(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】イソインドリン化合物及びその利用
(51)【国際特許分類】
C09B 57/04 20060101AFI20221213BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20221213BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221213BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221213BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20221213BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20221213BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09B57/04 CSP
C09B67/46 A
C09D11/322
C09D201/00
C09D7/41
C08L101/00
C08K5/34
B41M5/00 120
B41M5/00 112
(21)【出願番号】P 2019082073
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛士
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-120756(JP,A)
【文献】特開2008-103474(JP,A)
【文献】特表2009-543917(JP,A)
【文献】特開平10-140066(JP,A)
【文献】特開平05-132630(JP,A)
【文献】特開2013-032486(JP,A)
【文献】特開2014-218457(JP,A)
【文献】特開昭52-083363(JP,A)
【文献】特開2008-069343(JP,A)
【文献】国際公開第2020/218262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 - 201/10
C09D 11/322
C09D 201/00
C09D 7/41
C08L 101/00
C08K 5/34
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表されるイソインドリン化合物。
【化1】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、チオアリール基、アミド基、又はスルホンアミド基を表し、
R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表し、
Aは、下式(2)、下式(3)、又は下式(4)で表される基を表し、
【化2】
式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
9はアルキル基又はアリール基を表し、
R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表し、
R
12~R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表す。]
【請求項2】
請求項1記載のイソインドリン化合物を含む顔料と、分散媒体とを含む、着色組成物。
【請求項3】
前記分散媒体が樹脂を含む、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の着色組成物を含むプラスチック用着色剤。
【請求項5】
請求項4に記載のプラスチック用着色剤を含むプラスチック成形品。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の着色組成物を含むトナー。
【請求項7】
前記分散媒体が、樹脂と、溶剤とを含む、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項8】
溶剤が水を含む、請求項7に記載の着色組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の着色組成物を含む塗料又は印刷インキ。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の着色組成物を含むインクジェットインキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イソインドリン化合物、及びイソインドリン化合物を含む顔料並びに着色組成物に関する。また、本開示は、上記着色組成物を含む、プラスチック用着色剤、プラスチック成型品、トナー、塗料、印刷インキ、及びインクジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、トナー、塗料、及び印刷インキなどの用途で使用される代表的な着色剤として、顔料が挙げられる。顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別され、有機顔料は、一般的に、無機顔料と比べて耐候性及び耐熱性に劣る傾向がある。しかし、有機顔料は、色の鮮明性及び着色力の観点では無機顔料よりも優れることから、様々な用途で使用されている。例えば、有機顔料として、アゾ顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、及びキナクリドン顔料などが知られている。
【0003】
一方、近年、環境的な観点から、芳香族アミン、及び重金属などを含まない有機顔料及び着色剤の需要が増大している。黄色から紅色の色相を有する有機顔料として、主にアゾ顔料が使用されているが、アゾ顔料には、使用されている原料、あるいは光又は熱による分解によって、成分中に芳香族アミンが含まれることがある。そのため、近年では、環境適合性の観点から、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー139、及びC.I.ピグメントレッド260といった、芳香族アミンを含まないイソインドリン顔料が注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、非対称性イソインドリン顔料の製造方法を開示している。特許文献2は、プラスチックの着色用途に向けたイソインドリン顔料を開示している。特許文献3は、水、分散剤、及びイソインドリン顔料を含む、インクジェットインキ用の分散体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-132630号公報
【文献】特表2009-543917号公報(特許5447833号)
【文献】特開平10-140066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イソインドリン顔料を使用して着色組成物を構成する場合、イソインドリン顔料は分散媒体において優れた分散性を示し、かつ耐熱性及び耐候性に優れることが好ましい。分散性が不十分であると、粘度上昇、及び分散安定性の低下といった不具合が生じる。また、耐熱性及び耐候性が不十分であると、例えば、黄色から黒色への変色といった不具合が生じる。
【0007】
しかし、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー139、及びC.I.ピグメントレッド260などの従来のイソインドリン顔料を使用した着色組成物は、顔料自体の分散性が低く、また耐候性及び耐熱性も十分に満足できるものではなく、用途によって顔料及び組成が限られている。
【0008】
例えば、特許文献2では、プラスチックの着色用途に向けて、顔料製造時の特定の結晶化工程によってイソインドリン顔料の分散性を改善しているが、顔料はC.I.ピグメントイエロー185に限られている。また、特許文献3は、インクジェットインキの用途に向けて、分散剤の使用を必須とする分散体を開示しているが、この分散体を用いたインキは、初期粘度が高く、分散安定性に乏しい傾向がある。そもそも、イソインドリン顔料に対して適用できる分散剤は限られているため、分散剤による分散性の改善には限界がある。
【0009】
したがって、上述の状況に鑑み、本発明は、分散性に優れ、かつ耐候性及び耐熱性に優れ、様々な用途に適用できる、イソインドリン化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、イソインドリン構造を有する化合物の各種特性について種々の検討を行った。その結果、顔料として下式(1)で表されるイソインドリン化合物を好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。但し、本発明は以下に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0011】
一実施形態は、下式(1)で表されるイソインドリン化合物に関する。
【化1】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、チオアリール基、アミド基、又はスルホンアミド基を表し、
R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表し、
Aは、下式(2)、下式(3)、又は下式(4)で表される基を表し、
【化2】
式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
9はアルキル基又はアリール基を表し、
R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表し、
R
12~R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表す。]
【0012】
一実施形態は、上式(1)で表されるイソインドリン化合物を含む顔料と、分散媒体とを含む、着色組成物に関する。
【0013】
一実施形態は、上記分散媒体が樹脂を含む、着色組成物に関する。
【0014】
一実施形態は、上記実施形態の着色組成物を含むプラスチック用着色剤に関する。
【0015】
一実施形態は、上記実施形態のプラスチック用着色剤を含むプラスチック成形品に関する。
【0016】
一実施形態は、上記実施形態の着色組成物を含むトナーに関する。
【0017】
一実施形態は、上記分散媒体が、樹脂と、溶剤とを含む、着色組成物に関する。上記溶剤は、水を含むことが好ましい。
【0018】
一実施形態は、上記実施形態の着色組成物を含む塗料又は印刷インキに関する。
【0019】
一実施形態は、上記実施形態の着色組成物を含むインクジェットインキに関する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、分散性、耐候性及び耐熱性に優れるため、プラスチックの着色、トナー、塗料、及び印刷インキなどの様々な用途に好適に使用できる、イソインドリン化合物を含む着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を意味する。また、本明細書に記載する「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0022】
<イソインドリン化合物(1)>
一実施形態は、イソインドリン化合物(1)に関する。
【0023】
[イソインドリン化合物(1)]
本明細書において、「イソインドリン化合物(1)」とは、下式(1)で表されるイソインドリン骨格を有する化合物を意味する。イソインドリン化合物(1)は、下式(1)で表されるイソインドリン骨格を有する化合物の1種又は2種以上を含んでよい。
【0024】
【化3】
式(1)中、R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、チオアリール基、アミド基、又はスルホンアミド基を表す。
R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
【0025】
Aは、下式(2)、下式(3)、又は下式(4)で表される基を表す。
【化4】
式(2)中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
9はアルキル基又はアリール基を表す。
式(3)中、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
式(4)中、R
12~R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表す。
【0026】
式(1)中、R1~R6におけるハロゲン原子は、特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよい。
【0027】
式(1)中、R1~R6におけるアルキル基(-R)は、炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団を意味する。炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
特に限定されないが、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、又は4-デシルシクロヘキシル基等であってよい。
【0028】
上記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がアミノ基や、フッ素原子などの他の置換基で置換されてもよい。すなわち、上記アルキル基は、アルキルアミノ基であってもよく、フルオロアルキル基であってよく、パーフルオロアルキル基であってもよい。アルキルアミノ基の具体例として、-CH2-NH2、-CH2-NHR、-CH2-NRR等が挙げられる。フルオロアルキル基の具体例として、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0029】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、一実施形態において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基であってよい(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)。具体例として、-C2H4-O-C2H5が挙げられる。
【0030】
一実施形態において、アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0031】
上式(1)中、R1~R6におけるアルコキシ基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0032】
上式(1)中、R1~R6おけるアリール基(-Ar)は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団を意味する。炭素数は6~30であることが好ましく、6~20であることがより好ましい。
特に限定されないが、上記アリール基は、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又はオバレニル基等であってよい。
一実施形態において、アリール基は、フェニル基であることが好ましい。
【0033】
上式(1)中、R1~R6におけるアリールオキシ基は、上述のアリール基(-Ar)に酸素原子が結合した基(-OAr)である。一実施形態において、アリールオキシ基は、フェノキシ基であることが好ましい。
【0034】
式(1)中、R1~R6におけるアミド基は、上述のアルキル基にアミド基が連結した基(-CONHR)である。一実施形態において、アミド基は、直鎖構造を有するアルキル基にアミド基が結合した基であることが好ましい。
【0035】
式(1)中、R1~R6におけるスルホンアミド基は、上述のアルキル基にスルホンアミド基が連結した基(-SO2NHR)である。一実施形態において、スルホンアミド基は、直鎖構造を有するアルキル基にスルホンアミド基が結合した基であることが好ましい。
【0036】
上式(1)中、R1~R6おけるチオアルキル基は、上述のアルキル基に硫黄原子が結合した基(-SR)である。一実施形態において、チオアルキル基は、好ましくは、直鎖構造を有するアルキル基に硫黄原子が結合した基であってよい。また、チオアリール基は、上述のアリール基に硫黄原子が結合した基(-SAr)である。一実施形態において、チオアリール基は、チオフェニル基であることが好ましい。
【0037】
一実施形態において、上式(1)におけるR1~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、アルコキシ基(アルキル基の炭素数は1~6)、フェニル基、フェノキシ基、アミド基、スルホンアミド基、チオアルキル基(アルキル基の炭素数は1~6)、及びチオフェニル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
上式(1)中、R7、及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。アルキル基(-R)の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
【0039】
特に限定されないが、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基等であってよい。
【0040】
上記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がアミノ基や、フッ素原子などの他の置換基で置換されてもよい。すなわち、上記アルキル基は、アルキルアミノ基であってもよく、フルオロアルキル基であってよく、パーフルオロアルキル基であってもよい。アルキルアミノ基の具体例として、-CH2-NH2、-CH2-NHR、-CH2-NRR等が挙げられる。フルオロアルキル基の具体例として、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0041】
耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、R7及びR8は、水素原子よりも、それそれぞれ独立して選択されるアルキル基であることが好ましい。すなわち、一実施形態において、R7及びR8の少なくとも一方はアルキル基であることが好ましく、双方がアルキル基であることがより好ましく、同じアルキル基であることがさらに好ましい。一実施形態において、アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0042】
上式(2)中、Xは、-O-又は-NH-を表しており、好ましくは-NH-である。
R9において、アルキル基及びアリール基は、先の説明と同義である。耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、アルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
【0043】
上式(3)中、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
アルキル基(-R)の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
【0044】
特に限定されないが、上記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、トリフルオロメチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基等であってよい。
【0045】
耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、R10及びR11は、水素原子よりもアルキル基の方が好ましい。一実施形態において、アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0046】
上式(4)中、R12~R16におけるハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基は先のR1~R6の説明と同義である。
【0047】
[イソインドリン化合物(1)の製造方法]
本実施形態に使用するイソインドリン化合物(1)は、公知の合成方法によって製造することができる。例えば、下記スキーム1に示すように、式(5)で表されるナフタロニトリル(以下、化合物(5)という)、又は式(6)で表されるベンゾイソインドリン(以下、化合物(6)という)を出発原料として合成することができる。
以下、イソインドリン化合物(1)の具体例に沿って、合成方法を説明する。以下の説明では、各式で記載した番号を化合物の番号として記載する。
【0048】
(Aが式(2)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム1に従って製造することができる。
【化5】
【0049】
スキーム1は、溶媒中、化合物(5)と塩基とを反応させて化合物(6)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(6)と、化合物(7)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(8)及び(9)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム1における各工程での反応は、10~100℃で行うことが好ましい。
【0050】
出発原料として使用する化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、及びR3とR4の関係が非対称となる場合、化合物(7)の付加によって生じる生成物は、化合物(8)及び(9)として表すように、置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。同様に、化合物(11)及び(12)として表すように、最終生成物についても置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。
また、化合物(10)の置換基R7とR8の関係が非対称となる場合、最終生成物は、異性体の混合物として得られる。
一方、出発原料として使用する化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、R3とR4、及び化合物(10)の置換基R7とR8の関係が全て対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。イソインドリン化合物(1)は、異性体を含む混合物、及び単一の化合物のいずれであってもよい。
【0051】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びグリコールなどのアルコール、グリコールエーテル、及びテトラヒドロフラン等のエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン等の非環状又は環状のアミドであってよい。これらの中でも、非環状又は環状のアミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドがより好ましい。
【0052】
溶媒は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(5)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0053】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、又はアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0054】
また、別法として、イソインドリン化合物(1)は、例えば、下記スキーム2に従って製造することができる。
【化6】
【0055】
スキーム2は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(6)と、化合物(7)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(8)及び(9)と、化合物(10)と反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
スキーム2の第二工程(S2)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いた場合、化合物(6)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
特に限定するものではないが、本実施形態の顔料で使用するイソインドリン化合物(1)は、スキーム2に従って製造することが好ましい。
【0056】
(Aが式(3)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム3に従って製造することができる。
【化7】
【0057】
スキーム3は、溶媒中、化合物(5)と塩基とを反応させて化合物(6)を得る第一工程(S1);次いで、酢酸の存在下で、化合物(6)と、化合物(10)と反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(13)及び(14)と、化合物(15)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム3における各工程での反応は、10~100℃で行うことが好ましい。
【0058】
化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、及びR3とR4の関係が非対称となる場合、化合物(10)の付加によって生じる生成物は、化合物(13)及び(14)として表すように、置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。同様に、化合物(16)及び(17)として表すように、最終生成物についても置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。
また、化合物(10)の置換基R7とR8の関係が非対称となる場合、生成物は、異性体の混合物として得られる。さらに、化合物(15)の置換基R10とR11の関係が非対称となる場合、生成物は、異性体の混合物として得られる。
一方、化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、及びR3とR4、化合物(10)の置換基R7とR8、及び化合物(15)の置換基R10とR11の関係が全て対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。イソインドリン化合物(1)は、異性体を含む混合物、及び単一の化合物のいずれであってもよい。
【0059】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、グリコールなどのアルコール;グリコールエーテル、及びテトラヒドロフランなどのエーテル;及びホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非環状又は環状のアミドであってよい。これらの中でも、非環状又は環状のアミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドがより好ましい。
【0060】
溶媒は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。溶媒の使用量は、化学式(5)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0061】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、またはアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0062】
また、別法として、イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム4に従って製造することができる。
【化8】
【0063】
スキーム4は、酢酸の存在下で、化合物(6)と、化合物(10)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(13)及び(14)と化合物(15)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
【0064】
(Aが式(4)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム5に従って製造することができる。
【化9】
【0065】
スキーム5は、溶媒中、化合物(5)と塩基とを反応させて化合物(6)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(6)と、化合物(18)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(19)及び(20)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム5における各工程での反応は、10~100℃で行うことが好ましい。
【0066】
出発原料として使用する化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、及びR3とR4の関係が非対称となる場合、化合物(18)の付加によって生じる生成物は、化合物(19)及び(20)として表すように、置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。同様に、化合物(21)及び(22)として表すように、最終生成物についても置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。
また、化合物(10)の置換基R7とR8の関係が非対称となる場合、最終生成物は、異性体の混合物として得られる。
一方、出発原料として使用する化合物(5)の置換基R1とR6、R2とR5、R3とR4、及び化合物(10)の置換基R7とR8の関係が全て対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。イソインドリン化合物(1)は、異性体を含む混合物、及び単一の化合物のいずれであってもよい。
【0067】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びグリコールなどのアルコール;グリコールエーテル、及びテトラヒドロフランなどのエーテル;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンなどの非環状又は環状のアミドであってよい。これらの中でも、非環状又は環状アミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドが好ましい。
【0068】
溶媒は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。溶媒の使用量は、化合物(5)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0069】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、又はアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0070】
また、別法として、イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム6に従って製造することができる。
【化10】
【0071】
スキーム6は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(6)と、化合物(18)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(19)及び(20)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
スキーム6の第二工程(S2)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いた場合、化合物(6)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
【0072】
上記イソインドリン化合物(1)は、イソインドリン環を拡張したベンゾイソインドリン環であることを特徴とする。すなわちベンゾイソインドリン環を導入することによって、従来のイソインドリン顔料との対比において、分散性、耐候性、及び耐熱性を著しく向上させることができる。そのため、上記イソインドリン化合物(1)は、従来、イソインドリン顔料の適用が困難であった水系の塗料、印刷インキ、インクジェットインキといった用途を含め、様々な用途で好適に使用することが可能となる。
イソインドリン化合物(1)の含有量は、顔料の全質量を基準として、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。一実施形態において、顔料におけるイソインドリン化合物(1)の含有量は、100質量%であってもよい。
【0073】
特に限定するものではないが、上記イソインドリン化合物(1)の好ましい形態として以下が挙げられる。なお、各表に記載した化合物は、異性体が存在する場合、それら異性体を含む混合物であってよい。また、C6H13基、及びBu(ブチル)基は、いずれも直鎖である。
【0074】
スキーム1及び2に示した化合物(11)及び(12)の具体例
【表1】
【0075】
スキーム3及び4に示した化合物(16)及び(17)の具体例
【表2】
【0076】
スキーム5及び6に示した化合物(21)及び(22)の具体例
【表3】
【0077】
<着色組成物>
一実施形態は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、分散媒体とを含む、着色組成物に関する。
【0078】
[分散媒体]
上記着色組成物における分散媒体は、着色組成物を構成する顔料以外の成分であってよいが、本明細書において、分散媒体とは、少なくとも、樹脂及び/又は溶剤を意味する。分散媒体は、着色組成物の用途に応じて、適宜選択することができる。着色組成物の用途として、例えば、プラスチック用着色剤、プラスチック成形材料、プラスチック成形品、トナー、顔料分散体、塗料、印刷インキ、及びインクジェットインキ等が挙げられる。着色組成物は、当技術分野において公知の方法に従って、上記イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、分散媒体とを混合し、分散処理することによって得ることができる。以下、具体的な用途に沿って、着色組成物についてより具体的に説明する。
【0079】
(プラスチック用着色組成物)
一実施形態において、着色組成物は、プラスチックの着色用途で好適に使用することができる。一実施形態において、プラスチック用着色組成物は、上記イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、樹脂とを含む。プラスチック用着色組成物には、例えば、300℃の高温での加熱後でも変色しない耐久性が要求される。これに対し、イソインドリン化合物(1)を含む着色組成物によれば、優れた耐候性及び耐熱性を容易に得ることができる。
【0080】
上記プラスチック用着色組成物において、分散媒体として使用する樹脂は、特に限定されないが、部分的に結晶性を有する樹脂が好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン等をモノマー成分として用いたホモポリマー又はコポリマー等であってよい。より具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。その他の有用な樹脂の具体例として、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0081】
一実施形態において、上記樹脂は、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。一実施形態において、上記樹脂は、少なくともポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂を使用した場合、着色組成物における分散性、耐候性、及び耐熱性の特性向上において、より顕著な効果が得られる傾向がある。
【0082】
プラスチック用着色組成物の一実施形態として、顔料として機能するイソインドリン化合物(1)を高濃度に含有する、いわゆるマスターバッチ、又はカラーチップと称されるペレット状の形態(以下、プラスチック用着色剤ともいう)が挙げられる。
【0083】
(プラスチック成形材料)
他の実施形態として、イソインドリン化合物(1)を高濃度に含有するプラスチック用着色剤に、さらに樹脂を加えて、プラスチック成形品を形成するための着色組成物(以下、プラスチック成形材料ともいう)を構成することもできる。したがって、一実施形態は、上記プラスチック用着色剤を含む、プラスチック成形材料であってよい。プラスチック成形材料において、プラスチック用着色剤に追加する樹脂(ベース樹脂)は、特に限定されず、プラスチック成形品の用途に応じて、当技術分野で公知の樹脂から選択することができる。プラスチック用着色剤に使用した樹脂と同じ樹脂を使用してもよい。
【0084】
一実施形態において、プラスチック成形材料のベース樹脂としても、ポリオレフィン樹脂を好適に使用することができる。使用するポリオレフィン樹脂は、MFR(メルトフローレート、いわゆる溶融粘度)が0.001~30の範囲であることが好ましい。MFRが0.001以上であれば、プラスチック成形材料の成形加工性がよく、成形品にウエルドマーク又はフローマークが発生し難い。一方、MFRが30以下であると、成形品において優れた機械物性を容易に得ることができる。特に、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いる場合は、MFRが0.005~10の範囲であることが好ましい。また、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン、ポリブテンを用いる場合は、MFRが0.005~20の範囲であることが好ましい。
【0085】
上記プラスチック用着色剤、及びプラスチック成形材料は、所望とする効果を阻害せず、かつ衛生上問題ない範囲で、他の添加成分を更に含んでもよい。
添加成分としては、ワックス又その誘導体;重金属不活性剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は亜鉛の金属石けん;ハイドロタルサイト;ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、 アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系、リン系又は金属酸化物等の難燃剤;エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤;酸化防止剤や紫外線吸収剤;加工助剤;充填剤;公知のポリマー用の各種添加剤等が挙げられる。また、色調を調整することを目的として、必要に応じて、無機顔料、イソインドリン化合物(1)以外の有機顔料を添加してもよい。
【0086】
(プラスチック成形品)
一実施形態において、カラーチップ等のプラスチック用着色剤、及びプラスチック成形材料からなるプラスチック成形品を得るための成形方法は特に限定されない。成形方法として、ブロー成形、インフレーション成形、押出し成形、エンゲル成形、真空成形等が挙げられる。プラスチック用着色剤、及びプラスチック成形材料に含まれるイソインドリン化合物(1)の分散性、耐熱性の向上によって、成形時に高温で加熱した後でも、変色が起こらず、所望とる色相を良好に維持したプラスチック成形品を得ることができる。
【0087】
(トナー)
一実施形態において、着色組成物は、トナーの用途で好適に使用することができる。トナー用着色組成物は、上記イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、結着樹脂とを含む。トナーの用途で上記着色組成物を使用する場合、着色組成物は、例えば、加熱及びUV光等の照射を伴う使用環境下で変色しないことが好ましい。これに対し、イソインドリン化合物(1)を含む着色組成物は、優れた耐候性及び耐熱性を有するため、変色が抑制され、所望とする色相を維持することができる。
【0088】
トナーは、乾式トナー、又は湿式トナーのいずれであってもよい。例えば、乾式トナーは、上記イソインドリン化合物(1)と、結着樹脂とを含むトナー用着色組成物を溶融混練し、冷却した後、粉砕、及び分級工程を行い、さらに、必要に応じて追加成分を添加、及び混合する後処理工程を経て、製造することができる。その他の当技術分野で公知の方法に従って、トナー用着色組成物を使用してトナーを製造することもできる。
【0089】
トナー用着色組成物を構成する結着樹脂は、特に限定されないが、例えば、スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等であってよい。
【0090】
一実施形態において、結着樹脂は、ポリエステル樹脂、又はスチレン系共重合体を含むことが好ましく、少なくともポリエステル樹脂を含むことが好ましい。イソインドリン化合物(1)は、上記結着樹脂のなかでも、ポリエステル樹脂に対する適性が特に優れている。そのため、一実施形態において、トナー用着色組成物は、イソインドリン化合物(1)と、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂とを含有することが好ましい。このようなトナー用着色組成物において、イソインドリン化合物は、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂中に、均一かつ微細に分散されるため、高品質のトナーを提供することができる。
【0091】
上記結着樹脂として使用するポリエステル樹脂は、アルコール成分と、酸成分との反応によって得られる樹脂であってよい。上記ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分として、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、グリセロール、ジグリセロール、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトール、及び下式(D)で表されるビスフェノール誘導体等の多価アルコールを使用することができる。これらの1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0092】
【0093】
式中、RAはエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、x+yは2~10である。
【0094】
ポリエステル樹脂を構成する酸成分は、二価のカルボン酸であってよい。二価のカルボン酸として、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及び無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及びアゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はその無水物;炭素数16~18のアルキル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
【0095】
酸成分として、架橋成分として有効な三価以上のカルボン酸を使用してもよい。例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、オクタンテトラカルボン酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
酸成分として、例示した化合物の1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0096】
ポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分との反応によって得られるホモポリエステル及びコポリエステルのいずれであってもよい。ポリエステル樹脂の1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0097】
一実施形態において、トナーにおける耐オフセット性及び低温定着性の点から、ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、10,000~1,000,000の範囲がより好ましく、20,000~100,000の範囲がさらに好ましい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量を意味する。上記重量平均分子量が5,000以上である場合、トナーにおいて優れた耐オフセット性を容易に得ることができる。また、重量平均分子量が1,000,000以下である場合、優れた定着性を容易に得ることができる。
【0098】
一実施形態において、ポリエステル樹脂の酸価は10~60mgKOH/gの範囲が好ましく、15~55mgKOH/gの範囲がより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上に調整した場合、離型剤の遊離を容易に抑制することができる。また、酸価を60mgKOH/g以下に調整した場合、樹脂の親水性が高くなることを抑制し、高湿環境における画像濃度の低下を防止することができる。
【0099】
一実施形態において、ポリエステル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g以下であることが好ましく、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。水酸基価を20mgKOH/g以下に調整した場合、樹脂の親水性が高くなることを抑制し、高湿環境において画像濃度の低下を抑制することができる。
【0100】
また、トナーの凝集防止の点から、ポリエステル樹脂の示差走査熱量計(装置:DSC-6、島津製作所製)によって測定されるガラス転移温度(Tg)は、50~70℃であることが好ましく、50~65℃であることがより好ましい。
【0101】
上記トナー用着色組成物に対して、必要に応じて、荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤を使用した場合、帯電量の安定したトナーを容易に得ることができる。トナー用着色組成物に加える荷電制御剤は、従来から知られた正又は負の荷電制御剤のいずれであってもよい。
【0102】
一実施形態において、トナーが正帯電性トナーである場合、使用可能な正の荷電制御剤の具体例として、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、有機錫オキサイド、四級アンモニウム塩化合物、及び四級アンモニウム塩を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられ。なかでも、四級アンモニウム塩化合物が好ましい。使用可能な四級アンモニウム塩化合物の具体例として、四級アンモニウム塩と有機スルホン酸又はモリブデン酸とからなる造塩化合物が挙げられる。上記有機スルホン酸としては、ナフタレンスルホン酸を使用することが好ましい。
【0103】
一方、トナーが負帯電性トナーである場合、使用可能な負の荷電制御剤の具体例として、モノアゾ染料の金属錯体、スルホン酸を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、フェノール系縮合物、及びホスホニウム系化合物等が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-フェニルサリチル酸が好ましい。また、金属塩化合物に用いられる金属としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、クロム、及びアルミニウム等が挙げられる。
【0104】
また、トナー用着色組成物に対して、離型剤を用いることができる。離型剤の例としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類等が挙げられる。
【0105】
さらに、トナー用着色組成物に対して、必要に応じて、滑剤、流動化剤、研磨剤、導電性付与剤、及び画像剥離防止剤等の外添剤を添加してもよい。これら外添剤は、従来、トナーを製造するために使用されている公知の外添剤から選択することができる。
【0106】
外添剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
滑剤は、ポリフッ化ビニリデン、及びステアリン酸亜鉛等であってよい。流動化剤は、乾式法又は湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、及びこれらを疎水性化処理したもの等であってよい。研磨剤は、窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウム、及びこれらを疎水化処理したもの等であってよい。導電性付与剤は、酸化錫等であってよい。
【0107】
トナー用着色組成物において、先に例示した流動化剤のなかでも、疎水化処理されたシリカ、珪素アルミニウム共酸化物、及び珪素チタン共酸化物微粉体の少なくとも1種を使用することが好ましい。これら微粉体の疎水化処理方法としては、シリコンオイル又はテトラメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0108】
一実施形態において、トナー用着色組成物から形成されるトナーは、一成分系現像剤として使用することができる。他の実施形態において、トナーは、二成分系現像剤として使用することもできる。トナーを二成分系現像剤として使用する場合、トナー用着色組成物は、さらにキャリアを含む。二成分系現像剤として使用するトナーに用いるキャリアは、当技術分野で公知の材料であってよい。
【0109】
キャリアとして使用可能な材料の例として、鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体等、又はこれらの表面を樹脂等で処理したもの等が挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでは、スペントトナーの形成が少ないためシリコーン含有樹脂が特に好ましい。これらキャリアの重量平均粒径は30~100μmの範囲であることが好ましい。
【0110】
(顔料分散体)
一実施形態において、着色組成物は、塗料、印刷インキ、インクジェットインキ等を製造するために好適に使用できる顔料分散体であってよい。すなわち、一実施形態において、着色組成物は、上記イソインドリン化合物(1)を含む顔料、及び分散媒体として樹脂と溶剤とを含む、顔料分散体であってよい。
【0111】
顔料分散体として構成される着色組成物は、分散処理後に粘度上昇が起こり難く、顔料の分散安定性に優れることが好ましい。例えば、塗料及び印刷インキ等の皮膜形成材料としての使用を想定した場合、優れた耐光性を有する被膜の形成が可能であり、かつ初期粘度、及び保存安定性が良好であることが好ましい。
しかし、従来のイソインドリン顔料は、顔料自体の分散性が低いことから、多くの場合、高分子化合物の分散剤が併用される。そのため、従来のイソインドリン顔料を用いた顔料分散体は、初期粘度が高く、保存安定性に乏しい傾向がある。これに対し、イソインドリン化合物(1)を含む着色組成物を用いて顔料分散体を形成した場合、分散性、初期粘度及び保存安定性に優れる顔料分散体を提供することが可能となる。
【0112】
(塗料、印刷インキ)
一実施形態において、上記着色組成物を顔料分散体として使用して、塗料又は印刷インキを構成する組成物を構成することができる。塗料及び印刷インキの形態は、特に限定されず、自動車用、木材用、金属用等の各種一般塗料、磁気テープのバックコート塗料、ラジエーションキュアー型インキ、カラーフィルタ用インキ、及び後述するインクジェットプリンター用インキ等であってよい。印刷インキは、オフセット印刷、フレキソ印刷、及びグラビア印刷で使用可能なインキの形態であってよい。
【0113】
溶剤は、水及び/又は有機溶剤であってよく、所望とする塗料又は印刷インキの形態に応じて、適宜選択することができる。一実施形成において顔料分散体は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料、及び分散媒体として樹脂と水とを含む。他の実施形態において、顔料分散体は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料、及び分散媒体として樹脂と水と有機溶剤とを含む。上記実施形態において、分散媒体として使用する水及び有機溶剤は、顔料分散体の用途に応じて所望とする粘度を得るために、希釈溶剤として使用することもできる。以下、一例として、塗料、及び印刷インキについて具体的に説明する。
【0114】
上記実施形態において、樹脂は、塗膜を形成することができる重合体(以下、塗膜形成性重合体という)であることが好ましい。
塗膜形成性重合体は、ビヒクル成分として機能する。例えば、ビヒクル成分の主成分として、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの変性樹脂等から選択することができる。さらに、ビヒクル成分として、必要に応じて、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂等に対する硬化剤又は架橋剤等を併用することが好ましい。
【0115】
例えば、非水系の塗料又は印刷インキの場合、溶剤として、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、及び脂肪族炭化水素などを使用することができる。その他、塗料又は印刷インキの技術分野で一般的に用いられる溶剤類を使用することもできる。
【0116】
水系の塗料又は印刷インキの場合、溶剤として、水、又は水希釈性で一価又は二価のアルコール、及びグリコールを使用することができる。具体例として、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。溶剤として、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルを使用することもできる。具体例として、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。さらに、例えば、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルを使用することもできる。これらを単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0117】
一実施形態において、塗料又は印刷インキは、イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、塗膜形成性重合体と、溶剤とから構成されてよく、必要に応じて、その他の成分を加えてもよい。
【0118】
例えば、一実施形態において、光輝材として、平均厚み0.5~10μm、平均粒子径5~50μmの金属フレークやマイカ、被覆ガラスフレークを加えてもよい。金属フレークやマイカは一般的に用いられているものが使用できる。金属フレークとしてはアルミフレークや金粉を例示することができ、マイカとしては通常のマイカの他、被覆マイカ等を例示することができ、被覆ガラスフレークとしては酸化チタン等の金属酸化物で被覆されたガラスフレークを例示することができる。
【0119】
光輝材の配合量は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、塗膜形成性重合体と、溶剤を含む上記塗料又は上記印刷インキの全質量に対して、0.1~10質量%の範囲とすることが好ましい。また、その他、当技術分野において通常使用されるその他の着色顔料、及び種々の添加剤を必要に応じて配合してもよい。塗料又は印刷インキの製造方法、また塗布、乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を適用することができる。
【0120】
(水系顔料分散体)
従来のイソインドリン顔料は、分散性が低く、水系での使用が困難である。これに対し、上記実施形態のイソインドリン化合物(1)を含む着色組成物によれば、分散性の改善が可能となる。そのため、分散媒体として水を使用した場合でも、分散性に優れ、粘度上昇が抑制され、分散安定性に優れた水系顔料分散体を提供することができる。したがって、好ましい一実施形態は、上記着色組成物を用いて構成される水系顔料分散体に関する。水系顔料分散体において、溶剤は、水及び/又は有機溶剤であってよい。水系顔料分散体は、水性の塗料、印刷インキ、又はインクジェットインキ等の用途で好適に使用することができる。以下、水系顔料分散体について、より具体的に説明する。
【0121】
一実施形態において、水系顔料分散体は、イソインドリン化合物(1)と、樹脂と、水とを含む。
上記水系顔料分散体を構成する樹脂は、水溶性樹脂を含むことが好ましい。水溶性樹脂の例として、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル酸-アクリル酸アクリルエステル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アクリルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合物の塩、スチレン-マレイン酸共重合物の塩、マレイン酸-無水マレイン酸共重合物の塩、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物の塩、及びポリエステル変性アクリル酸重合体等を挙げることができる。
【0122】
また、上記水溶性樹脂の調製時に、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、ヒドロキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合して得られる樹脂を使用してもよい。これら例示した樹脂の1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記樹脂は、水系顔料分散体の全質量に対し、て0.1~30質量%、好ましくは1~15質量%の範囲で使用することができる。
【0123】
上記水系顔料分散体は、必要に応じて、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤は、アニオン性、及びノニオン性のいずれでもよく、特に限定されることなく、分散剤として機能し得る化合物を全て使用することができる。
【0124】
アニオン性界面活性剤として、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0125】
ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルポリオキシエチレンアルキルアミン等を挙げることができる。
これらの界面活性剤の1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
界面活性剤は、水系顔料分散体の全質量に対して、0.3~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で使用することができる。
【0127】
水系顔料分散体は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料、及び分散媒体として樹脂と水とを含有する着色組成物を用いて構成することができるが、顔料分散剤をさらに含むことが好ましい。水系顔料分散体に対して、所望とする粘度を得るために、さらに希釈溶剤を追加してもよい。希釈溶剤として、水性溶剤を使用することが好ましい。また、所望とするインキ特性及び皮膜特性を得るために、必要に応じて、ビヒクル成分としての樹脂を追加することが好ましい。
【0128】
一実施形態において、上記水系顔料分散体は、イソインドリン化合物(1)を含む顔料と、分散媒体として樹脂及び溶剤とからなる顔料分散体と、必要に応じて、水性溶剤を含む希釈溶剤、顔料分散剤、ビヒクル成分としての樹脂、及び界面活性剤等を含んでよい。上記水系顔料分散体は、上記原料の混合物を、各種分散機を使用して分散処理することによって調製することができる。また、必要に応じて、上記原料の他に、さらに各種添加剤を添加して、分散処理してもよい。上記水系顔料分散体の調製において、各原料の添加順序、又は添加方法は特に限定されず、当技術分野で公知の方法を適用することができる。
【0129】
水系顔料分散体において、イソインドリン化合物(1)を含む顔料(顔料組成物ともいう)の使用量は特に限定されない。一実施形態において、水系顔料分散体の皮膜形成成分の全質量を基準として、顔料組成物の含有量が5~40質量%の範囲内に調整されることが望ましい。特に好ましくは、上記含有量は10~25質量%であってよい。
【0130】
水系顔料分散体を製造するために使用する希釈溶剤の種類は、特に限定されないが、水性溶剤が好ましい。なかでも、金属イオン等を除去したイオン交換水又は蒸留水を使用することが好ましい。水系顔料分散体における水性溶剤の含有量は、特に限定されないが、30~95質量%であることが好ましい。
【0131】
水性溶剤として、水、及び/又は水溶性溶媒を使用することができる。水溶性溶媒は、特に限定されないが、例えば、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液体ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。これらの水溶性溶媒を使用する場合、水系顔料分散体における水溶性溶媒の含有量は、1~50質量%であることが好ましい。
【0132】
水系顔料分散体を製造するためにビヒクル成分として使用する樹脂は、水性媒体(水性溶剤)中でイソインドリン化合物(1)を含む顔料を分散し得るものであればよく、特に限定されない。例えば、顔料分散体を製造する際に使用可能な水溶性樹脂として例示した樹脂を使用することができる。それらの水溶性樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、水系顔料分散体における上記樹脂の使用量は特に限定されないが、0.5~30質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1~20質量%である。
【0133】
水系顔料分散体を製造するために、必要に応じて、さらに界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤は、水性媒体中でイソインドリン化合物(1)を含む顔料を分散し得るものであればよく、特に限定されない。例えば、顔料分散体の製造において使用可能な界面活性剤として例示した化合物を使用することができる。それらの界面活性剤の1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、水系顔料分散体における界面活性剤の使用量は特に限定されないが、0.1~10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
【0134】
さらに、水系顔料分散体を製造するために、必要に応じて、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤等の添加物を使用することができる。
【0135】
防腐剤は、水系顔料分散体での黴、及び細菌の発生を防止するために使用する。防腐剤の種類は特に限定されないが、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩等が挙げられる。これらは、顔料分散体中の0.1~2質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0136】
pH調整剤は、水系顔料分散体のpHを所望の値に調整するために使用する。pH調整剤の種類は特に限定されないが、例えば各種アミン、無機塩、アンモニア、各種緩衝液等を用いることができる。
【0137】
消泡剤は、水系顔料分散体を製造する際の泡の発生を防止するために使用する。消泡剤の種類は特に限定されず、市販のものをいずれも使用することができる。例えば、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールPSA-336(いずれも日信化学工業株式会社製)、ADDITOL VXW 6211、ADDITOL VXW4973、ADDITOL VXW6235、ADDITOL XW375、ADDITOL XW376、ADDITOL VXW6381、ADDITOL VXW6386、ADDITOL VXW6392、ADDITOL VXW6393、ADDITOL VXW6399、ADDITOL XW6544等(いずれもAllnex社製)が挙げられる。
【0138】
湿潤剤は、水系顔料分散体での顔料を濡れやすくするために使用する。湿潤剤の種類は特に限定されず、市販のものをいずれも使用することができる。例えば、ADDITOL VXL6237N、ADDITOL XL260N、ADDITOL VXL6212、ADDITOL UVX7301/65、ADDITOL XW330、ADDITOL VXW6200、ADDITOL VXW6205、ADDITOL VXW6394、ADDITOL VXW6208、ADDITOL VXW6208/60、ADDITOL VXW6374(いずれもAllnex社製)が挙げられる。
【0139】
水系顔料分散体を調製するために使用する分散機は、特に限定されない。例えば、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等が挙げられる。その他、当技術分野で各種分散体を調製するために通常使用される、分散機及び混合機を適宜選択して使用することができる。
【0140】
また、各種分散機で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、又は2本ロールミル等による固形分散等の処理を行ってもよい。また、各種分散機で分散した後、30~80℃の加温状態にて数時間~1週間程度保存する後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いて後処理する工程は、顔料分散体に分散安定性を付与するために効果的である。
【0141】
(水性インクジェットインキ)
一実施形態は、上記水系顔料分散体を使用した水性インクジェットインキに関する。水性インクジェットインキは、上記水性顔料分散体に、水、必要に応じて、水溶性溶媒、樹脂、添加剤等を加えてインキ化することによって製造することができる。
【0142】
水性インクジェットインキにおいて、イソインドリン化合物(1)を含む顔料の含有量は、特に限定されない。例えば、水性インクジェットインキの全質量を基準として、上記顔料の含有量は、0.5~30質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1~15質量%である。
【0143】
水性インクジェットインキの製造に使用する水は、特に限定されないが、金属イオン等を除去したイオン交換水、又は蒸留水を使用することが好ましい。また、水の含有量は、特に限定されないが、水性顔料分散体の全質量を基準として、60~99質量%であることが好ましい。
【0144】
水性インクジェットインキのプリンターヘッドにおけるノズル部分での乾燥、固化を防止し、安定なインキの吐出を実現するために、必要に応じて水溶性溶媒を使用することができる。水溶性溶媒は、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、N-メチル-2-ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6-ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4-メトキシ-4メチルペンタノン等が挙げられる。これらの一種を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの水溶性溶媒を使用する場合、水溶性溶媒の含有量は、水性インクジェットインキの全質量を基準として、1~50質量%の範囲であることが好ましい。
【0145】
水性インクジェットインキの調製において、被印刷物に対するインキの定着性を付与するために樹脂を使用することができる。使用可能な樹脂は、特に限定されないが、水溶解性であるか、又は水性媒体に優れた分散性を有する樹脂であってよい。これらの1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0146】
上記樹脂の具体例として、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の水溶解性樹脂、又はそれらの水中油滴型エマルション等が挙げられる。なかでも、水中油滴型エマルションが好ましい。水中油滴型エマルションを使用した場合、低粘度の水性インクジェットインキ、及び耐水性に優れた記録物が容易に得られるため、好ましい。
【0147】
上記樹脂の含有量は、水性インクジェットインキの全質量を基準として、0.5~15質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、1~10質量%である。上記樹脂の含有量を0.5質量%以上とした場合、皮膜成分の定着において十分な効果を容易に得ることができる。一方、上記樹脂の含有量を15質量%以下とした場合、水性インクジェットインキの吐出安定性の低下を抑制することができる。これらの樹脂は、必要に応じて、アンモニア、各種アミン、各種無機アルカリ等のpH調製剤によって酸性官能基を中和して使用することができる。
【0148】
水性インクジェットインキの製造において、その他の添加剤として、乾燥促進剤、浸透剤、防腐剤、キレート剤、及びpH調整剤等を使用してもよい。
【0149】
水性インクジェットインキの印字後の乾燥を速めるために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができる。これらアルコール類の1類を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。これらアルコール類の含有量は、水性インクジェットインキの全質量を基準として、1~50質量%であることが好ましい。
【0150】
被印刷体が紙のような浸透性の基材である場合、基材へのインキの浸透を促進し、見掛けの乾燥性を早くするために、各種浸透剤を使用することができる。浸透剤としては、水溶性溶剤として例示した、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル及びアルキレングリコール等、及びポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤等を用いることができる。これらの使用量は、水性インクジェットインキの全質量を基準として、5質量%以下の量で十分な効果がある。使用量を5質量%以下に調整することで、印字の滲み、及び紙抜けなどの不具合の発生を抑制することができる。
【0151】
水性インクジェットインキにおける黴、及び細菌の発生を防止するために、防腐剤を使用することができる。防腐剤の種類は、特に限定されないが、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩等が挙げられる。これらは、水性インクジェットインキの全質量を基準として、0.05~1.0質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0152】
水性インクジェットインキ中に含まれる金属イオンを捕捉し、ノズル部やインキ中における不溶性物の析出を防止するために、キレート剤を使用することができる。キレート剤の種類は、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミンテトラアセティックアシド、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのナトリウム塩,エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が挙げられる。キレート剤は、水性インクジェットインキの全質量を基準として、0.005~0.5質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0153】
また、水性インクジェットインキのpHを所望の値に調整するため、各種pH調整剤を使用することができる。pH調整剤の種類は、特に限定されず、例えば、各種アミン、無機塩、アンモニア、各種緩衝液等を使用することができる。
【0154】
インクジェットインキの調製において、原料を混合する方法は特に限定されず、通常の羽を用いた撹拌機のほか、高速の分散機、乳化機等を使用して実施することができる。その際、原料の添加順序、及び混合方法等は特に限定されない。
【実施例】
【0155】
<イソインドリン化合物の製造>
(実施例1-1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した5Lの4口フラスコに、水1400部、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、28%アンモニア水200部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を水200部に溶解させた溶液を、滴下漏斗にて30分かけて滴下した。30℃にて原料の、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ)にて確認した。この反応スラリーをブフナー漏斗にてろ別し、固形分を得た。この固形分の全量を以下の反応に使用した。
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した5Lの4口フラスコに、原料として先の調整で得た固形分の全量、水2400部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸37.73部を加え、85℃にて撹拌した。加熱撹拌は、原料として使用した上記固形分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物1-1を62.43部(収率65%)得た。
【0156】
(実施例1-2)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-フルオロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ-N-エチルアセトアミド27.61部、及び、バルビツール酸37.73部を35.54部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-2を60.92部(収率62%)得た。
【0157】
(実施例1-3)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を14.59部、及び、バルビツール酸37.73部を20.86部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-3を46.32部(収率60%)得た。
【0158】
(実施例1-4)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-tertブチル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ-N-ブチルアセトアミド29.28部、及び、バルビツール酸37.73部を29.30部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-4を63.68部(収率66%)得た。
【0159】
(実施例1-5)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-ニトロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を21.44部、及び、バルビツール酸37.73部を30.66部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-5を38.65部(収率43%)得た。
【0160】
(実施例1-6)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を2-(1,3-ジイミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-6-イルチオ)エタンアミン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を19.05部、及び、バルビツール酸37.73部を27.24部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-6を35.03部(収率41%)得た。
【0161】
(実施例1-7)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジフェノキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を13.57部、及び、バルビツール酸37.73部を19.41部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-7を41.39部(収率55%)得た。
【0162】
(実施例1-8)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部をN-エチル-6-スルホンアミド-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を14.21部、及び、バルビツール酸37.73部を20.33部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-8を28.63部(収率42%)得た。
【0163】
(実施例1-9)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸メチル26.65部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-9を40.74部(収率41%)得た。
【0164】
(実施例1-10)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を4,9-ジヒドロキシ-5-ニトロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸エチル21.83部、及び、バルビツール酸37.73部を27.07部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-10を33.45部(収率38%)得た。
【0165】
(実施例1-11)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-カルボキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸エチル24.82部、及び、バルビツール酸37.73部を30.79部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-11を28.90部(収率31%)得た。
【0166】
(実施例1-12)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ-N-ブチルアセトアミド37.70部、及び、バルビツール酸37.73部を1-メチルバルビツール酸41.86部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-12を70.35部(収率62%)得た。
【0167】
(実施例1-13)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-ブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を18.79部、及び、バルビツール酸37.73部を1-エチルバルビツール酸32.75部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-13を47.76部(収率53%)得た。
【0168】
(実施例1-14)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸メチル26.65部、及び、バルビツール酸37.73部を1-メチルバルビツール酸41.86部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-14を49.70部(収率42%)得た。
【0169】
(実施例1-15)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-カルボキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸エチル24.82部、及び、バルビツール酸37.73部を1-エチルバルビツール酸37.53部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-15を28.73部(収率29%)得た。
【0170】
(実施例1-16)
実施例1-1のバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸45.99部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-16を72.28部(収率68%)得た。
【0171】
(実施例1-17)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ-N-エチルアセトアミド30.15部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジエチルバルビツール酸54.25部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-17を80.76部(収率69%)得た。
【0172】
(実施例1-18)
実施例1-1のバルビツール酸37.73部を1-エチル-3-メチルバルビツール酸50.12部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-18を76.91部(収率70%)得た。
【0173】
(実施例1-19)
実施例1-1のバルビツール酸37.73部を1,3-ジブチルバルビツール酸70.78部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-19を89.46部(収率70%)得た。
【0174】
(実施例1-20)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-ブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を18.76部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸32.75部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-20を59.35部(収率66%)得た。
【0175】
(実施例1-21)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-フルオロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を24.16部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸42.11部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-21を63.97部(収率66%)得た。
【0176】
(実施例1-22)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を14.59部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジシクロヘキシルバルビツール酸47.62部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-22を41.17部(収率41%)得た。
【0177】
(実施例1-23)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-tertブチル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ-N-ブチルアセトアミド29.28部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸35.72部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-23を60.21部(収率59%)得た。
【0178】
(実施例1-24)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-ニトロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を21.44部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジエチルバルビツール酸44.09部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-24を40.63部(収率40%)得た。
【0179】
(実施例1-25)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を2-(1,3-ジイミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-6-イルチオ)エタンアミン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を19.05部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸33.21部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-25を36.25部(収率40%)得た。
【0180】
(実施例1-26)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジフェノキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸メチル13.71部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸23.66部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-26を30.83部(収率39%)得た。
【0181】
(実施例1-27)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部をN-エチル-6-スルホンアミド-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸エチル16.39部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸24.78部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-27を20.01部(収率27%)得た。
【0182】
(実施例1-28)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-メトキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸ブチル32.90部、及び、バルビツール酸37.73部を1-エチル-3-メチルバルビツール酸43.44部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-28を44.57部(収率40%)得た。
【0183】
(実施例1-29)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を4,9-ジヒドロキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-シアノ酢酸メチル22.90部、及び、バルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸39.51部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-29を32.53部(収率33%)得た。
【0184】
(比較化合物1)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を1,3-ジイミノイソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を35.48部、及びバルビツール酸37.73部を50.74部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、C.I.ピグメントイエロー185を102.16部(収率88%)得た。
【0185】
実施例1-1~1-29で得られたイソインドリン化合物の構造を表4に纏めて示す。なお、例えば、実施例1-2の化合物に見られるように、R1とR6、R2とR5、R3とR4、及びR7とR8との関係が非対称となる場合は、化合物は異性体の混合物として得られる。
イソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(実施例1-1~1-29)について、理論分子量と、それぞれ質量分析を行った測定値を表4に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0186】
【0187】
比較化合物1のC.I.ピグメントイエロー185は理論分子量337に対して、測定値は336であった。
【0188】
(実施例2-1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した5Lの4口フラスコに、水1600部、80%酢酸1600部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸68.90部を加え、85℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。そこへ1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を加え、85℃にて撹拌した。原料の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリンが消失するまで撹拌した。原料の消失はUPLCにて確認した。室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物2-1を98.26部(収率92%)得た。
【0189】
(実施例2-2)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を55.98部、及び、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-ニトロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-2を72.12部(収率75%)得た。
【0190】
(実施例2-3)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を38.1部、及び、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-3を70.85部(収率87%)得た。
【0191】
(実施例2-4)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を59.70部、及び、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-メトキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-4を93.27部(収率94%)得た。
【0192】
(実施例2-5)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した3Lの4口フラスコに、水1550部、80%酢酸50部を加え、撹拌した。そこへ1-エチルバルビツール酸41.99部を加え、25℃で撹拌した。そこへ1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を加え25℃にて撹拌した。原料の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリンが消失するまで撹拌した。原料の消失はUPLCにて確認した。この反応スラリーをブフナー漏斗にてろ別し、固形分を得た。この固形分の全量を以下の反応に使用した。
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した5Lの4口フラスコに、水1600部、80%酢酸1600部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸34.45部を加え、85℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。そこへ、原料として先の調整で得た固形分の全量を加え85℃にて撹拌した。加熱撹拌は、原料として使用した上記固形分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、固形分を得た。この固形分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物2-5を66.10部(収率58%)得た。
【0193】
(実施例2-6)
実施例2-5の1-エチルバルビツール酸41.99部を1,3-ジメチルバルビツール酸41.99部に変更した以外は、全て実施例2-5と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-6を75.22部(収率66%)得た。
【0194】
(実施例2-7)
実施例2-5の1-エチルバルビツール酸41.99部を1,3-ジメチルバルビツール酸41.99部、及び、バルビツール酸34.45部を1-エチルバルビツール酸41.99部に変更した以外は、全て実施例2-5と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-7を71.48部(収率59%)得た。
【0195】
(実施例2-8)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を1,3-ジメチルバルビツール酸83.98部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-8を113.88部(収率94%)得た。
【0196】
(実施例2-9)
実施例2-5の1-エチルバルビツール酸41.99部を1,3-ジメチルバルビツール酸41.99部、及び、バルビツール酸34.45部を1,3-ジエチルバルビツール酸49.53部に変更した以外は、全て実施例2-5と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-9を85.97部(収率67%)得た。
【0197】
(実施例2-10)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を1,3-ジメチルバルビツール酸65.24部、及び1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-tertブチル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-10を96.82部(収率92%)得た。
【0198】
(実施例2-11)
実施例2-5の1-エチルバルビツール酸41.99部を1,3-ジメチルバルビツール酸32.49部、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部をN-メチル-6-カルボアミド-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、及びバルビツール酸34.45部を1,3-ジエチルバルビツール酸38.33部に変更した以外は、全て実施例2-5と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-11を72.99部(収率66%)得た。
【0199】
(実施例2-12)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を1,3-ジメチルバルビツール酸76.90部、及び1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-フルオロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-12を105.93部(収率92%)得た。
【0200】
(実施例2-13)
実施例2-5の1-エチルバルビツール酸41.99部を1,3-ジメチルバルビツール酸30.13部、1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を4,9-ジヒドロキシ-5-ニトロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、及びバルビツール酸34.45部を1-エチル-3-ブチルバルビツール酸40.96部に変更した以外は、全て実施例2-5と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-13を47.89部(収率43%)得た。
【0201】
(実施例2-14)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を1,3-ジメチルバルビツール酸43.90部、及び1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部をN-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-1,3-ジイミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-6-スルホンアミド50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-14を71.47部(収率82%)得た。
【0202】
(比較化合物2)
実施例2-1のバルビツール酸68.90部を92.66部、及び1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を1,3-ジイミノイソインドリン50部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様して反応操作を行い、C.I.ピグメントイエロー139を111.25部(収率88%)得た。
【0203】
実施例2-1~2-14で得たイソインドリン化合物の構造を表5に纏めて示す。なお、例えば、実施例2-2に見られるように、原料として使用した化合物のR1とR6、R2とR5、R3とR4、R7とR8、及びR10とR11との関係が非対称となる場合、最終生成物は異性体の混合物として得られる。
イソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(実施例2-1~2-14)について、理論分子量と、質量分析を行った測定値を表5に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0204】
【0205】
比較化合物2のC.I.ピグメントイエロー139は理論分子量367に対して、測定値は366であった。
【0206】
(実施例3-1)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル49.80部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-1を74.05部(収率61%)得た。
【0207】
(実施例3-2)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を2,2'-(1,3-ジイミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-6,7-ジイル)ビス(スルファニジイル)ジエチルアミン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル28.14部、及びバルビツール酸37.73部を21.32部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-2を59.60部(収率66%)得た。
【0208】
(実施例3-3)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部をN-エチル-6-スルホンアミド-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル28.86部、及びバルビツール酸37.73部を20.33部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-3を48.44部(収率59%)得た。
【0209】
(実施例3-4)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル49.80部、及びバルビツール酸37.73部を1-エチルバルビツール酸45.99部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-4を55.29部(収率43%)得た。
【0210】
(実施例3-5)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を4,9-ジヒドロキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル42.79部、及びバルビツール酸37.73部を1-エチルバルビツール酸39.51部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-5を52.88部(収率45%)得た。
【0211】
(実施例3-6)
実施例1-1の2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル49.80部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸45.99部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-6を79.72部(収率62%)得た。
【0212】
(実施例3-7)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジブロモ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル29.63部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸25.43部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-7を59.19部(収率62%)得た。
【0213】
(実施例3-8)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-フルオロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(6-フルオロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル50.03部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸42.11部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-8を80.75部(収率64%)得た。
【0214】
(実施例3-9)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-tertブチル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル38.68部、及びバルビツール酸37.73部を1-エチル-3-メチルバルビツール酸38.93部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-9を59.17部(収率52%)得た。
【0215】
(実施例3-10)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を5-チオエチル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル38.07部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸35.16部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-10を73.73部(収率67%)得た。
【0216】
(実施例3-11)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6,7-ジクロロ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(3-ブチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル47.96部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸33.99部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-11を60.54部(収率51%)得た。
【0217】
(実施例3-12)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-メトキシ-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル43.16部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジエチルバルビツール酸47.02部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-12を84.53部(収率68%)得た。
【0218】
(実施例3-13)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を6-チオフェニル-1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル40.43部、及びバルビツール酸37.73部を1,3-ジメチルバルビツール酸29.59部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-13を64.08部(収率59%)得た。
(比較化合物3)
実施例1-1の1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン50部を1,3-ジイミノイソインドリン50部、2-シアノ-N-メチルアセトアミド26.38部を2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル66.98部、及びバルビツール酸37.73部を50.74に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、C.I.ピグメントレッド260を109.54部(収率75%)得た。
【0219】
実施例3-1~3-13で得られたイソインドリン化合物の構造を表6に纏めて示す。なお、例えば、実施例3-3の化合物に見られるように、R1とR6、R2とR5、R3とR4、及びR7とR8との関係が非対称となる場合は、化合物は異性体の混合物として得られる。
イソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(実施例3-1~3-13)について、理論分子量と、それぞれ質量分析を行った測定値を表6に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0220】
【0221】
比較化合物3のC.I.ピグメントレッド260は理論分子量424に対して、測定値は423であった。
【0222】
<着色組成物及びその特性評価>
先に合成した各々のイソインドリン化合物を使用して、各種用途に向けた着色組成物を調製し、各種特性を評価した。
【0223】
<1>プラスチック用着色組成物及びその評価
以下は、先に調製した各々のイソインドリン化合物を使用して調製したプラスチック用着色組成物に関する。
【0224】
(実施例A-1~A-56、比較例A-1~A-3)
耐熱性の試験方法は、ドイツ工業規格DIN12877-1を参考にした。
先ず、先に合成した各々のイソインドリン化合物と樹脂を使用し、試験に使用するサンプルとして、着色力がそれぞれSD1/3の濃度になるように調整した着色プレートを作製した。各実施例及び各比較例で使用したイソインドリン化合物を表7に示す。試験サンプルを構成する樹脂としては、高密度ポリエチレン(製品名:ハイゼックス(Hizex)2208J、プライムポリマー社製)を用いた。着色プレートの成形は、200℃で、バレル内の滞留時間が可能な限り短くなる条件で実施し、11枚の着色プレートを得た。平均的な色差を検出するために、6枚目~11枚目の6枚の着色プレートについて、全光束測定が可能な測色機(コニカミノルタ社製、CM-700d)を用いて、それぞれ測色した。得られた測色値の平均値をコントロール(基準値)とした。
【0225】
次に、バレル内の滞留時間が5分になるように成形条件を調整した後、300℃において11枚の着色プレートを成形した。得られた着色プレート、それぞれ6枚目~11枚目の6枚をそれぞれ測色し、その測色値の平均値を算出した。上記基準値と、300℃で成形したプレートの測定値との色差(ΔE*)を求め、下記基準に従い評価した。結果を表7に示す。下記評価基準で「△」以上であれば、実用可能なレベルである。
【0226】
(評価基準)
◎:ΔE*が、5.0未満である。
〇:ΔE*が、5.0以上、10未満である。
△:ΔE*が、10.0以上、15.0未満である。
×:ΔE*が、15.0以上である。
【0227】
【0228】
(実施例A-57)
プラスチック用着色組成物の一例として、イソインドリン化合物(1)、及び樹脂としてポリプロピレンを含む着色組成物について検討した。先ず、イソインドリン化合物(実施例1-1)2部、ポリプロピレン樹脂(製品名:プライムポリプロJ105、プライムポリマー社製)1000部を混合し、プラスチック用着色組成物を得た。次に、上述のようにして得た着色組成物について、射出条件を成形温度220℃、金型温度40℃に設定した射出成型機を用いて射出成形を行い、成形品(プレート)を得た。成形品を目視で観察した結果、反り及び変形は認められず、高着色の黄色のプレートであった。
【0229】
(実施例A-58)
プラスチック用着色組成物の一例として、イソインドリン化合物(1)、及び樹脂としてポリエチレンテレフタレートを含む着色組成物について検討した。
先ず、イソインドリン化合物(実施例1-16)2部、ポリエチレンテレフタレート樹脂(製品名:Vylopet EMChaihun307、東洋紡績社製)1000部を混合し、プラスチック用着色組成物を得た。次に、上述のようにして得た着色組成物について、射出条件を成形温度275℃、金型温度85℃に設定した射出成型機を用いて射出成形し、成形品(プレート)を得た。成形品を目視で観察した結果、反り及び変形は認められず、高着色の黄色のプレートであった。
【0230】
<2>トナー用着色組成物の調製及びその評価。
以下は、トナーを製造するために使用できるトナー用着色組成物(負帯電トナー)の調製例に関する。
(実施例A-59)
イソインドリン化合物(実施例1-16)2500g、及び熱可塑性ポリエステル樹脂2500gを加圧ニーダー中で混合及び混練した。混合及び混練は、設定温度120℃で、15分にわたって行った。次いで、得られた混練物を加圧ニーダーから取り出し、更に、ロール温度95℃の3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を冷却後、10mm以下に粗粉砕することによって、着色樹脂組成物を得た。
上述のようにして得た着色樹脂組成物500g、熱可塑性ポリエステル樹脂4375g、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のカルシウム塩化合物(荷電制御剤)50g、及びエチレンホモポリマー(離型剤、分子量850、Mw/Mn=1.08、融点107℃)75gを、20Lの容積を有するヘンシェルミキサーを用いて混合(3000rpm、3分)し、さらに二軸混練押出機を用いて、吐出温度120℃にて溶融混練を行った。次いで、混練物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕物について、I式ジェットミル(IDS-2型)を用いて微粉砕化した後、分級することによってトナー母粒子を得た。
次いで、上記で得られたトナー母粒子2500gと疎水性酸化チタン(チタン工業社製STT-30A)12.5gを10Lのヘンシェルミキサーで混合し、負帯電トナー1を得た。
【0231】
一方、比較対照として、実施例A-59のイソインドリン化合物(実施例1-16)を比較化合物1に変更したことを除き、全て実施例A-59と同様にして負帯電トナー2を得た。
得られた負帯電トナー1及び負帯電トナー2を、それぞれミクロトームを用いて厚さ0.9μmにスライスし、サンプルを形成した。次いで、各サンプルについて透過型電子顕微鏡を用いて顔料の分散状態を観察した。その結果、比較化合物1を使用した負帯電トナー2よりも、実施例1-16の化合物を使用した負帯電トナー1の方が、顔料が均一に分配されており、分散性が高いことが判明した。
【0232】
<3>ソリッドベース塗料及びその評価
以下は、先に調製した各々のイソインドリン化合物を使用して調製したソリッドベース塗料と、それを使用して作製したソリッドベース塗装板の耐候性の評価に関する。
【0233】
<3-1>ソリッドベース塗料の調製
1.ベース塗料の調製
(実施例B-1) ベース塗料1の調製方法
先ず、以下の原料と、スチールビーズ230部とを225mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて、60分間にわたって分散させ、混合物を得た。
・イソインドリン化合物(実施例1-1):19部
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712):7.7部
・分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:東燃ゼネラル石油社製ソルベッソ150の質量比が3:3:2:2の混合溶媒):40.7部
次いで、上記混合物に、アクリディック47-712を75.4部、メラミン樹脂(DIC社製アミディアL-117-60)17.2部を加えて、さらに10分、分散させ、分散液を得た。
次いで、上記分散液からスチールビーズを除去して、イソインドリン化合物(実施例1-1)のベース塗料1を得た。
【0234】
(実施例B-2~B-56、比較例B-1~B-3) ベース塗料2~59の調製
実施例B-1に記載したベース塗料1の調製方法において、イソインドリン化合物(実施例1-1)を実施例1-2~1-29、2-1~2-14、3-1~3-13及び比較化合物1~3に、それぞれ変更した以外は、全て実施例B-1と同様にして、ベース塗料2~59を得た。
【0235】
2.白塗料の調製
以下は、ソリッドベース塗料に使用する白塗料の調製例に関する。
先ず、以下の原料と、スチールビーズ900部とを900mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて60分間分散させ、分散液を得た。
・酸化チタン(石原産業株式会社製酸化チタン タイペークCR90):66.6部
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712):101.7部
・メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL-117-60):21.3部
・分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:東燃ゼネラル石油社製ソルベッソ150の質量比が3:3:2:2の混合溶媒):20.9部
次いで、上記分散液からスチールビーズを除去して白塗料を得た。
【0236】
3.ソリッドベース塗料の調製
(実施例C-1) ソリッドベース塗料1の調製
高速撹拌機を用いて、以下の成分を撹拌し、ソリッドベース塗料1を得た。
・実施例B-1で作成したベース塗料1:10部
・白塗料:31.9部
【0237】
(実施例C-2~C-56、比較例C-1~C-3) ソリッドベース塗料2~59の調製
実施例C-1のベース塗料1をベース塗料2~59にそれぞれ変更したことを除き、全て実施例C-1と同様にして、ソリッドベース塗料2~59を得た。
なお、各実施例及び各比較例で調製したソリッドベース塗料で使用したベース塗料のイソインドリン化合物は表8に示したとおりである。
【0238】
【0239】
4.トップコートクリア塗料の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、トップコートクリア塗料を得た。
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック44-179):120部
・メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL117-60):30部
・希釈溶媒(トルエン、キシレン、東燃ゼネラル石油社製ソルベッソ150、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比が3:2:2:1:2の混合溶媒):50部
【0240】
<3-2>ソリッドベース塗装板の作製及び耐候性の評価
以下の実施例及び比較例は、先に調製したソリッドベース塗料、及びトップコートクリア塗料を用いたソリッドベース塗装板の作製、及び塗装板の評価に関する。
【0241】
(実施例D-1) ソリッドベース塗装板1の作製
ソリッドベース塗料1をスプレーガンで噴霧し鋼板に塗装を行った。噴霧しやすい粘度に調整するため、ソリッドベース塗料に対して同質量を目安に希釈溶媒(トルエン、キシレン、東燃ゼネラル石油社製ソルベッソ150、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比が3:2:2:1:2の混合溶媒)を適宜混合した。
塗装は9回に分けて行い、その後、6回に分けてトップコートクリア塗料を噴霧した。次いで、25℃で8時間乾燥させた後、140℃で30分乾燥させ、ソリッドベース塗装板1を得た。
【0242】
(実施例D-2~D-56、比較例D-1~D-3) ソリッドベース塗装板2~59の作製
実施例D-1のソリッドベース塗料1をソリッドベース塗料2~59にそれぞれ変更したことを除き、全て実施例D-1と同様にして、ソリッドベース塗装板2~59を得た。
【0243】
各実施例及び比較例で作製したソリッドベース塗装板1~59を用い、以下に従って耐候性試験を行った。
(耐候性試験の評価方法)
耐候性試験は、超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーキセノンテスターSUV-W151)を使用し、90mW/cm2、48時間(昼夜12時間の2サイクル)の条件下で行った。耐候性試験前後の塗装板を目視で観察を行い、下記基準に従って、耐候性を評価した。結果を表9に示す。下記評価基準で「△」以上であれば、実用可能なレベルである。
【0244】
(評価基準)
〇:色の変化がない。
△:色が白く退色している。
×:色が黒く変色している。
【0245】
【0246】
<4>水系顔料分散体及びその分散安定性の評価
以下の実施例及び比較例は、先に調製した各々のイソインドリン化合物を使用して調製した水系顔料分散体(以下、水系分散体という)と、その分散安定性の評価に関する。
【0247】
<4-1>水系分散体の調製
(実施例E-1)水系分散体1の調製
以下の原料と、直径1.25mmジルコニアビーズ70部とを70mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて60分間にわたって分散させ、分散液を得た。
・イソインドリン化合物(実施例1-1):3.15部
・ポリエステル変性アクリル酸重合体(Allnex社製、ADDITOL XW 6528):5.25部
・湿潤剤(Allnex社製、ADDITOL XW 6374):0.95部
・消泡剤(Allnex社製、ADDITOL XW 6211):0.63部
・イオン交換水:21.52部
次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、水系分散体1を得た。
【0248】
(実施例E-2~E-56、比較例E-1~E-3) 水系分散体2~59の調製
表10に示すように、実施例E-1のイソインドリン顔料(実施例1-1)を実施例1-2~1-29、比較化合物1、実施例2-1~2-14、比較化合物2、及び実施例3-1~3-13、比較化合物3の化合物に、順次変更したことを除き、全て実施例E-1と同様にして、水系分散体2~59を得た。
【0249】
2.分散安定性の評価
実施例E-1~E-56、比較例E-1~E-3で得た各々の水系分散体について、以下の方法に従って分散安定性を評価した。
(初期粘度と粘度安定性の評価方法)
得られた水系分散体について、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、25℃で1週間経時後、及び、50℃で1週間経時促進後の粘度をそれぞれ測定した。得られた測定値に基づき初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表10に示す。下記評価基準で「△」以上であれば、実用可能なレベルである。
【0250】
(初期粘度の評価基準)
◎:初期粘度が、6.0mPa・s未満である。
〇:初期粘度が、6.0mPa・s以上、8.0未満である。
△:初期粘度が、8.0mPa・s以上、10.0未満である。
×:初期粘度が、10.0mPa・s以上である。
【0251】
(粘度安定性の評価基準)
◎:粘度増加率が、10%未満である。
〇:粘度増加率が、10%以上、20%未満である。
△:粘度増加率が、20%以上、40%未満である。
×:粘度増加率が、40%以上である。
【0252】
【0253】
<5>水性塗料及びその塗装物の評価
以下は、先の実施例及び比較例で調製した水系分散体を使用した水性塗料、及びその水性塗料を使用して作製したペットフィルム塗装の色相安定性の評価に関する。なお、先の実施例E-1~E-56で得た水系分散体は、水系分散体E-1~E-56として示し、比較例E-1~E-3で得た水系分散体は、比較水系分散体E-1~E-3として示す。
【0254】
<5-1>水性塗料の調製
(実施例F-1)
(1)水性塗料1-1の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、水系塗料1-1(25℃で1週間保管)を得た。
・水系分散体E-1(25℃1週間保管):1.4部
・アクリル樹脂(酸化65.0、OH価50、Mw=15000、固形分35%):13.6部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4部
【0255】
(2)水性塗料1-2の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、水系塗料1-2(50℃で1週間保管)を得た。
・水系分散体E-1(50℃1週間保管):1.4部
・アクリル樹脂(酸化65.0、OH価50、Mw=15000、固形分35%):13.6部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4部
【0256】
(実施例F-2~F-56、比較例F-1~F-3) 水性塗料2~59の調製
実施例F-1の水系分散体E-1(25℃で1週間保管)を水系分散体E-2~29、比較水系分散体E-1、水系分散体E-30~43、比較水系分散体E-2、水系分散体E44~56、及び比較水系分散体E-3(それぞれ25℃で1週間保管)に、順次変更したことを除き、全て実施例F-1と同様にして、水性塗料2-1~59-1を得た。
また、実施例F-1の水系分散体E-1(50℃で1週間保管)を、水系分散体E-2~29、比較水系分散体E-1、水系分散体E-30~43、比較水系分散体E-2、水系分散体E44~56、及び比較水系分散体E-3(それぞれ50℃で1週間保管)に、順次変更したことを除き、全て実施例F-1と同様にして、水性塗料2-2~59-2を得た。
【0257】
<5-2>ペットフィルム塗装の作製
(実施例G-1) ペットフィルム塗装1の作製
水性塗料1-1と水性塗料1-2を0.007INCHのアプリケーターを使用し、ペットフィルムに塗装を行った。その塗装後、そのペットフィルムを室温で18時間乾燥させた。その後、60℃で5分、140℃で20分乾燥させペットフィルム塗装1を得た。
【0258】
(実施例G-2~G-56、比較例G-1~G-3) ペットフィルム塗装2~59の作製
実施例G-1の水性塗料1-1と水性塗料1-2を2-1~59-1、2-2~59-2に変更する以外は、全て実施例G-1と同様にして、ペットフィルム塗装2~59を得た。
【0259】
<5-3>ペットフィルム塗装の評価
実施例G-1~G-56、比較例G-1~G-3で得た各々のペットフィルム塗装について、以下の方法に従って色相の安定性を評価した。
【0260】
(色相の安定性の評価方法)
測色機(コニカミノルタ社製、CM-700d)を使用して、25℃1週間保存した水系分散体の塗料と50℃1週間保存した水系分散体の塗料にて塗装したペットフィルムを測色し、その色差(ΔE*)を求め、下記基準で判断した。結果を表11に示す。下記評価基準で「△」以上であれば、実用可能なレベルである。
(評価基準)
〇:ΔE*が、1.5未満である。
△:ΔE*が、1.5以上、3.0未満である。
×:ΔE*が、3.0以上である。
【0261】
【0262】
<6>水性インクジェットインキ及びその評価
以下は、先に調製したイソインドリン化合物を使用して調製した水性インクジェットインキ用分散体、それを使用した水性インクジェットインキ、及びその評価に関する。
【0263】
<6-1>水性インクジェットインキ用分散体の調製
(実施例H-1) 水性IJ分散体1の調製
・イソインドリン化合物(実施例1-1):19.0部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン株式会社製、ジョンクリル61J):16.4部
・界面活性剤(花王株式会社製、エマルゲン420):5.0部
・イオン交換水:59.6部
と、直径1.25mmジルコニアビーズ200部とを200mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて6時間にわたって分散させた。次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、水性インクジェットインキ用分散体1(水性IJ分散体1)を得た。
【0264】
(実施例H-2~H-56、比較例H-1~H-3)水性IJ分散体2~59の調製
実施例H-1のイソインドリン化合物(実施例1-1)を、表12に示すように実施例1-2~1-29、2-1~2-14、3-1~3-13、比較化合物1~3に、それぞれ変更した以外は、全て実施例H-1と同様にして、水性インクジェットインキ用分散体2~59(水性IJ分散体2~59)を得た。
【0265】
<6-2>水性インクジェットインキの調製
以下は、先に調製した水性IJ分散体1~59を使用した水性インクジェットインキの調製に関する。
(実施例I-1)水性インクジェットインキ1
ハイスピードミキサーを用いて、以下の原料を30分にわたって撹拌混合し、混合物を得た。
・水性IJ分散体1(実施例H-1):12.5部
・スチレン-アクリル酸共重合体(株式会社岐阜セラック製造所製、エマポリーTYN-40、固形分44.8%):2.5部
・界面活性剤(花王株式会社製、エマルゲン420):2.0部
・イオン交換水:64.9部
次いで、上記混合物にジエチレングリコールモノブチルエーテルを適宜加えて、25℃における粘度を2.5mPa・s(25℃)、表面張力を40mN/mに調整し、次いで、1.0μmメンブランフィルターを用いてろ過し、さらに0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過して、水性インクイジェットインキ1を得た。
【0266】
(実施例I-2~I-56、比較例I-1~I-3)水性インクジェットインキ2~59
実施例I-1の水性IJ分散体1を水性IJ分散体2~59に、それぞれ変更した以外は、全て実施例I-1と同様にして、水性インクジェットインキ2~59を得た。
【0267】
<6-3>水性インクジェットインキの評価
実施例及び比較例で調製した水性インクジェットインキ1~59について、以下に従い、粘度安定性を評価した。
(粘度安定性の評価方法)
各水性インクジェットインキについて、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、25℃で4週間経時後、及び、50℃で4週間経時促進後の粘度を測定した。それぞれの測定値を用いて、初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の基準に従って評価した。結果を表12に示す。下記評価基準で「△」以上であれば、実用可能なレベルである。
【0268】
(粘度安定性の評価基準)
◎:粘度増加率が、10%未満である。
〇:粘度増加率が、10%以上、20%未満である。
△:粘度増加率が、20%以上、40%未満である。
×:粘度増加率が、40%以上である。
【0269】
【0270】
また、各実施例及び各比較例で調製した水性インクジェットインキ1~59をセイコーエプソン株式会社製プリンターHG5130のカートリッジに充填し、印字を行った。比較例I-1~I-3の水性インクジェットインキを使用した場合、ノズル詰まりが起こり、印字を行うことができなかった。一方、実施例I-1~I-56の水性インクジェットインキを使用した場合は、ノズル詰まりもなく、きれいに印字することが可能であった。
【0271】
以上の結果から、本発明によれば、イソインドリン化合物(1)の使用によって、各種特性に優れ、様々な用途に好適に使用可能な着色組成物を提供できることがわかる。例えば、プラスチック用着色剤及びプラスチック成形材料の形態では、優れた耐熱性を有する着色剤を提供することができる。そして、耐熱性が高いゆえに、効率よくプラスチック成型品を提供することができる。トナーの形態では、顔料の分散性に優れたトナーを提供することができる。また、塗料の形態では、優れた耐候性を有する被膜を提供することができ、いずれも変色を抑制することができる。一方、水系顔料分散体の形態では、初期粘度、及び保存安定性の向上が可能である。さらに、水性インクジェットインキの形態では、保存安定性が良好で、ノズル詰まりが生じ難く、高品質な印字が可能なインキを提供できる。