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特許7192643ブラシレスモータの制御装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ブラシレスモータの制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/24 20060101AFI20221213BHJP
   H02P 3/22 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02P6/24
H02P3/22 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019083185
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020182291
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 紗奈
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043166(JP,A)
【文献】特開2013-017289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/24
H02P 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度指令に応じたデューティ比を有するデューティ信号を出力する制御回路と、
複数相のステータコイルに接続された複数のスイッチング素子を有し、前記デューティ信号に基づいて前記複数のスイッチング素子をオンオフして相補通電方式で前記複数相のステータコイルに通電する通電回路と、
を備え、
前記制御回路は、
停止指令を受けた場合に、ロータの回転数が規定回転数未満又は前記デューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する判定部と、
前記ロータの回転数が前記規定回転数以上又は前記デューティ比が前記規定デューティ比以上であると前記判定部で判定された場合に、前記デューティ比を減少させる減速制御部と、
前記ロータの回転数が前記規定回転数未満又は前記デューティ比が前記規定デューティ比未満であると前記判定部で判定された場合に、前記複数のスイッチング素子をオフにさせる通電停止制御部と、
を有し
前記規定回転数が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前の回転数に設定されているか、又は、前記規定デューティ比が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前のデューティ比に設定されている、
ブラシレスモータの制御装置。
【請求項2】
速度指令に応じたデューティ比を有するデューティ信号を出力するコンピュータを有する制御回路と、
複数相のステータコイルに接続された複数のスイッチング素子を有し、前記デューティ信号に基づいて前記複数のスイッチング素子をオンオフして相補通電方式で前記複数相のステータコイルに通電する通電回路と、
を備えるブラシレスモータの制御装置に適用されるプログラムであって、
停止指令を受けた場合に、ロータの回転数が規定回転数未満又は前記デューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する判定ステップと、
前記ロータの回転数が前記規定回転数以上又は前記デューティ比が前記規定デューティ比以上であると前記判定ステップで判定された場合に、前記デューティ比を減少させる減速制御ステップと、
前記ロータの回転数が前記規定回転数未満又は前記デューティ比が前記規定デューティ比未満であると前記判定ステップで判定された場合に、前記複数のスイッチング素子をオフにさせる通電停止制御ステップと、
を前記コンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記規定回転数が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前の回転数に設定されているか、又は、前記規定デューティ比が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前のデューティ比に設定されている、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータの制御装置としては、次のものが公知である(例えば、特許文献1、2参照)。すなわち、公知のブラシレスモータの制御装置は、速度指令に応じたデューティ比を有するデューティ信号を出力する制御回路と、複数相のステータコイルに接続された複数のスイッチング素子を有し、デューティ信号に基づいて複数のスイッチング素子をオンオフして相補通電方式で複数相のステータコイルに通電する通電回路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-30385号公報
【文献】特開平7-307435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ブラシレスモータの制御装置では、停止指令を受けた場合、ロータの回転数をRAMP制御するために、デューティ信号のデューティ比を徐々に下げてロータを減速させる。しかしながら、相補通電方式では、デューティ信号のデューティ比が0%になると、全相のステータコイルがデューティ比50%で通電された状態になり、所謂ショートブレーキが発生して停止に伴う停止音(ブレーキングノイズ)が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ブラシレスモータの停止音を抑制できるブラシレスモータの制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のブラシレスモータの制御装置は、速度指令に応じたデューティ比を有するデューティ信号を出力する制御回路と、複数相のステータコイルに接続された複数のスイッチング素子を有し、前記デューティ信号に基づいて前記複数のスイッチング素子をオンオフして相補通電方式で前記複数相のステータコイルに通電する通電回路と、を備え、前記制御回路は、停止指令を受けた場合に、ロータの回転数が規定回転数未満又は前記デューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する判定部と、前記ロータの回転数が前記規定回転数以上又は前記デューティ比が前記規定デューティ比以上であると前記判定部で判定された場合に、前記デューティ比を減少させる減速制御部と、前記ロータの回転数が前記規定回転数未満又は前記デューティ比が前記規定デューティ比未満であると前記判定部で判定された場合に、前記複数のスイッチング素子をオフにさせる通電停止制御部と、を有し、前記規定回転数が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前の回転数に設定されているか、又は、前記規定デューティ比が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前のデューティ比に設定されている
【0007】
このブラシレスモータ制御装置によれば、停止指令を受けた場合には、ロータの回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であるか否かが判定部で判定される。ここで、ロータの回転数が規定回転数以上又はデューティ比が規定デューティ比以上であると判定部で判定された場合には、減速制御部によってデューティ比が減少される。以上の動作が繰り返されると、ロータの回転数が徐々に減少する。
【0008】
そして、ロータの回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であると判定部で判定された場合には、通電停止制御部によって複数のスイッチング素子がオフにされる。したがって、ショートブレーキが発生する前に全相のステータコイルへの通電が停止される。これにより、ロータが惰性で回転し徐々に減速してから停止するので、停止音が発生することを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載のプログラムは、速度指令に応じたデューティ比を有するデューティ信号を出力する制御回路と、複数相のステータコイルに接続された複数のスイッチング素子を有し、前記デューティ信号に基づいて前記複数のスイッチング素子をオンオフして相補通電方式で前記複数相のステータコイルに通電する通電回路と、を備えるブラシレスモータの制御装置に適用されるプログラムであって、停止指令を受けた場合に、ロータの回転数が規定回転数未満又は前記デューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する判定ステップと、前記ロータの回転数が前記規定回転数以上又は前記デューティ比が前記規定デューティ比以上であると前記判定ステップで判定された場合に、前記デューティ比を減少させる減速制御ステップと、前記ロータの回転数が前記規定回転数未満又は前記デューティ比が前記規定デューティ比未満であると前記判定ステップで判定された場合に、前記複数のスイッチング素子をオフにさせる通電停止制御ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、前記規定回転数が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前の回転数に設定されているか、又は、前記規定デューティ比が、ショートブレーキが発生するタイミングの直前のデューティ比に設定されている
【0010】
このプログラムによれば、停止指令を受けた場合には、ロータの回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であるか否かが判定ステップで判定される。ここで、ロータの回転数が規定回転数以上又はデューティ比が規定デューティ比以上であると判定ステップで判定された場合には、減速制御ステップによってデューティ比が減少される。以上の動作が繰り返されると、ロータの回転数が徐々に減少する。
【0011】
そして、ロータの回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であると判定ステップで判定された場合には、通電停止制御ステップによって複数のスイッチング素子がオフにされる。したがって、ショートブレーキが発生する前に全相のステータコイルへの通電が停止される。これにより、ロータが惰性で回転し徐々に減速してから停止するので、停止音が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るブラシレスモータの制御装置を用いたブラシレスモータ装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1のCPUの第一動作例を示すフローチャートである。
図3図1のCPUの第二動作例を示すフローチャートである。
図4】実機にてデューティ比を0%にしてショートブレーキを発生させた場合の測定結果の一例(比較例)を示す図である。
図5】実機にて条件を変えてショートブレーキが発生し始める回転数を測定した結果の一例(比較例)を示す図である。
図6】RAMP制御を行ってショートブレーキを発生させた場合の各波形の測定結果の一例(比較例)を示す図である。
図7】RAMP制御を行ってショートブレーキを発生させた場合の各波形と音圧の測定結果の一例(比較例)を示す図である。
図8】RAMP制御を行ってデューティ比が0%になる直前で全相のステータコイルへの通電を停止させた場合の各波形と音圧の測定結果の一例(本実施例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明の一実施形態に係るブラシレスモータの制御装置が用いられたブラシレスモータ装置の構成について説明する。
【0014】
図1には、本実施形態に係るブラシレスモータの制御装置10を用いたブラシレスモータ装置1の構成が概略的に示されている。ブラシレスモータ装置1は、例えば、車載用のブロワモータとして使用される。このブラシレスモータ装置1は、ブラシレスモータ2と、ブラシレスモータの制御装置10(以降、制御装置10と略称する)とを備える。
【0015】
ブラシレスモータ2は、ロータ3と、ステータ4と、ホール素子5とを備える。ロータ3は、複数(一例として、六個)の磁極を有するロータマグネット6を備えており、ステータ4は、U相、V相、W相からなる複数相のステータコイル7を備える。複数相のステータコイル7が通電されると、ステータ4に回転磁界が形成され、この回転磁界によりロータマグネット6に吸引及び反発力が作用することでロータ3が回転する。
【0016】
ホール素子5は、ロータ3の回転数を検出するものであり、ロータマグネット6と対向して配置されている。このホール素子5は、ロータマグネット6のN極と対向すると、Hレベルの検出信号を出力し、ロータマグネット6のS極と対向すると、Lレベルの検出信号を出力する。
【0017】
制御装置10は、例えば、モータ制御用のECU(Electrical Control Unit)であり、制御回路12と、通電回路14とを備える。通電回路14は、プリドライバ16と、三相インバータ18とを有する。制御回路12は、外部ECU8及びホール素子5と接続されており、プリドライバ16は、制御回路12及び三相インバータ18と接続されている。
【0018】
制御回路12は、外部ECU8から速度指令を受けた場合に、外部ECU8からの速度指令及びホール素子5からの検出信号に応じたデューティ比を算出し、このデューティ比を有するPWM(Pulse Width Modulation)信号であるデューティ信号をプリドライバ16に出力する機能を有する。
【0019】
プリドライバ16は、制御回路12から出力されたデューティ信号に基づいてPWM信号である駆動信号を生成し、この駆動信号を三相インバータ18に出力する機能を有する。
【0020】
三相インバータ18は、複数相のステータコイル7に接続された複数のスイッチング素子20を有する。この複数のスイッチング素子20は、ブリッジ回路を形成している。つまり、U相、V相、W相の上アームとして配置されたスイッチング素子20は、電源9のプラス極に接続され、U相、V相、W相の下アームとして配置されたスイッチング素子20は、電源9のマイナス極に接続されている。U相のスイッチング素子20間、V相のスイッチング素子20間、W相のスイッチング素子20間は、各相のステータコイル7と接続されている。
【0021】
そして、プリドライバ16から駆動信号が出力されると、複数のスイッチング素子20がオンオフされ、電源9から複数相のステータコイル7に電力が供給され、複数相のステータコイル7が通電される。本実施形態において、複数相のステータコイル7は、相補通電方式で通電される。
【0022】
制御回路12は、例えば、マイクロコンピュータである。この制御回路12は、具体的には、CPU30(Central Processing Unit)、ROM32(Read Only Memory)、及びRAM34(Random Access Memory)を有する。ROM32には、プログラム36が記憶されている。CPU30は、中央演算処理ユニット(コンピュータ)であり、ROM32に記憶されているプログラム36を読み出し、このプログラム36をRAM34に展開して実行する。
【0023】
この制御回路12は、外部ECU8から停止指令を受けた場合に機能する構成として、判定部40と、減速制御部42と、通電停止制御部44とを有する。この判定部40、減速制御部42、及び通電停止制御部44は、CPU30がプログラム36を実行することにより実現される。
【0024】
すなわち、判定部40は、CPU30がプログラム36(後述するステップS1又はステップS11)を実行することにより実現される。この判定部40は、外部ECU8から停止指令を受けた場合に、ロータ3の回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する機能を有する。判定部40によって実行されるステップS1又はステップS11は、判定ステップに相当する。
【0025】
減速制御部42は、CPU30がプログラム36(後述するステップS2又はステップS12)を実行することにより実現される。この減速制御部42は、ロータ3の回転数が規定回転数以上又はデューティ比が規定デューティ比以上であると判定部40で判定された場合に、デューティ比を減少させる機能を有する。減速制御部42によって実行されるステップS2又はステップS12は、減速制御ステップに相当する。
【0026】
通電停止制御部44は、CPU30がプログラム36(後述するステップS3又はステップS13)を実行することにより実現される。この通電停止制御部44は、ロータ3の回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であると判定部40で判定された場合に、複数のスイッチング素子20をオフにさせる機能を有する。通電停止制御部44によって実行されるステップS3又はステップS13は、通電停止制御ステップに相当する。
【0027】
次に、CPU30の動作について説明する。
【0028】
CPU30は、以下の第一動作例又は第二動作例のように動作する。図2には、CPU30の第一動作例における処理の流れが示されており、図3には、CPU30の第二動作例における処理の流れが示されている。CPU30は、外部ECU8からの停止指令を受けると、図2に示される処理又は図3に示される処理を開始する。以下、第一動作例及び第二動作例を順に説明する。
【0029】
(第一動作例:図2参照)
ステップS1では、CPU30(判定部40)が、ホール素子5から出力された検出信号に基づいて、ロータ3の回転数が規定回転数未満であるか否かを判定する。CPU30は、ロータ3の回転数が規定回転数未満ではないと判定した場合には、ステップS2に移行する。
【0030】
ステップS2では、CPU30(減速制御部42)が、デューティ信号のデューティ比を減少させる。デューティ信号のデューティ比が減少すると、これに伴い、ロータ3の回転数が減少する。CPU30は、ロータ3の回転数が規定回転数未満であると判定するまで、以上の動作を繰り返す。これにより、デューティ比が徐々に減少すると共にロータ3の回転数が徐々に減少する。つまり、停止指令を受けた場合には、ロータ3の回転数をRAMP制御するために、デューティ信号のデューティ比を徐々に下げてロータ3を減速させる。
【0031】
ここで、相補通電方式では、デューティ信号のデューティ比が0%になると、全相のステータコイル7がデューティ比50%で通電された状態になり、所謂ショートブレーキが発生して停止音が生じるという問題がある。
【0032】
そこで、上述の規定回転数は、ショートブレーキが発生するタイミングよりも前の回転数に設定される。ショートブレーキが発生するタイミングは、実機で確認することができる。上述の規定回転数は、例えば、ショートブレーキが発生し始める回転数+100rpmに設定される。そして、CPU30は、ロータ3の回転数が規定回転数未満であると判定した場合には、ステップS3に移行する。
【0033】
ステップS3では、CPU30(通電停止制御部44)が、プリドライバ16に通電停止信号を出力する。プリドライバ16に通電停止信号が出力されると、プリドライバ16が複数のスイッチング素子20をオフにする。このときには、ショートブレーキが発生する前に全相のステータコイル7への通電が停止される。したがって、ロータ3が惰性で回転し徐々に減速してから停止するので、停止音が発生することが抑制される。
【0034】
(第二動作例:図3参照)
ステップS11では、CPU30(判定部40)が、デューティ信号のデューティ比が規定デューティ比未満であるか否かを判定する。CPU30は、デューティ比が規定デューティ比未満ではないと判定した場合には、ステップS12に移行する。
【0035】
ステップS12では、CPU30(減速制御部42)が、デューティ信号のデューティ比を減少させる。デューティ信号のデューティ比が減少すると、これに伴い、ロータ3の回転数が減少する。CPU30は、デューティ比が規定デューティ比未満であると判定するまで、以上の動作を繰り返す。これにより、デューティ比が徐々に減少すると共にロータ3の回転数が徐々に減少する。つまり、停止指令を受けた場合には、ロータ3の回転数をRAMP制御するために、デューティ信号のデューティ比を徐々に下げてロータ3を減速させる。
【0036】
ここで、相補通電方式では、デューティ信号のデューティ比が0%になると、全相のステータコイル7がデューティ比50%で通電された状態になり、所謂ショートブレーキが発生して停止音が生じるという問題がある。そこで、上述の規定デューティ比は、0%の直前であるデューティ比に設定される。上述の規定デューティ比は、例えば、5%に設定される。そして、CPU30は、デューティ比が規定デューティ比未満であると判定した場合には、ステップS13に移行する。
【0037】
ステップS13では、CPU30(通電停止制御部44)が、プリドライバ16に通電停止信号を出力する。プリドライバ16に通電停止信号が出力されると、プリドライバ16が複数のスイッチング素子20をオフにする。このときには、ショートブレーキが発生する前に全相のステータコイル7への通電が停止される。したがって、ロータ3が惰性で回転し徐々に減速してから停止するので、停止音が発生することが抑制される。
【0038】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
以上詳述した通り、本実施形態に係る制御装置10によれば、停止指令を受けた場合には、ロータ3の回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であるか否かが判定部40で判定される。ここで、ロータ3の回転数が規定回転数以上又はデューティ比が規定デューティ比以上であると判定部40で判定された場合には、減速制御部42によってデューティ比が減少される。以上の動作が繰り返されると、ロータ3の回転数が徐々に減少する。
【0040】
そして、ロータ3の回転数が規定回転数未満又はデューティ比が規定デューティ比未満であると判定部40で判定された場合には、通電停止制御部44によって複数のスイッチング素子20がオフにされる。したがって、ショートブレーキが発生する前に全相のステータコイル7への通電が停止される。これにより、ロータ3が惰性で回転し徐々に減速してから停止するので、停止音が発生することを抑制できる。
【0041】
しかも、RAMP制御の設定を変更しても、全部のスイッチング素子20がオフになるタイミングが同じであるので、ロータ3の停止時間を揃えることができる。
【0042】
また、RAMP制御の設定によって、全部のスイッチング素子20がオフになるタイミングを変更することができるので、停止音が発生する直前のタイミングまでRAMP制御を行うことができる。
【0043】
さらに、プログラム36の設定を変更するだけで停止音の発生を抑制できるので、他の製品への流用が容易である。
【0044】
次に、本実施形態の実施例について説明する。
【0045】
先ず、デューティ比を0%にしてショートブレーキを発生させる比較例について説明する。図4は、実機にてデューティ比を0%にしてショートブレーキを発生させた場合の測定結果の一例を示す図である。図4に示されるように、相補通電方式では、デューティ信号のデューティ比が0%になると、全相のステータコイルがデューティ比50%で通電された状態になり、所謂ショートブレーキが発生して停止に伴う停止音が生じる。図4に示される例では、一例として、ショートブレーキが発生し始める回転数が800rpmとなっている。図5には、実機にて条件を変えてショートブレーキが発生し始める回転数を測定した結果の一例が示されている。
【0046】
図6(A)には、900rpm/sでRAMP制御を行ってショートブレーキを発生させた場合の各波形の測定結果の一例が示されており、図6(B)には、1500rpm/sでRAMP制御を行ってショートブレーキを発生させた場合の各波形の測定結果の一例が示されている。図6(A)に示されるように、900rpm/sでRAMP制御を行った場合には、1000rpmでショートブレーキが発生し始めている。一方、図6(B)に示されるように、1500rpm/sでRAMP制御を行った場合には、1400rpmでショートブレーキが発生し始めている。
【0047】
図7には、1500rpm/sでRAMP制御を行ってショートブレーキを発生させた場合の各波形と音圧の測定結果の一例が示されている。図7に示される例では、1400rpmで相電流の振幅が大きくなり始め、850rpmで相電流の振幅が最大となっている。また、1400rpmで音圧の振幅が大きくなり、803rpmで音圧の振幅が最大となっている。
【0048】
続いて、本実施形態の実施例について説明する。図8には、1500rpm/sでRAMP制御を行ってデューティ比が0%になる直前で全相のステータコイルへの通電を停止させた場合の各波形と音圧の測定結果の一例が示されている。図8に示される例では、一例として、1500rpmで全相のステータコイルへの通電を停止させている。これにより、803rpmでの音圧の振幅が抑えられ、停止音が発生することが抑制されている。
【0049】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0050】
上記実施形態において、制御装置10は、ハードウェア構成として、マイクロコンピュータである制御回路12を有する。そして、制御回路12における判定部40等の各機能部は、CPU30がプログラム36を実行することにより実現される。
【0051】
しかしながら、制御回路12における判定部40等の各機能部は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のように、製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)によって実現されてもよい。
【0052】
また、制御回路12における判定部40等の各機能部は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のように、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路によって実現されてもよい。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1…ブラシレスモータ装置、2…ブラシレスモータ、3…ロータ、4…ステータ、5…ホール素子、6…ロータマグネット、7…ステータコイル、8…外部ECU、9…電源、10…制御装置、12…制御回路、14…通電回路、16…プリドライバ、18…三相インバータ、20…スイッチング素子、30…CPU(コンピュータ)、32…ROM、34…RAM、36…プログラム、40…判定部、42…減速制御部、44…通電停止制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8