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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20221213BHJP
   H01B 13/02 20060101ALI20221213BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20221213BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221213BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20221213BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02G3/30
H01B13/02 Z
H01B7/04
H01B7/00
H01B7/08
H01B7/40 307A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019073722
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020036523
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018155666
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】黄 強翔
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-27242(JP,A)
【文献】特開2015-220881(JP,A)
【文献】特開2018-85321(JP,A)
【文献】特開2016-100200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H01B 13/02
H01B 7/04
H01B 7/00
H01B 7/08
H01B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状伝送部材がまとめられた集合線と、
主面上に前記集合線が固定されたベース部材と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材の一部が前記ベース部材の主面に固定され、前記複数の線状伝送部材の残りが前記一部の線状伝送部材を介して前記ベース部材に固定されている、配線部材。
【請求項2】
複数の線状伝送部材がまとめられた集合線と、
主面上に前記集合線が固定されたベース部材と、
を備え、
前記集合線は、前記複数の線状伝送部材が撚り合わされたツイスト線であり、
前記複数の線状伝送部材の少なくとも1つが前記ベース部材の主面上に固定されている、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分における総厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法と、前記線状伝送部材の初期直径寸法に前記複数の線状伝送部材が積重ねられた数を乗じた寸法との和よりも小さい、配線部材。
【請求項4】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分における総厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法と、前記線状伝送部材の初期直径寸法との和よりも大きい、配線部材。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分が前記ベース部材に固定されたベース側固定部を備える、配線部材。
【請求項6】
請求項5に記載の配線部材であって、
前記ベース側固定部において、前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分よりも前記ベース部材が変形している、配線部材。
【請求項7】
請求項5に記載の配線部材であって、
前記ベース側固定部において、前記ベース部材よりも前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分が変形している、配線部材。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記複数の線状伝送部材同士が固定された積重ね固定部を備える、配線部材。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材は、芯線と前記芯線の周囲の被覆とを有する電線を含み、
前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記芯線が他の部分よりも偏平な形状となっている、配線部材。
【請求項10】
請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の線状伝送部材が横並びとなる部分において、前記複数の線状伝送部材が前記ベース部材に固定された横並び固定部を備える、配線部材。
【請求項11】
請求項10に記載の配線部材であって、
前記ベース部材のうち前記横並び固定部における最も大きい厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法よりも大きい、配線部材。
【請求項12】
請求項11に記載の配線部材であって、
前記ベース部材の前記主面において前記線状伝送部材に対する側方部分が凹んでいる、配線部材。
【請求項13】
複数の線状伝送部材がまとめられた集合線と、
主面上に前記集合線が固定されたベース部材と、
を備え、
前記集合線は、前記複数の線状伝送部材を覆う被覆部材をさらに備え、
前記被覆部材が前記ベース部材の主面上に固定されている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被覆電線を軟質樹脂シート上に平行に並べる構成を開示している。被覆電線と軟質樹脂シートとを結合する手段としては、縫着手段、加熱加圧溶着手段等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-192408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、複数の被覆電線を軟質樹脂シート上に並べる場合、被覆電線を1つずつ軟質樹脂シートに結合していく必要がある。このため、複数の被覆電線を軟質樹脂シートに結合するための作業負担が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、複数の線状伝送部材をベース部材に容易に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、複数の線状伝送部材がまとめられた集合線と、主面上に前記集合線が固定されたベース部材と、を備える配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の線状伝送部材をベース部材に容易に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1に係る配線部材を示す概略平面図である。
図2図2図1のII-II線における概略断面図である。
図3図3は変形例に係る配線部材を示す概略断面図である。
図4図4は他の変形例に係る配線部材を示す概略断面図である。
図5図5はさらに他の変形例に係る配線部材を示す概略断面図である。
図6図6は実施形態2に係る配線部材を示す概略平面図である。
図7図7図6のVII-VII線における概略断面図である。
図8図8は変形例に係る配線部材を示す概略断面図である。
図9図9は変形例に係る配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図10図10は変形例に係る配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図11図11は変形例に係る配線部材の製造方法例を示す説明図である。
図12図12は実施形態3に係る配線部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)複数の線状伝送部材がまとめられた集合線と、主面上に前記集合線が固定されたベース部材と、を備える配線部材である。集合線をベース部材に固定すれば、複数の線状伝送部材をベース部材に固定できる。このため、複数の線状伝送部材がベース部材に容易に固定され得る。
【0012】
(2)前記集合線は、前記複数の線状伝送部材が撚り合わされたツイスト線であり、前記複数の線状伝送部材の少なくとも1つが前記ベース部材の主面上に固定されているものであってもよい。複数の線状伝送部材の少なくとも1つがベース部材の主面上に固定されれば、複数の線状伝送部材がベース部材に固定され得る。
【0013】
(3)前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分における総厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法と、前記線状伝送部材の初期直径寸法に前記複数の線状伝送部材が積重ねられた数を乗じた寸法との和よりも小さくてもよい。これにより、配線部材の厚み寸法が小さくなる。
【0014】
(4)前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分における総厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法と、前記線状伝送部材の初期直径寸法との和よりも大きくてもよい。これにより、線状伝送部材を潰し過ぎないようにできる。
【0015】
(5)前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分が前記ベース部材に固定されたベース側固定部を備えていてもよい。ベース部材と線状伝送部材とは安定して固定され易い。そこで、複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、複数の線状伝送部材のうちベース部材に接触する部分がベース側固定部でベース部材に固定されれば、複数の線状伝送部材は安定してベース部材に固定され得る。
【0016】
(6)前記ベース側固定部において、前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分よりも前記ベース部材が変形していてもよい。これにより、線状伝送部材が可及的に元の状態に保たれる。
【0017】
(7)前記ベース側固定部において、前記ベース部材よりも前記複数の線状伝送部材のうち前記ベース部材に接触する部分が変形していてもよい。これにより、ベース部材が可及的に元の状態に保たれる。
【0018】
(8)前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記複数の線状伝送部材同士が固定された積重ね固定部を備えていてもよい。複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、複数の線状伝送部材同士も積重ね固定部によって固定されているため、複数の線状伝送部材はより確実にベース部材に固定され得る。
【0019】
(9)前記複数の線状伝送部材は、芯線と前記芯線の周囲の被覆とを有する電線を含み、前記複数の線状伝送部材が積重ねられた部分において、前記芯線が他の部分よりも偏平な形状となっていてもよい。これにより、配線部材の厚み寸法が小さくなる。
【0020】
(10)前記複数の線状伝送部材が横並びとなる部分において、前記複数の線状伝送部材が前記ベース部材に固定された横並び固定部を備えていてもよい。複数の線状伝送部材が横並びとなる部分において、複数の線状伝送部材が横並び固定部においてベース部材に固定されているため、複数の線状伝送部材はより確実にベース部材に固定され得る。
【0021】
(11)前記ベース部材のうち前記横並び固定部における最も大きい厚み寸法が、前記ベース部材の初期厚み寸法よりも大きくてもよい。これにより、横並び部分がベース部材に容易に固定される。また、ベース部材に対する線状伝送部材の全体的な固着力が向上する。
【0022】
(12)前記ベース部材の前記主面において前記線状伝送部材に対する側方部分が凹んでいてもよい。ベース部材のうち線状伝送部材に対する側方部分において凹んだ部分が横並び固定部に寄せられることによって、横並び固定部が大きくかさ上げされる。
【0023】
(13)前記集合線は、前記複数の線状伝送部材を覆う被覆部材をさらに備え、前記被覆部材が前記ベース部材の主面上に固定されていてもよい。複数の線状伝送部材が、複数の線状伝送部材で覆われることによってまとめられているので、被覆部材がベース部材に固定されれば、複数の線状伝送部材はベース部材に容易に固定され得る。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る配線部材について説明する。図1は配線部材10を示す概略平面図であり、図2図1のII-II線における概略断面図である。図2では電線22をベース部材の一例であるシート部材に超音波溶着するホーン50及びアンビル52が示されている。
【0026】
配線部材10は、集合線20と、ベース部材30とを備える。
【0027】
集合線20は、複数の線状伝送部材22がまとめられた構成とされている。
【0028】
線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材22は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0029】
ここでは線状伝送部材22が一般電線22(以下、単に電線22と呼ぶ)であるものとして説明する。電線22は、伝送線本体としての芯線24と、芯線24を覆う被覆26としての絶縁被覆26とを有する。電線22に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、線状伝送部材22に適用可能である。
【0030】
芯線24は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。芯線24が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていてもよい。絶縁被覆26は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線24の周囲に押出成形されるなどして形成される。ここでは電線22は、横断面が円形のいわゆる丸電線である。
【0031】
集合線20は、複数の線状伝送部材22(ここでは複数の電線22)がまとめられることによって構成されている。
【0032】
複数の電線22をまとめるための構成は任意である。複数の電線22がまとめられて線状の形態を呈するものであればよい。
【0033】
例えば、複数の電線22が、他の部材を用いずに、線状にまとめられてもよい。この形態としては、例えば、複数の電線22が撚り合わされたり、編まれたりする構成であることが想定される。
【0034】
また、複数の電線22が、他の部材によって、線状にまとめられてもよい。この形態としては、例えば、複数の電線22を線状に集合させた状態でその外周を被覆部材で覆う構成であることが想定される。被覆部材は、複数の電線22の周囲に押出被覆されたものであってもよいし、複数の電線22の周囲に巻回された粘着テープであってもよいし、複数の電線22の周囲に外装されたコルゲートチューブ等のチューブ部材であってもよい。この場合に、集合線をベース部材に固定するための構成については、実施形態3で説明する。
【0035】
ここでは、集合線20は、複数の電線22が撚り合わされたツイスト線20であるものとして説明する。ツイスト線20に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、集合線20一般に適用可能な構成である。ここでは、ツイスト線20は、2本の電線22が撚り合わされたものであるが、3本以上の電線22が撚り合わされたものであってもよい。かかるツイスト線20は、ノイズの影響を受け難いため、信号伝送用に適する。もっとも、ツイスト線20は、電力線として用いられてもよい。
【0036】
ベース部材30は、主面32上にツイスト線20が固定される部材である。主面32上にツイスト線20が固定されることによって、当該ツイスト線20が主面32において所定の経路に沿って保持される。つまり、ベース部材30は、ツイスト線20を所定の経路に沿って保持する主面32を有する部材であるともいえる。ベース部材30は、上記のようにツイスト線20を固定するための主面32を有する部材であればよく、シート状に形成されていてもよいし、立体的な形状に形成されていてもよい。
【0037】
ここでは、ベース部材30は、偏平なフラット部分を有する部材、より具体的には、曲げ可能なシート部材30であるものとして説明する場合がある。シート部材30に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、ベース部材に適用可能である。
【0038】
シート部材30を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材30は、好ましくはPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材30は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。シート部材30は、金属などの材料を含むこともあり得る。シート部材30は、好ましくは、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有する。シート部材30は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0039】
なお、本実施形態では、主面32上には、上記ツイスト線20とは別に、追加線状伝送部材28が固定される。追加線状伝送部材28は、線状伝送部材22と同様に、電気又は光等を伝送する線状の部材であってもよいし、ツイスト線20と同様の部材であってもよい。ここでは、追加線状伝送部材28は、一般電線28(以下、単に電線28と呼ぶ)であるものとして説明する。電線28に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、追加線状伝送部材28に適用可能である。
【0040】
電線28も、主面32上に固定される。ここでは、電線28は、ツイスト線20と並列状態で主面32に固定される。電線28とツイスト線20とは途中で分岐して別々の経路に沿って固定されてもよい。電線28の全体とツイスト線20の全体とが、主面32上において別々の経路に沿って固定されてもよい。
【0041】
主面32上にツイスト線20と電線28とが固定される構成を前提とすると、ベース部材30は、主面32上に、少なくとも1つのツイスト線20と少なくとも1つの電線28(追加線状伝送部材28)とを偏平な状態に保つ部材であると考えることができる。さらに、ベース部材30が平たいフラット部を有し、そのフラット部の主面上に少なくとも1つのツイスト線20と少なくとも1つの電線28(追加線状伝送部材28)とが固定される構成を前提とする。この場合、配線部材10は、ツイスト線20と電線28(追加線状伝送部材28)とを偏平な状態に保つ偏平な部分を備える配線部材であると考えることができる。さらに、ベース部材30が曲げ可能なシート部材であることを前提とする。この場合、配線部材10は、ツイスト線20と電線28(追加線状伝送部材28)とを偏平な状態に保つ偏平な配線部材であり、かつ、配設対象となる表面形状に応じて変形可能な配線部材であると考えることができる。
【0042】
上記追加線状伝送部材28は、主面32上に複数本固定されていてもよいし、省略されてもよい。
【0043】
ベース部材30(ここではシート部材)の主面32上にツイスト線20を固定する構成について説明する。
【0044】
ツイスト線20に含まれる複数の電線22の少なくとも1つがベース部材30の主面32上に固定されている。複数の電線22のうちの一部(例えば1つ)の電線22のみがベース部材30の主面32上に固定されていてもよいし、複数の電線22の全部がベース部材30の主面32上に固定されていてもよい。複数の電線22は撚り合わされているため、ツイスト線20に含まれる複数の電線22のうちの一部(例えば1つ)がベース部材30の主面32上に固定されていれば、当該ベース部材30の主面上に固定された一部(例えば1つ)の電線22と撚り合わされた残りの電線22も、当該一部(例えば1つ)の電線22を介してベース部材30の主面32上に固定されることになる。
【0045】
ツイスト線20に含まれる複数の電線22の少なくとも1つをベース部材30(シート部材)の主面32上に固定する構成は、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、電線22とシート部材30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。ツイスト線20に含まれる複数の電線22の少なくも1つは、単独でシート部材30に接触部位固定されてもよいし、まとまった形態(実施形態3参照)でシート部材30に接触部位固定されてもよい。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、電線22をシート部材30に向けて押え込んだりする。また、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、線状伝送部材(電線)とシート材とを囲む状態などとなって、線状伝送部材(電線)とシート材とを挟み込んだりする。非接触部位固定とは、これらの状態となって、電線22とシート部材30とが固定された状態に維持するものである。ツイスト線20に含まれる複数の電線22の少なくも1つは、単独でシート部材30に非接触部位固定されてもよいし、まとまった形態でシート部材30に非接触部位固定されてもよい。
【0046】
以下では、電線22とシート材とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。接触部位固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、非接触部位固定にも適用可能である。
【0047】
かかる接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、電線22とシート部材30とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、電線22とシート部材30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば電線22とシート部材30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。以下では、電線22とシート部材30とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。接触部位直接固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、接触部位間接固定にも適用可能である。
【0048】
かかる接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0049】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線22とシート部材30とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線22とシート部材30とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成した部分(電線22とシート部材30との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0050】
接触部位直接固定の場合、電線22の被覆に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材30に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。これらの場合において、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついた状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。また、接触部位直接固定の場合、電線22の被覆に含まれる樹脂とシート部材30に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。この場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、電線22の被覆とシート部材30とが、同じ樹脂材料など相溶しやすい樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0051】
ここでは、電線22とシート部材30とが、超音波溶着されたものとして説明する。電線22とシート部材30との固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、上記した各種固定にも適用可能である。
【0052】
すなわち、配線部材10は、シート部材30の主面32上で複数の電線22が積重ねられた部分において、複数の電線22のうちシート部材30(ベース部材)に接触する部分が当該ベース部材30に固定されたベース側固定部40を備える。
【0053】
より具体的には、ツイスト線20はシート部材30の主面32上に沿って配設されているため、当該主面32に対して直交する方向から観察すると、複数の電線22が交差してシート部材30の主面32上に積重ねられる積重ね部分20aと、複数の電線22が並列状態に配置される並列部分20bとが交互に延在する。
【0054】
上記積重ね部分20aにおいて、シート部材30の主面32側の電線22がシート部材30に固定されることで、ベース側固定部40が形成されている。
【0055】
ベース側固定部40は、例えば、積重ね部分20aにおいて、超音波溶着用のホーン50とアンビル52との間で、シート部材30とツイスト線20とを挟込んで超音波振動エネルギーを付与し、電線22とシート部材30の少なくとも一方の樹脂を溶かして両者を固定することによって形成することができる。つまり、ベース側固定部40は、超音波溶着部でもある。
【0056】
シート部材30とツイスト線20とに対するホーン50とアンビル52との位置関係は任意である。超音波振動を付与するホーン50をシート部材30側に設け、受側の部材であるアンビル52をツイスト線20側に配設してもよい。これにより、シート部材30と電線22との間に超音波振動エネルギーが効果的に伝達され、それらをより確実に接合できる。ホーン50及びアンビル52のいずれを加圧してもよいし、両方を加圧してもよい。シート部材30側からホーン50又はアンビル52を加圧する場合、シート部材30の下面のうち加圧された場所が部分的に凹んでいてもよい。
【0057】
上記積重ね部分20aにおいては、複数の電線22が積重ねられているため、ツイスト線20は、当該積重ね部分20aにおいて、主面32から最も大きく突出する。このため、ホーン50とアンビル52とで,ツイスト線20とシート部材30とを挟込んで加圧し易い。このため、積重ね部分20aは、加圧による溶着、特に、超音波溶着を行う箇所として適している。
【0058】
しかも、積重ね部分20aにおいて、複数の電線22が交差した状態となっているため、ホーン50とアンビル52とで、ツイスト線20とシート部材30とを挟込んだ状態で、複数の電線22の積重ね状態が崩れ難い。これにより、ツイスト線20の導体間の距離が安定し、また、撚りピッチも安定し、信号伝送性能に優れたものとすることができる。このため、積重ね部分20aは、主面32から離れた側の電線22を介して、主面32に接した側の電線22とシート部材30とを互いに押付け合うように加圧するのにも適する。
【0059】
ツイスト線20の延在方向において、上記積重ね部分20aは、間隔をあけて線状に並んで複数設けられる。複数の積重ね部分20aのうち1つのみにベース側固定部40が形成されてもよいし、複数の積重ね部分20aのうちの複数にベース側固定部40が設けられてもよい。後者の場合、複数の積重ね部分20aに対してベース側固定部40が設けられない箇所を介さずに連続的にベース側固定部40が設けられてもよいし(例えば、複数の積重ね部分20aの全てにおいて溶着がなされる場合)、複数の積重ね部分20a毎にベース側固定部40が設けられてもよい(例えば、複数の積重ね部分20aが2つおき、又は、3つおきに溶着される場合等)。図1では、複数の積重ね部分20aに対して連続的にベース側固定部40が設けられた形態を示している。
【0060】
複数の積重ね部分20aに対して連続的にベース側固定部40を設ける場合、複数の積重ね部分20aのそれぞれに対して超音波溶着を行い、1つずつベース側固定部40を形成してもよい。また、長さが長い加圧面を有するホーン及びアンビルを用い、複数の積重ね部分20aに対して一括して超音波溶着を行い、複数のベース側固定部40を同時に形成してもよい。また、ホーン及びアンビルの少なくとも一方を、ツイスト線20に沿って移動させて、複数の積重ね部分20aに対して連続的に超音波溶着を行い、もって、複数のベース側固定部40が連続的に形成されてもよい。
【0061】
また、複数のベース側固定部40を形成する場合、ツイスト線20全体としてみて、複数の電線22のうちの1つのみが、複数のベース側固定部40を介してシート部材30に固定されてもよい。また、複数の電線22のそれぞれが、少なくとも1つのベース側固定部40を介してシート部材30に固定されてもよい。具体的には、複数のベース側固定部40は、2つの電線22のうちの一方をシート部材30に固定するものと、他方をシート部材30に固定するものとを含んでいてもよい。
【0062】
また、ホーン及びアンビルのうちツイスト線20を押え込む側に、ツイスト線20又は電線22の幅に応じた溝が形成されたものを用いられ、ツイスト線20又は電線22の幅方向のずれを防止した状態で超音波溶着が行われてもよい。
【0063】
積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tは、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dに複数の電線22が積重ねられた数(ここでは2つ)を乗じた寸法(d×2)との和(t1+d×2)よりも小さいことが好ましい。ここで、シート部材30の初期厚み寸法t1は、シート部材30に電線22を溶着する前の状態における当該シート部材30の厚み寸法t1である。シート部材30のうち電線22が溶着されていない部分は、初期厚み寸法t1を保っている。また、電線22の初期直径寸法dは、シート部材30に電線22を溶着する前の状態における当該電線22の直径寸法dである。電線22のうちシート部材30に溶着されていない部分は、初期直径寸法dを保っている。
【0064】
単にシート部材30に複数の電線22を積重ねると、その部分の厚み寸法は、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dに複数の電線22が積重ねられた数(ここでは2つ)を乗じた寸法(d×2)との和(t1+d×2)となる。このため、当該積重ね部分の厚みが他の部分に対して最も大きくなってしまう。そこで、積重ね部分20aにおいて圧縮するように溶着が行われる。これにより、配線部材10において最も厚くなる部分の厚み寸法を小さくすることができる。
【0065】
積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tは、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dとの和(t1+d)よりも大きいことが好ましい。これにより、芯線24の断面積が小さくなり過ぎたり、絶縁被覆26が薄くなり過ぎたりすることが抑制される。
【0066】
上記例では、ベース側固定部40において、シート部材30よりも、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分が変形している。すなわち、ベース側固定部40の断面において、シート部材30の電線22の絶縁被覆26との境界が観察され得る。当該断面において、シート部材30の初期厚み寸法に対する、積重ね部分20aにおけるシート部材30の厚み寸法の減少分が把握され得る。また、電線22の初期直径寸法に対する、シート部材30に溶着された電線22の積重ね方向の寸法の減少分が把握され得る。シート部材30よりも、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分が変形しているとは、例えば、前者の減少分よりも後者の減少分が大きいことをいう。シート部材30は変形せずに、電線22の絶縁被覆26のみが変形していてもよい。
【0067】
これにより、シート部材30が可及的に元の状態に保たれ、シート部材30の保護機能が十分に発揮される。
【0068】
図3に示すように、ベース側固定部40に対応するベース側固定部40Bにおいて、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分よりも、シート部材30が変形していてもよい。すなわち、ベース側固定部40Bの断面において、シート部材30の電線22の絶縁被覆26との境界が観察され得る。上記と同様に、当該断面において、シート部材30の初期厚み寸法に対する、積重ね部分20aにおけるシート部材30の厚み寸法の減少分が把握され得る。また、電線22の初期直径寸法に対する、シート部材30に溶着された電線22の積重ね方向の寸法の減少分が把握され得る。複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分よりも、シート部材30が変形しているとは、例えば、後者の減少分よりも前者の減少分が大きいことをいう。電線22の絶縁被覆26は変形せずに、シート部材30のみが変形していてもよい。この場合、電線22がシート部材30に対して部分的に埋込まれた状態となる。
【0069】
これにより、絶縁被覆26が可及的に元の状態に保たれ、絶縁被覆26の絶縁及び保護機能が十分に発揮される。
【0070】
この場合においても、積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tは、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dに複数の電線22が積重ねられた数(ここでは2つ)を乗じた寸法(d×2)との和(t1+d×2)よりも小さいことが好ましい。また、積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tは、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dとの和(t1+d)よりも大きいことが好ましい。
【0071】
シート部材30、絶縁被覆26のいずれがより変形するかについては、それぞれの材料の柔らかさ、融点等によって調整され得る。例えば、材料の柔らかさは、同じ主成分の材料であっても可塑剤の割合等によって調整され得る。
【0072】
図4に示すように、積重ね部分20aにおいて、芯線24が他の部分よりも偏平な形状となっていてもよい。すなわち、初期の電線22の芯線24が断面円形状に形成されているとする。複数の電線22が溶着される際に、芯線24が積重ね方向において圧縮される。これにより、芯線24は、積重ねる方向の寸法d1が幅方向寸法d2よりも小さくなるように偏平な形状に形成される。芯線24はシート部材30の厚み方向寸法が小さい偏平形状であるともいえる。ここでは、芯線24は、絶縁被覆26と共に偏平な形状に形成される。電線22のうち積重ね部分20a以外の部分は、元の断面円形状に保たれるか、軽く偏平な形状に変形される程度に留まっている。
【0073】
このように、積重ね部分20aにおいて、芯線24が他の部分よりも偏平な形状となる構成は、上記総厚み寸法Tを小さくすることに貢献する。
【0074】
また、ここでは、配線部材10が、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分がシート部材30に固定されたベース側固定部40、40Bを備える例で説明したが、図5に示す変形例に係る配線部材10Bのように、積重ね部分20aにおいて、複数の電線22同士が固定された積重ね固定部42を備えていてもよい。
【0075】
積重ね固定部42は、例えば、積重ね部分20aにおいて、超音波溶着用のホーン50とアンビル52との間で、シート部材30とツイスト線20とが挟込まれて、上記ベース側固定部40を形成する際に同時に形成されてもよい。この場合、積重ね固定部42は、複数の電線22の少なくとも一方の絶縁被覆26の樹脂を溶かして両者を固定することによって形成され得る。つまり、ベース側固定部40は、超音波溶着部でもある。
【0076】
つまり、超音波溶着用のホーン50とアンビル52との間で、シート部材30とツイスト線20とを挟込んだ状態で、超音波振動エネルギーが付与されることによって、ベース側固定部40のみが形成されてもよいし、ベース側固定部40及び積重ね固定部42の両方が形成されてもよい。いずれの構成とするかについては、付与する超音波振動エネルギーの量、シート部材30及び電線22のいずれの側から超音波振動エネルギーを付与するか、ベース側固定部40の樹脂と電線22の樹脂との超音波溶着のし易さ、電線22の樹脂同士の超音波溶着のし易さ等によって適宜設定される。
【0077】
積重ね固定部42においても、絶縁被覆26同士が変形して溶着される。かかる構成も、上記総厚み寸法Tを小さくすることに貢献する。
【0078】
なお、電線28の固定構成についても、上記ツイスト線20をシート部材30に固定するのと同様の構成が適用され得、例えば、超音波溶着によって固定する構成が採用され得る。
【0079】
ツイスト線20の端部、電線28の端部には電気コネクタ、光コネクタ等の接続部材が設けられてもよい。当該接続部材を介して配線部材10、10Bが電気部品、光部品に接続されることで、配線部材10、10Bが複数の電気部品同士、光部品同士を接続する配線部材となる。
【0080】
以上のように構成された配線部材10、10Bによると、複数の電線22がまとめられてツイスト線20とされているため、当該ツイスト線20がシート部材30に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定される。このため、複数の電線が別々にシート部材に沿わせて別々にシート部材30に固定される場合と比べて、複数の電線22がシート部材30に容易に固定される。
【0081】
また、集合線20は、複数の電線22が撚り合わされたツイスト線20であるため、複数の電線22のうちの1つがシート部材30の主面32上に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定され得る。
【0082】
また、シート部材30の主面32は平坦であり、電線22は主面32に安定して固定され易い。そこで、複数の電線22が積重ねられた積重ね部分20aにおいて、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分がベース側固定部40でシート部材30に固定されることで、複数の電線22が安定してシート部材30に固定され得る。
【0083】
また、積重ね部分20aにおいて、複数の電線22同士も積重ね固定部42によって固定されていると、複数の電線22はより確実にシート部材30に固定され得る。
【0084】
また、複数の電線22の積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tが、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dに複数の電線22が積重ねられた数を乗じた寸法との和(t1+d×2)よりも小さいため、配線部材10、10Bの最大厚み寸法が小さくなり得る。
【0085】
また、複数の電線22の積重ね部分20aにおける総厚み寸法Tが、シート部材30の初期厚み寸法t1と、電線22の初期直径寸法dとの和(t1+d)よりも大きいため、電線22が潰され過ぎないようにできる。
【0086】
また、ベース側固定部40において、シート部材30よりも、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分が変形していれば、シート部材30が可及的に元の状態に保たれる。
【0087】
また、ベース側固定部40Bにおいて、複数の電線22のうちシート部材30に接触する部分よりもシート部材30が変形していれば、電線22が可及的に元の状態に保たれる。
【0088】
また、複数の電線22が積重ねられた部分において、芯線24が他の部分よりも偏平な形状となっていれば、この点からも、配線部材10の厚み寸法が小さくなり得る。
【0089】
[実施形態2]
実施形態2に係る配線部材110について説明する。図6は配線部材110を示す概略平面図であり、図7図6のVII-VII線における概略断面図である。図7では電線22をシート部材に超音波溶着するホーン150及びアンビル152が示されている。なお、本実施の形態の説明において、実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0090】
配線部材110は、集合線20と、ベース部材30とを備える。
【0091】
実施形態1で説明したように、集合線20はツイスト線20であり、ベース部材30はシート部材30であるものとして説明する。
【0092】
配線部材10と配線部材110との主な相違点は、配線部材110が、シート部材30の主面32上で複数の電線22が横並びとなる部分において、複数の電線22がシート部材30の主面32上に固定された横並び固定部44を備える点である。
【0093】
すなわち、ツイスト線20はシート部材30の主面32上に沿って配設されているため、当該主面32に対して直交する方向から観察すると、複数の電線22が交差してシート部材30の主面32上に積重ねられる積重ね部分20aと、複数の電線22が並列状態に配置される並列部分20bとが交互に延在する。
【0094】
上記並列部分20bでは、主面32上において、複数の電線22が横並びとなっているため、複数(ここでは2つ)の電線22がシート部材30の主面32上に接触し得る位置に存在している。なお、並列部分20bにおいて、複数の電線22は相互に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。また、複数の電線22が並列状態に配置されてシート部材30の主面32上に接触し得る部分を長くするため、ツイスト線20のうちシート部材30への固定対象となる一部が撚り戻されてもよい。
【0095】
並列部分20bにおいて、横並びとなった複数の電線22がシート部材30に固定されることで、横並び固定部44が形成されている。
【0096】
横並び固定部44は、例えば、並列部分20bにおいて、超音波溶着用のホーン50とアンビル52との間で、横並びとなっている複数の電線22とシート部材30とを挟込んで超音波振動エネルギーを付与し、複数の電線22とシート部材30の少なくとも一方の樹脂を溶かして両者を固定することによって形成され得る。つまり、横並び固定部44は、超音波溶着部でもある。
【0097】
超音波振動を付与するホーン50及び受側のアンビル52を、シート部材30側に設けるか、ツイスト線20側に設けるかは任意である。ホーン50及びアンビル52のいずれが加圧されてもよいし、両方が加圧されてもよい。シート部材30側からホーン50又はアンビル52が加圧される場合、シート部材30の下面のうち加圧された場所が部分的に凹んでいてもよい。
【0098】
並列部分20bにおいては、複数の電線22が横並びとなっているため、ツイスト線20は、当該並列部分20bにおいて、積重ね部分20aよりも凹んでいる。このため、実施形態1と比較して、ホーン50とアンビル52とが大きく加圧され、より接近されるとよい。
【0099】
並列部分20bにおいては、複数の電線22が横並びとなっているため、シート部材30の主面32上に安定して接触し得る。このため、複数の電線22が安定してシート部材30の主面32上に固定され易い。
【0100】
ツイスト線20の延在方向において、上記並列部分20bは、間隔をあけて線状に並んで複数設けられる。複数の並列部分20bのうち1つのみに横並び固定部44が形成されてもよいし、複数の並列部分20bのうちの複数に横並び固定部44が設けられてもよい。後者の場合、複数の並列部分20bに対して横並び固定部44が設けられない箇所を介さずに連続的に横並び固定部44が設けられてもよいし、複数の並列部分20b毎に横並び固定部44が設けられてもよい。図6では、複数の並列部分20bに対して連続的に横並び固定部44が設けられた形態が示されている。
【0101】
複数の横並び固定部44が設けられる場合、複数の並列部分20bのそれぞれに対して超音波溶着が行われ、1つずつ横並び固定部44が形成されてもよい。また、並列部分20bのピッチの整数倍の間隔で突出する複数の加圧部を有するホーン又はアンビルが用いられ、複数の並列部分20bに対して一括して超音波溶着が行われ、複数の横並び固定部44を同時に形成されてもよい。また、ホーン及びアンビルの少なくとも一方が、ツイスト線20に沿って移動させられて、対象となる並列部分20bでホーン及びアンビルの加圧及び超音波振動エネルギーの付与が行われて、複数の横並び固定部44が順次に形成されてもよい。
【0102】
また、ホーン及びアンビルのうちツイスト線20を押え込む側に、ツイスト線20又は電線22の幅に応じた溝が形成されたものが用いられ、ツイスト線20又は電線22の幅方向のずれを防止した状態で超音波溶着が行われてもよい。
【0103】
以上のように構成された配線部材110によると、複数の電線22がまとめられてツイスト線20とされているため、当該ツイスト線20がシート部材30に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定される。このため、複数の電線が別々にシート部材に沿わせられて別々にシート部材30に固定される場合と比べて、複数の電線22がシート部材30に容易に固定され得る。
【0104】
また、集合線20は、複数の電線22が撚り合わされたツイスト線20であるため、複数の電線22のうちの1つがシート部材30の主面32上に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定され得る。
【0105】
また、複数の電線22が横並びとなる並列部分20bにおいて、複数の電線22が横並び固定部44においてシート部材30に固定されているため、複数の電線22がより確実にシート部材30に固定され得る。
【0106】
本実施形態では、複数の電線22が横並び固定部44でシート部材30に固定されている例を説明したが、実施形態1のベース側固定部40と実施形態2の横並び固定部44とが混在していてもよい。また、実施形態1のベース側固定部40、積重ね固定部42と、実施形態2の横並び固定部44とが混在していてもよい。
【0107】
図8は実施形態2に係る変形例の配線部材110Bを示す概略断面図である。本変形例に示すように、シート部材30のうち上記横並び固定部44に対応する横並び固定部44Bにおける最も大きい厚み寸法Uが、シート部材30の初期厚み寸法t1よりも大きくてもよい。
【0108】
すなわち、横並び固定部44Bは、シート部材30の主面よりも突出している。この横並び固定部44Bの主面46B上に電線22が配設されている。そして、主面46Bが電線22の絶縁被覆26に溶着されている。
【0109】
より具体的には、横並び固定部44Bは、複数の電線22が横並びとされた形態の幅寸法に応じた幅寸法に形成されている。横並び固定部44Bの両側部は、シート部材30に対して垂直姿勢で突出する垂直面47Bとされている。横並び固定部44Bの両側部は、シート部材30に対して傾斜していてもよい。一対の垂直面47Bは、横並びとなった複数の電線22の外側縁部に向けて延在している。ここでは、前記垂直面47Bが電線22の外側縁部に達する部分において、シート部材30のうち横並び固定部44Bにおける最も大きい厚み寸法Uとなる部分が生じ得る。
【0110】
一対の垂直面47Bの間のうちの外向き部分に上記主面46Bが形成されている。主面46Bのうち両側部は、絶縁被覆26の外周形状に応じて曲った曲面46Baに形成されている。ここでは、曲面46Baは、円周面に対して1/4周程度の部分的な曲面をなしている。この曲面46Baに絶縁被覆26が溶着されている。主面46Bのうち幅方向中央部46Bbは、シート部材30の主面と平行な面に形成されている。
【0111】
上記曲面46Baは、絶縁被覆26と横並び固定部44Bとの溶着にかかる境界面として観察され得る。この曲面46Baは、シート部材30のうち電線22の未配設部分における主面の形状よりも絶縁被覆26の円周面形状に近い形状となる。これは溶着時におけるシート部材30の変形量が絶縁被覆26の変形量よりも大きいことによる。
【0112】
電線22は、曲面46Baのうち幅方向中央部46Bb側の端部の位置で、シート部材30に対して支持される。ここでは、主面46Bのうち幅方向中央部46Bbは、シート部材30の主面よりも突出している。このため、電線22は、シート部材30の主面に対して寸法V分、離れた位置で支持される。
【0113】
また、シート部材30における主面において電線22の側方部分が凹んでいる。以下では、この凹んだ部分を凹部38Bと称する。上記横並び固定部44Bは、当初のシート部材30のうち当該凹部38Bに存在していた部分が、溶着時に電線22側に寄せられることによって形成される。
【0114】
この配線部材110Bによると、横並び固定部44Bがシート部材30の主面から突出して複数の電線22に溶着される。このため、並列部分20bがシート部材30に容易に溶着される。しかも、横並び固定部44Bは、電線22の外周形状に応じて曲面46Baに変形して電線22に溶着される。このため、電線22の変形を抑制しつつ、電線22と横並び固定部44Bとの溶着領域を広げることができ、電線22がより強固にシート部材30に溶着される。
【0115】
上記したように複数の電線22が積重ね部分20aにおいてシート部材30に溶着される構成と相俟って、複数の電線22がより強固にシート部材30に固定される。
【0116】
複数の電線22の並列部分20bをシート部材30に溶着する製造方法例について説明する。
【0117】
ここでは、図9及び図10に示すように、超音波溶着機180によって複数の電線22とシート部材30とを超音波溶着する。超音波溶着機180は、ホーン182及びアンビル184を備える。
【0118】
ホーン182は、接触するワークに対して超音波振動を付与する部材である。アンビル184は、ホーン182に対して反対側からワークを支持する部材である。従って、ワークにおける溶着対象となるシート部材30及び複数の電線22が、ホーン182及びアンビル184によって挟持された状態で、超音波振動が付与されて溶着される。
【0119】
より具体的には、複数の電線22をシート部材30に対して所定経路に沿って配設しつつ、シート部材30と複数の電線22とを、ホーン182及びアンビル184によって挟持する。
【0120】
例えば、ホーン182は、並列部分20bよりも幅広な押付面を有している。押付面は、並列部分20b及び凹部38Bを含む幅寸法よりも大きな幅寸法に設定される。
【0121】
また、アンビル184のうちホーン182側を向く部分には複数の電線22を保持する保持溝185が形成されている。ここでは、保持溝185は、並列部分20bを保持可能な幅広保持部185aを含む。当該幅広保持部185aに、複数の電線22が並列状態で保持される。また、ここでは、保持溝185の幅方向中央の奥側には、1つの電線22を保持可能な中央保持部185bが形成されている。このため、積重ねられた複数の電線22のうちの1つを当該中央保持部185bに配設すると共に他の電線22を幅広保持部185a内に配設することができる。これにより、複数の電線22が積重ね状態で保持溝185内に収容される。
【0122】
また、また保持溝185の側方部分にはホーン182と共にシート部材30のうち凹部38Bとなる部分を押える押え部189が形成されている。
【0123】
押え部189は、電線22が保持溝185に収まった状態で、電線22よりも突出する。換言すれば、電線22は、押え部189の先端部よりも奥側に収容される。ここでは、押え部189のうち外向き部分及び内向き部分は傾斜面に形成されている。これにより、押え部189は先端側に向けて徐々に幅狭となる。押え部189のうち内向き部分が、保持溝185の奥側に向けて保持溝185の幅方向中央に向けて傾斜する形状とされていることが好ましい。これにより、シート部材30のうち押え部189によって押された部分が保持溝185内に向けて寄せられ易い。
【0124】
そして、複数の電線22とシート部材30とがホーン182とアンビル184によって挟持された状態で、ホーン182によって超音波振動を付与する。すると、絶縁被覆26及びシート部材30が接触する部分において超音波振動に起因する摩擦熱が生じ、少なくとも一方が溶融することによって、両者が接合される。この際、シート部材30のうち押え部によって押された部分が、電線22の並列部分20b側に寄せられる。これにより、上記横並び固定部44Bが形成され、当該横並び固定部44Bに電線22の並列部分20bが溶着された状態となる。上記したように、少なくとも超音波溶着が行われている時点で、シート部材30が絶縁被覆26よりも柔らかい状態であることが好ましい。
【0125】
なお、ホーン182及びアンビル184が、複数の電線22の並列部分20b及び複数の積重ね部分20aを含む長さに形成されていれば、複数の電線22の並列部分20b及び複数の積重ね部分20aを、同時にシート部材30に溶着することもできる。
【0126】
積重ね部分20aにおいては、図11に示すように、複数の電線22が保持溝185のうち中央保持部185b及び幅広保持部185aに積重ね状態で収容された状態で、超音波溶着がなされる。この際、横並び固定部44Bと同様に、シート部材30のうち積重ね部分20aに対して側方部分も、押え部189によって積重ね部分20aに寄せられる。このため、ベース側固定部40に対応するベース側固定部40Cは、横並び固定部44Bと同様に、シート部材30に対して突出した状態となって、電線22に溶着される。この際、ベース側固定部40Cは、電線22の外周曲面に沿った形状に変形して、なるべく大きい溶着領域で当該電線22に溶着される。
【0127】
なお、シート部材30に対する並列部分20bの溶着と積重ね部分20aの溶着とは別々に行われてもよい。
【0128】
[実施形態3]
実施形態3に係る配線部材210について説明する。図12は配線部材210を示す概略断面図である。なお、本実施の形態の説明において、実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0129】
配線部材210は、集合線220と、ベース部材30とを備える。
【0130】
集合線220は、複数の線状伝送部材22がまとめられた構成とされている。
【0131】
線状伝送部材22は、実施形態2で説明したように、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。ここでは、実施形態2と同様に、線状伝送部材22が電線22であるとものとして説明する。
【0132】
集合線220は、複数の電線22を覆う被覆部材221を備える。被覆部材221は、複数の電線22が1つの線状にまとめられた状態で、当該複数の電線22の外周を覆っている。これにより、被覆部材221が、複数の電線22をまとめた状態に保つ。
【0133】
被覆部材221が複数の電線22をまとめた状態に保つため、被覆部材221内における複数の電線22の存在状態は任意である。被覆部材221内において、複数の電線22は撚り合わされていてもよいし、撚り合わされず平行状態で延在していてもよい。
【0134】
被覆部材221は、複数の電線22を覆って複数の電線22をまとめた形態に保つものであればよい。例えば、被覆部材221は、線状に集合させた複数の電線22の周囲に押出被覆された樹脂であってもよい。被覆部材221は、複数の電線22の周囲に巻回された粘着テープであってもよいし、複数の電線22の周囲に外装されたコルゲートチューブ等のチューブ部材であってもよい。ここでは、被覆部材221は、線状に集合させた複数の電線22の周囲に押出被覆された樹脂(シースとも呼ばれる)であるものとして説明する。被覆部材221の内部又は内周には、編組又は金属テープ等によって構成されるシールド層が設けられていてもよい。
【0135】
ベース部材30は、上記実施形態1と同様の部材である。ここでは、ベース部材30は、上記実施形態1と同様に、シート部材30であるものとして説明する。
【0136】
集合線220の被覆部材221がシート部材30の主面32上に固定されている。
【0137】
被覆部材221をシート部材30の主面32上に固定する構成としては、ツイスト線20の電線22の絶縁被覆26をシート部材30の主面32上に固定するのと同様の構成を適用することができる。ここでは、被覆部材221は、超音波溶着によって固定されているものとして説明する。
【0138】
以上のように構成された配線部材210によると、集合線220がシート部材30に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定される。このため、複数の電線が別々にシート部材に沿わせられて別々にシート部材30に固定される場合と比べて、複数の電線22がシート部材30に容易に固定され得る。
【0139】
また、集合線220は、複数の電線22が被覆部材221によって覆われてまとめられた形態とされているため、当該集合線220の被覆部材221がシート部材30の主面32上に固定されれば、複数の電線22がシート部材30に固定され得る。
【0140】
[変形例]
上記各実施形態及び各変形例において、集合線の経路が直線である必要は無く、曲った経路に沿ってベース部材の主面上に固定されていてもよい。
【0141】
また、上記シート部材30には、防音部材、シールド部材等が重ね合されていてもよい。
【0142】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0143】
10、10B 配線部材
20 ツイスト線(集合線)
20a 積重ね部分
20b 並列部分
22 電線(線状伝送部材)
24 芯線
26 被覆
28 電線(追加線状伝送部材)
30 シート部材(ベース部材)
32 主面
38B 凹部
40、40B、40C ベース側固定部
42 積重ね固定部
44、44B 横並び固定部
46B 主面
46Ba 曲面
46Bb 幅方向中央部
47B 垂直面
50 ホーン
52 アンビル
110、110B 配線部材
150 ホーン
152 アンビル
180 超音波溶着機
182 ホーン
184 アンビル
185 保持溝
185a 幅広保持部
185b 中央保持部
189 押え部
210 配線部材
220 集合線
221 被覆部材
T 総厚み寸法
U 厚み寸法
d 初期直径寸法
d1 寸法
d2 幅方向寸法
t1 初期厚み寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12