(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】織機の織布巻取装置
(51)【国際特許分類】
D03D 49/20 20060101AFI20221213BHJP
D03D 39/00 20060101ALI20221213BHJP
D03D 51/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
D03D49/20 E
D03D39/00
D03D49/20 Z
D03D51/00 G
(21)【出願番号】P 2019065999
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】平松 敏正
(72)【発明者】
【氏名】酒井 要介
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-076576(JP,U)
【文献】特開2001-061259(JP,A)
【文献】特開2005-289507(JP,A)
【文献】特開2014-177326(JP,A)
【文献】特開平08-268283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/20
D03D 39/00
D03D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製織された織布を、サーフェスローラおよびガイドローラを経由してクロスローラに巻き取る織機の織布巻取装置であって、
前記ガイドローラが正常時と逆方向に回転したときの逆転量を検出する逆転量検出手段と、
前記逆転量検出手段によって検出された前記逆転量に基づいて巻取異常の発生を感知する感知部と、
を備え
、
前記感知部は、前記逆転量検出手段によって検出される前記逆転量が予め設定された巻取異常確定量に達した場合に前記巻取異常の発生を感知するか、または、前記逆転量検出手段によって検出された前記逆転量が予め設定された許容量を超えた場合に前記巻取異常の発生を感知し、
前記巻取異常確定量または前記許容量は、前記ガイドローラが瞬間的に逆転するハンチング現象による逆転量より大きく、かつ、前記ガイドローラが正常時と逆方向に360°回転する逆転量より小さく設定される織機の織布巻取装置。
【請求項2】
前記逆転量検出手段は、
前記ガイドローラと一体に回転するとともに、前記ガイドローラの回転方向に凹部と凸部が交互に形成された凹凸形成面を有する回転体と、
前記回転体の凹凸形成面に対向する状態で配置され、前記凹部と対向するときに第1信号を出力し、前記凸部と対向するときに前記第1信号と異なる第2信号を出力する複数の第1センサと、
前記複数の第1センサから出力される信号に基づいて前記ガイドローラの逆転量を検出する逆転量検出部と、
を備えることを特徴とする請求項
1に記載の織機の織布巻取装置。
【請求項3】
前記回転体には、前記凹部および前記凸部が少なくとも2つずつ形成されている、請求項
2に記載の織機の織布巻取装置。
【請求項4】
前記逆転量検出手段は、
前記サーフェスローラと前記ガイドローラとの間を移動する前記織布の移動経路の変化を検出する第2センサと、
前記第2センサの検出結果に基づいて前記ガイドローラの逆転量を検出する逆転量検出部と、
を備えることを特徴とする請求項
1に記載の織機の織布巻取装置。
【請求項5】
前記感知部が前記巻取異常の発生を感知した場合に所定のエラー処理を行う制御部をさらに備え、
前記所定のエラー処理は、前記巻取異常の発生を報知する処理、および、織機の運転を停止する処理のうち、少なくとも一つの処理を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の織機の織布巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の織布巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の織機の中には、タオル織機と呼ばれるものがある。タオル織機は、タオル製織用の織機であって、織布の生地にループ状の糸、すなわちパイル糸を織り込むものである。タオル織機で製織された織布は織布巻取装置によって巻き取られる。織布巻取装置としては、サーフェスローラと、ガイドローラと、クロスローラとを備えたものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。織布巻取装置においては、製織された織布が、サーフェスローラおよびガイドローラを経由してクロスローラに巻き取られる。その際、サーフェスローラは回転の駆動源となり、この駆動源から伝達される回転力によりクロスローラが一定のトルクで織布を巻き取る。
【0003】
タオル織機の織布巻取装置では、パイルの品質を確保するために、サーフェスローラの外周面に複数の突起を形成し、各々の突起を織布の地組織に刺すことにより、サーフェスローラの回転力を織布に伝えている。この種の織布巻取装置では、クロスローラによる織布の巻取トルクが低く設定されることが多い。その理由は主に2つある、第1の理由は、タオルの柔軟性を保つためであり、第2の理由は、クロスローラに巻き取り終えた織布をクロスローラから抜き取りやすくするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、織布を低トルクでクロスローラに巻き取る場合は、次のような不具合が生じやすくなる。まず、クロスローラに織布を巻き取っていくと、織布の巻取径が徐々に増大する。その際、クロスローラの巻取トルクは一定であるため、クロスローラにおける巻取径の増大と共に織布の張力が弱まる。そうすると、サーフェスローラからガイドローラへと送り込まれるべき織布(タオル)が、ガイドローラに送られずにサーフェスローラに巻き返される現象(以下、「巻き返し現象」ともいう。)が起こりやすくなる。
【0006】
巻き返し現象は、サーフェスローラからガイドローラへと送り込まれるべき織布が、サーフェスローラの突起に引っ掛かったまま、サーフェスローラに過剰に巻き付いてしまう現象である。巻き返し現象が発生すると、織機の運転を停止して修復作業を行う必要があるため、生産性が低下してしまう。また、巻き返し現象によってサーフェスローラに巻き付いた織布は傷物として廃棄せざるを得ないため、織布の材料が無駄になってしまう。したがって、巻き返し現象が発生した場合は、できるだけ早く織機の運転を停止する必要がある。しかし、サーフェスローラやガイドローラはカバーで覆われて外部から見えない状態、または見えにくい状態になっているため、製織作業者が巻き返し現象の発生に気づくまでに時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、巻き返し現象の発生を迅速に感知することができる、織機の織布巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る織機の織布巻取装置は、製織された織布を、サーフェスローラおよびガイドローラを経由してクロスローラに巻き取る織機の織布巻取装置であって、ガイドローラが正常時と逆方向に回転したときの逆転量を検出する逆転量検出手段と、逆転量検出手段によって検出された逆転量に基づいて巻取異常の発生を感知する感知部と、を備える。
【0009】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、感知部は、逆転量検出手段によって検出される逆転量が予め設定された巻取異常確定量に達した場合に巻取異常の発生を感知してもよい。
【0010】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、逆転量検出手段は、ガイドローラと一体に回転するとともに、ガイドローラの回転方向に凹部と凸部が交互に形成された凹凸形成面を有する回転体と、回転体の凹凸形成面に対向する状態で配置され、凹部と対向するときに第1信号を出力し、凸部と対向するときに第1信号と異なる第2信号を出力する複数の第1センサと、複数の第1センサから出力される信号に基づいてガイドローラの逆転量を検出する逆転量検出部と、を備えてもよい。
【0011】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、回転体には、凹部および凸部が少なくとも2つずつ形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、感知部には、ガイドローラの逆転を許容する許容量が設定され、感知部は、逆転量検出手段によって検出された逆転量が許容量を超えた場合に巻取異常の発生を感知してもよい。巻取異常確定量または許容量は、ガイドローラが瞬間的に逆転するハンチング現象による逆転量より大きく、かつ、ガイドローラが正常時と逆方向に360°回転する逆転量より小さく設定されてもよい。
【0013】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、逆転量検出手段は、サーフェスローラとガイドローラとの間を移動する織布の移動経路の変化を検出する第2センサと、第2センサの検出結果に基づいてガイドローラの逆転量を検出する逆転量検出部と、を備えてもよい。
【0014】
本発明に係る織機の織布巻取装置において、感知部が巻取異常の発生を感知した場合に所定のエラー処理を行う制御部をさらに備え、所定のエラー処理は、巻取異常の発生を報知する処理、および、織機の運転を停止する処理のうち、少なくとも一つの処理を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻き返し現象の発生を迅速に感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る織機の織布巻取装置を示す概略図である。
【
図2】織布がサーフェスローラによってガイドローラに送られる状態を示す図である。
【
図3】織布がサーフェスローラに巻き返された状態を示す図である。
【
図4】ドグおよび近接センサの取付状態を示す斜視図である。
【
図5】ドグおよび近接センサの取付状態を示す側面図である。
【
図7】近接センサの出力信号の正常時パターンを示す図である。
【
図8】近接センサの出力信号の異常時パターンを示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る織機の織布巻取装置が備える異常検知のための機能ブロック図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る織機の織布巻取装置を示す概略図である。
【
図11】巻き返し現象による織布の移動経路の変化を説明する図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る織機の織布巻取装置が備える異常検知のための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る織機の織布巻取装置を示す概略図である。
図1に示すように、織機1は、製織装置2および織布巻取装置3を備えている。織機1は、たとえばエアジェット式の織機を構成するものである。製織装置2は、織布を製織するものである。製織装置2は、図示はしないが、経糸を供給する経糸供給機構、緯糸を供給する緯糸供給機構、経糸を開口させる開口機構、経糸の開口に緯糸を通す緯入れ機構、緯入れされた緯糸を筬打ちする筬打ち機構などを備える。製織装置2によって製織された織布5は、織布巻取装置3に送られる。
【0019】
織布巻取装置3は、製織装置2によって製織された織布5を巻き取る装置である。織布巻取装置3は、導入ローラ11を有している。導入ローラ11は、製織装置2によって製織された織布5を織布巻取装置3へと導入するローラである。導入ローラ11によって導入された織布5はサーフェスローラ12へと送られる。サーフェスローラ12は、織布5の送り方向Fにおいて、導入ローラ11の下流側に配置されている。サーフェスローラ12は、図示はしないが、モータからクラッチ機構を介してサーフェスローラ12へと伝達される回転駆動力により回転するものである。サーフェスローラ12の回転力は、織布巻取装置3が備える動力伝達機構(図示せず)によってクロスローラ16に伝達される。
【0020】
サーフェスローラ12の下流側には、2つのガイドローラ14,15が配置されている。ガイドローラ14,15は、それぞれ回転自在に設けられている。各々のガイドローラ14,15は、サーフェスローラ12の回転にしたがって織布5が搬送される場合に、織布5の移動にしたがって回転するものである。このため、各々のガイドローラ14,15の回転量および回転方向は、織布5の移動量および移動方向に対応する。
【0021】
ガイドローラ15の下流側には、クロスローラ16が配置されている。クロスローラ16は、織布5を巻き取るローラである。クロスローラ16は、図示しない動力伝達機構によってサーフェスローラ12からクロスローラ16へと伝達される回転力によって回転する。また、クロスローラ16は、所定のトルクで織布5を巻き取る。クロスローラ16の巻取トルクは、上記クラッチ機構により一定のトルクに維持される。クロスローラ16に織布5を巻き取る場合、織布5はクロスローラ16の外周面に積層して巻かれる。このため、クロスローラ16における織布5の巻取径Dは、織布5の積層数の増加と共に大きくなる。
【0022】
上記構成からなる織布巻取装置3においては、製織装置2によって製織された織布5が、導入ローラ11を経由してサーフェスローラ12に送られた後、ガイドローラ14およびガイドローラ15を経由してクロスローラ16に巻き取られる。その際、サーフェスローラ12はRa方向に回転駆動する。これにより、織布5は、サーフェスローラ12の回転にしたがって送り方向Fに搬送される。一方、ガイドローラ14は織布5の移動にしたがってRb方向に回転し、ガイドローラ15も織布5の移動にしたがってRb方向に回転する。また、クロスローラ16はRa方向に回転し、このクロスローラ16の回転にしたがって織布5がクロスローラ16に巻き取られる。
【0023】
本実施形態においては、織機1がタオル織機となっている。タオル織機では、サーフェスローラ12の回転によって織布5を搬送する場合に、織布5のパイル品質を確保しつつ、サーフェスローラ12の回転力を織布5に確実に伝えるために、
図2に示すように、サーフェスローラ12の外周面に複数の突起18が設けられている。各々の突起18は針状に形成されている。また、各々の突起18は、サーフェスローラ12の外周面から径方向外側に向かって突出している。
【0024】
このようにサーフェスローラ12の外周面に複数の突起18が設けられていると、
図3に示すように、サーフェスローラ12からガイドローラ14へと送られるべき織布5が、ガイドローラ14に送られずにサーフェスローラ12に巻き返される現象、すなわち巻き返し現象が発生することがある。巻き返し現象は、低いトルクで織布5をクロスローラ16に巻き取る場合に、上述した巻取径Dの増大と共に織布5の張力が弱くなると発生しやすくなる。巻き返し現象が発生すると、織布5が突起18に引っ掛かったままサーフェスローラ12に過剰に巻き付いてしまう。このため、巻き返し現象が発生した状態で織機1の運転を継続すると、ガイドローラ14からサーフェスローラ12へと引き戻された織布5がサーフェスローラ12の外周面に多重に巻き付いてしまう。そこで、本実施形態においては、以下のような構成を採用している。
【0025】
まず、
図4および
図5に示すように、ガイドローラ14のシャフト部14aにはドグ21が取り付けられている。ドグ21は、ガイドローラ14のシャフト部14aにネジ22を用いて固定されている。このため、ドグ21は、ガイドローラ14と一体に回転する。ドグ21の外周面21aには所定の角度間隔で凹部25と凸部26とが交互に形成されている。このため、ドグ21の外周面21aは、凹部25および凸部26が形成された凹凸形成面に相当する。本実施形態では、凹部25と凸部26とが、ガイドローラ14の回転方向に60°の角度間隔θ2で交互に形成されている。このため、ドグ21の外周面21aには、凹部25と凸部26が3つずつ形成されている。
【0026】
ドグ21の近傍には、2つの近接センサ27,28が配置されている。ドグ21は、各々の近接センサ27,28を動作させるもので、回転体に相当する。近接センサ27および近接センサ28は、それぞれ第1センサに相当するものである。近接センサ27,28は、それぞれドグ21の外周面21aに対向する状態で配置されている。また、近接センサ27,28は、ガイドローラ14の回転方向(以下、「円周方向」ともいう。)の異なる位置に配置されている。また、円周方向において、近接センサ27と近接センサ28との角度間隔θ1は、上述した凹部25と凸部26との角度間隔θ2よりも小さく設定されている。
【0027】
近接センサ27,28は、センサブラケット29にネジ止め等によって取り付けられている。センサブラケット29は、織布巻取装置3の本体フレームなどに固定されるものである。近接センサ27は、ドグ21の凹部25に対向するときにOFF信号を出力し、ドグ21の凸部26に対向するときにON信号を出力する。同様に、近接センサ28は、ドグ21の凹部25に対向するときにOFF信号を出力し、ドグ21の凸部26に対向するときにON信号を出力する。このため、ドグ21がガイドローラ14と一体に回転すると、各々の近接センサ27,28は所定のパターンでON信号とOFF信号とを出力する。なお、OFF信号は第1信号に相当し、ON信号は第2信号に相当する。
【0028】
以降の説明では、近接センサ27,28の出力信号が共にON信号である場合を「ONON状態」とし、近接センサ27,28の出力信号が共にOFF信号である場合を「OFF-OFF状態」とする。また、近接センサ27の出力信号がON信号で、近接センサ28の出力信号がOFF信号である場合を「ON-OFF状態」とし、近接センサ27の出力信号がOFF信号で、近接センサ28の出力信号がON信号である場合を「OFF-ON状態」とする。
【0029】
織布巻取装置3において、織布5がサーフェスローラ12の回転によってガイドローラ14およびガイドローラ15へと送られると、ガイドローラ14は織布5の移動にしたがって
図4のRb方向に回転する。このときのガイドローラ14の回転が、正常時の回転となる。正常時には、ドグ21がガイドローラ14と一体にRb方向に回転することにより、近接センサ27,28の出力信号は所定の順序で変化する。このときの出力信号の変化を表すパターンを正常時パターンとすると、正常時パターンにおける出力信号の変化は、
図6の状態をドグ21の回転角が0°の状態とすると、
図7のようになる。
【0030】
まず、近接センサ27,28の出力信号は、
図7に示すように、ドグ21の回転角=0°のときはON-ON状態となり、その後、回転角=0°の状態からドグ21がRb方向に30°回転した時点ではON-OFF状態になる。また、近接センサ27,28の出力信号は、回転角=0°の状態からドグ21がRb方向に60°回転した時点ではOFF-OFF状態となり、その後、回転角=0°の状態からドグ21がRb方向に90°回転した時点ではOFF-ON状態となる。その後、回転角=0°の状態からドグ21がRb方向に120°回転した時点では、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態となり、以降は、ドグ21がRb方向に30°回転するごとに、近接センサ27,28の出力信号が上記同様に変化する。そして、回転角=0°の状態からドグ21がRb方向に360°回転した時点では、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態となる。
【0031】
一方、上述した巻き返し現象によって織布5がガイドローラ14からサーフェスローラ12へと引き戻されると、ガイドローラ14は織布5の移動にしたがって
図4のRa方向、すなわち正常時とは逆方向に回転する。また、ガイドローラ14が正常時と逆方向に回転すると、近接センサ27,28の出力信号は上記所定の順序と逆の順序で変化する。このときの出力信号の変化を表すパターンを異常時パターンとすると、異常時パターンにおける出力信号の変化は、
図6の状態をドグ21の回転角が0°の状態とすると、
図8のようになる。
【0032】
まず、近接センサ27,28の出力信号は、
図8に示すように、ドグ21の回転角=0°のときはON-ON状態となり、その後、回転角=0°の状態からドグ21がRa方向に30°回転した時点ではOFF-ON状態になる。また、近接センサ27,28の出力信号は、回転角=0°の状態からドグ21がRa方向に60°回転した時点ではOFF-OFF状態となり、その後、回転角=0°の状態からドグ21がRa方向に90°回転した時点ではON-OFF状態となる。その後、回転角=0°の状態からドグ21がRa方向に120°回転した時点では、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態となり、以降は、ドグ21がRa方向に30°回転するごとに、近接センサ27,28の出力信号が上記同様に変化する。そして、回転角=0°の状態からドグ21がRa方向に360°回転した時点では、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態となる。
【0033】
図9は、本発明の第1実施形態に係る織機の織布巻取装置が備える異常検知のための機能ブロック図である。
図9に示すように、近接センサ27および近接センサ28は、それぞれ逆転量検出部31に電気的に接続されている。逆転量検出部31は、上述したドグ21および2つの近接センサ27,28と共に、逆転量検出手段を構成するものである。逆転量検出部31は、近接センサ27および近接センサ28から出力される信号に基づいてガイドローラ14の逆転量を検出する。ガイドローラ14の逆転量とは、ガイドローラ14が正常時と逆方向に回転したときの回転量をいう。逆転量検出部31には、上述した正常時パターンおよび異常時パターンが記憶されている。逆転量検出部31の検出結果は、感知部32に与えられる。感知部32は、逆転量検出部31によって検出されたガイドローラ14の逆転量に基づいて巻取異常の発生を感知するものである。巻取異常とは、製織された織布5を、サーフェスローラ12およびガイドローラ14,15を経由してクロスローラ16に巻き取るときに発生する異常である。巻取異常には、上述した巻き返し現象が含まれる。感知部32には、巻取異常の発生を感知するための閾値となる巻取異常確定量が予め設定されている。制御部33は、感知部32が巻取異常の発生を感知した場合に所定のエラー処理を行うものである。
【0034】
以下に、織布巻取装置3で行われる異常検知処理について説明する。異常検知処理は、巻取異常の発生を検知するために行われる処理である。
まず、サーフェスローラ12の回転にしたがって織布5を搬送し、この搬送中の織布5の移動にしたがってガイドローラ14およびガイドローラ15が回転すると、ドグ21の回転にしたがって近接センサ27,28の出力信号が変化する。このとき、逆転量検出部31は、各々の近接センサ27,28から出力される信号を取り込みながら、近接センサ27,28の出力信号の変化を確認する。そして、2つの近接センサ27,28から得られる出力信号が、
図7に示す正常時パターンと同じ順序で変化している間は、ガイドローラ14の逆転量が実質的にゼロであると判断する。
【0035】
これに対して、2つの近接センサ27,28から得られる出力信号が、
図8に示す異常時パターンと同じ順序で変化し始めた場合は、逆転量検出部31は、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンと同じ順序で何回続けて変化したかによってガイドローラ14の逆転量を検出する。以下に具体例を挙げて説明する。
【0036】
まず、説明の前提として、近接センサ27,28の出力信号が、正常時パターンの順序でOFF-OFF状態→OFF-ON状態→ON-ON状態と変化し、その状態から出力信号の変化の仕方が異常時パターンの順序に切り替わった場合を想定する。この場合、逆転量検出部31は、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンと同じ順序で変化する回数をカウントし、このカウント回数をガイドローラ14の逆転量として検出する。具体的には、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態からOFF-ON状態に変化した段階では、逆転量検出部31のカウント回数が1回となる。また、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態→OFF-ON状態→OFF-OFF状態と変化した段階では、逆転量検出部31のカウント回数が2回となり、近接センサ27,28の出力信号がON-ON状態→OFF-ON状態→OFF-OFF状態→ON-OFF状態と変化した段階では、逆転量検出部31のカウント回数が3回となる。これにより、逆転量検出部31が検出するガイドローラ14の逆転量は、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンの順序で変化する回数が増えるにしたがって大きくなる。
【0037】
逆転量検出部31の検出結果は感知部32に与えられる。感知部32は、逆転量検出部31によって検出されるガイドローラ14の逆転量(カウント回数)が予め設定された巻取異常確定量に達したかどうかを確認する。そして、ガイドローラ14の逆転量が巻取異常確定量に到達すると、感知部32は、巻取異常の発生を感知する。巻取異常確定量は、ガイドローラ14が正常時と逆方向に360°回転する間に近接センサ27,28の出力信号がM回変化する場合は、M回よりも少ない回数に設定される。これにより、ガイドローラ14が正常時と逆方向に360°回転する前に、感知部32において巻取異常の発生を検知することができる。
【0038】
感知部32が巻取異常の発生を感知すると、制御部33は、所定のエラー処理を行う。このエラー処理は、巻取異常の発生を報知する処理、および、織機の運転を停止する処理のうち、少なくとも一方の処理を含む。エラー処理として巻取異常の発生を報知する処理を行った場合は、エラー内容を示すメッセージやコードなどがコントロールパネルに表示される。あるいは、警告ランプが点灯したり、警告音が発せられる。また、エラー処理として織機の運転を停止する処理を行った場合は、製織装置2の動作と織布巻取装置3の動作が共に停止した状態となる。
【0039】
本発明の第1実施形態によれば、ガイドローラ14が正常時と逆方向に回転したときの逆転量を逆転量検出部31が検出し、この検出した逆転量に基づいて感知部32が巻取異常の発生を感知する構成になっている。このため、サーフェスローラ12からガイドローラ14へと送られるべき織布が、ガイドローラ14に送られずにサーフェスローラ12に巻き返された場合に、その巻き返し現象の発生を迅速に感知することができる。
【0040】
また、感知部32が巻取異常の発生を感知した場合に、制御部33が巻取異常の発生を報知する処理を行うことにより、製織作業者は、巻き返し現象が発生した事実を早期に把握することができる。
【0041】
また、感知部32が巻取異常の発生を感知した場合に、制御部33が織機の運転を停止する処理を行うことにより、巻き返し現象にともなう生産性の低下や織布の無駄を抑えることができる。
【0042】
(第2実施形態)
ところで、タオル織機においては、織布5にパイルを形成のために、テリーモーションと呼ばれる動作が行われる。テリーモーションは一定の周期で繰り返し行われる。テリーモーションが行われると、製織装置2から織布巻取装置3へと送られた織布5が、送り方向Fと反対方向に瞬間的に引き戻される。そうすると、織布5の張力変動にともなって上記クラッチ機構に滑りが生じ、サーフェスローラ12やガイドローラ14などが瞬間的に逆転する現象(以下、「ハンチング現象」ともいう。)が生じる。そうした場合、ハンチング現象はテリーモーションによって生じる正常な現象であるにもかかわらず、ガイドローラ14の瞬間的な逆転を感知部32が巻取異常として感知してしまうおそれがある。
【0043】
そこで、ハンチング現象に起因した巻取異常の誤検知を抑制するために、本第2実施形態においては、ハンチング現象によるガイドローラ14の逆転量を考慮して織布巻取装置3を構成することとした。以下、具体的に説明する。
【0044】
まず、ハンチング現象によるガイドローラ14の逆転量を回転角θ3で表すと、ドグ21における凹部25および凸部26の角度間隔θ2(
図5および
図6を参照)は、上記回転角θ3を考慮して所定の条件を満たすように設定される。本実施形態では、凹部25および凸部26の角度間隔θ2が、θ2>θ3の条件を満たすように設定されている。たとえば、ハンチング現象によるガイドローラ14の逆転量を表す回転角θ3が10°程度であるとすると、凹部25および凸部26の角度間隔θ2は、回転角θ3よりも大きい60°に設定される。この場合、ハンチング現象によってガイドローラ14が回転角θ3だけ逆転すると、近接センサ27,28の出力信号は、異常時パターンの順序で1回変化することはあり得るが、2回以上続けて変化することはない。
【0045】
一方、感知部32は、逆転量検出部31によって検出されるガイドローラ14の逆転量が巻取異常確定量に達した場合に巻取異常の発生を感知する。このため、巻取異常確定量を極端に小さく設定すると、ハンチング現象によるガイドローラ14の逆転を巻取異常と誤検知してしまうおそれがある。そこで本実施形態においては、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンの順序で1回変化だけでは巻取異常と検知しないよう、ガイドローラ14の逆転を許容する許容量が感知部32に設定されている。また、感知部32が巻取異常の発生を感知するときの閾値となる巻取異常確定量は、上記許容量よりも大きな値に設定されている。
【0046】
許容量および巻取異常確定量は、それぞれ、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンの順序で変化する回数の値で設定することができる。一例として、許容量を1回に設定し、巻取異常確定量を2回に設定した場合、感知部32は、巻取異常の発生を次のように感知する。すなわち、感知部32は、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンの順序で1回変化し、これに応じて逆転量検出部31のカウント回数が1回となっても、この段階では巻取異常の発生を感知しない。これに対し、近接センサ27,28の出力信号が異常時パターンの順序で2回以上続けて変化し、これに応じて逆転量検出部31のカウント回数が2回以上になると、逆転量検出部31は巻取異常の発生を感知する。これにより、ハンチング現象に起因した巻取異常の誤検知を抑制することができる。
【0047】
なお、第2実施形態においては、許容量を1回に設定し、巻取異常確定量を2回に設定する場合を例に挙げて説明したが、許容量および巻取異常確定量の設定はこれに限らず、たとえば、許容量を2回に設定し、巻取異常確定量を3回に設定してもよい。また、許容量を3回以上に設定し、巻取異常確定量をそれよりも大きな値に設定してもよい。また、許容量および巻取異常確定量は、ドグ21における凹部25および凸部26の角度間隔に応じて適宜設定することが望ましい。たとえば、凹部25および凸部26の角度間隔が狭く、ドグ21の外周面21aに凹部25および凸部26がより多く形成されている場合は、許容量および巻取異常確定量を、それぞれ、より大きな値に設定するとよい。
【0048】
また、上記第2実施形態においては、ドグ21の外周面21aに凹部25と凸部26を3つずつ形成しているが、ハンチング現象に起因した巻取異常の誤検知を抑制するためには、凹部25と凸部26を少なくとも2つずつ形成することが好ましい。その理由は、以下のとおりである。
【0049】
まず、ドグ21の外周面21aに凹部25と凸部26を1つずつ設ける場合は、凹部25と凸部26を180°の角度間隔で形成することになる。このため、近接センサ27,28の出力信号が1回変化するのに必要なガイドローラ14の回転量が多くなる。したがって、ガイドローラ14の逆転が、巻き返し現象によるものか、ハンチング現象によるものかを判別できる時期が遅くなり、その分だけ、巻取異常の発生を感知する時期に遅れが生じる。これに対し、ドグ21の外周面21aに凹部25と凸部26を少なくとも2つずつ設ける場合は、凹部25と凸部26を90°以下の角度間隔で形成することになるため、近接センサ27,28の出力信号が1回変化するのに必要なガイドローラ14の回転量が少なくなる。よって、ガイドローラ14の逆転が、巻き返し現象によるものか、ハンチング現象によるものかをいち早く判別し、巻取異常の発生を迅速に感知することができる。
【0050】
なお、上記第1実施形態および第2実施形態においては、ガイドローラ14にドグ21を取り付けているが、これに限らず、ガイドローラ15にドグ21を取り付け、その近傍に近接センサ27,28を配置してもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、ドグ21の外周面21aに凹部25と凸部26とを形成しているが、これに限らず、ドグ21の側面に凹部25と凸部26とを形成し、この凹凸形成面に対向する状態で近接センサ27,28を配置してもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、2つの近接センサ27,28を用いているが、近接センサの数は3つ以上であってもよい。
【0053】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係る織機の織布巻取装置を示す概略図である。
本発明の第3実施形態においては、
図10に示すように、サーフェスローラ12およびガイドローラ14の近傍にレーザセンサ35が配置されている。レーザセンサ35は、サーフェスローラ12とガイドローラ14との間を移動する織布5の移動経路の変化を検出するもので、第2センサに相当する。レーザセンサ35は、投光器35aと受光器35bとを有している。レーザセンサ35の出力信号は、投光器35aが出射したレーザ光を受光器35bが受光したときにON状態となり、受光しないときにOFF状態となる。投光器35aおよび受光器35bは、織機1の機台長手方向Xの両端に、センサ光軸37を介して互いに対向する状態に配置される。また、投光器35aおよび受光器35bは、織機1の機台長手方向Xにおいて、織布5の織幅Wよりも外側に配置されている。
【0054】
ここで、織布5がサーフェスローラ12の回転によってガイドローラ14に送られている場合、織布5の移動経路は
図11の実線で示す経路になる。これに対し、織布5が巻き返し現象によってガイドローラ14からサーフェスローラ12に引き戻される場合は、織布5の移動経路が
図11の二点鎖線で示す経路になる。すなわち、巻き返し現象が発生すると、織布5の移動経路は、
図11の実線で示す経路から二点鎖線で示す経路に変化する。
【0055】
一方、センサ光軸37の位置は、
図11に示すように、巻き返し現象の発生によって織布5の移動経路が変化するときに、織布5がセンサ光軸37を遮るように設定されている。このようにセンサ光軸37の位置を設定することにより、巻き返し現象が発生した場合は、レーザセンサ35の出力信号がON状態からOFF状態に切り替わり、その後、ON状態に戻る。
【0056】
図12は、本発明の第3実施形態に係る織機の織布巻取装置が備える異常検知のための機能ブロック図である。
図12に示すように、レーザセンサ35は、逆転量検出部41に電気的に接続されている。逆転量検出部41は、レーザセンサ35と共に、逆転量検出手段を構成するものである。逆転量検出部41は、レーザセンサ35から出力される信号に基づいてガイドローラ14の逆転量を検出する。逆転量検出部41の検出結果は、感知部42に与えられる。感知部42は、逆転量検出部41によって検出されたガイドローラ44の逆転量に基づいて巻取異常の発生を感知するものである。制御部43は、感知部42が巻取異常の発生を感知した場合に所定のエラー処理を行うものである。
【0057】
本発明の第3実施形態に係る織布巻取装置3で行われる異常検知処理について説明する。
まず、織布5がサーフェスローラ12の回転によってガイドローラ14に送られている場合は、レーザセンサ35の出力信号が常にON状態に維持される。このとき、逆転量検出部41は、レーザセンサ35の出力信号を取り込みながら、レーザセンサ35の出力信号の変化を確認する。そして、レーザセンサ35の出力信号がON状態に維持されている間は、ガイドローラ14の逆転量が実質的にゼロであると判断する。これに対して、レーザセンサ35の出力信号がON状態からOFF状態に切り替わると、その切り替わりタイミングに基づいて、逆転量検出部41は、ガイドローラ14の逆転量を検出する。具体的には、たとえば、レーザセンサ35の出力信号がON状態からOFF状態に切り替わったタイミングからの経過時間が長くなるほど、逆転量検出部41によって検出されるガイドローラ14の逆転量が大きくなる。
【0058】
逆転量検出部31の検出結果は感知部42に与えられる。感知部42は、逆転量検出部41によって検出されるガイドローラ14の逆転量が予め設定された巻取異常確定量に達したかどうかを確認する。そして、ガイドローラ14の逆転量が巻取異常確定量に達すると、感知部42は、巻取異常の発生を感知する。感知部42が巻取異常の発生を感知すると、制御部43は、所定のエラー処理を行う。エラー処理の内容は、第1実施形態の場合と同様である。
【0059】
本発明の第3実施形態においても、サーフェスローラ12からガイドローラ14へと送られるべき織布が、ガイドローラ14に送られずにサーフェスローラ12に巻き返された場合に、その巻き返し現象の発生を迅速に感知することができる。また、テリーモーションによってガイドローラ14が瞬間的に逆転しても、織布5の位置は、
図11の実線で示す位置に維持される。このため、ハンチング現象に起因した巻取異常の誤検知を抑制することができる。
【0060】
なお、第3実施形態においては、レーザセンサ35を用いたが、本発明はこれに限らず、たとえば、織幅方向の一端側から織布5の画像を取り込む画像センサを用いて、織布5の移動経路の変化をしてもよい。また、サーフェスローラ12とガイドローラ14との間を走行する織布5と対向するように距離センサを配置し、この距離センサを用いて織布5の移動経路の変化を検出してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 織機、3 織布巻取装置、12 サーフェスローラ、14,15 ガイドローラ、16 クロスローラ、21 ドグ(回転体)、21a 外周面(凹凸形成面)、25 凹部、26 凸部、27,28 近接センサ(第1センサ)、31,41 逆転量検出部、32,42 感知部、33,43 制御部、35 レーザセンサ(第2センサ)。