(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20221213BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20221213BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221213BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20221213BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221213BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B7/022
B32B27/00 B
H01L23/14 R
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019114937
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(72)【発明者】
【氏名】松本 千晴
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074788(JP,A)
【文献】特開2019-019231(JP,A)
【文献】特開2015-061720(JP,A)
【文献】国際公開第2014/003044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 23/14、23/28-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持体と、該第1支持体に接合した樹脂組成物層と、
第2支持体と、を含む樹脂シートであって、
樹脂シートが、第1支持体、樹脂組成物層、及び第2支持体をこの順で備え、
第1支持体の23℃における弾性率と第2支持体の23℃における弾性率との差(第2支持体の弾性率-第1支持体の弾性率)が、2GPa以上4GPa以下であり、
樹脂組成物層の厚みが、60μm以上であり、
支持体の一以上の面内方向における比L
A/L
Bが、1.005以上1.2以下の関係を満たし、
L
Aが、樹脂組成物層と接合しているときの前記面内方向における第1支持体の長さを表し、
L
Bが、樹脂組成物層から剥離した後の前記面内方向における第1支持体の長さを表す、樹脂シート。
【請求項2】
第1支持体と、該第1支持体に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
樹脂組成物層の厚みが、60μm以上であり、
樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度が、7500poise以下であり、
支持体の一以上の面内方向における比L
A
/L
B
が、1.005以上1.2以下の関係を満たし、
L
A
が、樹脂組成物層と接合しているときの前記面内方向における第1支持体の長さを表し、
L
B
が、樹脂組成物層から剥離した後の前記面内方向における第1支持体の長さを表す、樹脂シート。
【請求項3】
樹脂シートが、第1支持体、樹脂組成物層、及び第2支持体をこの順で備える、請求項
2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度が、1000poise以上20000poise以下である、請求項
1に記載の樹脂シート。
【請求項5】
樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度をM(poise)とし、樹脂組成物層の厚みをT(μm)としたとき、M/Tが、5以上200以下の関係を満たす、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂シートにおける樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層を含む、回路基板。
【請求項7】
請求項
6に記載の回路基板と、前記回路基板に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項8】
半導体チップと、前記半導体チップを封止する請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂シートにおける樹脂組成物層の硬化物とを含む、半導体チップパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。さらには、本発明は、樹脂シートを使用した、回路基板、及び半導体チップパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら電子機器の封止層や絶縁層として用いられ得る絶縁材料も更なる高機能化が求められている。
【0003】
絶縁材料は、一般に支持体に樹脂組成物層が設けられた樹脂シートが用いられ、例えば特許文献1には、回路基板に含まれる部品を封止するために用いられる、支持体に絶縁材料である樹脂組成物層が設けられた封止用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂シートにおける樹脂組成物層を封止層として用いる場合、樹脂組成物層の厚さが不足して電子機器の内蔵部品を十分に封止できない場合があるため、樹脂組成物層の厚さを厚くすることがある。
【0006】
しかし、樹脂組成物層の厚さが厚いと、樹脂組成物層の外観不良が起こることがあった。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、樹脂組成物層の厚さが厚くても樹脂組成物層の外観不良が抑制された樹脂シート;当該樹脂シートを用いた回路基板、及び半導体チップパッケージ;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、樹脂組成物の外観不良が、支持体に生じた皺が樹脂組成物層に転写されて形成されることを見い出した。そして、本発明者は、樹脂組成物層と接合しているときの支持体の長さ、及び支持体を樹脂組成物層から剥離した後の支持体の長さが所定の関係を満たす樹脂シートは、支持体における皺の形成を抑制できるので、樹脂組成物層の厚さが厚くても樹脂組成物層の外観不良が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の内容を含む。
[1] 第1支持体と、該第1支持体に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
樹脂組成物層の厚みが、60μm以上であり、
支持体の一以上の面内方向における比LA/LBが、1.005以上1.2以下の関係を満たし、
LAが、樹脂組成物層と接合しているときの前記面内方向における第1支持体の長さを表し、
LBが、樹脂組成物層から剥離した後の前記面内方向における第1支持体の長さを表す、樹脂シート。
[2] 樹脂シートが、第1支持体、樹脂組成物層、及び第2支持体をこの順で備える、[1]に記載の樹脂シート。
[3] 樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度が、1000poise以上20000poise以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] 樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度をM(poise)とし、樹脂組成物層の厚みをT(μm)としたとき、M/Tが、5以上200以下の関係を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂シート。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の樹脂シートにおける樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層を含む、回路基板。
[6] [5]に記載の回路基板と、前記回路基板に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
[7] 半導体チップと、前記半導体チップを封止する[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂シートにおける樹脂組成物層の硬化物とを含む、半導体チップパッケージ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂組成物層の厚さが厚くても樹脂組成物層の外観不良が抑制された樹脂シート;当該樹脂シートを用いた回路基板、及び半導体チップパッケージ;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の樹脂シートの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の樹脂シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂シートについて詳細に説明する前に、樹脂組成物層を形成する際に使用する樹脂組成物について説明する。
【0014】
樹脂組成物層を形成する際に使用する樹脂組成物は、その硬化物が十分な絶縁性を有するものであり得る。一実施形態において、樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(B)無機充填材、(C)硬化促進剤、(D)熱可塑性樹脂、(E)両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー、(F)エラストマー及び(G)その他の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0015】
<(A)硬化性樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として、(A)硬化性樹脂を含有する。(A)硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用され得る硬化性樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0016】
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(A)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を、まとめて「硬化剤」ということがある。樹脂組成物としては、(A)成分として、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが好ましい。
【0017】
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
樹脂組成物は、(A)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0019】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0020】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0022】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0025】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:15、特に好ましくは1:0.5~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、接着フィルムの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0027】
(A)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0028】
(A)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0029】
(A)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
【0030】
(A)成分としての活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0031】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0032】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0033】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0034】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0035】
(A)成分としてのフェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0036】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0037】
(A)成分としてのベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0038】
(A)成分としてのシアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0039】
(A)成分としてのカルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0040】
(A)成分としてのアミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0041】
(A)成分としての酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0042】
(A)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(B)成分として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる絶縁層を得ることができる。
【0043】
(A)成分としての硬化剤の含有量は、柔軟性に優れる絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0044】
<(B)無機充填材>
樹脂組成物は、任意の成分として(B)成分として無機充填材を含有していてもよい。(B)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0046】
(B)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0047】
(B)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(B)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0048】
(B)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0049】
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0050】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0051】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0052】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及び樹脂シート層での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0053】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0054】
(B)無機充填材の含有量は、誘電正接の低い絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0055】
<(C)硬化促進剤>
樹脂組成物は、任意の成分として(C)硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0057】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0058】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0059】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0060】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0061】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0062】
(C)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0063】
<(D)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、任意の成分として(D)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは38000以上、より好ましくは40000以上、さらに好ましくは42000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0065】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0066】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0067】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0068】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0069】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0070】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0071】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0072】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0073】
中でも、(D)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましく、重量平均分子量が40,000以上のフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0074】
(D)熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0075】
<(E)両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー>
樹脂組成物は、(E)両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを含有していてもよい。本願明細書において、両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーとは、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメントとを含むブロックコポリマーを言う。(E)成分を樹脂組成物に含有させることで樹脂組成物の靱性向上、応力緩和性能を向上させることができ、これにより樹脂組成物の硬化物の反り量を低減することができる。
【0076】
エポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントとしては、例えばアルキレンオキシドから誘導されるエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントが挙げられる。アルキレンオキシドから誘導されるエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントとしては、例えば、ポリエチレンオキシドブロック、ポリプロピレンオキシドブロック、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(エチレンオキシド-ran-プロピレンオキシド)ブロック、及びそれらの混合物から選択される1種以上を含むポリアルキレンオキシドブロックが好ましく、ポリエチレンオキシドブロックがより好ましい。
【0077】
エポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとしては、例えば、アルキレンオキシドから誘導される少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメント等が挙げられる。アルキレンオキシドから誘導される少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメントとしては、例えば、ポリブチレンオキシドブロック、1,2-エポキシヘキサンから誘導されるポリヘキシレンオキシドブロック、1,2-エポキシドデカンから誘導されるポリドデシレンオキシドブロック、及びそれらの混合物から選択される1種以上のポリアルキレンオキシドが好ましく、ポリブチレンオキシドブロックがより好ましい。
【0078】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、1種以上のエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントを有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントを有することより好ましい。同様に、1種以上のエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを有することがより好ましい。従って、(E)成分は、例えば、ジブロック、直鎖トリブロック、直鎖テトラブロック、高次マルチブロック構造、分岐ブロック構造、星型ブロック構造、及びそれらの組合せから成る群から選択されるエポキシ樹脂混和性ブロックセグメント、又はエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを有することが好ましい。
【0079】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、その効果を損なわない範囲で、分子中に他のセグメントを含有してもよい。他のセグメントとしては、例えば、ポリエチレンプロピレン(PEP)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサン、ポリブチレンオキシド、ポリヘキシレンオキシド、ポリエチルヘキシルメタクリレート等のポリアルキルメチルメタクリレート、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0080】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの数平均分子量は、好ましくは3,000~20,000である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0081】
両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、例えば、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ブチレンオキシド)(PEO-PBO);ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(ブチレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PBO-PEO)等の両親媒性ポリエーテルトリブロックコポリマー等が挙げられる。両親媒性ブロックコポリマーは市販品を用いることもできる。市販品としては、例えばThe Dow Chemical Company社製の「Fortegra100」(PEO-PBO-PEO)等が挙げられる。
【0082】
(E)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、割れ性等を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0083】
<(F)エラストマー>
樹脂組成物は、任意の成分として(F)エラストマーを含有していてもよい。(F)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
(F)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、ポリブタジエン構造、及びポリアルキレンオキシ構造から選択される1以上の構造を有する樹脂であることがさらに好ましく、ポリブタジエン構造を有する樹脂であることが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0085】
(F)成分は、樹脂組成物が硬化した際の反りを低下させるために高分子量であることが好ましい。(F)成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、5000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0086】
(F)成分は、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
【0087】
好適な一実施形態において、(A)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましい。
【0088】
(F)成分の好適な実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
【0089】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。一実施形態として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
(F)成分の好適な実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0091】
(F)成分の好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0092】
また、(F)成分の他の実施形態としては、シロキサン構造を含有する樹脂である。シロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号公報、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0093】
(F)成分の他の実施形態としては、アルキレン構造、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。アルキレン構造を含有する樹脂をアルキレン樹脂といい、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂をアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。アルキレン樹脂、アルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0094】
(F)成分の他の実施形態としては、イソプレン構造を含有する樹脂である。イソプレン構造を含有する樹脂をイソプレン樹脂という。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0095】
(F)成分の他の実施形態としては、イソブチレン構造を含有する樹脂である。イソブチレン構造を含有する樹脂をイソブチレン樹脂という。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0096】
(F)エラストマーの含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0097】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、難燃剤;ゴム粒子等有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤;顔料等の樹脂添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0098】
樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0099】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、第1支持体と、該第1支持体に剥離可能に接合した樹脂組成物層と、を含む。通常、第1支持体と樹脂組成物層とは、直接に接合している。2つの部材の接合が「直接」とは、それら接合する2つの部材の間に他の層が無いことを表す。樹脂組成物層の厚みが、60μm以上であり、第1支持体の一以上の面内方向における比LA/LBが、1.005以上1.2以下の関係を満たす。第1支持体の面内方向とは、第1支持体の厚み方向に垂直な方向を表す。また、LAは、樹脂組成物層と接合しているときの前記面内方向における第1支持体の長さを表す。さらに、LBは、樹脂組成物層から剥離した後の前記面内方向における第1支持体の長さを表す。このような樹脂シートを用いることにより、樹脂組成物層の厚さが厚くても樹脂組成物層の外観不良を抑制することが可能となる。また、本発明の樹脂シートを用いることにより、通常、カールの発生を抑制することも可能となる。
【0100】
本発明の樹脂シート1は、
図1に一例を示すように、第1支持体3と、樹脂組成物層2とを含む。本発明の樹脂シートは、
図2に一例を示すように、第1支持体3、樹脂組成物層2、及び第2支持体4をこの順で含んでいてもよい。第1支持体3及び第2支持体4は、同一の材料から形成されていてもよく、異なる材料から形成されていてもよい。通常、第1支持体は、保護フィルムとして機能する。
【0101】
本発明の効果が得られる仕組みは下記の通りであると、本発明者は推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みに制限されない。
上記したように、樹脂組成物層の厚さが厚いと、支持体に生じた皺が樹脂組成物層に転写されやすくなり、樹脂組成物層の外観不良が起こることがあった。例えば、支持体と樹脂組成物層とを貼り合わせて接合する場合、支持体には適切な貼合張力をかけて貼り合わせを行うことが一般的である。そうすると、支持体には前記の張力に対応した応力が残留する。樹脂シートの保存時、前記の応力によって支持体に皺が生じると、その皺が樹脂組成物層に転写され、外観不良が生じうる。樹脂シートは巻き取られてロールとなった状態で保存されることが多く、このロール状での保存時に、皺及び外観不良の形成が特に顕著であった。また、樹脂組成物層の厚さが厚いと応力がかかり、その応力により支持体に生じた皺が樹脂組成物層に転写されやすくなると考えられる。
【0102】
本発明の樹脂シートは、一以上の面内方向において、樹脂組成物層と接合しているときの第1支持体の長さLA、及び第1支持体を樹脂組成物層から剥離した後の第1支持体の長さLBが、特定の関係を満たす。すなわち、本発明の樹脂シートの第1支持体は、比LA/LBが特定の関係を満たす面内方向を少なくとも一つ、有する。長さLAは、張力がかかった状態での第1支持体の長さを表し、長さLBは、張力から解放された状態での第1支持体の長さを表すから、前記の比LA/LBは、張力による第1支持体の伸びの程度を表す。よって、前記の比LA/LBは、樹脂組成物層と接合した状態で第1支持体に与えられていた張力の大きさを間接的に表す。比LA/LBが特定の関係を満たすことは、保存時に皺を抑制できる特定の範囲の張力が第1支持体に与えられていることを表す。これにより、樹脂組成物層の厚さが厚くても、樹脂組成物層に皺が転写されることが抑制される。また、本発明の樹脂シートを用いることにより、通常、カールの発生を抑制することも可能となる。
【0103】
<樹脂組成物層>
樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。樹脂組成物は、上記において説明したとおりである。
【0104】
樹脂組成物層の厚さは、電子部品を封止する観点から、60μm以上であり、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上である。また、一般に、外観不良は樹脂組成物層の厚みが厚いほど生じ易い傾向がある。よって、前記の範囲の厚みは、外観不良という課題が生じる樹脂組成物層の厚みを表すものであり、このような厚みの樹脂組成物層を備えながら外観不良を抑制できる点で、本発明の樹脂シートには技術的な意義がある。樹脂組成物層の厚さの上限は、特に限定されず、例えば、1000μm以下、500μm以下、300μm以下等でありうる。
【0105】
樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度としては、好ましくは10000poise以上、より好ましくは2000poise以上、さらに好ましくは3000poise以上、4000poise以上、又は4500poise以上である。このように最低溶融粘度が高い場合、樹脂組成物層の剛性が硬くなるので、第1支持体からの皺の転写を受け難くできる。他方、溶融粘度の上限値は、任意である。ただし、従来は、最低溶融粘度が低いほど、皺の転写による外観不良を生じ易い傾向があったが、本発明によれば、このように外観不良を生じ易い樹脂組成物層を採用した場合でも、その外観不良を抑制できる。よって、このように従来は発生しやすかった外観不良を抑制できるという効果を有効に活用する観点では、最低溶融粘度は低いことが好ましい。具体的には、前記の最低溶融粘度は、20000poise以下、より好ましくは15000poise以下、さらに好ましくは10000poise以下、又は7500poise以下である。最低溶融粘度は、動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。前記の最低溶融粘度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0106】
前記のように、外観不良は、樹脂組成物層が厚いほど生じ易く、また、樹脂組成物層の最低溶融粘度が低いほど生じ易い。よって、外観不良を抑制できるという効果を有効に活用する観点では、樹脂組成物層の厚み及び最低溶融粘度は、従来特に外観不良が生じ易かった特定の関係を満たしていることが望ましい。具体的には、樹脂組成物層の60℃~200℃における最低溶融粘度をM(poise)とし、樹脂組成物層の厚みをT(μm)としたとき、M/Tが、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは190以下、さらに好ましくは180以下である。
【0107】
<第1支持体>
第1支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルムが好ましい。
【0108】
第1支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;ポリ塩化ビニル;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、塩化ビニルが好ましく、ポリオレフィン、塩化ビニルが特に好ましい。
【0109】
第1支持体は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、タマポリ社製の「GF-1」;東レフィルム加工社製の「トレファンNO9405S」;アキレス社製の「タイプC+」;等が挙げられる。
【0110】
第1支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0111】
また、第1支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0112】
第1支持体の一以上の面内方向において、LA/LBが、1.005以上であり、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.08以上である。LA/LBの下限値を斯かる範囲内とすることにより、皺の発生を抑制することが可能となる。また、LA/LBの上限は、1.2以下であり、好ましくは1.18以下、より好ましくは1.17以下、さらに好ましくは1.15以下である。LA/LBの上限値を斯かる範囲内とすることにより、樹脂シートを称する際のハンドリング性をより向上させることが可能となる。
【0113】
第1支持体の長さLA及びLBは、以下の方法で測定できる。第1支持体の長さLAは、温度23℃、湿度70%の条件において測定できる。また、第1支持体の長さLBは、温度23℃、湿度70%の条件の条件において、テンシロン万能材料試験機を用いて、第1支持体を厚み方向に0.008kgf/cmの力で引っ張って剥離した後で、前記温度及び湿度において測定できる。
【0114】
比LA/LBが前記特定の関係を満たす第1支持体の面内方向の数は、1でもよく、2以上でもよい。樹脂シートがロール状に巻き取られうる程度に長い長尺形状を有する場合、第1支持体は、当該樹脂シートの長手方向に平行な面内方向において前記特定の関係を満たす比LA/LBを有することが好ましい。長尺形状を有する第1支持体は、通常、その長手方向に張力をかけられた状態で樹脂組成物層との貼り合わせが行われる。よって、その長手方向に平行な面内方向において第1支持体が前記特定の関係を満たす比LA/LBを有する場合、皺の原因となりうる張力を適切に調整して、外観不良を効果的に抑制できる。
【0115】
第1支持体の23℃における弾性率としては、好ましくは2GPa以下、より好ましくは1.8GPa以下、さらに好ましくは1.6GPa以下であり、好ましくは0.05GPa以上、より好ましくは0.06GPa以上、さらに好ましくは0.07GPa以上である。第1支持体の弾性率を斯かる範囲内にすることにより、樹脂組成物層のカールの発生をより抑制することが可能となる。弾性率は、ASTM D882に準拠の方法により測定することが可能である。
【0116】
第1支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0117】
<第2支持体>
樹脂シートは、
図2に一例を示すように、第1支持体3及び樹脂組成物層2に組み合わせて第2支持体4を有していてもよい。第1支持体3及び第2支持体4は、上記した同一の材料から形成されていてもよく、異なる材料から形成されていてもよいが、樹脂組成物層の皺を抑制する観点から、異なる材料から形成されていることが好ましい。
【0118】
樹脂シートが第2支持体を有する場合、第2支持体の一以上の面内方向において、第2支持体のLa/Lbが、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下である。Laは、樹脂組成物層と接合しているときの前記面内方向における第2支持体の長さを表す。さらに、Lbは、樹脂組成物層から剥離した後の前記面内方向における第2支持体の長さを表す。第2支持体が、前記の範囲にLa/Lbを有する面内方向を有する場合、樹脂組成物層の外観不良を特に効果的に抑制できる。第2支持体の長さLa及びLbは、第1支持体の長さLA及びLBと同じ方法によって測定できる。
【0119】
第2支持体の23℃における弾性率は、第1支持体の23℃における弾性率の範囲と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、樹脂組成物層のカールの発生をより抑制することが可能となる。
【0120】
樹脂シートが、第1支持体及び第2支持体を有する場合、第1支持体の23℃における弾性率と第2支持体の23℃における弾性率との差(第2支持体の弾性率-第1支持体の弾性率)としては、好ましくは2GPa以上、より好ましくは2.2GPa以上、さらに好ましくは2.4GPa以上であり、好ましくは4GPa以下、より好ましくは3.95GPa以下、さらに好ましくは3.9GPa以下である。第1及び第2支持体の弾性率の差を斯かる範囲内にすることにより、樹脂組成物層のカールの発生をより抑制することが可能となる。
【0121】
<樹脂シートの製造方法>
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、第2支持体等の適切な支持部材上に塗布して樹脂組成物層を形成する工程と、樹脂組成物層の第2支持体と接合していない面(即ち、第2支持体とは反対側の面)にテンションをかけた状態の第1支持体を貼り合わせて接合させる工程とを含む方法により、製造することができる。
【0122】
樹脂組成物の塗布は、ダイコーター等の塗布装置を用いて行いうる。また、樹脂組成物層を形成する工程は、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂組成物層を形成してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0123】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0124】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0125】
樹脂組成物層を形成した後で、樹脂組成物層と第1支持体とを貼り合わせて接合することにより、樹脂シートが得られる。貼り合わせは、通常、第1支持体に適切なテンションをかけた状態で、行われる。第1支持体にかけるテンションとしては、従来の樹脂シートを作製する際にあたっての保護フィルムを貼りあわせる際にかけるテンションと同程度である。
【0126】
また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。この際、樹脂シートは、第1支持体がロールの内側となるように巻き取ることが好ましい。
【0127】
<樹脂シートの用途>
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0128】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0129】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0130】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0131】
<樹脂シートの特性>
上述した樹脂シートは、皺の発生が抑制された樹脂組成物層を得ることができる。したがって、樹脂組成物層の外観不良を抑制することができる。皺の評価は、例えば、50cm×50cmにカットした樹脂シートの第1支持体を剥離し、樹脂組成物層を目視により皺の観察の有無を観察する。そのとき、通常樹脂組成物層には皺がない。皺の評価の詳細は、後述する実施例に記載の方法によって行うことができる。
【0132】
上述した樹脂シートは、通常カールの発生が抑制された樹脂組成物層を得ることができる。したがって、反りの発生が抑制された樹脂シートを提供可能となる。カールの評価は、例えば、50cm×50cmにカットした樹脂シートの第1支持体を上にして平坦な場所に置き、樹脂シートのカール量を計測する。この場合、カール量は好ましくは50mm未満である。カール量の下限は特に限定されないが0.01mm以上等とし得る。カールの評価の詳細は、後述する実施例に記載の方法によって行うことができる。
【0133】
[回路基板]
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0134】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。また、このような金属層を有する基材としては市販品を用いることができ、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」等が挙げられる。
【0135】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0136】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0137】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0138】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0139】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0140】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0141】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0142】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材をプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0143】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。圧縮成型法の具体的な操作は、例えば型として、上型及び下型を用意する。基材に、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された基材を下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0144】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、基材を取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた基材に接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0145】
圧縮成型法における成型条件は、樹脂組成物の組成により異なる。成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、例えば、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0146】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0147】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0148】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの第1支持体及び第2支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。第1支持体及び第2支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0149】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0150】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、いわゆる絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0151】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0152】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0153】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成する。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける第1支持体又は第2支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0154】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0155】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0156】
[半導体チップパッケージ]
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0157】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0158】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0159】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0160】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートを用いてもよい。
【0161】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLPが挙げられる。
【0162】
このようなFan-out型WLPのような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を、半導体チップ上に積層、又は本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、熱硬化させて封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層(絶縁層)を形成する工程、
(F)再配線形成層(絶縁層)上に導体層(再配線層)を形成する工程、及び
(G)導体層上にソルダーレジスト層を形成する工程、を含む。また、半導体チップパッケージの製造方法は、(H)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程を含み得る。
【0163】
このような半導体チップパッケージの製造方法の詳細は、国際公開第2016/035577号の段落0066~0081の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0164】
本発明の第三実施形態に係る半導体チップパッケージは、例えば第二実施形態の半導体チップパッケージにおいて、再配線形成層又はソルダーレジスト層を、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成した半導体チップパッケージである。
【0165】
[半導体装置]
上述した半導体チップパッケージが実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0166】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0167】
(合成樹脂Aの合成)
撹拌装置、温度計及びコンデンサーを備えたフラスコに、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを368.41g、ソルベッソ150(芳香族系溶剤、エクソンモービル社製)を368.41g仕込み、ジフェニルメタンジイソシアネートを100.1g(0.4モル)とポリカーボネートジオール(数平均分子量:約2000、水酸基当量:1000、不揮発分:100%、クラレ社製「C-2015N」)400g(0.2モル)を仕込んで70℃で4時間反応を行った。次いでノニルフェノールノボラック樹脂(水酸基当量229.4g/eq、平均4.27官能、平均計算分子量979.5g/モル)195.9g(0.2モル)とエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート41.0g(0.1モル)とを仕込み、2時間かけて150℃に昇温し、12時間反応させた。FT-IRにより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して、ポリカーボネート構造を有する樹脂(不揮発成分50質量%)を得た。得られた樹脂(合成樹脂A)の数平均分子量は6100であった。
【0168】
(シリカAの調製)
平均粒径3μm、比表面積4.4m2/gの球状のシリカを、KBM-573(信越化学工業社製)で表面処理をすることで、球状のシリカAを得た。
【0169】
(樹脂ワニス1の調製)
エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量:169g/eq.)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量269g/eq.)41部、両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー(Dow Chemical Co.製「Fortegra100」)3部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理した球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)380部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC社製「TD2090-60M」固形分60質量%のMEK溶液)8.3部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)16.6部、メチルエチルケトン30部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」)0.3部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂ワニス1を調製した。
【0170】
(樹脂ワニス2の調製)
合成樹脂A 2部、ゴム粒子(ダウケミカルカンパニー社製「PARALOID EXL-2655」)2部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN-475V」)、エポキシ当量約332g/eq.)3部、液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量169g/eq.)6部、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量125g/eq.、不揮発成分60%のMEK溶液)8.3部、シリカA 125部、硬化促進剤(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」)0.1部、メチルエチルケトン(MEK)10部、シクロヘキサノン8部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を調製した。
【0171】
<支持体の弾性率の測定>
支持体をダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃における弾性率を求めた。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。この操作を3回行いその平均値を下記表に示した。
【0172】
<実施例1>
離型処理を施した厚み38μmのPETフィルム(第2支持体、リンテック社製、「AL5」、23℃における弾性率は4GPa)の離型面上に、樹脂ワニス1を、乾燥後の厚みが200μmになるようダイコータを用いて塗布した。塗布後、75~120℃で12分間乾燥することで樹脂組成物層を形成した。
【0173】
次いで、樹脂組成物層の表面に、第1支持体(低密度ポリエチレン、タマポリ社製、「GF-1」、厚み30μm、23℃における弾性率は0.24GPa)を貼り合わせ、該支持体が内側となるようにロール状に50m巻き取ることで樹脂シートを作製した。
【0174】
<実施例2>
実施例1において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス2に代え、第1支持体(低密度ポリエチレン、タマポリ社製、「GF-1」、23℃における弾性率は0.24GPa)を、第1支持体(無延伸ポリプロピレン、東レフィルム加工社製、「トレファンNO9405S」、23℃における弾性率は0.72GPa)に代えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0175】
<実施例3>
実施例1において、第1支持体(低密度ポリエチレン、タマポリ社製、「GF-1」、23℃における弾性率は0.24GPa)を、第1支持体(ポリ塩化ビニル、アキレス社製、「タイプC+」、23℃における弾性率は0.25GPa)に代え、75~120℃で14分乾燥した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0176】
<実施例4>
実施例1において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス2に代え、樹脂ワニス2を塗布後、75~120℃で10分乾燥した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0177】
<比較例1>
実施例1において、第1支持体(低密度ポリエチレン、タマポリ社製、「GF-1」、23℃における弾性率は0.24GPa)を、第1支持体(ポリエチレンテレフタラート、リンテック社製、「AL-5」、23℃における弾性率は4GPa)に代えた。75~120で8分乾燥した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0178】
<比較例2>
実施例1において、第1支持体(低密度ポリエチレン、タマポリ社製、「GF-1」、23℃における弾性率は0.24GPa)を、第1支持体(2軸延伸ポリプロピレン、王子エフテックス社製、「アルファンMA-411」、23℃における弾性率は2GPa)に代えた。75~120℃で7分乾燥した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0179】
<樹脂組成物層の最低溶融粘度の測定>
樹脂シートの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して最低溶融粘度を測定した。樹脂組成物層から採取した試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(ポイズ)を測定した。
【0180】
<支持体の長さLA及びLBの測定>
樹脂シートを50cm引き出し、50cm×50cmにカットした。カットした樹脂シートの巻き方向を第1支持体の長さを、温度23℃、湿度70%の条件において測定し、これを第1支持体の長さLAとした。続いて、温度23℃、湿度70%の条件において、テンシロン万能材料試験機を用いて、第1支持体の厚み方向に0.008kgf/cmの力で引っ張って第1支持体を剥がし、剥がした第1支持体の巻き方向の長さを測定し、これを第1支持体の長さLBとし、LA/LBの値を求めた。
【0181】
<皺の評価>
樹脂シートを50cm引き出し、50cm×50cmにカットした。カットした樹脂シートの第1支持体を剥離し、樹脂組成物層を目視により皺の有無を確認した。皺が入っており外観不良であるものを「×」、皺がなく外観良好であるものを「〇」とした。
【0182】
<カールの評価>
樹脂シートを50cm引き出し、50cm×50cmにカットした。離型処理を施した厚み38μmのPETフィルムを下にして平坦な場所に置き、樹脂シートのカールを確認した。カール量が50mm以上のものを「×」、50mm未満のものを「〇」とした。
【0183】
【符号の説明】
【0184】
1 樹脂シート
2 樹脂組成物層
3 第1支持体
4 第2支持体