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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】自律走行作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20221213BHJP
   A01B 63/06 20060101ALI20221213BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A01B69/00 303G
A01B63/06
A01B63/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019106010
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020198789
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 裕真
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191857(JP,A)
【文献】特開2017-209069(JP,A)
【文献】特開平09-168308(JP,A)
【文献】特開2017-209070(JP,A)
【文献】特開平09-168313(JP,A)
【文献】特開平09-047110(JP,A)
【文献】特開2016-093127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0257569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01B 63/00 - 63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(10)に搭載したエンジン(321)の出力で駆動するPTO軸(392)で作業機を駆動する自律走行作業車において、前記走行車体(10)に設けるナビシステム(290)で算出する実走行速度と走行駆動装置(220)に設ける車速センサ(296)で算出する駆動走行速度を比較し、実走行速度が駆動走行速度より所定以上遅いスリップ走行状態の場合に、前記作業機を駆動する前記PTO軸(392)の駆動を停止することを特徴とする自律走行作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を自律で走行して農作業を行う自律走行作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場の自律走行作業車として、耕耘作業を行うトラクタや苗の移植作業を行う苗移植機や米や麦等の穀粒を収穫するコンバイン等がある。
【0003】
特許文献1には、自律走行作業車として耕耘作業機を連結したトラクタで、自律走行時に走行予定経路から逸脱すると走行車体の走行速度を減速させて進路修正が行えるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-41619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場を走行して農作業を行う自律走行作業車は、走行予定経路からの逸脱だけでなく、泥地走行のために走行輪がスリップして、耕耘が過度に行われたり苗の移植間隔が短くなったり等で均一な農作業が行われないことがある。
【0006】
本発明は、圃場を自律走行する作業車で、走行装置のスリップ状態が生じて走行速度が遅くなっても均一な農作業が行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
本発明は、走行車体(10)に搭載したエンジン(321)の出力で駆動するPTO軸(392)で作業機を駆動する自律走行作業車において、前記走行車体(10)に設けるナビシステム(290)で算出する実走行速度と走行駆動装置(220)に設ける車速センサ(296)で算出する駆動走行速度を比較し、実走行速度が駆動走行速度より所定以上遅いスリップ走行状態の場合に、前記作業機を駆動する前記PTO軸(392)の駆動を停止することを特徴とする自律走行作業車である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体10に搭載したエンジン321の出力で駆動するPTO軸392で作業機を駆動する自律走行作業車において、走行車体10に設けるナビシステム290で算出する実走行速度と走行駆動装置220に設ける車速センサ296で算出する駆動走行速度を比較し、実走行速度が駆動走行速度より所定以上遅いスリップ走行状態の場合に走行負荷低減制御を行うことを特徴とする自律走行作業車とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、走行負荷低減制御として、作業機を浮上させることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自律走行作業車とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、走行負荷低減制御として、作業機を駆動するPTO軸392の駆動を停止することを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自律走行作業車とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、走行負荷低減制御として、エンジン321の回転を低下することを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自律走行作業車とする。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、スリップ走行状態が解消されない場合は、走行駆動装置220を停止することを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自律走行作業車とする。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、走行駆動装置220の停止後に、作業機を上昇させ、エンジン321の駆動を停止することを特徴とする本発明に関連する第5の発明の自律走行作業車とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、PTO軸392の駆動を停止することで作業機の駆動負荷がなくなりエンジン321の全駆動力が走行駆動装置220に伝わり前進推進力が回復してスリップ走行状態を解消できる。
本発明に関連する第1の発明で、作業車は走行駆動装置220に設ける車速センサ296で算出する駆動走行速度で走行する筈であるが、走行車体10の経緯度を測るナビシステム290で算出する実走行速度が駆動走行速度に達していないと車輪やクローラ等の走行装置がスリップしているスリップ走行状態と判定出来るので、走行負荷低減制御が行われて前進推進力が回復して走行駆動装置220の駆動走行速度が実走行速度に近づいて均一な農作業になる。
【0015】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、農作業が耕耘作業である場合に、耕耘作業機を浮上させることで耕耘抵抗が少なくなって前進推進力が回復してスリップ走行状態を解消できて、均一な耕耘作業になる。
【0016】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、PTO軸392の駆動を停止することで作業機の駆動負荷がなくなりエンジン321の全駆動力が走行駆動装置220に伝わり前進推進力が回復してスリップ走行状態を解消できる。
【0017】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、エンジン321の回転を低下して走行駆動装置220の前進推進力を弱くすることで走行装置のスリップを無くしてスリップ走行状態を解消できる。
【0018】
本発明に関連する第5の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、スリップ走行状態を解消できない場合に走行を停止させて部分的に過度な農作業を中断できる。
【0019】
本発明に関連する第6の発明で、本発明に関連する第5の発明の効果に加えて、スリップ走行状態を解消できない場合にエンジン321を停止させて自律走行を中断して待機状態にして、作業者の処置を待つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るトラクタの概略側面図である。
図2】走行車体の説明図である。
図3】走行車体の動力伝達経路を示す図である。
図4】トラクタの制御系を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係るトラクタの自動走行制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、実施例の説明においては、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0022】
本実施形態に係る圃場作業車であるトラクタ1の構成について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るトラクタ1の概略側面図である。
【0023】
トラクタ1は、走行車体10と、車両制御部100と、通信ユニット110とを備える。トラクタ1は、作業者が有する端末装置2、例えば、リモコンや、携帯通信端末から通信ユニット110によって信号を受信し、自動走行し、作業可能なトラクタである。すなわち、トラクタ1は、遠隔操作可能なトラクタである。
【0024】
走行車体10は、図示しないステアリングハンドルや操作ペダルおよび各種計器類が設けられた操縦部を備えるとともに、図示しない耕耘作業機を後部に連結可能に構成される。走行車体10の天井部には、複数の航法衛星60から送信される電波を受信するDGPS(Differential Global Positioning System)アンテナ6が設けられる。なお、走行車体10には、耕耘作業機以外の作業装置を連結することができる。
【0025】
走行車体10について図2および図3を参照して説明する。図2は、走行車体10の説明図である。図3は、走行車体10の動力伝達経路を示す図である。
【0026】
走行車体10は、図2および図3に示すような動力伝達機構をはじめとする各種機構を備える。すなわち、図2に示すように、走行車体10は、左右側それぞれに、左右の前車軸406L,406Rに取付けられた前輪301L,301Rと、左右の後車軸405L,405Rに取付られた左右の後輪302L,302Rとを備える。なお、以下では、符号にLを付して左側を、Rを付して右側を示すことにするが、左右を区別する必要が無い場合は、例えば、前輪301、後輪302などのように記す場合がある。
【0027】
走行車体10の前部には、動力源となるエンジン321が搭載されており、エンジン321から動力伝達機構を介して前輪301や後輪302へ動力が伝達される。なお、本実施形態に係るトラクタ1は、4WDクラッチ324を備えており、この4WDクラッチ324の切換えによって、後輪302のみ駆動する2WD方式と、前輪301および後輪302が共に駆動する4WD方式とに切換え自在に構成されている。
【0028】
後輪302への動力伝達機構は、エンジン321の後段に、前後進クラッチ322を介して主変速部323が配設され、さらにその後段に副変速部325が配設され、その後段には後輪差動歯車装置326が配設される。そして、この後輪差動歯車装置326と後輪302とを連結する後車軸405の基部には、それぞれブレーキ装置312を設けている。
【0029】
また、副変速部325の後段に設けられたアイドルギヤを介して変速軸404へ入力され、4WDクラッチ324、前輪差動歯車装置320を介して前輪301への動力伝達がなされる。
【0030】
本実施形態に係るトラクタ1は、自動走行ができるように、車両制御部100により制御される自動走行ユニット160(図4参照)を備えている。そして、車両制御部100には、前輪301の操舵角を検出する操舵角検出センサ304が接続されており、自動走行時は、検出された実際の前輪301の操舵角をフィードバックしながら車両制御部100がステアリングシリンダ303を制御して操舵するようにしている。
【0031】
後輪302に設けたブレーキ装置312は、機体に設けたブレーキペダル310を操縦者が踏み込むことで、ブレーキシリンダ311が油圧により作用して機能する。すなわち、左後車軸405Lの基部に設けた左ブレーキ装置312Lを左ブレーキシリンダ311Lに接続するとともに、右後車軸405Rの基部に設けた右ブレーキ装置312Rを右ブレーキシリンダ311Rに接続する。
【0032】
図示するように、左右のブレーキシリンダ311L,311Rは、車両制御部100に接続した左右のブレーキソレノイド330L,330Rと接続している。そのため、車両制御部100に所定のブレーキ信号が入力されると、車両制御部100は、ブレーキソレノイド330を駆動して、左右のブレーキ装置312L,312Rのいずれか一方または両方を作動させることができる。なお、ブレーキソレノイド330は、例えば、油圧ポンプ341、リリーフバルブ340などとともに油圧回路を構成する。
【0033】
次に、図3を参照しながら、トラクタ1のエンジン321から前輪301、後輪302までの動力の伝達経路について説明する。図示するように、エンジン321の出力軸は、前・後進を切り換える前後進クラッチ322を介して動力伝達軸401と連結している。したがって、トラクタ1は、前後進クラッチ322を切換えることによって、動力伝達軸401を選択的に正逆転することができる。
【0034】
また、動力伝達軸401は、主変速部323、副変速部325に連結されている。すなわち、主変速部323および副変速部325は、エンジン321から後輪302(前輪301および後輪302)へ動力を伝達する動力伝達経路上に配置される。
【0035】
主変速部323には、第1クラッチギヤ361と第3クラッチギヤ363とを有する一速/三速切換用クラッチ402と、第2クラッチギヤ362と第4クラッチギヤ364とを有する二速/四速切換用クラッチ403とが装着され、エンジン321からの動力を1速~4速に変速して出力可能としている。
【0036】
さらに、主変速部323は、高低クラッチ365を装着しており、1速~4速を、それぞれさらに高速あるいは低速に切換え可能としている。
【0037】
主変速部323の動力が入力される副変速部325には、図示しない副変速レバーで操作される二連の副変速クラッチの第1のシフター381と第2のシフター382と複数の伝達ギヤとを備える。第1のシフター381と第2のシフター382とがいずれの伝達ギヤと係合するかにより、超低速、低速、中速および高速とに変速することができる。そして、副変速部325の出力軸の回転が、後輪差動歯車装置326から車軸および後輪遊星歯車機構391を介して後輪302へ伝動される。
【0038】
また、主変速部323から副変速部325へ入力される動力が、アイドルギヤを介して4WDクラッチ324を装備した変速軸404へ入力されることにより、前輪301への駆動力伝動がなされる。4WDクラッチ324の作用により、通常の前輪駆動から加速された前輪駆動への切り換えも可能となっている。なお、4WDクラッチ324を中立にすると、前輪301の駆動が断たれて後輪302のみの駆動、すなわち2WDとなる。
【0039】
こうして、4WDクラッチ324の後段部に伝達された動力は、前輪差動歯車装置320と前輪遊星歯車機構390とを介して前輪301へと伝達される。
【0040】
また、走行車体10は、主変速部323や副変速部325などの変速機構を介さずに、エンジン321から耕耘作業機に動力を伝達する作業用動力伝達機構360を備える。具体的には、走行車体10は、PTO(Power Take Off)クラッチ366を備えており、PTOクラッチ366を繋ぐことで、主変速部323などを介さずに、エンジン321からPTO軸392へ動力を伝達することができる。
【0041】
PTO軸392は、前段側にPTO変速第1シフター371およびPTO変速第2シフター372が設けられており、これらが操作されることにより、低速から高速でPTO軸392を順回転させることができるとともに、逆転させることも可能となっている。
【0042】
次に、本実施形態に係るトラクタ1の制御系について図4を参照し説明する。図4は、トラクタの制御系を示すブロック図である。
【0043】
本実施形態に係るトラクタ1は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、制御系の中核をなす車両制御部100を備える。車両制御部100は、端末装置2からの指令信号を通信ユニット110を介して受信することにより、自動走行ユニット160を制御して自動走行することができる。
【0044】
トラクタ1が備える車両制御部100は、各種プログラムや各種の必要データ類が格納された、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶装置140と、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部をはじめROM,RAMなどで構成される複数のコントローラ120,130,150を備える。
【0045】
コントローラ120,130,150としては、例えば、走行系を制御する走行系コントローラ120、エンジン321を制御するエンジンコントローラ130、機体後部に連結する耕耘作業機を制御する作業機系コントローラ150などがある。
【0046】
走行系コントローラ120、エンジンコントローラ130、および作業機系コントローラ150は、これらについても、いずれもCPUなどを有する処理部や、制御プログラムが格納されるROM、作業領域用のRAMなどのストレージ部、さらには入出力部が設けられており、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能となっている。なお、ストレージ部のROMには、各コントローラ120,130,150の制御対象に応じた制御プログラムなどがそれぞれ格納される。
【0047】
また、車両制御部100には、非常停止スイッチ210、ステアリング駆動用モータ(不図示)や図2および図3に示した伝動機構を含む走行駆動装置220と、例えば第1障害物検出センサ231aや第2障害物検出センサ231bや、操舵角検出センサ304などを含む走行系各種センサ230が接続される。さらに、車両制御部100には、DGPSアンテナ6(図1参照)を含むナビシステム290や方位センサ295、車速センサ296などが接続される。
【0048】
第1障害物検出センサ231aは、例えば、超音波センサであり、走行車体10の進行方向、例えば、走行車体10の前方または側方の第1所定範囲内にある障害物を検出するセンサである。第2障害物検出センサ231bは、例えば、赤外線センサであり、走行車体10の進行方向、例えば、走行車体10の前方または側方の第2所定範囲内にある障害物を検出するセンサである。第1所定範囲および第2所定範囲は、予め設定された範囲であり、第2所定範囲は、第1所定範囲よりも狭い範囲である。なお、第1障害物検出センサ231aおよび第2障害物検出センサ231bは、障害物検出のための画像処理判定プログラム用の映像を撮影するカメラやその他のセンサであってもよい。
【0049】
ナビシステム290は、DGPSアンテナ6が受信する電波で走行車体10の経緯度を測定して圃場における位置を圃場地図上に表示すると共に、走行車体10の走行に伴う実走行速度を算出する。
【0050】
方位センサ295は、走行車体10の進行方向の方位を検出し、車速センサ296は、後輪302の動力伝動機構に組み込まれて後輪302の回転数から駆動走行速度を算出する。従って、前記ナビシステム290が算出する実走行速度と車速センサ296の表示する駆動走行速度は一致するのであるが、後輪302に滑りが生じると実走行速度が駆動走行速度より遅くなるスリップ走行状態となる。
スリップ走行状態になると作業機が同じ場所で耕耘を繰り返す等の過度な農作業となるので、これを防ぐために、作業機系コントローラ150がPTOクラッチ366を切って作業機の駆動を停止させたり、エンジンコントローラ130がエンジン321の回転を低下させたり、作業機系コントローラ150が作業機を浮かせたりする走行負荷低減制御を実行する。
それでもスリップ走行状態が解消されないと、走行駆動装置220を停止させ、作業機を大きく上昇させてエンジン321の駆動を停止して、通信ユニット110から作業者が持っている端末装置2に通報して作業者が対処するのを待つ。
【0051】
また、車両制御部100には、作業機昇降装置(不図示)などを含む作業機昇降駆動装置240、PTOクラッチ366を入り切り操作するPTO入・切操作スイッチ250、耕耘作業機を制御するために必要な作業機系・PTO駆動用各種センサ260、また、エンジン駆動装置270やエンジン駆動用各種センサ280などが接続される。
【0052】
こうして、トラクタ1は、作業者が機体に搭乗して走行しながら所定の作業を実行するほか、端末装置2を操作して自動走行ユニット160の駆動を車両制御部100により制御することで、自動走行させながら所定の作業を実行させることができる。
【0053】
トラクタ1を自動走行させる場合、例えば、作業内容に応じた走行予定経路を予め圃場毎に定めておき、これをデータ化して記憶装置140に格納しておく。走行予定経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、そして作物の種類などに応じて設定される。
【0054】
車両制御部100は、ナビシステム290で走行車体10の圃場地図上の位置を検出し、検出した現在位置に基づいて実際の走行経路を算出する。そして、車両制御部100は、実際の走行経路が走行予定経路に一致するようにステアリングシリンダ303およびエンジン321を制御する。
【0055】
なお、トラクタ1の自動走行については、本実施形態のように端末装置2を介して車両制御部100により実行させる他、適宜設定することができる。
【0056】
次に、トラクタ1を遠隔操作可能な端末装置2の構成について説明する。図4に示すように、端末装置2は、トラクタ1の通信ユニット110と無線通信が可能である。また、端末装置2は、操作部として、トラクタ1を走行させるための前進「入・切」スイッチ21および後進「入・切」スイッチ22と、エンジン321の回転数を切換えるENG回転数スイッチ24と、トラクタ1を緊急停止させることが可能な車両停止スイッチ26とを備える。
【0057】
また、端末装置2は、耕耘作業機を操作するためのPTO「入・切」スイッチ23と、作業機「上・下」スイッチ25とを備える。
【0058】
作業者は、端末装置2を操作することにより、トラクタ1を所定の速度で前進・後進させるとともに、停止させたりすることができるほか、耕耘作業機を上昇、下降させて所定の動力で作業させることができる。
【0059】
次に、本実施形態に係るトラクタ1の自動走行制御について図5のフローチャートを参照し説明する。ここでは、トラクタ1が自動走行を行っているものとする。
【0060】
車両制御部100は、ナビシステム290からの信号に基づいて走行車体10の現在位置を検出する(S100)。車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との位置を比較し、現在位置と走行予定経路との距離を算出する(S101)。具体的には、車両制御部100は、走行予定経路と、走行車体10(DGPSアンテナ6)の現在位置との距離を現在位置と走行予定経路との距離として算出する。
【0061】
また、車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離と、予め設定された第1所定値とを比較する(S102)。第1所定値は、走行車体10が走行予定経路に対して逸脱していると判定可能な、走行予定経路と走行車体10(DGPSアンテナ6)との距離である。すなわち、車両制御部100は、自動走行時に、走行車体10が走行予定経路から逸脱したか否かを判定する。
【0062】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離が第1所定値以上の場合には(S102:Yes)、走行車体10が走行予定経路から逸脱したと判定し、走行車体10を減速させる(S103)。具体的には、車両制御部100は、主変速部323または副変速部325をダウンシフトすることで、走行車体10を減速させる。なお、ここでの減速は、走行車体10を停止させることを前提とするものではない。
【0063】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離が第1所定値よりも小さい場合には(S102:No)、走行車体10が走行予定経路から逸脱していないと判定し、今回の処理を終了する。
【0064】
車両制御部100は、ナビシステム290からの信号に基づいて走行車体10の現在位置を検出する(S104)。
【0065】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との位置を比較し、現在位置と走行予定経路との距離を算出する(S105)。
【0066】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離と、予め設定された第2所定値とを比較する(S106)。第2所定値は、第1所定値よりも小さい値であり、現在位置が走行予定経路に略一致していると判定できる値である。すなわち、車両制御部100は、自動走行により、走行車体10の走行経路が修正され、走行予定経路に略一致したか否かを判定する。
【0067】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離が第2所定値以下の場合には(S106:Yes)、走行車体10を加速させる(S107)。具体的には、車両制御部100は、主変速部323または副変速部325をアップシフトすることで、走行車体10を加速させる。車両制御部100は、走行車体10の車速が、減速させる前の車速となるように加速させる。
【0068】
なお、車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離が第2所定値以下となる状態が予め設定された所定時間継続した場合、または現在位置と走行予定経路との距離が第2所定値以下となる状態が予め設定された所定走行距離継続した場合に、走行車体10を加速させてもよい。
【0069】
車両制御部100は、現在位置と走行予定経路との距離が第2所定値よりも大きい場合には(S106:No)、減速を継続し、現在位置を検出する(S104)。
【符号の説明】
【0070】
10 走行車体
220 走行駆動装置
290 ナビシステム(測位装置)
296 車速センサ
321 エンジン
392 PTO軸
図1
図2
図3
図4
図5