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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20221213BHJP
   B62D 7/14 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D7/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019056649
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020157811
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 陽介
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232676(JP,A)
【文献】特開2006-282168(JP,A)
【文献】特開2012-6506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/10
B62D 5/04, 6/00, 7/00,15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の転舵角の調整を通じ、車両の旋回に関する状態量である旋回状態量を制御する前輪舵角調整装置と、前記前輪舵角調整装置とは別に設けられ、前記旋回状態量を制御する旋回制御装置と、操舵トルクが入力されるステアリングホイールを有するとともに、前記前輪に連結されている操舵装置と、を備える車両に適用され、
前記前輪舵角調整装置及び前記旋回制御装置のうちの少なくとも一方の装置を駆動させることによって、前記旋回状態量の目標である目標旋回状態量に前記旋回状態量を追随させる旋回支援制御を実施する旋回制御部と、
前記旋回支援制御の実施中で操舵が行われていないときには、前記ステアリングホイールの操舵角を中立点で保持するトルクである保持トルクを導出し、同保持トルクの前記ステアリングホイールへの付与を前記操舵装置に指示する操舵指示部と、を備え、
前記旋回制御部は、操舵が行われていない場合の前記旋回支援制御では、前記旋回制御装置を駆動させる一方で前記前輪舵角調整装置を駆動させず、操舵が行われている場合の前記旋回支援制御では、前記前輪舵角調整装置を駆動させる
車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記旋回制御装置として、当該車両の後輪の転舵角の調整を通じて前記旋回状態量を調整する後輪舵角調整装置を備えるものであり、
前記旋回制御部は、操舵が行われている場合の前記旋回支援制御では、前記前輪舵角調整装置及び前記後輪舵角調整装置を駆動させる
請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記車両には、前記旋回制御装置として、前記車両の右輪と左輪との間の制動力差を調整することで前記旋回状態量を制御する制動装置を備えるものであり、
前記旋回制御部は、操舵が行われていない場合の前記旋回支援制御では、前記後輪舵角調整装置及び前記制動装置のうちの少なくとも一方の装置を駆動させ、且つ、前記前輪舵角調整装置を駆動させない
請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
操舵に関する操舵関連値を取得し、前記旋回状態量の要求値である要求旋回状態量として当該操舵関連値に応じた値を設定する要求旋回状態量設定部と、
設定されている走行経路に従って前記車両を自動旋回させるための前記旋回状態量の目標である目標自動旋回状態量を設定する目標自動旋回状態量設定部と、
前記要求旋回状態量及び前記目標自動旋回状態量のうち、絶対値が大きくなる方の状態量を基に前記目標旋回状態量を導出する目標旋回状態量導出部と、を備える
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行レーンを走行する車両の旋回を支援する旋回支援制御を実施する走行制御装置の一例が記載されている。この走行制御装置では、運転者が操舵を行っていない状況下で車両を旋回させる場合、操舵装置に連結されている前輪の転舵角を自動的に調整することによって車両を旋回させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-6506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記旋回支援制御の実施によって車両を自動旋回させている場合、ステアリングホイールの操舵角を中立点で保持することが考えられる。中立点とは、前輪の転舵角が「0(零)」であるときの操舵角である。操舵角を中立点で保持する場合、操舵角を中立点で保持するためのトルクである保持トルクを、操舵装置の駆動によってステアリングホイールに付与することになる。
【0005】
保持トルクの大きさは、車両の車体スリップ角及び前輪の転舵角によって変わる。そのため、車体スリップ角や前輪の転舵角の変化に応じて保持トルクを逐次更新する必要がある。この場合、保持トルクのうち、車体スリップ角に応じた成分である第1トルクと、前輪の転舵角に応じた成分である第2トルクとが個別に導出されることとなる。このように第1トルク及び第2トルクをそれぞれ導出させる場合、走行制御装置の演算負荷が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の走行制御装置は、前輪の転舵角の調整を通じ、車両の旋回に関する状態量である旋回状態量を制御する前輪舵角調整装置と、前記前輪舵角調整装置とは別に設けられ、前記旋回状態量を制御する旋回制御装置と、操舵トルクが入力されるステアリングホイールを有するとともに、前記前輪に連結されている操舵装置と、を備える車両に適用される。この走行制御装置は、前記前輪舵角調整装置及び前記旋回制御装置のうちの少なくとも一方の装置を駆動させることによって、前記旋回状態量の目標である目標旋回状態量に前記旋回状態量を追随させる旋回支援制御を実施する旋回制御部と、前記旋回支援制御の実施中で操舵が行われていないときには、前記ステアリングホイールの操舵角を中立点で保持するトルクである保持トルクを導出し、同保持トルクの前記ステアリングホイールへの付与を前記操舵装置に指示する操舵指示部と、を備えている。そして、前記旋回制御部は、操舵が行われていない場合の前記旋回支援制御では、前記旋回制御装置を駆動させる一方で前記前輪舵角調整装置を駆動させず、操舵が行われている場合の前記旋回支援制御では、前記前輪舵角調整装置を駆動させる。
【0007】
上記構成によれば、旋回支援制御の実施中において操舵が行われていないときには、前輪舵角調整装置が駆動されないため、前輪の転舵角が「0(零)」で維持される。そのため、保持トルクを導出する場合、車体スリップ角に応じたトルク成分の導出は必要であるものの、前輪の転舵角に応じたトルク成分の導出は不要となる。したがって、前輪の転舵角に応じたトルク成分を導出しなくてもよい分、走行制御装置の演算負荷の増大を抑制しつつ、ステアリングホイールの操舵角を中立点で保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の車両の走行制御装置の機能構成と、同走行制御装置を備える車両の概略構成とを示す図。
図2】操舵が行われているか否かを判定する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図3】旋回支援制御を実施する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図4】操舵装置を制御する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、車両の走行制御装置の一実施形態を図1図4に従って説明する。
図1には、本実施形態の走行制御装置70を備える車両が模式的に図示されている。車両は、複数の前輪FL,FRの転舵角θFを調整する前輪舵角調整装置10と、各前輪FL,FRに連結されている操舵装置20と、複数の後輪RL,RRの転舵角θRを調整する後輪舵角調整装置30とを備えている。前輪FL,FRの転舵角θFのことを「前輪転舵角θF」といい、後輪RL,RRの転舵角θRのことを「後輪転舵角θR」という。また、車両は、車両の制動力を調整する制動装置40と、車両の駆動力を調整する駆動装置50とを備えている。
【0010】
前輪舵角調整装置10は、前輪用転舵アクチュエータ11と、前輪用転舵アクチュエータ11を制御する前輪転舵制御部16とを有している。前輪用転舵アクチュエータ11は、タイロッド13を介して各前輪FL,FRに連結されている。前輪用転舵アクチュエータ11には動力源として前輪用モータ12が設けられており、前輪用モータ12は前輪転舵制御部16に制御される。そして、前輪舵角調整装置10は、前輪用モータ12の駆動トルクをタイロッド13を介して各前輪FL,FRに伝達することにより、前輪転舵角θFを調整する。
【0011】
操舵装置20は、ステアリングホイール21と、操舵アクチュエータ22と、操舵アクチュエータ22を制御する操舵制御部26とを有している。ステアリングホイール21は、運転者に操作されるものであるため、操舵に起因する操舵トルクTQInが入力される。操舵アクチュエータ22は、ステアリングシャフト23を介してステアリングホイール21に連結されているとともに、中間シャフト24を介して前輪用転舵アクチュエータ11に連結されている。つまり、操舵アクチュエータ22は、中間シャフト24、前輪用転舵アクチュエータ11及びタイロッド13を介して各前輪FL,FRに連結されている。
【0012】
操舵によって各前輪FL,FRを転舵させる場合、運転者によってステアリングホイール21に入力された操舵トルクTQInが、操舵アクチュエータ22を介して前輪用転舵アクチュエータ11に入力される。これにより、ステアリングホイール21の操舵角の変化に応じ、前輪転舵角θFが変更される。すなわち、操舵が行われている場合、実際の操舵角Strと前輪転舵角θFとの間には相関がある。前輪転舵角θFと相関する操舵角Strのことを「基準操舵角StrB」という。そして、操舵によって各前輪FL,FRを転舵させる場合、実際の操舵角Strはそのときの基準操舵角StrBとほぼ一致している。なお、前輪転舵角θFが「0(零)」である場合の基準操舵角StrBのことを「中立点StrC」という。
【0013】
操舵アクチュエータ22は、実際の操舵角Strと、基準操舵角StrBとの差分を調整する作動角制御機構221と、作動角制御機構221の動力源である操舵用モータ222とを有している。操舵制御部26によって作動角制御機構221の作動を制御することによって、操舵角Strと基準操舵角StrBとの間に差分を発生させることができる。なお、操舵によって各前輪FL,FRを転舵させる場合、差分が「0(零)」となるように作動角制御機構221が作動される。これにより、実際の操舵角Strが、そのときの基準操舵角StrBとほぼ一致することとなる。
【0014】
また、操舵装置20には、操舵角Strを検出する操舵角センサ101と、操舵によってステアリングホイール21に入力される操舵トルクTQInを検出するトルクセンサ102とが設けられている。操舵角センサ101は、操舵角Strに応じた信号を検出信号として操舵制御部26及び走行制御装置70に出力する。トルクセンサ102は、操舵トルクTQInに応じた信号を検出信号として操舵制御部26及び走行制御装置70に出力する。
【0015】
後輪舵角調整装置30は、後輪用転舵アクチュエータ31と、後輪用転舵アクチュエータ31を制御する後輪転舵制御部36とを有している。後輪用転舵アクチュエータ31は、タイロッド33を介して各後輪RL,RRに連結されている。後輪用転舵アクチュエータ31には動力源として後輪用モータ32が設けられており、後輪用モータ32が後輪転舵制御部36に制御される。そして、後輪舵角調整装置30は、後輪用モータ32の駆動トルクをタイロッド33を介して各後輪RL,RRに伝達することにより、後輪転舵角θRを調整する。このように車両走行中に後輪転舵角θRが変更されると、車両のヨーモーメントの大きさが変わる。ヨーモーメントの大きさが変わると、車両のヨーレートYrや横加速度Gyなどのような旋回状態量が変わる。旋回状態量とは、車両の旋回に関する状態量である。したがって、本実施形態では、後輪舵角調整装置30が、「旋回制御装置」の一例である。
【0016】
制動装置40は、制動アクチュエータ41と、制動アクチュエータ41を制御する制動制御部46とを有している。制動アクチュエータ41は、各車輪FL,FR,RL,RRの制動力を個別に調整することができる。車両が走行している場合、右前輪FRと左前輪FLとの間に制動力差を発生させることにより、車両にヨーモーメントを発生させることができる、すなわち旋回状態量を可変させることができる。したがって、本実施形態では、制動装置40もまた、「旋回制御装置」の一例である。
【0017】
駆動装置50は、パワーユニット51と、パワーユニット51を制御する駆動制御部56とを有している。パワーユニット51には、エンジンや電気モータなどの車両の動力源が設けられている。図1に示す例では、各後輪RL,RRが駆動輪であるため、駆動装置50から出力された駆動トルクが各後輪RL,RRに入力される。
【0018】
走行制御装置70は、各種の車載装置を駆動させることにより、設定されている走行経路TRに従った車両の自動走行を支援する。本実施形態では、走行制御装置70には、例えば走行レーンに沿って車両を走行させるための走行経路TRに関する情報が他の装置から入力される。
【0019】
走行制御装置70は、車両の旋回を支援するための機能部として、操舵判定部71と、旋回制御部72と、操舵指示部73と、要求旋回状態量設定部74と、目標自動旋回状態量設定部75と、目標旋回状態量導出部76とを有している。
【0020】
操舵判定部71は、運転者が操舵を行っているか否かの判定を行う。例えば、操舵判定部71は、トルクセンサ102からの検出信号を基に導出された操舵トルクTQInを用い、操舵が行われているか否かの判定を行う。操舵が行われているか否かの判定処理については後述する。
【0021】
旋回制御部72は、前輪舵角調整装置10、後輪舵角調整装置30及び制動装置40のうちの少なくとも1つの装置を駆動させることによって、旋回状態量TSQの目標である目標旋回状態量TSQTrに旋回状態量TSQを追随させる旋回支援制御を実施する。旋回状態量TSQは、その値が大きいほど大きなヨーモーメントを発生させることのできるような状態量である。旋回状態量TSQとしては、例えば、ヨーレートセンサ103からの検出信号に基づいて導出される車両のヨーレートYr、及び、横方向加速度センサ104からの検出信号に基づいて導出される車両の横加速度Gyを挙げることができる。
【0022】
旋回制御部72は、操舵判定部71によって操舵が行われているとの判定がなされているときには、操舵が行われている場合の旋回支援制御として操舵時旋回支援制御を実施する。一方、旋回制御部72は、操舵判定部71によって操舵が行われているとの判定がなされていないときには、操舵が行われていない場合の旋回支援制御として非操舵時旋回支援制御を実施する。旋回制御部72は、操舵時旋回支援制御では、前輪舵角調整装置10を駆動させ、且つ、後輪舵角調整装置30及び制動装置40のうちの少なくとも1つの装置を駆動させる。一方、旋回制御部72は、非操舵時旋回支援制御では、後輪舵角調整装置30及び制動装置40のうちの少なくとも1つの装置を駆動させる一方で、前輪舵角調整装置10を駆動させない。
【0023】
操舵時旋回支援制御が実施されている場合、前輪転舵制御部16は、前輪転舵角θFを可変させるべく前輪用転舵アクチュエータ11を制御する。一方、非操舵時旋回支援制御が実施されている場合、駆動の指示が前輪舵角調整装置10に入力されていないため、前輪転舵制御部16は、前輪転舵角θFが「0(零)」となるように前輪用転舵アクチュエータ11を制御する。すなわち、操舵時旋回支援制御の実施時において前輪舵角調整装置10を駆動させないということは、前輪転舵角θFを「0(零)」で維持することである。
【0024】
旋回支援制御が実施されている状況下で後輪舵角調整装置30の駆動が旋回制御部72に指示されている場合、後輪転舵制御部36は、後輪転舵角θRを可変させるべく後輪用転舵アクチュエータ31を制御する。一方、旋回支援制御が実施されている状況下で後輪舵角調整装置30の駆動が旋回制御部72に指示されていない場合、後輪転舵制御部36は、後輪転舵角θRが「0」で維持されるように後輪用転舵アクチュエータ31を制御する。すなわち、旋回支援制御において後輪舵角調整装置30を駆動させるということは、後輪転舵角θRを調整することによって車両を旋回させることである。一方、旋回支援制御において後輪舵角調整装置30を駆動させないということは、後輪転舵角θRを「0(零)」で維持することである。
【0025】
旋回支援制御が実施されている状況下で制動装置40の駆動が旋回制御部72に指示されている場合、制動制御部46は、右前輪FRと左前輪FLとの間に制動力差が発生するように制動アクチュエータ41を制御する。一方、旋回支援制御が実施されている状況下で制動装置40の駆動が旋回制御部72に指示されていない場合、制動制御部46は、右前輪FRと左前輪FLとの間に制動力差を発生させない。すなわち、旋回支援制御において制動装置40を駆動させるということは、右輪と左輪との制動力差を調整することによって車両を旋回させることである。一方、旋回支援制御において制動装置40を駆動させないということは、当該制動力差を「0(零)」で維持することである。
【0026】
なお、制動装置40の駆動によって右前輪FR及び左前輪FLのうちの少なくとも一方に制動力が付与されると、車両が減速することがある。そのため、旋回支援制御の実施によって制動装置40を駆動させる場合、旋回制御部72は、右前輪FR及び左前輪FLのうちの少なくとも一方への制動力の付与に起因する車両の減速を相殺するように、車両の駆動力の増大を駆動制御部56に指示するようにしてもよい。この場合、駆動制御部56は、当該指示が入力されると、車両の駆動力が当該指示に応じた分だけ増大されるようにパワーユニット51を制御する。
【0027】
操舵指示部73は、旋回制御部72によって旋回支援制御が実施されているときに、操舵装置20を制御する。すなわち、操舵指示部73は、非操舵時旋回支援制御が実施されている場合、操舵角を中立点StrCで維持する旨を操舵装置20に指示する。一方、操舵指示部73は、操舵時旋回支援制御が実施されている場合、運転者の操舵をアシストする旨を操舵装置20に指示する。なお、非操舵時旋回支援制御が実施されている場合の操舵指示部73の処理内容、及び、操舵時旋回支援制御が実施されている場合の操舵指示部73の処理内容については後述する。
【0028】
要求旋回状態量設定部74は、操舵に関する操舵関連値を取得し、旋回状態量の要求値である要求旋回状態量として操舵関連値に応じた値を設定する。操舵関連値としては、例えば、操舵角Str、及び、操舵トルクTQInを挙げることができる。例えば操舵角Strを操舵関連値とした場合、要求旋回状態量設定部74は、操舵角Strが大きいほど値が大きくなるように要求旋回状態量TSQRを設定する。操舵判定部71によって操舵が行われているとの判定がなされていない場合、要求旋回状態量設定部74は、要求旋回状態量TSQRを「0(零)」と等しくする。なお、旋回状態量TSQが車両のヨーレートYrである場合、要求旋回状態量TSQRとして操舵関連値に応じたヨーレートYrが設定されることとなる。
【0029】
目標自動旋回状態量設定部75は、設定されている走行経路TRに従って車両を旋回させるための旋回状態量の目標である目標自動旋回状態量TSQATrを設定する。例えば、目標自動旋回状態量設定部75は、走行経路TRの旋回半径が小さいほど値が大きくなるように目標自動旋回状態量TSQATrを設定する。なお、旋回状態量TSQが車両のヨーレートYrである場合、目標自動旋回状態量TSQATrとして、走行経路TRの旋回半径及び車両の車体速度に応じたヨーレートYrが設定されることとなる。
【0030】
目標旋回状態量導出部76は、目標旋回状態量TSQTrを導出する。すなわち、操舵判定部71によって操舵が行われているとの判定がなされていない場合、目標旋回状態量導出部76は、目標旋回状態量TSQTrとして目標自動旋回状態量TSQATrを設定する。一方、操舵判定部71によって操舵が行われているとの判定がなされている場合、目標旋回状態量導出部76は、要求旋回状態量TSQRと目標自動旋回状態量TSQATrとのうち、絶対値が大きい方のパラメータを基に、目標旋回状態量TSQTrを導出する。具体的には、目標旋回状態量導出部76は、上記パラメータが大きいほど値が大きくなるように目標旋回状態量TSQTrを導出する。例えば、目標旋回状態量導出部76は、要求旋回状態量TSQRと目標自動旋回状態量TSQATrとのうちの絶対値が大きい方のパラメータを目標旋回状態量TSQTrとして設定する。
【0031】
また、目標旋回状態量導出部76は、車体スリップ角の目標である目標車体スリップ角βTrも導出する。例えば、目標旋回状態量導出部76は、導出した目標旋回状態量TSQTrを基に、目標車体スリップ角βTrを導出する。
【0032】
次に、図2を参照し、操舵が行われているか否かを判定すべく操舵判定部71が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、旋回支援制御が実施されている場合、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
【0033】
本処理ルーチンにおいて、ステップS11では、操舵トルクTQInの絶対値が判定操舵トルクTQInTh以上であるか否かの判定が行われる。判定操舵トルクTQInThは、ステアリングホイール21を回転させる意志を運転者が有しているか否かの判断基準である。操舵トルクの絶対値|TQIn|が判定操舵トルクTQInTh以上である場合、操舵が行われている。
【0034】
操舵トルクの絶対値|TQIn|が判定操舵トルクTQInTh以上である場合(S11:YES)、処理が次のステップS12に移行される。ステップS12において、操舵オーバーライドフラグFLG1にオンがセットされる。操舵オーバーライドフラグFLG1は、旋回支援制御の実施中に操舵が行われているときにはオンがセットされる一方で、旋回支援制御の実施中に操舵が行われていないときにはオフがセットされるフラグである。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS11において、操舵トルクの絶対値|TQIn|が判定操舵トルクTQInTh未満である場合(NO)、処理が次のステップS13に移行される。ステップS13において、操舵オーバーライドフラグFLG1にオフがセットされる。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0035】
次に、図3を参照し、旋回支援制御を実施すべく旋回制御部72が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、旋回支援制御の実施条件が成立している場合には所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。実施条件とは、走行経路TRが設定されており、当該走行経路TRに従った車両制御の実施が許可されていることを含む。
【0036】
本処理ルーチンにおいて、ステップS21では、操舵オーバーライドフラグFLG1にオフがセットされているか否かの判定が行われる。操舵オーバーライドフラグFLG1にオフがセットされている場合(S21:YES)、操舵が行われているとの判定がなされていないため、ステップS22~S26を含む非操舵時旋回支援制御が実施される。すなわち、非操舵時旋回支援制御において、ステップS22では、車両が走行レーンの境界線に接近しているか否かの判定が行われる。境界線は、走行レーンの側端に位置する線である。車両が境界線に接近しているか否かの判定は、車両前方を撮像する撮像装置によって得られた画像を解析することによって判定することができる。車両が境界線に接近している場合、車両の走行レーンからの逸脱が懸念される。
【0037】
車両が境界線に接近しているとの判定がなされていない場合(S22:NO)、処理が次のステップS23に移行される。ステップS23において、目標旋回状態量導出部76によって導出された目標旋回状態量TSQTrと旋回状態量TSQとの偏差を基に、後輪舵角調整装置30の制御量DRRが導出される。続いて、ステップS24において、制御量を各制御部に出力する出力処理が実行される。この場合の出力処理では、ステップS23で導出された制御量DRRが後輪転舵制御部36に出力される。また、制動装置40の制御量DRBaとして「0(零)」が制動制御部46に出力され、且つ、前輪舵角調整装置10の制御量DRFとして「0(零)」が前輪転舵制御部16に出力される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0038】
この場合、後輪舵角調整装置30では、入力された制御量DRRを基に後輪用転舵アクチュエータ31が制御される。そのため、後輪転舵角θRが制御量DRRに応じた転舵角となる。一方、制動装置40に入力された制御量DRBaが「0(零)」であるため、制動装置40は右前輪FRと左前輪FLとの間に制動力差を発生させない。また、前輪舵角調整装置10に入力された制御量DRFが「0(零)」であるため、前輪舵角調整装置10は前輪転舵角θFを「0(零)」で維持する。すなわち、後輪舵角調整装置30が駆動される一方で、前輪舵角調整装置10及び制動制御部46が駆動されない。
【0039】
一方、ステップS22において、車両が走行レーンの境界線に接近しているとの判定がなされている場合(YES)、処理が次のステップS25に移行される。ステップS25において、目標旋回状態量導出部76によって導出された目標旋回状態量TSQTrと旋回状態量TSQとの偏差を基に、後輪舵角調整装置30の制御量DRR及び制動装置40の制御量DRBaが導出される。
【0040】
ここで、旋回支援制御の開始初期では車両が境界線に接近しているとの判定がなされていなかったにも拘わらず、車両が境界線に接近しているとの判定がなされるようになった場合を例として説明する。この場合、車両が境界線に接近しているとの判定がなされていない場合、後輪舵角調整装置30の制御量DRRとして目標旋回状態量TSQTrと旋回状態量TSQとの偏差に応じた値が設定されている。そして、車両が境界線に接近しているとの判定がなされていない状態から当該判定がなされている状態に移行すると、後輪舵角調整装置30の制御量DRRは移行前の値で保持される。一方、目標旋回状態量TSQTrと旋回状態量TSQとの偏差を基に、制動装置40の制御量DRBaとして導出される。これにより、制動装置40の制御量DRBaとして、車両の横方向の中心と走行レーンの横方向の中心とのずれを是正できる値が設定される。
【0041】
そして、各制御量DRR,DRBaが導出されると、処理が次のステップS26に移行される。ステップS26において、制御量を各制御部に出力する出力処理が実行される。この場合の出力処理では、ステップS25で導出された制御量DRRが後輪転舵制御部36に出力され、且つ、制御量DRBaが制動制御部46に出力される。また、前輪舵角調整装置10の制御量DRFとして「0(零)」が前輪転舵制御部16に出力される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0042】
この場合、後輪舵角調整装置30では、入力された制御量DRRを基に後輪用転舵アクチュエータ31が制御される。そのため、後輪転舵角θRが制御量DRRに応じた転舵角となる。また、制動装置40では、入力された制御量DRBaを基に制動アクチュエータ41が制御される。そのため、右前輪FRと左前輪FLとの間に、制御量DRBaに応じた制動力差が発生する。一方、前輪舵角調整装置10に入力された制御量DRFが「0(零)」であるため、前輪舵角調整装置10は前輪転舵角θFを「0(零)」で維持する。すなわち、後輪舵角調整装置30及び制動装置40が駆動される一方で、前輪舵角調整装置10が駆動されない。
【0043】
その一方で、ステップS21において、操舵オーバーライドフラグFLG1にオンがセットされている場合(NO)、操舵が行われているとの判定がなされているため、ステップS27~S29を含む操舵時旋回支援制御が実施される。すなわち、操舵時旋回支援制御において、ステップS27では、車体スリップ角βが導出される。車体スリップ角βは、例えば、前輪転舵角θF及び後輪転舵角θRを基に導出することができる。つまり、前輪転舵角θF及び後輪転舵角θRを調整することにより、車体スリップ角βを制御することができる。
【0044】
次のステップS28において、目標旋回状態量導出部76によって導出された目標旋回状態量TSQTrと、目標車体スリップ角βTrと車体スリップ角βとの偏差と、操舵角Strとを基に、前輪舵角調整装置10の制御量DRF、後輪舵角調整装置30の制御量DRR及び制動装置40の制御量DRBaが導出される。
【0045】
例えば、前輪舵角調整装置10の制御量DRFとして操舵角Strに応じた値が設定される。また、後輪舵角調整装置30の制御量DRRとして、目標車体スリップ角βTrと車体スリップ角βとの偏差に応じた値が設定される。制御量DRF,DRRに基づいて前輪舵角調整装置10及び後輪舵角調整装置30が制御された場合における旋回状態量の予測値と、目標旋回状態量TSQTrとの偏差に応じた値が、制動装置40の制御量DRBaとして導出される。そのため、旋回状態量の予測値と目標旋回状態量TSQTrとの偏差が「0(零)」である場合、制御量DRBaとして「0(零)」が設定されることもあり得る。
【0046】
そして、ステップS29において、制御量を各制御部に出力する出力処理が実行される。この場合の出力処理では、ステップS28で導出された制御量DRFが前輪転舵制御部16に出力され、制御量DRRが後輪転舵制御部36に出力され、制御量DRBaが制動制御部46に出力される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0047】
この場合、前輪舵角調整装置10では、入力された制御量DRFを基に前輪用転舵アクチュエータ11が制御される。そのため、前輪転舵角θFが制御量DRFに応じた転舵角となる。また、後輪舵角調整装置30では、入力された制御量DRRを基に後輪用転舵アクチュエータ31が制御される。そのため、後輪転舵角θRが制御量DRRに応じた転舵角となる。また、制動装置40では、入力された制御量DRBaを基に制動アクチュエータ41が制御される。そのため、右前輪FRと左前輪FLとの間に、制御量DRBaに応じた制動力差が発生する。これにより、前輪舵角調整装置10、後輪舵角調整装置30及び制動装置40の駆動によって、目標旋回状態量TSQTrに旋回状態量TSQを追随させるとともに、目標車体スリップ角βTrに車体スリップ角βを追随させることができる。
【0048】
次に、図4を参照し、操舵装置20を制御するべく操舵指示部73が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、旋回支援制御が実施されているときに所定の制御サイクル毎に実行される。
【0049】
本処理ルーチンにおいて、ステップS41では、操舵オーバーライドフラグFLG1にオフがセットされているか否かの判定が行われる。操舵オーバーライドフラグFLG1にオフがセットされている場合(S41:YES)、操舵が行われているとの判定がなされていないため、処理が次のステップS42に移行される。ステップS42において、車両の車体速度VS及びヨーレートYrなどを基に、セルフアライニングトルクTQsatが導出される。
【0050】
続いて、ステップS42において、反力抑制トルクTQSとしてセルフアライニングトルクTQsatが設定される。次のステップS43において、ステップS42で導出した反力抑制トルクTQSをステアリングホイール21に付与する旨を操舵制御部26に出力する出力処理が実行される。本実施形態では、ステップS42で導出された反力抑制トルクTQSが、操舵角Strを中立点StrCで保持するトルクである保持トルクに相当する。すなわち、反力抑制トルクTQSを導出し、当該反力抑制トルクTQSを操舵制御部26に出力することが、操舵角Strを中立点StrCで維持する旨を操舵装置20に指示することに相当する。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0051】
この場合、操舵装置20では、入力された反力抑制トルクTQSがステアリングホイール21に付与されるように操舵アクチュエータ22が制御される。そのため、操舵角Strが中立点StrCで維持される。
【0052】
その一方で、ステップS41において、操舵オーバーライドフラグFLG1にオンがセットされている場合(NO)、操舵が行われているとの判定がなされているため、処理が次のステップS45に移行される。ステップS45において、運転者の操舵をアシストするトルクであるアシストトルクTQAsが導出される。すなわち、ステアリングホイール21に入力される操舵トルクTQInに応じた値がアシストトルクTQAsとして設定される。アシストトルクTQAsの絶対値は、操舵トルクTQInの絶対値が大きいほど大きくなる。次のステップS46において、ステップS45で導出したアシストトルクTQAsをステアリングホイール21に付与する旨を操舵制御部26に出力する出力処理が実行される。すなわち、アシストトルクTQAsを導出し、当該アシストトルクTQAsを操舵制御部26に出力することが、運転者の操舵をアシストする旨を操舵装置20に指示することに相当する。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0053】
この場合、操舵装置20では、入力されたアシストトルクTQAsがステアリングホイール21に付与されるように操舵アクチュエータ22が制御される。これにより、運転者の操舵をアシストすることができる。
【0054】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
旋回支援制御の実施中において操舵が行われていないときには、前輪転舵角θFが「0(零)」で維持される。そのため、保持トルクに相当する反力抑制トルクTQSを導出する場合、車体スリップ角βに応じたトルク成分の導出は必要であるものの、前輪転舵角θFに応じたトルク成分の導出は不要となる。したがって、前輪転舵角θFに応じたトルク成分を導出しなくてもよい分、走行制御装置70の演算負荷の増大を抑制しつつ、操舵角Strを中立点StrCで保持することができる。
【0055】
また、旋回支援制御の実施中において操舵が行われていない場合、後輪舵角調整装置30の駆動だけでは車両が走行レーンから逸脱する可能性が生じたときには、制動装置40も駆動されるようになる。このように後輪舵角調整装置30に加えて制動装置40をも駆動させることにより、走行レーンに従った車両の自動走行を支援する際における制御性を高めることができる。
【0056】
旋回支援制御の実施中において操舵が行われるようになると、前輪舵角調整装置10の駆動によって、操舵角Strの変化に応じて前輪転舵角θFが調整されるようになる。これにより、操舵が行われるようになっても前輪転舵角θFが「0(零)」で維持される場合とは異なり、操舵アクチュエータ22からステアリングホイール21に付与するトルクの大きさの算出が複雑化しにくくなる。
【0057】
また、旋回支援制御の実施中において操舵が行われている場合には、前輪転舵角θF及び後輪転舵角θRがそれぞれ調整される。そのため、旋回状態量TSQに加えて車体スリップ角βをも制御することができる。これにより、車両旋回時における車両の旋回挙動の制御性を高めることができる。
【0058】
旋回支援制御の実施中において操舵が行われる場合、目標旋回状態量TSQTrとして、操舵の開始前の値と、操舵角Strに応じた値との和を設定する場合を考える。この場合、操舵が開始されると、目標旋回状態量TSQTrが一気に大きくなって車両のヨーモーメントの大きさが急に大きくなるおそれがある。そして、車両のヨーモーメントの大きさの急激な変化に対する不快感を車両の運転者に与えてしまうおそれがある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、旋回支援制御の実施中において操舵が行われている場合、要求旋回状態量TSQRと目標自動旋回状態量TSQATrとのうち、絶対値が大きくなる方のパラメータを基に、目標旋回状態量TSQTrが導出される。これにより、操舵の開始時に目標旋回状態量TSQTrが急に大きくなることを抑制できる。すなわち、操舵の開始によって車両のヨーモーメントの大きさが急に大きくなることを抑制できる。その結果、操舵の開始時における車両の旋回挙動に対する不快感を運転者に与えにくくなる。
【0060】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・操舵時旋回支援制御の実施時にあっては、要求旋回状態量TSQRと目標自動旋回状態量TSQATrとのうち、絶対値が大きい方のパラメータを基に目標旋回状態量TSQTrを導出するのであれば、目標旋回状態量TSQTrを当該大きい方のパラメータとは異なる値としてもよい。例えば、当該大きい方のパラメータに所定のオフセット値を加算した値を目標旋回状態量TSQTrとして導出するようにしてもよい。
【0061】
・操舵時旋回支援制御の実施時にあっては、操舵の開始前の目標旋回状態量と、操舵角Strに応じた値との和を目標旋回状態量TSQTrとして設定するようにしてもよい。
・旋回支援制御の実施によって制動装置40を駆動させる場合、右後輪RRと左後輪RLとの間に制動力差を発生させることにより、車両にヨーモーメントを発生させるようにしてもよい。
【0062】
・非旋回時支援制御の実施時には、制動装置40を駆動させず、後輪舵角調整装置30を駆動させるようにしてもよい。この場合、操舵が行われているとの判定がなされるようになった場合、すなわち旋回時支援制御の実施時には、前輪舵角調整装置10及び後輪舵角調整装置30を駆動させる一方で、制動装置40を駆動させないようにしてもよい。
【0063】
・非旋回時支援制御の実施時には、後輪舵角調整装置30を駆動させず、制動装置40を駆動させるようにしてもよい。この場合、操舵が行われているとの判定がなされるようになった場合、すなわち非旋回時支援制御の実施時には、前輪舵角調整装置10及び制動装置40を駆動させる一方で、後輪舵角調整装置30を駆動させないようにしてもよい。この場合、後輪舵角調整装置30を備えない車両に、上記走行制御装置を適用することができる。
【0064】
・車両として、右輪専用の駆動モータと、左輪専用の駆動モータとを備える車両がある。この場合、右輪専用の駆動モータの駆動と左輪専用の駆動モータの駆動によって、右輪に入力される駆動トルクと、左輪に入力される駆動トルクとの間に差分を発生させ、当該差分に応じたヨーモーメントを車両に発生させることができる。そのため、こうした車両に走行制御装置70を適用する場合、各駆動モータと各駆動モータを制御する制御部とを有する駆動装置を、旋回制御装置として機能させるようにしてもよい。
【0065】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記旋回制御部は、操舵が行われている場合の前記旋回支援制御では、前記目標旋回状態量と前記旋回状態量との偏差、及び、車両の車体スリップ角の目標である目標スリップ角と車体スリップ角との偏差を基に、前記前輪舵角調整装置の制御量、及び、前記後輪舵角調整装置の制御量を導出し、前記前輪舵角調整装置の制御量を当該前輪舵角調整装置に出力し、前記後輪舵角調整装置の制御量を当該後輪舵角調整装置に出力することが好ましい。
【符号の説明】
【0066】
10…前輪舵角調整装置、20…操舵装置、21…ステアリングホイール、30…旋回制御装置の一例である後輪舵角調整装置、40…旋回制御装置の一例である制動装置、70…走行制御装置、72…旋回制御部、73…操舵指示部、74…要求旋回状態量設定部、75…目標自動旋回状態量設定部、76…目標旋回状態量導出部、FL,FR…前輪、RL,RR…後輪。
図1
図2
図3
図4