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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光散乱検出装置および光散乱検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/51 20060101AFI20221213BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N21/51
G01N15/02 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019118673
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004793
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】山口 亨
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 敦
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-527997(JP,A)
【文献】特開昭63-070148(JP,A)
【文献】特開平05-034259(JP,A)
【文献】特開2010-020239(JP,A)
【文献】特開昭52-116189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00- G01N 21/958
G01N 15/00- G01N 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出装置であって、
前記液体試料を保持する透明な試料セルと、
前記試料セルにコヒーレント光を照射する光源と、
前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を受光する複数の検出器と、
前記試料セルと前記各検出器の間に配され、開口幅によって前記検出器に入射する前記散乱光を制限する複数のアパーチャと、
を備え、
前記試料セルは、該試料セルを直線的に貫くように形成され、前記液体試料が封入された試料チャンネルを有し、
前記光源は、前記コヒーレント光が前記試料チャンネルの長手方向の一端側から入射して前記試料チャンネル内を通過するように配され、
前記複数の検出器は、前記試料チャンネルの長手方向に対して鉛直方向に延び前記試料チャンネルと交差する中心軸を中心とする同一の円周上に配されており、
前記複数の検出器は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する角度が90°の位置を基準位置として、前記基準位置配置された第1検出器と、前記基準位置とは異なる位置に配置された第2検出器とを含み、
前記第1検出器のアパーチャの開口幅は、前記第2検出器のアパーチャの開口幅よりも大きい、光散乱検出装置。
【請求項2】
前記各アパーチャの開口幅は、前記試料セルの中心軸から各検出器までの距離と、各検出器の配置角度の正弦値と、を乗じた値である請求項1に記載の光散乱検出装置。
【請求項3】
前記各アパーチャは、前記試料セル側に配置される第1のアパーチャ板と、前記検出器側に配置される第2のアパーチャ板と、を有する請求項1又は請求項2に記載の光散乱検出装置。
【請求項4】
前記第1のアパーチャ板を、前記第2のアパーチャ板に対して平行に、かつ前記入射する散乱光の光軸と直交する方向に移動させる移動機構を備える請求項3に記載の光散乱検出装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第1のアパーチャ板を移動させる請求項4に記載の光散乱検出装置。
【請求項6】
前記第2のアパーチャ板および前記検出器を、前記第1のアパーチャ板に対して平行に、かつ前記入射する散乱光の光軸と直交する方向に移動させる移動機構を備える請求項3に記載の光散乱検出装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第2のアパーチャ板および前記検出器を移動させる請求項6に記載の光散乱検出装置。
【請求項8】
前記各アパーチャは、
前記第1のアパーチャ板と前記第2のアパーチャ板との間に配置され、前記第1のアパーチャ板から前記第2のアパーチャ板に向かう光線の位置を調整する光線調整部材と、
前記光線調整部材を、前記鉛直方向に延びた中心軸と平行な軸を中心として回動させる回動機構と、
を有する請求項3に記載の光散乱検出装置。
【請求項9】
前記回動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記光線調整部材を回動させる請求項8に記載の光散乱検出装置。
【請求項10】
前記光線調整部材が、平行平板ガラスからなる請求項8又は請求項9に記載の光散乱検出装置。
【請求項11】
液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出方法であって、
前記液体試料を保持する透明な試料セルを直線的に貫くように形成された試料チャンネル内に、前記液体試料を封入する工程と、
光源からのコヒーレント光が前記試料チャンネル内を通過するように、該コヒーレント光を前記試料チャンネルの長手方向の一端側から照射する工程と、
前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を、前記試料チャンネルの長手方向に対して鉛直方向に延び前記試料チャンネルと交差する中心軸を中心とする同一の円周上に配置された複数の検出器によって受光する工程と、
を含み、
前記散乱光を受光する工程は、前記試料セルと前記各検出器の間に配される複数のアパーチャの開口幅によって、前記各検出器に入射する前記散乱光を制限する工程を含み、
前記複数の検出器は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する角度が90°の位置を基準位置として、前記基準位置配置された第1検出器と、前記基準位置と異なる位置に配置された第2検出器とを含み、
前記第1検出器のアパーチャの開口幅は、前記第2検出器のアパーチャの開口幅よりも大きい、光散乱検出方法。
【請求項12】
前記各アパーチャの開口幅が、前記試料セルの中心軸から各検出器までの距離と、各検出器の配置角度の正弦値と、を乗じた値である請求項11に記載の光散乱検出方法。
【請求項13】
前記各アパーチャが、前記試料セル側に配置される第1のアパーチャ板と、前記検出器側に配置される第2のアパーチャ板と、を有する請求項11又は請求項12に記載の光散乱検出方法。
【請求項14】
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第1のアパーチャ板を、前記第2のアパーチャ板に対して平行に、かつ前記入射する散乱光の光軸と直交する方向に移動させる請求項13に記載の光散乱検出方法。
【請求項15】
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第2のアパーチャ板および前記検出器を、前記第1のアパーチャ板に対して平行に、かつ前記入射する散乱光の光軸と直交する方向に移動させる請求項13に記載の光散乱検出方法。
【請求項16】
前記各アパーチャは、
前記第1のアパーチャ板と前記第2のアパーチャ板との間に配置され、前記第1のアパーチャ板から前記第2のアパーチャ板に向かう光線の位置を調整する光線調整部材を有し、
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記光線調整部材を、前記鉛直方向に延びた中心軸と平行な軸を中心として回動させる請求項13に記載の光散乱検出方法。
【請求項17】
前記光線調整部材が、平行平板ガラスからなる請求項16に記載の光散乱検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱検出装置および光散乱検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中に分散しているタンパク質等の微粒子を分離するための手法として、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)やゲルろ過クロマトグラフィ(GPC)が知られている。近年、クロマトグラフィ検出装置としては、紫外線(UV)吸光度検出装置や示差屈折率検出装置に加え、多角度光散乱(MALS)検出装置が用いられている。多角度光散乱検出装置は、測定試料の分子量や粒子径が算出可能であるという特長がある。
【0003】
多角度光散乱検出装置としては、径方向に貫通して形成され、液体試料が充填される透孔を有するセルと、透孔にビームを向かって照射する光源と、セルの外周に沿って間隔を置いて配置され、セル(液体試料)から散乱する散乱光を受光する複数の検知器と、を備える検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-120947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多角度光散乱検出装置に対し、検出器に入射する散乱光を制限するために、複数のアパーチャを追加した構成の検出装置もある(図10参照)。図10に示す従来の多角度光散乱検出装置1000は、径方向(X軸方向)に貫通して形成され、液体試料Qが充填される透孔1001を有するセル1002と、ビームBMを透孔1001に向かって照射する光源1003と、セル1002と光源1003との間に配置された集光レンズ1007と、セル1002の外周に沿って間隔を置いて配置され、セル1002(液体試料Q)から散乱する散乱光を受光する複数の検知器1004と、セル1002と各検出器1004の間に配され、開口部1005の幅によって検出器1004に入射する散乱光を制限する複数のアパーチャ1006と、を備える。
【0006】
なお、図10では、検出器1004およびアパーチャ1006として、代表的に、配置角度θに位置する検出器1004A、第1のアパーチャ1006A-1および第2のアパーチャ1006A-2と、配置角度θよりも大きい配置角度θに位置する検出器1004B、第1のアパーチャ1006B-1および第2のアパーチャ1006B-2と、が描かれている。そして、第1のアパーチャ1006A-1、第2のアパーチャ1006A-2、第1のアパーチャ1006B-1および第2のアパーチャ1006B-2は、いずれも、開口部1005の幅が同じである。
【0007】
図11に示すように、多角度光散乱検出装置1000では、配置角度θの検出器1004Bの受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲よりも、配置角度θの検出器1004Aの受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲が大きくなってしまう。従って、多角度光散乱検出装置1000では、配置角度が90度から離れるに従って、検出器1004で受光する散乱光発生領域が大きくなる傾向にあるということができる。そのため、図12のグラフに示すように、各検出器がセルの中心からの距離が等しい位置に配置されていたとしても、配置角度が異なれば、各検出器が受光する散乱光発生領域にばらつきが生じる結果となる。このばらつきは、例えば分子量や粒子径を算出する上で誤差となり、よって、正確な算出が困難となる。
【0008】
本発明の目的は、検出器の配置角度に依存せず、例えば分子量算出精度および粒子径算出精度を良好に維持することができる光散乱検出装置および光散乱検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出装置であって、前記液体試料を保持する透明な試料セルと、前記試料セルにコヒーレント光を照射する光源と、前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を受光する複数の検出器と、前記試料セルと前記各検出器の間に配され、開口幅によって前記検出器に入射する前記散乱光を制限する複数のアパーチャと、を備え、前記試料セルは、該試料セルを直線的に貫くように形成され、前記液体試料が封入された試料チャンネルを有し、前記光源は、前記コヒーレント光が前記試料チャンネルの長手方向の一端側から入射して前記試料チャンネル内を通過するように配され、前記複数の検出器は、前記試料チャンネルの長手方向に対して鉛直方向に延び前記試料チャンネルと交差する中心軸を中心とする同一の円周上に配されており、前記複数の検出器は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する角度が90°の位置を基準位置として、前記基準位置配置された第1検出器と、前記基準位置とは異なる位置に配置された第2検出器とを含み、前記第1検出器のアパーチャの開口幅は、前記第2検出器のアパーチャの開口幅よりも大きい光散乱検出装置に関する。
【0010】
本発明の第2の態様は、液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出方法であって、前記液体試料を保持する透明な試料セルを直線的に貫くように形成された試料チャンネル内に、前記液体試料を封入する工程と、光源からのコヒーレント光が前記試料チャンネル内を通過するように、該コヒーレント光を前記試料チャンネルの長手方向の一端側から照射する工程と、前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を、前記試料チャンネルの長手方向に対して鉛直方向に延び前記試料チャンネルと交差する中心軸を中心とする同一の円周上に配置された複数の検出器によって受光する工程と、を含み、前記散乱光を受光する工程は、前記試料セルと前記各検出器の間に配される複数のアパーチャの開口幅によって、前記各検出器に入射する前記散乱光を制限する工程を含み、前記複数の検出器は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する角度が90°の位置を基準位置として、前記基準位置配置された第1検出器と、前記基準位置と異なる位置に配置された第2検出器とを含み、前記第1検出器のアパーチャの開口幅は、前記第2検出器のアパーチャの開口幅よりも大きい、光散乱検出方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配置角度によらず各検出器の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさを合わせる、すなわち、同じとすることができる。これにより、各検出器での光強度は、ほぼ同じとなる、すなわち、許容誤差の範囲内に収まり、よって、検出器の配置角度に依存せず、例えば分子量算出精度および粒子径算出精度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の光散乱検出装置の第1実施形態を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す光散乱検出装置を用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
図3図3は、本発明の光散乱検出方法の工程順番を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の光散乱検出装置の第2実施形態を示す平面図である。
図5図5は、図2に示す光散乱検出装置を移動機構停止状態で用いた場合の各配置角度における光強度を示すグラフである。
図6図6は、図2に示す光散乱検出装置を移動機構作動状態で用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
図7図7は、本発明の光散乱検出装置の第3実施形態を示す平面図である。
図8図8は、本発明の光散乱検出装置の第4実施形態を示す平面図である。
図9図9は、図8に示す光散乱検出装置を用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
図10図10は、従来の光散乱検出装置の構成を示す平面図である。
図11図11は、図10に示す光散乱検出装置で各検出器が受光する散乱光発生領域の差異を説明するための図である。
図12図12は、図10に示す光散乱検出装置を用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光散乱検出装置の第1実施形態を示す平面図である。図2は、図1に示す光散乱検出装置を用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。図3は、本発明の光散乱検出方法の工程順番を示すフローチャートである。なお、以下では、説明の都合上、水平方向のうちの一方向を「X軸方向」といい、水平方向のうちのX軸方向と直交する方向を「Y軸方向」といい、鉛直方向、すなわち、X軸方向とY軸方向とに直交する方向を「Z軸方向」という。また、各軸方向の矢印側を「正側」といい、矢印と反対側を「負側」ということがある。また、図2図6図9図12に示すグラフは、いずれも、セル中心(x=0)で発生する散乱光を受光する光強度を1とし、受光する散乱光強度相対値のセル位置依存性(x依存性)を計算した結果である。
【0014】
図1に示す本発明の光散乱検出装置1は、液体試料Q中に分散しているタンパク質等の微粒子の分子量や回転半径(サイズ)等を検出するための多角度光散乱(MALS)検出装置である。光散乱検出装置1は、液体試料Qを保持する透明な試料セル2と、試料セル2にコヒーレント光L1を照射する光源3と、試料セル2に入射するコヒーレント光L1を収束する集光レンズ6と、試料セル2(液体試料Q)から散乱する散乱光L2を受光する複数の検出器4と、検出器4に入射する散乱光L2を制限する複数のアパーチャ5と、を備える。
【0015】
また、本発明の光散乱検出方法は、光散乱検出装置1を用いて、液体試料Q中に分散しているタンパク質等の微粒子の分子量や回転半径等を検出する方法である。図3に示すように、この光散乱検出方法は、液体試料封入工程(第1の工程)と、コヒーレント光照射工程(第2の工程)と、散乱光受光工程(第3の工程)と、を含み、これらの工程が順に実行される。
【0016】
図1に示すように、試料セル2は、円柱状をなし、その中心軸O21がZ軸方向と平行に配置された円柱状部21を有する。円柱状部21は、当該円柱状部21(試料セル2)をX軸方向に沿って直線的に貫くように形成され、液体試料Qが封入された試料チャンネル22を有する。なお、試料チャンネル22は、中心軸O21と交差するのが好ましい。
【0017】
また、円柱状部21は、透明性を有する材料で構成され、その構成材料としては、特に限定されず、例えば、無色透明な石英ガラスが挙げられる。
液体試料封入工程では、試料チャンネル22内に、液体試料Qを封入する。この封入作業は、例えば、封入装置によって自動的に行われてもよいし、作業者によって手作業で行われてもよい。
【0018】
光源3は、試料セル2にコヒーレント光L1を照射する。「コヒーレント光」とは、光束内の任意の2点における光波の位相関係が時間的に不変で一定に保たれており、任意の方法で光束を分割した後、大きな光路差を与えて再び重ね合わせても完全な干渉性を示す光をいう。光源3としては、例えば、可視光レーザを照射するためのレーザ光源が採用される。自然界には完全なコヒーレント光L1は存在せず、シングルモードで発振するレーザ光はコヒーレント状態に近い光である。
【0019】
光源3は、試料セル2に対しX軸方向負側に配置され、試料チャンネル22の一端221側に臨んでいる。これにより、光源3から発せられたコヒーレント光L1は、試料チャンネル22の一端221側から入射する。そして、このコヒーレント光L1は、試料チャンネル22内を通過して、試料チャンネル22の他端222側から出射する。
【0020】
コヒーレント光照射工程では、光源3を用いて、試料セル2にコヒーレント光L1を照射することが行われる。これにより、光源3からのコヒーレント光L1が試料チャンネル22内を通過するように、コヒーレント光L1を試料チャンネル22の一端221側から照射することができる。
【0021】
光源3と試料セル2との間には、集光レンズ6が配置されている。集光レンズ6は、平凸レンズであり、コヒーレント光L1の入射側が凸面61となっており、出射側が平面62となっている。
なお、光散乱検出装置1では、集光レンズ6に代えて、複数の複合レンズや集光ミラーを組み合わせて構成した集光光学系を配置してもよい。この集光光学系でも、集光レンズ6と同様に、試料セル2に入射するコヒーレント光L1を収束することができる。
【0022】
試料セル2の周囲には、円柱状部21の外周面211から離間して、複数の検出器4が配置されている。前述したように、コヒーレント光L1は、試料チャンネル22内を通過する。そして、この通過途中で、コヒーレント光L1は、液体試料Qによって、試料セル2から周囲に異なる散乱角を以て散乱して散乱光L2となる。各検出器4は、散乱光L2を受光することができる。また、光散乱検出装置1では、円柱状部21の外周面211がレンズの役割を果たし、その焦点位置に各検出器4の受光面が位置している。従って、複数の検出器4は、鉛直方向に延びる試料セル2の中心軸O21を中心とする同一の円周上に、すなわち、半径Rの円周上に、受光面が配された状態となる。
【0023】
なお、図1では、試料セル2へのコヒーレント光L1の入射方向に対する角度が90°の位置を基準位置とした場合、検出器4として、代表的に、基準位置により近い位置に配置された、すなわち、配置角度θに位置する検出器(第1検出器)4Aと、基準位置により遠い位置に配置された、すなわち、配置角度θよりも大きい配置角度θに位置する検出器(第2検出器)4Bと、が描かれている。
また、検出器4としては、本実施形態ではフォトダイオードを採用しているが、これに限定されず、例えば、2次元CMOS等のアレイ検出器を採用してもよい。
散乱光受光工程では、散乱光L2を試料セル2の中心軸O21をXY平面上で中心とする同一の円周上に配置された複数の検出器4によって受光することができる。
【0024】
試料セル2と各検出器4の間には、複数のアパーチャ5が散乱光L2の光軸方向に沿って離間して配置されている。各アパーチャ5は、散乱光L2の光軸方向に沿って貫通して形成された開口部51を有する。開口部51は、少なくとも鉛直方向に沿った辺が直状であり、好ましくは、鉛直方向(Z軸方向)に縦長の長方形状をなす。そして、各アパーチャ5は、開口部51の開口幅W51によって、当該アパーチャ5に対応する検出器4に入射する散乱光L2を制限することができる。
そして、散乱光受光工程は、試料セル2と各検出器4の間に配される複数のアパーチャ5の開口幅W51によって、各検出器4に入射する散乱光L2を制限する散乱光制限工程を含んでいる(図3参照)。
【0025】
なお、図1では、複数のアパーチャ5として、代表的に、試料セル2と検出器4Aの間に配置され、試料セル2側に位置する第1のアパーチャ板5A-1と、検出器4側に位置する第2のアパーチャ板5A-2と、試料セル2と検出器4Bの間に配置され、試料セル2側に位置する第1のアパーチャ板5B-1と、検出器4側に位置する第2のアパーチャ板5B-2と、が描かれている。
【0026】
配置角度θに位置する第1のアパーチャ板5A-1および第2のアパーチャ板5A-2は、互いに開口幅W51が同じであり、検出器4Aに入射する散乱光L2を段階的に制限する。一方、配置角度θに位置する第1のアパーチャ板5B-1および第2のアパーチャ板5B-2も、互いに開口幅W51が同じであり、検出器4Bに入射する散乱光L2を段階的に制限する。
【0027】
また、光散乱検出装置1では、各アパーチャ5の開口幅W51は、配置角度θに応じて異ならせている。すなわち、各アパーチャ5の開口幅W51は、配置角度θが90°のところで最大となり、配置角度θが90°から離れるにつれて小さくなっている。従って、図1に示すように、配置角度θでの開口幅W51は、配置角度θでの開口幅W51よりも小さい。そして、本実施形態では、配置角度θが90°での開口幅W51をW51(MAX)とした場合、各アパーチャ5の開口幅W51は、開口幅W51(MAX)に、試料セル2の中心軸O21から各検出器4までの距離、すなわち、半径Rと、各検出器4の配置角度θの正弦値と、を乗じた値(=W51(MAX)×R×sinθ)となっている。なお、この値には、本発明の目的を達成することができるのであれば、若干の補正を加えた値も、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
前述したように、配置角度θによらず開口幅W51が同じとなっている場合、各検出器4が試料セル2の中心軸O21から等距離の位置に配置されていたとしても、各検出器4での受光する散乱光発生領域にばらつきが生じる結果となる(図10図12参照)。そして、このばらつきは、例えば分子量や粒子径を算出する上で誤差となり、よって、正確な算出が困難となる。
【0029】
これに対し、光散乱検出装置1では、前記のように開口幅W51を配置角度θに応じて異ならせている。この場合、配置角度θによらず各検出器4の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさを合わせる、すなわち、同じとすることができ、よって、各検出器4での検出結果として、図2のグラフが得られる。図2のグラフに示すように、各検出器4が試料セル2の中心軸O21から等距離の位置に配置されている場合、各検出器4での光強度は、ほぼ同じとなる、すなわち、許容誤差の範囲内に収まる。これにより、光散乱検出装置1では、検出器4の配置角度θに依存せず、例えば分子量や粒子径を正確に算出する、すなわち、分子量算出精度および粒子径算出精度を良好に維持することができる。なお、図2のグラフは、液体試料Q中の溶媒の屈折率と、試料セル2(円柱状部21)の屈折率とが同じ(例えば屈折率1.46)場合の結果である。
【0030】
<第2実施形態>
図4は、本発明の光散乱検出装置の第2実施形態を示す平面図である。図5は、図2に示す光散乱検出装置を移動機構停止状態で用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。図6は、図2に示す光散乱検出装置を移動機構作動状態で用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
以下、これらの図を参照して本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第1のアパーチャ板を移動させる移動機構を備えること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0031】
図4に示すように、本実施形態の光散乱検出装置1は、第1のアパーチャ板5A-1を移動させる移動ユニット7Aと、第1のアパーチャ板5B-1を移動させる移動ユニット7Bと、を備える。移動ユニット7Aと、移動ユニット7Bとは、移動対象となるアパーチャ5が異なること以外は、同じ構成であるため、以下、移動ユニット7Aについて代表的に説明する。なお、光散乱検出装置1では、配置角度θの大きさによっては、移動ユニット7Bを省略することもできる。
【0032】
移動ユニット7Aは、第1のアパーチャ板5A-1を第2のアパーチャ板5A-2に対して移動させる移動機構71と、移動機構71の作動を制御する制御部72と、液体試料Q中の溶媒の屈折率情報を記憶する記憶部73と、を備える。
移動機構71は、第1のアパーチャ板5A-1に連結され、例えば、モータ、ボールねじ、リニアガイド等で構成されている。この移動機構71は、第1のアパーチャ板5A-1を、第2のアパーチャ板5A-2に対して平行に、かつ水平方向、すなわち、試料セル2の外周面211と、検出器4Aに向かう散乱光L2の光軸との交点における外周面211上の接線方向に移動させることができる。
【0033】
記憶部73には、各種の液体試料Q中の溶媒の屈折率情報が記憶されている。
制御部72は、記憶部73から分析対象となる液体試料Q中の溶媒の屈折率情報を抽出する。そして、制御部72は、抽出した溶媒の屈折率情報に基づいて、移動機構71を作動させて、第1のアパーチャ板5A-1の移動量(移動距離)を制御する。
なお、散乱光制限工程では、液体試料Q中の溶媒の屈折率情報に基づいて、第1のアパーチャ板5A-1を、第2のアパーチャ板5A-2に対して平行に、かつ水平方向に移動させることができる。
【0034】
ところで、液体試料Q中の溶媒の屈折率と、試料セル2(円柱状部21)の屈折率とが異なる(例えば溶媒の屈折率が1.333であり、試料セル2の屈折率が1.46)場合、移動ユニット7A、移動ユニット7Bを停止させたままでいると、図5に示すグラフのような結果が得られる。この図5のグラフから明らかなように、各検出器4での光強度は、配置角度θが小さくなれば小さくなるほど(例えば配置角度θが28度の場合)、配置角度θが大きいときの光強度に対して乖離が生じる傾向にあることが分かる。
【0035】
そこで、光散乱検出装置1は、液体試料Q中の溶媒の屈折率と、試料セル2(円柱状部21)の屈折率とが異なった場合でも、配置角度θの大小における光強度の乖離を防止するべく、前述したように、配置角度θが小さい配置角度θに位置する第1のアパーチャ板5A-1を第2のアパーチャ板5A-2に対して移動させることができる。これにより、図6に示すグラフのような結果が得られる。この図6のグラフから明らかなように、配置角度θの大小によらず、各配置角度θに対応する光強度のグラフは、互いにほぼ重なっており、前記乖離が生じるのが防止されている。これにより、検出器4の配置箇所によらず、例えば分子量や粒子径を正確に算出することができる。
【0036】
<第3実施形態>
図7は、本発明の光散乱検出装置の第3実施形態を示す平面図である。
以下、この図を参照して本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、移動ユニットによる移動対象が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、移動ユニット7Aは、第2のアパーチャ板5A-2および検出器4Aを移動させ、移動ユニット7Bは、第2のアパーチャ板5B-2および検出器4Bを移動させるよう構成されている。本実施形態でも、移動ユニット7Aと、移動ユニット7Bとは、移動対象となるアパーチャ5が異なること以外は、同じ構成であるため、以下、移動ユニット7Aについて代表的に説明する。
【0038】
移動ユニット7Aの移動機構71は、第2のアパーチャ板5A-2および検出器4Aが載置されたベース74に連結され、第2のアパーチャ板5A-2および検出器4を、第1のアパーチャ板5A-1に対して平行に、かつ水平方向に一括して移動させることができる。
【0039】
制御部72は、記憶部73から抽出した溶媒の屈折率情報に基づいて、移動機構71を作動させて、第2のアパーチャ板5A-2および検出器4Aの移動量(移動距離)を制御する。
なお、散乱光制限工程では、液体試料Q中の溶媒の屈折率情報に基づいて、第2のアパーチャ板5A-2および検出器4Aを、第1のアパーチャ板5A-1に対して平行に、かつ水平方向に移動させることができる。
【0040】
以上のような構成により、配置角度θの大小によらず、各検出器4で検出される光強度同士の間で前記乖離が生じるのが防止される。これにより、検出器4の配置箇所によらず、例えば分子量や粒子径を正確に算出することができる。
【0041】
<第4実施形態>
図8は、本発明の光散乱検出装置の第4実施形態を示す平面図である。図9は、図8に示す光散乱検出装置を用いた場合の各配置角度における各検出器が受光する散乱光強度の相対値を示すグラフである。
以下、これらの図を参照して本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、移動ユニットに代えて、回動ユニットを備えること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0042】
図8に示すように、本実施形態の光散乱検出装置1は、回動ユニット8Aと、回動ユニット8Bと、を備える。回動ユニット8Aと、回動ユニット8Bとは、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、以下、回動ユニット8Aについて代表的に説明する。なお、光散乱検出装置1では、配置角度θの大きさによっては、回動ユニット8Bを省略することもできる。
【0043】
回動ユニット8Aは、第1のアパーチャ板5A-1と第2のアパーチャ板5A-2との間に配置された光線調整部材84と、光線調整部材84を回動させる回動機構81と、回動機構81の作動を制御する制御部82と、液体試料Q中の溶媒の屈折率情報を記憶する記憶部83と、を有する。
【0044】
回動機構81は、光線調整部材84に連結され、例えば、モータ、減速機等で構成されている。この回動機構81は、光線調整部材84をZ軸方向と平行な回動軸O84回り、すなわち、水平方向に回動させることができる。
光線調整部材84は、回動軸O84回りに回動することにより、第1のアパーチャ板5A-1から第2のアパーチャ板5A-2に向かう散乱光L2(光線)の位置を調整することができる。また、光線調整部材84が、平行平板ガラスからなる。これにより、光線調整部材84を簡単な構成とすることができ、よって、例えば、光線調整部材84の製造コストを抑えることができる。
【0045】
記憶部83には、各種の液体試料Q中の溶媒の屈折率情報が記憶されている。
制御部82は、記憶部83から分析対象となる液体試料Q中の溶媒の屈折率情報を抽出する。そして、制御部82は、抽出した溶媒の屈折率情報に基づいて、回動機構81を作動させて、光線調整部材84の回動量(回動角度)を制御する。
なお、散乱光制限工程では、液体試料Q中の溶媒の屈折率情報に基づいて、光線調整部材を水平方向に回動させることができる。
【0046】
以上のような構成の光散乱検出装置1では、図9に示すグラフのような結果が得られる。この図9のグラフから明らかなように、配置角度θの大小によらず、各配置角度θに対応する光強度のグラフは、互いにほぼ重なっており、前記乖離が生じるのが防止されている。これにより、検出器4の配置箇所によらず、例えば分子量や粒子径を正確に算出することができる。
【0047】
以上、本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、光散乱検出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明の光散乱検出装置および光散乱検出方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0048】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0049】
(第1項)一態様に係る光散乱検出装置は、
液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出装置であって、
前記液体試料を保持する透明な試料セルと、
前記試料セルにコヒーレント光を照射する光源と、
前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を受光する複数の検出器と、
前記試料セルと前記各検出器の間に配され、開口幅によって前記検出器に入射する前記散乱光を制限する複数のアパーチャと、
を備え、
前記試料セルは、該試料セルを直線的に貫くように形成され、前記液体試料が封入された試料チャンネルを有し、
前記光源は、前記コヒーレント光が前記試料チャンネルの一端側から入射して前記試料チャンネル内を通過するように配され、
前記複数の検出器は、鉛直方向に延びる前記試料セルの中心軸を中心とする同一の円周上に配されており、
前記各アパーチャの開口幅は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する配置角度が90°のところで最大となり、配置角度が90°から離れるにつれて小さくなる。
【0050】
第1項に記載の光散乱検出装置によれば、配置角度によらず各検出器の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさを合わせる、すなわち、同じとすることができる。これにより、各検出器での光強度は、ほぼ同じとなる、すなわち、許容誤差の範囲内に収まり、よって、検出器の配置角度に依存せず、例えば分子量精度および粒子径算出精度を良好に維持することができる。
【0051】
(第2項)第1項に記載の光散乱検出装置において、
前記各アパーチャの開口幅は、前記試料セルの中心軸から各検出器までの距離と、各検出器の配置角度の正弦値と、を乗じた値である。
【0052】
第2項に記載の光散乱検出装置によれば、配置角度によらず各検出器の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさをより正確に合わせる、すなわち、同じとすることができる。
【0053】
(第3項)第1項または第2項に記載の光散乱検出装置において、
前記各アパーチャは、前記試料セル側に配置される第1のアパーチャ板と、前記検出器側に配置される第2のアパーチャ板と、を有する。
【0054】
第3項に記載の光散乱検出装置によれば、検出器に入射する散乱光を過不足なく制限することができる。
【0055】
(第4項)第3項に記載の光散乱検出装置において、
前記第1のアパーチャ板を、前記第2のアパーチャ板に対して平行に、かつ水平方向に移動させる移動機構を備える。
【0056】
第4項に記載の光散乱検出装置によれば、第1のアパーチャ板の位置を調整することができる。
【0057】
(第5項)第4項に記載の光散乱検出装置において、
前記移動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第1のアパーチャ板を移動させる。
【0058】
第5項に記載の光散乱検出装置によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第1のアパーチャ板の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0059】
(第6項)第3項に記載の光散乱検出装置において、
前記第2のアパーチャ板及び前記検出器を、前記第1のアパーチャ板に対して平行に、かつ水平方向に移動させる移動機構を備える。
【0060】
第6項に記載の光散乱検出装置によれば、第2のアパーチャ板および検出器の位置を一括して調整することができる。
【0061】
(第7項)第6項に記載の光散乱検出装置において、
前記移動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第2のアパーチャ板及び前記検出器を移動させる。
【0062】
第7項に記載の光散乱検出装置によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第2のアパーチャ板および検出器の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0063】
(第8項)第3項に記載の光散乱検出装置において、
前記各アパーチャは、
前記第1のアパーチャ板と前記第2のアパーチャ板との間に配置され、前記第1のアパーチャ板から前記第2のアパーチャ板に向かう光線の位置を調整する光線調整部材と、
前記光線調整部材を、水平方向に回動させる回動機構と、
を有する。
【0064】
第8項に記載の光散乱検出装置によれば、第1のアパーチャ板から第2のアパーチャ板に向かう光線の位置の微調整を行うことができる。
【0065】
(第9項)第8項に記載の光散乱検出装置において、
前記回動機構は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記光線調整部材を回動させる。
【0066】
第9項に記載の光散乱検出装置によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第1のアパーチャ板から第2のアパーチャ板に向かう光線の位置の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0067】
(第10項)第9項に記載の光散乱検出装置において、
前記光線調整部材が、平行平板ガラスからなる。
【0068】
第10項に記載の光散乱検出装置によれば、光線調整部材を簡単な構成とすることができ、よって、例えば、光線調整部材の製造コストを抑えることができる。
【0069】
(第11項)一態様に係る光散乱検出方法は、
液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出方法であって、
前記液体試料を保持する透明な試料セルを直線的に貫くように形成された試料チャンネル内に、前記液体試料を封入する工程と、
光源からのコヒーレント光が前記試料チャンネル内を通過するように、該コヒーレント光を前記試料チャンネルの一端側から照射する工程と、
前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する散乱光を、鉛直方向に延びる前記試料セルの中心軸を中心とする同一の円周上に配置された複数の検出器によって受光する工程と、
を含み、
前記散乱光を受光する工程は、前記試料セルと前記各検出器の間に配される複数のアパーチャの開口幅によって、前記各検出器に入射する前記散乱光を制限する工程を含み、
前記各アパーチャの開口幅は、前記試料セルへの前記コヒーレント光の入射方向に対する配置角度が90°のところで最大となり、配置角度が90°から離れるにつれて小さくなる。
【0070】
第11項に記載の光散乱検出方法によれば、配置角度によらず各検出器の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさを合わせる、すなわち、同じとすることができる。これにより、各検出器での光強度は、ほぼ同じとなる、すなわち、許容誤差の範囲内に収まり、よって、検出器の配置角度に依存せず、例えば分子量精度および粒子径算出精度を良好に維持することができる。
【0071】
(第12項)第11項に記載の光散乱検出方法において、
前記各アパーチャの開口幅が、前記試料セルの中心軸から各検出器までの距離と、各検出器の配置角度の正弦値と、を乗じた値である。
【0072】
第12項に記載の光散乱検出方法によれば、配置角度によらず各検出器の受光領域と散乱光発生領域とが重なる範囲の大きさをより正確に合わせる、すなわち、同じとすることができる。
【0073】
(第13項)第11項または第12項に記載の光散乱検出方法において、
前記各アパーチャが、前記試料セル側に配置される第1のアパーチャ板と、前記検出器側に配置される第2のアパーチャ板と、を有する。
【0074】
第13項に記載の光散乱検出方法によれば、検出器に入射する散乱光を過不足なく制限することができる。
【0075】
(第14項)第13項に記載の光散乱検出方法において、
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第1のアパーチャ板を、前記第2のアパーチャ板に対して平行に、かつ水平方向に移動させる。
【0076】
第14項に記載の光散乱検出方法によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第1のアパーチャ板の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0077】
(第15項)第13項に記載の光散乱検出方法において、
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記第2のアパーチャ板及び前記検出器を、前記第1のアパーチャ板に対して平行に、かつ水平方向に移動させる。
【0078】
第15項に記載の光散乱検出方法によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第2のアパーチャ板および検出器の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0079】
(第16項)第13項に記載の光散乱検出方法において、
前記各アパーチャは、
前記第1のアパーチャ板と前記第2のアパーチャ板との間に配置され、前記第1のアパーチャ板から前記第2のアパーチャ板に向かう光線の位置を調整する光線調整部材を有し、
前記散乱光を制限する工程は、前記液体試料中の溶媒の屈折率情報に基づいて、前記光線調整部材を、水平方向に回動させる。
【0080】
第16項に記載の光散乱検出方法によれば、例えば溶媒の屈折率と試料セルの屈折率とが異なる場合、第1のアパーチャ板から第2のアパーチャ板に向かう光線の位置の位置を調整して、各検出器での受光される光強度を揃えることができる。
【0081】
(第17項)第16項に記載の光散乱検出方法において、
前記光線調整部材が、平行平板ガラスからなる。
【0082】
第17項に記載の光散乱検出方法によれば、光線調整部材を簡単な構成とすることができ、よって、例えば、光線調整部材の製造コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…光散乱検出装置
2…試料セル
21…円柱状部
211…外周面
22…試料チャンネル
221…一端
222…他端
3…光源
4、4A、4B…検出器
5…アパーチャ
5A-1、5B-1…第1のアパーチャ
5A-2、5B-2…第2のアパーチャ
51…開口
6…集光レンズ
61…凸面
62…平面
7A、7B…移動ユニット
71…移動機構
72…制御部
73…記憶部
74…ベース
8A、8B…回動ユニット
81…回動機構
82…制御部
83…記憶部
84…光線調整部材
1000…多角度光散乱検出装置
1001…透孔
1002…セル
1003…光源
1004、1004A、1004B…検知器
1005…開口部
1006…アパーチャ
1006A-1、1006B-1…第1のアパーチャ
1006A-2、1006B-2…第2のアパーチャ
1007…集光レンズ
BM…ビーム
L1…コヒーレント光
L2…散乱光
21…中心軸
84…回動軸
Q…液体試料
R…半径
51…開口幅
θ、θ1、θ2…配置角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12