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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電源装置、電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20221213BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20221213BHJP
   F02N 11/04 20060101ALI20221213BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20221213BHJP
   F02N 15/00 20060101ALI20221213BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221213BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R16/04 W
F02D29/02 321A
F02N11/04 D
F02N11/08 L
F02N15/00 E
B60R16/03 A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/16
B60L58/18
B60L3/00 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019087728
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020183161
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 大和
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025709(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034060(WO,A1)
【文献】特開2007-131076(JP,A)
【文献】特開2017-125729(JP,A)
【文献】特開2012-002040(JP,A)
【文献】特開2006-046279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0214309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/03 - 16/04
F02D 29/00 - 29/06
F02N 1/00 - 99/00
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定条件に応じてエンジン(30)の自動停止及び再始動を行う車両に搭載され、回転電機(10)に対して並列接続され、前記エンジンの初回始動時の電力供給に使用される第1蓄電池(11)と、前記エンジンの自動停止後の再始動の際の電力供給に使用される第2蓄電池(12)と、を備える電源システム(100)に適用される電源装置(40)であって、
前記エンジンの初回始動後において、当該回転電機の効率が所定以下となる低効率状態下で、前記第2蓄電池からの電力供給により前記回転電機を力行駆動状態とする駆動制御部と、
前記駆動制御部により前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とした場合に、前記第2蓄電池の内部抵抗を算出する抵抗算出部と、を備え
前記駆動制御部は、前記回転電機の温度が所定温度よりも高温である場合に、前記低効率状態であるとして前記回転電機を力行駆動状態とする電源装置。
【請求項2】
前記回転電機は、前記車両の走行時において、所定のアシスト条件が成立した場合に動力アシストを行うものであり、
前記駆動制御部は、前記アシスト条件が成立しない場合に、前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合に、前記低効率状態であるとして前記回転電機を力行駆動状態とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記回転電機のd軸及びq軸のうちd軸にのみ電流を流した状態で前記回転電機を力行駆動状態とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記抵抗算出部により算出した前記内部抵抗に基づいて、前記第2蓄電池からの電力供給による前記再始動を許可するか否かを判定する再始動判定部を備える請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
所定条件に応じてエンジン(30)の自動停止及び再始動を行う車両に搭載される電源システム(100)であって、
回転電機(10)と、
前記回転電機に対して並列接続され、前記エンジンの初回始動時の電力供給に使用される第1蓄電池(11)と、
前記エンジンの自動停止後の再始動の際の電力供給に使用される第2蓄電池(12)と、
前記エンジンの初回始動後において、当該回転電機の効率が所定以下となる低効率状態下で、前記第2蓄電池からの電力供給により前記回転電機を力行駆動状態とする駆動制御部と、
前記駆動制御部により前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とした場合に、前記第2蓄電池の内部抵抗を算出する抵抗算出部と、を備え
前記駆動制御部は、前記回転電機の温度が所定温度よりも高温である場合に、前記低効率状態であるとして前記回転電機を力行駆動状態とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電源システム、及びこの電源システムに適用される電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電源システムとして、電源として第1蓄電池(サブバッテリ)と、第2蓄電池(メインバッテリ)との2つのバッテリが搭載された構成が知られている。これら2つの蓄電池は、リレーを介して並列接続されており、第2蓄電池には、スタータおよびモータジェネレータが接続され、第1蓄電池には、電圧降下が許容されない各種電気負荷が接続されている。
【0003】
また、燃費向上やガス排出量の低減を目的として、所定の自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させ、その後の所定の再始動条件が成立した場合に、エンジンを再始動させるアイドリングストップ制御を行う電源システムが知られている。この電源システムでは、エンジンを初回始動させる際には、第1蓄電池の電力を用いてモータジェネレータを駆動し、エンジンを再始動させる際には、第2蓄電池の電力を用いてモータジェネレータを駆動する。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、エンジンの再始動失敗の回避を目的として、第1蓄電池による初回始動後に、第2蓄電池の内部抵抗を算出する電源システムが開示されている。この電源システムでは、例えば動力アシストの開始時など、第2蓄電池に所定以上の電流を通電した状態で、第2蓄電池の内部抵抗を算出し、その内部抵抗が所定の閾値未満であることを条件に、第2蓄電池からの電力供給によるエンジンの再始動を許可する。これにより、エンジンの再始動が適正に実施されないことを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-25709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第2蓄電池に通電される電流が大きくないと、再始動時における第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できない。例えば、動力アシスト時に流れる電流は再始動時に流れる電流よりも小さいため、動力アシスト時に流れる電流を用いて、再始動時における第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できない問題があった。一方、再始動時における第2蓄電池の内部抵抗を算出するために、動力アシスト時に流れる電流を再始動時に流れる電流と同程度まで大きくすると、車両への動力付与が過大となり、車両挙動に影響を及ぼす問題があった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両挙動に影響及ぼすことなく第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる電源装置及び電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の手段は、所定条件に応じてエンジンの自動停止及び再始動を行う車両に搭載され、回転電機に対して並列接続され、前記エンジンの初回始動時の電力供給に使用される第1蓄電池と、前記エンジンの自動停止後の再始動の際の電力供給に使用される第2蓄電池と、を備える電源システムに適用される電源装置であって、前記エンジンの初回始動後において、当該回転電機の効率が所定以下となる低効率状態下で、前記第2蓄電池からの電力供給により前記回転電機を力行駆動状態とする駆動制御部と、前記駆動制御部により前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とした場合に、前記第2蓄電池の内部抵抗を算出する抵抗算出部と、を備える。
【0009】
アイドリングストップ機能を備える車両では、第1蓄電池の電力を用いた初回始動の後、第2蓄電池の電力を用いた再始動が適宜行われる。この場合、第2蓄電池の劣化等の状態を把握した上で、エンジンの自動停止が行われることが望ましい。この点、上記構成では、回転電機の効率が所定以下となる低効率状態で、第2蓄電池からの電力供給により回転電機を力行駆動状態とした場合に、第2蓄電池の内部抵抗を算出するようにした。なお、「力行駆動状態」には、回転電機の電機子巻線に対して力行動作を行わせるべく通電を行う状態に加え、力行動作が生じない状態での通電を行う状態が含まれる。
【0010】
低効率状態下で回転電機を力行駆動状態とすることにより、低効率状態でない条件下で回転電機を力行駆動状態とする場合に比べて、車両への動力を増大させない状態にしつつ第2蓄電池に流れる電流を増大させることができる。つまり、例えば動力アシスト時であっても、車両の動力増加を抑制しつつ、再始動時と同じレベルまで第2蓄電池に流れる電流を増大させることができる。これにより、車両駆動に影響を及ぼすことなく、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【0011】
第2の手段では、前記回転電機は、前記車両の走行時において、所定のアシスト条件が成立した場合に動力アシストを行うものであり、前記駆動制御部は、前記アシスト条件が成立しない場合に、前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とする。
【0012】
回転電機は、所定のアシスト条件が成立した場合に動力アシストを行い、アシスト条件が成立しない場合に動力アシストを行わない。上記構成によれば、この動力アシストを行わない回転電機の休止期間に、低効率状態で回転電機を力行駆動状態とし、第2蓄電池の内部抵抗を算出する。これにより、休止期間の回転電機を有効活用して、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【0013】
第3の手段では、前記駆動制御部は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合に、前記低効率状態であるとして前記回転電機を力行駆動状態とする。
【0014】
エンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合、所定回転数よりも小さい場合に比べて、車両への動力付与によるエンジン回転数の上昇量が抑制される。つまり、回転電機の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、エンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合に第2蓄電池の内部抵抗を算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【0015】
第4の手段では、前記駆動制御部は、前記回転電機の温度が所定温度よりも高温である場合に、前記低効率状態であるとして前記回転電機を力行駆動状態とする。
【0016】
回転電機の温度が所定温度よりも高温である場合、回転電機における熱損失により、所定温度よりも小さい場合に比べて、車両への動力付与によるエンジン回転数の上昇量が抑制される。つまり、回転電機の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、回転電機の温度が所定温度よりも高温である場合に第2蓄電池の内部抵抗を算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【0017】
第5の手段では、前記駆動制御部は、前記回転電機のd軸及びq軸のうちd軸にのみ電流を流した状態で前記回転電機を力行駆動状態とする。
【0018】
回転電機のd軸にのみ電流が流れる状態では、回転電機にトルクが発生しないため、エンジン回転数の上昇量が抑制される。つまり、回転電機の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、回転電機のd軸にのみ電流が流れる状態で、第2蓄電池の内部抵抗を算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【0019】
第6の手段では、前記抵抗算出部により算出した前記内部抵抗に基づいて、前記第2蓄電池からの電力供給による前記再始動を許可するか否かを判定する再始動判定部を備える。
【0020】
上記構成によれば、第2蓄電池の劣化等の状態を把握した上で、アイドリングストップ制御を適正に実施できる。
【0021】
第7の手段では、所定条件に応じてエンジンの自動停止及び再始動を行う車両に搭載される電源システムであって、回転電機と、前記回転電機に対して並列接続され、前記エンジンの初回始動時の電力供給に使用される第1蓄電池と、前記エンジンの自動停止後の再始動の際の電力供給に使用される第2蓄電池と、前記エンジンの初回始動後において、当該回転電機の効率が所定以下となる低効率状態下で、前記第2蓄電池からの電力供給により前記回転電機を力行駆動状態とする駆動制御部と、前記駆動制御部により前記低効率状態下で前記回転電機を力行駆動状態とした場合に、前記第2蓄電池の内部抵抗を算出する抵抗算出部と、を備える。
【0022】
上記構成では、回転電機の効率が所定以下となる低効率状態で、第2蓄電池からの電力供給により回転電機を力行駆動状態とした場合に、第2蓄電池の内部抵抗を算出する。これにより、車両への動力を増大させない状態にしつつ第2蓄電池に流れる電流を増大させることができ、車両駆動に影響を及ぼすことなく、第2蓄電池の内部抵抗を適正に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電源システムの概略構成図。
図2】第1実施形態に係る制御処理の手順を示すフローチャート。
図3】制御処理の一例を示すタイムチャート。
図4】差分電流と差分電圧との関係を示す図。
図5】回転電機の回転数と回転電機のトルクとの関係を示す図。
図6】第2実施形態に係る制御処理の手順を示すフローチャート。
図7】回転電機の温度と回転電機の熱損失との関係を示す図。
図8】第3実施形態に係る制御処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の電源システム100が搭載される車両は、エンジン30を駆動源として走行するものであり、いわゆるアイドリングストップ機能を有している。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、電源システム100は、回転電機10、鉛蓄電池11、リチウムイオン蓄電池12、スタータ13、電気負荷14、電流検出部15、電圧検出部16、第1スイッチ21、第2スイッチ22、第3スイッチ23を備えている。このうち、リチウムイオン蓄電池12、第1スイッチ21及び第2スイッチ22は、図示しない筐体(収容ケース)に収容されることで一体化され、電池ユニットUとして構成されている。なお、本実施形態において、鉛蓄電池11が「第1蓄電池」に相当し、リチウムイオン蓄電池12が「第2蓄電池」に相当する。
【0026】
電池ユニットUには外部端子として第1端子T1、第2端子T2が設けられている。第1端子T1には鉛蓄電池11と電気負荷14とが接続され、第2端子T2には回転電機10とスタータ13が接続されている。なお、端子T1,T2はいずれも回転電機10の入出力の電流が流れる大電流入出力端子となっている。
【0027】
回転電機10の回転軸は、図示しないエンジン出力軸に対してベルト等により駆動連結されており、エンジン出力軸の回転によって回転電機10の回転軸が回転する一方、回転電機10の回転軸の回転によってエンジン出力軸が回転する。この場合、回転電機10は、エンジン出力軸や車軸の回転により発電(回生発電)を行う発電機能と、エンジン出力軸に動力を付与する力行機能とを備えている。なお回転電機10には、例えばISG(Integrated Starter Generator)が使用される。
【0028】
鉛蓄電池11とリチウムイオン蓄電池12とは回転電機10に対して並列に電気接続されており、回転電機10の発電電力により各蓄電池11,12の充電が可能となっている。また、回転電機10は、各蓄電池11,12からの給電によりエンジン30への動力の付与(力行動作)を行うものとなっている。
【0029】
鉛蓄電池11は周知の汎用蓄電池である。例えば、鉛蓄電池11の正極活物質には二酸化鉛(PbO2)、負極活物質には鉛(Pb)が用いられる。また、電解液には硫酸(H2SO4)が用いられる。そして、これらの電極から構成された複数の電池セルを直列接続することで鉛蓄電池11が構成されている。なお、本実施形態では、鉛蓄電池11の蓄電容量がリチウムイオン蓄電池12の蓄電容量よりも大きくなるように設定されている。
【0030】
リチウムイオン蓄電池12は、鉛蓄電池11に比べて、未使用状態(新品)における内部抵抗RLが小さく、また、充放電における電力損失が少なく、出力密度、及びエネルギ密度の高い(電力受け入れ性の高い)高密度蓄電池である。
【0031】
例えば、リチウムイオン蓄電池12の正極活物質には、リチウムを含む酸化物(リチウム金属複合酸化物)が用いられる。具体例としては、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4等が挙げられる。リチウムイオン蓄電池12の負極活物質には、カーボン(C)やグラファイト、チタン酸リチウム(例えばLixTiO2)、Si又はSuを含有する合金等が用いられる。リチウムイオン蓄電池12の電解液には有機電解液が用いられる。そして、これらの電極から構成された複数の電池セルを直列接続することでリチウムイオン蓄電池12が構成されている。
【0032】
なお、図1中の符号11a,12aは、鉛蓄電池11及びリチウムイオン蓄電池12の電池セル集合体を表し、符号11b,12bは鉛蓄電池11及びリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗を表している。また、以下の説明において、蓄電池の開放電圧V0とは、電池セル集合体11a,12aにより生じた電圧のことである。
【0033】
電池ユニットUには、ユニット内電気経路として、各端子T1,T2及びリチウムイオン蓄電池12を相互に接続する第1接続経路L1,第2接続経路L2が設けられている。そして、このうち第1端子T1と第2端子T2とを接続する第1接続経路L1に第1スイッチ21が設けられ、第1接続経路L1上の接続点N1(電池接続点)と、リチウムイオン蓄電池12とを接続する第2接続経路L2に第2スイッチ22が設けられている。
【0034】
例えば、第1スイッチ21,第2スイッチ22には、PチャネルMOSFET、NチャネルMOSFET等の半導体スイッチが用いられる。
【0035】
また、電源システム100では、第1スイッチ21を介さずに鉛蓄電池11と回転電機10とを接続可能にするバイパス経路L3が設けられている。バイパス経路L3は、電池ユニットUを迂回して、第1端子T1に接続される電気経路(鉛蓄電池11等に接続される経路)と、第2端子T2に接続される電気経路(回転電機10に接続される経路)とを電気接続するように設けられている。
【0036】
バイパス経路L3上には、鉛蓄電池11側と回転電機10側との間の接続を遮断状態又は導通状態にする第3スイッチ23が設けられている。第3スイッチ23には、例えば常閉式のリレースイッチが用いられる。なお、バイパス経路L3及び第3スイッチ23を、電池ユニットU内において第1スイッチ21を迂回するように設けることも可能である。
【0037】
スタータ13は、エンジン30を始動させる始動装置である。図示を略す車両のイグニッションスイッチがオンされて、スタータ13がオンに切り替えられると、鉛蓄電池11から供給される電力でエンジン30が始動される。
【0038】
電気負荷14は、供給電力の電圧が概ね一定、又は少なくとも所定範囲内で変動するよう安定していることが要求される定電圧要求負荷と、定電圧負荷以外の一般負荷とを有している。
【0039】
電気負荷14について詳しく説明すると、定電圧要求負荷には、車両走行に関連する走行用負荷と、走行用以外の負荷とが含まれる。走行用負荷としては、ブレーキ装置、自動変速機のオイルポンプ、燃料ポンプ、電動パワーステアリング等が挙げられる。走行用以外の負荷としては、ナビゲーション装置、メータ等を表示するディスプレイ装置、オーディオ装置等が挙げられる。一般負荷には、定電圧要求負荷に比べて動作可能な電圧範囲が比較的に広い負荷であり、ヘッドライト、フロントウインドシールド等のワイパ、空調装置の送風ファン、リヤウインドシールドのデフロスタ用ヒータ等が挙げられる。
【0040】
電流検出部15は、リチウムイオン蓄電池12に直列接続され、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを検出する。電圧検出部16は、リチウムイオン蓄電池12に並列接続され、リチウムイオン蓄電池12にかかる端子間電圧VLを検出する。
【0041】
回転電機10は、エンジン出力軸に動力を付与する力行動作を行うものである。例えば、車両の走行時において、所定のアシスト条件が成立した場合に、エンジン出力軸に動力を付与して動力アシストを行う。ここで、アシスト条件は、例えば車両の低速状態における加速時という条件である。また、アイドリングストップ制御による自動停止からの再始動時に、エンジン出力軸に動力を付与する。
【0042】
回転電機10は、車両が定常走行を行う際又は自動停止した際には、回転電機10の駆動によるエンジン30への動力の付与が行われない状態になる。また、車両が加速走行を行う際又はエンジン30の自動停止後の再始動の際には、回転電機10の駆動によるエンジン30への動力の付与が行われる状態になる。
【0043】
また、回転電機10は、エンジン出力軸の回転エネルギにより発電する発電機を兼用するものである。例えば、回転電機10においてロータがエンジン出力軸により回転すると、ロータコイルに流れる励磁電流に応じてステータコイルに交流電流が誘起され、図示しない整流器により直流電流に変換される。そして、回転電機10においてロータコイルに流れる励磁電流がレギュレータにより調整されることで、発電された直流電流の電圧が所定の電圧となるよう調整されている。
【0044】
回転電機10で発電した電力は、電気負荷14に供給されるとともに、鉛蓄電池11及びリチウムイオン蓄電池12に供給される。エンジン30の駆動が停止して回転電機10で発電されていない時には、鉛蓄電池11及びリチウムイオン蓄電池12から電気負荷14に電力供給される。鉛蓄電池11及びリチウムイオン蓄電池12から電気負荷14への放電量、及び回転電機10からの充電量は、SOC(State of charge:充電状態)が過充放電とならない範囲となるよう適宜調整されている。
【0045】
エンジン30には、回転検出部17が設けられている。回転検出部17は、エンジン30の単位時間当たりの回転数であるエンジン回転数NEを検出する。また、回転電機10には、温度検出部18が設けられている。温度検出部18は、回転電機10の温度YMを検出する。
【0046】
制御部40は、電源システム100における各種処理を実施する。例えば、制御部40は、イグニッションスイッチからの信号に基づいて初回の始動要求があると判断した際に、スタータ13を駆動してエンジン30を駆動させる。なお、本実施形態において、制御部40が「電源装置」に相当する。この際、鉛蓄電池11からの電力供給でスタータ13を駆動させる。
【0047】
また、制御部40は、アイドリングストップ制御を実施する。アイドリングストップ制御では、周知のとおり所定の自動停止条件の成立によりエンジン30を自動停止させ、且つその自動停止状態下で所定の再始動条件の成立によりエンジン30を再始動させる。なお、制御部40は、自動停止中のエンジン30の再始動をする際には、第1スイッチ21をオフ、第2スイッチ22をオンに切り替えた状態で、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給で回転電機10を駆動させる。
【0048】
以上のように、鉛蓄電池11とリチウムイオン蓄電池12の2電源を備える電源システム100において、エンジン30の初回始動の際には、初回始動の際の大電流放電に対して安定した電圧を出力できる鉛蓄電池11を使用する。一方、アイドリングストップ制御によるエンジン30の停止状態からエンジン30を再始動する際に、充放電特性のよいリチウムイオン蓄電池12を使用する。これにより、頻繁な充放電(累積充放電)に対する耐久性の低い鉛蓄電池11について早期劣化の抑制を図りつつ、充放電特性のよいリチウムイオン蓄電池12を用いてエンジン30の自動再始動を好適に実施できる。
【0049】
ところで、リチウムイオン蓄電池12が劣化状態であると、リチウムイオン蓄電池12の電力不足が生じるおそれがある。この劣化状態でエンジン30を自動停止させると、リチウムイオン蓄電池12を電源として実施される回転電機10によるエンジン30の再始動に支障が及ぶことが懸念される。
【0050】
そのため、エンジン30の初回始動後に、リチウムイオン蓄電池12の劣化状態として、内部抵抗RLを算出することが好ましい。内部抵抗RLは、例えば、電圧検出部16により検出された端子間電圧VLと、電流検出部15により検出された充放電電流ILとを用いて算出できる。
【0051】
エンジン30の初回始動後に内部抵抗RLを算出する際に、例えば、車両の加速に伴って回転電機10の駆動による動力アシストを行い、その際に流れる電流(放電電流)でリチウムイオン蓄電池12を通電する。そして、例えば動力アシストの開始時など、リチウムイオン蓄電池12に所定以上の電流を通電した状態で、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出することで、リチウムイオン蓄電池12の劣化状態を確認できるとも考えられる。
【0052】
しかし、動力アシスト時に流れる電流は再始動時に流れる電流よりも小さいため、動力アシスト時に流れる電流を用いて、再始動時におけるリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できない。一方、再始動時におけるリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出するために、動力アシスト時に流れる電流を再始動時に流れる電流と同程度まで大きくすると、車両への動力が過大となり、車両挙動に影響を及ぼしてしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、制御部40は、エンジン30の初回始動後において、回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態下で、回転電機10からエンジン30に動力を付与する状態(力行駆動状態)とし、その際に流れる電流でリチウムイオン蓄電池12を通電する。そして、通電により生じるリチウムイオン蓄電池12の電気変化(電流、電圧)の検出結果から、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する制御処理を実施する。
【0054】
以上のように、低効率状態下で回転電機10を力行駆動状態とすることにより、車両への動力を増大させない状態にしつつ、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させることができる。これにより、車両駆動に影響を及ぼすことなく、内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0055】
続いて、図2を用いて、本実施形態に係る制御処理について説明する。ここで、図2は、上記処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、スタータ13がオンとなり、エンジン30の初回始動が実施された状況下において、制御部40によって、例えば所定周期で繰り返し実施される。
【0056】
制御処理を開始すると、まずステップS10において、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも大きい高回転状態であるか否かを判定する。ここで、所定回転数Nthは、車両の高速状態、つまり車両に動力アシストが必要とされない状態におけるエンジン30の最小回転数であり、例えば2000回転/分である。ステップS10で否定判定すると、内部抵抗RLを算出することなく制御処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS10で肯定判定すると、ステップS12において、要求フラグFDがオンであるか否かを判定する。ここで、要求フラグFDは、内部抵抗RLの算出を要求するフラグである。具体的には、要求フラグFDは、イグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでのワントリップ中に1回オンされる。ステップS12で否定判定すると、内部抵抗RLを算出することなく制御処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS12で肯定判定すると、ステップS14において、回転電機10の駆動によりエンジン30へ動力を付与する。つまり、エンジン30の高回転状態下で、回転電機10を力行駆動状態とする。なお、本実施形態において、ステップS14の処理が「駆動制御部」に相当する。
【0059】
ステップS16において、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。つまり、エンジン30の高回転状態下で、回転電機10を力行駆動状態とした場合に、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。なお、本実施形態において、ステップS16の処理が「抵抗算出部」に相当する。
【0060】
ステップS18において、ステップS16で算出された内部抵抗RLが所定の閾値抵抗Rthよりも小さいかを判定する。ここで、閾値抵抗Rthは、エンジン30の再始動に支障が生じる抵抗値であり、リチウムイオン蓄電池12の温度毎に予め設定されている。
【0061】
ステップS18で肯定判定すると、ステップS20において、許可フラグFPをオンし、制御処理を終了する。ここで、許可フラグFPは、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給によるエンジン30の再始動を許可するフラグであり、再始動を許可する場合にオンされ、再始動を禁止する場合にオフされる。一方、ステップS18で否定判定すると、ステップS22において、許可フラグFPをオフし、制御処理を終了する。そのため、ステップS18の処理は、ステップS16で算出された内部抵抗RLに基づいて、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給による再始動を許可するか否かが判定する処理である、ということができる。なお、本実施形態において、ステップS18の処理が「再始動判定部」に相当する。
【0062】
続いて、図3に、制御処理の一例を示す。図3において、(A)は、エンジン回転数NEの推移を示し、(B)は、高回転フラグFHの推移を示し、(C)は、要求フラグFDの推移を示す。また、(D)は、充放電電流ILの推移を示し、(E)は、端子間電圧VLの推移を示し、(F)は、許可フラグFPの推移を示す。
【0063】
ここで、高回転フラグFHは、制御処理のステップS10における判定結果を示すフラグであり、ステップS10で肯定判定されるとオンとなり、ステップS10で否定判定されるとオフとなる。また、充放電電流ILは、充電電流が正となり、放電電流が負となるように記載されている。なお、本実施形態では、制御処理の開始時において、許可フラグFPはオフされている。
【0064】
図示される例では、時刻t1においてエンジン30の初回始動が実施され、車両が走行を開始すると、図3(A)に示すように、エンジン回転数NEが始動回転数Nsとなる。ここで、始動回転数Nsは所定回転数Nthよりも小さく、例えば1000回転/分である。
【0065】
その後時刻t2において、使用者のアクセル操作に伴う車両の加速により、エンジン回転数NEが増加する。一方、車両は、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも小さい低速状態であるため、図3(D),(E)に示すように、回転電機10による動力アシストが行われる。
【0066】
その後時刻t3において、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも大きくなると、図3(B)に示すように、高回転フラグFHがオンされる。これにより、回転電機10のアシスト条件が成立しなくなるため、回転電機10による動力アシストが停止される。
【0067】
その後時刻t4において、図3(C)に示すように、要求フラグFDがオンされると、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。本実施形態では、回転電機10のアシスト条件が成立しないエンジン30の高回転状態下で、回転電機10の駆動によりエンジン30に動力を付与し、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。
【0068】
この場合、エンジン30が既に高回転状態であるため、エンジン30に動力を付与してもエンジン回転数NEの上昇が抑制される。つまり、エンジン30に付与される動力に対するエンジン回転数NEの上昇量の割合で示される回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態となる。本実施形態では、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも大きい場合に、低効率状態であるとして回転電機10の駆動によりエンジン30に動力を付与し、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。
【0069】
具体的には、まず、回転電機10からエンジン30に動力が付与される前の時刻t4における充放電電流IL及び端子間電圧VLが検出される。以下、時刻t4における充放電電流IL及び端子間電圧VLを、電圧V4及び電流I4という。電圧V4は、リチウムイオン蓄電池12の開放電圧V0、電流I4、及び内部抵抗RLを用いて次の(式1)のように表される。
【0070】
V4=V0+I4×RL・・・(式1)
次に、回転電機10の駆動によりエンジン30に動力を付与する。これにより、放電電流が増大し、端子間電圧VLが低下する。そして、時刻t4から所定の経過期間が経過した時刻t5における充放電電流IL及び端子間電圧VLが検出される。以下、時刻t5における充放電電流IL及び端子間電圧VLを、電圧V5及び電流I5という。電圧V5は、リチウムイオン蓄電池12の開放電圧V0、電流I5、及び内部抵抗RLを用いて次の(式2)のように表される。
【0071】
V5=V0+I5×RL・・・(式2)
(式1)、(式2)より、内部抵抗RLは、電圧V4,V5及び電流I4,I5を用いて次の(式3)のように表される。
【0072】
RL=(I4-I5)/(V4-V5)・・・(式3)
以下、電流I4から電流I5を減算したものを、差分電流ΔIといい、電圧V4から電圧V5減算したものを、差分電圧ΔVという(図4参照)。本実施形態では、時刻t4からの経過期間が異なる複数の時刻t5において電圧V5及び電流I5を検出し、差分電流ΔIと差分電圧ΔVとの関係を示すデータを複数取得する。
【0073】
その後時刻t6において、要求フラグFDがオフされると、回転電機10からエンジン30への動力の付与を停止する。そして、取得された差分電流ΔIと差分電圧ΔVとの関係を示すデータから、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出し、算出された内部抵抗RLが閾値抵抗Rthよりも小さいかを判定する。図示される例では、算出された内部抵抗RLが閾値抵抗Rthよりも小さいため、図3(F)に示すように、時刻t6に許可フラグFPがオンされている。
【0074】
その後時刻t7において車両が減速を開始すると、エンジン回転数NEが減少する。その後時刻t8において、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも小さくなると、高回転フラグFHがオフされる。
【0075】
図4は、差分電流ΔIと差分電圧ΔVとの関係を示す図である。図4に示すように、差分電圧ΔVは差分電流ΔIに線形比例し、差分電流ΔIが大きくなるほど差分電圧ΔVが大きくなる。そして、差分電流ΔIに対する差分電圧ΔVの傾きから、内部抵抗RLが算出される。
【0076】
差分電圧ΔVは差分電流ΔIに線形比例するため、例えば図3の時刻t2から時刻t3までの動力アシスト時に流れる充放電電流IL及び端子間電圧VLを用いて、内部抵抗RLを算出することも可能であるとも考えられる。
【0077】
しかし、動力アシスト時には、大きな放電電流が流れないため、大きな差分電流ΔIが生じない。そのため、差分電流ΔIと差分電圧ΔVとの関係を示すデータとして、差分電流ΔIが小さい範囲のデータ群DXしか取得できない。データ群DXしか取得できないと、図4に破線で示すように、電圧検出部16及び電流検出部15の検出誤差により、差分電流ΔIに対する差分電圧ΔVの傾きが大きく変化してしまい、内部抵抗RLを適切に算出できない。
【0078】
本実施形態では、差分電流ΔIと差分電圧ΔVとの関係を示すデータを取得する際に、リチウムイオン蓄電池12に流れる放電電流を増大させる。これにより、差分電流ΔIが大きい範囲のデータを取得でき、図4に直線で示すように、電圧検出部16及び電流検出部15の検出誤差によらず、内部抵抗RLを適切に算出できる。
【0079】
一方、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させると、回転電機10の回転数NMが上昇し、これに伴って回転電機10のトルクTMが上昇する。回転電機10のトルクTMの上昇により、エンジン30に付与される動力、つまり車両への動力が過大となると、車両挙動に影響を及ぼし、車両挙動を適切に制御できない。
【0080】
そこで、本実施形態では、エンジン30の高回転状態下でリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させる。図5は、回転電機10の回転数NMと回転電機10のトルクTMとの関係を示す図である。図5に示すように、回転電機10は、回転数NMが大きいほど、トルクTMが小さくなる特性を有する。ここで、回転数NMはエンジン回転数NEに比例し、回転数NMが大きい状態が、エンジン30の高回転状態に相当する。そのため、エンジン30の高回転状態下でリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させると、回転電機10に発生するトルクTMが小さいためにエンジン回転数NEの上昇が抑制される。その結果、車両への動力付与が抑制され、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0081】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0082】
・アイドリングストップ機能を備える車両では、鉛蓄電池11の電力を用いた初回始動の後、リチウムイオン蓄電池12の電力を用いた再始動が適宜行われる。この場合、リチウムイオン蓄電池12の劣化等の状態を把握した上で、エンジン30の自動停止が行われることが望ましい。この点、本実施形態では、回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態で、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給により回転電機10からエンジン30に動力を付与した場合に、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出するようにした。低効率状態下で回転電機10からエンジン30に動力を付与することにより、低効率状態でない条件下で回転電機10からエンジン30に動力を付与する場合に比べて、車両への動力を増大させない状態にしつつ、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させることができる。これにより、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0083】
・回転電機10は、所定のアシスト条件が成立した場合に動力アシストを行い、アシスト条件が成立しない場合に動力アシストを行わない。本実施形態では、この動力アシストを行わない回転電機10の休止期間に、低効率状態で回転電機10からエンジン30に動力を付与し、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。これにより、休止期間の回転電機10を有効活用して、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0084】
・具体的には、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも大きい場合、回転電機10の休止期間(図3 時刻t3~t8)となる。この休止期間では、エンジン回転数NEが所定回転数Nthよりも大きいため、所定回転数Nthよりも小さい場合に比べて、車両への動力付与によるエンジン回転数NEの上昇量が抑制される。つまり、回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、この休止期間にリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0085】
・本実施形態では、算出された内部抵抗RLに基づいて、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給によるエンジン30の再始動を許可するか否かを判定する。そのため、リチウムイオン蓄電池12の劣化等の状態を把握した上で、アイドリングストップ制御を適正に実施できる。
【0086】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図6及び図7を参照しつつ説明する。
【0087】
本実施形態では、制御処理が第1実施形態と異なる。本実施形態の制御処理では、回転電機10の温度YMに基づいてリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させる点で、第1実施形態の制御処理と異なる。
【0088】
図6には、本実施形態に係る制御処理のフローチャートを示す。図6において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、制御処理を開始すると、まずステップS30において、回転電機10の温度YMが所定温度Ythよりも高い高温状態であるか否かを判定する。ここで、所定温度Ythは、回転電機10の熱損失HLが過大となり、回転電機10の効率が所定以下となる最低温度である。ステップS10で否定判定すると、内部抵抗RLを算出することなく制御処理を終了する。一方、ステップS10で肯定判定すると、ステップS12に進む。
【0090】
本実施形態では、回転電機10の高温状態下でリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させる。図7は、回転電機10の温度YMと回転電機10の熱損失HLとの関係を示す図である。図7に示すように、回転電機10は、温度YMが高いほど、熱損失HLが大きくなる特性を有する。そのため、回転電機10の高温状態下でリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させると、熱損失HLが大きいためにエンジン回転数NEの上昇が抑制され、車両への動力付与が抑制される。その結果、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0091】
・以上説明した本実施形態によれば、回転電機10の温度YMが所定温度Ythよりも高い高温状態である場合に、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。回転電機10の温度YMが所定温度Ythよりも高い場合、回転電機10の熱損失HLにより、回転電機10の温度YMが所定温度Ythよりも低い場合に比べて、車両への動力によるエンジン回転数NEの上昇量が抑制される。つまり、回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、回転電機10の高温状態でリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0092】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図8を参照しつつ説明する。
【0093】
本実施形態では、制御処理が第1実施形態と異なる。本実施形態の制御処理では、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させる際に、回転電機10のd軸及びq軸のうちd軸にのみ電流を流す点で、第1実施形態の制御処理と異なる。
【0094】
図8には、本実施形態に係る制御処理のフローチャートを示す。図8において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
本実施形態では、制御処理を開始すると、まずステップS12において、要求フラグFDがオンであるか否かを判定する。ステップS12で否定判定すると、内部抵抗RLを算出することなく制御処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS12で肯定判定すると、ステップS40において、回転電機10のq軸電流Iqをゼロに設定し、ステップS14に進む。これにより、ステップS14で回転電機10を力行駆動状態とする際に、回転電機10にはd軸電流Idのみが流れる状態となる。なお、「力行駆動状態」には、回転電機10の電機子巻線に対して、回転電機10からエンジン30への動力の付与を行わせるべく通電を行う状態に加え、エンジン30への動力の付与が生じない状態での通電を行う状態が含まれる。
【0097】
本実施形態では、回転電機10にd軸電流Idのみを流してリチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させる。回転電機10にd軸電流Idのみが流れる場合、回転電機10にトルクTMが発生しないため、エンジン回転数NEの上昇が抑制される。その結果、車両への動力付与が抑制され、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0098】
・以上説明した本実施形態によれば、回転電機10にd軸電流Idのみが流れる状態で、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出する。回転電機10にd軸電流Idのみが流れる状態では、回転電機10にトルクTMが発生しないため、エンジン回転数NEの上昇量が抑制される。つまり、回転電機10の効率が所定以下となる低効率状態となる。そのため、回転電機10にd軸電流Idのみが流れる状態でリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出することで、車両駆動に影響を及ぼすことなく、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを適正に算出できる。
【0099】
・本実施形態では、回転電機10にトルクTMが発生しないため、車両の停止状態でもリチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出できる。そのため、エンジン30の初回始動後、リチウムイオン蓄電池12の電力を用いた再始動が行われる前までの期間に、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出できる。
【0100】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0101】
・上記実施形態において、エンジン30の初回始動に鉛蓄電池11を使用し、エンジン30始動の際にリチウムイオン蓄電池12を使用する例を示したが、各始動に使用される電池の種類はこれに限らない。エンジン30の初回始動時には、初回始動の際の大電流放電に対して安定した電圧を出力できる蓄電池が使用されればよく、エンジン30の再始動の際には、累積充放電に対する耐久性の高い蓄電池が使用されればよい。例えば、第2蓄電池としては、ニッケル水素蓄電池を使用してもよい。また、第1蓄電池と第2蓄電池とは同じ種類の蓄電池であってもよい。
【0102】
・上記実施形態において、回転電機10が発電機能と力行機能との両方の機能を備えている例を示したが、回転電機10が力行機能のみを備えていてもよい。
【0103】
・上記実施形態において、低効率状態として、エンジン30の高回転状態、回転電機10の高温状態、及び回転電機10にd軸電流Idのみが流れる状態を別々に用いる例を示したが、これらを組み合わせて用いてもよい。例えば、これら3つの状態のうち2つの状態が成立した場合に、低効率状態であると判定してもよい。具体的には、エンジン30の高回転状態下、且つ回転電機10の高温状態下で回転電機10からエンジン30に動力を付与し、リチウムイオン蓄電池12に流れる充放電電流ILを増大させてもよい。
【0104】
・また、これら3つの状態を、相補的に用いてもよい。例えば、エンジン30の初回始動後、所定期間内にエンジン30の高回転状態と回転電機10の高温状態とのいずれの状態にもならないと判定された場合に、回転電機10にd軸電流Idのみが流れる状態としてもよい。これにより、エンジン30の初回始動後、リチウムイオン蓄電池12の電力を用いた再始動が行われる前までの期間に、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを算出しやすい。
【0105】
・上記実施形態において、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを、リチウムイオン蓄電池12からの電力供給によるエンジン30の再始動を許可するか否かの判定に用いる例を示したが、これに限られず、例えばリチウムイオン蓄電池12の劣化判定など、他の用途に用いられてもよい。
【0106】
・上記実施形態において、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLが閾値抵抗Rth以上である場合に、エンジン30が再始動されない例を示したが、これに限られない。例えば、リチウムイオン蓄電池12に代えて鉛蓄電池11からの電力供給によりエンジン30が再始動されてもよい。これにより、リチウムイオン蓄電池12の劣化状態においても、アイドリングストップ制御を適切に実施することができる。
【0107】
・リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLとリチウムイオン蓄電池12の温度とには相関関係がある。そこで、上記第1実施形態において、リチウムイオン蓄電池12の温度を検出する温度検出部を設け、温度検出部による温度の検出結果に基づいて、算出される内部抵抗RLを補正してもよい。例えば、リチウムイオン蓄電池12の温度が高くなるほど、内部抵抗RLが減少するように補正する。これにより、内部抵抗RLの算出精度を高めることができる。
【0108】
・上記第1実施形態において、要求フラグFDがオンされるタイミングは高回転フラグFHがオンされるタイミングよりも早くてもよい。例えば、エンジン30の初回始動が実施されるのと同時に要求フラグFDがオンされてもよい。これにより、リチウムイオン蓄電池12の内部抵抗RLを早期に算出できる。
【符号の説明】
【0109】
10…回転電機、11…鉛蓄電池、12…リチウムイオン蓄電池、30…エンジン、40…制御部、100…電源システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8