(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】粉末供給装置、三次元造形装置及び三次元造形物を造形する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20221213BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20221213BHJP
B22F 12/67 20210101ALI20221213BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20221213BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20221213BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221213BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221213BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20221213BHJP
【FI】
B29C64/35
B22F10/28
B22F12/67
B29C64/153
B29C64/214
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
(21)【出願番号】P 2019065872
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】松岡 修史
(72)【発明者】
【氏名】須田 一志
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157424(JP,A)
【文献】特開2018-187893(JP,A)
【文献】特開2016-055625(JP,A)
【文献】特開2008-137251(JP,A)
【文献】特開2004-143581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷き均された粉末を処理して造形物を形成する三次元造形装置に用いられる粉末供給装置であって、
前記粉末を収容する粉末収容部と、
前記粉末収容部と前記粉末への処理によって前記造形物が形成される造形領域との間を移動可能に配置されて、前記粉末を前記粉末収容部から前記造形領域に移動させる塗布部と、
前記塗布部に付着した残留粉末を除去する粉末除去部と、を備え、
前記塗布部は、
前記粉末収容部から前記造形領域に向かう第1方向に前記粉末を押圧する塗布押圧部と、
前記第1方向と交差する第2方向に前記塗布押圧部が突出するように、前記塗布押圧部を把持する塗布本体と、を有し、
前記粉末除去部は、
前記塗布押圧部に対面する押圧除去面と、
前記塗布本体に対面する本体除去面と、
前記本体除去面を含む本体除去部と、を有
し、
前記本体除去部の弾性率は、前記塗布本体の弾性率よりも小さく、
前記本体除去部が前記塗布本体に押圧されたとき、前記本体除去部は、前記塗布本体の形状に倣うように変形する、粉末供給装置。
【請求項2】
前記粉末除去部は、前記押圧除去面を含む押圧除去部を有し、
前記押圧除去部の弾性率は、前記塗布押圧部の弾性率よりも小さく、
前記押圧除去部が前記塗布押圧部に押圧されたとき、前記押圧除去部は、前記塗布押圧部の形状に倣うように変形する、請求項
1に記載の粉末供給装置。
【請求項3】
前記粉末除去部は、固定されている、請求項1
又は2に記載の粉末供給装置。
【請求項4】
前記粉末除去部は、前記押圧除去面及び前記本体除去面を含む可動片部と、
前記可動片部を前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに交差する第3方向に移動させる移動機構と、を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の粉末供給装置。
【請求項5】
敷き均された粉末を処理して造形物を形成する三次元造形装置であって、
前記粉末が敷き均されて、前記粉末への処理によって前記造形物が形成される造形領域部と、
前記造形領域部に前記粉末を敷き均す粉末供給部と、
を備え、
前記粉末供給部は、
前記粉末を収容する粉末収容部と、
前記粉末収容部と前記造形領域部との間を移動可能に配置されて、前記粉末を前記粉末収容部から前記造形領域部に移動させる塗布部と、
前記塗布部に付着した残留粉末を除去する粉末除去部と、を有し、
前記塗布部は、
前記粉末収容部から前記造形領域部に向かう第1方向に前記粉末を押圧する塗布押圧部と、
前記第1方向と交差する第2方向に前記塗布押圧部が突出するように、前記塗布押圧部を把持する塗布本体と、を有し、
前記粉末除去部は、
前記塗布押圧部に対面する押圧除去面と、
前記塗布本体に対面する本体除去面と、
前記本体除去面を含む本体除去部と、を有
し、
前記本体除去部の弾性率は、前記塗布本体の弾性率よりも小さく、
前記本体除去部が前記塗布本体に押圧されたとき、前記本体除去部は、前記塗布本体の形状に倣うように変形する、三次元造形装置。
【請求項6】
三次元造形装置によって三次元造形物を造形する方法であって、
前記三次元造形装置は、粉末が敷き均されて、前記粉末への処理によって前記造形物が形成される造形領域部と、前記造形領域部に粉末を敷き均す粉末供給部と、を備え、
前記粉末供給部の塗布部を所定方向に移動させることによって、前記粉末を前記造形領域部に敷き均す工程と、
敷き均された前記粉末を処理して、前記三次元造形物を造形する工程と、
前記塗布部に付着する残留粉末を除去する粉末除去部と前記塗布部とを相対的に近接させることによって、前記残留粉末を除去する工程と、を有し、
前記残留粉末を除去する工程は、
前記粉末を押圧する塗布押圧部を把持する塗布本体に付着した前記残留粉末を除去する工程と、
前記塗布押圧部に付着した前記残留粉末を除去する工程と、を含
み、
前記粉末除去部は、前記塗布本体に対面する本体除去面を含む本体除去部を有し、
前記塗布本体に付着した前記残留粉末を除去する工程では、前記塗布本体の弾性率よりも小さい弾性率である前記本体除去部が前記塗布本体に押圧されて、前記本体除去部は、前記塗布本体の形状に倣うように変形する、三次元造形物を造形する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末供給装置、三次元造形装置及び三次元造形物を造形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~7は、三次元造形装置に関する技術を開示する。三次元造形装置は、粉末状の材料を敷き均し、当該敷き均された材料に対して所定の領域にエネルギビームを照射する。エネルギビームが照射された領域における材料は、溶融したのちに固化する。そして、再び粉末状の材料を敷き均す。このように、三次元造形装置は、粉末状の材料の敷き均しとエネルギビームの照射とを繰り返すことにより、三次元の造形物を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/188152号
【文献】国際公開第2017/002926号
【文献】実用新案登録第3190955号
【文献】特開2004-175093号公報
【文献】特開2015-150825号公報
【文献】特開2016-55625号公報
【文献】特開2018-20521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉末材料は、所定の供給機構によって、貯蔵されている領域からエネルギビームが照射される領域に供給される。この供給機構は、粉末材料に直接触れる部分を有する。そうすると、当該触れる部分に粉末材料が付着することがあり得る。このような残留粉末が造形領域に敷き均された未処理の粉末材料に落下すると、造形物の品質に影響を及ぼしてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、残留粉末を確実に取り除くことが可能な粉末供給装置、当該粉末供給装置を備えた三次元造形装置及び三次元造形物を造形する方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態は、敷き均された粉末を処理して造形物を形成する三次元造形装置に用いられる粉末供給装置であって、粉末を収容する粉末収容部と、粉末収容部と粉末への処理によって造形物が形成される造形領域との間を移動可能に配置されて、粉末を粉末収容部から造形領域に移動させる塗布部と、塗布部に付着した残留粉末を除去する粉末除去部と、を備え、塗布部は、粉末収容部から造形領域に向かう第1方向に粉末を押圧する塗布押圧部と、第1方向と交差する第2方向に塗布押圧部が突出するように、塗布押圧部を把持する塗布本体と、を有し、粉末除去部は、塗布押圧部に対面する押圧除去面と、塗布本体に対面する本体除去面と、を有する。
【0007】
塗布部は、粉末を押圧する塗布押圧部によって粉末を造形領域に移動させる。この粉末は、塗布押圧部及び塗布押圧部の近傍における塗布本体に付着して、残留粉末となることがある。粉末供給装置は、塗布押圧部に対面する押圧除去面を有しているので、当該押圧除去面を塗布押圧部に相対的に近づけることによって、塗布押圧部に付着した残留粉末を取り除くことが可能である。さらに、粉末供給装置は、塗布本体に対面する本体除去面を有しているので、当該本体除去面を塗布本体に相対的に近づけることによって、塗布本体に付着した残留粉末を取り除くことが可能である。つまり、粉末供給装置は、塗布押圧部及び塗布本体における残留粉末を取り除くことができる。
【0008】
上記の粉末供給装置における押圧除去面の形状は、押圧除去面が対面する塗布押圧部の形状に倣っており、本体除去面の形状は、本体除去面が対面する塗布本体の形状に倣っていてもよい。この構成によれば、塗布押圧部及び塗布本体における残留粉末を確実に取り除くことができる。
【0009】
上記の粉末供給装置における粉末除去部は、本体除去面を含む本体除去部を有し、本体除去部の弾性率は、塗布本体の弾性率よりも小さく、本体除去部が塗布本体に押圧されたとき、本体除去部は、塗布本体の形状に倣うように変形してもよい。この構成によれば、本体除去部が塗布本体に近接したときに、本体除去部が塗布本体に付着した残留粉末を塗布本体に押し付ける力が低減される。従って、さらに確実に塗布本体に付着した残留粉末を取り除くことができる。
【0010】
上記の粉末供給装置における粉末除去部は、押圧除去面を含む押圧除去部を有し、押圧除去部の弾性率は、塗布押圧部の弾性率よりも小さく、押圧除去部が塗布押圧部に押圧されたとき、押圧除去部は、塗布押圧部の形状に倣うように変形してもよい。この構成によれば、押圧除去部が塗布押圧部に近接したときに、押圧除去部が塗布押圧部に付着した残留粉末を塗布押圧部に押し付ける力が低減される。従って、さらに確実に塗布押圧部における残留粉末を取り除くことができる。
【0011】
上記の粉末供給装置における粉末除去部は、固定されてもよい。この構成によれば、塗布部が移動して、粉末除去部に近づくことによって、残留粉末が取り除かれる。つまり、粉末除去部を移動させる構成が不要であるので、粉末供給装置の構成を簡易にできる。
【0012】
上記の粉末供給装置における粉末除去部は、押圧除去面及び本体除去面を含む可動片部と、可動片部を第1方向及び第2方向のそれぞれに交差する第3方向に移動させる移動機構と、を有してもよい。この構成によれば、さらに確実に残留粉末を取り除くことができる。
【0013】
本開示の別の形態は、敷き均された粉末を処理して造形物を形成する三次元造形装置であって、粉末が敷き均されて、粉末への処理によって造形物が形成される造形領域部と、造形領域部に粉末を敷き均す粉末供給部と、備え、粉末供給部は、粉末を収容する粉末収容部と、粉末収容部と造形領域部との間を移動可能に配置されて、粉末を粉末収容部から造形領域部に移動させる塗布部と、塗布部に付着した残留粉末を除去する粉末除去部と、を有し、塗布部は、粉末収容部から造形領域部に向かう第1方向に粉末を押圧する塗布押圧部と、第1方向と交差する第2方向に塗布押圧部が突出するように、塗布押圧部を把持する塗布本体と、を有し、粉末除去部は、塗布押圧部に対面する押圧除去面と、塗布本体に対面する本体除去面と、を有する。
【0014】
三次元造形装置は、上記の粉末供給装置と同様の構成を有する粉末供給部を有する。従って、塗布押圧部及び塗布本体における残留粉末は、確実に取り除かれる。
【0015】
本開示の更に別の形態は、三次元造形装置は、粉末が敷き均されて、粉末への処理によって造形物が形成される造形領域部と、造形領域部に粉末を敷き均す粉末供給部と、を備え、粉末供給部の塗布部を所定方向に移動させることによって、粉末を造形領域部に敷き均す工程と、敷き均された粉末を処理して、三次元造形物を造形する工程と、塗布部に付着する残留粉末を除去する粉末除去部と塗布部とを相対的に近接させることによって、残留粉末を除去する工程と、を有し、残留粉末を除去する工程は、粉末を押圧する塗布押圧部を把持する塗布本体に付着した残留粉末を除去する工程と、塗布押圧部に付着した残留粉末を除去する工程と、を含む。
【0016】
この三次元造形物を造形する方法によれば、残留粉末を除去する工程において残留粉末を確実に取り除くことができる。その結果、造形物の品質へ及ぼす残留粉末の影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の粉末供給装置、当該粉末供給装置を備えた三次元造形装置及び三次元造形物を造形する方法によれば、残留粉末を確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の三次元造形装置を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す三次元造形装置の主要部を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、除去機構と塗布機構とを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、三次元造形装置の動作を示すフロー図である。
【
図7】
図7の(a)部、同(b)部及び同(c)部は、除去動作を説明する図である。
【
図8】
図8は、変形例1の除去機構と塗布機構とを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例2の除去機構と塗布機構とを示す図である。
【
図10】
図10の(a)部及び同(b)部は、変形例3の除去機構と塗布機構との構成及び動作を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例4の除去機構と塗布機構とを示す図である。
【
図12】
図12は、変形例5の三次元造形装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に示す三次元造形装置1は、三次元造形物100を得る。三次元造形装置1は、まず、造形領域に粉末101を供給する。そして、三次元造形装置1は、粉末101にエネルギビームとしてのレーザビーム(以下、単に「レーザL」)を照射する。この照射によって、粉末101は、溶融する。レーザLの照射が停止されると、溶融した粉末101は固化する。つまり、三次元造形装置1は、粉末101の供給と、レーザLの照射と、を繰り返す。
【0021】
以下の説明において、X軸、Y軸、Z軸を用いることがある。X軸とは、作業台主面11aの面内方向であって、リコータ24が移動する方向(第1方向)である。Y軸とは、作業台主面11aの面内方向であって、X軸と直交する方向(第3方向)である。Z軸とは、作業台主面11aの法線方向であってレーザLが照射される方向(第2方向)である。
【0022】
三次元造形物100は、例えば機械部品などである。また、三次元造形物100は、その他の構造物であってもよい。粉末101は、多数の粉末体により構成される。粉末101の材料は、金属であり、例えばチタン系金属粉末、インコネル(登録商標)粉末、アルミニウム粉末、ステンレス粉末等である。粉末101の材料は、金属材料に限定されない。粉末101の材料は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)など、炭素繊維と樹脂とを含む材料であってもよい。また、粉末101の材料は、その他の材料であってもよい。粉末101の材料は、導電性を有する材料であってもよい。また、粉末101は、レーザLの照射により溶融できるものであればよい。例えば、粉末101として、粉末より粒径の大きい粒体を用いてもよい。
【0023】
三次元造形装置1は、主要な構成要素として、造形部2と、レーザ出射部3と、制御部4と、を有する。造形部2は、所望の物体である三次元造形物100を造形する部位である。レーザ出射部3は、粉末101に向けてレーザLを出射する。制御部4は、三次元造形装置1の装置全体の制御を行う電子制御ユニットである。制御部4は、例えばCPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータを含むものとしてよい。
【0024】
レーザ出射部3は、粉末101を溶融し固化させるレーザ照射装置である。レーザ出射部3から出射されたレーザLは、チャンバ9の中に照射されて、粉末101を加熱する。レーザ出射部3は、粉末101にエネルギを付与して、粉末101を加熱して溶融することができる。レーザ出射部3は、粉末101にエネルギを付与するエネルギ付与部である。レーザ出射部3は、レーザLを偏光させるミラー、ミラーを動かすためのミラー駆動部、レーザLを集光する集光レンズ等の光学部品を含んでもよい。
【0025】
制御部4は、レーザ出射部3におけるレーザLの出射制御およびミラー駆動部などの動作制御などを実行する。例えば、制御部4は、レーザ出射部3の動作制御として、ミラー駆動部に制御信号を出力して、レーザLの照射位置を制御する。制御部4には造形すべき物体である三次元造形物100の三次元CAD(Computer-AidedDesign)データが入力される。制御部4は、この三次元CADデータに基づいて二次元のスライスデータを生成する。スライスデータは、例えば、三次元造形物100の水平断面のデータであり、上下位置に応じた多数のデータの集合体である。このスライスデータに基づいて、レーザLが照射される領域が決定され、その領域に応じてミラー駆動部に制御信号が出力される。また、制御部4は、後述する粉末101の供給制御も実行する。
【0026】
造形部2は、所望の物体である三次元造形物100を造形する空間を形成し、造形に要するいくつかの装置を収容する。造形部2は、チャンバ9と、作業台11と、造形タンク12と、粉末供給装置13(粉末供給部)と、を有する。
【0027】
チャンバ9は、作業台11、造形タンク12(造形領域部)及び粉末供給装置13を収容する造形空間Sを形成する。チャンバ9は、内部を真空(低圧)状態とすることが可能な容器であり、図示しない真空ポンプが接続されている。チャンバ9の内部には例えばアルゴンガスが充填されている。
【0028】
作業台11は、作業台主面11aを有する。作業台主面11aには、後述する造形タンク12の開口部と、収容タンク17A、17Bの開口部と、回収タンク18A、18Bの開口部とが設けられている。
【0029】
図2に示すように、造形タンク12は、Z軸の方向に延びる。造形タンク12は、例えば円形状のタンク穴12aを含み、その内部には造形ピストン14が配置されている。
【0030】
造形ピストン14は、造形タンク12内に配置された平板部材と、当該平板状の部材の裏面に設けられた軸体部材と、を有する。造形タンク12と造形ピストン14とは、同心円状に配置される。造形ピストン14の形状は、造形領域の形状に対応する。造形領域の形状とは、例えば、作業台主面11aに設けられた造形タンク12の開口部の形状としてよい。造形ピストン14は、平坦なプレート主面(造形テーブル)を有する。プレート主面は、三次元造形物100及び粉末101を支持する。造形ピストン14は、レーザLの出射方向の延長線上に配置され、例えば水平なXY平面に平行に設けられる。
【0031】
造形ピストン14上に配置された粉末101に対してレーザLが照射されることから、造形ピストン14の主面は、レーザLが照射される領域(
図3参照)とみなしてよい。換言すると、造形タンク12の開口部を造形領域Mとみなしてもよい。造形領域Mは、造形ピストン14の主面や造形タンク12の開口部よりも大きい範囲であってもよいし、造形ピストン14の主面や造形タンク12の開口部の一部であってもよい。
【0032】
造形ピストン14には、ピストン駆動装置16が取り付けられている。ピストン駆動装置16は、造形ピストン14を支持すると共に、造形タンク12内で造形ピストン14を上下方向に昇降させる。ピストン駆動装置16は、制御部4と電気的に接続され、制御部4から制御信号を受けて動作する。ピストン駆動装置16は、物体の造形の初期において造形ピストン14を上部へ移動させ、造形ピストン14上で粉末101が積層されるごとに造形ピストン14を降下させる。
【0033】
上記した造形タンク12及び造形ピストン14の形状は、三次元造形物100の形状等に応じて、適宜に変更してよい。本開示の三次元造形装置1は、造形タンク12及び造形ピストン14の形状が四角形であり、造形タンク12の形状が角筒状である場合について説明する。造形ピストン14が造形タンク12内に配置され、造形ピストン14上に造形面が形成されるので、平面視において、これらは等しい形状および大きさを有する。なお、造形タンク12及び造形ピストン14の平面視における形状は、四角形には限定されず、例えば円形であってもよい。造形タンク12の形状は円筒状であってもよい。
【0034】
以下、
図2及び
図3を参照しながら粉末供給装置13について詳細に説明する。粉末供給装置13は、造形タンク12に粉末101を供給する。この粉末101の供給とは、造形タンク12の外部から造形タンク12へ粉末101を移動させる動作と、造形タンク12(具体的には造形ピストン14上)において粉末101を所定の厚みに均す動作と、を含む。
【0035】
粉末供給装置13は、一対の収容タンク17A、17B(粉末収容部)と、一対の回収タンク18A、18Bと、塗布機構19(塗布部)と、一対の除去機構21A、21B(粉末除去部)と、を有する。
【0036】
一対の収容タンク17A、17Bは、未固化の粉末101をそれぞれ収容する。一対の収容タンク17A、17Bは、造形タンク12を挟むように、造形タンク12の両脇に配置されている。収容タンク17A、17Bは、平面視して矩形状を呈する(
図3参照)。収容タンク17A、17Bは、それぞれ、タンク穴17aと、フィードピストン22と、を有する。タンク穴17aは、作業台主面11aに開口部を有する穴である。タンク穴17aは、収容タンク17A、17Bにおける側壁をそれぞれ構成する。フィードピストン22は、平面視してタンク穴17aと同じ形状を有しており、タンク穴17aの内部において上下方向に移動可能に配置されている。フィードピストン22は、収容タンク17A、17Bにおける底面を構成する。フィードピストン22には、フィードピストン22を上下方向(タンク穴17aの軸線方向)に移動させるピストン駆動装置23が設けられている。
【0037】
粉末101は、塗布機構19によって収容タンク17A、17Bから造形タンク12上に移動する。このとき、必要な粉末101を確実に供給するために、フィードピストン22は、必要量よりも多く粉末101を押し出す。そして、押し出された粉末101は、塗布機構19によって、造形タンク12上に移動する。そうすると、余剰粉末が生じる。回収タンク18A、18Bは、この余剰粉末を回収する。
【0038】
回収タンク18A、18Bは、一対の収容タンク17A、17Bを挟むように配置されている。例えば、回収タンク18Aは、収容タンク17Aに隣接する。回収タンク18Bは、収容タンク17Bに隣接する。つまり、塗布機構19の移動方向(例えば、負のX方向)に沿って、回収タンク18A、収容タンク17A、造形タンク12、収容タンク17B、回収タンク18Bの順に配置されている。回収タンク18A、18Bは、作業台主面11aに形成された回収開口18aと、回収開口18aに連通する回収領域18bと、を有する。回収開口18aは、Y方向に沿って延びており、少なくとも、造形タンク12のY方向の長さよりも長い。
【0039】
塗布機構19は、粉末101を造形タンク12に移動させる。さらに、塗布機構19は、粉末101を均す。この均すとは、作業台主面11aを基準として、未固化の粉末101の厚みを一定にする動作と規定してもよい。塗布機構19は、リコータ24と、リコータ駆動部26と、を有する。リコータ24は、正のX方向に沿って移動可能であると共に、負のX方向へも移動可能である。つまり、リコータ駆動部26は、リコータ24をX方向に沿って、往復移動させる。さらに、リコータ駆動部26は、制御部4から提供される制御信号に応じて、リコータ24を回収タンク18A、18Bにおける回収開口18a上まで移動させる。
【0040】
リコータ24は、Y方向に延びる。リコータ24の長手方向(Y方向)の長さは、少なくとも、造形タンク12の直径よりも長い。そして、リコータ24がX方向に沿って移動するとき、リコータ24は、造形タンク12の開口部の全ての領域を通過する。
【0041】
図4に示すように、リコータ24は、リコータ本体27(塗布本体)と、スクレーパ28(塗布押圧部)と、を有する。
【0042】
リコータ本体27は、例えば、金属材料により構成された硬質の部品である。リコータ本体27の剛性(強度)は、少なくとも、スクレーパ28の剛性よりも高い。リコータ本体27の両端は、リコータ駆動部26に連結されている。リコータ本体27は、スクレーパ基端28aを把持する。リコータ本体27は、作業台主面11aに対面するリコータ主面27aを有する。リコータ本体27は、このリコータ主面27aからZ方向(下向き)にスクレーパ28が突出するように、スクレーパ28を把持している。
【0043】
スクレーパ28は、粉末101を移動させると共に粉末101を均す。スクレーパ28は、比較的柔軟性を有する軟質の材料により構成されている。例えば、スクレーパ28は、シリコーン樹脂により構成されてもよい。スクレーパ28は、スクレーパ基端28aと、スクレーパ先端28bと、スクレーパ主面28cと、を有する。
【0044】
スクレーパ基端28aは、上記のとおり、リコータ本体27に把持されている。スクレーパ先端28bは、スクレーパ基端28aと逆側の端部であり、作業台主面11aと対面する。スクレーパ先端28bは、リコータ主面27aよりも作業台主面11aに近接している。スクレーパ主面28cは、粉末101に対して直接に接触する面である。スクレーパ主面28cは、スクレーパ28の移動方向(正又は負のX方向)に対して交差する面である。スクレーパ主面28cは、リコータ主面27aから下方(Z方向)に起立する。リコータ主面27aとスクレーパ主面28cとのなす角度は、概ね直角であってよい。なお、リコータ主面27aとスクレーパ主面28cとのなす角度は、直角に限定されず、直角よりも大きい鈍角としてもよい。
【0045】
スクレーパ28が正のX方向に移動するとき、一方のスクレーパ主面28cが粉末101に接触する。スクレーパ28が負のX方向に移動するとき、他方のスクレーパ主面28cが粉末101に接触する。スクレーパ28が移動するとき、リコータ主面27aと、スクレーパ主面28cと、粉末101の表面と、に囲まれた空間が形成される。そうすると、スクレーパ主面28cの近傍に存在する粉末101は、スクレーパ28の移動に伴って押圧されやすくなる。特に、粉末101は、リコータ主面27aとスクレーパ主面28cとの境界部分に滞留しやすい。この滞留した粉末101は、互いに吸着しあって、塊となり、スクレーパ主面28c及びリコータ主面27aに付着することがあり得る。このような粉末101を残留粉末200(
図7参照)と呼ぶ。
【0046】
図3~
図5に示す除去機構21A、21Bは、残留粉末200を取り除く。除去機構21A、21Bは、回収開口18a上に配置されている。除去機構21A、21Bは、板状の除去板29と、除去板29を支持する支持部31と、を有する。つまり、除去板29は、作業台主面11aに対して相対的に移動しないように固定されている。除去板29の厚み(Z方向の長さ)は、スクレーパ主面28cの長さよりも短くてもよい。また、除去板29の幅(X方向の長さ)は、スクレーパ主面28cからリコータ本体27の側面(除去機構21Aの場合はX方向において正側に位置する側面、除去機構21Bの場合は負側に位置する側面)までの長さよりも長い。この構成によれば、除去機構21A、21Bの先端をスクレーパ主面28cに接触させることができる。さらに、除去機構21A、21Bの奥行(Y方向の長さ)は、少なくとも、スクレーパ28の奥行よりも長い。
【0047】
次に、三次元造形装置1の動作について、
図6を参照しながら説明する。
【0048】
まず、粉末101を敷き均す(塗布動作)。例えば、リコータ24は、一方の除去機構21Bと一方の収容タンク17Bとの間に位置するとする。制御部4は、リコータ24を正のX方向に移動させる。この移動により、粉末101は、一方の収容タンク17Bから造形ピストン14(造形テーブル)上に移動する。その結果、造形ピストン14上に粉末層が形成される(工程S1)。
【0049】
次に、粉末層を処理する(溶融動作)。制御部4は、レーザ出射部3を制御して、造形ピストン14上の粉末101に対してレーザLを照射する(工程S2)。このレーザLの照射によって、粉末101の溶融がなされる。なお、必要に応じて、粉末101の溶融の前に、レーザLによる粉末101の予備加熱を行ってもよい。レーザLの照射が終了したのちに、制御部4は、ピストン駆動装置16を制御して、造形ピストン14を粉末層の一層分の厚さだけ下降させる。
【0050】
上記の処理の前又は処理と並行して、余剰粉末を回収する。制御部4は、リコータ24を移動させるにあたり、造形ピストン14を経て一方の収容タンク17Bから回収タンク18Aまで移動させる。その結果、造形ピストン14において塗布されなかった粉末(以下「余剰粉末」)は、収容タンク17Aを通過して、回収タンク18Aの回収開口18aまで移動する。つまり、余剰粉末は、回収開口18aを通じて回収タンク18Aに回収される。その後、制御部4は、さらにリコータ24を正のX方向に移動させる。その結果、除去機構21Aにより、後述する除去動作(工程S3)が行われる。除去動作については、後に詳細に説明する。
【0051】
粉末101の塗布動作、粉末101の溶融動作(造形処理)及び除去動作が行われた後、リコータ24は、他方の除去機構21Aと他方の収容タンク17Aとの間に位置してよい。そして、制御部4は、当該リコータ24を負のX方向に移動させる。この移動により、粉末101は、他方の収容タンク17Aから造形ピストン14上に移動する。その結果、造形ピストン14上に粉末101が敷き均される(工程S1)。
【0052】
次に、制御部4は、レーザ出射部3を制御して、造形ピストン14上の粉末101に対してレーザLを照射する(工程S2)。このレーザLの照射によって、粉末101の溶融がなされる。レーザLの照射が終了したのちに、制御部4は、ピストン駆動装置16を制御して、造形ピストン14を粉末層の一層分の厚さだけ下降させる。
【0053】
そして、制御部4は、リコータ24を移動させるにあたり、造形ピストン14を経て他方の収容タンク17Aから回収タンク18Bまで移動させる。その結果、余剰粉末は、収容タンク17Bを通過して、回収タンク18Bの回収開口18aまで移動する。つまり、余剰粉末は、回収タンク18Bに回収される。その後、制御部4は、さらにリコータ24を負のX方向に移動させる。その結果、除去機構21Bにより、後述する除去動作(工程S3)が行われる。
【0054】
以上のような工程S1、S2、S3を繰り返すことで、三次元造形物100の積層造形が行われる。
【0055】
以下、
図7の(a)部、(b)部、(c)部を参照しながら、除去機構21Aのさらに詳細な構成と、除去機構21Aによる除去動作と、を説明する。なお、除去機構21Bの構成及び除去動作は、構造や移動方向がYZ面に対して面対称(逆向き)である点を除いて、除去機構21Aと同様である。従って、除去機構21Bの詳細な説明は、除去機構21Aの説明に代えて省略する。
【0056】
図7の(a)部に示すように、塗布動作を終えたリコータ24が回収開口18aに近づく。この例示では、リコータ24は、正のX方向に移動する。造形タンク12上に塗布されなかった余剰粉末は、リコータ24によって収容タンク17Aを超えて移動させられ、回収開口18aを通じて回収タンク18Aに回収される。リコータ24には、残留粉末200が付着している。残留粉末200は、リコータ主面27a及びスクレーパ主面28cに付着している。
【0057】
図7の(b)部に示すように、除去機構21Aは、除去先端面29a(押圧除去面)と、除去主面29b(本体除去面)と、を有する。除去先端面29aは、スクレーパ主面28cに対面する。また、除去板29は、除去先端面29aが回収開口18a上に配置されるように、支持部31によって保持されている。除去主面29bは、リコータ24が除去機構21Aに近接した位置において、リコータ主面27aに対面する。除去機構21Aは、除去主面29bとリコータ主面27aとの間にわずかな隙間が形成されるように保持されている。
【0058】
リコータ24は、移動方向(正のX方向)を維持したままで、収容タンク17Aから除去機構21Aに近づく(
図7(a)参照)。このとき、
図7の(a)部に示すように、リコータ主面27a及びスクレーパ主面28cには、残留粉末200が付着している場合がある。この状態において、リコータ24が、さらに正のX方向に移動すると、除去先端面29aが残留粉末200に当接する。また、除去機構21Aの除去主面29bがリコータ主面27aと対面する。この状態では、除去主面29bと対面するリコータ主面27aに付着していた残留粉末200の一部201が取り除かれる(
図7の(b)部参照、工程S3a:塗布本体に付着した残留粉末を除去する工程)。
【0059】
図7の(c)部に示すように、リコータ24がさらに移動する。この移動は、除去先端面29aがスクレーパ主面28cに当接する直前に停止される。つまり、除去先端面29aは、スクレーパ主面28cに接触しない。なお。除去先端面29aは、スクレーパ主面28cにわずかに接触させてもよい。この移動に伴って、除去主面29bと対面するリコータ主面27aに付着した残留粉末200がさらに取り除かれる。そのうえ、除去主面29bがスクレーパ主面28cに近接することにより、スクレーパ主面28c上の残留粉末200にも刺激が与えられるので、スクレーパ主面28cに付着した残留粉末200の一部202も取り除かれる(工程S3b:塗布押圧部に付着した残留粉末を除去する工程)。
【0060】
つまり、除去機構21Aは、スクレーパ主面28cに付着した残留粉末200だけでなく、リコータ主面27aに付着した残留粉末200も除去の対象としている。その結果、残留粉末200を確実に取り除くことが可能になる。
【0061】
要するに、塗布機構19は、スクレーパ28によって粉末101を移動させる。この粉末101は、スクレーパ28及びスクレーパ28の近傍におけるリコータ本体27に付着して、残留粉末200となることがある。粉末供給装置13の除去板29は、スクレーパ28に対面する除去先端面29aを有しているので、当該除去先端面29aをスクレーパ28に相対的に近づけることによって、スクレーパ28に付着した残留粉末200を取り除くことが可能である。さらに、粉末供給装置13の除去板29は、リコータ本体27に対面する除去主面29bを有しているので、当該除去主面29bをリコータ本体27に相対的に近づけることによって、リコータ本体27に付着した残留粉末200を取り除くことが可能である。つまり、除去機構21A、21Bは、スクレーパ28及びリコータ本体27における残留粉末200を確実に取り除くことができる。リコータ24から取り除かれた残留粉末200は、回収開口18aを通じて回収タンク18A、18Bに回収できる。
【0062】
残留粉末200を除去する工程S3を実施した後、制御部4は、リコータ24を
図7の(c)部に示されている位置から、負のX方向に移動させる。そして、制御部4は、他方の収容タンク17Aから造形ピストン14上に粉末101を移動させるように、リコータ24を移動させる(工程S1)。このとき、リコータ24からは残留粉末200が除去されている。その結果、残留粉末200が造形ピストン14(粉末床)上(エネルギビームの照射領域)に落下することを防止できる。
【0063】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0064】
<変形例1>
上記の除去機構21A、21Bは、固定された除去板29を備えており、リコータ24と除去板29との相対的な位置関係は、リコータ24の移動によって変更されていた。例えば、
図8に示すように、変形例1に係る粉末供給装置13Aは、リコータ24に対して移動する可動片32(可動片部)を有する除去機構21Cを備えてもよい。具体的には、除去機構21Cは、可動片32と、可動片駆動部33(移動機構)と、を有する。可動片32は、除去板29と同様に除去先端面29aと、除去主面29bとを有する。一方、可動片32は、その奥行長さが除去板29よりも短い。そして、可動片32は、可動片駆動部33によって、奥行方向(Y軸に沿う方向)に往復移動する。この動作によって、リコータ24に付着した残留粉末を好適に取り除くことができる。
【0065】
<変形例2>
例えば、
図9に示すように、変形例2に係る粉末供給装置13Bの除去機構21Dが有する除去板34は、スクレーパ主面28cの形状に倣う除去先端面34aと、リコータ主面27aの形状に倣う除去主面34bと、を有してもよい。
図9の例示のように、リコータ主面27aの断面形状が円弧状であるとき、除去主面34bの断面形状も円弧状としてよい。このような構成によれば、スクレーパ主面28cに対して除去先端面34aを確実に近接させることが可能であり、同様に、リコータ主面27aに対して除去主面34bを確実に近接させることが可能である。つまり、リコータ主面27aと除去主面34bとが近接した状態において、大きな隙間を生じさせることがない。従って、リコータ24に付着した残留粉末をより確実に取り除くことができる。
【0066】
<変形例3>
例えば、
図10の(a)部に示すように、変形例3に係る粉末供給装置13Cの除去機構21Eが有する除去板35は、互いに異なる2個の材料により構成されてもよい。具体的には、除去板35は、除去先端面35aを含む本体除去部36と、除去主面35bを含む押圧除去部37と、を有してもよい。本体除去部36は、比較的硬質の材料により形成される。例えば、本体除去部36の弾性率は、押圧除去部37の弾性率よりも大きくてもよい。一方、押圧除去部37は、比較的軟質の材料により形成される。この軟質とは、押圧除去部37がリコータ主面27aに押し当てられたとき、リコータ主面27aの形状に倣うように容易に変形できる程度のものをいう(
図10の(b)部参照)。換言すると、押圧除去部37は、可撓性を有する材料により構成されている。また、押圧除去部37の弾性率は、リコータ本体27の弾性率よりも小さい。なお、本体除去部36も押圧除去部37と同様に、スクレーパ主面28cの形状に倣うように変形できるものとしてもよい。この構成によれば、押圧除去部37が変形可能であるので、除去主面29bがリコータ主面27aを押圧する力が低減される。従って、リコータ主面27aに付着した残留粉末をより確実に取り除くことができる。
【0067】
<変形例4>
例えば、
図11に示すように、変形例4に係る粉末供給装置13Dの除去機構21Fが有する除去板38は、側面視してL字状を呈していてもよい。この場合には、除去先端面38aの面積を除去主面36bよりも大きくすることができる。また、このような形状を有する除去板38は、
図11に示すように支持部31に固定されていてもよいし、図示しない駆動機構によって、正及び負のZ方向に移動可能とされてもよい。
【0068】
<変形例5>
三次元造形装置は、レーザ溶融法が適用された造形装置に限られない。例えば、三次元造形装置は、電子ビームを用いた造形装置であってもよい。すなわち、三次元造形装置において粉末101に照射されるビーム(エネルギービーム)は、電子ビームであってもよい。三次元造形装置において粉末101に照射されるビーム(エネルギービーム)は、電子ビームおよびイオンビームを含む概念である荷電粒子ビームであってもよい。
【0069】
例えば、
図12に示す三次元造形装置1Aは、レーザ出射部3に代えて、電子ビーム出射部3Aを有する。電子ビーム出射部3Aは、電子銃部6と、収束コイル7と、偏向コイル8とを有する。電子銃部6は、制御部4と電気的に接続され、制御部4から提供される制御信号を受けて動作する。電子銃部6は、例えば、下方に向けて電子ビームBを出射する。収束コイル7は、制御部4と電気的に接続され、制御部4から提供される制御信号を受けて動作する。収束コイル7は、電子銃部6から出射される電子ビームBの周囲に設置される。収束コイル7は、電子ビームBを収束させる。偏向コイル8は、制御部4と電気的に接続され、制御部4から提供される制御信号を受けて動作する。偏向コイル8は、電子銃部6から出射される電子ビームBの周囲に設置される。偏向コイル8は、制御信号に応じて電子ビームBの照射位置を調整する。電子銃部6、収束コイル7および偏向コイル8は、例えば、筒状を呈するコラム内に設置される。
【0070】
なお、電子ビーム出射部3Aは、粉末101の予備加熱に用いてもよい。予備加熱とは、物体の造形を行う前に粉末101に対し電子ビームBを照射して、粉末101を所定の温度まで加熱する動作をいう。
【0071】
さらに、本開示の三次元造形装置は、上記の変形例1~5のほかにも以下のような態様とすることもできる。
【0072】
実施形態の三次元造形装置1は、いわゆる粉末床溶融結合方式(PBF: Powder Bed Fusion)を採用する。例えば、除去機構が適用される三次元造形装置は、いわゆる結合剤噴射方式を採用したものであってもよい。
【0073】
上記の実施形態では、三次元造形装置1は、2個の収容タンク17A、17Bと、2個の除去機構21A、21Bと、を備えていた。収容タンク17A及び除去機構21Aは、造形ピストン14に対して正のX方向側に配置されていた。収容タンク17B及び除去機構21Bは、造形ピストン14に対して負のX方向側に配置されていた。この構成によれば、造形ピストン14(粉末床)の両側から粉末を塗布できる。さらに、この構成によれば、造形ピストン14の両側において除去機構による除去動作を行なうことができる。しかし、粉末供給装置が適用される三次元造形装置は、このような構成には限定されない。
【0074】
例えば、三次元造形装置は、造形ピストンに対して片側からのみ粉末を塗布してもよい。また、三次元造形装置は、造形ピストンに対して片側においてのみ除去動作を行ってもよい。
【0075】
例えば、三次元造形装置は、1個の収容タンクと、1個の除去機構と、を備えてもよい。この場合、収容タンクは、造形ピストンに対して負のX方向側に配置し、除去機構は、造形ピストンに対して正のX方向側に配置してもよい。換言すると、収容タンクは、造形ピストンに対して正のX方向の側に配置されないし、除去機構は、造形ピストンに対して負のX方向の側に配置されない。つまり、造形ピストンを挟むように収容タンク及び除去機構を配置する。この場合も、収容タンクからの粉末塗布によってリコータ(正のX方向側の部分)に付着した残留粉末を、除去機構によって除去することができる。
【0076】
この構成では、除去機構は、リコータの塗布動作の移動方向における前方に配置される。その結果、除去機構は、リコータにおける前方側に付着した残留粉末を除去することができる。従って、粉末塗布後にリコータが収容タンク側に戻るときに、リコータに付着した残留粉末が造形ピストン上に落下することを防止できる。換言すると、リコータが粉末塗布時の移動方向とは反対側に移動するときに、残留粉末が粉末床であるエネルギビームの照射領域に落下することを防止できる。
【0077】
また、上記の実施形態では、粉末塗布工程S1を一回行うごとに、除去動作S3を行う形態を例示した。例えば、除去動作S3を行うタイミングは、必ずしもこれには限定されない。例えば、粉末塗布工程S1を複数回行った後に、除去動作S3を行ってもよい。また、リコータ24に一定量以上の残留粉末200が付着した場合に、除去動作S3を行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1A 三次元造形装置
2 造形部
3 レーザ出射部
3A 電子ビーム出射部
4 制御部
6 電子銃部
7 収束コイル
8 偏向コイル
9 チャンバ
11 作業台
11a 作業台主面
12 造形タンク
13,13A,13B,13C,13D 粉末供給装置(粉末供給部)
14 造形ピストン(造形領域部)
16 ピストン駆動装置
17A,17B 収容タンク(粉末収容部)
18A,18B 回収タンク
19 塗布機構(塗布部)
21A,21B,21C,21D,21E,21F 除去機構(粉末除去部)
22 フィードピストン
23 ピストン駆動装置
24 リコータ
26 リコータ駆動部
27 リコータ本体(塗布本体)
27a リコータ主面
28 スクレーパ(塗布押圧部)
28a スクレーパ基端
28b スクレーパ先端
28c スクレーパ主面
29 除去板
29a 除去先端面(押圧除去面)
29b 除去主面(本体除去面)
31 支持部
32 可動片(可動片部)
33 可動片駆動部(移動機構)
34 除去板
34a 除去先端面
34b 除去主面
35 除去板
36 本体除去部
37 押圧除去部
38 除去板
100 三次元造形物
101 粉末
200 残留粉末
B 電子ビーム(エネルギビーム)
S 造形空間
M 造形領域