(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】付着検知装置および付着検知方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2019087608
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 賢造
(72)【発明者】
【氏名】水井 健介
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-049665(JP,A)
【文献】特開2016-031355(JP,A)
【文献】特開2018-036231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0291153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60R 21/00-21/13
21/34-21/38
G01S 1/72- 1/82
3/80- 3/86
5/18- 7/64
13/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査波を送信するとともに前記探査波の物体(B)による反射波を含む受信波を受信することで車両(10)の周囲に存在する前記物体を検知する物体検知センサ(21)に対する異物(M)の付着を検知するように構成された、付着検知装置(30)であって、
前記物体検知センサと前記物体とが近接する近接状態が検知されている近接検知状態の継続時間に対応する計数値が付着判定閾値を超えた場合に、前記物体検知センサに対する前記異物の付着を判定する、付着判定部(305)と、
前記車両の加減速状態を取得する、加減速状態取得部(303)と、
前記加減速状態取得部によって取得された前記加減速状態に応じて前記付着判定閾値を設定する、閾値設定部(304)と、
を備
え、
前記閾値設定部は、
前記加減速状態が第一状態にて、前記付着判定閾値を第一付着判定閾値に設定し、
前記加減速状態が前記第一状態よりも高加減速状態である第二状態にて、前記付着判定閾値を、対応する前記継続時間が前記第一付着判定閾値よりも短時間となる第二付着判定閾値に設定する、
付着検知装置。
【請求項2】
前記物体検知センサは、前記物体との距離を検知する測距センサである、
請求項
1に記載の付着検知装置。
【請求項3】
前記物体検知センサは、前記車両における運転支援を実行する運転支援システム(20)に備えられた、
請求項
1または2に記載の付着検知装置。
【請求項4】
探査波を送信するとともに前記探査波の物体(B)による反射波を含む受信波を受信することで車両(10)の周囲に存在する前記物体を検知する物体検知センサ(21)に対する異物(M)の付着を検知する、付着検知方法であって、
前記車両の加減速状態を取得し、
取得した前記加減速状態に応じて、付着判定閾値を設定し、
前記物体検知センサと前記物体とが近接する近接状態が検知されている近接検知状態の継続時間に対応する計数値が前記付着判定閾値を超えた場合に、前記物体検知センサに対する前記異物の付着を判定
し、
前記付着判定閾値の設定は、
前記加減速状態が第一状態にて、前記付着判定閾値を第一付着判定閾値に設定し、
前記加減速状態が前記第一状態よりも高加減速状態である第二状態にて、前記付着判定閾値を、対応する前記継続時間が前記第一付着判定閾値よりも短時間となる第二付着判定閾値に設定する、
付着検知方法。
【請求項5】
前記物体検知センサは、前記物体との距離を検知する測距センサである、
請求項
4に記載の付着検知方法。
【請求項6】
前記物体検知センサは、前記車両における運転支援に用いられる、
請求項
4または5に記載の付着検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知センサに対する、異物の付着を検知する、付着検知装置および付着検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体検知センサとして、超音波センサ、ミリ波レーダセンサ、等が用いられている。この種の物体検知センサは、例えば、衝突回避等の運転支援に用いられている。
【0003】
かかる物体検知センサには、走行中に雪等の異物が付着することがある。物体検知センサに異物が付着すると、付着した異物を衝突回避等の対象としての物体すなわち障害物として誤検知してしまうことで、運転支援等に支障をきたす場合がある。
【0004】
この点、特許文献1に記載の装置は、所定の条件に該当する場合に、物体検出手段に雪等の付着物が付着していると判定する。付着物であるか否かを判定する所定の条件は、例えば、検出時間が所定時間を超えたか否かである。検出時間は、検出された物体が継続的に検出されている時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の物体検知センサは、上記の通り、衝突回避等の運転支援に用いられている。したがって、物体検知センサに対する異物の付着検知をより適切に実行することが求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、物体検知センサに対する異物の付着検知をより適切に実行することが可能な、装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
付着検知装置(30)は、物体検知センサ(21)に対する異物(M)の付着を検知するように構成されている。前記物体検知センサは、探査波を送信するとともに前記探査波の物体(B)による反射波を含む受信波を受信することで、車両(10)の周囲に存在する前記物体を検知するように構成されている。
請求項1に記載の付着検知装置は、
前記物体検知センサと前記物体とが近接する近接状態が検知されている近接検知状態の継続時間に対応する計数値が付着判定閾値を超えた場合に、前記物体検知センサに対する前記異物の付着を判定する、付着判定部(305)と、
前記車両の加減速状態を取得する、加減速状態取得部(303)と、
前記加減速状態取得部によって取得された前記加減速状態に応じて前記付着判定閾値を設定する、閾値設定部(304)と、
を備え、
前記閾値設定部は、
前記加減速状態が第一状態にて、前記付着判定閾値を第一付着判定閾値に設定し、
前記加減速状態が前記第一状態よりも高加減速状態である第二状態にて、前記付着判定閾値を、対応する前記継続時間が前記第一付着判定閾値よりも短時間となる第二付着判定閾値に設定する。
請求項5に記載の付着検知方法は、前記物体検知センサに対する前記異物の付着を検知する方法であって、以下の手順を含む:
前記加減速状態を取得し、
取得した前記加減速状態に応じて、前記付着判定閾値を設定し、
前記計数値が前記付着判定閾値を超えた場合に、前記物体検知センサに対する前記異物の付着を判定し、
前記付着判定閾値の設定は、
前記加減速状態が第一状態にて、前記付着判定閾値を第一付着判定閾値に設定し、
前記加減速状態が前記第一状態よりも高加減速状態である第二状態にて、前記付着判定閾値を、対応する前記継続時間が前記第一付着判定閾値よりも短時間となる第二付着判定閾値に設定する。
【0008】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態が適用された車両の概略構成図である。
【
図2】
図1に示された物体検知センサの車両に対する装着状態を示す概略図である。
【
図3】
図1に示された電子制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示された電子制御装置の動作概要を示す概略図である。
【
図5】
図1に示された電子制御装置の一動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0011】
(構成)
図1および
図2を参照すると、車両10は、いわゆる四輪自動車であって、平面視にて略矩形状の車体11を備えている。以下、平面視にて、車両10の車幅方向における中心を通り、且つ車両10における車両全長方向と平行な仮想直線を、車両中心線LCと称する。車両全長方向は、車幅方向と直交し且つ車高方向と直交する方向である。車高方向は、車両10の車高を規定する方向であって、車両10を水平面に載置した場合の重力作用方向と平行な方向である。
図1において、車両全長方向は図中上下方向であり、車幅方向は図中左右方向である。
【0012】
車両10における「前」「後」「左」「右」を、
図1中にて矢印で示された通りに定義する。すなわち、車両全長方向は、前後方向と同義である。また、車幅方向は、左右方向と同義である。「平面視」における車両10の各部の形状は、車両10を水平面に載置して当該各部を重力作用方向と同一方向の視線で車両10の鉛直上方から見た場合の形状を指すものである。
【0013】
車体11における前側の端部には、フロントバンパー12が装着されている。車体11における後側の端部には、リアバンパー13が装着されている。車体11における側面部には、ドアパネル14が装着されている。
図1に示す具体例においては、左右にそれぞれ二枚ずつ、合計四枚のドアパネル14が設けられている。前側の左右一対のドアパネル14のそれぞれには、ドアミラー15が装着されている。
【0014】
車両10には、運転支援システム20が搭載されている。本実施形態に係る運転支援システム20を搭載した車両10を、以下「自車両10」と称することがある。運転支援システム20は、自車両10に搭載されることで、自車両10における運転支援動作を実行するように構成されている。具体的には、運転支援システム20には、物体検知センサ21が備えられている。すなわち、運転支援システム20は、物体検知センサ21を用いて自車両10の周囲に存在する物体Bを検知することで、物体Bの検知結果に応じて運転支援動作を実行するようになっている。運転支援システム20によって実現される、物体検知結果を利用した運転支援動作は、例えば、誤発進抑制、誤加速抑制、衝突回避、自動追従走行、駐車支援、等のうちの少なくとも1つである。
【0015】
物体検知センサ21は、探査波を外部に向けて送信するとともに、探査波の物体Bによる反射波を含む受信波を受信することで、物体Bを検知するように構成されている。具体的には、物体検知センサ21は、いわゆる超音波センサであって、超音波である探査波を発信するとともに、超音波を含む受信波を受信可能に構成されている。また、物体検知センサ21は、受信波の受信結果に対応する出力信号を生成して出力するように構成されている。
【0016】
本実施形態においては、物体検知センサ21は、物体Bとの距離を検知する測距センサであって、測距情報を含む出力信号を生成および出力するように設けられている。測距情報は、物体検知センサ21の出力信号に含まれる情報であって、自車両10の周囲の物体Bとの距離に対応する情報である。
【0017】
なお、ここにいう、受信波の「受信」とは、有効に測距情報を取得可能な程度に受信波を受信することをいう。このため、測距情報が有効に取得できない程度の、弱い受信強度の受信は、ここにいう「受信」とは取り扱われない。よって、ここにいう「受信」は、「閾値受信強度以上での受信」、「有効な受信」、あるいは「良好な受信」と言い換えられ得る。
【0018】
運転支援システム20は、複数の物体検知センサ21を備えている。すなわち、自車両10には、物体検知センサ21が複数搭載されている。複数の物体検知センサ21の各々は、平面視にて相互に異なる位置に設けられている。また、本実施形態においては、複数の物体検知センサ21の各々は、車両中心線LCから、車幅方向におけるいずれか一方側にシフトして配置されている。
【0019】
本実施形態においては、車体11の前面部に、物体検知センサ21が二個設けられている。具体的には、フロントバンパー12には、物体検知センサ21としての、第一フロントソナー21F1および第二フロントソナー21F2が装着されている。同様に、車体11の後面部に、物体検知センサ21が二個設けられている。具体的には、リアバンパー13には、物体検知センサ21としての、第一リアソナー21R1および第二リアソナー21R2が装着されている。
【0020】
「直接波」および「間接波」を、以下のように定義する。複数の物体検知センサ21のうちの一つを「第一測距センサ」と称し、他の一つを「第二測距センサ」と称する。第一測距センサにおける受信波であって、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する受信波を、「直接波」と称する。直接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第一測距センサが受信波として受信したときの当該受信波である。すなわち、直接波は、探査波を送信した物体検知センサ21と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として受信した物体検知センサ21とが、同一である場合の、当該受信波である。
【0021】
これに対し、第二測距センサにおける受信波であって、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する受信波を、「間接波」と称する。間接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第二測距センサが受信波として受信したときの当該受信波である。すなわち、間接波とは、探査波を送信した物体検知センサ21と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として受信した物体検知センサ21とが、異なる場合の、当該受信波である。
【0022】
図1に、第一フロントソナー21F1および第二フロントソナー21F2を例として、二個の物体検知センサ21における直接波領域RDおよび間接波領域RIを示す。直接波領域RDは、物体Bが存在した場合に、当該物体Bに起因する直接波を受信可能な領域である。間接波領域RIは、物体Bが存在した場合に、当該物体Bに起因する間接波を受信可能な領域である。具体的には、間接波領域RIは、二個の物体検知センサ21における直接波領域RD同士が重複する領域と、完全には一致しないものの、大部分が重複する。以下、説明の簡略化のため、間接波領域RIを、二個の物体検知センサ21における直接波領域RD同士が重複する領域とほぼ一致するものとして取り扱う。
【0023】
第一フロントソナー21F1は、自車両10の左前方に探査波を発信するように、フロントバンパー12の前側表面における車両中心線LCよりも左側に設けられている。第二フロントソナー21F2は、自車両10の右前方に探査波を発信するように、フロントバンパー12の前側表面における車両中心線LCよりも右側に設けられている。第一フロントソナー21F1と第二フロントソナー21F2とは、平面視にて、車両中心線LCを挟んで対称に配置されている。
【0024】
このように、第一フロントソナー21F1と第二フロントソナー21F2とは、平面視にて互いに異なる位置に配置されている。また、車幅方向について互いに隣接する第一フロントソナー21F1と第二フロントソナー21F2とは、相互に、一方が送信した探査波の物体Bによる反射波が他方における受信波として受信可能な位置関係に設けられている。すなわち、第一フロントソナー21F1は、自身が送信した探査波に対応する直接波と、第二フロントソナー21F2が送信した探査波に対応する間接波との双方を受信可能に配置されている。同様に、第二フロントソナー21F2は、自身が送信した探査波に対応する直接波と、第一フロントソナー21F1が送信した探査波に対応する間接波との双方を受信可能に配置されている。
【0025】
第一リアソナー21R1は、自車両10の左後方に探査波を発信するように、リアバンパー13の後側表面における車両中心線LCよりも左側に設けられている。第二リアソナー21R2は、自車両10の右後方に探査波を発信するように、リアバンパー13の後側表面における車両中心線LCよりも右側に設けられている。第一リアソナー21R1と第二リアソナー21R2とは、平面視にて、車両中心線LCを挟んで対称に配置されている。
【0026】
このように、第一リアソナー21R1と第二リアソナー21R2とは、平面視にて互いに異なる位置に配置されている。また、車幅方向について互いに隣接する第一リアソナー21R1と第二リアソナー21R2とは、相互に、一方が送信した探査波の物体Bによる反射波が他方における受信波として受信可能な位置関係に設けられている。すなわち、第一リアソナー21R1は、自身が送信した探査波に対応する直接波と、第二リアソナー21R2が送信した探査波に対応する間接波との双方を受信可能に配置されている。同様に、第二リアソナー21R2は、自身が送信した探査波に対応する直接波と、第一リアソナー21R1が送信した探査波に対応する間接波との双方を受信可能に配置されている。
【0027】
図2は、物体検知センサ21がフロントバンパー12に装着された状態を示す。
図2に示されているように、物体検知センサ21は、センサケーシング21Aと超音波マイクロフォン21Bとを備えている。
【0028】
センサケーシング21Aは、物体検知センサ21のケーシングを構成する部品であって、合成樹脂等によって形成されている。超音波マイクロフォン21Bは、アルミニウム等の金属によって形成された有底円筒状のマイクケースの内部に圧電素子等の電気-機械変換素子を収容した構成を有している。すなわち、超音波マイクロフォン21Bは、指向中心軸DAを囲む略円柱状の外形形状を有している。指向中心軸DAは、超音波センサである物体検知センサ21から超音波の送受信方向に沿って延びる仮想直線であって、指向角の基準となるものである。「指向中心軸」は検出軸とも称され得る。
【0029】
超音波マイクロフォン21Bは、送受信面21Cを有している。送受信面21Cは、超音波マイクロフォン21Bの略円柱状の外形形状における略円形状の一底面あるいは頂面であって、指向中心軸DAを法線とする平面状に形成されている。すなわち、超音波マイクロフォン21Bは、電気-機械変換素子に印加された駆動信号に基づいて送受信面21Cを超音波振動させることで、探査波を発振するように構成されている。また、超音波マイクロフォン21Bは、外部から受信した超音波による送受信面21Cの励振状態に応じた電気信号である受信信号を電気-機械変換素子にて発生するように構成されている。
【0030】
センサケーシング21Aは、マイクロフォン収容部21Dとケーシング本体部21Eとを有している。マイクロフォン収容部21Dは、超音波マイクロフォン21Bにおける送受信面21Cを外部に露出させた状態で超音波マイクロフォン21Bを収容するように、指向中心軸DAを囲む略円筒状に形成されている。超音波マイクロフォン21Bにおける送受信面21Cを外部に露出する、マイクロフォン収容部21Dの先端部は、フロントバンパー12に形成された貫通孔である取付孔H内に挿入されている。すなわち、超音波マイクロフォン21Bにおける送受信面21Cは、取付孔Hにて、車体11の外側空間に向けて露出されている。ケーシング本体部21Eは、略直方体状を有する箱状に形成されている。ケーシング本体部21Eの内部には、駆動信号の出力および受信信号の処理等を実行するための回路素子を実装した回路基板が収容されている。
【0031】
再び
図1を参照すると、車両10には、車速センサ22、シフトポジションセンサ23、アクセルペダルセンサ24、およびブレーキペダルセンサ25を含む、複数のセンサ類が搭載されている。また、車両10には、表示部26と、警報音発生部27とが搭載されている。また、運転支援システム20は、運転支援ECU30を備えている。ECUはElectronic Control Unitの略である。さらに、車両10には、駆動系ECU40と、制動系ECU50とが搭載されている。なお、図示の簡略化のため、各部の間の電気接続関係は、
図1においては適宜省略されている。
【0032】
複数の物体検知センサ21の各々は、運転支援ECU30と情報通信可能に接続されている。すなわち、複数の物体検知センサ21の各々は、運転支援ECU30の制御下で超音波を送受信するように設けられている。また、複数の物体検知センサ21の各々は、受信波の検知結果に対応する出力信号を、運転支援ECU30に送信するようになっている。本実施形態においては、複数の物体検知センサ21の各々は、運転支援ECU30と、情報通信用ケーブルによって電気接続されている。
【0033】
車速センサ22、シフトポジションセンサ23、アクセルペダルセンサ24、およびブレーキペダルセンサ25は、運転支援ECU30と情報通信可能に接続されている。本実施形態においては、車速センサ22、シフトポジションセンサ23、アクセルペダルセンサ24、およびブレーキペダルセンサ25は、運転支援ECU30と、情報通信用ケーブルによって電気接続されている。
【0034】
車速センサ22は、自車両10の走行速度に対応する信号を発生して、運転支援ECU30に送信するように設けられている。自車両10の走行速度を、以下単に「車速」と称する。シフトポジションセンサ23は、自車両10のシフトポジションに対応する信号を発生して、運転支援ECU30に送信するように設けられている。
【0035】
アクセルペダルセンサ24は、不図示のアクセルペダルの操作状態に対応する信号を発生して、運転支援ECU30に送信するように設けられている。ブレーキペダルセンサ25は、不図示のブレーキペダルの操作状態に対応する信号を発生して、運転支援ECU30に送信するように設けられている。
【0036】
表示部26および警報音発生部27は、自車両10における車室内に配置されている。表示部26は、運転支援ECU30の制御下で物体検知および運転支援に関する各種表示を行うように、運転支援ECU30と情報通信可能に接続されている。警報音発生部27は、運転支援ECU30の制御下で物体検知および運転支援に関する各種警報音を発生するように、運転支援ECU30と情報通信可能に接続されている。本実施形態においては、運転支援ECU30は、表示部26および警報音発生部27と、情報通信用ケーブルによって電気接続されている。
【0037】
運転支援ECU30は、運転支援システム20の全体の動作を制御する電子制御装置であって、車体11の内側に配置されている。運転支援ECU30は、駆動系ECU40および制動系ECU50と情報通信可能に接続されている。本実施形態においては、運転支援ECU30は、駆動系ECU40および制動系ECU50と、情報通信用ケーブルによって電気接続されている。
【0038】
駆動系ECU40は、不図示の車両駆動系(例えばエンジンおよび/またはモータ)の駆動を制御するように構成されている。制動系ECU50は、不図示の車両制動系(すなわちブレーキ)の動作を制御するように構成されている。
【0039】
運転支援ECU30は、物体検知センサ21を含む複数のセンサ類から受信した信号および情報に基づいて、所定の動作を実行するように構成されている。「所定の動作」には、物体検知センサ21を用いた物体検知動作と、物体検知動作の結果である物体検知結果に基づく自車両10の運転支援動作とが含まれる。また、「付着検知装置」として機能する運転支援ECU30は、複数の物体検知センサ21の各々に対する異物Mの付着を検知するように構成されている。
【0040】
本実施形態においては、運転支援ECU30は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、不図示のCPU、ROM、不揮発性リライタブルメモリ、RAM、入出力インタフェース、等を備えている。CPUはCentral Processing Unitの略である。ROMはRead Only Memoryの略である。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、等である。EPROMはErasable Programmable Read Only Memoryの略である。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略である。RAMはRandom access memoryの略である。ROM、不揮発性リライタブルメモリ、およびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体である。運転支援ECU30のCPU、ROM、RAMおよび不揮発性リライタブルメモリを、以下「CPU」、「ROM」、「RAM」および「不揮発性RAM」と略称する。
【0041】
運転支援ECU30は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の制御動作を実現可能に構成されている。また、ROMまたは不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。各種のデータは、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等である。
【0042】
図3に示されているように、運転支援ECU30は、車載マイクロコンピュータにて実現される機能上の構成として、以下の各部を有している。すなわち、運転支援ECU30は、車両情報取得部301と、測距情報取得部302と、加減速状態取得部303と、閾値設定部304と、付着判定部305と、フェールセーフ制御部306とを有している。以下、
図3に示されている運転支援ECU30の機能構成について説明する。
【0043】
車両情報取得部301は、自車両10における運転状態に関する情報である車両情報を取得するように設けられている。すなわち、車両情報取得部301は、車速センサ22の出力に基づいて、自車両10の車速を取得するようになっている。また、車両情報取得部301は、シフトポジションセンサ23の出力に基づいて、自車両10のシフトポジションを取得するようになっている。また、車両情報取得部301は、アクセルペダルセンサ24の出力に基づいて、自車両10のアクセル操作量を取得するようになっている。また、車両情報取得部301は、ブレーキペダルセンサ25の出力に基づいて、自車両10のブレーキペダル操作量を取得するようになっている。
【0044】
測距情報取得部302は、物体検知センサ21の出力信号に含まれる情報(例えば測距情報)であるソナー検知情報を取得するように設けられている。具体的には、測距情報取得部302は、複数の物体検知センサ21の各々から取得したソナー検知情報を、最新の情報から所定時間分、時系列で保持するようになっている。
【0045】
加減速状態取得部303は、車両情報取得部301にて取得した車両情報に基づいて、自車両10の加減速状態を取得するように設けられている。具体的には、加減速状態取得部303は、車速変化、アクセル操作量、およびブレーキペダル操作量に基づいて、自車両10が高加減速状態であるか否かを判定するようになっている。「高加減速状態」は、典型的には、車速の単位時間あたりの変化量が所定量を超える状態である。
【0046】
閾値設定部304は、加減速状態取得部303によって取得された加減速状態に応じて、付着判定閾値THを設定するようになっている。付着判定閾値THは、付着判定部305における異物付着判定に用いられる基準値である。
【0047】
具体的には、閾値設定部304は、加減速状態が高加減速状態とは異なる第一状態にて、付着判定閾値THを第一付着判定閾値TH1に設定するようになっている。第一付着判定閾値TH1は、近接継続時間TTにおける所定の第一継続時間TT1(例えば3秒)に対応するように設定されている。「近接継続時間TT」は、物体検知センサ21と物体Bとが近接する近接状態が検知されている近接検知状態の継続時間である。「近接状態」は、物体検知センサ21における送受信面21Cから所定の閾値距離(例えば40cm)以内に物体Bが存在する状態である。一方、閾値設定部304は、加減速状態が高加減速状態である第二状態にて、付着判定閾値THを第二付着判定閾値TH2に設定するようになっている。第二付着判定閾値TH2は、近接継続時間TTにおける所定の第二継続時間TT2(例えば1.5秒)に対応するように設定されている。すなわち、第二付着判定閾値TH2は、対応する近接継続時間TTが第一付着判定閾値TH1よりも短時間となるように設定されている。
【0048】
付着判定部305は、近接継続時間TTに対応する計数値Tが付着判定閾値THを超えた場合に、物体検知センサ21に異物Mが付着していることを判定するようになっている。計数値Tは、例えば、タイマあるいはカウンタの計数値である。
【0049】
付着判定部305は、近接判定部351と計数部352とを有している。近接判定部351は、所定の近接検知条件が成立した場合に、近接検知状態であることを判定するようになっている。本実施形態においては、この近接検知条件は、第一条件および第二条件を含む。第一条件は、物体Bとの距離の検知結果である、測距情報に対応する検知距離が、上記の閾値距離(例えば40cm)以下であることである。第二条件は、かかる検知距離を検知した物体検知センサ21にて、間接波が不受信であることである。すなわち、第二条件は、第一条件に対応する検知距離が、直接波のみによって検知されたことに相当する。具体的には、近接検知条件の成立は、第一条件の成立且つ第二条件の成立である。
【0050】
計数部352は、計数値Tを取得すなわち算出するようになっている。具体的には、計数部352は、近接検知条件の成立中は計数値Tをカウントアップする一方、近接検知条件が不成立になると計数値Tをリセットするようになっている。また、計数部352は、計数値Tが付着判定閾値THを超えた場合に、物体検知センサ21に異物Mが付着していることを判定するようになっている。
【0051】
フェールセーフ制御部306は、取得した車両情報およびソナー検知情報と、付着判定部305による判定結果とに基づいて、運転支援動作の一つであるフェールセーフ動作を実行するようになっている。フェールセーフ動作は、例えば、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いによる誤発進を抑制する動作である。あるいは、フェールセーフ動作は、例えば、自車両10が前方走行車両と近接した状態でアクセルペダル操作量が急増した場合における誤加速を抑制する動作である。具体的には、フェールセーフ制御部306は、上記のような誤操作があった場合に、誤発進あるいは誤加速等を抑制するための制御信号を、駆動系ECU40および制動系ECU50に送信するようになっている。
【0052】
(動作概要)
以下、上記構成を有する運転支援システム20における動作の概要について、同構成により奏される効果とともに、各図を参照しつつ説明する。
【0053】
運転支援ECU30における車両情報取得部301は、車速およびシフトポジションを含む車両情報を取得する。所定の物体検知条件が成立すると、運転支援ECU30は、物体検知センサ21を用いた物体検知動作を開始する。物体検知条件は、例えば、自車両10の走行速度が所定範囲内であること、自車両10のシフトポジションが後退を含む走行ポジションであること、等を含む。物体検知条件が不成立となると、運転支援ECU30は、物体検知動作を終了する。
【0054】
物体検知動作中、複数の物体検知センサ21の各々は、探査波の送信動作と受信波の受信動作とを繰り返し実行し、受信波の受信状態に応じた出力信号を生成して出力する。運転支援ECU30における測距情報取得部302は、複数の物体検知センサ21の各々から、測距情報を含むソナー検知情報を取得する。運転支援ECU30は、取得した車両情報とソナー検知情報とに基づいて、物体Bを検知する。すなわち、運転支援ECU30は、受信波に対応する物体Bの、自車両10からの距離と、自車両10に対する相対位置とを算出する。
【0055】
物体検知センサ21と物体Bとが近接する近接状態が実際に生じると、当該物体検知センサ21からは、近接状態に対応する測距情報が出力される。具体的には、例えば、近接状態は、物体検知センサ21における送受信面21Cから40cm以内の距離に物体Bが存在する状態である。また、近接状態においては、当該物体検知センサ21における直接波は受信可能である一方、間接波は受信できない。すなわち、実際の近接状態においては、直接波によって、送受信面21Cから40cm以内の距離に物体Bが存在する旨の測距情報が、物体検知センサ21により取得される。
【0056】
物体検知センサ21における送受信面21Cに、雪等の異物Mが付着する場合がある。この場合、送受信面21Cに異物Mが付着した物体検知センサ21からは、当該異物Mの付着により、近接状態が実際には生じていなくても、近接状態に対応する測距情報が出力される。
【0057】
実際の近接状態は、自車両10の走行中において、短時間(例えば1秒以内)は発生し得る一方、それ以上の時間継続することは通常あり得ない。このため、近接継続時間TTが所定の継続時間閾値を超えたか否かによって、近接検知状態が異物Mの付着によるものであるか否かを判定することができる。近接継続時間TTは、物体検知センサ21と物体Bとが近接する近接状態が検知されている近接検知状態の継続時間である。
【0058】
そこで、付着判定部305は、近接検知状態の継続時間に対応する計数値Tが付着判定閾値THを超えた場合に、物体検知センサ21に対する異物Mの付着を判定する。具体的には、近接判定部351は、車両情報およびソナー検知情報に基づいて、近接検知状態であるか否かを判定する。また、計数部352は、近接検知状態の継続中、計数値Tをカウントアップする。そして、計数部352は、計数値Tが継続時間閾値に対応する付着判定閾値THを超えた場合に、物体検知センサ21に対する異物Mの付着を判定する。
【0059】
図4に示されているようなオフセット車両追従走行モードにおいて、異物付着検知に誤検知が生じる懸念がある。「オフセット車両追従走行モード」とは、自車両10の斜め前方に存在する他車両であるオフセット車両Vに追従する走行モードである。
【0060】
すなわち、
図4に示されているように、右前方のオフセット車両Vについては、第一フロントソナー21F1から送信された探査波の反射波は、第二フロントソナー21F2には受信されない。一方、第二フロントソナー21F2から送信された探査波の反射波は、第二フロントソナー21F2にて良好に受信される。このように、オフセット車両Vについては、直接波のみが受信される一方で間接波は不受信となるため、異物Mの付着がなくても近接検知状態が継続しやすい。そこで、オフセット車両追従走行モードにおいては、付着判定閾値THを大きな値として異物付着の判定時間を延ばすことで、異物付着の誤判定を抑制することが好ましい。
【0061】
一方、オフセット車両Vが存在しない通常走行状態においては、オフセット車両追従走行モードとは事情が異なる。具体的には、高加減速時においては、車速が、物体検知条件を構成する所定範囲から外れることで、異物付着の判定が完了する前に、物体検知センサ21における送受信動作が停止してしまうことがあり得る。このため、高加減速時においては、車速が所定範囲から外れる前に、異物付着の判定を完了する必要がある。すなわち、高加減速時においては、付着判定閾値THを大きな値として異物付着の判定時間を延ばすことは、好ましくない。
【0062】
そこで、本実施形態においては、運転支援ECU30は、自車両10の加減速状態に応じて、異物付着判定用の付着判定閾値THを設定する。すなわち、加減速状態取得部303は、車両情報取得部301にて取得した車両情報に基づいて、車両10の加減速状態を取得する。閾値設定部304は、加減速状態取得部303によって取得された加減速状態に応じて、付着判定閾値THを設定する。
【0063】
具体的には、閾値設定部304は、加減速状態が高加減速状態とは異なる第一状態にて、付着判定閾値THを第一付着判定閾値TH1に設定する。第一付着判定閾値TH1は、近接継続時間TTにおける所定の第一継続時間TT1(例えば3秒)に対応する。一方、閾値設定部304は、加減速状態が高加減速状態である第二状態にて、付着判定閾値THを第二付着判定閾値TH2に設定する。第二付着判定閾値TH2は、近接継続時間TTにおける所定の第二継続時間TT2(例えば1.5秒)に対応する。すなわち、第二付着判定閾値TH2は、対応する近接継続時間TTが第一付着判定閾値TH1よりも短時間となるように設定されている。
【0064】
本実施形態によれば、加減速が比較的緩やかに行われるオフセット車両追従走行モードにおいては、付着判定閾値THが第一付着判定閾値TH1に設定される。これにより、付着判定閾値THを大きな値として異物付着の判定時間を延ばすことで、異物付着の誤判定を抑制することが可能となる。
【0065】
一方、高加減速時においては、付着判定閾値THが第二付着判定閾値TH2に設定される。これにより、付着判定閾値THを小さな値として異物付着の判定時間を短くすることで、異物付着判定を迅速に行うことが可能となる。すなわち、付着した異物Mを物体Bと誤検知することで発進または加減速を誤って抑制してしまうという不具合の発生が、可及的に抑制され得る。
【0066】
上記の通り、本実施形態によれば、物体検知センサ21における異物付着の有無を判定するための付着判定閾値THが、自車両10の加減速状態に応じて設定される。したがって、物体検知センサ21に対する異物Mの付着検知をより適切に実行することが可能となる。
【0067】
ところで、近年、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いにより、車両10が店舗の駐車スペースから当該店舗に突入する事故が、頻発している。このような事故を防止するため、車両10の周囲に存在する物体Bを検知するための物体検知センサ21を含む運転支援システム20を、標準装備として、工場出荷時に当該車両10にすでに搭載しておくことが推奨されている。
【0068】
しかしながら、このような、工場出荷時に運転支援システム20をすでに搭載した車両10は、本願の出願時点において、まだまだ普及途上にある。このため、物体検知センサ21を含む運転支援システム20を、工場出荷後に「後付け」で車両10に搭載したいという要望がある。「工場出荷後」には、新車販売後も含まれる。すなわち、運転支援システム20を、新車販売店、中古車販売店、自動車用品店、等にて、車両10に搭載したいという要望がある。
【0069】
工場出荷時に車両10に搭載される標準装備の運転支援システム20においては、通常、
図1に示された構成とは異なり、フロントバンパー12には、四個の物体検知センサ21が装着される。また、リアバンパー13にも、四個の物体検知センサ21が装着される。また、運転支援ECU30と各種センサ類とは、CAN等の所定の通信規格に準拠した車載ネットワークを介して接続されている。CANは、国際登録商標であって、Controller Area Networkの略である。
【0070】
これに対し、「後付け」の場合、コスト低減等のため、
図1に示されているように、フロントバンパー12およびリアバンパー13に装着される物体検知センサ21の個数が、それぞれ二個とされることがある。すると、
図4に示されているようなオフセット車両Vについて、直接波のみが受信される一方で間接波は不受信となる状態が、標準装備の場合よりも、よりいっそう発生しやすい。このため、異物付着の誤判定が、標準装備の場合よりも発生しやすい。
【0071】
また、運転支援ECU30と各種センサ類とは、上記のような車載ネットワークを介して接続することはできず、配線を用いて直接電気接続する必要がある。このため、運転支援ECU30にて利用できる車両情報は、標準装備の場合よりも、限定的となり、且つ、精度も低下する。
【0072】
この点、本実施形態においては、自車両10の加減速状態に応じて付着判定閾値THが設定されることで、異物付着の判定精度が向上されている。したがって、「後付け」の場合であっても、異物Mの付着検知をより適切に実行することが可能となる。
【0073】
(動作例)
以下、本実施形態の構成による具体的な動作例について、
図5に示されているフローチャートを用いて説明する。なお、図示の簡略化のため、
図5において、「ステップ」を単に「S」と略記する。
【0074】
まず、ステップ501にて、運転支援ECU30は、車両情報を取得する。ステップ501の処理は、車両情報取得部301の動作に対応する。次に、ステップ502にて、運転支援ECU30は、ソナー検知情報を取得する。ステップ502の処理は、測距情報取得部302の動作に対応する。
【0075】
続いて、ステップ503にて、運転支援ECU30は、自車両10の加減速状態を取得するとともに、取得した加減速状態が高加減速状態であるか否かを判定する。ステップ503の処理は、加減速状態取得部303の動作に対応する。その後、運転支援ECU30は、ステップ503における判定結果に応じてステップ504またはステップ505の処理を実行した後、処理をステップ506に進行させる。
【0076】
加減速状態が高加減速状態ではない場合(すなわちステップ503=NO)、運転支援ECU30は、ステップ504の処理を実行した後、処理をステップ506に進行させる。ステップ504にて、運転支援ECU30は、付着判定閾値THを第一付着判定閾値TH1に設定する。ステップ504の処理は、閾値設定部304の動作に対応する。
【0077】
加減速状態が高加減速状態である場合(すなわちステップ503=YES)、運転支援ECU30は、ステップ505の処理を実行した後、処理をステップ506に進行させる。ステップ505にて、運転支援ECU30は、付着判定閾値THを第二付着判定閾値TH2に設定する。ステップ505の処理は、閾値設定部304の動作に対応する。
【0078】
ステップ506にて、運転支援ECU30は、近接継続時間TTに対応する計数値Tが付着判定閾値THを超えたか否かを判定する。ステップ506の処理は、付着判定部305の動作に対応する。
【0079】
計数値Tが付着判定閾値THを超えた場合(すなわちステップ506=YES)、運転支援ECU30は、ステップ507の処理を実行した後、本フローチャートの処理を一旦終了する。ステップ507にて、運転支援ECU30は、物体検知センサ21に異物Mが付着していることを判定する。ステップ507の処理は、付着判定部305の動作に対応する。
【0080】
計数値Tが付着判定閾値TH以下である場合(すなわちステップ506=NO)、運転支援ECU30は、処理をステップ508に進行させる。ステップ508にて、運転支援ECU30は、近接検知条件不成立の継続時間に対応する計数値Cが解除判定閾値CHを超えたか否かを判定する。ステップ508の処理は、付着判定部305の動作に対応する。
【0081】
計数値Cが解除判定閾値CH以下である場合(すなわちステップ508=NO)、運転支援ECU30は、ステップ509の処理をスキップして、本フローチャートの処理を一旦終了する。一方、計数値Cが解除判定閾値CHを超えた場合(すなわちステップ508=YES)、運転支援ECU30は、ステップ509の処理を実行した後、本フローチャートの処理を一旦終了する。ステップ509にて、運転支援ECU30は、物体検知センサ21に異物Mが付着していた旨の判定を解除する。
【0082】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0083】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、例えば、車両10は、四輪自動車に限定されない。具体的には、車両10は、三輪自動車であってもよいし、貨物トラック等の六輪または八輪自動車でもよい。ドアパネル14の枚数を含む、車体11の細部の形状および構造についても、特段の限定はない。
【0084】
運転支援システム20は、単なる障害物検知システムであってもよい。すなわち、運転支援システム20は、誤発進抑制、誤加速抑制、衝突回避、自動追従走行、駐車支援、等のうちの何れも実行不可能であってもよい。
【0085】
物体検知センサ21の構造および種類についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、超音波センサとしての物体検知センサ21は、送受信素子をアレイ化した、いわゆる超音波センサアレイであってもよい。あるいは、物体検知センサ21は、ミリ波レーダセンサ等の、超音波センサ以外の種類のセンサであってもよい。物体検知センサ21の配置および個数についても、特段の限定はない。
【0086】
「付着検知装置」として機能する構成部の配置は、運転支援ECU30に限定されない。具体的には、例えば、車両情報取得部301、測距情報取得部302、加減速状態取得部303、閾値設定部304、付着判定部305、およびフェールセーフ制御部306のうちの全部または一部は、物体検知センサ21に設けられていてもよい。すなわち、物体検知センサ21は、自身への異物Mの付着の有無を自己診断可能に構成されていてもよい。
【0087】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な動作例および処理態様に限定されない。すなわち、例えば、上記の変形例の記載から明らかなように、車体11の前面部および後面部に、物体検知センサ21がそれぞれ一個ずつ設けられる場合があり得る。この場合、物体検知動作において、間接波は存在しない。よって、この場合、近接検知条件において、間接波が不受信であるという第二条件は、用いられない。
【0088】
「高加減速状態」は、アクセル操作量またはブレーキペダル操作量、またはかかる操作量の単位時間あたりの変化量が、所定量を超える状態を指すものであってもよい。あるいは、「高加減速状態」は、これに加えて、車速の単位時間あたりの変化量が所定量を超える状態を指すものであってもよい。
【0089】
近接検知条件の成立は、第一条件の成立または第二条件の成立であってもよい。
【0090】
上記の通り、近接状態は、物体検知センサ21における送受信面21Cから所定の閾値距離(例えば40cm)以内の距離に物体Bが存在する状態である。このため、実際に近接状態である場合、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いによる誤操作以外には、高加減速はあり得ない。よって、高加減速状態においては、近接状態に対応する測距情報が得られていれば、間接波が不受信であるという第二条件は、近接検知条件から除外してもよい。
【0091】
そこで、近接判定部351は、加減速状態取得部303によって取得された加減速状態に応じた近接検知条件が成立した場合に、近接検知状態であることを判定するようになっていてもよい。この場合、近接検知条件は、加減速状態が第一状態の場合は第一条件および第二条件を含み、加減速状態が第二状態の場合は第一条件を含む一方で第二条件を含まないように設定されている。
【0092】
かかる構成においては、付着判定部305における近接判定部351は、加減速状態取得部303によって取得された加減速状態に応じて、近接検知条件を変更する。すなわち、加減速状態が高加減速状態とは異なる第一状態の場合、近接検知条件は、第一条件および第二条件を含む。これに対し、加減速状態が高加減速状態である第二状態の場合、近接検知条件は、第一条件を含む一方、第二条件を含まない。そして、近接判定部351は、加減速状態に応じて設定した近接検知条件が成立した場合に、近接検知状態であることを判定する。
【0093】
具体的には、例えば、近接判定部351は、加減速状態が高加減速状態とは異なる第一状態の場合、第一条件且つ第二条件が成立した場合に、近接検知状態であることを判定する。一方、近接判定部351は、加減速状態が高加減速状態である第二状態の場合、第一条件が成立した場合に、近接検知状態であることを判定する。すなわち、高加減速状態の場合、間接波が不受信である第二条件は、近接検知条件とはならない。
【0094】
かかる構成によれば、加減速状態に応じて、異物付着判定のための近接検知条件が設定される。したがって、物体検知センサ21に対する異物Mの付着検知をより適切に実行することが可能となる。
【0095】
付着判定閾値THは、第一付着判定閾値TH1と第二付着判定閾値TH2との二種類に限定されない。すなわち、付着判定閾値THは、三段階以上の加減速状態におけるそれぞれに対応する、三種類以上設定されていてもよい。
【0096】
各判定処理における不等号は、等号付きであってもよいし、等号無しであってもよい。すなわち、例えば、「閾値を超える」と「閾値以上」とは互いに置換可能である。同様に、「閾値よりも小さい」と「閾値以下」と互いに置換可能である。
【0097】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0098】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【0099】
上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0100】
具体的には、運転支援ECU30は、CPU等を備えた周知のマイクロコンピュータに限定されない。すなわち、運転支援ECU30の全部または一部は、上記のような機能を実現可能に構成されたデジタル回路、例えばゲートアレイ等のASICあるいはFPGAであってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。
【0101】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、本発明に係る装置あるいは方法は、上記の各機能あるいは方法を実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 車両
21 物体検知センサ
30 運転支援ECU(付着検知装置)
301 車両情報取得部
302 測距情報取得部
303 加減速状態取得部
304 閾値設定部
305 付着判定部
B 物体
M 異物