(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20221213BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R13/02 B
F16B5/10 D
(21)【出願番号】P 2019056166
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶座 聖始
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
【審査官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-067221(JP,U)
【文献】特開2014-139060(JP,A)
【文献】特開2006-292116(JP,A)
【文献】特開2018-199387(JP,A)
【文献】特開2003-291644(JP,A)
【文献】特開平09-042236(JP,A)
【文献】特開2016-055807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353028(US,A1)
【文献】特開2000-291612(JP,A)
【文献】特公平5-72309(JP,B2)
【文献】特開2000-052999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01-13/04
B60R 13/08
B60J 5/00ー 5/14
F16B 5/00ー 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす内装材本体部と、
前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されると共に、前記内装材本体部に対して着脱可能に取り付けられた機能部品と、を備え、
前記機能部品は、
機能部品本体部と、
前記機能部品本体部から前記内装材本体部側に突出する突出部と、を備え、
前記内装材本体部には、前記突出部を前記内装材本体部に取り付けるための
複数の取付孔が貫通形成され、
複数の前記取付孔
の各々は、
前記突出部を挿入することが可能な
円形状の第1孔部と、
前記内装材本体部における前記第1孔部の孔縁部に形成され、前記第1孔部と連通すると共に前記突出部の中間部が挿入される第2孔部と、を有し、
前記突出部の先端部が前記内装材本体部における前記第2孔部の孔縁部に対して乗物室外側から係止する
ものとされ、
前記第2孔部は、前記第1孔部の中心を中心にして120度間隔で放射状に3つ配されており、
複数の前記取付孔は、横方向に等間隔で並んで列を形成するとともに、上下方向に複数の列が並ぶ形で配され、上方・下方に隣接する列を形成する複数の前記取付孔に対して、横方向における中間位置に位置するように配されている乗物用内装材。
【請求項2】
前記第2孔部の前記孔縁部の乗物室外側の面は、
前記第2孔部の各々の両脇に一対の突起部を有しており、
前記突出部の前記先端部は、一対の前記突起部に対して乗物室外側から当接する
ものとされ、
前記突出部の基端部には、軟質材が取り付けられ、
前記軟質材は、前記機能部品本体部と前記内装材本体部との間に介在されている請求項
1に記載の乗物用内装材。
【請求項3】
前記内装材本体部の乗物室外側に配され、
複数の前記取付孔を覆うシート部材を備え
、
前記内装材本体部における乗物室外側の面には、
複数の前記取付孔のうち近接する3つのものに囲まれた箇所ごとに、前記シート部材に対して乗物室内側から当接する当接面を有するスペーサが
突出して複数形成され、
前記当接面は、前記突出部の先端部における乗物室外側の面よりも、乗物室外側に配されている請求項1
又は請求項2に記載の乗物用内装材。
【請求項4】
複数の前記スペーサのうちの一部のものの前記当接面には、
前記シート部材に向かって突出する形状をなし、前記シート部材を保持する保持部が設けられ、
前記保持部は、
前記シート部材に貫通形成された貫通孔に挿入される保持部側基端部と、前記シート部材における前記貫通孔の孔縁部に対して乗物室外側から係止する保持部側先端部と、を有する
請求項3に記載の乗物用内装材。
【請求項5】
前記突出部は、円柱形状をなし、
前記先端部の直径は、前記中間部の直径よりも大きい請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用内装材。
【請求項6】
前記内装材本体部は乗物室内側に開口された凹部を有し、
前記機能部品の少なくとも一部が前記凹部に収容されており、
前記取付孔は、前記凹部の底部に形成されている請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の乗物用内装材。
【請求項7】
前記内装材本体部において、前記複数の前記取付孔の少なくとも一部は前記内装材本体部の乗物室外側に配されたスピーカと重なる箇所に配されている請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物に設けられる乗物用内装材において、様々な機能部品を備えたものが知られている(下記特許文献1)。特許文献1には機能部品としてドアポケットが例示されている。特許文献1のドアポケットは、ドアトリム(乗物用内装材)に形成されたポケット開口部と、ポケット開口部の裏面側に取り付けられるポケットバックカバー(ドアポケット基材)を主体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、機能部品であるドアポケットは乗物用内装材の本体部に対して一体的に設けられている。言い換えると、機能部品は取り外すことを前提とした構成ではない。しかしながら、機能部品を他の機能部品と交換したいという要望や、機能部品を乗物用内装材の本体部から取り外して清掃を行いたいという要望等があり、機能部品の着脱を容易に行うことが可能な乗物用内装材が求められている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、機能部品の着脱を容易に行うことが可能な乗物用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される乗物用内装材は、板状をなす内装材本体部と、前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されると共に、前記内装材本体部に対して着脱可能に取り付けられた機能部品と、を備え、前記機能部品は、機能部品本体部と、前記機能部品本体部から前記内装材本体部側に突出する突出部と、を備え、前記内装材本体部には、前記突出部を前記内装材本体部に取り付けるための取付孔が貫通形成され、前記取付孔は、前記突出部を挿入することが可能な第1孔部と、前記内装材本体部における前記第1孔部の孔縁部に形成され、前記第1孔部と連通すると共に前記突出部の中間部が挿入される第2孔部と、を有し、前記突出部の先端部が前記内装材本体部における前記第2孔部の孔縁部に対して乗物室外側から係止することに特徴を有する。
【0007】
上記構成において、内装材本体部に機能部品を取り付ける際には次のようにする。作業者は、乗物室内側から第1孔部に対して、突出部を挿入した後、突出部を第2孔部側にスライド変位させることで第2孔部に対して突出部の中間部を嵌合させる。この結果、突出部の先端部が第2孔部の孔縁部に対して乗物室外側から係止する。これにより、内装材本体部に対して機能部品を取り付けることができる。また、機能部品を取り外す際には、突出部を第2孔部から第1孔部に変位させることで、第1孔部から突出部を抜くことができる。このように、突出部を取付孔に対して挿抜することで、機能部品の着脱を容易に行うことができる。
【0008】
また、前記突出部は、円柱形状をなし、前記先端部の直径は、前記中間部の直径よりも大きいものとすることができる。平面視において円形状をなす先端部を第2孔部の孔縁部の全周に亘って係止させることができ、より確実に係止させることができる。
【0009】
また、前記第2孔部の前記孔縁部の乗物室外側の面は、突起部を有しており、前記突出部の前記先端部は、前記突起部に対して乗物室外側から当接するものとすることができる。突起部が形成されていることで、第1孔部に対して、突出部を挿入した後、突出部を第2孔部側にスライド変位させる際に、突出部の先端部が突起部の表面に摺動する。これにより、作業者は節度感を得ることができるため、突出部が第1孔部から第2孔部に変位したことを容易に確認することができる。
【0010】
また、前記突出部の基端部には、軟質材が取り付けられ、前記軟質材は、前記機能部品本体部と前記内装材本体部との間に介在されているものとすることができる。軟質材を備えることで、機能部品本体部が内装材本体部の表面に当接する事態を抑制することができる。特に突出部を第2孔部側にスライド変位させる際に、機能部品本体部が内装材本体部の表面(意匠面)に摺動する事態を抑制できるため、内装材本体部の表面を傷付ける事態を抑制することができる。
【0011】
また、前記内装材本体部は乗物室内側に開口された凹部を有し、前記機能部品の少なくとも一部が前記凹部に収容されており、前記取付孔は、前記凹部の底部に形成されているものとすることができる。凹部の底部に取付孔を形成すれば、凹部の内面のうち、上方を向く面によって機能部品を支持することが可能となる。
【0012】
また、前記内装材本体部の乗物室外側に配され、前記取付孔を覆うシート部材を備えるものとすることができる。取付孔をシート部材で覆うことで、乗物室内側から内装材本体部を視た場合において、取付孔を通じてシート部材以外の部品が目視される事態を抑制することができ、意匠性が低下する事態を抑制できる。
【0013】
また、前記内装材本体部における乗物室外側の面には、前記シート部材に対して乗物室内側から当接する当接面を有するスペーサが設けられ、前記当接面は、前記突出部の先端部における乗物室外側の面よりも、乗物室外側に配されているものとすることができる。シート部材に当接面が当接することで、シート部材が乗物室内側に変位し、突出部の先端部と干渉する事態を抑制することができる。
【0014】
また、前記当接面には、前記シート部材に向かって突出する形状をなし、前記シート部材を保持する保持部が設けられ、前記保持部は、前記シート部材に貫通形成された貫通孔に挿入される保持部側基端部と、前記シート部材における前記貫通孔の孔縁部に対して乗物室外側から係止する保持部側先端部と、を有するものとすることができる。シート部材を内装材本体部に対して固定することができる。
【0015】
また、前記内装材本体部には、複数の前記取付孔が形成され、前記第1孔部は円形状をなし、前記第2孔部は、前記第1孔部の中心を中心にして120度間隔で放射状に3つ配されているものとすることができる。複数の取付孔を幾何学的な模様とすることで、意匠性をより高くすることができる。
【0016】
また、前記内装材本体部には、複数の前記取付孔が形成され、前記内装材本体部において、前記複数の前記取付孔の少なくとも一部は前記内装材本体部の乗物室外側に配されたスピーカと重なる箇所に配されているものとすることができる。複数の取付孔を備えることで、機能部品の取付位置を適宜変更することができる。また、スピーカから出力された音を複数の取付孔を通じて乗物室内側に出力することができる。つまり、複数の取付孔が形成されている箇所をスピーカグリルとして用いることができ、好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機能部品の着脱を容易に行うことが可能な乗物用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】突出部を示す断面図(
図4のV-V線で切断した図に対応)
【
図6】取付孔の第1孔部に突出部が挿入された状態を車室外側から視た図
【
図7】取付孔の第1孔部に突出部が挿入された状態を示す断面図(
図6のVII-VII線で切断した図に対応)
【
図8】突出部が第1孔部から第2孔部へ変位する過程を示す断面図
【
図9】貫通孔を示す断面図(
図9のIX-IX線で切断した図に対応)
【
図10】実施形態2に係る複数の取付孔を車室外側から視た図
【
図11】突出部を示す断面図(
図10のXI-XI線で切断した図に対応)
【
図12】突出部を示す断面図(
図10のXII-XII線で切断した図に対応)
【
図18】
図17のティッシュボックスホルダーを示す分解斜視図
【
図19】
図17のティッシュボックスホルダーを車室外側から視た斜視図
【
図20】ティッシュボックスホルダーが備える突出部を示す断面図
【
図22】実施形態7に係る取付孔を車室外側から視た図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1から
図9によって説明する。本実施形態では、乗物用内装材として、ドアトリム10を例示する。ドアトリム10は、図示しないインナパネルの車室内側に取り付けられる車両用内装材であって、インナパネルと共に車両用ドアを構成するものである。ドアトリム10は、板状のトリム本体部11(内装材本体部)と、トリム本体部11に対して車室内側(乗物室内側)に配されると共に、トリム本体部11に対して着脱可能に取り付けられた紐状の保持部材50(機能部品)と、を備える。
【0020】
トリム本体部11は、
図1及び
図2に示すように、車室内側に開口された凹部13を有する。凹部13は、トリム本体部11において、アームレスト12の下方となる箇所に形成されている。保持部材50は、帯状の紐部51(バンド)と、紐部51に複数個装着された装着部52,53と、装着部52,53の各々に設けられた突出部54(突出ピン、
図3及び
図5参照)と、を備える。紐部51は、伸縮性及び可撓性を有する材質(例えばゴム製)によって構成されている。なお紐部51の形状は帯状に限定されず適宜変更可能である。保持部材50は、凹部13に収容されており、各装着部52,53の位置を適宜変更することで、様々な形状で配置することが可能となっている。
図1では、保持部材50がW字状をなす形で配置されているものを例示している。保持部材50は、部材15(
図1では霜取り用のスクレーパーを例示)を車室内側から覆うことで部材15を凹部13内で保持することができる。部材15の下方には、凹部13の内面のうち上方を向く支持面13A(
図9も参照)が配されている。これにより、支持面13Aによって部材15を下方から覆うことが可能となっており、部材15を支持することが可能となっている。
【0021】
凹部13の底部14には、保持部材50の突出部54をトリム本体部11に取り付けるための複数の取付孔30が貫通形成されている。なお、装着部52,53は、それぞれ保持部材50を着脱する際(取付孔30に突出部54を挿抜する際)に作業者によって把持される部分(把持部)として用いることができ、例えば合成樹脂製とされる。また、装着部52,53は、トリム本体部11に取り付けられることで、紐部51の形状を保持する機能を有している。
【0022】
装着部52は、
図1に示すように、紐部51の延設方向に沿って長い長手状をなし、紐部51の両端部にそれぞれ設けられている。装着部53は、
図1及び
図3に示すように、円柱形状をなし、紐部51の中間部に設けられている。装着部53は、紐部51が挿通可能な挿通孔53Aを有している。これにより、装着部53は、紐部51の延設方向に沿って変位可能となっている。
【0023】
なお、保持部材50は、部材15を保持する機能を有する機能部品であり、紐部51及び装着部52,53は機能部品本体部を構成するものとされる。突出部54は、機能部品本体部である装着部52(又は装着部53)からトリム本体部11側に突出するものとされる。なお、以下の説明では、装着部52を例示して突出部54の構成を説明するが、装着部53においても突出部54に係る構成は同じである。
【0024】
突出部54は、
図5に示すように、円柱形状をなし、基端部55と、中間部56と、先端部57とを備える。基端部55の直径D1は、中間部56の直径D2よりも大きいものとされ、先端部57の直径D3は、基端部55の直径D1よりも大きいものとされる。つまり、先端部57の直径D3は、中間部56の直径D2よりも大きいものとされる。取付孔30は、
図4に示すように、突出部54を挿入することが可能な第1孔部31と、トリム本体部11における第1孔部31の孔縁部に形成され、第1孔部31と連通すると共に突出部54の中間部56が挿入される第2孔部32と、を有する。なお、
図4は、トリム本体部11の底部14を車室外側(裏側)から視た図である。なお、中間部56は、突出部54の突出方向における中間部である。
【0025】
取付孔30は、車室内外方向に貫通形成されている。第1孔部31は円形状をなしており、第2孔部32は、第1孔部31の中心を中心にして120度間隔(
図4の角度K1=120度)で放射状に3つ配されている。第2孔部32は、第1孔部31の径方向に沿う方向に長い長孔である。第2孔部32の幅B2は、中間部56の直径D2とほぼ同じ(又は直径D2よりもわずかに大きい)ものとされる。つまり、中間部56は、第2孔部32内において、第2孔部32の長手方向に沿って変位可能となっている。また、第2孔部32の幅B2は、先端部57の直径D3よりも小さいものとされる。本実施形態では、突出部54を第1孔部31に挿入した後、第1孔部31の周囲にある3つの第2孔部32のうちいずれかの第2孔部32側にスライド変位させることで、
図4に示すように、中間部56が第2孔部32に嵌合されると共に、
図5に示すように、突出部54の先端部57がトリム本体部11における第2孔部32の孔縁部に対して車室外側(乗物室外側)から係止する構成となっている。また、第2孔部32の孔縁部の車室外側の面は、一対の突起部33,33を有している。突出部54の先端部57は、一対の突起部33,33に対して車室外側から当接する。
【0026】
図5に示すように、基端部55には、円環状の軟質材58(ワッシャ)が装着されている。軟質材58は、例えばシリコンゴム等の合成ゴムによって構成されているが、材質はこれに限定されず、装着部52,53よりも軟らかい材質であればよい。軟質材58は、装着部52とトリム本体部11との間に介在されている。突起部33を含むトリム本体部11の車室内外方向の厚さT1は、自然状態(突出部54が取付孔30に挿通されていない状態)における軟質材58の車室外側の面53Bから先端部57の車室内側の面57Aまでの長さよりも、わずかに大きいものとされる。このため、突出部54が取付孔30に挿通されている状態(
図5の状態)では、軟質材58は、車室内外方向について自然状態よりもわずかに縮んだ状態で配されている。この結果、一対の突起部33,33が先端部57の車室内側の面57Aに押し当てられており、突起部33と面57Aとの間に生じる摩擦によって、先端部57が第1孔部31側に変位する事態が規制されている。
【0027】
本実施形態では、
図1に示すように、車両前後方向に並ぶ複数の取付孔30の列(取付孔30群)が上下方向に複数段並ぶ形で配されている。取付孔30群においては、複数の取付孔30が等間隔で並ぶものとされる。そして、ある取付孔30群の取付孔30(
図1、
図4において符号30Aを付す)は、その上方(又は下方)に隣接する取付孔30群における隣接する2つの取付孔30,30(
図1、
図4において符号30Bを付す)の中間位置に配されている。凹部13は、正面視において、下辺側が短い略台形状をなしており、複数の取付孔30は、凹部13に倣う形で並ぶものとされる。
【0028】
例えば、複数の取付孔30において車両後端部を構成する取付孔30(
図1において符号30Dを付す)は、車両前方に向かうにつれて下降傾斜する形(凹部13の開口縁部13Bに沿う形)で複数並ぶものとされる。本実施形態では、複数の取付孔30のうち、任意の取付孔30に突出部54を挿入することができる。このため、保持部材50の形状(配策経路)は、W状に限定されず適宜変更可能である。また、
図1及び
図9に示すように、トリム本体部11において、複数の取付孔30の一部はトリム本体部11の車室外側に配されたスピーカ16と重なる箇所に配されている。
【0029】
また、
図5に示すように、トリム本体部11の車室外側には、複数の取付孔30を覆うシート部材17が配されている(
図9も参照)。シート部材17は、例えば不織布とされるが、材質はこれに限定されない。トリム本体部11における車室外側の面には、シート部材17に対して車室内側から当接する当接面18Aを有するスペーサ18が設けられ、当接面18Aは、突出部54の先端部57における車室外側の面57Bよりも、車室外側に配されている。スペーサ18は、
図4に示すように、120度間隔で放射状に配された3つのリブによって構成されており、一つのスペーサ18は、3つの取付孔30に囲まれている。なお、シート部材17は、スピーカ16と重なる箇所には配されていない。
【0030】
そして、当接面18Aにおいてスペーサ18の中心となる箇所(3つのリブの接続箇所)には、シート部材17に向かって突出する形状をなす保持部19(保持ピン)が形成されている。保持部19は、
図4に示すように、シート部材17を保持する機能を有しており、シート部材17に貫通形成された貫通孔17Aに挿入される保持部側基端部20と、シート部材17における貫通孔17Aの孔縁部に対して車室外側から係止する保持部側先端部21と、を有する。保持部側先端部21は例えば熱カシメによって形成されている。なお、保持部19は、複数設けられているが、
図4に示すように、複数のスペーサ18のうち、一部のスペーサ18に形成されている。
【0031】
次に本実施形態の効果について説明する。上記構成において、トリム本体部11に保持部材50(各装着部52,53)を取り付ける際には次のようにする。作業者は、装着部52を把持しつつ、
図6及び
図7に示すように、車室内側から第1孔部31に対して、突出部54を挿入した後、突出部54を第2孔部32側(
図7では左側)にスライド変位させることで第2孔部32に対して突出部54の中間部56を嵌合させる。この結果、
図5に示すように、突出部54の先端部57が第2孔部32の孔縁部に対して車室外側から係止する。これにより、トリム本体部11に対して保持部材50を取り付けることができる。また、保持部材50を取り外す際には、突出部54を第2孔部32から第1孔部31に変位させることで、第1孔部31から突出部54を抜くことができる。このように、突出部54を取付孔30に対して挿抜することで、保持部材50の着脱を容易に行うことができる。
【0032】
また、突出部54は、円柱形状をなし、先端部57の直径D3は、中間部56の直径D2よりも大きいものとされる。平面視において円形状をなす先端部57を第2孔部32の孔縁部の全周に亘って係止させることができ、より確実に係止させることができる。
【0033】
また、第2孔部32の孔縁部の車室外側の面は、突起部33を有しており、突出部54の先端部57は、突起部33に対して車室外側から当接するものとされる。突起部33が形成されていることで、第1孔部31に対して、突出部54を挿入した後、突出部54を第2孔部32側にスライド変位させる際に、
図8に示すように、突出部54の先端部57が突起部33の表面に摺動する。これにより、作業者は節度感を得ることができるため、突出部54が第1孔部31から第2孔部32に変位したことを容易に確認することができる。
【0034】
また、突出部54の基端部55には、軟質材58が取り付けられ、軟質材58は、装着部52とトリム本体部11との間に介在されている。軟質材58を備えることで、装着部52がトリム本体部11の表面に当接する事態を抑制することができる。特に突出部54を第2孔部32側にスライド変位させる際に、装着部52がトリム本体部11の表面(意匠面)に摺動する事態を抑制できるため、トリム本体部11の表面を傷付ける事態を抑制することができる。
【0035】
また、トリム本体部11は車室内側に開口された凹部13を有し、保持部材50が凹部13に収容されており、取付孔30は、凹部13の底部14に形成されている。凹部13の底部14に取付孔30を形成すれば、凹部13の内面のうち、上方を向く支持面13Aによって保持部材50によって保持された部材15を支持することが可能となる。
【0036】
また、トリム本体部11の車室外側に配され、取付孔30を覆うシート部材17を備える。取付孔30をシート部材17で覆うことで、車室内側からトリム本体部11を視た場合において、取付孔30を通じてシート部材17以外の部品が目視される事態を抑制することができ、意匠性が低下する事態を抑制できる。また、シート部材17の色を適宜設定することで、より多様な意匠を実現することも可能である。
【0037】
また、トリム本体部11における車室外側の面には、シート部材17に対して車室内側から当接する当接面18Aを有するスペーサ18が設けられ、当接面18Aは、突出部54の先端部57における車室外側の面よりも、車室外側に配されている。シート部材17に当接面18Aが当接することで、シート部材17が車室内側に変位し、突出部54の先端部57と干渉する事態を抑制することができる。
【0038】
また、当接面18Aには、シート部材17に向かって突出する形状をなし、シート部材17を保持する保持部19が設けられ、保持部19は、シート部材17に貫通形成された貫通孔17Aに挿入される保持部側基端部20と、シート部材17における貫通孔17Aの孔縁部に対して車室外側から係止する保持部側先端部21と、を有する。シート部材17をトリム本体部11に対して固定することができる。
【0039】
また、トリム本体部11には、複数の取付孔30が形成され、第1孔部31は円形状をなし、第2孔部32は、第1孔部31の中心を中心にして120度間隔で放射状に3つ配されている。複数の取付孔30を幾何学的な模様とすることで、意匠性をより高くすることができる。
【0040】
また、トリム本体部11には、複数の取付孔30が形成され、トリム本体部11において、複数の取付孔30の少なくとも一部はトリム本体部11の車室外側に配されたスピーカ16と重なる箇所に配されている。複数の取付孔30を備えることで、保持部材50の取付位置を適宜変更することができる。また、スピーカ16から出力された音を複数の取付孔30を通じて車室内側に出力することができる。つまり、複数の取付孔30が形成されている箇所をスピーカグリルとして用いることができ、好適である。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図10から
図12によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、トリム本体部11において、一対の突起部33,33の代わりに突起部233が設けられている点が上記実施形態と相違する。
図10に示すように、突起部233は、3つの取付孔30の間に配され、3つの第2孔部32に跨る形で設けられている。
図11に示すように、突出部54が第2孔部32にある状態では、先端部57における車室内側の面57Aが突起部233の表面に当接する構成となっている。
【0042】
図10及び
図12に示すように、突起部233は、略円形状をなしており、周端部よりも中央部の突出高さが大きくなるものとされる。このため、第1孔部31に対して、突出部54を挿入した後、突出部54を第2孔部32側にスライド変位させる際に、突出部54の先端部57が突起部233の表面233A(
図12参照)に摺動する。これにより、作業者は節度感を得ることができるため、突出部54が第1孔部31から第2孔部32に変位したことを容易に確認することができる。
【0043】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を
図13から
図14によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のドアトリム310は、ドリンクホルダ350(機能部品)を備える。本実施形態のドリンクホルダ350は、上方に開口された収容部351Aを有するホルダ本体部351と、ホルダ本体部351(機能部品本体部)における車室外側の面からトリム本体部11側に突出する複数本の突出部54(
図14参照)と、を備える。収容部351Aには、
図13に示すように飲料の容器351Bを収容することが可能となっている。
【0044】
なお、ホルダ本体部351は、
図14に示すように、収容部351Aを有する筒状部352と、筒状部352における車室外側の上端部から車室外側に向かうにつれて上昇傾斜する形で延びる第1延設部353と、第1延設部353における車室外側の端部から下方に延びる第2延設部354と、を備え、突出部54は、第2延設部354に設けられている。本実施形態によれば、複数の取付孔30のいずれかに各突出部54を挿抜することで、ドリンクホルダ350をトリム本体部11に対して着脱することができるため、ドリンクホルダ350の取付位置を容易に変更することができる。
【0045】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を
図15から
図16によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態のドアトリム410は、ドアポケット450(機能部品)を備える。ドアポケット450は、上方に開口された収容部451Aを有するポケット本体部451と、ポケット本体部451(機能部品本体部)における車室外側の面からトリム本体部11側に突出する複数の突出部54(
図16参照)とを備える。本実施形態によれば、複数の取付孔30のいずれかに各突出部54を挿抜することで、ドアポケット450をトリム本体部11に対して着脱することができるため、ドアポケット450の取付位置を容易に変更することができる。また、ドアポケット450の取付位置を比較的下方に配することで、凹部13の支持面13Aによってドアポケット450を支持することができる。
【0046】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を
図17から
図20によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のドアトリム510は、
図17に示すように、ティッシュボックス553(
図18参照)を保持することが可能なティッシュボックスホルダー550(機能部品)を備える。ティッシュボックスホルダー550は、
図18に示すように、軟質材からなるケース551と、ケース551に収容される芯材552と、を備える。
【0047】
ケース551は、上方に開口する開口部551Aを有しており、開口部551Aを通じてティッシュボックス553をケース551内に出し入れすることができる。また、開口部551Aの開口縁部には、開口部551Aを開閉可能なスライドファスナー551Bが設けられている。また、ケース551における車室内側の壁部には、ティッシュボックス553のティッシュ553Aを取り出すことが可能な取出口551Dが形成されている。芯材552は、例えば合成樹脂製の板材であり、ケース551の内面に沿って配されることで、ケース551の形状を保持する機能を有している。
【0048】
芯材552には、
図18及び
図20に示すように、取付孔30に挿通可能な突出部554が複数設けられている。本実施形態の突出部554は、2つの部材(第1部材554Aと第2部材554B)によって構成されている。第1部材554Aは、突出部554の中間部556及び先端部557を構成する部材であり、第2部材554Bは、突出部554の基端部555を構成する部材である。
図20に示すように、基端部555は、芯材552に貫通形成された貫通孔552Aに対して車室内側から挿通されており、第2部材554Bの係止部554Dが貫通孔552Aの孔縁部に対して車室内側から係止する構成となっている。そして、基端部555に形成された開口部555Aに対して、第1部材554Aの車室内側の端部が嵌合することで、第2部材554Bに対して第1部材554Aが取り付けられている。
【0049】
基端部555には、円環状の軟質材58(ワッシャ)が装着されている。また、ケース551には、基端部555を挿通可能な挿通孔551Eが形成されている。これにより、
図19に示すように、突出部554が、ケース551(機能部品本体部を構成)の車室外側の面からトリム本体部11側に突出する構成となっている。本実施形態では、突出部554の中間部556が第2孔部32に挿通され、先端部557が第2孔部32の孔縁部に対して車室外側から係止する構成となっている。これにより、ティッシュボックスホルダー550がトリム本体部11に対して取り付けられる。本実施形態によれば、複数の取付孔30のいずれかに各突出部554を挿抜することで、ティッシュボックスホルダー550をトリム本体部11に対して着脱することができるため、ティッシュボックスホルダー550の取付位置を容易に変更することができる。
【0050】
<実施形態6>
次に、本発明の実施形態6を
図21によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、機能部品としてフック部材650を例示する。フック部材650は、
図21に示すように、本体部651(機能部品本体部)と、本体部651における車室内側(
図21では左側)の面に設けられた係止爪651Aと、本体部651における車室外側の面からトリム本体部11側に突出する突出部54と、を備える。係止爪651Aには、他部材(例えば袋の取手等、図示せず)を引っ掛けることが可能となっている。なお、本体部651は、作業者が突出部54をトリム本体部11に着脱する際に把持する部分(把持部)として用いることができる。本実施形態によれば、取付孔30に各突出部54を挿抜することで、フック部材650をトリム本体部11に対して着脱することができるため、フック部材650の取付位置を容易に変更することができる。
【0051】
<実施形態7>
次に、本発明の実施形態7を
図22によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、取付孔の形状が上記各実施形態と異なる。本実施形態の取付孔730は、第1孔部31と、3つの第2孔部732とを有する。第2孔部732は、第1孔部31と連通されている。つまり、第2孔部732は、第1孔部31側に開口された開口732Aを有する。そして、開口732Aの幅B3は、突出部54の中間部56の直径D2よりもわずかに小さいものとされる。
【0052】
突出部54をトリム本体部11に取り付ける際には、作業者は、中間部56を第1孔部31から第2孔部732にスライド変位させる。この過程において、中間部56が開口732Aを通過する際には、中間部56に押圧された開口732Aの開口縁部が弾性的に変形することで、開口732Aの開口幅がわずかに広くなり、中間部56が開口732Aを通過することができる。そして、中間部56が第2孔部732に嵌合した状態では、開口732Aの開口縁部が元の状態(
図22の状態)に復帰する。開口732Aの幅B3は、突出部54の中間部56の直径D2よりもわずかに小さいものであるため、第2孔部732にある中間部56(
図22では2点鎖線で示し、符号56Aを付す)が、第1孔部31に移動する事態を抑制することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)トリム本体部11に2つ以上の機能部品が着脱可能に取り付けられていてもよい。例えば、実施形態1の保持部材50と実施形態3のドリンクホルダ350の双方がトリム本体部11に取り付けられていてもよい。
(2)上記実施形態では、乗物用内装材としてドアトリムを例示したが、これに限定されない。乗物用内装材は、ドアトリム以外の車両用内装材(インストルメントパネル、ラゲージトリム等)であってもよい。また、乗物用内装材は、車両以外の乗物に搭載される内装材であってもよい。
(3)上記実施形態において、突出部54の中間部56及び基端部55が同じ径であり、中間部56及び基端部55の双方が第2孔部32に挿入される構成であってもよい。
(4)取付孔の形状は上記実施形態で例示したものに限定されない。例えば、第1孔部が方形状や三角形状をなしていてもよいし、取付孔における第2孔部の個数も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…ドアトリム(乗物用内装材)、11…トリム本体部(内装材本体部)、13…凹部、14…凹部の底部、16…スピーカ、17…シート部材、17A…貫通孔、18…スペーサ、18A…当接面、19…保持部、20…保持部側基端部、21…保持部側先端部、30…取付孔、31…第1孔部、32…第2孔部、33,233…突起部、50…保持部材(機能部品)、52,53…装着部(機能部品本体部)、54…突出部、55…突出部の基端部、56…突出部の中間部、57…突出部の先端部、57B…車室外側の面(突出部の先端部における乗物室外側の面)、58…軟質材、D2…中間部の直径、D3…先端部の直径、350…ドリンクホルダ(機能部品)、450…ドアポケット(機能部品)、550…ティッシュボックスホルダー(機能部品)