を備えたガス濃度測定装置を較正する方法であって、
所定の濃度を有する標準ガスをガス供給源から前記試料セル中に供給し、該試料セル中に光を通過させてその通過した光を検出器で検出するという動作を、互いに異なる濃度を有する複数の標準ガスについて繰り返し実行する測定ステップと、
前記検出器の出力と前記標準ガスの濃度との二次元プロットを多項式近似によりフィッティングして較正式を作成する較正式作成ステップと、
前記較正式について1階微分を行って1階微分式を算出する1階微分ステップと、
前記較正式について2階微分を行って2階微分式を算出する2階微分ステップと、
前記1階微分式及び前記2階微分式のそれぞれにおいて値がマイナスになるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記1階微分式で値がマイナスになるか、又は、前記2階微分式で値がマイナスになるかのいずれか一方であるときに、前記較正式が異常であると判断する異常判定ステップと、
を有するものである。
【0036】
第1の態様によれば、較正式に対する演算処理とその演算結果に対する判定処理のみによって、該較正式の異常を検出することができる。それにより、適切でない較正式を用いることで誤差の大きな測定結果が得られるといった状況を軽減することができる。
【0037】
第2の態様に係るガス濃度測定装置の較正方法では、第1の態様において、
前記ガス供給源は、標準ガス分割器を有し、
前記異常判定ステップにおいて前記較正式が異常であると判断されたときに、前記標準ガス分割器を調整する調整ステップ、をさらに含む、ものとすることができる。
【0038】
第2の態様によれば、較正式が異常である場合に標準ガス分割器を調整し、そのうえで再度、標準ガスの測定を実施して較正式の作成を試みることができる。それにより、標準ガス分割器が異常であって調整により正常な状態に復帰する場合には、正確な較正式を得ることができる。
【0039】
第3の態様に係るガス濃度測定装置の較正方法では、第1又は第2の態様において、
前記ガス濃度測定装置は、前記較正式を表示する表示部を備え、
前記異常判定ステップでは、前記較正式が異常であると判断したときに、前記表示部に警告表示を行うようにすることができる。
【0040】
第3の態様によれば、較正式が異常である場合に、ユーザーは警告表示により異常であることを直ぐに把握することができる。また、そのときの較正式も確認することができる。
【0041】
第4の態様に係るガス濃度測定装置の較正方法では、第1~第3の態様のいずれか一つにおいて、
前記ガス濃度測定装置は、NDIR法により試料ガス中の特定のガス成分の濃度を測定するものであるものとすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…光源
2…回転セクタ
3…光学フィルタ
4…試料セル
5…検出器
6…信号処理部
61…較正式作成部
62…較正式チェック部
63…較正式記憶部
64…濃度換算部
7…操作部
8…表示部
9…標準ガス発生部
91…希釈ガス貯留部
92…成分ガス貯留部
93…標準ガス分割部