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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】湿度検出装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20221213BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N27/04 C
G01N27/12 L
G01N27/12 E
G03G15/00 303
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019119499
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004827
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 秀一
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185977(JP,A)
【文献】特開2005-221484(JP,A)
【文献】特開2018-96933(JP,A)
【文献】特開2009-180560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-G01N27/24
G03G15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度に応じて抵抗値が変化する湿度センサと、
前記湿度センサに流れる電流の電流値に対応する電流アナログ信号を、前記抵抗値に対応する電圧値を示す電圧アナログ信号に変換するための抵抗と、
前記湿度センサに、第1の方向に電流を流す第1の電圧と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に、前記抵抗を経由して電流を流す第2の電圧とを交互に印加する交番電圧供給部と、
前記電圧アナログ信号のインピーダンス変換を行うことで、変換アナログ信号を生成するボルテージフォロワと、
前記第1の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第1の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第1の検出モードと、前記第2の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第2の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第2の検出モードと、を有する制御回路と、を備えること
を特徴とする湿度検出装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第1の電圧値が予め定められた閾値以上である場合に、前記第1の検出モードを使用し、
前記第1の電圧値が予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記第2の検出モードを使用すること
を特徴とする請求項1に記載の湿度検出装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記ボルテージフォロワとして使用されるオペアンプが保証する電圧の下限値、又は、前記下限値よりも大きくなるように前記下限値に予め定められたマージンを加算した値であること
を特徴とする請求項2に記載の湿度検出装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記第1の検出モードでは、前記第1の電圧値に対応する湿度を示す第1の湿度情報を用いて、前記第1の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定し、
前記第2の検出モードでは、前記第2の電圧値に対応する湿度を示す第2の湿度情報を用いて、前記第2の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定すること
を特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の湿度検出装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記交番電圧供給部に、オン及びオフを交互に示すパルス信号を出力し、
前記交番電圧供給部は、前記オンの及び前記オフに従って、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を切り替えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の湿度検出装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載された湿度検出装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度検出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真のプリンタは、低温低湿下でトナーの挙動が大きく変わるため、湿度を精度よく検出する必要がある。
【0003】
従来から、湿度センサから出力され、湿度に応じて変化する電流を、ボルテージフォロアを備える電流電圧変換回路で対応する電圧に変換して、この変換された電圧をデジタル変換回路であるA/Dコンバータを用いて、デジタル値に変換して、湿度を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-243235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、湿度センサとして、抵抗変化型の湿度センサが用いられている場合には、通常、湿度センサ内の抵抗は、高温高湿環境では低い抵抗値を示し、低温低湿環境においては非常に高い抵抗値となる。
【0006】
このため、従来の装置では、低温低湿環境では、抵抗分圧で出力される電圧が低すぎて、湿度センサとA/Dコンバータの中間にあるボルテージフォロアのオペアンプ出力が下がりきらずに湿度がずれるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明の一又は複数の態様は、低湿環境においても、湿度を精度よく検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る湿度検出装置は、湿度に応じて抵抗値が変化する湿度センサと、前記湿度センサに流れる電流の電流値に対応する電流アナログ信号を、前記抵抗値に対応する電圧値を示す電圧アナログ信号に変換するための抵抗と、前記湿度センサに、第1の方向に電流を流す第1の電圧と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に、前記抵抗を経由して電流を流す第2の電圧とを交互に印加する交番電圧供給部と、前記電圧アナログ信号のインピーダンス変換を行うことで、変換アナログ信号を生成するボルテージフォロワと、前記第1の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第1の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第1の検出モードと、前記第2の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第2の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第2の検出モードと、を有する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、湿度に応じて抵抗値が変化する湿度センサと、前記湿度センサに流れる電流の電流値に対応する電流アナログ信号を、前記抵抗値に対応する電圧値を示す電圧アナログ信号に変換するための抵抗と、前記湿度センサに、第1の方向に電流を流す第1の電圧と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に、前記抵抗を経由して電流を流す第2の電圧とを交互に印加する交番電圧供給部と、前記電圧アナログ信号のインピーダンス変換を行うことで、変換アナログ信号を生成するボルテージフォロワと、前記第1の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第1の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第1の検出モードと、前記第2の電圧が前記湿度センサに印加されている際に、前記変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで検出される第2の電圧値に応じて、前記湿度センサで検出された湿度を特定する第2の検出モードと、を有する制御回路と、を備える湿度検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一又は複数の態様によれば、低湿環境においても、湿度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を概略的に示す縦断面図である。
図2】画像形成装置における制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】環境センサ基板及びメイン基板において、湿度を検出する部分の回路構成の一例を示す回路図である。
図4】抵抗変化型の湿度センサの抵抗値と湿度との間の関係を示す概略図である。
図5】(A)~(C)は、A/Dコンバータに入力される信号の電圧波形を示す概略図である。
図6】電圧を検出するタイミングを説明するための概略図である。
図7】湿度の検出タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。
図8】ASICがPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に行われる第1の動作を示すフローチャートである。
図9】セットされた時間が経過した際に行われる第1の動作を示すフローチャートである。
図10】ASICがPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に行われる第2の動作を示すフローチャートである。
図11】セットされた時間が経過した際に行われる第2の動作を示すフローチャートである。
図12】セットされた時間が経過した際に行われる第3の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る画像形成装置100の構成を概略的に示す縦断面図である。
画像形成装置100は、給紙ユニット101と、画像形成ユニット102と、定着ユニット103と、環境センサ基板110と、メイン基板120とを備える。
【0013】
給紙ユニット101は、画像を形成するための媒体である用紙を供給する媒体供給ユニットである。
画像形成ユニット102は、電子写真プロセスを用いて、現像剤としてのトナーを用いて、現像剤像としてのトナー像を用紙に形成する。
定着ユニット103は、用紙に形成されたトナー像を、その用紙に定着させる。
【0014】
環境センサ基板110は、温度及び湿度を計測する。
メイン基板120は、環境センサ基板110で計測された温度及び湿度に従って、給紙ユニット101、画像形成ユニット102及び定着ユニット103の制御を行う。
【0015】
具体的には、電子写真プロセスの中で、現像プロセスと、転写プロセスとは、紛体を扱うため、絶対湿度の影響を大きく受ける。このため、メイン基板120は、現像バイアスと転写バイアスとの補正を計算するため、環境センサ基板110で計測された温度及び湿度を必要とする。
【0016】
図2は、画像形成装置100における制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
画像形成装置100の制御系は、環境センサ基板110と、メイン基板120と、高圧基板140とを備える。
【0017】
メイン基板120は、環境センサ基板110に対し、電源と、交番信号としてのPWM(Pulse Width Modulation)信号とを供給する。
そして、メイン基板120は、環境センサ基板110から湿度を示す電圧を有するアナログ信号と、温度を示す電圧を有するアナログ信号の供給を受ける。
【0018】
メイン基板120は、環境センサ基板110からの電圧により湿度及び温度を特定して、特定された湿度及び温度に従って、低湿の場合に、現像バイアスを低く補正し、転写バイアスを高く補正するように、高圧基板140にコマンドを出力する。
そして、メイン基板120は、高圧基板140からコマンドに対するリプライを受ける。
【0019】
メイン基板120は、定着ユニット103で使用されるヒータ104と、給紙ユニット101で使用される給紙モータ105と、画像形成ユニット102で使用されるメインモータ106と、定着ユニット103に含まれている定着器を駆動する定着モータ107に接続され、これらのコントロールを行う。
【0020】
図3は、環境センサ基板110及びメイン基板120において、湿度を検出する部分である湿度検出装置108の回路構成の一例を示す回路図である。
メイン基板120に備えられている制御部としてのASIC(Application Specific Integrated Circuit)121は、PWM生成部としてのPWMジェネレータ122と、直流交流変換部としてのA/D(Analog/Digital)コンバータ123とを備える。
【0021】
PWMジェネレータ122は、湿度センサ127に供給する交番電圧の切替を指示するためのPWM信号を生成し、生成されたPWM信号を環境センサ基板110に供給する。本実施の形態におけるPWM信号の周期は、例えば、1kHzであり、そのdutyは、50%とする。言い換えると、PWM信号は、オンとオフとを交互に示すパルス信号である。
【0022】
A/Dコンバータ123は、環境センサ基板110で検出された湿度に対応する電圧値を示すアナログ信号である変換アナログ信号の入力を受けて、その変換アナログ信号を電圧値を示すデジタル信号に変換する。ここで、A/Dコンバータ123が要求する出力インピーダンスは、250Ω以下になっているものとする。また、環境センサ基板110で検出される湿度は、湿度センサ127の抵抗値に対応するものとする。
【0023】
また、環境センサ基板110は、切替部124と、湿度センサ127と、分圧抵抗128と、ボルテージフォロワ129とを備える。
【0024】
切替部124は、第1のスイッチ125と、第2のスイッチ126とを備える切替回路である。
第1のスイッチ125は、メイン基板120から供給される3.3Vが入力される共通端子125aと、第1の接続端子125bと、第2の接続端子125cとを備える。
第1のスイッチ125は、ASIC121から供給されるPWM信号に従って、共通端子125aの接続先を、第1の接続端子125b及び第2の接続端子125cの間で切り替えることができる。
【0025】
第2のスイッチ126は、メイン基板120のGND端子と接続されている共通端子126aと、第1の接続端子126bと、第2の接続端子126cとを備える。
第2のスイッチ126は、ASIC121から供給されるPWM信号に従って、共通端子126aの接続先を、第1の接続端子126b及び第2の接続端子126cの間で切り替えることができる。
【0026】
例えば、PWM信号がオンである場合、第1のスイッチ125の共通端子125aは、第1の接続端子125bに接続され、第2のスイッチ126の共通端子126aは、第1の接続端子126bに接続される。これにより、メイン基板120から供給される3.3Vは、第1のスイッチの第1の接続端子125bから、分圧抵抗128を通って、湿度センサ127に供給される。この場合には、湿度センサ127に負の電圧が印加される。
【0027】
一方、PWM信号がオフである場合、第1のスイッチ125の共通端子125aは、第2の接続端子125cに接続され、第2のスイッチ126の共通端子126aは、第2の接続端子126cに接続される。これにより、メイン基板120から供給される3.3Vが、第1のスイッチの第2の接続端子125cから湿度センサ127に供給される。この場合には、湿度センサ127に正の電圧が印加される。
【0028】
以上により、湿度センサ127には、切替部124から交番電圧が供給されることになる。言い換えると、切替部124は、湿度センサ127に、第1の方向(図3では、湿度センサ127から分圧抵抗128への方向)に電流を流す第1の電圧と、第1の方向とは逆の第2の方向(図3では、分圧抵抗128から湿度センサ127への方向)に電流を流す第2の電圧とを交互に印加する交番電圧供給部として機能する。
【0029】
湿度センサ127は、湿度に応じて抵抗値が変化する抵抗変化型の湿度センサである。ここでは、湿度センサ127として、抵抗型高分子膜湿度センサが用いられている。具体的には、TDK株式会社製の「CHS-KSS-CA1」が湿度センサ127として使用されている。
【0030】
ここで、一般に、湿度によって抵抗値が変化する素子を用いている抵抗変化型の湿度センサの抵抗値と湿度との間には、図4に示されているような関係がある。
図4に示されているように、抵抗変化型の湿度センサの抵抗値は、高温高湿環境下では低い値となり、低温低湿環境下では、非常に高い値となり、その抵抗値は、4~5桁変化する。
【0031】
また、抵抗変化型の湿度センサでは、湿度センサ素子における電気分解(分極)を避けるために、交番電圧が印加される。本実施の形態でも、切替部124により交番電圧を湿度センサ127に印加するようにしている。
【0032】
分圧抵抗128は、湿度センサ127の抵抗値に対応する電流値を電圧値に変換するために設けられている。
具体的には、分圧抵抗128は、湿度センサ127に流れる電流の電流値に対応する電流アナログ信号を、湿度センサ127の抵抗値に対応する電圧値を有する電圧アナログ信号に変換する抵抗である。
ここでは、分圧抵抗128の抵抗値は、温度15℃及び湿度50%における湿度センサ127の抵抗値と同じ62kΩとなっているものとする。
【0033】
ボルテージフォロワ129は、ASIC121のA/Dコンバータ123の必要出力インピーダンスとのマッチングを行うために、インピーダンス変換を行う。
具体的には、ボルテージフォロワ129は、分圧抵抗128で変換された電圧アナログ信号のインピーダンス変換を行うことで、変換アナログ信号を生成する。変換アナログ信号は、ASIC121に与えられる。
【0034】
以上のような構成において、ASIC121は、ボルテージフォロワ129で生成された変換アナログ信号をデジタル信号に変換することで電圧値を検出し、その検出された電圧値に応じて、湿度センサ127で検出された湿度を特定する制御回路である。
具体的には、ASIC121は、正の電圧である第1の電圧が湿度センサ127に印加されている際に検出される第1の電圧値に応じて、湿度センサ127で検出された湿度を特定する第1の検出モードと、負の電圧である第2の電圧が湿度センサ127に印加されている際に検出される第2の電圧値に応じて、湿度センサ127で検出された湿度を特定する第2の検出モードとを備える。
【0035】
ここでは、ASIC121は、第1の電圧値が予め定められた閾値以上である場合に、第1の検出モードを使用し、第1の電圧値が予め定められた閾値よりも小さい場合に、第2の検出モードを使用する。
【0036】
なお、その閾値は、ボルテージフォロワ129として使用されるオペアンプが保証する電圧の下限値、又は、その下限値よりも大きくなるように、その下限値に予め定められたマージンを加算した値であればよい。言い換えると、閾値は、その下限値以上であればよい。
【0037】
第2の検出モードでは、分圧抵抗128に流れた電流が、湿度センサ127と、ボルテージフォロワ129とに分岐する。分圧抵抗128の抵抗値は一定であるため、低湿低温の環境下で、湿度センサ127の抵抗値が非常に大きくなったとしても、湿度センサ127側に流れる電流の電流値が非常に小さくなるだけで、ボルテージフォロワ129には、オペアンプが保証する電圧の下限値以上の電圧に対応する電流が供給される。
【0038】
次に、画像形成装置100での動作について説明する。
画像形成装置100は、図示されていないホストコンピュータからの指示により印刷(画像形成)を開始する。
【0039】
メイン基板120は、印刷の開始前に、現像バイアス及び転写バイアスを補正するために、環境センサ基板110からの出力(ここでは、温度及び湿度)を読み取る。
メイン基板120は、現像バイアス及び転写バイアスを決定すると、定着ユニット103に含まれているヒータ104を温める。
【0040】
メイン基板120は、ヒータ104の温度が定着目標温度に達すると、給紙モータ105を回して、給紙ユニット101による給紙を開始する。
メイン基板120は、給紙を開始すると、画像形成ユニット102を動作させて、用紙が図示していない給紙センサに到達したところで、露光を開始する。
【0041】
露光されて感光ドラムに形成された静電潜像は、現像によりトナー像となり、転写プロセスにて、用紙にトナー像が転写される。
転写されたトナー像は、用紙の搬送とともに定着ユニット103に運ばれて、約170℃の熱と圧力とにより、用紙に定着される。
トナー像が定着された用紙は、さらに搬送されて、画像形成装置100の外部に排出される。
【0042】
図5(A)~(C)は、図3に示されている回路において、A/Dコンバータ123に入力される信号の電圧波形を示す概略図である。
図5(A)は、低温低湿時の波形を示し、図5(B)は、実験室環境での波形を示し、図5(C)は、高温高湿時の波形を示す。
【0043】
図5(A)~(C)のそれぞれでは、下方にPWMジェネレータ122から出力されるPWM信号の波形が示され、上方にA/Dコンバータ123に入力される電圧の波形が示されている。
【0044】
湿度センサ127には、イオン分極の防止のために交番電圧がかけられる。このため、湿度センサ127からは、高い電圧と低い電圧とが交互に出力され、10℃及び50%RH(Relative Humidity)でほぼ変化のない波形となり、その前後で波形は反転する。この電圧の反転の直後は電圧が安定しないため、電圧が安定してから電圧をサンプルする。上述のように、本実施の形態では、交番電圧の切り替えをPWM信号で行っており、PWM信号の周期は1kHzで、dutyは50%である。
【0045】
従来は、図5に示されているように、PWM信号がオフとなっている第1のタイミングTL1~TL3において、電圧のサンプリングが行われている。第1のタイミングTL1~TL3は、PWM信号の立ち下がりから、例えば、予め定められた期間である350μS経過後である。
【0046】
例えば、湿度センサ127として、上述のように「CHS-KSS-CA1」が使用されている場合には、35℃及び90%RHの環境では、2.7kΩの抵抗となり、5℃及び10%RHの環境では、75MΩの抵抗となり、非常に広い抵抗範囲になる。
【0047】
図3に示されているように、分圧抵抗128を用いて抵抗値を電圧変換する回路においては、分圧抵抗128として、15℃及び50%RHの環境における湿度センサ127の抵抗値と同じ62kΩの抵抗が使用された場合、5℃及び10%RHの環境では、A/Dコンバータ123に入力される電圧は、49mVと非常に低い電圧となる。
【0048】
上述のように、A/Dコンバータ123が要求する出力インピーダンスは、250Ω以下であり、湿度センサ127の抵抗値よりも低いため、ボルテージフォロワ129としてオペアンプを用いて、インピーダンス変換を行わなければならない。
【0049】
オペアンプとして、例えば、汎用オペアンプであるLMV324が使用されている場合、65mV以下の出力は保証されておらず、ボルテージフォロワ129において、その下の電圧を出そうとしても65mVよりも下の電圧にはならない。このため、図3に示されている回路において、湿度センサ127が、15℃において10%RHの湿度に対応する49mVの電圧を出力したとしても、ボルテージフォロワ129からは、14%RHを示す65mVの電圧しか出力されない。このため、A/Dコンバータ123では、湿度センサ127で検出された湿度とは異なる湿度に変換してしまい、ASIC121は、実際とは異なる湿度を認識してしまう。
【0050】
このため、本実施の形態では、図6に示されているように、PWMジェネレータ122から出力されるPWM信号がオフとなっている第1のタイミングTL1~TL3に加えて、そのPWM信号がオンとなっている第2のタイミングTH1~TH3でも電圧をサンプリングできるようにして、ASIC121において、どちらのタイミングで検出された電圧値を使用するか選択できるようにする。
【0051】
本実施の形態では、ASIC121は、まず第1のタイミングで検出された電圧値が予め定められた閾値である切替電圧よりも低い場合に、第2のタイミングで電圧値を検出する。
ASIC121では、予め、第1のタイミングで検出された電圧値に対応する湿度を示す第1の湿度情報を示す第1のテーブルと、第2のタイミングで検出された電圧値に対応する湿度を示す第2の湿度情報を示す第2のテーブルとが記憶されていて、それぞれのタイミングで検出された電圧値に対応する湿度を特定することができる。
このため、本実施の形態では、低温及び低湿の環境において、湿度センサ127からの電圧がボルテージフォロワ129でずれてしまうことがなくなる。
【0052】
図7は、ASIC121が湿度の検出タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。
図7に示されているフローチャートは、PWM信号の立ち下がりから予め定められた期間(ここでは、350μS)が経過した第1のタイミングで電圧値が検出された場合に開始される。
【0053】
ASIC121は、第1のタイミングで検出された電圧値が予め定められた閾値である切替電圧よりも低いか否かを判断する(S10)。切替電圧は、ボルテージフォロワ129として使用されるオペアンプの仕様によるが、上述のように汎用オペアンプLMV324が使用されている場合には、電圧値が一定となるのは、オペアンプが保証する電圧の下限値である65mVであるため、電圧の下限値から予め定められたマージンを設けて、100mVとする。
【0054】
そして、第1のタイミングで検出された電圧値が予め定められた閾値以上である場合(S10でNo)には、処理はステップS11に進む。第1のタイミングで検出された電圧値が予め定められた閾値よりも低い場合(S10でYes)には、処理はステップS12に進む。
【0055】
ステップS11では、ASIC121は、第1のタイミングで検出された電圧値により湿度を特定する第1の検出モードでの処理を行う。
一方、ステップS12では、ASIC121は、第2のタイミングで検出された電圧値により湿度を特定する第2の検出モードでの処理を行う。
【0056】
次に、図8及び図9を用いて、ASIC121が、第1の検出モードで湿度を検出する際の全体的な動作を説明する。
図8は、ASIC121がPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に行われる動作を示すフローチャートである。
図8に示されているフローチャートは、PWMジェネレータ122がPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に開始される。
【0057】
ASIC121は、計時を行うタイマに350μSをセットする(S20)。
そして、ASIC121は、セットされたタイマの計時を開始する(S21)。
【0058】
図9は、図8でセットされた時間が経過した際に行われる動作を示すフローチャートである。
まず、図8のステップS20でセットされた時間が経過した場合には、ASIC121は、A/Dコンバータ123で変換されたA/D値である電圧値を、A/Dコンバータ123から読み取る(S30)。
【0059】
そして、ASIC121は、読み取られた電圧値を図示しないワークメモリに記憶する(S30)。ここで、ASIC121は、ワークメモリに記憶された電圧値を用いて、図7に示されているフローチャートを実行する。ここでは、第1の検出モードとなり、第1のタイミング、言い換えると、ステップS30で読み取られ、ステップS31で記憶された電圧値に基づいて、第1のテーブルが用いられて、湿度が特定される。
そして、ASIC121は、タイマでの計時を停止する(S32)。
【0060】
次に、図10図12を用いて、ASIC121が、第2の検出モードで湿度を検出する際の全体的な動作を説明する。
図10は、ASIC121がPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に行われる動作を示すフローチャートである。
図10に示されているフローチャートは、PWMジェネレータ122がPWM信号の立ち下がりエッジを出力した際に開始される。
【0061】
ASIC121は、計時を行うタイマに350μSをセットする(S40)。
そして、ASIC121は、セットされたタイマの計時を開始する(S41)。
【0062】
図11は、図10でセットされた時間が経過した際に行われる動作を示すフローチャートである。
まず、図10のステップS40でセットされた時間が経過した場合には、ASIC121は、A/Dコンバータ123で変換されたA/D値である電圧値を、A/Dコンバータ123から読み取る(S50)。
【0063】
そして、ASIC121は、読み取られた電圧値を図示しないワークメモリに記憶する(S51)。ここで、ASIC121は、ワークメモリに記憶された電圧値を用いて、図7に示されているフローチャートを実行する。ここでは、第2の検出モードとなるため、処理はステップS52に進む。
【0064】
ステップS52では、ASIC121は、計時を行うタイマに500μSをセットする。
そして、ASIC121は、セットされたタイマの計時を開始する(S53)。
【0065】
図12は、図11でセットされた時間が経過した際に行われる動作を示すフローチャートである。
まず、図11のステップS52でセットされた時間が経過した場合には、ASIC121は、A/Dコンバータ123で変換されたA/D値である電圧値を、A/Dコンバータ123から読み取る(S60)。
【0066】
そして、ASIC121は、読み取られた電圧値を図示しないワークメモリに記憶する(S61)。ここでは、第2の検出モードであるため、ASIC121は、ステップS60で読み取られ、ステップS61で記憶された電圧値に基づいて、第2のテーブルを用いて、湿度を特定する。
そして、ASIC121は、タイマでの計時を停止する(S62)。
【0067】
以上のように、本実施の形態によれば、低湿で湿度が固定された出力が読めてしまい、低湿での湿度の精度が悪くなることを防止できるため、低湿での湿度を精度よく検出することができる。
【0068】
さらに、電子写真方式のプリンタは、低温低湿下でトナーの挙動が大きく変わるため、低湿での湿度を精度よく検出し、現像バイアスと転写バイアスとをコントロールすることでトナーの挙動を安定してコントロールすることができ、画質の劣化を防ぐことができる。
【0069】
以上に記載された画像形成装置100は、電子写真方式のプリンタに適用した例を示したが、本実施の形態は、以上のような例に限定されない。例えば、本実施の形態は、インクジェットプリンタにも適用することができる。インクジェットプリンタでは、低湿では色が安定しにくいなどの問題があり、低湿での湿度の正確な検出は色の安定化に寄与する。
【0070】
なお、以上に記載された実施の形態は、プリンタ以外にも、複合機またはファクシミリ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 画像形成装置、 101 給紙ユニット、 102 画像形成ユニット、 103 定着ユニット、 104 ヒータ、 105 給紙モータ、 106 メインモータ、 107 定着モータ、 110 環境センサ基板、 120 メイン基板、 121 ASIC、 122 PWMジェネレータ、 123 A/Dコンバータ、 124 切替部、 125 第1のスイッチ、 126 第2のスイッチ、 127 湿度センサ、 128 分圧抵抗、 129 ボルテージフォロワ、 140 高圧基板。
図1
図2
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図7
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図12