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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20221213BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20221213BHJP
   G01D 5/04 20060101ALI20221213BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20221213BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01L3/10 305
G01B7/30 H
G01D5/04 C
G01D5/14 E
B62D5/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067943
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165870
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】外山 祐一
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-286299(JP,A)
【文献】特許第4470591(JP,B2)
【文献】特開2007-192609(JP,A)
【文献】特開2014-65367(JP,A)
【文献】特許第3958115(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L3
G01B7
G01D5
B62D5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車と、
前記主動歯車の歯と噛み合う歯車部と、前記歯車部の側面から突出している軸部とを有するとともに、前記軸部に永久磁石が設けられている従動歯車と、
前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢する付勢部材と、
前記従動歯車及び前記付勢部材を支持する支持部材と、
前記従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する回転角センサと、
前記軸部を回転可能に取り囲んでいる磁気シールドとを備え、
前記付勢部材は、前記磁気シールドを前記主動歯車側へ向けて付勢することを通じて前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢しており、
前記磁気シールドと前記従動歯車との間の摺動抵抗は、前記磁気シールドと前記付勢部材との間の摺動抵抗よりも小さく設定しているセンサ装置。
【請求項2】
前記従動歯車は2つ設けられていて、
前記付勢部材は、前記支持部材に支持されているコイル部と、2つの前記従動歯車のいずれか一方の前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢する第1腕部と、2つの前記従動歯車のうちいずれか他方の前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢する第2腕部とを有している請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記回転軸に作用するトルクを検出するトルクセンサを備える請求項1または請求項2に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンション等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されることがある。これらのシステムは、ステアリングホイールの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、この姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、例えば車両のステアリングコラムの内部には、ステアリングホイールの操舵角を検出する回転角センサ装置が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の回転角センサ装置は、ステアリング軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車と、主動歯車に噛み合う2つの従動歯車とを備えている。2つの従動歯車の歯数は異なっている。回転角センサ装置は、2つの従動歯車にそれぞれ対応して設けられた回転角センサにより2つの従動歯車の回転角度を検出し、これら検出される回転角度に基づいてステアリング軸の回転角度を求めている。特許文献1に記載の回転角センサ装置では、主動歯車と従動歯車との間にバックラッシュがあると回転角度の検出誤差が大きくなることから、バックラッシュを低減するように付勢部材によって主動歯車と従動歯車とを互いに押し付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-144753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
付勢部材によって主動歯車と従動歯車とを互いに押し付けるようにすると、主動歯車と従動歯車との間で摩擦が発生する。この摩擦が生じる分だけ、運転者がステアリングホイールを操舵する際に必要となるトルクが大きくなる。これにより、運転者のステアリングホイールの操舵感が低下することになる。このように、主動歯車と従動歯車との噛み合わせを好適化しつつ、運転者がステアリングホイールを操舵する際に必要となるトルクが大きくなることを抑制することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するセンサ装置は、検出対象である回転軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車と、前記主動歯車の歯と噛み合う歯車部と、前記歯車部の側面から突出している軸部とを有するとともに、前記軸部に永久磁石が設けられている従動歯車と、前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢する付勢部材と、前記従動歯車及び前記付勢部材を支持する支持部材と、前記従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する回転角センサと、前記軸部を回転可能に取り囲んでいる磁気シールドとを備え、前記付勢部材は、前記磁気シールドを前記主動歯車側へ向けて付勢することを通じて前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢しており、前記磁気シールドと前記従動歯車との間の摺動抵抗は、前記磁気シールドと前記付勢部材との間の摺動抵抗よりも小さく設定している。
【0007】
上記構成によれば、付勢部材は磁気シールドを主動歯車側へ向けて付勢することで従動歯車を主動歯車側へ向けて付勢している。これにより、主動歯車と従動歯車との間におけるより好適な噛み合わせを確保することができる。また、付勢部材は磁気シールドを介して従動歯車を付勢することになることから、付勢部材との間に磁気シールドを介することなく従動歯車の軸部を直接付勢する場合と比べると、従動歯車が回転する際の摺動抵抗を小さく設定することが可能となる。磁気シールドと従動歯車との間の摺動抵抗が磁気シールドと付勢部材との間の摺動抵抗よりも小さくなるため、回転軸を回転させる際に必要となるトルクが大きくなることを抑制することができる。上記構成では、主動歯車と従動歯車との間における噛み合わせの好適化と回転軸を回転させる際に必要となるトルクの増大抑制とを両立させることができる。
【0008】
上記のセンサ装置において、前記従動歯車は2つ設けられていて、前記付勢部材は、前記支持部材に支持されているコイル部と、2つの前記従動歯車のいずれか一方の前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢する第1腕部と、2つの前記従動歯車のうちいずれか他方の前記従動歯車を前記主動歯車側へ向けて付勢する第2腕部とを有していることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、2つの従動歯車は、付勢部材の第1腕部及び第2腕部によって主動歯車側へ向けて付勢されている。付勢部材として単一の部材を設けるだけでよいため、センサ装置の部品点数の増大を抑えることができる。
【0010】
上記のセンサ装置において、前記回転軸に作用するトルクを検出するトルクセンサを備えることが好ましい。
上記構成によれば、単一のセンサ装置によって、回転軸の回転角度のみならず回転軸に作用するトルクを検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセンサ装置によれば、主動歯車と従動歯車との間の噛み合わせを好適化しつつ、回転軸を回転させる際に必要となるトルクが大きくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】センサ装置が搭載される操舵装置の概略構成図。
図2】第1ピニオン軸の軸心を含み、第1従動歯車の軸心と第2従動歯車の軸心との中間位置の線を含む面に沿って切断した断面図。
図3】トルクセンサ装置の概略斜視図。
図4】第1実施形態のセンサ装置において、第1ピニオン軸の軸心と直交する線を含み、かつ支持部材とカバー板との間の面に沿って切断するとともに、図2の紙面上方向から見た断面図。
図5】第1実施形態のセンサ装置において、第1ピニオン軸の軸心と直交する線を含み、かつ支持部材と基板との間の面に沿って切断するとともに、図2の紙面下方向から見た部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
センサ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、ステアリングホイール11に連結されたステアリング軸12、第1ピニオン軸13、転舵軸14、モータ21、減速機構22、第2ピニオン軸23、センサ装置24、及び制御装置25を有している。ステアリング軸12におけるステアリングホイール11と反対側の端部には、第1ピニオン軸13が設けられている。第1ピニオン軸13のピニオン歯13aは、第1ピニオン軸13に対して交わる方向へ延びる転舵軸14のラック歯14aに噛み合わされている。転舵軸14の両端には、それぞれタイロッド15を介して左右の転舵輪16が連結されている。
【0014】
モータ21は、操舵補助力の発生源であって、例えば3相のブラシレスモータが採用されている。モータ21は、減速機構22を介して第2ピニオン軸23に連結されている。第2ピニオン軸23のピニオン歯23aは、転舵軸14のラック歯14bに噛み合わされている。モータ21の回転は減速機構22によって減速されるとともに、当該減速された回転力が操舵補助力として第2ピニオン軸23から転舵軸14を介して第1ピニオン軸13に伝達される。
【0015】
センサ装置24の検出対象は、第1ピニオン軸13である。センサ装置24は、ステアリングホイール11のステアリング操作を通じて第1ピニオン軸13に加わるトルクを操舵トルクThとして検出するトルクセンサ装置と、第1ピニオン軸13の360度を超える多回転にわたる回転角θpaを操舵角θsとして検出する回転角センサ装置とが組み合わせられてなるトルクアングルセンサ装置である。
【0016】
制御装置25は、センサ装置24を通じて検出される操舵トルクTh及び操舵角θsを取り込む。制御装置25は、車両に設けられる車速センサ26を通じて検出される車速Vを取り込む。制御装置25は、モータ21に対する通電制御を通じて操舵トルクTh及び車速Vに応じた操舵補助力を発生させる制御を実行する。制御装置25は、センサ装置24を通じて検出される操舵トルクTh及び車速センサ26を通じて検出される車速Vに基づき、モータ21に対する給電を制御する。これにより、制御装置25は、運転者のステアリングホイール11の操作に基づいてモータ21の回転力を操舵補助力として第1ピニオン軸13に付与することにより、運転者のステアリング操作を補助している。
【0017】
センサ装置24の構成を説明する。
図2に示すように、センサ装置24は、センサハウジング31を有している。センサハウジング31は、転舵軸14及び第1ピニオン軸13を収容するギヤハウジング17に取り付けられている。センサハウジング31は、互いに連通する挿通部32と収容部33とを有している。挿通部32は、筒状をなしており、その軸線が第1ピニオン軸13の軸方向Xに延びている。挿通部32には、第1ピニオン軸13が挿通されている。第1ピニオン軸13は、ステアリング軸12側の入力軸、転舵軸14側の出力軸、及びこれら入力軸と出力軸とを連結するトーションバーを有している。収容部33は、箱状体をなしており、挿通部32の軸方向Xに対して交わる方向の側面から突出している。収容部33は、軸方向Xに対して交わる方向へ向けて開口している。収容部33の開口部33aは、カバー34によって閉塞されている。
【0018】
センサハウジング31の内部には、トルクセンサ装置41及び回転角センサ装置51が設けられている。
図3に示すように、トルクセンサ装置41は、第1磁気ヨーク42、第2磁気ヨーク43、第1集磁リング44、第2集磁リング45、第1トルクセンサ46、第2トルクセンサ47、及び多極磁石48を有している。
【0019】
多極磁石48は、第1ピニオン軸13の入力軸に固定されている。多極磁石48は、筒状をなしており、その周方向に沿ってS極とN極とが交互に設けられている。
第1磁気ヨーク42及び第2磁気ヨーク43は、第1ピニオン軸13の出力軸に固定されている。第1磁気ヨーク42及び第2磁気ヨーク43の内部には、第1ピニオン軸13に一体回転可能に設けられている多極磁石48が位置している。第1磁気ヨーク42及び第2磁気ヨーク43は、多極磁石48の磁界に応じた磁気回路を形成する。
【0020】
第1磁気ヨーク42は、円環板状の環状部42a及び板状の複数の歯42bを有している。複数の歯42bは、環状部42aの内周縁に沿って等間隔で設けられている。複数の歯42bは、第1ピニオン軸13の軸方向Xに沿って延びている。第2磁気ヨーク43は、第1磁気ヨーク42と同様に、円環板状の環状部43aおよび複数の歯43bを有している。第1磁気ヨーク42の歯42bと第2磁気ヨーク43の歯43bとは、第1ピニオン軸13の軸方向Xにおいて互いに反対側へ向けて延び、かつ円周方向において交互に位置している。
【0021】
第1集磁リング44及び第2集磁リング45は、第1ピニオン軸13の軸方向Xにおいて並んで設けられる。第1集磁リング44及び第2集磁リング45は、センサハウジング31の内部に取り付けられる。第1集磁リング44は、第1磁気ヨーク42の周囲を囲むかたちで設けられている。第2集磁リング45は、第2磁気ヨーク43の周囲を囲むかたちで設けられている。第1集磁リング44は、第1磁気ヨーク42からの磁束を誘導する。第2集磁リング45は、第2磁気ヨーク43からの磁束を誘導する。
【0022】
第1集磁リング44は、第1リング部44a及び第1集磁部44bを有している。第1リング部44aは、第1磁気ヨーク42の外周面に沿って湾曲するC字状に設けられている。第1集磁部44bは、2つの固定部44c,44d、連結部44e、及び2つの第1集磁突部44f,44gを有している。2つの固定部44c,44dは、第1リング部44aの外周面に取り付けられる部分である。2つの固定部44c,44dは、第1リング部44aの外周面に沿って湾曲している。連結部44eは、2つの固定部44c,44dを連結する部分である。連結部44eの内面と第1リング部44aの外周面との間には隙間が設けられている。2つの第1集磁突部44f,44gは、連結部44eにおける第2集磁リング45側の端部に設けられている。2つの第1集磁突部44f,44gは、第1リング部44aの径方向外側に延びている。
【0023】
第2集磁リング45は、第2リング部45a及び2つの第2集磁突部45b,45cを有している。第2リング部45aは、第2磁気ヨーク43の外周面に沿って湾曲するC字状に設けられている。2つの第2集磁突部45b,45cは、第2リング部45aの径方向外側へ向けて延びている。2つの第2集磁突部45b,45cは、第1ピニオン軸13の軸方向Xにおいて、第1集磁リング44の2つの第1集磁突部44f,44gと対向している。
【0024】
第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47は、基板61に設けられている。第1トルクセンサ46は、第1集磁突部44fと第2集磁突部45bとの間に介在されている。第2トルクセンサ47は、第1集磁突部44gと第2集磁突部45cとの間に介在されている。第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47は、第1集磁リング44及び第2集磁リング45に誘導される磁束を検出する磁気センサである。第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47としては、例えばホールセンサが採用される。
【0025】
ステアリングホイール11の操作を通じて第1ピニオン軸13のトーションバーが捩れ変形すると、多極磁石48と第1磁気ヨーク42との回転方向における相対位置、ならびに多極磁石48と第2磁気ヨーク43との回転方向における相対位置が変化する。これに伴い、多極磁石48から第1磁気ヨーク42を通じて第1集磁リング44に導かれる磁束密度が変化する。また、多極磁石48から第2磁気ヨーク43を通じて第2集磁リング45に導かれる磁束密度も変化する。第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47は、磁束密度に応じた電気信号を生成する。図1に示した制御装置25は、第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47により生成される電気信号に基づき、トーションバーに作用するトルクを操舵トルクThとして演算する。
【0026】
図2及び図4に示すように、回転角センサ装置51は、主動歯車52、第1従動歯車53、及び第2従動歯車54、支持部材55、基板61、ストッパ83、第1磁気シールド75、第2磁気シールド76、付勢部材85、第1回転角センサ62、及び第2回転角センサ63を有している。主動歯車52は、第1ピニオン軸13の入力軸に対して一体回転可能に設けられている。主動歯車52は、円筒状に形成されていて、外周面には複数の歯52aが形成されているとともに内周面には第1ピニオン軸13の入力軸が嵌め込まれている。第1従動歯車53及び第2従動歯車54は、主動歯車52に噛み合わされている。第1従動歯車53及び第2従動歯車54は、樹脂製である。第1従動歯車53及び第2従動歯車54を構成する樹脂製の材料としては、例えばエンジニアリングプラスチック等の熱可塑性樹脂が採用されている。基板61は、センサハウジング31の収容部33の内底面に設けられている。
【0027】
図4及び図5に示すように、支持部材55は、第1従動歯車53及び第2従動歯車54を回転可能に支持する。支持部材55は、センサハウジング31の収容部33の内部に取り付けられている。支持部材55は、矩形板状に形成されている。支持部材55の長側面55cは、主動歯車52と対向している。支持部材55には、第1支持穴81と第2支持穴82とが形成されている。第1支持穴81と第2支持穴82とは、支持部材55において第1ピニオン軸13の軸方向Xに延びている穴である。第1支持穴81は、支持部材55における一方の第1短側面55aと主動歯車52側の長側面55cとが交わる第1角部55dの近傍に設けられている。第2支持穴82は、支持部材55における他方の第2短側面55bと主動歯車52側の長側面55cとが交わる第2角部55eの近傍に設けられている。第1支持穴81及び第2支持穴82は、第1ピニオン軸13の軸方向Xから見た場合、主動歯車52の半径方向に沿って延びる長穴状をなしている。第1支持穴81と第2支持穴82との間の離間長さは、主動歯車52側が最も短くなるとともに、その離間長さは、主動歯車52から遠ざかるほど長くなる。
【0028】
図2及び図5に示すように、第1従動歯車53は、円板状の歯車部71及び円柱状の軸部72を有している。歯車部71の外周面には複数の歯71aが設けられている。歯車部71の歯71aは、主動歯車52の歯52aと噛み合っている。軸部72は、その一端面が歯車部71における基板61側の面の中央に接続されている。軸部72の外径は、歯車部71の外径よりも小さく設定されている。軸部72における基板61側の他端面には、凹部72aが設けられている。凹部72aは、軸部72の軸方向と直交する方向において、断面円状をなしている。凹部72aには、第1永久磁石57が配置されている。第1永久磁石57は、周方向に異なる極性の磁極が交互に並ぶように着磁されている。第1永久磁石57は、第1従動歯車53と一体に回転する。第2従動歯車54は、円板状の歯車部73及び円柱状の軸部74を有している。軸部74における基板61側の他端面には、凹部74aが設けられている。凹部74aは、軸部74の軸方向と直交する方向において、断面円状をなしている。凹部74aには、第2永久磁石58が配置されている。第2従動歯車54の歯車部73の歯73aの歯数と第1従動歯車53の歯車部71の歯71aの歯数とが異なることを除いて、第1従動歯車53と第2従動歯車54とは同一形状をなしている。
【0029】
第1従動歯車53の軸部72は、円筒状に形成された第1磁気シールド75によって外周面が取り囲まれている。第1磁気シールド75は、磁気を遮断できる金属製の材料で構成されていて、凹部72aに嵌め込まれている第1永久磁石57の磁気が半径方向に漏れることを遮断する。第1磁気シールド75を構成する金属製の材料としては、例えば鉄が採用されている。第1磁気シールド75の軸方向Xにおける長さは軸部72の軸方向Xにおける長さと同程度に設定されているとともに、第1磁気シールド75の内径は軸部72の外径よりも大きく設定されている。第1磁気シールド75は支持部材55に形成されている第1支持穴81に収容されている。軸部72は、第1磁気シールド75内で回転可能である。第1磁気シールド75の基板61側への移動は、後述の付勢部材85の付勢力により規制されているとともに、第1支持穴81の内底面への当接によって規制されている。第1磁気シールド75は、第1位置P1と第2位置P2との間を第1支持穴81の内周面に沿って移動可能である。第1位置P1とは、第1磁気シールド75が第1支持穴81の内周面のうち主動歯車52に近い側の面に当接する位置である。第2位置P2とは、第1磁気シールド75が第1支持穴81の内周面のうち主動歯車52から遠い側の面に当接する位置である。
【0030】
第2従動歯車54の軸部74は、円筒状に形成された第2磁気シールド76によって外周面が取り囲まれている。第2磁気シールド76は支持部材55に形成されている第2支持穴82に収容されている。第2磁気シールド76は第1磁気シールド75と同一形状をなしている。第2磁気シールド76と第2支持穴82との位置関係は、第1磁気シールド75と第1支持穴81との位置関係と同様である。
【0031】
図2に示すように、支持部材55には、板状のストッパ83が装着されている。ストッパ83は、支持部材55の基板61と反対側の面に配置されて、第1従動歯車53及び第2従動歯車54の基板61と反対側の面を覆っている。第1従動歯車53及び第2従動歯車54の基板61と反対側への移動は、歯車部71及び歯車部73がストッパ83に当接することにより規制される。
【0032】
図4に示すように、支持部材55における基板61と反対側の面には、円柱状の柱部84が設けられている。柱部84は、支持部材55の長手方向において第1支持穴81と第2支持穴82との間の位置、かつ支持部材55の短手方向において第1支持穴81及び第2支持穴82よりも主動歯車52から離れた位置に設けられている。付勢部材85は、柱部84に装着されることで支持部材55に支持されている。付勢部材85としては、金属製のねじりコイルばねが採用されている。付勢部材85を構成する金属の材料としては、例えば鉄が採用されている。
【0033】
図5に示すように、付勢部材85は、全体として略V字形状をなしている。付勢部材85は、その中央部に複数回巻かれてなるコイル部85aが設けられているとともに、その両端部には直線状に延びる第1腕部85b及び第2腕部85cが設けられている。円環状をなすコイル部85aは、柱部84に挿入されている。第1腕部85bはコイル部85aの一端部に接続されているとともに、第2腕部85cはコイル部85aの他端部に接続されている。第1腕部85bは、第1磁気シールド75における主動歯車52と反対側の部位に当接している。第2腕部85cは、第2磁気シールド76における主動歯車52と反対側の部位に当接している。第1腕部85b及び第2腕部85cは、コイル部85aを中心として第1腕部85bと第2腕部85cとの間の角を狭めるように弾性変形する。第1磁気シールド75及び第2磁気シールド76は、付勢部材85の弾性力によって、主動歯車52に近接する方向へ向けて常に付勢されている。これにより、第1磁気シールド75内に摺動回転可能に支持されている軸部72は、主動歯車52に近接する方向へ向けて常に付勢されている。第1従動歯車53の主動歯車52に近接する方向へ向けた移動は、主動歯車52と第1従動歯車53とが好適に噛み合うことにより規制される。また、第2磁気シールド76内に摺動回転可能に支持されている軸部74は、主動歯車52に近接する方向へ向けて常に付勢されている。第2従動歯車54の主動歯車52に近接する方向へ向けた移動は、主動歯車52と第2従動歯車54とが好適に噛み合うことにより規制される。なお、好適に噛み合うとは、主動歯車52の回転力を第1従動歯車53に十分に伝達できる程度に噛み合うことであり、主動歯車52の回転力を第2従動歯車54に十分に伝達できる程度に噛み合うことである。第1磁気シールド75と第1従動歯車53の軸部72との間の摩擦係数は、第1磁気シールド75と付勢部材85の第1腕部85bとの間の摩擦係数よりも小さく設定されている。これにより、第1磁気シールド75と第1従動歯車53の軸部72との間の摺動抵抗は、第1磁気シールド75と付勢部材85の第1腕部85bとの間の摺動抵抗よりも小さくなるため、軸部72は第1磁気シールド75よりも回転しやすくなる。また、第2磁気シールド76と第2従動歯車54の軸部74との間の摩擦係数は、第2磁気シールド76と付勢部材85の第2腕部85cとの間の摩擦係数よりも小さく設定されている。これにより、第2磁気シールド76と第2従動歯車54の軸部74との間の摺動抵抗は、第2磁気シールド76と付勢部材85の第2腕部85cとの間の摺動抵抗よりも小さくなるため、軸部74は第2磁気シールド76よりも回転しやすくなる。
【0034】
図2に示すように、基板61における第1従動歯車53及び第2従動歯車54側の面には、第1回転角センサ62及び第2回転角センサ63が実装されている。第1回転角センサ62は、軸方向Xにおいて、第1永久磁石57と対向している。第2回転角センサ63は、軸方向Xにおいて、第2永久磁石58と対向している。第1回転角センサ62及び第2回転角センサ63としては、例えばホールセンサが採用されている。
【0035】
ステアリングホイール11の操作を通じて第1ピニオン軸13が回転すると、主動歯車52との噛み合わせを通じて、第1従動歯車53及び第2従動歯車54が回転する。これに伴い、第1従動歯車53の第1永久磁石57から第1回転角センサ62に入力される磁束密度が変化し、第2従動歯車54の第2永久磁石58から第2回転角センサ63に入力される磁束密度が変化する。第1回転角センサ62及び第2回転角センサ63は、磁束密度に応じた電気信号を生成する磁気センサである。図1に示した制御装置25は、第1回転角センサ62により生成される電気信号に基づき第1従動歯車53の回転角度を演算し、第2回転角センサ63により生成される電気信号に基づき第2従動歯車54の回転角度を演算する。制御装置25は、これら演算された回転角度に基づいて、第1ピニオン軸13の回転角θpaを操舵角θsとして演算する。
【0036】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)センサ装置24の回転角センサ装置51は、主動歯車52の回転角度の検出を、この主動歯車52に噛み合う第1従動歯車53及び第2従動歯車54の回転を検出することを通じて行っている。このため、主動歯車52が回転を開始する場合や回転方向が反転する場合には、主動歯車52と第1従動歯車53との間のバックラッシュ及び主動歯車52と第2従動歯車54との間のバックラッシュに起因するがたつきが、第1従動歯車53及び第2従動歯車54の回転角度の演算精度に影響を及ぼし、ひいては主動歯車52の回転角度の演算精度に影響を及ぼすおそれがある。そこで、本実施形態では、付勢部材85は第1磁気シールド75及び第2磁気シールド76を介して第1従動歯車53及び第2従動歯車54を主動歯車52側へ向けて付勢している。これにより、付勢部材85の弾性力によって第1従動歯車53及び第2従動歯車54は主動歯車52に対して押し付けられた状態に維持される。このため、主動歯車52と第1従動歯車53との間、及び主動歯車52と第2従動歯車54との間におけるより好適な噛み合わせを確保することができる。バックラッシュに起因するがたつきが抑制される分だけ、主動歯車52の回転角度の演算精度を向上させることができる。
【0037】
一方、付勢部材85によって第1従動歯車53及び第2従動歯車54を主動歯車52に対して押し付けるようにすると、付勢部材85と第1従動歯車53との間及び付勢部材85と第2従動歯車54との間で摩擦が発生する。この摩擦が大きくなると、運転者がステアリングホイール11を操舵する際に必要となるトルクが大きくなる。本実施形態では、付勢部材85は、第1磁気シールド75を介して第1従動歯車53を主動歯車52側へ向けて付勢している。付勢部材85は第1磁気シールド75を介して第1従動歯車53を付勢することになることから、付勢部材85との間に第1磁気シールド75を介することなく第1従動歯車53の軸部72を直接付勢する場合と比べると、第1従動歯車53が回転する際の摩擦を小さく設定することが可能となる。第1磁気シールド75と第1従動歯車53との間の摩擦係数が第1磁気シールド75と付勢部材85との間の摩擦係数よりも小さくなるため、運転者がステアリングホイール11を操舵する際に必要となるトルクが大きくなることを抑制することができる。第2磁気シールド76と第2従動歯車54の軸部74との間の摩擦係数の設定も、第1磁気シールド75と第1従動歯車53の軸部72との間の摩擦係数の設定と同様である。このように、主動歯車52と第1従動歯車53との間及び主動歯車52と第2従動歯車54との間における噛み合わせの好適化とステアリングホイール11を操舵する際に必要となるトルクの増大抑制とを両立させることができる。
【0038】
(2)第1従動歯車53及び第2従動歯車54を主動歯車52へ向けて常時付勢するための付勢部材85としては、単一の部材を設けるだけでよいため、センサ装置24の部品点数の増大を抑えることができる。
【0039】
(3)センサ装置24によって、第1ピニオン軸13の回転角θpaのみならず第1ピニオン軸13に作用するトルクを操舵トルクThとして検出することができる。
(4)第1従動歯車53の軸部72の外周面は第1磁気シールド75によって取り囲まれていることから、第1永久磁石57の磁気が半径方向に漏れることを遮断することができて、この漏れ出た磁気が第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47に入ることを抑えることができる。また、第2従動歯車54の軸部74の外周面は第2磁気シールド76によって取り囲まれていることから、第2永久磁石58の磁気が半径方向に漏れることを遮断することができて、第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47に漏れ出た磁気が入ることを抑えることができる。このため、操舵トルクThの演算精度が低下することを抑制することができる。
【0040】
本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・第1支持穴81及び第2支持穴82は、支持部材55を軸方向Xに貫通する貫通孔であってもよい。
【0041】
・第1永久磁石57は、軸部72の基板61側の端面に取り付けられていてもよい。また、第2永久磁石58は、軸部74の基板61側の端面に取り付けられていてもよい。
・本実施形態では、第1従動歯車53及び第2従動歯車54を主動歯車52に対して付勢する付勢部材85としてねじりコイルばねを採用したが、これに限らず、付勢部材として板ばねや他のコイルばね等を採用してもよい。例えば、第1従動歯車53を主動歯車52に対して付勢する付勢部材を、第2従動歯車54を主動歯車52に対して付勢する付勢部材とは、互いに別個の付勢部材で構成してもよい。
【0042】
・第1従動歯車53の全体を樹脂製としたが、少なくとも第1従動歯車53における第1磁気シールド75との接触部位、すなわち少なくとも軸部72の外周面が樹脂製であればよく、歯車部71や軸部72の内部が樹脂製である必要はない。また、第2従動歯車54についても同様である。
【0043】
・第1磁気シールド75及び付勢部材85を金属製とし、第1従動歯車53を樹脂製としたが、これに限らない。第1磁気シールド75と第1従動歯車53との間の摩擦係数を、第1磁気シールド75と付勢部材85との間の摩擦係数よりも小さくできるのであれば、第1磁気シールド75、第1従動歯車53、及び付勢部材85をどのような材料によって構成してもよい。この点は、第2磁気シールド76及び第2従動歯車54についても同様である。ただし、第1磁気シールド75及び第2磁気シールド76については、磁気を遮断できる材料を採用する必要がある。
【0044】
・回転角センサ装置51の第1回転角センサ62及び第2回転角センサ63としてホールセンサが採用されたが、磁気抵抗効果センサが採用されてもよい。また、トルクセンサ装置41の第1トルクセンサ46及び第2トルクセンサ47としてホールセンサが採用されたが、磁気抵抗効果センサが採用されてもよい。
【0045】
・本実施形態において、センサ装置は、センサ装置24からトルクセンサ装置41を割愛した回転角センサ装置51であってもよい。この回転角センサ装置51においても、センサ装置24と同様の課題を有する。
【0046】
・回転角センサ装置51として、単一の従動歯車を有する構成を採用してもよいし、3つあるいはそれ以上の従動歯車を有する構成を採用してもよい。
・本実施形態では、センサ装置24あるいは上述の回転角センサ装置の搭載先として車両の操舵装置10を例に挙げたが、回転軸を有する他の車載装置に適用してもよい。また、センサ装置24あるいは回転角装置センサは、車載用途に限らない。
【符号の説明】
【0047】
10…操舵装置、11…ステアリングホイール、12…ステアリング軸、13…第1ピニオン軸、14…転舵軸、21…モータ、24…センサ装置、31…センサハウジング、41…トルクセンサ装置、51…回転角センサ装置、52…主動歯車、53…第1従動歯車、54…第2従動歯車、55…支持部材、57…第1永久磁石、58…第2永久磁石、61…基板、62…第1トルクセンサ、63…第2トルクセンサ、71,73…歯車部、72,74…軸部、75…第1磁気シールド、76…第2磁気シールド、81…第1支持穴、82…第2支持穴、83…ストッパ、84…柱部、85…付勢部材、85a…コイル部、85b…第1腕部、85c…第2腕部。
図1
図2
図3
図4
図5